説明

無機粒子含有発泡体

【課題】隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を有し、該発泡体の外面の少なくとも一部が無機粒子を含有する無機粒子偏在層の表面である新規の無機粒子含有発泡体を提供することである。
【解決手段】本発明の無機粒子含有発泡体は、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を有する発泡体であって、該発泡体の外面の少なくとも一部が無機粒子偏在層の表面である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粒子含有発泡体に関する。より詳細には、本発明は、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を有する無機粒子含有発泡体であって、該発泡体の外面の少なくとも一部が無機粒子を含有する無機粒子偏在層の表面である無機粒子含有発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
W/O型エマルションは、特に、W/O型のHIPE(高不連続相エマルション)として知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
外部油相に重合性モノマーを含むW/O型HIPEを形成して重合することにより、エマルションの油相および水相の幾何学的配置を検討することが行われている。例えば、90%の水相成分を含み、且つ、油相成分中にスチレンモノマーを用いる、W/O型HIPEを調製した後に重合することにより、エマルションの油相および水相の幾何学的配置を検討することが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1では、油相と水相とを親油性の乳化剤を用いて撹拌することによってW/O型HIPEを調製した後に重合を行い、該W/O型HIPEの前駆体の相関係によって決定される気泡形状を有する硬質の多孔質体が形成されることが報告されている。
【0004】
W/O型エマルションを用いた多孔質体の形成においては、乳化性および静置保存安定性が良好なW/O型エマルションが好適である。このようなW/O型エマルションを得るためには、一般に、乳化剤または乳化剤代替材料の配合は必須である。親油性乳化剤としては、ソルビタンモノオレエート、表面疎水化処理を施した無機微粒子や層状粘土鉱物などが用いられている。例えば、ポリアルキルシラセスキオキサンの微細な固体球状粒子を含有する、界面活性剤を含まないW/O型エマルションの調製方法が報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
上記のように、乳化性および静置保存安定性が良好なW/O型エマルションを調製するためには、乳化剤または乳化剤代替材料の配合は必須である。この場合、乳化剤または乳化剤代替材料の配合量は、油相成分の30重量部までの範囲で用いることが一般的である。しかし、乳化剤または乳化剤代替材料を配合することによって、乳化性および静置保存安定性が良好なW/O型エマルションが調製できたとしても、低分子量成分として存在する乳化剤または乳化剤代替材料が汚染物質として作用してしまい、最終的に重合によって得られる多孔質ポリマー材料の物性に著しく影響するという問題がある。
【0006】
上記のような問題を回避するために、多孔質ポリマー材料を構成する連続相に導入可能な反応性乳化剤の検討がなされている。例えば、多孔質ポリマー材料を構成する連続相に導入可能な反応性乳化剤として、官能化酸化金属ナノ粒子が報告されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
しかしながら、工業的または試験的なプラントの規模において、連続工程によって、以上に述べたようなW/O型エマルション、特に、重合性のW/O型HIPEを製造して、多孔質ポリマー材料を商業的に生産する必要がある場合には、調製するW/O型エマルションの安定性が十分ではないという問題や、乳化剤や乳化剤代替材料や反応性乳化剤の影響によって多孔質ポリマー材料の物性が目的の物性とは大きく異なったものになるという問題がある。このように、W/O型エマルションを用いた多孔質体の製法において使用される無機粒子は、表面処理を施された無機粒子であり、乳化剤や乳化剤代替材料として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3565817号明細書
【特許文献2】特許第2656226号公報
【特許文献3】特表2004−504461号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「中および高不連続相比の水/ポリマーエマルション」(LissantおよびMahan、Journal of Colloid and Interfacecience,Vol.42,No.1,1973年1月、201〜208頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を有し、該発泡体の外面の少なくとも一部が無機粒子を含有する無機粒子偏在層の表面である無機粒子含有発泡体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の無機粒子含有発泡体は、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を有する発泡体であって、該発泡体の外面の少なくとも一部が無機粒子を含有する無機粒子偏在層の表面である。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記無機粒子含有発泡体を構成する球状気泡の平均気泡径は20μm未満である。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記隣接する球状気泡間の貫通孔は5μm以下である。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記無機粒子の平均粒子径は1nm〜500nmである。
【0015】
好ましい実施形態においては、上記無機粒子含有発泡体の総厚みに対する上記無機粒子偏在層の厚みは40%未満である。
【0016】
本発明の別の局面においては、上記無機粒子含有発泡体を製造する方法が提供される。該無機粒子発泡体の製造方法は、下記の工程(I)から(IV)を含む:
(I)連続油相成分および無機粒子を含む水相成分を用いてW/O型エマルションを調製する工程、
(II)得られたW/O型エマルションを賦形する工程、
(III)賦形されたW/O型エマルションを重合し、含水重合体を得る工程、
(IV)含水重合体を脱水し、外面の少なくとも一部が無機粒子偏在層の表面である発泡体を形成する工程。
【0017】
好ましい実施形態においては、前記工程(IV)において、80℃以上の雰囲気下で脱水を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を有し、該発泡体の外面の少なくとも一部が無機粒子偏在層の表面である新規の無機粒子含有発泡体が得られ得る。この新規の無機粒子含有発泡体は、様々な用途に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】本発明の好ましい実施形態による無機粒子含有発泡体の断面を450倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【図1B】図1Aの無機粒子含有発泡体の無機粒子偏在層および内部の発泡層を1000倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【図2】実施例1で作製した無機粒子含有発泡体の断面を250倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【図3】実施例2で作製した無機粒子含有発泡体の断面を500倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【図4】実施例3で作製した無機粒子含有発泡体の断面を600倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【図5】実施例4で作製した無機粒子含有発泡体の断面を450倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【図6】実施例5で作製した無機粒子含有発泡体の断面を370倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【図7】比較例1で作製した発泡体の断面を200倍で撮影した断面SEM写真の写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
