説明

無機結合剤用添加剤

本発明は、無機結合剤の煤煙浮遊の量を減少させるための少なくとも1種のリグノスルホン酸塩を含む添加剤組成物Zの使用に関する。さらに、本発明は、無機結合剤の煤煙浮遊の量を減少させる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性結合剤および/または潜在的水硬性結合剤の粉砕および混合プロセスにおける添加剤の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント製造は、非常にエネルギー集約的であり、多量の二酸化炭素排出を引き起こす。無機結合剤の生産において、添加剤として例えば、フライアッシュ、シリカフュームまたはイネモミ殻灰分などの灰分を使用することは、セメントを節約し、エネルギー消費の観点および環境保全の両方から見て有利であり得る。しかしながら、これらの灰分には、無機結合剤、特に水性の水凝固結合剤に浮遊し得て、そのため、例えば、そのような表面に施された被膜の接着性の喪失により、不適当な表面および破損をもたらし得る煤煙を含むという欠点がある。
【0003】
セメント製造の決定的段階は、セメントクリンカーの粉砕である。セメントクリンカーが非常に硬質であるので、破砕するのは非常にエネルギー集約的である。しかし、細粉の形態のセメントを得ることは、セメントの特性にとって重要である。したがって、セメントの微細度は重要な品質判定基準である。より容易に粉末に破砕するために、いわゆるセメント粉砕剤が使用される。これは、粉砕時間およびエネルギーコストを大幅に減少させる。
【0004】
いくつかのセメント粉砕剤は、ある量を超えると、例えば、解膠が、固体粒子を個々に分散させ、より流動的にし、液性限界を下げる、すなわち粘性の低下をもたらすという欠点を有する。このことは、特に煤煙の浮遊を促進し、それによってこの問題を悪化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/133933(A2)号
【特許文献2】欧州特許第1138697(B1)号
【特許文献3】欧州特許第1061089(B1)号
【特許文献4】欧州特許出願公開第1348729(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、先行技術の上記の欠点がなく、代わりに、特に煤煙が浮遊するのを阻止する、良好な懸濁液安定性を有する、水硬性結合剤および/または潜在的水硬性結合剤の、粉砕および混合プロセス用の新規の添加剤を提供することであった。本文書において、用語「浮遊」は、分離プロセスによる無機結合剤の表面での煤煙の滞留を指す。これは、水性無機結合剤、および本質的に水を含まない無機結合剤の両方に関係する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで驚いたことに、少なくとも1種のリグノスルホン酸塩を含む添加剤組成物Zの使用は、煤煙を含むが添加剤組成物Zは含まない無機結合剤と比較して、前記煤煙を含有する無機結合剤の前記煤煙の浮遊を減少させることが見出された。さらに、驚いたことに、通常の粉砕剤と共に少なくとも1種のリグノスルホン酸塩を含むセメント添加剤組成物Zを組み合わせることによって、既知の粉砕剤の欠点を、通常のセメント粉砕剤の有利な効果を失わずに、解消および/または少なくともはるかに減少させることができることが見出された。驚いたことに、添加剤組成物Zの添加には、粉砕プロセスの効率に対して負の効果がないこともまた示された。また最後に、驚いたことに、添加剤組成物Zの添加には、凝固した無機結合剤の圧縮強度に対し負の効果がないことが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、煤煙を含む無機結合剤の前記煤煙上の浮遊を減少させるための、少なくとも1種のリグノスルホン酸塩を含む添加剤組成物Zの使用に関する。
【0009】
無機結合剤は、水硬性結合剤および/または潜在的水硬性結合剤および/またはポゾラン結合剤である。本文書において、水硬性結合剤という用語は、例えば、水硬性石灰またはセメントなどの水面下でも硬化する結合剤を指す。本文書において、潜在的水硬性結合剤という用語は、例えば、細粉化水砕スラグなどの添加剤(活性剤)の影響下でのみ凝固または硬化する結合剤を指す。本文書において、ポゾラン結合剤という用語は、例えば、フライアッシュ、シリカフューム、および、例えば、火山土などの天然ポゾランなどの水酸化カルシウムと結合することによって、単独で凝固せず湿分中での保管後に固化する反応生成物を与える結合剤を指す。
【0010】
水硬性結合剤および/または潜在的水硬性結合剤および/またはポゾラン結合剤は、セメント、フライアッシュ、シリカフューム、火山土、イネモミ殻灰分および細粉化水砕スラグ、または、そのブレンドからなる群から通常選択される。好ましくは、無機結合剤の少なくとも1種のさらなる成分が、フライアッシュ、シリカフューム、細粉化水砕スラグ、火山土およびイネモミ殻灰分からなる群から選択される。フライアッシュ、シリカフューム、細粉化水砕スラグ、火山土およびイネモミ殻灰分は、セメント中のいわゆる主成分として特に用いられ、無機結合剤、特に水性無機結合剤中に浮遊し得る未焼成残留炭素、煤煙を含む。これは、例えば、そのような表面に施された被膜の接着性の喪失により、不適当な表面および破損をもたらし得る。水性無機結合剤、例えば、コンクリートの煤煙の浮遊は、特に、その表面に斑点および煤煙塊(stippling and soot nests)を引き起こし得る。