説明

無機系造核剤含有樹脂組成物、その成形品及びその製造方法

【課題】室温以上の高温領域で高い弾性率を有し、氷点以下の低温領域で耐衝撃性に優れ、かつ臭気が食品用途に耐えるレベルにあり、比重増加による容積単価を最小限に抑制した無機系造核剤含有樹脂組成物、該組成物を少なくとも一層に用いた多層構造体などを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、(a)プロピレン連鎖部分のアイソタクチック・ペンタッド分率が0.95以上のプロピレン単独重合体、(b)エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム0.5〜15質量%、(c)高密度ポリエチレン0〜20質量%、及び(d)無機系造核剤:(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計量100質量部に対し0.4〜3.0質量部からなる組合せを含み、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムの密度が840〜900kg/m3であることを特徴とする無機系造核剤含有樹脂組成物(A)、および該組成物を少なくとも一層に用いた多層構造体などが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温以上の高温領域で高い弾性率を有し、氷点以下の低温領域で耐衝撃性に優れ、かつ臭気が食品用途に耐えるレベルにあり、比重増加を最小限に抑制した無機系造核剤含有樹脂組成物、該組成物を少なくとも一層に用いることにより、高い重量削減率を達成し得る多層構造体、これを熱成形して得られる容器、射出成形品、押出成形品及びこれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願発明の組成に比較的近く、タルク等の無機質充填材(フィラー)を剛性改良材として活用し、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムを併用するプロピレン系樹脂組成物が開示されている(特許文献1〜4等)。
しかし、剛性及び耐衝撃性のバランスはある程度向上するものの、比重が過大になる欠点があり、臭気が許容範囲を超える懸念もある。
また、耐衝撃性のブロックポリプロピレン(B−PP)をベースにエチレン−プロピレンゴム(EPR)20〜30質量%及びタルク10質量%前後からなる複合強化ポリプロピレンが自動車用に広く用いられていることは公知である(非特許文献1等)。
更に、タルクを使用しないで、エチレン−ブテンゴム(EBR)及び造核剤を添加する系、EBRと造核剤又はエチレン−α−オレフィン(C4〜C20)ゴムを予備混合する系等も知られている(特許文献5〜7等)。
これらの系では、一定の剛性の向上は図れるものの、耐衝撃性が十分に発現しないという本質的な問題点が存在する。
タルクは結晶性の熱可塑性樹脂に対して、結晶造核剤として作用することは公知であるが、ポリプロピレンをベースとする系に微量添加する提案は少ない。
例えば、自動車内装材等の後収縮性の低減や内部視認性の確保のために、透明性維持を目的として添加する程度である(特許文献8等)。
一方、ポリプロピレン成形品の剛性及び耐衝撃性向上のために、高立体規則性ポリプロピレンにα晶造核剤を添加すると効果的であり(特許文献9等)、ブロックポリプロピレン(B−PP)の剛性及び低温衝撃強度を改善するために、結晶化核剤とタルクを作用して配合することも有効である(特許文献10等)。
ポリプロピレンの耐衝撃性、流動性、高剛性向上、白色破壊性向の低減を課題として、高立体規則性ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、微粉タルクからなる組成物が提案されている。
その作用効果としては、ポリプロピレンの極めて高い剛性、流動性、耐衝撃性を兼備し、容易に加工処理することができ、更にホワイトフラクチャー、白色破壊の性向を殆ど示さないことが開示されている(特許文献11等)。
しかし、ポリプロピレンの耐衝撃性を一定水準以上に保ちながら、その弾性率の向上を図ることにより、成形品の薄肉化と高い重量削減率を達成するという本願発明の目的には、上記組成物は適したものではない。
耐衝撃性、透明性、殺菌加熱耐熱性等の改善を課題として、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン系重合体及び造核剤からなる特定の組成物が提案されている(特許文献12等)。
しかし、ここで開示されたエチレン-α-オレフィン共重合体は、線状低密度ポリエチレンに相当する密度領域のもののみである。
一方、本願発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体は、エラストマーに該当する密度領域のものであり、上記組成物とは本質的に異なる上、本願発明の目的とする低温耐衝撃性を維持し、かつ高い重量削減率を達成するためには、線状低密度ポリエチレンの多量使用は好ましくない。
軽量かつ剛性に優れたポリプロピレン成形体を得る目的で、高立体規則性ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体エラストマー及び充填材からなる特定の組成物が提案されている(特許文献13等)。
ここで、実施態様として開示され、充填材として用いられているタルクの使用量は5重量%及び10重量%であり、本願発明の使用量領域とは異なる上、充填材としての使用であり技術的思想が異なるものである。
本願発明では、タルク等の無機系物質をより少ない特定の使用量域において用い、ポリプロピレン結晶の造核効果を主に期待するものであり、少ない使用量が故に充填材として用いる際の臭気発生、外観悪化等のデメリットを回避し得るものである。
【0003】
レトルト食品等の容器は、耐熱性、剛性、低温耐衝撃性、低臭性及び軽量性等が要求される。
例えば、密閉した容器を加圧又は減圧条件下におくと、容器が凹む場合があると共に、氷点以下での低温流通過程では衝撃に耐えられない等の問題点がある。
容器の軽量化には、薄肉化と共に高剛性化を図ることが考えられ、高剛性化を達成するために、無機質フィラーを配合する発明がなされている(特許文献14〜18等)。
しかし、無機質フィラーを多量に配合すると耐熱性及び剛性は向上するものの、比重の増加や無機質フィラー充填に伴う異臭の発生等の問題が起こる場合があり、又、一般に低温領域での耐衝撃性を維持することは困難である。
容器等の場合には、耐熱性の維持と同時に易開封性が要望されることから、蓋材をシールした層が容易に剥離する機能を付与する発明がなされている(特許文献19〜23等)。
しかし、剥離機能を付与するために樹脂層を設けると、耐熱性や剛性が犠牲になる場合がある(特許文献19〜21等)。
この問題を解決するために、耐熱性の高いポリオレフィンを用いることも提案されている(特許文献22〜23等)が、ポリプロピレン系樹脂層の剛性が不足し、全体としての剛性が低下する場合がある。
ポリプロピレン系樹脂層の剛性を向上させるために、一般に、ポリプロピレンの立体規則性を高める等の分子構造制御、二軸延伸を行う等の高次構造制御及び結晶造核剤を配合することも行われている。
このポリプロピレンの分子構造制御には限界があり、二軸延伸等の高次構造制御では一般的な熱成形が困難となること、又、有機系造核剤の配合は臭気性揮発分の発生が回避できない等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−263960号公報
【特許文献2】特許2839840号
【特許文献3】特開平10−273569号公報
【特許文献4】特開2003−183460号
【特許文献5】特許第3115766号
【特許文献6】特開平11−1599号公報
【特許文献7】特開平11−209532号公報
【特許文献8】特開平6−287364号公報
【特許文献9】特開平9−194652号公報
【特許文献10】特許1782354号
