説明

無機繊維布帛の洗浄方法

【課題】ガラスクロス等の無機繊維布帛の洗浄にあたり、無機繊維布帛に損傷を与えたり外観を損ねたりすることが極めて少なく、簡便な装置、手法にて経糸および緯糸を十分にもみほぐして繊維表面の不要な付着物を洗い流すことができ、構成フィラメント径が細い薄手のガラスクロス等にも適用できる洗浄方法を提供する。
【解決手段】駆動ロール3で搬送されるネット状のコンベヤ2上で拡布状に保持された無機繊維布帛1に、拡散スプレー4から噴射される散水流を当てつつ、上記コンベヤの裏側に設置されたサクションボックス5により吸引を行うことを特徴とする無機繊維布帛の洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラスクロス等の無機繊維布帛の洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無機繊維布帛は、樹脂を含浸して使用されることが多く、その際には樹脂との接着性を妨げる物質を無機繊維表面からあらかじめ除去したあとで、表面処理剤を付与することが一般的に行われている。
例えばガラスクロスの場合、原繊には紡糸時に用いられた収束剤などの有機物が、また生機クロス表面には製織時に用いられた収束剤や平滑剤などの有機物が付着しているため、ヒートクリーニング処理によりそれらを焼却除去することが一般的に行われる。しかしながら、ヒートクリーニング処理後のクロスにおいても、生機クロス由来の有機物焼却残渣やガラスから析出した極微量の無機塩が無秩序に残存付着しており、さらに表面処理クロスにおいてはシランカップリング剤などの表面処理剤が余剰に付着している場合もある。それらの不要な付着物は近隣のガラスフィラメント同士を密着させる原因となり、そのようにフィラメント同士が密着していると、ガラスクロスへの樹脂含浸が妨げられる。樹脂が含浸していない空隙部分が存在すると、樹脂/ガラス界面の密着性や耐熱性が低下し、基材の絶縁性を低下させる原因となるため、ガラス繊維表面から余分な付着物を除去しておく必要がある。
【0003】
従来、上記の無機塩由来または余剰の表面処理剤由来の付着物は、ガラスクロスの洗浄工程・表面処理工程で、ガラスクロスを水中へ浸漬したうえで外力を加えたり、ガラスクロスに直接水流を噴射したりするなどの物理的手段を用いてガラス繊維束をもみほぐして洗浄することにより除去されており、具体的な方法が種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、処理クロスを水中に浸漬し、バイブロウォッシャーを用いた流体圧処理によってガラス繊維束をもみほぐす提案がなされている。しかしながら、ガラスクロスの経糸束および緯糸束を構成するガラスフィラメントが細く、厚さも薄いガラスクロスに対しては、流耐圧による振動が大きすぎて、目曲がり等が生じて著しく外観を損なうため適用できないという問題点があった。
【0005】
例えば、特許文献2には、処理クロスを水中に浸漬し、超音波振動子を用いてガラス繊維束をもみほぐす提案がなされている。しかしながら、洗浄効率がさほど高くなく、生産速度の低下、付帯設備の大型化を招くなどの問題点があった。
【0006】
例えば、特許文献3には、処理クロスに高圧ウォータージェットを施し、無機繊維束をもみほぐす提案がなされている。しかしながら、無機繊維束にかかる水圧が大きすぎるため、クロス全面に目ずれや毛羽が発生しクロスの品質が劣化するという問題点があった。
【0007】
例えば、特許文献4には、高圧散水流を複数の液滴状に分裂させた状態で処理クロスに当てることにより、過剰に付着したシランカップリング剤を洗い流す手法が提案されている。しかし、この手法では、経糸に比較的強いライン張力がかかっていることにより、結果的に経糸が十分にもみほぐされないので、洗浄効果が不十分になるおそれがあるという問題点があった。
【0008】
これに対して、例えば、特許文献5には、生機クロスの経糸にかかる張力を常時モニターして駆動ロールの回転速度を制御することにより、経糸1本あたりにかかる張力を一定の低張力下の範囲に調節しつつスプレイや柱状流を施す物理加工方法が提案されている。しかしながら、装置が複雑となるばかりか、実際に経糸1本あたりの加工張力を制御することは容易ではなく、搬送時のガラスクロスの固定が不十分となることによってガラスクロスがバタついたり斜行するおそれがあり、そのために目ずれ・目曲がり・シワなどを生じる懸念があるという問題点があった。
【0009】
【特許文献1】特許第2854591号公報(第2頁左欄第38〜48行)
【特許文献2】特開2003−96659号公報(第3頁右欄段落[0011]〜[0012])
【特許文献3】特許第2838085号公報(第3頁右欄段落[0025])
【特許文献4】特開2003−171864号公報(第2頁左欄[請求項1]、第3頁右欄段落[0018])