これらは不適当であり、塵埃形成により環境中への煤煙の放出をもたらし得る。煤煙は、通常健康にとって有害な大量の多環式芳香族炭化水素を含む、燃焼の望ましくない副生物であるので、これはさらなる欠点である。フライアッシュは石炭火力発電所からの燃焼残渣である。炭塵のきめの細かい燃焼残留物は、静電フィルタ(塵埃濾過)を使用して、発電所の煙道ガスから抜き取られる。フライアッシュは、セメント製造において、セメントの原料成分および主成分の両方として、およびコンクリート添加剤として使用することができる。DIN EN 196−2によれば、未焼成多孔質炭素粒子(煤煙)の含有率を示すフライアッシュの強熱減量は、5重量%に制限されている。フライアッシュの組成は、石炭の性質および起源によって、ならびに燃焼条件によって影響を受ける。例えば、DIN EN 197−1によれば、CEM IIポルトランドフライアッシュセメント中のフライアッシュの割合は、ポルトランドフライアッシュセメントの合計重量に対して6−35重量%であってもよい。
【0011】
シリカフューム(シリカ粉末またはマイクロシリカとも呼ばれる)は、排出制御で使用される電気アーク炉でのシリコンおよびシリコン合金の生産における副生物である。シリカフュームは、通常3重量%未満の強熱減量を有する。例えば、DIN EN 197−1によれば、CEM IIポルトランドシリカ粉末セメント中のシリカフュームの割合は、ポルトランドシリカ粉末セメントの合計重量に対して6−10重量%であってもよい。
【0012】
イネモミ殻灰分は、多くの国々において廃棄物である、モミガラの、通常、700℃を超える温度での燃焼の結果である。強熱減量は、通常、2−10重量%の間にある。イネモミ殻灰分は、特にイネを生産する国々でポゾランとしてセメントに添加される。
【0013】
建築資材の火山土(粉砕した火山性凝灰岩)は、例えば、DIN 51043下で標準化されている。火山土は、火山ガラスに属し、ケイ酸、アルミナ、ならびに化学的および物理的結合水から主になる。
【0014】
高炉スラグは、銑鉄の生産における、ドロス、コークス灰分および混合物の副生物であり、細粉化水砕スラグに処理され、潜在的水硬性結合剤として使用することができる。高炉スラグ、または細粉化水砕スラグは、一般にコークス灰分の未焼成残存物からの煤煙を含む。例えば、DIN EN 197−1によれば、CEM IIポルトランドスラグセメント中の細粉化水砕スラグの割合は、ポルトランドスラグセメントの合計重量に対して6−35重量%であってもよい。
【0015】
本文書において、用語「煤煙」は、不完全燃焼で形成する炭素の発生および/または気体状の炭素含有物質の熱による分裂を指す。水凝固組成物中の煤煙は、好ましくは、フライアッシュ、シリカフューム、細粉化水砕スラグ、火山土およびイネモミ殻灰分からなる群から選択される上記の水凝固組成物のさらなる成分のうちの、少なくとも1つの成分である。したがって、好ましくは、それは、フライアッシュ、シリカフューム、細粉化水砕スラグ、火山土またはイネモミ殻灰分からの煤煙の問題である。通常、煤煙の重量分率は、無機結合剤の重量に対して0.05−1.75重量%、特に0.1−1重量%である。好ましい煤煙は、通常、望ましくない副生物として成長し、例えば、ジクロロメタンおよびトルエンなどの多量の無機溶媒、例えば、その多くが発癌性を有する多環式芳香族炭化水素などの抽出性物質を含む。さらに、好ましい煤煙は、90%未満、通常70%未満の炭素含量を有する。平均粒子寸法は、一般に50−200μm、特に70−150μm、好ましくは90−120μmである。比表面積(DIN 66 131によるBET表面)は、通常1−20m/g、特に5−15m/gである。
【0016】
好ましい煤煙は、炭化水素の不完全燃焼または熱分解によって製造される工業用煤煙である、英国カーボンブラック(English carbon black)とは化学的および物理的に異なる。工業用煤煙の生産は、所望の特性を与えるために特に圧力および温度に関して厳密な処理にかけられる。通常、工業用煤煙は、97%を超える炭素含量、非常に低い多環式芳香族炭化水素含有率および粒子形態のブドウ塊を有する。平均粒子寸法は一般に0.02−2μmであり、BET表面は通常25−300m/gである。工業用煤煙は、例えば、顔料として使用される。顔料として使用するために、工業用煤煙も酸化にさらし、結合剤により良好な湿潤特性を与えることができる。上述の工業用煤煙は、水凝固添加剤中にコンクリートにインクをつける顔料としても使用される。顔料の通常の配合量は、セメントに対しておよそ3−5重量%である。顔料の量に関する起こり得る問題のために、顔料は細粉としてはまれに加えられ、水凝固添加剤に混合すると溶解する水性色素調合品(スラリー)として、または顔料顆粒として加えられる。
【0017】
添加剤組成物Zは、注げる組成物の形態で、例えば、粉末として、または液状組成物として、例えば、水性組成物として、存在することができる。添加剤組成物Zはさらなる成分を含んでいてもよい。例としては、コンクリート技術において普通に使用されるような溶媒または添加剤、特に界面活性剤、熱および光に対する安定剤、顔料、消泡剤、遅延剤、腐食抑制剤または空気連行混合物である。
【0018】
