説明

無機系白色導電性粉末の製造方法、無機系白色導電性粉末及びポリマー組成物

【課題】樹脂などのポリマーに対する分散性に優れ、かつポリマー等に配合した場合に酸化亜鉛の量を低減させて高い導電性を付与することができる無機系白色導電性粉末を得る。
【解決手段】亜鉛塩の酸性水溶液中に無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子を分散させる工程と、無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子の分散液に、アルカリ性水溶液を添加して酸化亜鉛を析出させ、前記無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子の表面に酸化亜鉛を担持する工程と、酸化亜鉛を担持した無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子を還元性雰囲気下で焼成し、表面に担持した酸化亜鉛に導電性を付与する工程とを備えることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックやゴム等に充填することにより、導電性を付与することができる無機系白色導電性粉末の製造方法、及び無機系白色導電性粉末並びにそれを含有したポリマー組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、導電性を有する酸化亜鉛が知られている。このような酸化亜鉛は、アルミニウムなどの金属イオンをドープし、予め大気雰囲気下で仮焼するなどの熱処理後、還元性雰囲気下で焼成して酸化亜鉛に導電性を付与している。このような導電性酸化亜鉛は、例えば、絶縁体である各種ゴムや樹脂に充填剤として添加され、各種OA機器、複写機用帯電ロール、帯電防止材などの工業用途、医療用途など様々な分野で導電性付与剤として用いられている。
【0003】
一方、従来から代表的な導電性付与剤として、カーボンブラックが知られている。しかしながら、カーボンブラックは黒色であり、カラフルな着色が必要とされる用途には用いることができないという問題がある。また、カーボンブラックは、超微細粒子が凝集して二次粒子を構成しているため、ゴム及び樹脂への分散が難しく、用途毎に分散技術の改良が必要であり、安定して導電性を発現させることが求められている。
【0004】
導電性酸化亜鉛は、白色系の導電性付与剤であるので、カラフルな着色が可能であり、種々検討されている(例えば特許文献1〜3など)。
【0005】
従って、導電性酸化亜鉛は、白色導電性粉末として検討されており、ゴム等への配合時の分散不良等による操作性の改善や、ばらつきのない安定した導電性の発現が求められている。
【特許文献1】特公昭62−41171号公報
【特許文献2】特開2000−53420号公報
【特許文献3】特開2004−83614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、分散性に優れ、かつ酸化亜鉛の量を低減させることができる無機系白色導電性粉末の製造方法、該製造方法により得られる無機系白色導電性粉末並びに該無機系白色導電性粉末を含有したポリマー組成物に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無機系白色導電性粉末の製造方法は、亜鉛塩の酸性水溶液中に無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子を分散させる工程と、無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子の分散液に、アルカリ性水溶液を添加して酸化亜鉛を析出させ、無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子の表面に酸化亜鉛を担持する工程と、酸化亜鉛を担持した無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子を還元性雰囲気下で焼成し、表面に担持した酸化亜鉛に導電性を付与する工程とを備えることを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子の酸性水溶液中の分散液に、アルカリ性水溶液を添加して酸化亜鉛を析出させ、無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子の表面に酸化亜鉛を担持し、次いで還元性雰囲気下で焼成し、表面に担持した酸化亜鉛に導電性を付
与し、無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子の表面に導電性酸化亜鉛を担持させた無機系白色導電性粉末を製造することができる。本発明に従い、製造された無機系白色導電性粉末は、無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子の表面に導電性酸化亜鉛を担持するものであり、プラスチックやゴムなどのポリマー等に配合した際に、分散性に優れている。また、良好な導電性を付与することができ、導電性酸化亜鉛を単独で配合する場合に比べ、配合物中における酸化亜鉛の量を低減させることができる。
【0009】