【特許文献11】特開平10−120849号公報
【特許文献12】特許3506538号
【特許文献13】特許3472933号
【特許文献14】特開平11−293059号公報
【特許文献15】特開平11−240986号公報
【特許文献16】特開平11−29661号公報
【特許文献17】特開平8−156201号公報
【特許文献18】特開2000−336218号公報
【特許文献19】特公平7−2409号公報
【特許文献20】特許第2965825号公報
【特許文献21】特開平6−71824号公報
【特許文献22】特許第3124206号公報
【特許文献23】特開平10−291561号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】野村ら、高分子論文集、Vol50、No.2、81(1993年)
【0006】
本願発明において、タルク等の無機系造核剤の代わりに有機系造核剤を用いると、剛性及び弾性率は一定のレベルに達するが、耐衝撃性の発現が十分でなく、本願発明の基本的な課題である剛性と耐衝撃性のバランス向上は必ずしも達成できないことが判明した。
また、一般に臭気レベルが低いとされるリン含有有機系造核剤は、本願発明の系では臭気の発生が強いことが分かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、室温以上の高温領域で高い弾性率を有し、氷点以下の低温領域で耐衝撃性に優れ、かつ臭気が食品用途に耐えるレベルにあり、比重増加による容積単価を最小限に抑制した無機系造核剤含有樹脂組成物、該組成物を少なくとも一層に用いた多層構造体、これを熱成形して得られる容器及び成形品並びこれらの製造方法を提供することを課題とするものである。
換言すると、臭気発生等の問題点がなく、低温域の耐衝撃性をある一定レベル以上に維持しつつ、常温以上の高温域における弾性率を向上させることにより、成形品の重量削減を図ることが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、プロピレン単独重合体又はプロピレン系ブロック共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム及び無機系造核剤からなる組合せを含む樹脂組成物が、剛性及び耐衝撃性バランスが向上し、低比重で、低臭気であり、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
1.(a)プロピレン連鎖部分のアイソタクチック・ペンタッド分率が0.90以上のプロピレン単独重合体又はプロピレン系ブロック共重合体、(b)(a)成分がプロピレン単独重合体の場合、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム0.5〜15質量%、(a)成分がプロピレン系ブロック共重合体の場合、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム0〜10質量%、(c)高密度ポリエチレン0〜20質量%、及び(d)無機系造核剤:(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計量100質量部に対し0.4〜3.0質量部からなる組合せを含むことを特徴とする無機系造核剤含有樹脂組成物(A)、
2.プロピレン単独重合体又はプロピレン系ブロック共重合体のプロピレン連鎖部分のアイソタクチック・ペンタッド分率が0.95以上である上記1に記載の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)、
3.(a)成分がプロピレン単独重合体の場合、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムが0.5〜10質量%である上記1又は2に記載の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)、
4.エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム中のα−オレフィン単位の炭素数が4〜12である上記1〜3のいずれかに記載の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)、
5.エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムの密度が840〜900kg/m3である上記1〜4のいずれかに無機系造核剤含有樹脂組成物(A)、
6.高密度ポリエチレンが、密度935kg/m3以上であり、1〜20質量%含有する上記1〜5のいずれかに記載の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)、
7.無機系造核剤がタルクである上記1〜6のいずれかに記載の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)、
8.総厚みが200μm以上の多層構造体であって、前記多層構造体の少なくとも一層が、上記1〜7のいずれかに記載の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)からなり、かつ該樹脂組成物層の厚みが総厚みの50%以上であることを特徴とする多層構造体、
9.総厚みが200μm以上の多層構造体であって、前記多層構造体の少なくとも一層が、上記1〜7のいずれかに記載の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)からなり、かつ該樹脂組成物層の厚みが総厚みの50%以上であると共に、プロピレン系樹脂又はプロピレン系樹脂組成物(B)からなる表面層と、該表面層と隣接し、プロピレン系樹脂80質量%未満及びプロピレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂20質量%以上の組合せを含む樹脂組成物又は樹脂(C)からなり、厚みが総厚みの0.1〜10%である剥離機能層を備え、前記表面層を含む表層部の剥離強度が少なくとも1.0〜10N/10mm幅であることを特徴とする多層構造体、
10.上記8又は9に記載の多層構造体を熱成形して得られる容器、
11.食品容器である上記10に記載の容器、
12.上記1〜7のいずれかに記載の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)からなる押出成形品、
13.上記1〜7のいずれかに記載の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)からなる射出成形品、
14.ポリオレフィン樹脂を基材とし、(d)成分を高濃度に含有するマスターバッチを予め調製後、これとその他の成分とをドライブレンドした原料を用いることにより、上記1〜7のいずれかに記載の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)からなる成形品を得る製造方法、
15.成形品が多層構造体である上記14に記載の成形品の製造方法、
16.成形品が容器である上記14に記載の成形品の製造方法、
17.成形品が押出成形品である上記14に記載の成形品の製造方法、
18.成形品が射出成形品である上記14に記載の成形品の製造方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプロピレン単独重合体又はプロピレン系ブロック共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム及び無機系造核剤からなる組合せを含む無機系造核剤含有樹脂組成物は、剛性及び耐衝撃性バランスに優れ、低比重で、かつ臭気の発生がなく、かつ安価である。