リグノスルホン酸塩は、リグニンから製造される。リグニンは、植物、特に木本植物中で、以下の3つのタイプのフェニルプロパノールモノマーからの重合によって生成される。A)3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロペン−1−オール(p−クマリルアルコール)、B)3−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロペン−1−オール(コニフェリルアルコール)、C)3−(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロペン−1−オール(シナピルアルコール)。高分子リグニン構造の構築における第一ステップは、これらのモノマーの酵素による脱水素反応であり、フェノキシラジカルがそれによって作り出される。他のほとんどの生体高分子に反して、これらのラジカル間のランダムカップリング反応は、規則的な配置または反復ユニットをもたない三次元の非晶質ポリマーをもたらす。この理由のために、様々なモデルが「平均」構造として示唆されているが、決定的なリグニン構造を述べることはできない。リグニンのモノマーは9個の炭素原子を含むので、分析データはC9式、例えば、オウシュウトウヒ(picea abies)からのリグニンに対しC9H8.3O2.7(OCH3)0.97、およびユーカリプタスレグナンス(eucalyptus regnans)からのリグニンに対しC9H8.7O2.9(OCH3)1.58でしばしば表示される。各種の異なる組織、細胞、細胞外壁層の間でのような、異なる分類群の植物間で、リグニンに均一性がないことは、当業者に周知である。リグニンの化学的な挙動は、フェノール、ベンジルおよびカルボニルヒドロキシル基の存在によって主として決定され、その頻度は上記の因子および単離方法の関数として変動し得る。
【0019】
リグノスルホン酸塩は、リグニンのスルホン化と、ある程度の脱メチル化を引き起こし、亜硫酸の影響下でのセルロース生産の副生物である。リグニンと同様に、これらは構造および組成において大幅に変動する。水には、これらはpH範囲全体で可溶性であるが、エタノール、アセトンおよび他の普通の有機溶媒に不溶性である。リグノスルホン酸塩には、ほとんど全く界面活性がない。これらは、液体間の領域で張力を低下させる傾向をほとんど示さず、水の表面張力の減少またはミセルの形成に適切ではない。これらは、吸着/脱着によって、および基板での電荷形成によって分散剤として機能する。しかし、これらの表面活性は、リグニン構造に長鎖アルキルアミンを挿入することにより増加し得る。リグノスルホン酸塩を分離および精製する方法は、当業者にとって周知である。Howard法において、リグノスルホン酸カルシウムは、使用済み亜硫酸溶液に余剰の石灰を添加することにより沈澱する。リグノスルホン酸塩はまた、長鎖アミンを有する不溶性第四級アンモニウム塩の形成により単離することができる。工業用レベルでは、限外濾過およびイオン交換クロマトグラフィーをリグノスルホン酸塩の精製に使用することができる。本発明による使用可能なリグノスルホン酸塩シリーズは、例えば、Ameri−bond、Borresperse(Borregaard)、Dynasperse、Kelig、Lignosol、Marasperse、Norlig(Daishowa Chemicals)、Lignosite(Georgia Pacific)、Reax(MEAD Westvaco)、Wafolin、Wafex、Wargotan、Wanin、Wargonin(Holmens)、Vanillex(Nippon Paper)、Vanisperse、Vanicell、Ultrazine、Ufoxane(Borregaard)、Serla Bondex、Serla−Con、Serla−Pon、Serla Sol−(Serlachius)、Collex、Zewa(Wadhof−Holmes)、Raylig(ITT Rayonier)などの種々の商品名で市販されている。用語「リグノスルホン酸塩」は、本明細書において、リグノスルホン酸アニオンおよび適切なカチオンで構成される塩を指す。当然、相異なるリグノスルホン酸塩のブレンドもまた用いることができ、リグノスルホン酸塩はまた、液体および固体の両方の形態で利用できる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、無機結合剤は、添加剤組成物Zの存在下でセメントに粉砕された粉砕セメントクリンカーを含む。添加剤組成物Zを、添加剤組成物Z中のリグノスルホン酸塩の割合が、粉砕されるセメントクリンカーに対して、0.001−1.5重量%、特に0.005から0.2重量%の間、好ましくは0.005から0.08重量%の間となるように、粉砕プロセスの前におよび/または間に、セメントクリンカーに添加するのが有利である。本文書において、用語「セメントクリンカー」は、石灰粘土混合物が1250−1500℃に加熱されると成長し、粉砕されるとセメントを与える、固体、通常、ナッツの寸法を指す。とりわけ、示されているように、セメントクリンカーに対して極めて低濃度のリグノスルホン酸塩を、添加剤組成物Zと共に粉砕されるセメントクリンカーを含む無機結合剤中の煤煙の浮遊を減少させるのに効果的に使用することができ、その濃度は、すなわち、リグノスルホン酸塩が、既知の無機結合剤への可塑剤−添加剤として添加される場合は、通常、無機結合剤の重量に対して0.2−1.5重量%、または、リグノスルホン酸塩が、既知の粉砕されるセメントクリンカーへの粉砕剤として添加される場合、セメントクリンカーの重量に対して通常0.2−1.5重量%である。粉砕プロセスは、セメントミルで通常行われる。しかし、原則として、セメント工業で知られているような他の粉砕機が使用されてもよい。セメントは粉砕時間に応じて異なる細微度を有する。セメントの微細度は、通常、Blaineに従い、cm/gで示される。他方、粒子粒度分布は、また、微細度に対し実際的な関連がある。そのような粒子寸法分析は、レーザー粒度測定またはエアージェットシーブを使用して、通常行われる。