≪≪A.無機粒子含有発泡体≫≫
本発明の無機粒子含有発泡体は、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を有する。隣接する球状気泡間に有する貫通孔は、発泡体の物性に影響する。例えば、貫通孔の平均孔径が小さいほど、発泡体の強度が高くなる傾向がある。この連続気泡構造は、ほとんどまたは全ての隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造であっても良いし、該貫通孔の数が比較的少ない半独立半連続気泡構造であっても良い。なお、本明細書において「球状気泡」とは、厳密な真球状の気泡でなくても良く、例えば、部分的にひずみのある略球状の気泡や、大きなひずみを有する空間からなる気泡であっても良い。
【0021】
本発明の無機粒子含有発泡体が有する球状気泡の平均孔径は、好ましくは20μm未満であり、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。本発明の無機粒子含有発泡体が有する球状気泡の平均孔径の下限値は特に限定されず、例えば、好ましくは0.01μmであり、より好ましくは0.1μmであり、さらに好ましくは1μmである。
【0022】
本発明の無機粒子含有発泡体が有する貫通孔の平均孔径は、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは4μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下である。本発明の無機粒子含有発泡体が有する貫通孔の平均孔径の下限値は特に限定されず、例えば、好ましくは0.001μmであり、より好ましくは0.01μmである。
【0023】
本発明の無機粒子含有発泡体は、無機粒子を含有しており、該発泡体の外面の少なくとも一部が無機粒子偏在層の表面である。上記無機粒子偏在層は、内部の発泡層と同一の成分により構成される層であり、無機粒子の含有割合が内部の発泡層よりも高い層である。すなわち、本発明の無機粒子含有発泡体は、内部は無機粒子の含有割合が相対的に低い発泡層であり、該発泡体の外面の少なくとも一部が無機粒子の含有割合が相対的に高い無機粒子偏在層の表面であるという、無機粒子の含有割合による層構造を有する発泡体である。図1Aは、本発明の好ましい実施形態による無機粒子含有発泡体の断面SEM写真である。この無機粒子含有発泡体は、該発泡体の外面の少なくとも一部が無機粒子偏在層の表面であり、該無機粒子偏在層の厚みは約20μmである。図1Bは、図1Aの無機粒子含有発泡体の無機粒子偏在層および内部の発泡層を拡大した断面SEM写真(1000倍で撮影)である。本発明の無機粒子含有発泡体は、無機粒子偏在層および内部の発泡層のいずれも上記連続気泡構造を有する発泡体である(図1B)。
【0024】
上記無機粒子偏在層は、250倍〜600倍で撮影した無機粒子含有発泡体の断面SEM写真により、存在を確認し得る。無機粒子偏在層は、250倍〜600倍で撮影した断面SEM写真においては、無機粒子の含有割合が高いことにより、内部の発泡層とは明らかに異なる層として認識し得る。したがって、本明細書においては、外面の少なくとも一部が無機粒子を含有する無機粒子偏在層の表面である無機粒子含有発泡体とは、得られた発泡体を任意の方向に切断し、250倍〜600倍で撮影した断面SEM写真において、該発泡体の外面を含む層が内部の発泡層とは異なる層として認識し得る層である発泡体をいう。
【0025】
上記無機粒子偏在層の厚みは、無機粒子含有発泡体の総厚みの好ましくは40%未満であり、より好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは20%以下である。無機粒子偏在層の厚みが無機粒子含有発泡体の厚みの40%以上である場合、無機粒子層偏在層の厚みが厚すぎ、無機粒子が有する任意の特性を発泡体の外面のみに付与することが困難となる場合がある。該無機粒子偏在層の厚みの下限値は、好ましくは無機粒子含有発泡体の厚みの5%である。本明細書において、無機粒子偏在層の厚みとは、得られた発泡体を任意の方向に切断し、250倍〜600倍で撮影した断面SEM写真において確認される無機粒子偏在層の厚みをいう。
【0026】
上記無機粒子偏在層は、無機粒子含有発泡体の表面全体に形成されていても良く、任意の部分にのみに形成されていても良い。例えば、無機粒子含有発泡体が発泡体シートの形態である場合、該無機粒子偏在層は発泡体シートの少なくとも一方の表面に形成され得る。上記無機粒子偏在層は、無機粒子含有発泡体の表面積の好ましくは80%以上存在し、より好ましくは90%以上存在する。無機粒子偏在層が、無機粒子含有発泡体の表面積の80%以上存在することにより、無機粒子偏在層を発泡体の表面に形成することにより得られる効果が十分に得られ得る。
【0027】
上記無機粒子としては、任意の適切な無機粒子を用いることができる。該無機粒子としては、例えば、導電性無機粒子、充填剤、難燃性付与粒子、無機顔料、誘電性粒子、熱伝導性粒子、多孔性粒子などが挙げられる。具体的には、このような無機粒子としては、アンチモンドープ型酸化スズ(ATO)、インジウム酸化スズ(ITO)、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸やその塩類、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、亜鉛華、ベントナイン、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケート、アセチレンブラック、アルミニウム粉、窒化ホウ素、ゼオライトなどが挙げられる。上記無機粒子は、好ましくは表面処理が施されていない無機粒子である。無機粒子は、1種のみを用いても良く、2種以上を用いても良い。
【0028】
上記無機粒子は平均粒子径が好ましくは1nm〜500nmであり、より好ましくは5nm〜200nmであり、さらに好ましくは10nm〜150nmである。すなわち、本発明で用いる無機粒子としては、好ましくは発泡体に形成される気孔貫通孔および/または貫通孔よりも平均粒子径が小さい無機粒子が用いられる。このような平均粒子径を有する無機粒子を用いることにより、ほぼ均一な厚みの無機粒子偏在層がより容易に得られ得る。
【0029】
≪≪B.無機粒子含有発泡体の製造方法≫≫
本発明の無機粒子含有発泡体の製造方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。本発明の無機粒子含有発泡体は、好ましくは連続油相成分と無機粒子を含有する水相成分を用いて得られるW/O型エマルションを用いて製造することができる。
【0030】
本発明の無機粒子含有発泡体の製造方法としては、例えば、連続的に連続油相成分と無機粒子を含有する水相成分を乳化機に供給して本発明の無機粒子含有発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションを調製し、続いて、得られたW/O型エマルションを重合して含水重合体を製造し、続いて、得られた含水重合体を脱水する、「連続法」が挙げられる。本発明の無機粒子含有発泡体の製造方法としては、また、例えば、連続油相成分に対して適当な量の無機粒子を含有する水相成分を乳化機に仕込み、攪拌しながら連続的に無機粒子を含有する水相成分を供給することで本発明の無機粒子含有発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションを調製し、得られたW/O型エマルションを重合して含水重合体を製造し、続いて、得られた含水重合体を脱水する、「バッチ法」が挙げられる。
【0031】
W/O型エマルションを連続的に重合する連続重合法は生産効率が高く、重合時間の短縮効果と重合装置の短縮化とを最も有効に利用できるので好ましい方法である。
【0032】
本発明の無機粒子含有発泡体は、より具体的には、好ましくは、
連続油相成分および無機粒子を含む水相成分を用いてW/O型エマルションを調製する工程(I)と、
得られたW/O型エマルションを賦形する工程(II)と、
賦形されたW/O型エマルションを重合し、含水重合体を得る工程(III)と、
得られた含水重合体を脱水し、外面の少なくとも一部が無機粒子偏在層の表面である発泡体を形成する工程(IV)と
を含む製造方法によって製造することができる。ここで、得られたW/O型エマルションを賦形する工程(II)と賦形されたW/O型エマルションを重合する工程(III)とは少なくとも一部を同時に行っても良い。
【0033】
≪B−1.連続油相成分および無機粒子を含む水相成分を用いてW/O型エマルションを調製する工程(I)≫