酸化亜鉛の導電性は、酸化亜鉛にアルミニウムをドープすることにより高めることができる。本発明の製造方法においては、無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子中のアルミニウム成分を、その表面に担持された酸化亜鉛中にドープさせることができる。これは、亜鉛塩の酸性水溶液中に無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子を分散させた際に、無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子中のアルミニウム成分の一部が溶出し、アルカリ性水溶液を添加して酸化亜鉛を析出させる際に、このアルミニウム成分が、酸化亜鉛中に取り込まれることによるものと思われる。従って、本発明の製造方法によれば、酸化亜鉛中にドープするためのアルミニウム成分を別途添加することなく、酸化亜鉛に高い導電性を付与することができる。
【0010】
また、本発明の製造方法においては、酸化亜鉛にドープさせるアルミニウム成分を別途添加してもよい。すなわち、酸性水溶液中にアルミニウム塩を共存させるか、あるいは、酸化亜鉛を析出させた後に、アルミニウム塩を添加することにより、該アルミニウム塩からのアルミニウム成分を、酸化亜鉛にドープしてもよい。
【0011】
本発明においては、亜鉛塩の酸性水溶液中に無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子を分散させる。亜鉛塩の酸性水溶液は、例えば、酸性水溶液中に、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛などを添加して調製することができる。酸化亜鉛としては、各種工業原料として用いられている亜鉛華を用いてもよい。酸性水溶液としては、塩酸、硫酸、硝酸などの水溶液が挙げられる。また、塩化亜鉛などの水溶性亜鉛化合物を酸性水溶液中に添加して調製してもよい。
【0012】
本発明においては、上記のようにして調製した亜鉛塩の酸性水溶液中に、無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子を分散させる。無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子としては、例えば、カオリナイト(板状)、ハロイサイト(球状または管状)、パイロフィライト(板状)、セリサイト(板状)などの粘土鉱物を500〜900℃で熱処理(焼成)して得られたものが挙げられる。
【0013】
本発明においては、上記のようにして、無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子を分散させた亜鉛塩の酸性水溶液中に、アルカリ性水溶液を添加して酸化亜鉛を析出させ、無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子の表面に酸化亜鉛を担持させる。アルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムなどの水溶液が挙げられる。
【0014】
本発明においては、上記のようにして酸化亜鉛を担持させた無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子を還元性雰囲気下で焼成し、表面に担持した酸化亜鉛に導電性を付与する。還元性雰囲気としては、水素、アンモニアまたは一酸化炭素等の還元性ガスを含んだアルゴンまたは窒素ガスなどの一般的な還元性雰囲気が挙げられる。焼成温度としては、500〜800℃の範囲であることが好ましく、焼成時間は、10〜120分間の範囲であることが好ましい。
【0015】
還元性雰囲気下で焼成することにより、表面に担持した酸化亜鉛が、還元された酸化亜鉛となり、導電性を発現する。また、酸化亜鉛中には、上述のように、無水珪酸アルミニ
ウム塩鉱物粒子からのアルミニウム成分、または別途添加したアルミニウム塩からのアルミニウム成分が含有されており、このアルミニウム成分が酸化亜鉛中にドープされることにより、より高い導電性が発現される。
【0016】
アルカリ性水溶液を添加して酸化亜鉛を無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子の表面に析出させ担持させた後、一般には十分に水洗を行い、脱水・乾燥した後、粉砕して上記のように焼成する。
【0017】
本発明の無機系白色導電性粉末は、上記本発明の製造方法により製造されたことを特徴としている。
【0018】
本発明の無機系白色導電性粉末は、導電性を有する酸化亜鉛が表面に担持された無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子であり、ベース本体である無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子に起因する良好な分散性を有している。従って、ゴムやプラスチックなどのポリマー中に良好な状態で分散させることができる。また、表面に導電性を有する酸化亜鉛を担持しているので、本発明の無機系白色導電性粉末を配合することにより、配合物中で粉末表面が互いに接触し、良好な導電性経路が配合物中に形成される。このため、配合物に良好な導電性を付与することができる。また、導電性酸化亜鉛を単独で配合した場合に比べ、配合物中における酸化亜鉛の量を低減させることができる。
【0019】
本発明の無機系白色導電性粉末においては、ZnOと無水珪酸アルミニウム塩鉱物中のAlとのモル比(ZnO/Al-)が2.0〜15.0となるようZnOが