本願組成物を用いることにより、臭気発生等の問題点がなく、低温域の耐衝撃性をある一定レベル以上に維持し、常温以上の高温域における弾性率が向上し、最終的に成形品の重量削減を図ることが可能であるため、成形品製造のコストダウンと共に、成形品が所定の役割を終え廃棄される際には減容化が達成できるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】は、本発明の多層構造体の一例の断面図である。
【図2】は、本発明の容器における多層構造体の一例の上面図(a)及び断面図(b)である。
【図3】は、S値、−5℃落錘衝撃強度(Y軸)及び80℃弾性率(X軸)との関係を示す概念図である。
【図4】は、成形品の重量削減率に及ぼす平均粒径4.9μmのタルク含有量の効果を示している(表5の実施例13〜15、比較例18〜20参照)。
【図5】は、成形品の重量削減率に及ぼす平均粒径1.0μmのタルク含有量の効果を示している(表6の実施例27〜29、比較例24〜26参照)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)において、(a)成分として、プロピレン連鎖部分のアイソタクチック・ペンタッド分率が0.90以上のプロピレン単独重合体又はプロピレン系ブロック共重合体が用いられる。
プロピレン系ブロック共重合体としては、例えば、プロピレン単独重合体からなるホモ部とエチレン単位の含有量の比較的多いエチレン−プロピレンランダム共重合体からなる共重合体部とから構成されたプロピレン系ブロック共重合体、或いは前記プロピレン系ブロック共重合体における各ホモ部又は共重合部が、ブテン−1等のα−オレフィンを共重合したものからなる結晶性プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0013】
本発明においては、前記プロピレン系ブロック共重合体やプロピレン単独重合体は、剛性及び耐熱性等の面から、アイソタクチック・ペンタッド分率が、0.95以上であることが好ましい。
ここで、アイソタクチック・ペンタッド分率とは、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に発表されている方法、即ち、13C−NMRを使用して測定されるプロピレン重合体分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すれば、プロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。
但し、NMR吸収ピークの帰属に関しては、Macromolecules,8,687(1975)に基づいて行うものである。
即ち、13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率としてアイソタクチック・ペンタッド分率を測定する。
具体的には、プロピレン単独重合体は、そのままの状態で13C−NMRの測定を行い、プロピレン系ブロック共重合体については、加熱したキシレンに溶解させた後、常温に戻した際の不溶成分について13C−NMRの測定を行なった。
このような高立体規則性のプロピレン単独重合体及びプロピレン系ブロック共重合体は、例えば、チーグラー・ナッタ型触媒等を用いて製造することができる。
メルトフローレートMFR(温度230℃、荷重21.2N)としては、0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜50g/10分の範囲のものを用いることができる。
【0014】
本発明の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)において、(b)成分のエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムとしては、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン又は該α−オレフィン及びジエン系単量体とをランダム共重合させて得られたものを挙げることができる。
炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1等が挙げられる。
好ましくは、炭素数4〜12のα−オレフィンである。
ジエン系単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン化合物、1,4−へキサジエン、1,6−オクタジエン、シクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン等の共役ジエン化合物が挙げられる。
このエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムとしては、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)、エチレン−ブテン−1共重合体ゴム(EBR)、エチレン−ヘキセン−1共重合体ゴム、エチレン−オクテン−1共重合体ゴム(EOR)、エチレン−デセン−1共重合体ゴム、エチレン−ドデセン−1共重合体ゴム等を例示することができる。
なお、これらはいずれも熱可塑性エラストマーに属するものである。
これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。
【0015】
本発明の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)において、(d)成分の無機系造核剤は、ポリプロピレンの結晶化過程における結晶核の生成速度を飛躍的に上昇させるものであり、例えば、タルク、マイカ、カーボンブラック、シリカ、ドロマイト粉、ケイ酸塩、石英粉、珪藻土、アルミナ等が挙げられる。
これらは、単独又は2種以上を組合わせて使用することができる。
ポリプロピレンの結晶化を促進するためには、特に微粉状のタルクが好ましい。
無機系造核剤は、樹脂材料と直接ドライブレンドすることもできるが、無機系造核剤の樹脂中への分散性の観点からは、予めポリプロピレン等の樹脂に高濃度に充填したもの(マスターバッチ)を用いることが好ましい。
例えば、無機系造核剤の濃度として5〜80質量%を含有するマスターバッチを用いることができるが、これに限定されるものではない。
このマスターバッチの作製方法は、一軸又は二軸混練押出機の連続式であっても、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー等を用いるバッチ式であっても、特に制限はなく、ゲレーションによる方法等の公知の方法を用いることができる。
無機系造核剤の高い分散性を確保するには、マスターバッチの段階で十分な分散性を確保しておくことが好ましい。
無機系造核剤は無処理のまま用いてもよいが、界面接着性を向上させ、又、分散性を向上させる目的で、通常知られている各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類又は他の界面活性剤で表面を処理したものを用いることができる。
【0016】
無機系造核剤の粒径には、特に制限はないが、微細であればあるほど造核剤としての効果が大きい。
タルクとしては、平均粒径が、通常15μm以下の微粉末、好ましくは7μm以下の微粉末が用いられる。
現時点で、商業的に入手し得るタルクの中で最小粒径は、1μmのものである。
タルクの平均粒径は、マスターバッチの作製段階及び最終的に使用される成形品の段階で、均一に分散する限りは、剛性、耐衝撃性のバランス面からは小さいほど好ましい。
タルクは、滑石を微粉砕した無機粉末で、含水ケイ酸マグネシウム[Mg3Si410(OH)2]を主成分とするものである。
ここで平均粒径は、レーザー回折法により測定した粒度分布曲線から求めた50%相当粒子径D50のことであり、沈降法(遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて、水、アルコール等の分散媒中に懸濁させて測定した篩下法の積分分布曲線から求めた50%相当粒子径D50)により求めた値に比べて、一般に2〜5倍程度高い値を示す。