【特許文献5】特開2004−277988号公報(第5〜6頁段落[0011]〜[0016])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の状況に鑑み、ガラスクロス等の無機繊維布帛の洗浄にあたり、無機繊維布帛に損傷を与えたり外観を損ねたりすることが極めて少なく、簡便な装置、手法にて経糸および緯糸を十分にもみほぐして繊維表面の不要な付着物を洗い流すことができ、構成フィラメント径が細い薄手のガラスクロス等にも適用できる洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記課題を解決できる本発明を完成した。すなわち、本発明は、
[1] 駆動ロールで搬送されるネット状のコンベヤ上で拡布状に保持された無機繊維布帛に、拡散スプレーから噴射される散水流を当てつつ、上記コンベヤの裏側に設置されたサクションボックスにより吸引を行うことを特徴とする無機繊維布帛の洗浄方法、
[2] 無機繊維布帛は、経糸および緯糸のうち少なくとも一方が単糸径3.5〜5.5μmのガラスフィラメントをそれぞれ40〜220本収束させた繊維束からなり、かつ経糸および緯糸のうち少なくとも一方の織り密度が50〜110本/25mmの範囲にあり、かつ厚さが8〜50μmのガラスクロスである前項[1]に記載の洗浄方法、
[3] 拡散スプレーから噴射される散水流を、ザウター平均粒子径が30〜200μmの範囲内にて滴状分裂した状態で無機繊維布帛に当てる前項[1]または[2]に記載の洗浄方法、および
[4] 拡散スプレーから噴射される散水流が無機布帛に当たる際のインパクト面圧が10〜70mN/cmの範囲にある前項[1]〜[3]のいずれかに記載の洗浄方法、
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、無機繊維布帛に損傷を与えたり外観を損ねたりすることが極めて少なく、簡便な方法にて経糸、緯糸ともに十分にフィラメントの開繊、もみほぐしを行って、繊維表面の不要な付着物を効果的に洗い流すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の洗浄方法においては、駆動ロールで搬送されるネット状のコンベヤ(以下、ネットコンベヤということがある)上で拡布状に保持された無機繊維布帛に、拡散スプレーから噴射される散水流が当てられる。すなわち、複数の液滴状に分裂した状態の水流が無機繊維布帛に当てられるので、ウオータージェットのような柱状流が当てられる場合に比べて、繊維を損傷したり布帛の外観を損ねたりするおそれが小さく、かつ万遍なく洗浄が行われる。
【0014】
駆動ロールによるネットコンベヤの搬送速度としては、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定すればよい。
【0015】
拡散スプレーから噴射される散水流の噴射圧としては、1〜4MPaが好ましい。該噴射圧が1MPa未満では、糸束をもみほぐすための運動エネルギーが不足して十分な洗浄効果が得られない場合がある。一方、4MPaを超えると、繊維を損傷したり布帛の外観を損ねたりする場合があり、特に後述するような薄手のガラスクロスにおいては、ガラスクロスの全面で毛羽立ちが発生したり目曲がりが生じたりする場合がある。
【0016】
また、拡散スプレーから噴射される散水流は、ザウター平均粒子径が30〜200μmの範囲内にて、さらには50〜150μmの範囲内にて液滴分裂した状態で無機繊維布帛に当てられることが好ましい。ザウター平均粒子径が30μm未満ではガラス繊維を効率良く洗浄するためのエネルギーが生じない場合があり、一方200μmを超えると液滴がガラス繊維束に衝突するときの衝撃が大きく、目ずれや毛羽立ちが起きやすくなる場合がある。
さらに、拡散スプレーから噴射される散水流が無機布帛にあたる際のインパクト面圧は10〜70mN/cmの範囲内であるのが好ましく、20〜60mN/cmの範囲内であるのがより好ましい。このインパクト面圧が10mN/cm未満ではガラス繊維を効率良く洗浄するためのエネルギーが生じない場合があり、一方、70mN/cmを超えると液滴がガラス繊維束に衝突するときの衝撃が大きく、目ずれや毛羽立ちが起きやすくなる場合がある。
【0017】
散水流に用いる液体としては、水であることが望ましいが、活性剤や添加剤を含んだ水であってもよく、表面処理液や有機溶剤であっても構わない。
【0018】
また、散水流の温度としては、特に限定されるものではないが、液体の状態を安定して保てる温度とすることが好ましい。例えば、気体状態の流体による洗浄は、噴射後の流体が自然に除去されるという点では有利なようにも思われるが、単位体積あたりの質量が液体に比べて格段に軽いため、ノズルから噴射された後、運動エネルギーによってフィラメントを動かして洗浄を行うことが困難であり、本発明には適さない。
