説明

無機粒子分散体の製造方法

【課題】硬度が高いとともに、膜表面の耐擦傷性に優れた硬化膜を得ることのできる分散体の製造方法を提供すること。
【解決手段】無機粒子分散体の製造方法に関し、
遠心分離によりメディアを分離する機構を備えた湿式撹拌粉砕機を用いた無機粒子分散体の製造方法であって、少なくとも、(A)活性エネルギーにより重合反応を開始せしめる基を有するオルガノシラン化合物により表面処理された無機粒子、及び(B)重合性有機成分を湿式撹拌粉砕機に供給する工程を有することに特徴を有する製造方法を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心分離によりメディアを分離する機構を備えた湿式撹拌粉砕機を用いた無機微粒子分散体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
UV硬化型ハードコート材(HC材)は、傷や汚れからの表面保護や意匠性の付与目的で、自動車部品、化粧品容器、電子機器ケースなどに幅広く使用されてきた。近年では、携帯電話やPDAなどのモバイル機器の表示画面や、ATMやカーナビゲーションなどの画面表示入力用タッチパネルなどの用途で、表示画面への傷つき防止を目的に多用されている。表示デバイス自体が、従来の据え置き型からモバイル環境で使用されるようになり、表面保護に好ましく用いることのできる材料に対する要求はますます大きくなっている。このような状況から、HC材の耐擦傷性を向上させるために、より高い硬度の材料が望まれている。
【0003】
UV硬化型の有機系HC材では、架橋密度を上げることで、硬度や耐擦傷性をある程度向上させることができる。しかし、架橋反応がアクリル基の重合であるため、硬化によるコート自体の収縮を避けることができず、硬化収縮により基材への密着性の低下、歪みなどが発生し問題となっている。
【0004】
また、ポリシロキサンなどを代表とする、無機系HC材は、有機系に比べ、高硬度、高耐擦傷性を有する上、耐熱性、耐候性に優れる利点があるが、100℃近い加熱プロセスを必要とし、かつ重縮合反応を経由するため硬化時に有機基の脱離に伴う収縮が生じ、厚膜化が困難であるなどの欠点を有しているため、その使用範囲は限定的である。
【0005】
このような状況の中で、ナノスケールレベルで有機成分、無機成分が混合されることで、両者の利点を併せ持つ材料の創製が可能であることから、有機無機ハイブリッド材料に対する期待が大きくなっている。当該材料としては、比較的安価に入手できるナノ材料にフュームドシリカ粉体が挙げられるが、従来では、強い二次凝集を解く簡便な手法がなかったため、十分な物性を発揮できなかった。
【0006】
従来技術としては、例えば、特許文献1には、表面に光重合開始剤を有するシリカ微粒子及び該シリカ微粒子を用いた皮膜形成方法に関して、表面に光重合開始剤が導入されているシリカ微粒子を、ラジカル重合性多官能モノマーに添加し、活性光線を照射することにより、耐久性、透明性に優れた皮膜を形成することができ、当該発明の表面に光重合開始剤が導入されているシリカ微粒子は、上記活性光線の照射のみで他の工程を要せずに、耐久性、透明性に優れた皮膜を得られる点で大きな優位性を有することが記載されている。当該発明により得られる皮膜の基材密着性、耐払拭性、耐ひっかき性について評価結果が記載されているが、上記目標を達成した皮膜が得られているか否かは不明である。
【0007】
特許文献2には、オルガノシラン化合物の加水分解物及び/又はその部分縮合物により表面処理された無機微粒子を少なくとも1種含有する塗布組成物に関して、当該塗布組成物から得られる膜の鉛筆硬度が3H〜4Hの範囲であり、また、#0000のスチールウールに500g/cmの荷重をかけたスチールウール耐性試験について、傷が全くつかなかったものが得られることが記載されている。
【0008】
特許文献3には、透明分散させるためにアセチルアセトン系分散助剤を用いて、0.05mm以上のメディアで分散し、ジルコニア分散体を得る方法が記載されている。当該法によれば、分散粒径の小さなジルコニア粒子分散体を得ることができるという。しかし、アセチルアセトン系分散助剤を用いた場合には、熱や光による劣化・着色を起こしやすい欠点を有する。
【0009】
特許文献4には、超微小ビーズと遠心セパレート型ビーズミル(3〜50μm)を用いて、溶剤又はモノマーを含んだ溶剤にナノ粒子を均一分散させるナノ粒子分散体の製造方法が記載されている。当該法によれば、ポリマーの前駆体である反応性溶媒を分散媒としたナノ粒子が均一分散したナノ粒子分散体が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−328522号公報
【特許文献2】特開2008−121011号公報
【特許文献3】特開2005−185924号公報
【特許文献4】特開2008−169233号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、硬度が高いとともに、膜表面の耐擦傷性に優れた硬化膜を得ることのできる分散体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、無機粒子分散体の製造方法に関し、
遠心分離によりメディアを分離する機構を備えた湿式撹拌粉砕機を用いた無機粒子分散体の製造方法であって、少なくとも、(A)活性エネルギーにより重合反応を開始せしめる基を有するオルガノシラン化合物により表面処理された無機粒子、及び(B)重合性有機成分を湿式撹拌粉砕機に供給する工程を有することに特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記特徴を有する製造方法を提供することにより、硬度が高いとともに、膜表面の耐擦傷性に優れた硬化膜を得ることのできる分散体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の分散体の製造方法で用いる前記湿式攪拌ボールミルを備えた原料スラリー粉砕処理サイクルの概略図である。
【図2】本発明の分散体の製造方法で用いる前記湿式攪拌ボールミルの縦断面図である。
【図3】本発明の分散体の製造方法で用いる前記湿式攪拌ボールミルのスラリー供給時の供給口の縦断面図である。
【図4】メディア排出時の供給口の縦断面図である。
【図5】本発明の分散体の製造方法で用いる前記湿式攪拌ボールミルのもう一つの例の縦断面図である。
【図6】図5に示す湿式攪拌ボールミルのセパレータの横断面図を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(湿式撹拌粉砕機)
本発明に用いられる湿式撹拌粉砕機は、遠心分離によりメディアを分離する機構を備えることに特徴を有し、当該機構を有するものであれば、制限なく使用することができる。このような粉砕機としては、例えば、ビーズミル(寿工業株式会社製、ウルトラアペックスミルUAM−015)等を挙げることができるが、本発明に使用される湿式撹拌粉砕機はこれに限らない。
【0016】
前記ビーズミルを簡単に説明すると、当該機は、分散機であるビーズミルとビーズミルに原料スラリーを供給する原料スラリー供給ポンプ、原料スラリーを調整する原料スラリータンクから構成される。