タルクの平均粒径が上記の範囲であれば、無機系造核剤含有樹脂組成物(A)における均一分散性を確保したうえで、比較的少量の配合でも造核剤としての効果を十分に発揮できるため、剛性が向上し、組成物の厚みを薄くすることができ、又樹脂組成物中に均一分散することにより、耐衝撃性の低下が少ない。
【0017】
本発明の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)には、二つの態様があり、第1の態様は、前記(a)プロピレン系ブロック共重合体100〜70質量%、(b)エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム0〜10質量%、(c)高密度ポリエチレン0〜20質量%、及び上記(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計量100質量部に対し無機系造核剤0.4〜3.0質量部の組合せを含む組成物である。
無機系造核剤の含有量が、この範囲を逸脱する場合、本願発明の目的とする重量削減率が十分に得られない。
また、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムの含有量がこの範囲を下回ると十分な耐衝撃性が得られず、この範囲を上回ると弾性率が低下することにより目的とする成形品の薄肉化率及び重量削減率の向上が十分に図ることができない。
また、前記4成分の含有割合が上記範囲にあれば、耐熱性、剛性、耐衝撃性等が良好である上、比重の増加、異臭の発生等の問題も生じにくい。
前記4成分の組合せにおいて、好ましい含有割合は、プロピレン系ブロック共重合体が99〜75質量%、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムが0〜5質量%、高密度ポリエチレン1〜20質量%及びこれら樹脂成分の合計量100質量部に対し、無機系造核剤が0.4〜3.0質量部の範囲であり、更に好ましくは、プロピレン系ブロック共重合体が95〜82質量%、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムが0〜3質量%、高密度ポリエチレン5〜15質量%及びこれら樹脂成分の合計量100質量部に対し、無機系造核剤が0.4〜3.0質量部の範囲である。
尚、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムの密度としては、840〜900kg/m3、好ましくは850〜890kg/m3の範囲である。
この範囲を下回ると耐熱性が損なわれ、またこの範囲を上回ると耐衝撃性が十分に得られない。
また、高密度ポリエチレンの密度としては、935kg/m3以上、好ましくは945kg/m3以上である。
この場合、耐熱性が低下することなく、更に剛性及び耐衝撃性のバランスが上昇する。
高密度ポリエチレンの密度がこれらの値を下回ると弾性率の低下をきたし、目的とする成形品の薄肉化率及び重量削減率の向上が十分に得られない。
【0018】
第2の態様は、前記(a)プロピレン単独重合体99.5〜65質量%、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム0.5〜15質量%、高密度ポリエチレン0〜20質量%、及び上記(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計量100質量部に対し(d)無機系造核剤0.4〜3.0質量部の組合せを含む組成物である。
無機系造核剤の含有量が、この範囲を逸脱する場合、本願発明の目的とする重量削減率が十分に得られない。
また、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムの含有量がこの範囲を下回ると十分な耐衝撃性が得られず、この範囲を上回ると弾性率が低下することにより、目的とする成形品の薄肉化率及び重量削減率の向上が十分に図ることができない(表5参照)。
また、前記4成分の含有割合が上記範囲にあれば、耐熱性、剛性、耐衝撃性等が良好である上、比重の増加、異臭の発生等の問題も生じにくい。
前記4成分の組合せにおいて、好ましい含有割合は、プロピレン単独重合体が98〜68質量%、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムが1〜12質量%、高密度ポリエチレン1〜20質量%及びこれら樹脂成分の合計量100質量部に対し、無機系造核剤が0.4〜3.0質量部の範囲であり、更に好ましくは、プロピレン単独重合体93〜75質量%、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム2〜10質量%、高密度ポリエチレン5〜15質量%及びこれら樹脂成分の合計量100質量部に対し、無機系造核剤0.4〜3.0質量部の範囲である。
尚、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムの密度としては、840〜900kg/m3、好ましくは850〜890kg/m3の範囲である。
この範囲を下回ると耐熱性が損なわれ、この範囲を上回ると耐衝撃性が十分に得られない。
また、高密度ポリエチレンエチレンの密度としては、935kg/m3以上、好ましくは945kg/m3以上である。
この場合、耐熱性が低下することなく、更に剛性及び耐衝撃性のバランスが上昇する。
高密度ポリエチレンの密度がこれらの値を下回ると弾性率の低下をきたし目的とする成形品の薄肉化率及び重量削減率の向上が十分に得られない。
本発明で用いられる無機系造核剤含有樹脂組成物(A)の製造方法としては、全ての成分を一度に配合・混練することもできる。
また、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンを基材として、タルク等の無機系造核剤を本願発明の樹脂組成物(A)の含有量よりも高濃度のマスターバッチとして予め作製し、これを適当量その他の成分とドライブレンドしたものを原料として成形機のホッパーに供給し、押出成形することにより、成形品の組成を本願発明の樹脂組成物(A)のものにすることもできる。
本発明で用いられる前記2つの態様の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)においては、無機系造核剤として用いるタルク微粉末の平均粒径が15μm以下の微細であり、その分散性が良好である限り、配合量が比較的少なくてもよく、従って、比重の増大を抑制しつつ、耐衝撃性の低下を招くことなく、剛性等を向上させることができる。
また、該タルクの配合量が上記範囲にあれば、異臭の発生も抑制される。
造核剤として、有機系造核剤の代表例であるジベンジリデンソルビトールやジメチルベンジリデンソルビトール等のソルビトール系誘導体、又はリン酸2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム等の有機リン酸塩を用いると、一定レベルの弾性率(剛性)の向上は認められるが、後述の比較例から明らかなように0.1〜0.3質量%という少量の配合量にもかかわらず、異臭が発生したり、耐衝撃性が大きく低下する場合がある。
【0019】
本発明の組成物には、更に、物性バランスの改善等の目的のため、必要に応じて、以下の樹脂を加えることができる。
(1)チーグラー・ナッタ系触媒又はメタロセン系触媒等を用いて得られた、低密度ポリエチレン又は高圧法で得られたポリエチレン、エチレン系共重合体等のポリエチレン系樹脂
(2)スチレン−ブタジエンゴム(SBR)又はその水添物(SEBS)、その他、スチレン−エチレン/ブチレン−オレフィン結晶ブロックポリマー、オレフィン結晶−エチレン/ブチレン−オレフィン結晶ブロックポリマー等のブタジエン系共重合体・水添ゴム
(3)その他の熱可塑性樹脂
【0020】