本発明の発泡体の製造に用いられ得るW/O型エマルションは、連続油相成分と、該連続油相成分と不混和性であり、かつ、無機粒子を含有する水相成分とを含むW/O型エマルションである。より具体的には、連続油相成分中に無機粒子を含有する水相成分が分散したものである。本発明の発泡体の製造方法では、無機粒子を含有する水相成分を用いるため、発泡体の製造に用いられ得るW/O型エマルションの水相に無機粒子の大部分が含まれる。なお、水相成分に含まれる無機粒子の一部は、エマルション状態にする段階で連続油相成分にも移動し得る。
【0034】
本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションにおける、無機粒子を含有する水相成分と連続油相成分との比率は、W/O型エマルションを形成し得る範囲で任意の適切な比率を採り得る。本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションにおける、無機粒子を含有する水相成分と連続油相成分との比率は、該W/O型エマルションの重合によって得られる多孔質ポリマー材料の構造的、機械的、および性能的特性を決定する上で重要な因子となり得る。具体的には、上記W/O型エマルションにおける、無機粒子を含有する水相成分と連続油相成分との比率は、該W/O型エマルションの重合によって得られる多孔質ポリマー材料の密度、気泡サイズ、気泡構造、および多孔構造を形成する壁体の寸法などを決定する上で重要な因子となり得る。
【0035】
本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルション中の無機粒子を含有する水相成分の比率は、下限値として、好ましくは30重量%であり、より好ましくは40重量%であり、さらに好ましくは50重量%であり、特に好ましくは55重量%であり、上限値として、好ましくは90重量%であり、より好ましくは85重量%であり、さらに好ましくは80重量%である。本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルション中の無機粒子を含有する水相成分の比率が上記範囲内にあれば、本発明の効果を十分に発現し得る。
【0036】
本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤が含まれ得る。このような添加剤としては、例えば、粘着付与樹脂;有機顔料;染料;などが挙げられる。このような添加剤は、1種のみ含まれていても良いし、2種以上が含まれていても良い。
【0037】
本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションを製造する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションを製造する方法としては、例えば、連続油相成分と無機粒子を含有する水相成分を連続的に乳化機に供給することでW/O型エマルションを形成する「連続法」や、連続油相成分に対して適当な量の無機粒子を含有する水相成分を乳化機に仕込み、攪拌しながら連続的に無機粒子を含有する水相成分を供給することでW/O型エマルションを形成する「バッチ法」などが挙げられる。
【0038】
本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションを製造する際、エマルション状態を得るための剪断手段としては、例えば、ローターステーターミキサー、ホモジナイザー、ミクロ流動化装置などを用いた高剪断条件の適用が挙げられる。また、エマルション状態を得るための別の剪断手段としては、例えば、動翼ミキサーまたはピンミキサーを使用した振盪、電磁撹拌棒などを用いた低剪断条件の適用による連続および分散相の穏やかな混合が挙げられる。
【0039】
「連続法」によってW/O型エマルションを調製するための装置としては、例えば、静的ミキサー、ローターステーターミキサー、ピンミキサーなどが挙げられる。撹拌速度を上げることで、または、混合方法でW/O型エマルション中に水相成分をより微細に分散するようデザインされた装置を使用することで、より激しい撹拌を達成しても良い。
【0040】
「バッチ法」によってW/O型エマルションを調製するための装置としては、例えば、手動での混合や振盪、被動動翼ミキサー、3枚プロペラ混合羽根などが挙げられる。
【0041】
無機粒子を含有する水相成分を調製する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。無機粒子を含有する水相成分を調製する方法としては、例えば、連続油相成分と非混和性の水性流体と無機粒子とを任意の手段を用いて混合する方法が挙げられる。また、市販されている無機粒子の水性流体への分散体またはスラリー(例えば、石原産業株式会社製、商品名:SN−100D)に上記水性流体を添加し、所望の無機粒子含有量としたものを水相成分として用いても良く、市販の無機粒子の水性流体への分散体またはスラリーを水相成分としてそのまま用いてもよい。
【0042】
連続油相成分を調製する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。連続油相成分を調製する方法としては、代表的には、例えば、親水性ポリウレタン系重合体とエチレン性不飽和モノマーを含む混合シロップを調製し、続いて、該混合シロップに、重合開始剤、架橋剤、その他の任意の適切な成分を配合し、連続油相成分を調製することが好ましい。
【0043】
親水性ポリウレタン系重合体を調製する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。親水性ポリウレタン系重合体を調製する方法としては、代表的には、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとジイソシアネート化合物とをウレタン反応触媒の存在下で反応させることにより得られる。
【0044】
<B−1−1.水相成分>
上記水相成分は、実質的に連続油相成分と不混和性である水性流体、および、無機粒子を含有する。
【0045】
(B−1−1−1.連続油相成分と不混和性である水性流体)
該水性流体としては、実質的に連続油相成分と不混和性のあらゆる水性流体を採用し得る。取り扱いやすさや低コストの観点から、好ましくは、イオン交換水などの水である。
【0046】
(B−1−1−2.無機粒子)
上記無機粒子としては、任意の適切な無機粒子を用いることができる。該無機粒子としては、例えば、導電性無機粒子、充填剤、難燃性付与粒子、無機顔料、誘電性粒子、熱伝導性粒子、多孔性粒子などが挙げられる。具体的には、このような無機粒子としては、アンチモンドープ型酸化スズ(ATO)、インジウム酸化スズ(ITO)、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸やその塩類、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、亜鉛華、ベントナイン、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケート、アセチレンブラック、アルミニウム粉、窒化ホウ素、ゼオライトなどが挙げられる。無機粒子は、1種のみを用いても良く、2種以上を用いても良い。上記無機粒子としては、水分散性無機粒子が好適に用いられ得る。
【0047】
上記無機粒子の平均粒子径は、好ましくは1nm〜500nmであり、より好ましくは5nm〜200nmであり、さらに好ましくは10nm〜150nmである。すなわち、本発明で用いる無機粒子としては、好ましくは平均粒子径が発泡体に形成される気孔貫通孔よりも小さい無機粒子が用いられる。このような平均粒子径を有する無機粒子を用いることにより、例えば、後述する工程(IV)で、無機粒子を発泡体の外面に容易に移動させることができ、さらに、発泡体の外面の少なくとも一部にほぼ均一の厚みを有する無機粒子偏在層が形成され得る。
【0048】
上記水相成分における無機粒子の含有量(固形分)は、好ましくは5重量%〜60重量%であり、より好ましくは5重量%〜50重量%であり、さらに好ましくは5重量%〜40重量%である。無機粒子の含有量が5重量%未満では、得られた無機粒子含有発泡体に無機粒子偏在層が形成されないおそれがある。無機粒子の含有量が60重量%を超えると、W/O型エマルションの調製時に、水相中の無機粒子が油相に移動しやすくなり、所望の無機粒子偏在層が形成されないおそれがある。また、得られるW/O型エマルションの乳化安定性が低下し、遊離水の発生頻度が高くなるおそれがある。
【0049】
(B−1−1−3.水相成分中のその他の成分)