ビーズミルは、冷却用のジャケットを取付けたステータと、上部に遠心分離方式のビーズセパレータを有し、その下部にビーズを撹拌するためのローターピンを同軸上に有するローター、ローターを駆動するモータを含み構成される。ローターとステータとは軸封によりシールされ、機内が密閉化されている。原料スラリータンクは、撹拌機を備え、原料スラリー供給ポンプは、原料スラリー(分散体)を定量的にビーズミルへ供給する。ビーズミルに供給された原料スラリーは、ステータ内で撹拌粒子と衝突し、凝集した原料粉は分散される。ビーズセパレータにより撹拌粒子が分離された原料スラリーは、戻りラインを通じて原料スラリータンクへ戻る。原料スラリータンクは、冷却のためのジャケットを備える。
本発明に使用されるビーズミルは、ローター、ステータ及び遠心分離により攪拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えることに特徴を有する。
本発明に用いられる分散機の例を図面に示す。
【0017】
本発明に使用されるメディアは、通常公知のビーズであれば特に制限はないが、好ましくは、ジルコニア、アルミナ、シリカ、ガラス、炭化珪素、窒化珪素を例示できる。
ビーズの平均粒径としては、3〜50μmが好ましく、10〜30μmのビーズがより好ましい。粒子径が3μmより小さいと、原料粉に対する衝撃力が小さく、分散に時間を要する。一方、撹拌粒子の粒子径が50μmを超えると原料粉に対する衝撃力が大きくなりすぎ、分散された粒子の表面エネルギーが増大し、再凝集が発生しやすい。さらにビーズは、十分に研磨したものを使用することが望ましい。研磨不十分な撹拌粒子を使用すると、粒子の解粒、分散に与える影響は殆どないものの、分散体の光透過度を低下させるからである。
【0018】
(無機粒子)
本発明の無機粒子は、活性エネルギーにより重合反応を開始せしめる基を有するオルガノシラン化合物により無機粒子表面が処理されたものであることに特徴を有する。
【0019】
本発明の無機粒子は、特に限定はないが、シリカ粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、チタニウム粒子、又はチタン酸バリウム粒子等のオルガノシラン化合物により表面処理が可能な無機粒子であれば制限はないが、特にシリカ粒子が好ましい。これらの粒子の好ましい一次粒子径は、10nm〜300nmの範囲を挙げることができる。10nm以下であると、分散体中の無機粒子の分散が不十分となり、300nm以上であると、硬化膜の十分な強度が保持できないため好ましくない。
【0020】
本発明のオルガノシラン化合物は、通常公知の方法によって製造することができる。
例えば、一般式(1)で表されるような、オルガノシラン化合物(III)を得るには、反応可能な任意の基Rを有し、且つ光エネルギー又は熱エネルギーにより重合反応を開始せしめる基を有する化合物(I)と、Rと反応可能な任意の基Rを有するアルコキシシラン化合物(II)を反応させることによる。
【0021】
【化1】

【0022】
(式中、RはRと反応可能な任意の官能基を示し、Rは、RはRの反応の結果得られるエステル結合、ウレタン結合等である。)
但し、一般式(1)ではオルガノシラン化合物の製造方法の一態様を示したに過ぎず、本発明のオルガノシラン化合物はこれに限定されるものではない。
【0023】
更に、オルガノシラン化合物により表面処理された無機粒子を得るためには、無機粒子と活性エネルギーにより重合反応を開始せしめる基を有するオルガノシラン化合物を反応せしめることにより得ることができる。無機粒子は、その表面にオルガノシラン化合物と反応し得る官能基を有することが必要で、例えば、シリカ粒子の場合には、シリカ粒子の表面に有するシラノール基とオルガノシラン化合物のアルコキシシリル基との反応を行うことにより、目的とするオルガノシラン化合物により表面処理された無機粒子を得ることができる。
【0024】
シリカ粒子以外の無機粒子であっても、通常公知の方法によって、同様にして目的とするオルガノシラン化合物により表面処理された無機粒子を得ることができる。
【0025】
本発明に用いられるオルガノシラン化合物は、活性エネルギーにより重合反応を開始せしめる基を有する。本発明における活性エネルギーに特に限定はないが、光エネルギー又は熱エネルギーが好ましい。
ここで、光エネルギーにより重合反応を開始せしめる基としては、通常公知の光重合開始剤が有する実質的に重合反応を開始せしめる基であれば制限なく用いることができる。
【0026】
このような基としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3‐ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類、活性ハロゲン化合物、また下記で示される各種化合物などが挙げられる。
【0027】
アセトフェノン類の例には、2,2‐ジエトキシアセトフェノン、p‐ジメチルアセトフェノン、1‐ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2‐メチル‐4‐メチルチオ‐2‐モルフォリノプロピオフェノンおよび2‐ベンジル‐2‐ジメチルアミノ‐1‐(4‐モルホリノフェニル)‐ブタノンが含まれる。
【0028】
ベンゾイン類の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインジメチルケタール、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。
【0029】
ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ベンゾイル‐4'‐メチルジフェニルサルファイド、2,4‐ジクロロベンゾフェノン、4,4‐ジクロロベンゾフェノンおよびp‐クロロベンゾフェノンが含まれる。
【0030】
ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6‐トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
【0031】
活性エステル類の例には、IRGACURE OXE01(1,2‐オクタンジオン,1‐[4‐(フェニルチオ)‐2‐(O‐ベンゾイルオキシム)]チバスペシャリティーケミカルス製)、スルホン酸エステル類、環状活性エステル化合物などが含まれる。
【0032】
オニウム塩類の例には、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩が挙げられる。
【0033】
ボレート塩としては、例えば、特許第2764769号、特開2002‐116539号等の各公報、および、Kunz,Martin“Rad Tech’98.Proceeding April 19〜22頁,1998年,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩記載される化合物があげられる。
【0034】