本発明の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)は、所定の成分を所定の比率でドライブレンドしたものを、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー等の溶融混合プロセスによりペレットとして、又、押出、射出、ブロー等の一般に熱可塑性樹脂に適用される溶融成形法において、可塑化・溶融、混合の工程を経て、各種の成形品の形態で得ることができる。
これらの溶融成形プロセスにおいては、本発明の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)に、必要に応じ、酸化防止剤、易滑剤、帯電防止剤等の通常用いられる添加剤を加えることができる。
また、更に各種の着色剤を加えることもできる。
押出法においては、ペレット、異形押出品の他、Tダイ、サーキュラーダイ等を用いて単層又は多層のフィルム状、シート状等の各種押出成形品を得ることができる。
本発明の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)を押出成形する場合、(a)成分のプロピレン単独重合体又はプロピレン系ブロック共重合体のメルトフローレートMFR(温度230℃、荷重21.2N)は、0.01〜20g/10分の範囲が好ましく、更に好ましくは0.1〜5g/10分の範囲である。
この範囲であると、高い弾性率と低温での耐衝撃性を維持し、かつ安定した成形が可能となる。
また、射出成形においては、ポリプロピレンのメルトフローレート〔MFR(温度230℃、荷重21.2N)〕は3〜100g/10分、好ましくは5〜50g/10分程度が、薄肉成形品には適しており、かつ、より高い弾性率が得られるため薄肉化が容易になるため、より高い重量削減率も達成できる。
また、(b)成分のエチレン−α−オレフィン共独重合体ゴムのMFR(温度190℃、荷重21.2N)は、0.01〜20g/10分の範囲にあるものが好ましく、更に好ましくは0.1〜10g/10分の範囲である。
この範囲であると、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムが無機系造核剤含有樹脂組成物(A)中に均一に分散するため、成形性、耐衝撃性に優れた組成物及び成形体が得られる。
本発明に係る多層構造体においては、前記無機系造核剤含有樹脂組成物(A)からなる層を少なくとも一層を有し、かつ該無機系造核剤含有樹脂組成物(A)からなる層の厚みが、総厚みの50%以上である。
更に、易剥離機能を有する当該多層構造体においては、プロピレン系樹脂又はプロピレン系樹脂組成物(B)からなる表面層と、該表面層と隣接し、プロピレン系樹脂80質量%未満及びプロピレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂20質量%以上の組合せを含む樹脂組成物又は樹脂(C)からなり、厚みが総厚みの0.1〜10%である一層を備え、かつ表面層を含む表層部の剥離強度を1.0〜10N/10mm幅とすることができる。
ここで、樹脂組成物又は樹脂(C)からなる一層は、表層部を剥離するために機能する。
この剥離様式は、上記(C)からなる一層の上又は下の界面若しくは上記(C)からなる一層の樹脂材料自体の凝集破壊のいずれであってもよい。
【0021】
上記プロピレン系樹脂又はプロピレン系樹脂組成物(B)におけるプロピレン系樹脂としては、例えば、上記の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)において説明したプロピレン単独重合体、プロピレン系ブロック共重合体、或いはプロピレンと他のα−オレフィンとのランダム共重合体、具体的には、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテン−1ランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1ランダム共重合体等が挙げられる。
これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。
また、プロピレン系樹脂及びそれ以外のオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂との組成物を用いてもよい。
表面層にプロピレン系樹脂又はプロピレン系樹脂組成物を用いることによって、一定レベルの耐熱性を維持することができる。
表面層にポリエチレン等を用いると、耐熱性に限界がある。
【0022】
一方、剥離機能を有する樹脂組成物又は樹脂(C)におけるプロピレン系重合体としては、上記(B)の説明において、プロピレン系樹脂として例示したものと同一のものを挙げることができる。
これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。
また、上記プロピレン系重合体以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1等のα−オレフィン、又はノルボルネン等の環状オレフィンの単独重合体やこれらの共重合体等が挙げられる。
代表例としては、高密度、中密度、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン・ノルボルネン共重合体、エチレン・テトラシクロドデセン共重合体、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1等を挙げることができる。
これらの熱可塑性樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。
【0023】
上記剥離機能を有する樹脂組成物又は樹脂(C)においては、プロピレン系重合体とプロピレン系重合体以外の熱可塑性樹脂とを、それぞれ80質量%未満及び20質量%以上の割合で含有する組合せを用いると、界面剥離又は当該組成物又は樹脂自体の凝集剥離により、表層部の剥離機能を十分に発揮することができる。
上記組合せにおいて、好ましい含有割合は、プロピレン系重合体が0〜75質量%で、プロピレン系重合体以外の熱可塑性樹脂が25〜100質量%である。
【0024】
本発明の多層構造体においては、厚み(総厚み)は、200μm以上であり、更に400〜2000μmが好ましい。
また、上記無機系造核剤含有樹脂組成物(A)からなる層の厚みは、総厚み(多層構造体の厚み)の50%(100μm)以上であり、更に70%以上が好ましい。
厚みが50%以上であると、多層構造体の耐熱性、剛性、耐衝撃性等の機械的性質を一定レベル以上とすることができる。
【0025】
更に、上記剥離機能層の厚みは、総厚み(多層構造体の厚み)の0.1〜10%程度であり、更に0.3〜7%が好ましい。
厚みが0.1%以上であると、剥離機能層の厚みを均一かつ安定化することが可能であり、10%以下であると、剥離機能層に用いたプロピレン系重合体以外の熱可塑性樹脂の耐熱性や剛性がプロピレン系樹脂よりも劣る場合であっても、多層構造体全体として一定のレベルを維持することができる。
【0026】
多層構造体の剥離強度は、1.0〜10N/10mm幅程度であり、更に、1.5〜5N/10mm幅が好ましい。
ここで、剥離強度とは、表層部の剥離強度であり、剥離機能層自体の凝集剥離強度又は該剥離機能層と隣接する層との界面剥離強度を意味する。
剥離強度が、10N/10mm幅以下であると、ふた材と表面層をヒートシール等の方法で熱融着させた後、ふた材を開封しようとする際の抵抗が適度となり、1.0N/10mm幅以上であると、上記抵抗が適度で、ふた材を人為的、意図的に開封する前の物流過程等における衝撃等により剥離せず、実用に耐えうる。
【0027】
本発明の多層構造体には、酸素ガスバリヤー性の向上や、変形を少なくする目的で、更に他の材料からなる層を設けてもよい。
他の材料からなる層としては、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂層やアルミ蒸着層、アルミ箔、アルミニウム、鉄、銅等のガスバリヤー性に優れたものが挙げられる。
ここで、EVOHとしては、エチレン単位の含有量が20〜60モル%のものが好ましく用いられる。