水相成分は、無機粒子の分散性を向上させるために、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な分散剤が含まれ得る。このような分散剤としては、ポリカルボン酸アンモニウム塩(例えば、サンノプコ社製、商品名:SNディスパーサント)などが挙げられる。
【0050】
水相成分における分散剤の含有量は、用いる無機粒子の平均粒子径および/または水相成分における無機粒子の含有量により、任意の適切な含有量とされ得る。水相成分における分散剤の含有量は、好ましくは0.3重量%〜2重量%であり、より好ましくは0.3重量%〜1重量%である。水相成分における分散剤の含有量が0.3重量%未満では、水相成分への無機粒子の分散性が低下し、無機粒子の凝集および/または沈降するおそれがある。また、W/O型エマルションの乳化安定性が低下するおそれがある。水相成分における分散剤の含有量が2重量%を超えると、W/O型エマルションの調製工程において転相しやすくなり、目的とするW/O型エマルションを調製できないおそれがある。
【0051】
水相成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤が含まれ得る。このような添加剤としては、例えば、重合開始剤、水溶性の塩などが挙げられる。水溶性の塩は、本発明で用いるW/O型エマルションをより安定化させるために有効な添加剤となり得る。このような水溶性の塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどが挙げられる。このような添加剤は、1種のみ含まれていても良いし、2種以上が含まれていても良い。水相成分に含まれ得る添加剤は、1種のみでも良いし、2種以上でも良い。
【0052】
<B−1−2.連続油相成分>
連続油相成分は、好ましくは親水性ポリウレタン系重合体とエチレン性不飽和モノマーを含む。連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有割合を採り得る。
【0053】
親水性ポリウレタン系重合体は、該親水性ポリウレタン系重合体を構成するポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール単位中のポリオキシエチレン比率、または、配合する水相成分量にもよるが、例えば、好ましくは、エチレン性不飽和モノマー70〜90重量部に対して親水性ポリウレタン系重合体が10〜30重量部の範囲であり、より好ましくは、エチレン性不飽和モノマー75〜90重量部に対して親水性ポリウレタン系重合体が10〜25重量部の範囲である。また、例えば、水相成分100重量部に対し、好ましくは、親水性ポリウレタン系重合体が1〜30重量部の範囲であり、より好ましくは、親水性ポリウレタン系重合体が1〜25重量部の範囲である。親水性ポリウレタン系重合体の含有割合が上記範囲内にあれば、本発明の効果を十分に発現し得る。
【0054】
(B−1−2−1.親水性ポリウレタン系重合体)
親水性ポリウレタン系重合体は、好ましくはポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール由来のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位を含み、該ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中の5重量%〜25重量%がポリオキシエチレンである。
【0055】
上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中のポリオキシエチレンの含有割合は、上記のように好ましくは5重量%〜25重量%であり、下限値として、より好ましくは10重量%であり、上限値として、より好ましくは25重量%であり、さらに好ましくは20重量%である。上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中のポリオキシエチレンは、連続油相成分中に無機粒子を含有する水相成分を安定に分散させる効果を発現するものである。上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中のポリオキシエチレンの含有割合が5重量%未満の場合、連続油相成分中に無機粒子を含有する水相成分を安定に分散させることが困難になるおそれがある。上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中のポリオキシエチレンの含有割合が25重量%を超える場合、HIPE条件に近づくにつれてW/O型エマルションからO/W型(水中油型)エマルションに転相するおそれがある。
【0056】
従来の親水性ポリウレタン系重合体は、ジイソシアネート化合物と疎水性長鎖ジオール、ポリオキシエチレングリコールならびにその誘導体、低分子活性水素化合物(鎖伸長剤)を反応させることによって得られるが、このような方法で得られる親水性ポリウレタン系重合体中に含まれるポリオキシエチレン基の数は不均一であるため、このような親水性ポリウレタン系重合体を含むW/O型エマルションは乳化安定性が低下するおそれがある。一方、本発明の無機粒子含有発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションの連続油相成分に含まれる親水性ポリウレタン系重合体は、上記のような特徴的な構造を有することにより、W/O型エマルションの連続油相成分に含ませた場合に、乳化剤等を積極的に添加せずとも、優れた乳化性および優れた静置保存安定性を発現することができる。
【0057】
親水性ポリウレタン系重合体は、好ましくは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとジイソシアネート化合物とを反応させることにより得られる。この場合、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとジイソシアネート化合物との比率は、NCO/OH(当量比)で、下限値として、好ましくは1であり、より好ましくは1.2であり、さらに好ましくは1.4であり、上限値として、好ましくは3であり、より好ましくは2.5であり、さらに好ましくは2である。NCO/OH(当量比)が1未満の場合は、親水性ポリウレタン系重合体を製造する際にゲル化物が生成しやすくなるおそれがある。NCO/OH(当量比)が3を超える場合は、残存ジイソシアネート化合物が多くなってしまい、本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションが不安定になるおそれがある。
【0058】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、例えば、ADEKA株式会社製のポリエーテルポリオール(アデカ(登録商標)プルロニックL−31、L−61、L−71、L−101、L−121、L−42、L−62、L−72、L−122、25R−1、25R−2、17R−2)や、日本油脂株式会社製のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(プロノン(登録商標)052、102、202)などが挙げられる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0059】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート、これらのジイソシアネートの二量体や三量体、ポリフェニルメタンポリイソシアネートなどが挙げられる。芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。ジイソシアネートの三量体としては、イソシアヌレート型、ビューレット型、アロファネート型等が挙げられる。ジイソシアネート化合物は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0060】
ジイソシアネート化合物は、ポリオールとのウレタン反応性などの観点から、その種類や組み合わせ等を適宜選択すれば良い。ポリオールとの速やかなウレタン反応性や水との反応の抑制などの観点からは、脂環族ジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0061】
親水性ポリウレタン系重合体の重量平均分子量は、下限値として、好ましくは5000であり、より好ましくは7000であり、さらに好ましくは8000であり、特に好ましくは10000であり、上限値として、好ましくは50000であり、より好ましくは40000であり、さらに好ましくは30000であり、特に好ましくは20000である。
【0062】
親水性ポリウレタン系重合体は、末端にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有していても良い。親水性ポリウレタン系重合体の末端にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有することにより、本発明の効果がより一層発現され得る。