また、熱エネルギーにより重合反応を開始せしめる基としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾおよびジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2,2’‐アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’‐アゾビス(プロピオニトリル)、1,1’‐アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p‐ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。
【0035】
好ましい開始剤の化学構造の骨格としては活性ハロゲン系、アセトフェノン系、オキサゾール系、オキサジアゾール系、ホスフィンオキシド系、有機アゾ系が好ましく、特には活性ハロゲン系、アセトフェノン系、オキサゾール系、オキサジアゾール系が好ましい。
【0036】
このようにして得られるオルガノシラン可能物としては、例えば以下の化合物を挙げることができるが、これらに限らない。
【0037】
【化2】

【0038】
(重合性有機成分)
(B)重合性有機成分は特に制限はないが、重合性不飽和二重結合を一分子あたり一つ有する単量体を重合して得られる構造を主骨格とする重合体が好ましい。また、重合時にゲル化を生じない範囲で重合性不飽和二重結合を二つ以上有する単量体を併用しても良い。
本発明に用いられる(B)重合性有機成分としては、特に、エポキシ基を有する(メタ)アクリル重合体(a1)に(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を有する単量体(b)を付加反応させてなる反応生成物、又はカルボキシル基を有する(メタ)アクリル重合体(a2)に(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する単量体(c)を付加反応させてなる反応生成物であって、(メタ)アクリロイル当量が200〜600(g/eq.)で、水酸基価が90〜280(mgKOH/g)であるものが好ましい。
本発明に用いられる重合性有機成分の重量平均分子量は、特に制限はないが、5,000〜100,000の範囲であるものが好ましい。
【0039】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル重合体(a1)は、例えば(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する重合性単量体(b)と必要に応じて他の重合性単量体との共重合反応によって得られるものを挙げることができる。前記(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する単量体(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、α‐エチル(メタ)アクリル酸グリシジル、α‐n‐プロピル(メタ)アクリル酸グリシジル、α‐n‐ブチル(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸‐3,4‐エポキシブチル、(メタ)アクリル酸‐4,5‐エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸‐6,7‐エポキシペンチル、α‐エチル(メタ)アクリル酸‐6,7‐エポキシペンチル、β‐メチルグリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸‐3,4‐エポキシシクロヘキシル、ラクトン変性(メタ)アクリル酸‐3,4‐エポキシシクロヘキシル、ビニルシクロヘキセンオキシド等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0040】
(メタ)アクリル重合体(a1)を調整するに当たり、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する単量体の使用量は通常25〜100質量部好ましくは、40〜100質量部である。他の重合性単量体は、任意成分であり、その使用量は通常0〜75質量部、好ましくは、0〜60質量部である。
【0041】
(メタ)アクリル重合体(a2)は、例えば、(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を有する単量体と必要に応じて他の重合性単量体との共重合反応によって得られる。
(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、β‐カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2‐アクリロイルオキシエチルコハク酸、2‐アクリロイルオキシエチルフタル酸、2‐アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸及びこれらのラクトン変性物等エステル結合を有する不飽和モノカルボン酸、マレイン酸等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
(メタ)アクリル重合体(a2)を調整するに当たり、(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を有する重合性単量体の使用量は通常25〜100質量部好ましくは、40〜100質量部である。他の重合性単量体は、任意成分であり、その使用量は通常0〜75質量部、好ましくは、0〜60質量部である。
【0042】
(メタ)アクリル重合体(a1)や(メタ)アクリル重合体(a2)の調製時に必要に応じて共重合させる他の重合性不飽和単量体としては、例えば、以下の単量体等が挙げられる。
(1)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸‐n‐ブチル、(メタ)アクリル酸‐t‐ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ドコシル等の炭素数1〜22のアルキル基を持つ(メタ)アクリル酸エステル類;
(2)(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等の脂環式のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;
(3)(メタ)アクリル酸ベンゾイルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシ‐3‐フェノシプロピル等の芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル類;
(4)(メタ)アクリル酸ヒドロキエチル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリセロール;ラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステル等のヒドロキシアルキル基を有するアクリル酸エステル類;