【0021】
他の方法で粉砕されたセメントと同様に、この方法で粉砕されたセメントは、コンクリート、モルタル、シーリング材、注入または硬膏剤に広く使用されている。添加剤組成物Zがセメントクリンカーの粉砕前および/または間にセメントに添加される場合、それが水と混合された後、水性無機結合剤の煤煙浮遊の減少を、水性無機結合剤、特にコンクリートに見ることができる。したがって、この実施形態によれば、添加剤組成物Zの後続する添加は、もはや必要でなく、したがって、セメントの使用者の処理ステップを節約する。したがって、そのようなセメントは、多量に製造することができる「使用準備ができている」製品である。添加剤組成物Zが無機結合剤、特に水性無機結合剤の煤煙浮遊を減少させる能力は、粉砕プロセスによって損なわれないことが示された。
【0022】
驚いたことに、添加剤組成物Zの添加が、粉砕プロセスの効率に負の効果をもたないこともまた示された。驚いたことに、粉砕プロセスの粉砕剤の効果は、添加剤組成物Zの添加によって損なわれないこともまた明白になった。さらなる驚きは、水性無機結合剤の煤煙浮遊の減少にとって、任意の既存の粉砕剤とは別々に、リグノスルホン酸塩を無機結合剤に添加することが有益であるということであった。
【0023】
したがって、また、添加剤組成物Zが少なくとも1種のセメント粉砕剤を含む場合、有利である。当業者に知られている粉砕剤はすべて、粉砕剤として適切である。この少なくとも1種のセメント粉砕剤は、グリコール、有機アミン、有機アミンの炭酸とのアンモニウム塩および櫛型ポリマーからなる群から特に選択される。
【0024】
本文書において、用語「櫛型ポリマー」は、側鎖がエステルまたはエーテル基を介して結合した線状重合体鎖(=主鎖)からなる櫛型ポリマーを指す。側鎖は、本明細書において、いわば「櫛」の「歯」を形成する。
【0025】
櫛型ポリマーには、エステルまたはエーテル基を介して主鎖に結合した側鎖を含む櫛型ポリマーKPが好ましい。
【0026】
櫛型ポリマーKPとして好適なものは、一方では、エーテル基を介して線状重合体骨組みに結合した側鎖を含む櫛型ポリマーである。エーテル基を介して線状重合体骨組みに結合した側鎖は、ビニルエーテルまたはアリルエーテルの重合によって挿入することができる。そのような櫛型ポリマーは、例えば、国際公開第2006/133933(A2)号に開示され、その内容は参照によって具体的に本明細書に包含される。ビニルエーテルまたはアリルエーテルは、詳細には式(II)を有する。
【化1】

[式中、R’は、Hまたは1から20のC原子を有する脂肪族炭化水素基、または5から8のC原子を有する環式脂肪族炭化水素基、または6から14のC原子を有する、場合によって置換されたアリール基を表す。R’’は、Hまたはメチル基を表し、またR’’は、非置換または置換アリール基、特にフェニル基を表す。]
【0027】
また、pは0または1を表し;mおよびnは互いに独立して、2、3または4をそれぞれ表し;また、xおよびyおよびzは、互いに独立して、0から350までの範囲の値を表す。s5、s6およびs7として式(II)に記載される部分構造要素のシーケンスは、この場合、交互、ブロック状、またはランダムに配置することができる。特にそのような櫛型ポリマーは、マレイン酸無水物、マレイン酸、および/または(メタ)アクリル酸とのビニルエーテルまたはアリルエーテルのコポリマーである。他方、櫛型ポリマーKPとして好適なものは、エステル基を介して線状重合体骨組みに結合した側鎖を有する櫛型ポリマーである。この種の櫛型ポリマーKPは、エーテル基を介して線状重合体骨組みに結合した櫛型ポリマーより好ましい。特に好ましい櫛型ポリマーKP式(I)のコポリマーである。
【化2】

[式中、Mは、互いに独立して、H、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価または三価金属イオン、アンモニウムイオン、または有機アンモニウム基を表す。]
【0028】
本文書において、用語「互いに独立して」は、各場合において、置換基が同一分子中に異なる有効な出現をしてもよいことを意味する。したがって、例えば、式(I)のコポリマーは、同時にカルボン酸基およびカルボン酸ナトリウム基を有していてもよい。すなわちこの場合、HおよびNaは、互いに独立して、Mの異なる出現をしていてもよい。
【0029】
イオンMが結合するカルボン酸塩に対し、多価イオンMの場合には、対イオンによって電荷を均衡させなければならないことが問題であることを当業者は理解する。また、置換基Rは、互いに独立して、水素またはメチル基を表す。さらに置換基Rは、互いに独立して、[AO]−Rを表す。置換基Rは、互いに独立して、C−C20アルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリール基または−[AO]−Rを表す。置換基Aは、両方の場合に、互いに独立して、C−Cアルキル基を、またRは、C−C20アルキル基、シクロヘキシル基またはアルキルアリール基を表し、一方、qは、2から250の、特に8から200の、特に好ましくは11から150の値を表す。また置換基Rは、互いに独立して、−NH、−NR、−ORNRを表す。