【0063】
(B−1−2−2.エチレン性不飽和モノマー)
エチレン性不飽和モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーであれば、任意の適切なモノマーを採用し得る。エチレン性不飽和モノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0064】
エチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルを含む。エチレン性不飽和モノマー中の(メタ)アクリル酸エステルの含有割合は、下限値として、好ましくは80重量%であり、より好ましくは85重量%であり、上限値として、好ましくは100重量%であり、より好ましくは98重量%である。(メタ)アクリル酸エステルは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0065】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、好ましくは、炭素数が1〜20のアルキル基(シクロアルキル基、アルキル(シクロアルキル)基、(シクロアルキル)アルキル基も含む概念)を有するアルキル(メタ)アクリレートである。上記アルキル基の炭素数は、好ましくは4〜18である。なお、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルの意味であり、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートの意味である。
【0066】
炭素数が1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。炭素数が1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0067】
エチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な極性モノマーをさらに含む。エチレン性不飽和モノマー中の極性モノマーの含有割合は、下限値として、好ましくは0重量%であり、より好ましくは2重量%であり、上限値として、好ましくは20重量%であり、より好ましくは15重量%である。極性モノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0068】
極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;などが挙げられる。
【0069】
(B−1−2−3.重合開始剤)
連続油相成分には、好ましくは、重合開始剤が含まれる。
【0070】
重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤、レドックス重合開始剤などが挙げられる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤が挙げられる。
【0071】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、過酸化物、ペルオキシ炭酸、ペルオキシカルボン酸、過硫酸カリウム、t−ブチルペルオキシイソブチレート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
【0072】
光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;ダロキュア−2959)、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;ダロキュア−1173)、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;イルガキュア−651)、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;イルガキュア−184)などのアセトフェノン系光重合開始剤;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系光重合開始剤;その他のハロゲン化ケトン;アシルフォスフィンオキサイド(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;イルガキュア−819);ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド(例として、BASF社製、商品名:ルシリンTPO)などを挙げることができる。
【0073】
重合開始剤は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0074】
重合開始剤の含有割合は、連続油相成分全体に対し、下限値として、好ましくは0.05重量%であり、より好ましくは0.1重量%であり、上限値として、好ましくは5.0重量%であり、より好ましくは1.0重量%である。重合開始剤の含有割合が連続油相成分全体に対して0.05重量%未満の場合には、未反応のモノマー成分が多くなり、得られる多孔質材料中の残存モノマー量が増加するおそれがある。重合開始剤の含有割合が連続油相成分全体に対して5.0重量%を超える場合には、得られる無機粒子含有発泡体の機械的物性が低下するおそれがある。
【0075】
なお、光重合開始剤によるラジカル発生量は、照射する光の種類や強度や照射時間、モノマーおよび溶剤混合物中の溶存酸素量などによっても変化する。そして、溶存酸素が多い場合には、光重合開始剤によるラジカル発生量が抑制され、重合が十分に進行せず、未反応物が多くなることがある。したがって、光照射の前に、反応系中に窒素等の不活性ガスを吹き込み、酸素を不活性ガスで置換しておく、または、減圧処理によって脱気しておくことが好ましい。
【0076】
(B−1−2−4.架橋剤)
連続油相成分には、好ましくは、架橋剤が含まれる。
【0077】
架橋剤は、典型的には、ポリマー鎖同士を連結して、より三次元的な分子構造を構築するために用いられる。架橋剤の種類と含有量の選択は、得られる無機粒子含有発泡体に所望される構造的特性、機械的特性、および流体処理特性に左右される。架橋剤の具体的な種類および含有量の選択は、多孔質材料の構造的特性、機械的特性、および流体処理特性の望ましい組み合わせを実現する上で重要となる。
【0078】
本発明の発泡体を製造する上では、好ましくは、架橋剤として、重量平均分子量の異なる少なくとも2種類の架橋剤を用いる。
【0079】
本発明の発泡体を製造する上では、より好ましくは、架橋剤として、「重量平均分子量が800以上である多官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリルアミド、および重合反応性オリゴマーから選ばれる1種以上」と「重量平均分子量が500以下である多官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上」とを併用する。ここで、多官能(メタ)アクリレートとは、具体的には、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する多官能(メタ)アクリレートであり、多官能(メタ)アクリルアミドとは、具体的には、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する多官能(メタ)アクリルアミドである。
【0080】
多官能(メタ)アクリレートとしては、ジアクリレート類、トリアクリレート類、テトラアクリレート類、ジメタクリレート類、トリメタクリレート類、テトラメタクリレート類などが挙げられる。
【0081】
多官能(メタ)アクリルアミドとしては、ジアクリルアミド類、トリアクリルアミド類、テトラアクリルアミド類、ジメタクリルアミド類、トリメタクリルアミド類、テトラメタクリルアミド類などが挙げられる。
【0082】
多官能(メタ)アクリレートは、例えば、ジオール類、トリオール類、テトラオール類、ビスフェノールA類などから誘導できる。具体的には、例えば、1,10−デカンジオール、1,8−オクタンジオール、1,6ヘキサン−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4ブタン−2−エンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAプロピレンオキサイド変性物などから誘導できる。
【0083】
多官能(メタ)アクリルアミドは、例えば、対応するジアミン類、トリアミン類、テトラアミン類などから誘導できる。