(5)フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、フマル酸メチルエチル、フマル酸メチルブチル、イタコン酸メチルエチル等の不飽和ジカルボン酸エステル類;
(6)スチレン、α‐メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン誘導体類;
(7)ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、ジメチルブタジエン等のジエン系化合物類;
(8)塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニルやハロゲン化ビニリデン類;
(9)メチルビニルケトン、ブチルビニルケトン等の不飽和ケトン類;
(10)酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;
(11)メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
(12)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデン等のシアン化ビニル類;
(13)アクリルアミドやそのアルキド置換アミド類;
(14)N‐フェニルマレイミド、N‐シクロヘキシルマレイミド等のN‐置換マレイミド類;
(15)フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン若しくはヘキサフルオロプロピレンの如きフッ素含有α‐オレフィン類;又はトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル、ペンタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル若しくは、ヘプタフルオロプロピルトリフルオロビニルエーテルの如き(パー)フルオロアルキル基の炭素数が1から18なる(パー)フルオロアルキル・パーフルオロビニルエーテル類;2,2,2‐トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3‐テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H‐オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H‐ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート若しくはパーフルオロエチルオキシエチル(メタ)アクリレートの如き(パー)フルオロアルキル基の炭素数が1から18なる(パー)フルオロアルキル(メタ)アクリレート類等のフッ素含有エチレン性不飽和単量体類;
(16)γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシリル基含有(メタ)アクリレート類;
(17)N,N‐ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N‐ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、若しくはN,N‐ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のN,N‐ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
これらの(メタ)アクリル重合体(a1)や(メタ)アクリル重合体(a2)を調製する際に用いる他の不飽和単量体は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0044】
前記(メタ)アクリル重合体(a1)と(a2)は、公知慣用の方法を用いて重合(共重合)させれば得られ、その共重合形態は特に制限されない。例えば、触媒(重合開始剤)の存在下に、付加重合により製造することができ、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれでもよい。また共重合方法も塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合方法が使用できる。
【0045】
溶液重合等に用いることができる溶媒として代表的なものを挙げれば、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル‐n‐プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル‐n‐ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル‐n‐アミルケトン、メチル‐n‐ヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチル‐n‐ブチルケトン、ジ‐n‐プロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ホロン等のケトン系溶媒;
【0046】
エチルエーテル、イソプロピルエーテル、n‐ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;
【0047】
ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸‐n‐ブチル、酢酸エチル、酢酸‐n‐プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸‐n‐ブチル、酢酸‐n‐アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル‐3‐エトキシプロピオネート等のエステル系溶媒;
【0048】
メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n‐ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール、3‐メトキシ‐1‐プロパノール、3‐メトキシ‐1‐ブタノール、3‐メチル‐3‐メトキシブタノール等のアルコール系溶媒;
【0049】
トルエン、キシレン、ソルベッソ100、ソルベッソ150、スワゾール1800、スワゾール310、アイソパーE、アイソパーG、エクソンナフサ5号、エクソンナフサ6号等の炭化水素系溶媒が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良いが、二段目の反応となるエポキシ基を有する(メタ)アクリル重合体(a1)とカルボキシル基を有する単量体(b)の反応、又はカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系単量体(a2)とエポキシ基を有する単量体(c)の反応を効率的に行うためには100〜150℃の高温で行う方が好ましい。
【0050】