ここで、RおよびRは、互いに独立して、C−C20アルキル基、シクロアルキル基、またはアルキルアリール基またはアリール基、または、ヒドロキシアルキル基、またはアセトキシエチル−(CH−CO−O−CH−CH−)、またはヒドロキシル−イソプロピル−(HO−CH(CH)−CH−)またはアセトキシイソプロピル基(CH−CO−O−CH(CH)−CH−)を表し;あるいは、RおよびRは一緒に、モルホリンまたはイミダゾリン環を構築するために、窒素がその一部である環を形成する。置換基RはC−Cアルキレン基を表す。さらに置換基RおよびRは、互いに独立して、C−C20アルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリール基、アリール基またはヒドロキシアルキル基を表す。s1、s2、s3およびs4として式(I)に記載される部分構造要素のシーケンスは、この場合、交互、ブロック、またはランダムに配置することができる。最後に、指数a、b、cおよびdは、構造単位s1、s2、s3およびs4のモル比を表す。これらの構造成分は、互いに以下の関係を有する。a+b+c+d=1という条件で、
a/b/c/d=(0.1−0.9)/(0.1−0.9)/(0−0.8)/(0−0.3)、
特にa/b/c/d=(0.1−0.9)/(0.1−0.9)/(0−0.5)/(0−0.1)、
好ましくはa/b/c/d=(0.1−0.9)/(0.1−0.9)/(0−0.3)/(0−0.06)。
合計c+dは、0より大きいことが好ましい。
【0030】
式(I)の櫛型ポリマーKPの製造は、一方では式(III)、(III)、(III)および/または(III)の各モノマーのラジカル重合によって、次いで、構造成分(構造単位)s1、s2、s3およびs4をもたらすことができ、
【化3】

または、他方では、式(IV)のポリカルボン酸のいわゆるポリマー類似転換によって行われる。
【化4】

ポリマー類似転換において、式(IV)のポリカルボン酸は、各アルコールまたは各アミンでエステル化またはアミノ化されて、次いで必要なら中和または部分中和される(例えば、金属水酸化物またはアンモニアを含む基Mの種類に応じて)。ポリマー類似転換の詳細は、例えば、欧州特許第1138697(B1)号第7ページ第20行から第8ページ第50行および実施例に、または欧州特許第1061089(B1)号の第4ページ第54行から第5ページ第38行、ならびに実施例に開示されている。その変形としては、欧州特許出願公開第1348729(A1)号の第3ページから第5ページおよび実施例に記載されているように、式(I)の櫛型ポリマーKPは固体凝集状態で製造することができる。すぐ上述の特許の開示は、参照によって具体的に本明細書に包含される。
【0031】
式(I)の櫛型ポリマーKPの特に好ましい実施形態は、c+d>0、特にd>0であると判明した。−NH−CH−CH−OHは、基Rとして特に有利であると分かった。特に有利な櫛型ポリマーKPは、ViscoCrete(登録商標)の商品名シリーズでSika Schweiz AGによって市販されているものであることが判明した。
【0032】
とりわけ、u=0−20、特に0、1、2または3の式OH−(CH−CHO)−CHCH−Oのグリコールのようなアルキレングリコールが特に適切である。可能なグリコールとして好適なものはまた、エチルグリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの反応生成物、活性な塩基性水素を含有する化合物(多価アルコール、ポリ炭酸、ポリアミン、またはポリフェノール)とのポリプロピレングリコールの反応生成物、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ブタンジオールおよび不飽和のジオール、ならびにそのブレンドおよび誘導体からなる列挙から選択されるグリコールである。特に好ましいグリコールは、エチレンおよびプロピレンからの、モノ、ジおよびポリグリコールならびにそのブレンドであるが、それらが経済的で、極めて水可溶性であるからである。
【0033】
アルカノールアミン、とりわけトリアルカノールアミンは、有機アミン、好ましくはトリイソプロパノールアミン(TIPA)またはトリエタノールアミン(TEA)ならびにそのブレンドとして、特に適切である。
【0034】
本発明によるさらなる使用において、少なくとも1種のリグノスルホン酸塩を含む添加剤組成物Zは、セメントクリンカーを粉砕した後にもまた無機結合剤に添加することができる。これは、無機結合剤において、特に水性無機結合剤において、セメントに粉砕する間、添加剤組成物Zが存在する、セメントクリンカーを含まない無機結合剤においてさえ、煤煙の浮遊が減少するので、有利である。
【0035】
添加剤組成物Zがセメントクリンカーを粉砕した後に無機結合剤に添加される場合、添加剤組成物Zの量を増やすことが有利であり得る。なぜなら、セメントクリンカーの粉砕プロセスの前に/間に添加剤組成物Zが添加される場合、粉砕プロセスが添加剤組成物Zの分布をより均一にかつ微細にすることができ、それによって浮遊煤煙の減少に関連する効果を増やすからである。
【0036】
可塑剤は、水の必要性を減少させ、かつ/または加工性を改善するために、無機結合剤にしばしば添加される。本文書において、用語「可塑剤」は、可塑剤を添加しない水性無機結合剤と比較して、水性無機結合剤の製造において水の必要性を減少させ、および/またはある量の可塑剤の添加後、より長い期間にわたって水性無機結合剤の加工性を保証する添加剤を指す。可塑剤は、無機結合剤の重量に対して、通常、0.2−1.5重量%の比率で無機結合剤に添加される。
【0037】