【0084】
重合反応性オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、コポリエステル(メタ)アクリレート、オリゴマージ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。好ましくは、疎水性ウレタン(メタ)アクリレートである。
【0085】
重合反応性オリゴマーの重量平均分子量は、好ましくは1500以上、より好ましくは2000以上である。重合反応性オリゴマーの重量平均分子量の上限は特に限定されないが、例えば、好ましくは10000以下である。
【0086】
架橋剤として、「重量平均分子量が800以上である多官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリルアミド、および重合反応性オリゴマーから選ばれる1種以上」と「重量平均分子量が500以下である多官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上」とを併用する場合、「重量平均分子量が800以上である多官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリルアミド、および重合反応性オリゴマーから選ばれる1種以上」の使用量は、連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの合計量に対して、下限値として、好ましくは40重量%であり、上限値として、好ましくは100重量%であり、より好ましくは80重量%である。「重量平均分子量が800以上である多官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリルアミド、および重合反応性オリゴマーから選ばれる1種以上」の使用量が連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの合計量に対して40重量%未満の場合、得られる発泡体の凝集力が低下してしまうおそれがあり、じん性と柔軟性の両立が困難になるおそれがある。「重量平均分子量が800以上である多官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリルアミド、および重合反応性オリゴマーから選ばれる1種以上」の使用量が連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの合計量に対して100重量%を超える場合、W/O型エマルションは乳化安定性が低下してしまい、所望の発泡体が得られないおそれがある。
【0087】
架橋剤として、「重量平均分子量が800以上である多官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリルアミド、および重合反応性オリゴマーから選ばれる1種以上」と「重量平均分子量が500以下である多官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上」とを併用する場合、「重量平均分子量が500以下である多官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上」の使用量は、連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの合計量に対して、下限値として、好ましくは1重量%であり、より好ましくは5重量%であり、上限値として、好ましくは30重量%であり、より好ましくは20重量%である。「重量平均分子量が500以下である多官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上」の使用量が連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの合計量に対して1重量%未満の場合、撥水性が低下してしまい、含水重合体を脱水する工程(IV)において収縮によって気泡構造が潰れてしまうおそれがある。「重量平均分子量が500以下である多官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上」の使用量が連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの合計量に対して30重量%を超える場合、得られる発泡体のじん性が低下してしまい、脆性を示してしまうおそれがある。
【0088】
架橋剤は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0089】
(B−1−2−5.連続油相成分中のその他の成分)
触媒としては、例えば、ウレタン反応触媒が挙げられる。ウレタン反応触媒としては、任意の適切な触媒を採用し得る。具体的には、例えば、ジブチル錫ジラウリレートが挙げられる。
【0090】
触媒の含有割合は、目的とする触媒反応に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。
【0091】
触媒は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0092】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0093】
酸化防止剤の含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有割合を採用し得る。
【0094】
酸化防止剤は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0095】
有機溶媒としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な有機溶媒を採用し得る。
【0096】
有機溶媒の含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有割合を採用し得る。
【0097】
有機溶媒は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0098】
≪B−2.得られたW/O型エマルションを賦形する工程(II)≫
工程(II)において、W/O型エマルションを賦形する方法としては、任意の適切な賦形方法を採用し得る。例えば、シート状の発泡体を成形する場合には、走行するベルト上にW/O型エマルションを連続的に供給し、ベルトの上で平滑なシート状に賦形する方法が挙げられる。また、熱可塑性樹脂フィルムの一面に塗工して賦形する方法が挙げられる。
【0099】
工程(II)において、W/O型エマルションを賦形する方法として、熱可塑性樹脂フィルムの一面に塗工して賦形する方法を採用する場合、塗工する方法としては、例えば、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーターなどを用いる方法が挙げられる。
【0100】
賦形後のW/O型エマルションにおいても、無機粒子の大部分は水相成分中に分散した状態で存在していると考えられる。
【0101】
≪B−3.賦形されたW/O型エマルションを重合し、含水重合体を得る工程(III)≫
工程(III)において、賦形されたW/O型エマルションを重合する方法としては、任意の適切な重合方法を採用し得る。例えば、加熱装置によってベルトコンベアーのベルト表面が加温される構造の、走行するベルト上にW/O型エマルションを連続的に供給し、ベルトの上で平滑なシート状に賦形しつつ加熱によって重合する方法や、活性エネルギー線の照射によってベルトコンベアーのベルト表面が加温される構造の、走行するベルト上にW/O型エマルションを連続的に供給し、ベルトの上で平滑なシート状に賦形しつつ活性エネルギー線の照射によって重合する方法が挙げられる。
【0102】
加熱によって重合する場合、重合温度(加熱温度)は、下限値として、好ましくは23℃であり、より好ましくは50℃であり、さらに好ましくは70℃であり、特に好ましくは80℃であり、最も好ましくは90℃であり、上限値としては、好ましくは150℃であり、より好ましくは130℃であり、さらに好ましくは110℃である。重合温度が23℃未満の場合は、重合に長時間を要し、工業的な生産性が低下するおそれがある。重合温度が150℃を越える場合は、得られる発泡体の孔径が不均一となるおそれや、発泡体の強度が低下するおそれがある。なお、重合温度は、一定である必要はなく、例えば、重合中に2段階や多段階で変動させてもよい。
【0103】