上述の触媒としては、ラジカル重合開始剤として一般的に知られるものが使用でき、例えば2,2’‐アゾビスイソブチロニトリル、2,2’‐アゾビス‐(2,4‐ジメチルバレロニトリル)、2,2’‐アゾビス‐(4‐メトキシ‐2,4‐ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t‐ブチルペルオキシピバレート、t‐ブチルパーオキシエチルヘキサノエイト、1,1’‐ビス‐(t‐ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t‐アミルペルオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、t‐ヘキシルペルオキシ‐2‐エチルヘキサノエート等の有機過酸化物及び過酸化水素等が挙げられる。
【0051】
触媒として過酸化物を用いる場合には、過酸化物を還元剤とともに用いてレドックス型開始剤としてもよい。
【0052】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル重合体(a1)に(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を有する単量体(b)を付加反応させてなる反応生成物は、前述の通りエポキシ基を有する(メタ)アクリル重合体(a1)と(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を有する単量体(b)とを反応させる。(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を有する単量体(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、β‐カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2‐アクリロイルオキシチルコハク酸、2‐アクリロイルオキシエチルフタル酸、2‐アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸及びこれらのラクトン変性物等エステル結合を有する不飽和モノカルボン酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0053】
単量体(b)として無水コハク酸や無水マレイン酸等の無水酸をペンタエリスリトールトリアクリレート等の水酸基含有多官能(メタ)アクリレートモノマーと反応させた後、カルボキシル基含有多官能(メタ)アクリレートモノマーとしたものを用いても良い。これら(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を有する単量体(b)は各々単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0054】
重合体(a1)と単量体(b)との反応は、通常、両成分を混合し、80〜120℃程度に加熱することにより行われる。重合体(a1)と単量体(b)の使用量は、得られる反応生成物の(メタ)アクリル当量が200〜600(g/eq.)になるものであれば特に限定されないが、通常、エポキシ基1モルに対して単量体(b)中のカルボキシル基のモル数を0.4〜1.1モルとすることが好ましい。
【0055】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル重合体(a2)に(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する単量体(c)を付加反応させてなる反応生成物は、前述の通りカルボキシル基を有する(メタ)アクリル重合体(a2)と(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する単量体(c)とを反応することにより得られる。(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する単量体(c)としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、α‐エチル(メタ)アクリル酸グリシジル、α‐n‐プロピル(メタ)アクリル酸グリシジル、α‐n‐ブチル(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸‐3,4‐エポキシブチル、(メタ)アクリル酸‐4,5‐エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸‐6,7‐エポキシペンチル、α‐エチル(メタ)アクリル酸‐6,7‐エポキシペンチル、β‐メチルグリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸‐3,4‐エポキシシクロヘキシル、ラクトン変性(メタ)アクリル酸‐3,4‐エポキシシクロヘキシル、ビニルシクロヘキセンオキシド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
重合体(a2)と単量体(c)との反応は通常、両成分を混合し、80〜120℃程度に加熱することにより行われる。重合体(a1)と単量体(c)の使用量は、得られる反応生生物の(メタ)アクリル当量が200〜600(g/eq.)になるものであれば特に限定されないが、通常、カルボキシル基1モルに対して単量体(c)中のエポキシ基のモル数を0.4〜1.1モルとすることが好ましい。
【0057】
前記エポキシ基を有する(メタ)アクリル重合体(a1)と(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を有する単量体(b)との反応や、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル重合体(a2)と(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する単量体(c)との反応は、例えば以下の方法でも行なう事もできる。
【0058】
方法1:(メタ)アクリル重合体(a1)を溶液重合法にて重合し、反応系に(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を有する単量体(b)を加えて反応させる方法、
【0059】
方法2:(メタ)アクリル重合体(a2)を溶液重合法にて重合し、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する単量体(c)を加えて反応させる方法、
【0060】
尚、本発明の重合性有機成分は重合性不飽和二重結合を1分子あたり一つ有する単量体を重合して得られる構造を主骨格とする重合体が好ましいが、重合時のゲル化を生じない範囲で重合性不飽和二重結合を二つ以上有する単量体を併用しても良い。
【0061】