しかしながら、可塑剤には、そのプロセスにおいて生じる液性限界の低下が、煤煙の浮遊を促進するという欠点がある。
【0038】
無機結合剤の接着性を改善するために、流動化剤と比較した場合、全体の系の粘性を増す、いわゆる増粘剤が添加される。通常の増粘剤の例は、例えば、メチルエーテル(メチルデンプン、メチルセルロース)のような、デンプンおよびセルロース誘導体、ならびに、様々な程度にヒドロキシプロピル化および/またはヒドロキシエチル化されていてもよい(メチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース)、それぞれの混合エーテルである。
【0039】
しかし、懸濁液を安定化させるための増粘剤を使用する欠点は、その効果が、無機結合剤のレオロジーおよびコンシステンシーの顕著な変化と、特に液性限界および粘性の増加と密接な関係があるということである。また、使用量に依存して、無機結合剤の凝固特質に対する望ましくない影響があり、固化および硬化の遅れの形で現れる。別の大きい欠点は、増粘剤によって通常引き起こされる、混合プロセスの間の空気の取り込みである。導入された気泡は無機結合剤の密度を減少させ、それによって、硬化した材料の圧縮および引張強度の低下を引き起こす。驚いたことに、水性無機結合剤組成物に添加剤組成物Zを添加すると、圧縮強度を求めることによりわかるように、空気の取り込みは増加せず、しかも煤煙の浮遊がそれでもなお減少することが示された。したがって、添加剤組成物Zの使用は、特に可塑剤を含む無機結合剤組成物において適切である。
【0040】
また、添加剤組成物Zが、ナフタレンスルホン酸尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド亜硫酸塩樹脂および櫛型ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の可塑剤を含む場合、特に添加剤組成物Zがセメントクリンカーを粉砕した後に無機結合剤に添加される場合、有利である。好適で好ましい櫛型ポリマーは、とりわけ、粉砕剤に適切な櫛型ポリマーであると上述した櫛型ポリマーである。櫛型ポリマーが、エステル基を介して線状重合体骨格に結合した側鎖を有する櫛型ポリマーKPである場合、有利である。
【0041】
好ましくは、添加剤組成物Z中のリグノスルホン酸塩の比率は、特に、添加剤組成物Zがセメントクリンカーを粉砕した後に無機結合剤に添加される場合、無機結合剤(焼き戻し水を添加する前の)の重量に対して、0.0025−2重量%、特に0.005−0.2重量%、好ましくは0.005−0.1重量%である。
【0042】
添加剤組成物Zがセメントクリンカーを粉砕した後に無機結合剤に添加される場合、水性無機結合剤の煤煙浮遊の減少は、それが水と混合された後、すなわち水性無機結合剤、特にコンクリートに見ることができる。当然、添加剤組成物Zは、水性無機結合剤にも添加することができる。添加剤組成物Zは、焼き戻し水と混合してもまた、無機結合剤に添加することができる。驚いたことに、水性無機結合剤での煤煙浮遊を減少させるには、可塑剤とは別々に、リグノスルホン酸塩を無機結合剤に添加することが有益であることも見出された。さらなる驚きは、添加剤組成物Zの添加によって、凝固した無機結合剤の圧縮強度への負の効果、例えば、空気の取り込みの増加がないということであった。
【0043】
粉砕プロセスの前におよび/または間にセメントクリンカーに添加される、可能な添加剤組成物Zは、以下からなる(添加剤の略語は、以下の実施例の部で詳細に説明される)。
*DEG、粉砕されるセメントクリンカーに対して0.005−0.02重量%、および添加剤組成物Zに対して5−50重量%;
*TEA、粉砕されるセメントクリンカーに対して0.005−0.02重量%および添加剤組成物Zに対して5−50重量%;
*PCE、粉砕されるセメントクリンカーに対して0.005−0.02重量%、および添加剤組成物Zに対して5−50重量%;
*Ligno 1、粉砕されるセメントクリンカーに対して0.005−0.02重量%、および添加剤組成物Zに対して5−50重量%;
*防腐剤、添加剤組成物Zに対して0.1−0.4重量%;
*TBP、添加剤組成物Zに対して0.1−0.4重量%;
【0044】
セメントクリンカーを粉砕した後に無機結合剤に添加される、可能な添加剤組成物Zは、以下からなる。
*PCE、添加剤組成物Zに対して5−94.8重量%;
*Ligno 1、添加剤組成物Zに対して5−94.8重量%;
*防腐剤、添加剤組成物Zに対して0.1−0.4重量%;
*TBP、添加剤組成物Zに対して0.1−0.4重量%;
【0045】
さらなる態様の下で、本発明は、
a)少なくとも1種のリグノスルホン酸塩を含む添加剤組成物Zを無機結合剤に添加するステップを含む、煤煙を含む無機結合剤の煤煙浮遊を減少させる方法に関する。好適で好ましい煤煙、無機結合剤およびリグノスルホン酸塩は、本文書において先に述べたものに対応する。
【0046】
上記の方法において、添加剤組成物Zが、ナフタレンスルホン酸尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド亜硫酸塩樹脂および櫛型ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の可塑剤を含む場合、さらに有利である。
【0047】
添加剤組成物Zは、無機結合剤に、水と混合する前にまたは後に、すなわち水性無機結合剤に添加することができる。添加剤組成物Zはまた、焼き戻し水と混合した後に無機結合剤に添加することができる。