活性エネルギー線の照射によって重合する場合、活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線などが挙げられる。活性エネルギー線としては、好ましくは、紫外線、可視光線であり、より好ましくは、波長が200nm〜800nmの可視〜紫外の光である。W/O型エマルションは光を散乱させる傾向が強いため、波長が200nm〜800nmの可視〜紫外の光を用いればW/O型エマルションに光を貫通させることができる。また、200nm〜800nmの波長で活性化できる光重合開始剤は入手しやすく、光源が入手しやすい。
【0104】
活性エネルギー線の波長は、下限値として、好ましくは200nmであり、より好ましくは300nmであり、上限値として、好ましくは800nmであり、より好ましくは450nmである。
【0105】
活性エネルギー線の照射に用いられる代表的な装置としては、例えば、紫外線照射を行うことができる紫外線ランプとして、波長300〜400nm領域にスペクトル分布を持つ装置が挙げられ、その例としては、ケミカルランプ、ブラックライト(東芝ライテック(株)製の商品名)、メタルハライドランプなどが挙げられる。
【0106】
活性エネルギー線の照射を行う際の照度は、照射装置から被照射物までの距離や電圧の調節によって、任意の適切な照度に設定され得る。例えば、特開2003-13015号公報に開示された方法によって、各工程における紫外線照射をそれぞれ複数段階に分割して行い、それにより重合反応の効率を精密に調節することができる。
【0107】
紫外線照射は、重合禁止作用のある酸素が及ぼす悪影響を防ぐために、例えば、熱可塑性樹脂フィルム等の基材の一面にW/O型エマルションを塗工して賦形した後に不活性ガス雰囲気下で行うことや、熱可塑性樹脂フィルム等の基材の一面にW/O型エマルションを塗工して賦形した後にシリコーン等の剥離剤をコートしたポリエチレンテレフタレート等の紫外線は通過するが酸素を遮断するフィルムを被覆させて行うことが好ましい。
【0108】
熱可塑性樹脂フィルムとしては、一面にW/O型エマルションを塗工して賦形できるものであれば、任意の適切な熱可塑性樹脂フィルムを採用し得る。熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルムやシートが挙げられる。
【0109】
不活性ガス雰囲気とは、光照射ゾーン中の酸素を不活性ガスにより置換した雰囲気をいう。したがって、不活性ガス雰囲気においては、できるだけ酸素が存在しないことが必要であり、酸素濃度で5000ppm以下であることが好ましい。
【0110】
≪B−4.得られた含水重合体を脱水し、外面の少なくとも一部が無機粒子偏在層の表面である発泡体を形成する工程(IV)≫
工程(IV)では、工程(III)で得られた含水重合体を脱水し、外面の少なくとも一部が無機粒子偏在層の表面である発泡体を形成する。工程(III)で得られた含水重合体中には無機粒子を含有する水相成分が分散状態で存在する。この水相成分を脱水により除去して乾燥することにより、本発明の無機粒子含有発泡体が得られる。この脱水工程において、水相成分の連続油相成分と非混和性である水性流体が、例えば、蒸発することにより取り除かれ、水相成分中に含有されていた無機粒子が水相成分から開放される。これにより、無機粒子が発泡体の外面側の界面または該界面近傍へと移動し、発泡体の外面側の界面または該界面近傍に無機粒子がほぼ均一に濃縮され、厚みが数十μmオーダーの無機粒子偏在層が形成され得る。このようにして、本発明の外面の少なくとも一部が無機粒子偏在層の表面である無機粒子含有発泡体が得られ得る。なお、脱水工程において、水相成分に含まれる無機粒子の全てが発泡体の外面側の界面または該界面近傍に移動するわけではなく、発泡体の連続相中にも無機粒子が含まれ得る。
【0111】
工程(IV)における脱水方法としては、任意の適切な乾燥方法を採用し得る。このような乾燥方法としては、例えば、真空乾燥、凍結乾燥、圧搾乾燥、電子レンジ乾燥、熱オーブン内での乾燥、赤外線による乾燥、またはこれらの技術の組み合わせ、などが挙げられる。
【0112】
工程(IV)における脱水は、好ましくは80℃以上の雰囲気下で行い、より好ましくは100℃以上の雰囲気下で行う。上限値としては、好ましくは150℃であり、より好ましくは140℃である。脱水工程を80℃未満の雰囲気下で行うと、発泡体の外面の少なくとも一部が無機粒子偏在層の表面とならないおそれや、工程(IV)に要する時間が長くなり生産効率が低下するおそれがある。
【0113】
工程(IV)における脱水工程に要する時間は、好ましくは1分〜30分であり、より好ましくは1分〜15分である。脱水工程に要する時間が1分未満では、十分に脱水できないおそれがある。脱水に要する時間が30分を超える場合には、生産性が低下するおそれがある。また、耐熱性を考慮して材料を選択する必要が生じる場合がある。
【0114】
本発明の発泡体は、クッション材、絶縁材、断熱材、防音材、防塵材、濾過材、反射材などをはじめとする無数の用途に適する。
【実施例】
【0115】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。また、「部」は「重量部」を意味する。
【0116】
(分子量測定)
GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により重量平均分子量を求めた。
装置:東ソー(株)製「HLC−8020」
カラム:東ソー(株)製「TSKgel GMHHR−H(20)」
溶媒:テトラヒドロフラン
標準物質:ポリスチレン
【0117】
(平均孔径および各層の厚みの測定)
作製した無機粒子含有発泡体シートをミクロトームカッターで厚み方向に切断したものを測定用試料とした。測定用試料の切断面を低真空走査型電子顕微鏡(日立製、S−3400N)で250倍〜600倍にて撮影した。得られた画像を用いて任意範囲の球状気泡について大きいものから20個の孔の長軸長さ(球状気泡の孔径)および該球状気泡間を貫通する貫通孔の孔径を測定し、その測定値の平均値を平均径とした。また、該画像を用いて無機粒子偏在層の厚みおよび発泡層の厚みを測定した。
【0118】
〔製造例1〕重合性反応シロップ1の調整
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、エチレン性不飽和モノマーとしてアクリル酸2−エチルヘキシル(東亜合成(株)製、以下「2EHA」と略す)からなるモノマー溶液173.2重量部と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとして、アデカ(登録商標)プルロニックL−62(分子量2500、(株)ADEKA製、ポリエーテルポリオール)100重量部と、ウレタン反応触媒として、ジブチル錫ジラウレート(キシダ化学(株)製、以下「DBTL」と略す)0.014重量部とを投入し、攪拌しながら、水素化キシリレンジイソシアネート(武田薬品工業(株)製、タケネート600、以下「HXDI」と略す)12.4重量部を滴下し、65℃で4時間反応させた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.6であった。その後、2ヒドロキシエチルアクリレート(キシダ化学(株)製、以下「HEA」と略す)5.6重量部を滴下し、65℃で2時間反応させ、両末端にアクリロイル基を有する親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップを得た。得られた親水性ポリウレタン系重合体の重量平均分子量は、1.5万であった。得られた親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ100重量部に対して2EHAを39.4重量部、イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社、商品名;IBXA)19重量部、極性モノマーとしてアクリル酸(東亜合成社製、以下、「AA」と略す)8.2重量部を加え、重合反応性シロップ1とした。
【0119】
〔実施例1〕
製造例1で得られた重合反応性シロップ1の100重量部に、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NKエステルA−HD−N)12重量部、反応性オリゴマーとして、ポリテトラメチレングリコール(以下、PTMGと略す)とイソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略す)からなるポリウレタンの両末端がHEAで処理された、両末端にエチレン性不飽和基を有するウレタンアクリレート(分子量3,720)60重量部、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:ルシリンTPO)0.52重量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・ジャパン社製、商品名:イルガノックス1010)0.85重量部を均一混合して連続油相成分(以下、「油相」と称する)とした。