前述の通り、本発明のエポキシ基を有する(メタ)アクリル重合体(a1)と(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を有する単量体(b)とを反応することにより得られる重合体は、グリシジル(メタ)アクリレートを含有する重合性単量体を重合させて得られたエポキシ基含有アクリル系重合体と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られたアクリル系重合体が好ましい。
【0062】
前記エポキシ基含有アクリル重合体(a1)のエポキシ当量としては、140〜500(g/eq.)が好ましく、140〜300(g/eq.)がより好ましい。更にエポキシ基含有アクリル系重合体(a1)のガラス転移温度としては、30℃以上が好ましく、30〜100℃がより好ましい。
【0063】
なお、本発明においてエポキシ当量とは、JIS‐K‐7236にて定義される値である。
【0064】
本発明の重合性有機成分が有する(メタ)アクリロイル当量は200〜600(g/eq.)が好ましく、特に200〜400(g/eq.)が好ましい。また、水酸基当量は90〜280(mgKOH/g)が好ましく、特に140〜280(mgKOH/g)が好ましい。
【0065】
本発明の分散体の製造方法においては、必要に応じて、分散剤又は分散媒を用いることもできる。
(分散剤)
分散剤は、ナノ粒子と親和性を有する基を有する分散剤であれば、特に限定されないが、好ましい分散剤として、カルボン酸、硫酸、スルホン酸或いはリン酸、又はそれらの塩等の酸基を有するアニオン系の高分子量又は低分子量分散剤を挙げることができ、更に好ましくは、前記酸基を有してもよいリン酸エステル系分散剤を挙げることができる。使用される量は特に制限がないが、酸化ジルコニウムナノ粒子に対して、0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜15質量%を挙げることができる。
【0066】
分散剤として、溶媒を前記アクリルモノマーと併用して、或いは単独で使用することもできる。使用可能な溶媒としては、好ましくは、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、トルエン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジクロロメタン等を挙げることができる。
【0067】
(分散媒)
分散媒は、ナノ粒子を分散させるものであれば特に制限はないが、25℃における粘度が200mPa以下の溶媒又はアクリルモノマーが好ましい。これ以上の粘度のものであると、分散時の粘度が高いことにより粉砕機におけるメディアを分離する際の障害となる。本発明における粘度の測定は、通常公知の方法により測定でき、用いられる測定器としては、B型粘度計を挙げることができる。
本発明の分散媒は、具体的には、アクリレート系化合物を挙げることができ、特に、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシ2−メチルエチルアクリレート、フェノキシエトキシエチルアクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−フェニルフェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、パラクミルフェノキシエチルアクリレート等の、芳香環含有アクリレートは屈折率が高く、好ましく用いることができる。
【0068】
また、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、イソボニルメタクリレート等の脂環骨格含有アクリレートはアッベ数が高く、光学材料として好ましく用いることができる。
【0069】
また、メチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性アルキル(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの単官能アルキル(メタ)アクリレートは低粘度であり、好ましく用いることができる。
【0070】
また、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレートや、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、リン酸トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の3,4官能(メタ)アクリレートおよびそれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド変性品は硬化物の高度を向上することができ、好ましく用いられる。
【0071】
これらのアクリルモノマーは、液状であって粘度が200mPa以上のものや室温において固体のアクリルモノマーであっても、液状低粘度のアクリルモノマーで希釈した混合物として、粘度を200mPaに低減して使用することも可能である。
【0072】
本発明の分散媒としては、さらにエポキシ系化合物を挙げることができる。
特に、ブチルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物や、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、1,2:8,9ジエポキシリモネン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレートなどのシクロヘキセンオキシド化合物は好ましく用いることができる。
【0073】
(分散体及び硬化物の製造)
本発明では、無機粒子分散体の製造工程においては、(A)無機粒子、(B)重合性有機成分を順次混合し、或いは一括で混合して得られた混合物を粉砕機に供給し、粉砕することに特徴を有する。
【0074】
また、上記製造方法により得られる無機粒子分散体を含む活性エネルギー線硬化性組成物の製造方法も本発明の範囲に含まれる。
【0075】
本発明の活性エネルギー線樹脂組成物としては、本発明により得られる無機粒子分散体を含み、更に、一般的な反応性基を有しても良い樹脂、フィラー、溶剤、光重合開始剤、増感剤、熱重合開始剤、エポキシ硬化剤および硬化促進剤、レベリング剤、密着助剤、離型剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤等を含んでもよい。
【0076】
前記のように、本発明に用いられる活性エネルギー線は本発明の活性エネルギー線硬化性組成物が硬化を起こす活性エネルギー線であれば特に制限なく用いることができるが、特に紫外線が好ましい。
紫外線の発生源としては、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、低圧、高圧、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、太陽光線などがある。紫外線の照射強度は、終始一定の強度でも行って良いし、硬化途中で強度を変化させることにより、硬化後の物性を微調整することもできる。