【0048】
異なる時間に無機結合剤に、少なくとも1種のリグノスルホン酸塩および少なくとも1種の可塑剤を添加することは、特に可塑剤が櫛型ポリマーである場合、それがリグノスルホン酸塩および可塑剤のより良好な成績をもたらすという意味で有利である。さらに、異なる時間に無機結合剤に、少なくとも1種のリグノスルホン酸塩および少なくとも1種の可塑剤を添加することはまた、添加剤組成物Zが焼き戻し水と混合された無機結合剤に添加される場合に有利である。
【0049】
さらなる態様の下で、本発明は、煤煙を含む無機結合剤の煤煙浮遊を減少させる方法であって、
a’)無機結合剤に含まれるセメントクリンカーの粉砕プロセスの前におよび/または間に、少なくとも1種のリグノスルホン酸塩を含む添加剤組成物Zを添加するステップを含み、添加剤組成物Z中のリグノスルホン酸塩の比率は、粉砕されるセメントクリンカーに対して0.001−1.5重量%、特に0.005から0.2重量%の間、好ましくは0.005から0.08重量%の間である、方法に関する。好適で好ましい煤煙、無機結合剤およびリグノスルホン酸塩は、本文書において先に述べたものに対応する。
【0050】
また、上記の方法において、添加剤組成物Zが、適切で好ましいと本文書で先に述べたような、グリコール、有機アミン、カルボン酸および櫛型ポリマーとの有機アミンのアンモニウム塩からなる群から特に選択される少なくとも1種のセメント粉砕剤を含む場合、有利である。
【0051】
異なる時間に無機結合剤に含まれるセメントクリンカーに、少なくとも1種のリグノスルホン酸塩および少なくとも1種のセメント粉砕剤を添加することは、特にセメント粉砕剤が櫛型ポリマーである場合、それがリグノスルホン酸塩およびセメント粉砕剤のより良好な成績をもたらすという意味で有利である。
【実施例】
【0052】
本発明を、ここで、実施例を使用して、より詳細に記載する。
【0053】
使用した添加剤
【表1】

【0054】
添加剤V1からV4(比較例)、およびZ1からZ10(本発明による実施例)を、粉砕プロセスに使用した。添加剤は、粉砕プロセスの少し前に、粉砕されるセメントクリンカーに、表1に示す量を添加した。
【0055】
【表2】

【0056】
使用したセメントクリンカー
使用したセメントクリンカーは、63% C3S、8% C2S、11% C3A および 8% C4AFからなる。
【0057】
セメントクリンカーの粉砕
各セメントクリンカーおよび各添加剤の1つ、ならびに/または添加剤なしの20kgの混合物を、上記に示した投入量でブレンドし、Siebtechnikによって製造されたドラムボールミルで100℃の温度で、毎分40回転の速度で回転させて約100分間粉砕した。
【0058】
試験方法
- 粉砕時間4500:ボールミルで粉砕した後、混合物が、DIN EN 196-6で4500cm2/gのBlaine微細度を有するまでの時間を測定した。
- 微細度:微細度は、Wasag Chemieによって製造されたBlaine機を使用して、Blaineに従って測定した。
【0059】
粉砕効率の評価
(+) 4500cm2/gのBlaine微細度に到達するまでの粉砕時間が、添加剤(B1)なしで4500cm2/gのBlaine微細度に到達するまでの粉砕時間の90%以下
(+/-) 4500cm2/gのBlaine微細度に到達するまでの粉砕時間が、添加剤(B1)なしで4500cm2/gのBlaine微細度に到達するまでの粉砕時間の95%以下
(-) 4500cm2/gのBlaine微細度に到達するまでの粉砕時間が、添加剤(B1)なしで4500cm2/gのBlaine微細度に到達するまでの粉砕時間の100%以下
【0060】
結果を表2に示す。さらに、このように粉砕したセメントを含有するモルタルの煤煙浮遊を測定した。
【0061】
【表3】

【0062】
使用したセメントは、前述の粉砕試験で得られたセメントであった。それはおよそ4500cm2/gのBlaineによる微細度を有していた。モルタルはEN 196-1によって製造し、注型し圧縮した。圧密(EN 196-1によって振動台上で)の後、浮遊する黒色粒子(煤煙)を目視によって評価した。
粒子は目に見えない=(+)
少数の粒子が目に見える=(+/-)
粒子が明白に目に見える=(-)
【0063】
結果を表2に示す。
【0064】
【表4】

【0065】
添加剤Z11からZ14(本発明による実施例)の効果をさらに判断するために、モルタルブレンドを様々な添加剤と反応させた(表3を参照)。
【0066】
【表5】

【0067】
モルタルブレンドは、5%フライアッシュを含むCEM II A-LL 42.5で製造した。モルタルブレンドのBlaine(EN 196-6)による微細度は、およそ4500cm2/gであった。表3の様々な添加剤は焼き戻し水と一緒にモルタルブレンドに添加した。混合はEN 196-1に従った。重量%で示した量は、焼き戻し水を添加する前の無機結合剤、この場合水を添加する前のモルタルブレンドに対してである。このように得られた圧縮強度ならびにモルタルブレンドの浮遊煤煙を測定した(表4を参照)。角柱(40×40×160mm)を使用して1日、2日、7日および28日後に、圧縮強度(N/mm2)を求める試験は、EN 196-1に従った。煤煙の浮遊を測定するために、モルタルを注型し圧縮し(EN 196-1によって振動台上で)、圧密の後、浮遊する黒色粒子(煤煙)を目視によって評価した。
粒子は目に見えない=(++)
少数の粒子が目に見える=(+)
粒子が明白に目に見える=(-)