また、EVOHには、該樹脂に対して、ビタミンE、ビタミンC、フラボノイド及びカロテノイドから選ばれる1種以上の抗酸化性物質を0.1〜5000質量ppm配合することが好ましい。
抗酸化性物質を配合することによって、臭気レベルがより低減した多層構造体及び容器を得ることができる。
また、PVDCとしては、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−メタアクリル酸共重合体が好ましく用いられる。
これら他の材料からなる層は、1層のみであってもよいし、2層以上からなっていてもよい。
更に、金属、紙等との複合材料であってもよい。
【0028】
更に、本発明の多層構造体には、容器にした際、シール部分となる表面層として、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダムコポリマー、プロピレン−エチレン−ブテンランダムコポリマー、プロピレン−エチレンブロックコポリマー等プロピレン系樹脂又はこれらをベースとした樹脂組成物を用いることができる。
【0029】
本発明の多層構造体は、上記無機系造核剤含有樹脂組成物(A)、プロピレン系樹脂又はプロピレン系樹脂組成物(B)、樹脂組成物又は樹脂(C)及び酸素ガスバリヤー性向上材料等を用いて、押出し成形することにより、若しくはラミネート加工により、又はそれらの組み合わせにより、形成することができる。
無機系造核剤含有樹脂組成物(A)、プロピレン系樹脂又はプロピレン系樹脂組成物(B)及び樹脂組成物又は樹脂(C)には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、造核剤、気泡防止剤、架橋剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0030】
本発明に係る多層構造体は、例えば、複数機の押出し機を用い、各層を構成する材料を多層ダイから押出す共押出し法により、共押出多層成形品として形成することができる。
尚、酸素ガスバリヤー性を向上させる等の目的で、EVOHやその他の材料からなる層を設ける場合には、この酸素ガスバリヤー性向上層と隣接する層との密着性を向上させるために、それらの層の間に、所望により接着樹脂層を設けることができる。
この接着樹脂層としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレンやポリエチレン、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−スチレン共重合体等が挙げられる。
本発明の多層構造体をラミネート加工で形成する場合、ラミネート加工としては、例えば、エキストルージョンラミネート、ホットメルトラミネート、ドライラミネート、ウエットラミネート等の方法を用いることができる。
共押出しした多層シートを無機系造核剤含有樹脂組成物(A)からなる層に回収することもできる。
この場合、ビタミンE、ビタミンC、フラボノイド及びカロテノイドから選ばれる1種以上の抗酸化物質を0.1〜5000質量ppm添加することが好ましい。
【0031】
図1は、本発明の多層構造体の構成の一例を示す断面図であり、多層構造体10は、酸素ガスバリヤー層1の両面に、接着樹脂層2a、2bを介して、それぞれ無機系造核剤含有樹脂組成物層3a、3bが設けられていると共に、上記無機系造核剤含有樹脂組成物層3aの上に、剥離機能層4及び表面層5が順に積層された構造を有している。
【0032】
また、本発明の多層構造体からなる容器は、上記多層構造体を用いて、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、プレス成形等で熱成形することにより、又は上記の各樹脂組成物を用いて、射出成形、射出ブロー成形等の射出成形、押出フィルム・シート成形、ブロー成形等の押出成形などの熱可塑性樹脂に一般的に用いられる成形加工法によって成形して得ることができる。
また、本発明の容器は、特に、米飯等のレトルト食品容器、医療器具の容器及び工業用精密部品容器として有用である。
【実施例】
【0033】
次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
尚、下記各例で得られた構造体の諸物性は、以下に示す方法に従って測定した。
<比重>
JISK7112に準拠し、水中置換法により東洋精機(株)製の自動比重計を用いて測定した。
<弾性率>
JISK7198に準拠し、固体粘弾性測定装置〔セイコーインスツルメント(株)製、DMS6100〕を用いて、1Hzの伸張モードで10℃から23℃、80℃、140℃と10℃/分で昇温し、試験片の融解温度まで貯蔵弾性率を測定した。
<落錘衝撃強度>
JISK6921に準拠し、島津製作所(株)製、HTM−1を用いて、−5℃の雰囲気下、13.7mmφの撃芯で、1m/sの打抜き速度で測定した。
<臭気>
シート状の押出品を、20×50mm程度に切出し、全量10gを300mlのバイアル瓶に入れ、90℃で60分間加熱後、表1に示す6段階評価法に従ってパネラー3人による官能試験を行なった。
<S値>
−5℃落錘衝撃強度をY軸、80℃弾性率をX軸とするグラフにおいて、比較例13と比較例14の二点を結ぶ直線を求めると、下記式1が得られる。
Y=−0.0057X+4.317 (式1)
任意の樹脂組成物について、得られた−5℃落錘衝撃強度Yと80℃弾性率Xの値から、上記式1の直線に垂直に降ろした垂線の距離をS値と定義したとき、下記式2が得られる。
S=(0.0057X+Y−4.317)/〔(0.0057)2+1〕1/2 (式2)
ポリプロピレン系組成物の耐衝撃性と弾性率は、耐衝撃性を向上させると弾性率が低下するというトレードオフの関係にある。
しかし、本願発明においては、低温耐衝撃性が高く、かつ弾性率が高いという予測できない効果が得られ、本願発明の組成物が一種の相乗効果を示していると言える。
そのトレードオフの関係を逸脱している度合いを定量化した指標がS値である。
従って、式1の上側にあって式1から遠ざかる程、S値は大きくなり、耐衝撃性と弾性率のいずれにも優れる傾向にある。
図3は、S値、−5℃落錘衝撃強度(Y軸)及び80℃弾性率(X軸)との関係を示す概念図である。
<薄肉化率>
薄肉化率(TRR)=(E/E01/3−1 (式3)
但し、Eは樹脂組成物の弾性率、E0は基準ポリプロピレンの弾性率〔比較例13の値1420MPa(23℃)〕を示す。
式3の薄肉化率の値が大きいほど、成形品の厚みを薄肉化しても、成形品全体の剛性を維持できる可能性を示す。
<重量削減率>
成形品の重量は、同一形状の場合、成形品の厚みと材料の比重によって決定される。
また、重量削減率(WRR)は、上記薄肉化率及び比重の基準材料に対する増加率を考慮して以下の通り算出できる。
WRR=TRR−(ρ−ρ0)/ρ0
但し、ρは樹脂組成物の比重、ρ0は基準ポリプロピレンの比重(比較例13の値0.900)を示す。
【0034】
【表1】

【0035】
また、下記各例で得られた諸物性は、以下に示す方法に従って測定した。
<剥離強度>
予め、30mm×250mmに切り取ったシートの表面層と12μm厚さのPET(ポリエチレンテレフタレート)/15μm厚さのPA66(66ナイロン)/50μm厚さのランダムPP(ポリプロピレン)ラミネートフィルムを、ヒートシール機を用いて10mm×25mmのシール面積で190℃、0.23MPa、1.2秒間融着させた後、放冷したものを用意し、上記ラミネートフィルムを180℃に折り返す状態で剥がすために要する力をプッシュブルゲージを用いて測定した。
<耐圧性>
容器のふた材として、上記のラミネートフィルムを用意し、容器のフランジ部と190℃、0.98MPaにて、1.2秒間、4mm幅の円周状に融着し、放冷した。
上記密閉容器を、80℃に加温した水槽に30分間浸漬した後、ふた材に20mm角のゴム製のシールを貼り、そこに注射器を差し込んだ状態で真空ポンプにより内部を減圧にし、容器の形状が崩れるときの圧力を測定した。