紫外線の他、活性エネルギー線として、例えば、可視光線も用いることができる。本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、200〜400nmに固有の分光感度を有しており、光重合開始剤不在下に、通常用いられるエネルギー線の有するエネルギー、例えば、20mW/cmのエネルギー数値を挙げることができるが、これに限られない。
【0077】
本発明の分散体は、光重合開始剤不存在下に、紫外線又は可視光線の照射により硬化するが、硬化反応をより効率的に行なうために、公知慣用の光重合開始剤を添加して硬化させることもできる。光重合開始剤としては、分子内結合開裂型と分子内水素引き抜き型の2種に大別できる。
【0078】
分子内結合開裂型の光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノンの如きアセトフェノン系;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルの如きベンゾイン類;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドの如きアシルホスフィンオキシド系;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル、などが挙げられる。
【0079】
一方、分子内水素引き抜き型の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンの如きベンゾフェノン系;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンの如きチオキサントン系;ミヒラ−ケトン、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノンの如きアミノベンゾフェノン系;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、などが挙げられる。
光重合開始剤を使用する場合の配合量は、活性エネルギー線硬化性組成物の0.01〜10重量%の範囲が好ましい。
【0080】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化反応をより効率的に行なうために、光増感剤を併用することもできる。
そのような光増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシルの如きアミン類が挙げられる。
【0081】
光増感剤を使用する場合の配合量は、活性エネルギー線硬化性組成物中0.01〜10重量%の範囲が好ましい。さらに、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、用途に応じて、非反応性化合物、無機充填剤、有機充填剤、カップリング剤、粘着付与剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、顔料、染料などを適宜併用することもできる。
【0082】
本発明で得られる分散体を硬化することにより得られる硬化物は、光学用部材として、例えば、プラスチックレンズ、輝度向上フィルム(プリズムシート)、フィルム型液晶素子、タッチパネル、プラスチック光学部品等の反射防止膜等に好ましく用いることができる。
【実施例】
【0083】
以下に、実施例および比較例をもって本発明をより詳しく説明する。
【0084】
(合成例)
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた反応装置に、グリシジルメタクリレート(以下、GMAという)250g、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKという)1000g及びt−ブチルパーオキシエチルヘキサノエイト(以下、P−Oという)10gを仕込んだ後、窒素気流下に約1時間かけて系内温度が約90℃になるまで昇温し、1時間保温した。次いで、あらかじめGMA750g、P−Oが30gからなる混合液を仕込んだ滴下ロートより、窒素気流下に混合液を約2時間要して系内に滴下し、3時間同温度に保温した。その後、120℃に昇温し、2時間保温した。60℃まで冷却後、窒素導入管を空気導入管につけ替え、アクリル酸(以下、AAという)507g、メトキノン2.3gおよびトリフェニルフォスフィン9.3gを仕込み混合した後、空気バブリング下にて、110℃まで昇温した。同温度にて8時間保温後、メトキノン1.6gを仕込み、冷却して、不揮発分が50%となるようMIBKを加え、重合性有機成分(A−1)の溶液を得た。該重合性有機成分(A−1)は、アクリル当量が約214g/eq、水酸基価が約262mgKOH/g、重量平均分子量が約30,000であった。
【0085】
(実施例1)
脱水酢酸エチル80mLに4(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(チバスペシャルティ製、イルガキュアー2959)7.96g(35.6mmol)を溶解させ、さらに3−トリエトキシシリルプロピルイソシアネート(信越化学工業社製、KBE9007)8.00g(32.3mmol)を加え、80℃室温で20時間攪拌した。得られた反応溶液を減圧濃縮し、酢酸エチルとヘキサンの混合溶媒に溶解してシリカゲルカラムで精製後乾燥することで、末端に光重合開始剤部分を有するトリエトキシシランの精製粉末(B−1)を得た。
【0086】
<表面に光重合開始剤部分を導入した無機粒子の合成>
固形分で10gのコロイダルシリカ(日産化学、MIBK−ST)に、上記光重合開始剤部分を有するトリエトキシシラン(B−1)0.8gを添加して80℃で16時間撹拌し、表面に光ラジカル開始剤を導入したシリカ粒子分散液(C−1)を得た。
【0087】
<光硬化性組成物の調整>
上記で得られたシリカ粒子のスラリー(C−1)220gに、重合性有機成分(A−1)を固形分で13.0g、ジペンタエリスリトールヘキサ アクリレート(DPHA)13.0gを混合した後、寿工業(株)製のウルトラアペックスミルUAM−015を用いてシリカ微粒子の分散を行った。
【0088】
この配合物中のシリカ微粒子の分散を、寿工業(株)製のウルトラアペックスミル UAM015を用いて行った。用いたウルトラアペックスミル UAM015は、図2において、ステータ7の内径が50mmφ、内容積が0.17リットル、セパレータ4の径が40mmφ、セパレータ4のディスク21間の間隔を5mmとしたミル3を有しており、分散体を製造するにあたり、ミル3内にメディアとして30μm径のジルコニアビーズをミル3の容積に対して50%充填した。
【0089】
図1の原料タンク1より前記配合物を供給口16より供給した。そしてローターの回転速度を一定(ロータ先端での周速が8m/sec)でミル3を運転し、毎分1.5リットルの流量で配合物の循環粉砕を行った。循環粉砕を30分間行い、シリカ微粒子が、反応性分散剤(A−1)、DPHA及びMIBKの混合物中に分散した分散体を得た。得られた分散体をウルトラアペックスミル UAM015の取り出し口から取り出し、エバポレーターを用いてMIBKを除去し、不揮発濃度分50%に濃縮した。