無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子表面に担持されていることが好ましい。ZnO/Alのモル比は、さらに好ましくは、4.0〜11.0であり、さらに好ましくは、5.0〜9.0である。モル比が小さ過ぎると、表面に担持させる酸化亜鉛の量が少なくなるため、良好な導電性が得られない場合がある。また、モル比を大きくし過ぎても、導電性性能の向上はそれに比例して認められず、また無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子に担持されないフリーの酸化亜鉛の量が増加し、製造工程におけるロスや作業性が劣るとともに、分散性が悪くなるなどの問題を生じる。
【0020】
本発明の無機系白色導電性粉末のBET比表面積は、5〜60m/gであることが好ましく、さらに好ましくは、10〜50m/gである。BET比表面積が低くなり過ぎると、配合物中において導電性粉末粒子同士の接触による導電回路が形成されず、安定した導電性を得るためには、導電性粉末の多量配合が必要となる。BET比表面積が高くなり過ぎると、配合時の分散性が劣るほか、無機系白色導電性粉末の製造において、導電性成分となる酸化亜鉛の歩留まり減少などの操業性が劣るなど、経済的メリットが得難くなる。
【0021】
本発明のポリマー組成物は、上記本発明の無機系白色導電性粉末を用いることができ、ポリマー100重量部に対して、5〜200重量部配合したことを特徴としている。
【0022】
本発明のポリマー組成物は、上記本発明の無機系白色導電性粉末を分散性良く含有するものであるので、良好な導電性を有する。また、白色の導電性粉末を含有するものであるので、着色することができ、各種OA機器、複写機用帯電ロール、帯電防止材などの工業用途や医療用途などの様々な分野で用いることができる。
【0023】
ポリマーとしては、天然ゴム、合成ゴム、合成樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、天然ゴムとは、天然植物から得られるゴム上高分子物質であり、化学構造的に、シス−1,4−ポリイソプレン構造を有するものであれば、形状、色調などは特に限定されない。合成ゴムとしては、例えばイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエン
ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロロヒドリンゴム、多硫化ゴムなどを例示することができる。合成樹脂としては、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の双方を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えばポリプロピレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA),エチレン−プロピレン共重合体、プロピレンホモポリマー、エチレン−プロピレンゴム、ポリブテン、ブチルゴム、HIPS、PS、ABS、塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、MMA−スチレン共重合体、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12、ポリアミド46等のポリアミド樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、PBT、PET等のポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリルエーテルケテン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、フッ素樹脂、ポリウレタン、アイオノマー、塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、ポリジシクロペンタジエン、メチルペン樹脂、ポリアクリロニトリル繊維素樹脂等などを例示することができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、アリルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂及びこれらのハロゲン化物等のエポキシ樹脂、ポリウレタン(注型品用)、フラン樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン樹脂、尿素樹脂、アリル樹脂(DAP)、ポリイミド、ケイ素樹脂(含常温硬化)、などを例示することができる。熱硬化性エラストマーとしては、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、塩素系熱可塑性エラストマー、エンジニアリングプラスチックス系エラストマーなどを例示することができる。
【0024】
本発明の無機系白色導電性粉末の含有量は、上述のように、好ましくは、ポリマー100重量部に対して、5〜200重量部である。また、本発明の無機系白色導電性粉末は、必要に応じてケッチェンブラックなど、他の導電性粉末と併用することができる。配合量が5重量部未満であると、安定した導電性能を付与することが困難であり、200重量部を超えると、配合量に比例した導電性能の向上が望めず不経済となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、分散操作性に優れ、かつ配合物中における酸化亜鉛の量を低減させることができる無機系白色導電性粉末を製造することができる。
【0026】