【0036】
実施例1〜4及び比較例1〜5
表2に示す樹脂組成となる原料〔PP:ポリプロピレン、E/αR:エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(エラストマー)、タルク、HDPE1:高密度ポリエチレン〕を用い、30φ単軸押出機を用いて、厚み700μmの押出シートを作製した。
尚、上記樹脂組成物からなる押出シートは、予め所定の比率でドライブレンドした上記原料を押出機のホッパーに供給し、押出成形することにより得た。
その特性を表2に示す。
(注)
1.B−PP:ブロックポリプロピレン;密度910kg/m3、MFR0.5g/10分(230℃)、アイソタクチックペンタッド分率0.94〔出光石油化学(株)製、商品名「E−154G」〕
2.H−PP:高立体規則性ホモポリプロピレン;密度910kg/m3、MFR0.5g/10分(230℃)、アイソタクチック・ペンタッド分率0.97〔出光石油化学(株)製、商品名「出光ポリプロ、E100GV」〕
3.HDPE1:高密度ポリエチレン;密度956kg/m3、MFR0.32g/10分(190℃)〔出光石油化学(株)製、商品名「出光ポリエチ548B」〕
4.EOR:エチレン−オクテン−1共重合体(オクテン−1含有量25質量%);密度870kg/m3、MFR5g/10分(190℃)〔デュポンダウ社製、商品名「Engage8200」〕
5.タルク:平均粒径4.9μm〔富士タルク(株)製、商品名「TP−A25F」〕
タルクは、60質量%濃度のマスターバッチを予め用意したものを用いた。
本マスターバッチの基材には、R−PP:ランダムポリプロピレン〔出光石油化学(株)製、商品名「R720」〕を用い、その100質量部にステアリン酸カルシウム1.3質量部、フェノール系酸化防止剤〔チバスペシャリティケミカル(株)製、イルガノックス1010〕0.3質量部を加えたものを二軸混練機(株式会社シーティーイー製、HTM−38)を用いてペレット状のマスターバッチを得た。
【0037】
実施例5〜8及び比較例6〜10
表3に示す樹脂(RC)組成となる原料〔PP:ポリプロピレン、E/αR:エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(エラストマー)、タルク、HDPE2:高密度ポリエチレン〕を用いると共に、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)及び接着樹脂(AD)を用い、共押出法に従って、RC(320μm)/AD(15μm)/EVOH(30μm)/AD(15μm)/RC(320μm)の構成を有する多層構造体を作製した。
尚、上記樹脂組成物からなる押出シートは、予め所定の比率でドライブレンドしたものを押出機のホッパーに供給し、押出成形することにより得た。
その特性を表3に示す。
(注)
1.接着樹脂(AD):無水マレイン酸変性PP(ポリプロピレン);密度900kg/m3、MFR2.8g/10分(190℃)〔三井化学(株)製、アドマーQF550〕
2.EVOH:エチレン−ビニルアルコール共重合体;密度1180kg/m3、MFR2.0g/10分(190℃)〔(株)クラレ製、J102B〕
【0038】
実施例9〜12
実施例6の多層構造体の片面に、剥離機能層、表面層を順に設けた構造の多層構造体(図1参照)を共押出法により成形し、更に真空・圧空法により熱成形を行ない、内径120mm、深さ40mmの容器(図2参照;多層構造は省略)を作製した。
表面層はいずれの場合も、80μm厚さのR−PPを用いた。
実施例9:剥離機能層として、HDPE2/LDPE(80/20質量%)のブレンドを用い、層厚みを10μmとした。
実施例10:剥離機能層として、H−PP/LDPE(50/50質量%)のブレンドを用い、層厚みを20μmとした。
実施例11:実施例9と同じ組成の剥離機能層を用い、層厚みを40μmとした。
実施例14:実施例6の多層構造体の代わりに、実施例8の多層構造体を用いた他は、実施例9と同様にして容器を作製した。
その特性を表4に示す。
尚、剥離機能層の厚み比率(%)は、容器に使用した多層シートの総厚みに対する剥離機能層の厚みの百分率を示す。
【0039】
比較例11〜12
比較例11:実施例9において剥離機能層の厚みを100μmとした。
比較例12:実施例11において剥離機能層の厚みを150μmとした。
その特性を表4に示す。
(注)
1.HDPE2:高密度ポリエチレン;密度951kg/m3、MFR0.87g/10〔出光石油化学(株)製、商品名「出光ポリエチ440M」〕
2.LDPE:高圧法低密度ポリエチレン;密度920kg/m3、MFR6.7g/10分(190℃)、Tm107℃〔日本ポリエチレン(株)製、商品名「HE−30」〕
3.R-PP:ランダムポリプロピレン;密度910kg/m3、MFR1.3g/10分(230℃)、融点146℃〔出光石油化学(株)製、商品名「出光ポリプロE233GV」
【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
実施例13〜23、比較例13〜21
表5に示す樹脂組成となる原料を用い、実施例1と同様にして30φ単軸押出機を用いて、厚み700μmの押出シートを作製した。
但し、タルクは樹脂の総重量を100質量部としたときの質量部数を示す。
尚、上記樹脂組成物からなる押出シートは、予め所定の比率でドライブレンドした上記原料を押出機のホッパーに供給し、押出成形することにより得た。
その特性を表5に示す。
(注)
1.H−PP1:高立体規則性ホモポリプロピレン;密度910kg/m3、MFR0.5g/10分(230℃)、アイソタクチック・ペンタッド分率0.97〔出光石油化学(株)製、商品名「出光ポリプロ、E200GV」〕
2.H−PP2:高立体規則性ホモポリプロピレン;密度910kg/m3、MFR1.6g/10分(230℃)、アイソタクチック・ペンタッド分率0.97〔出光石油化学(株)製、商品名「出光ポリプロ、E200GV」〕
3.H−PP3:高立体規則性ホモポリプロピレン;密度910kg/m3、MFR9.0g/10分(230℃)、アイソタクチック・ペンタッド分率0.97〔出光石油化学(株)製、商品名「出光ポリプロ、Y900GV」〕
4.H−PP4:高立体規則性ホモポリプロピレン;密度910kg/m3、MFR18g/10分(230℃)、アイソタクチック・ペンタッド分率0.97〔出光石油化学(株)製、商品名「出光ポリプロ、Y2000GV」〕
5.EOR:エチレン−オクテン−1共重合体(オクテン−1含有量25質量%);密度870kg/m3、MFR5g/10分(190℃)〔デュポンダウ社製、商品名「Engage8200」〕
6.HDPE1:高密度ポリエチレン;密度956kg/m3、MFR0.32g/10分(190℃)〔出光石油化学(株)製、商品名「出光ポリエチ548B」〕
7.B−PP:ブロックポリプロピレン;密度910kg/m3、MFR0.5g/10分(230℃)、アイソタクチックペンタッド分率0.94〔出光石油化学(株)製、商品名「E−154G」〕
8.LH−PP1:低立体規則性ホモポリプロピレン;密度910kg/m3、MFR0.5g/10分(230℃)、アイソタクチック・ペンタッド分率0.93〔出光石油化学(株)製、商品名「出光ポリプロ、E105GM」〕
9.タルク:平均粒径4.9μm〔富士タルク(株)製、商品名「TP−A25F」〕
タルクは、実施例1〜4と同一の60質量%濃度のマスターバッチを予め用意したものを用いた。
【0044】
【表5】

【0045】
図4は、成形品の重量削減率に及ぼす平均粒径4.9μmのタルク含有量の効果を示している(表5の実施例13〜15、比較例18〜20参照)。
【0046】
実施例24〜29、比較例22〜25
表6に示す樹脂組成となる原料を用い、実施例1と同様にして30φ単軸押出機を用いて、厚み700μmの押出シートを作製した。
但し、タルクは樹脂100質量部に対する質量部を示す。