【0068】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
煤煙を含む無機結合剤上に浮遊する前記煤煙を減少させるための少なくとも1種のリグノスルホン酸塩を含む添加剤組成物Zの使用であって、無機結合剤は、セメント、フライアッシュ、シリカフューム、火山土、イネモミ殻灰分および細粉化水砕スラグ;またはそのブレンドからなる群から特に選択される水硬性結合剤および/または潜在的水硬性および/またはポゾランの結合剤である、添加剤組成物Zの使用。
【請求項2】
前記煤煙の重量分率が、無機結合剤の重量に対して0.05−1.75重量%、特に0.1−1重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記煤煙が、50−200μm、特に70−150μm、好ましくは90−120μmの平均粒子寸法、および/または1−20m/g、特に5−15m/gのDIN66131によるBET比表面積を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記無機結合剤が、添加剤組成物Zの存在下でセメントに粉砕された粉砕セメントクリンカーを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記添加剤組成物Zが、添加剤組成物Z中のリグノスルホン酸塩の比率が、粉砕されるセメントクリンカーに対して、0.001−1.5重量%、特に0.005から0.2重量%の間、好ましくは0.005から0.08重量%の間となるように粉砕プロセスの前におよび/または間に、セメントクリンカーに添加されることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記添加剤組成物Zが、グリコール、有機アミン、カルボン酸および櫛型ポリマーとの有機アミンのアンモニウム塩からなる群から特に選択される少なくとも1種のセメント粉砕剤を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記添加剤組成物Zが、ナフタレンスルホン酸尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド亜硫酸塩樹脂および櫛型ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の可塑剤を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記櫛型ポリマーが、エステル基を介して線状重合体骨格に結合した側鎖を有する櫛型ポリマーKPであることを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記添加剤組成物Z中のリグノスルホン酸塩の比率が、無機結合剤の重量に対して0.0025−2重量%、特に0.005−0.2重量%、好ましくは0.005−0.1重量%であることを特徴とする、請求項7または8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
a)少なくとも1種のリグノスルホン酸塩を含む添加剤組成物Zを無機結合剤に添加するステップを含む、煤煙を含む無機結合剤の前記煤煙浮遊量を減少させる方法。
【請求項11】
前記添加剤組成物Zが、ナフタレンスルホン酸尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド亜硫酸塩樹脂および櫛型ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の可塑剤を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1種の前記リグノスルホン酸塩が、少なくとも1種の可塑剤とは異なる時間に無機結合剤に添加されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
煤煙を含む無機結合剤の前記煤煙浮遊の量を減少させる方法であって、
a’)無機結合剤に含まれるセメントクリンカーの粉砕プロセスの前におよび/または間に、少なくとも1種のリグノスルホン酸塩を含む添加剤組成物Zを添加するステップを含み、添加剤組成物Z中のリグノスルホン酸塩の比率は、粉砕されるセメントクリンカーに対して0.001−1.5重量%、特に0.005から0.2重量%の間、好ましくは0.005から0.08重量%の間である、方法。
【請求項14】
前記添加剤組成物Zが、グリコール、有機アミン、カルボン酸および櫛型ポリマーとの有機アミンのアンモニウム塩からなる群から特に選択される少なくとも1種のセメント粉砕剤を含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1種の前記リグノスルホン酸塩が、無機結合剤に含まれるセメント粉砕剤と異なる時間にセメントクリンカーに添加されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2013−505185(P2013−505185A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529302(P2012−529302)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063903
【国際公開番号】WO2011/033124
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】