水相成分(以下、「水相」と称する)として、ATO水分散液(石原産業株式会社製、商品名:SN−100D(2次粒子径:85−120nm)、固形分30重量%)84.7重量部にイオン交換水66.1重量部を加えて、固形分16.9重量%としたものを用いた。上記油相100重量部に対して、該水相150.8重量部を常温下、上記油相成分を仕込んだ攪拌混合機内に連続的に滴下供給し、安定なW/O型エマルションを形成させた。なお、水相と油相の重量比は、60.1/39.9であった。
形成から室温下で30分間静置保存したW/O型エマルションを、光照射後の厚みが約310μmとなるように厚み38μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムと略す)上に塗布し連続的にシート状に成形した。更にその上に厚み38μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを被せた。このシートにブラックライト(15W/cm)を用いて光照度5mW/cm(ピーク感度最大波350nmのトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を照射し、厚み約310μmの高含水架橋重合体を得た。次に上面フィルムを剥離し、前記高含水架橋重合体を100℃にて5分間に亘って加熱することによって厚み約300μmの無機粒子含有発泡体を得た。
得られた無機粒子含有発泡体の断面SEM写真(250倍)を図2に示す。図2の断面SEM写真から、実施例1の発泡体の外面の少なくとも一部が無機微粒子偏在層の表面であることを確認した。発泡体の総厚に対する無機粒子偏在層の厚みは19.8%であった。得られた発泡体は、少なくとも片側表面に無機粒子偏在層が形成されていた。
【0120】
〔実施例2〕
実施例1において、水相成分(以下、「水相」と称する)として、ATO水分散液(石原産業株式会社製、商品名:SN−100D(2次粒子径85−120nm)、固形分30重量%)84.6重量部にイオン交換水316.9重量部を加えて固形分6.3重量%としたものを用いたこと、及び、油相100重量部に対して、該水相401.5重量部を常温下、前記油相成分を仕込んだ攪拌混合機内に連続的に滴下供給し、安定なW/O型エマルションを形成させた以外は実施例1と同様の操作により、安定なW/O型エマルションを形成させた。なお、水相と油相の重量比は、80/20であった。
次に、形成から室温下で30分間静置保存したW/O型エマルションを、光照射後の厚みが約200μmとなるように厚み38μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムと略す)上に塗布し連続的にシート状に成形した。更にその上に厚み38μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを被せた。このシートにブラックライト(15W/cm)を用いて光照度5mW/cm(ピーク感度最大波350nmのトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を照射し、厚み約200μmの高含水架橋重合体を得た。次に上面フィルムを剥離し、前記高含水架橋重合体を100℃にて5分間に亘って加熱することによって厚み約130μmの無機粒子含有発泡体を得た。
得られた無機粒子含有発泡体の断面SEM写真(500倍)を図3に示す。図3の断面SEM写真から、実施例2の発泡体の外面の少なくとも一部が無機微粒子偏在層の表面であることを確認した。発泡体の総厚に対する無機粒子偏在層の厚みは14.9%であった。得られた発泡体は、少なくとも片側表面に無機粒子偏在層が形成されていた。
【0121】
〔実施例3〕
実施例2において、前記高含水架橋重合体の上面フィルムを剥離し、80℃にて5分間に亘って加熱した以外は、実施例2と同様の操作により厚み約140μmの無機粒子含有発泡体を得た。
得られた無機粒子含有発泡体の断面SEM写真(600倍)を図4に示す。図4の断面SEM写真から、実施例3の発泡体の外面の少なくとも一部が無機微粒子偏在層の表面であることを確認した。発泡体の総厚に対する無機粒子偏在層の厚みは17.9%であった。得られた発泡体は、少なくとも片側表面に無機粒子偏在層が形成されていた。
【0122】
〔実施例4〕
実施例2において、高含水架橋重合体の上面フィルムを剥離し、130℃にて5分間に亘って加熱した以外は、実施例2と同様の操作により厚み約170μmの無機粒子含有発泡体を得た。
得られた無機粒子含有発泡体の断面SEM写真(450倍)を図5に示す。図5の断面SEM写真から、実施例4の発泡体の外面の少なくとも一部が無機微粒子偏在層の表面であることを確認した。発泡体の総厚に対する無機粒子偏在層の厚みは11.5%であった。得られた発泡体は、少なくとも片側表面に無機粒子偏在層が形成されていた。無機粒子偏在層が形成された表面とは反対の発泡体表面には、無機粒子偏在層は観察されなかった。
【0123】
〔実施例5〕
実施例2において、高含水架橋重合体の上面フィルムを剥離し、130℃に30分間に亘って加熱した以外は、実施例2と同様の操作により厚み約200μmの無機粒子含有発泡体を得た。
得られた無機粒子含有発泡体の断面SEM写真(370倍)を図6に示す。図6の断面SEM写真から、実施例5の発泡体の外面の少なくとも一部が無機微粒子偏在層の表面であることを確認した。発泡体の総厚に対する無機粒子偏在層の厚みは7.6%であった。得られた発泡体は、少なくとも片側表面に無機粒子偏在層が形成されていた。
【0124】
(比較例1)
実施例1において、水相成分として、イオン交換水を用いたこと、及び、油相100重量部に対して、該水相376.2重量部を常温下、前記油相成分を仕込んだ攪拌混合機内に連続的に滴下供給し、安定なW/O型エマルションを形成させた以外は実施例1と同様の操作により、安定なW/O型エマルションを形成させた。なお、水相と油相の重量比は、79/21であった。
得られたW/O型エマルションを用いた以外は実施例1と同様の操作により、厚さ約251μmの発泡体を得た。得られた発泡体の断面SEM写真(200倍)を図7に示す。図7の断面SEM写真からわかるように、得られた発泡体は、表面に無機粒子偏在層を有さないものであった。
【0125】
【表1】

【0126】
図2〜6から明らかなように、本発明の発泡体は、連続気泡構造を有しており、少なくとも片側の外面の少なくとも一部が無機粒子が偏在した無機粒子偏在層の表面であった。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の無機粒子含有発泡体は、クッション材、絶縁、断熱材、防音材、防塵材、濾過材、反射材などをはじめとする無数の用途に適する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を有する発泡体であって、
該発泡体の外面の少なくとも一部が、無機粒子を含有する無機粒子偏在層の表面である、無機粒子含有発泡体。
【請求項2】
前記無機粒子含有発泡体を構成する球状気泡の平均気泡径が20μm未満である、請求項1に記載の無機粒子含有発泡体。
【請求項3】
前記隣接する球状気泡間の貫通孔が5μm以下である、請求項1または2に記載の無機粒子含有発泡体。
【請求項4】
前記無機粒子の平均粒子径が1nm〜500nmである、請求項1から3のいずれかに記載の無機粒子含有発泡体。
【請求項5】
前記無機粒子含有発泡体の総厚みに対する前記無機粒子偏在層の厚みが40%未満である、請求項1から4のいずれかに記載の無機粒子含有発泡体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の無機粒子含有発泡体を製造する方法であって、下記の工程(I)から(IV)を含む、無機粒子含有発泡体の製造方法:
(I)連続油相成分および無機粒子を含む水相成分を用いてW/O型エマルションを調製する工程、
(II)得られたW/O型エマルションを賦形する工程、
(III)賦形されたW/O型エマルションを重合し、含水重合体を得る工程、
(IV)含水重合体を脱水し、発泡体の外面の少なくとも一部が無機粒子偏在層の表面である発泡体を形成する工程。
【請求項7】
前記工程(IV)において、80℃以上の雰囲気下で脱水を行うことを特徴とする、請求項6に記載の無機粒子含有発泡体の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−14717(P2013−14717A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149680(P2011−149680)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】