本発明の無機系白色導電性粉末は、ゴムやプラスチック、塗料などのポリマー中において、分散操作性に優れ、市販の導電性酸化亜鉛粉末に比べて比重が小さく、ポリマー中に配合しやすい無機系白色導電性粉末である。また、ポリマー中における酸化亜鉛の量を少なくすることができ、経済的に優れた無機系白色導電性粉末である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
高速攪拌機付きポリ容器に、36重量%塩酸2025.6gをとり、イオン交換水2.0kgを加えた後、亜鉛華2種813.9gを加えて溶解した。さらに、イオン交換水15.0kgを加えた後、予め調製しておいた45.0重量%の焼成カオリンのスラリー740gを添加して、20分間攪拌分散させた。次に、攪拌下に、16.0重量%の水酸化ナトリウム水溶液5.0kgを60分間かけて添加し、添加完了後60分間攪拌処理した。その後、希釈、静置、上水カットの水洗工程を繰り返して、十分に水洗し、脱水した後、105℃で乾燥し、これを粉砕して、酸化亜鉛担持無水珪酸アルミニウム塩鉱物の粉末を得た。
【0029】
得られた酸化亜鉛担持無水珪酸アルミニウム塩鉱物粉末を、水素−窒素混合ガスの雰囲気下で700℃、20分間焼成し、これによって表面に担持した酸化亜鉛に導電性を付与し、導電性酸化亜鉛を担持した無水珪酸アルミニウム塩鉱物粉末を得た。
【0030】
〔粉末の体積抵抗率の測定〕
得られた導電性酸化亜鉛担持無水珪酸アルミニウム塩鉱物粉末の体積抵抗率を測定した。底部を金属で封止した内径7.0mmの絶縁パイプに試料粉末0.1gを充填した後、上部から金属棒を挿入し、ハンドプレスを用いて荷重100kgf/cmになるように加圧して成形し、テスターを用いて抵抗値を測定し、粉末の体積抵抗率とした。測定結果を表1に示す。
【0031】
〔BET比表面積の測定〕
得られた導電性酸化亜鉛担持無水珪酸アルミニウム塩鉱物粉末のBET比表面積を、マイクロメリテック社製流動式比表面積測定装置により測定した。測定結果を表1に示す。
【0032】
〔粉末を配合したゴムシートの体積抵抗率の測定〕
得られた導電性酸化亜鉛担持無水珪酸アルミニウム塩鉱物粉末を、以下に示す配合で、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)に配合した。導電性粉末の配合割合は、表2に示す通りである。なお、( )内はZnOとしての配合割合を示している。
【0033】
基材ゴム :EPDM(JSR製EP−21) 100.0
充填剤 :導電性粉末 変量
加硫剤 :粉末硫黄(細井化学社製) 1.75
加硫促進剤:ノクセラ−NS−G(大内新興化学社製) 1.0
加硫促進剤:ノクセラ−BZ(大内新興化学社製) 1.0
加硫助剤 :ポリエチレングリコール(和光純薬製、試薬1級) 1.0
上記に配合に従って、EPDMに各材料をロール機で分散して配合した。得られた未加硫ゴムシートを金型にセットして、160℃で20分間プレス加硫を行い、導電性ゴムシートを得た。
【0034】
得られたゴムシートについて、引張強さ、伸び、硬さ、永久伸び、及び比重を測定するとともに、デジタル超高抵抗計(アドバンテスト社製)を用いて体積抵抗率を測定した。測定結果を表2に示す。
【0035】
なお、ロール混練する際の混練操作性について、◎:良好、〇:良、×:不良で評価し、表2に示した。
【0036】
(実施例2)
実施例1と同様にして、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、無水珪酸アルミニウム塩鉱物粉末の表面に酸化亜鉛を担持させた後、水洗し、水洗後のものを高速攪拌機付きステンレス製反応槽に入れ、イオン交換水を加えて全量10リットルとした後、攪拌下で10重量%硫酸アルミニウム水溶液400gと、7重量%炭酸水素アンモニウム水溶液4.06kgの混合液を添加し、70℃に加温して60分間攪拌処理した。得られたものを希釈・静置・上水カットの水洗工程を繰り返して十分に水洗した後、脱水し、105℃で乾燥
し、粉砕して酸化亜鉛を担持した無水珪酸アルミニウム塩鉱物粉末を得た。
【0037】
得られた酸化亜鉛担持無水珪酸アルミニウム塩鉱物粉末を、水素−窒素混合ガスの雰囲気下で、600℃、60分間焼成し、酸化亜鉛に導電性を付与して、導電性を有する酸化亜鉛担持無水珪酸アルミニウム塩鉱物粉末を得た。
【0038】
得られた導電性粉末について、実施例1と同様にして粉末の体積抵抗率、BET比表面積、ゴムシートへの配合試験を行い、それぞれの結果を表1及び表2に示した。
【0039】
(実施例3)
実施例1において、45.0重量%の焼成カオリンのスラリー添加量を1.480kgとする以外は、実施例1と同様にして、導電性を有する酸化亜鉛担持無水珪酸アルミニウム塩鉱物粉末を得た。得られた導電性粉末について、体積抵抗率、BET比表面積を測定し、結果を表1に示した。
【0040】
(実施例4)
実施例1において、45.0重量%の焼成カオリンのスラリー添加量を1.112kgとする以外は、実施例1と同様にして、導電性を有する酸化亜鉛担持無水珪酸アルミニウム塩鉱物粉末を得た。得られた導電性粉末について、体積抵抗率、BET比表面積を測定し、結果を表1に示した。
【0041】
(実施例5)
実施例1において、45.0重量%の焼成カオリンのスラリー添加量を556.0gとする以外は、実施例1と同様にして、導電性を有する酸化亜鉛担持無水珪酸アルミニウム塩鉱物粉末を得た。得られた導電性粉末について、体積抵抗率、BET比表面積を測定し、結果を表1に示した。
【0042】
(実施例6)