尚、上記樹脂組成物からなる押出シートは、予め所定の比率でドライブレンドした上記原料を押出機のホッパーに供給することにより得た。
その特性を表6に示す。
(注)
1.H−PP1:高立体規則性ホモポリプロピレン;密度910kg/m3、MFR0.5g/10分(230℃)、アイソタクチック・ペンタッド分率0.97〔出光石油化学(株)製、商品名「出光ポリプロ、E200GV」〕
2.EOR1:エチレン−オクテン−1共重合体;密度857kg/m3、MFR5g/10分(190℃)〔デュポンダウ社製、商品名「Engage8842」〕
3.EOR2:エチレン−オクテン−1共重合体;密度870kg/m3、MFR5g/10分(190℃)〔デュポンダウ社製、商品名「Engage8200」〕
4.EOR3:エチレン−オクテン−1共重合体;密度885kg/m3、MFR5g/10分(190℃)〔デュポンダウ社製、商品名「Engage8003」〕
5.EOR4:エチレン−オクテン−1共重合体;密度902kg/m3、MFR5g/10分(190℃)〔デュポンダウ社製、商品名「Engage8450」〕
6.EOR5:エチレン−オクテン−1共重合体;密度910kg/m3、MFR5g/10分(190℃)〔デュポンダウ社製、商品名「Engage8445」〕
7.EBR1:エチレン−ブテン−1共重合体;密度870kg/m3、MFR5.0g/10分(190℃)〔デュポンダウ社製、商品名「ENR7447」〕
8.タルク:平均粒径4.9μm〔富士タルク(株)製、商品名「TP−A25F」〕
タルクは、実施例1〜4と同一の60質量%濃度のマスターバッチを予め用意したものを用いた。
9.タルク:平均粒径1.0μm〔日本タルク(株)製、商品名「SG−2000」〕
タルクは、実施例1〜4と同一の基材と添加剤処方を用いた20質量%濃度のマスターバッチを予め用意したものを用いた。
【0047】
【表6】

【0048】
図5は、成形品の重量削減率に及ぼす平均粒径1.0μmのタルク含有量の効果を示している(表6の実施例27〜29、比較例24〜26参照)。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、室温以上の高温領域で高い弾性率を有し、氷点以下の低温領域で耐衝撃性に優れ、かつ臭気が食品用途に耐えるレベルにあり、比重増加を最小限に抑制した無機系造核剤含有樹脂組成物、該組成物を用いることにより、薄肉化でき、その結果重量が低減した多層構造体、熱成形して得られる容器、射出成形品及び押出成形品を低い製造コストで得ることができる。
【符号の説明】
【0050】
10:多層構造体
1:酸素ガスバリヤー層
2a、2b:接着樹脂層
3a、3b:無機造核剤含有樹脂組成物層
4:剥離機能層
5:表面層
(a):上面図
(b):断面図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)プロピレン連鎖部分のアイソタクチック・ペンタッド分率が0.95以上のプロピレン単独重合体、(b)エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム0.5〜15質量%、(c)高密度ポリエチレン0〜20質量%、及び(d)無機系造核剤:(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計量100質量部に対し0.4〜3.0質量部からなる組合せを含み、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムの密度が840〜900kg/m3であることを特徴とする無機系造核剤含有樹脂組成物(A)。
【請求項2】
エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムが0.5〜10質量%である請求項1に記載の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)。
【請求項3】
エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム中のα−オレフィン単位の炭素数が4〜12である請求項1又は2に記載の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)。
【請求項4】
高密度ポリエチレンが、密度935kg/m3以上であり、(a)成分と(b)成分の合計量に対し1〜20質量%含有した請求項1〜3のいずれかに記載の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)。
【請求項5】
無機系造核剤がタルクである請求項1〜4のいずれかに記載の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)。
【請求項6】
総厚みが200μm以上の多層構造体であって、前記多層構造体の少なくとも一層が、請求項1〜5のいずれかに記載の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)からなり、かつ該樹脂組成物層の厚みが総厚みの50%以上であることを特徴とする多層構造体。
【請求項7】
総厚みが200μm以上の多層構造体であって、前記多層構造体の少なくとも一層が、請求項1〜5のいずれかに記載の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)からなり、かつ該樹脂組成物層の厚みが総厚みの50%以上であると共に、プロピレン系樹脂又はプロピレン系樹脂組成物(B)からなる表面層と、該表面層と隣接し、プロピレン系樹脂80質量%未満及びプロピレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂20質量%以上の組合せを含む樹脂組成物又は樹脂(C)からなり、厚みが総厚みの0.1〜10%である剥離機能層を備え、前記表面層を含む表層部の剥離強度が少なくとも1.0〜10N/10mm幅であることを特徴とする多層構造体。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の多層構造体を熱成形して得られる容器。
【請求項9】
食品容器である請求項8に記載の容器。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)からなる押出成形品。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれかに記載の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)からなる射出成形品。
【請求項12】
ポリオレフィン樹脂を基材とし、(d)成分を高濃度に含有するマスターバッチを予め調製後、これとその他の成分とをドライブレンドした原料を用いることにより、請求項1〜5のいずれかに記載の無機系造核剤含有樹脂組成物(A)からなる成形品を得る製造方法。
【請求項13】
成形品が多層構造体である請求項12に記載の成形品の製造方法。
【請求項14】
成形品が容器である請求項12に記載の成形品の製造方法。
【請求項15】
成形品が押出成形品である請求項12に記載の成形品の製造方法。
【請求項16】
成形品が射出成形品である請求項12に記載の成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−174088(P2011−174088A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120575(P2011−120575)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【分割の表示】特願2006−511016(P2006−511016)の分割
【原出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(500163366)出光ユニテック株式会社 (128)
【Fターム(参考)】