この反応性分散体の固形分100部にイルガキュアー2959を3部添加し、光硬化性組成物を得た。
【0090】
<硬化塗膜の作製方法>
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(膜厚40μm)上にバーコーターで塗布し(膜厚10μm)、70℃で1分乾燥させ、窒素下で高圧水銀灯を用いて250mJ/cmの照射量で通過させて硬化させることにより、硬化塗膜を有する試験片を得た。
<硬化塗膜の評価方法(鉛筆硬度)>
上記試験片の硬化皮膜をJIS K5600に従い荷重500gの鉛筆引っかき試験によって評価した。5回試験を行い、全てにおいて塑性変形、凝集破壊の見られない硬度スケールを求めた。
【0091】
<硬化塗膜の評価方法(スチールウール耐性)>
新東科学製HEIDON往復摩耗試験機を用い、荷重1kg、スピード100mm/sで試験片のスチールウール摩擦を行った。試験前後の塗膜のヘーズ変化をJIS K7136に従い評価した。
鉛筆硬度は4H、ヘーズ変化は0.2であった。
【0092】
(比較例1)
粉体ナノシリカ(日本アエロジル、#50)20g、脱水メチルイソブチルケトン200gに、重合性有機成分(A−1)を固形分で13.0g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)13.0gを混合した後、実施例1と同様にシリカ微粒子の分散を行い、不揮発濃度分50%に濃縮した。この反応性分散体の固形分100部にイルガキュアー2959を5.2部添加し、光硬化性組成物を得た。
硬化塗膜の鉛筆硬度は3H、ヘーズ変化は0.2であった。
【0093】
(比較例2)
シリカ粒子のスラリー(C−1)220gと、重合性有機成分(A−1)を固形分で13.0gと、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)13.0gとを混合した後、ジルコニアビーズ600g(ビーズ径0.3mm)と共にガラス瓶に入れ、ペイントシェイカーにて1時間混合、取り出し後、不揮発濃度分50%に濃縮し、比較対照用反応性分散体を得た。
硬化塗膜の鉛筆硬度は3H、ヘーズ変化は0.4であった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の製造方法により得られる無機粒子の分散体は、熱又は紫外線照射により硬化物とすることができ、当該硬化物はハードコート材としての利用が可能である。
【符号の説明】
【0095】
1・・・・・・原料タンク
2・・・・・・原料ポンプ
3・・・・・・摩砕型湿式攪拌ボールミル
4・・・・・・セパレータ
5・・・・・・シャフト
6・・・・・・ジャケット
7・・・・・・ステータ
9・・・・・・排出路
11・・・・・ローター
12・・・・・モータ
13・・・・・プーリ
14・・・・・プーリ
15・・・・・ロータリージョイント
16・・・・・供給口
17・・・・・スクリーンサポート
18・・・・・スクリーン
19・・・・・取出し口
21・・・・・ディスク
22・・・・・ブレード
23・・・・・レギュレータ
24・・・・・弁座
25・・・・・弁体
26・・・・・円筒体
27・・・・・導入口
28・・・・・円筒体
29・・・・・エアーの導入口
30・・・・・電磁切換弁
31・・・・・ピストン
32・・・・・ロッド
33・・・・・バネ
34・・・・・ナット
43・・・・・シャフト
43a・・・・シャフト43の段
44・・・・・セパレータ
45・・・・・スペーサ
45・・・・・ローター
47・・・・・ストッパー
48・・・・・ネジ
51・・・・・ブレード嵌合溝
52・・・・・ディスク
53・・・・・ブレード
54・・・・・排出路
55・・・・・孔
56・・・・・環状のスペーサ
58・・・・・バルブ
59・・・・・バルブ
60・・・・・バルブ
61・・・・・バルブ
62・・・・・バルブ
63・・・・・製品タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心分離によりメディアを分離する機構を備えた湿式撹拌粉砕機を用いた無機粒子分散体の製造方法であって、少なくとも、
(A)活性エネルギーにより重合反応を開始せしめる基を有するオルガノシラン化合物により表面処理された無機粒子、及び
(B)重合性有機成分
を湿式撹拌粉砕機に供給し、分散する工程を有することを特徴とする無機粒子分散体の製造方法。
【請求項2】
(B)重合性有機成分が、エポキシ基を有する(メタ)アクリル重合体(a1)に(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を有する単量体(b)を付加反応させてなる反応生成物、又はカルボキシル基を有する(メタ)アクリル重合体(a2)に(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する単量体(c)を付加反応させてなる反応生成物であって、(メタ)アクリロイル当量が200〜600(g/eq.)、水酸基価が90〜280(mgKOH/g)であることを特徴とする請求項1に記載の無機粒子分散体の製造方法。
【請求項3】
(B)重合性有機成分が、グリシジル(メタ)アクリレートを重合させて得られたエポキシ基を有する(メタ)アクリル重合体に(メタ)アクリル酸を付加反応させてなるものである請求項2に記載の無機粒子分散体の製造方法。
【請求項4】
更に(C)分散剤を供給してもよい請求項1〜3の何れかに記載の無機粒子分散体の製造方法。
【請求項5】
(C)分散剤が、リン酸エステル系界面活性剤である請求項4に記載の無機粒子分散体の製造方法。
【請求項6】
更に(D)分散媒を供給してもよい請求項1〜5の何れかに記載の無機粒子分散体の製造方法。
【請求項7】
(D)分散媒の粘度が、25℃において200mPas以下である請求項6に記載の無機粒子分散体の製造方法。
【請求項8】
(D)分散媒が、溶媒、アクリルモノマー、又はエポキシモノマーである請求項7に記載の無機粒子分散体の製造方法。
【請求項9】
メディアの平均粒径が、10〜30μmである請求項1〜8のいずれかに記載の無機粒子分散体の製造方法。
【請求項10】
無機粒子の一次粒子径が10nm〜300nmである請求項1〜9の何れかに記載の無機粒子分散体の製造方法。
【請求項11】
活性エネルギーにより重合反応を開始せしめる基が、光エネルギー又は熱エネルギーにより重合反応を開始せしめる基である請求項1〜10のいずれかに記載の無機粒子分散体の製造方法。
【請求項12】
光エネルギー又は熱エネルギーにより重合反応を開始せしめる基が、アセトフェノン基、ベンゾイン基、ベンゾフェノン基、パーオキサイド基、アゾ基、ジアゾ基、芳香族スルホニウム塩から選ばれる基である請求項11に記載の無機粒子分散体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−157435(P2011−157435A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18400(P2010−18400)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】