実施例1において、45.0重量%の焼成カオリンのスラリー添加量を444.4gとする以外は、実施例1と同様にして、導電性を有する酸化亜鉛担持無水珪酸アルミニウム塩鉱物粉末を得た。得られた導電性粉末について、体積抵抗率、BET比表面積を測定し、結果を表1に示した。
【0043】
(比較例1)
高速攪拌機付きステンレスタンクに、イオン交換水4.6kgを入れ、酸化亜鉛813.9gを加えて攪拌分散して、15重量%懸濁液を調製した。この懸濁液に10重量%の硫酸アルミニウム水溶液406.9gと10重量%炭酸水素アンモニウム水溶液2.845kgとの混合液を添加し、60℃に加温して60分間攪拌した。生成物は、希釈・静置・上水カットの水洗工程を繰り返して十分に水洗した後、脱水し、105℃で乾燥して粉砕し、酸化亜鉛の白色粉末を得た。
【0044】
得られた酸化亜鉛粉末を、大気下500℃で仮焼した後、水素−窒素混合ガスの雰囲気下で800℃、60分間焼成して、導電性を発現させ、導電性酸化亜鉛粉末を得た。
【0045】
得られた導電性酸化亜鉛粉末について、体積抵抗率、BET比表面積を測定し、結果を表1に示した。また、得られた導電性酸化亜鉛粉末について、ゴムシートへの配合試験を行い、その結果を表2に示した。
【0046】
(比較例2)
市販の導電性酸化亜鉛(市販品A:BET比表面積5m/g)を用い、上記と同様に
して体積抵抗率及びBET比表面積を測定し、さらにゴムシートへの配合試験を行い、その結果を表1及び表2に示した。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
表1に示すように、酸化亜鉛の担持量が多い導電性粉末、すなわちZnO/Alのモル比が高い導電性粉末の方が高い体積抵抗率を示すことがわかる。また、導電性酸化亜鉛粉末単独である比較例1の体積抵抗率は、本発明に従う実施例1〜6の導電性粉末よりも低い体積抵抗率を示している。しかしながら、表2に示すように、ゴムシートに配合した場合、本発明に従う実施例1及び実施例2の導電性粉末を用いたゴムシートは、導電性酸化亜鉛を配合した比較例1及び比較例2のものよりも低い体積抵抗率を示しており、導電性に優れていることがわかる。
【0050】
また、本発明に従う実施例1及び実施例2の導電性粉末は、酸化亜鉛粉末である比較例1及び比較例2に比べ、ロール混練操作性に優れていることがわかる。また、得られたゴムシートの外観から、本発明に従う実施例1及び実施例2の導電性粉末は、比較例1及び比較例2に比べ分散状態が良好であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛塩の酸性水溶液中に無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子を分散させる工程と、
前記無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子の分散液に、アルカリ性水溶液を添加して酸化亜鉛を析出させ、前記無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子の表面に酸化亜鉛を担持する工程と、
前記酸化亜鉛を担持した無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子を還元性雰囲気下で焼成し、表面に担持した酸化亜鉛に導電性を付与する工程とを備えることを特徴とする無機系白色導電性粉末の製造方法。
【請求項2】
前記無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子のアルミニウム成分が、前記表面に担持された酸化亜鉛中にドープされていることを特徴とする無機系白色導電性粉末の製造方法。
【請求項3】
前記酸性水溶液中にアルミニウム塩を共存させるか、あるいは前記酸化亜鉛を析出させた後にアルミニウム塩を添加することにより、該アルミニウム塩からのアルミニウム成分が、前記表面に担持された酸化亜鉛にドープされていることを特徴とする請求項1に記載の無機系白色導電性粉末の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法で製造されたことを特徴とする無機系白色導電性粉末。
【請求項5】
無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子中のAlに対するZnO/Alのモル比で2.0〜15.0となるように酸化亜鉛が担持されていることを特徴とする請求項4に記載の無機系白色導電性粉末。
【請求項6】
BET比表面積が5〜60m/gであることを特徴とする請求項4または5に記載の無機系白色導電性粉末。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の無機系白色導電性粉末を、ポリマー100重量部に対して、5〜200重量部配合したことを特徴とするポリマー組成物。

【公開番号】特開2008−78110(P2008−78110A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49098(P2007−49098)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【特許番号】特許第4021465号(P4021465)
【特許公報発行日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(593119527)白石カルシウム株式会社 (17)
【Fターム(参考)】