【0019】
拡散スプレーに使用するスプレーノズルとしては、ホローコーンノズル、フルコーンノズル、フラットノズル、エアーアトマイジングノズルなどがあるが、糸束中のフィラメントを十分にもみほぐして洗浄する点で、フラットノズルが好ましい。さらに両端がテーパー形状を有する扇状の山形流量分布パターンを形成できるものであれば、複数個のノズルを配列した際に隣接するノズルのスプレーパターンとオーバーラップさせ、全スプレー巾にわたり均一なスプレー分布が実現できるのでより好ましい。この際、スプレーの広がり角とノズル個数、配列、スプレー照射距離を適宜調整することが望ましい。一般的にはスプレーの照射距離が遠すぎるとインパクト面圧が低下し、近すぎると均一なスプレー分布が得られない恐れがあることから、スプレーの照射距離は50〜250mmでインパクト面圧が10〜70mN/cmになるようにするのが好適である。
【0020】
また、拡散スプレーによる散水流は、通常、図1(ネットコンベヤの進行方向のやや上方から見ている)に示す如く、無機繊維布帛の上方から下に向かって、無機繊維布帛の幅方向(緯糸方向)に沿って扇形の膜を形成するように噴射されるが、該扇形の広がり角が10°〜50°となるようなノズルを使用することが好ましい。広がり角が10°未満のノズルでは、無機繊維布帛の全範囲をカバーするのに多数のノズルを要することになって経済的ではない。一方、50°を超えるノズルではノズル中心から散水流の広がり端部までの距離が著しく長くなり、該端部において液滴の衝撃エネルギーが不足して、洗浄効果が不均一となるおそれがある。
【0021】
スプレーノズルの配列形態としては、無機繊維布帛の幅方向(ネットコンベヤの進行方向と垂直な方向)に沿って配列するのが好ましく、千鳥配列などの階段状の配列、変則千鳥の配列、千鳥配列と一定角傾け配列の組み合わせが好ましい。また、個々のノズルの設置においては、図3に示すように、無機繊維布帛面から立てた垂線に対し、ノズル先端をクロスが走行してくる方向に向けて10°以下程度で傾けて設置してもよい。
【0022】
なお、スプレーノズルの配列ピッチは,高圧散水流の広がり角、ノズルから無機繊維布帛表面までの距離等により適宜設定すればよいが、無機繊維布帛の全範囲を確実に洗浄するために、図1(この図ではサクションボックスは省略されている)または図4に示す如く、隣接するノズルからの散水流の広がり端部が幾分重なるように調整することが好ましく、あるいは、図5に示す如く、無機繊維布帛表面における複数のノズルからの散水流の噴射領域同士がその周縁の一部を接しつつ10°以下の角度で傾斜して並ぶように調整してもよい。
【0023】
本発明においては、駆動ロールで搬送されるネット状のコンベヤ上に保持された無機繊維布帛に上記散水流を当てるが、そのように散水流を当てつつ、該コンベヤの裏側に設置されたサクションボックスにより吸引を行うこと、すなわち、散水流を当てる側と反対側から吸引を行うことが重要である。通常は図2(ネットコンベヤの進行方向と垂直な方向から見ている)に示すように、ネットコンベヤ上に保持された無機繊維布帛の上方から散水流を当て、ネットコンベヤの下方から吸引する。この吸引は主に2つの作用をもたらす。
【0024】
1つ目の作用は、無機繊維布帛に当てられた散水流が、サクションボックスの吸引穴を通して積極的に除去されることにある。噴射された散水流が除去されずに無機繊維布帛の表面に水膜を形成すると、新たに当てられる散水流の運動エネルギーを消耗させ、繊維束の内部まで揉みほぐす効果が損なわれるところ、上記の作用によりそのような事態が回避されるという効果を奏するのである。本発明における吸引除去によらず、ロールのような湾曲面上、あるいは傾斜面上で散水流を当てることによっても幾分かの除去は可能であるが、十分でない。
【0025】
2つめの作用は、無機繊維布帛にかかるライン張力が無張力に近い状態でありながら、無機繊維布帛がネット状のコンベア上で拡布状にしっかりと保持されることにある。これにより緯糸をテンタークリップ等で固定する必要も無く、無機繊維布帛にシワやばたつきを生じることなしに経糸、緯糸ともに十分開繊されて揉み解されるという効果を奏する。なお、上記吸引による無機繊維布帛の保持をより確実に行うために、予め無機繊維布帛に水等を含浸させておいてもよい。
【0026】
サクションボックスで吸引する際の負圧としては、−10〜−100gf/cm程度が好ましい。
なお、サクションボックスは、無機繊維布帛の全幅にわたって吸引が行われるよう、吸引孔が幅方向(ネットコンベヤの進行方向と垂直な方向)に沿って複数列並ぶように設置されることが好ましい。
【0027】
本発明の洗浄方法は、ガラスクロスの洗浄に適しており、特に構成フィラメントの細い薄手のガラスクロスにおいて、ガラスクロス表面に付着した不要な不純物の洗浄に適している。本発明の洗浄方法が好ましく適用されるガラスクロスは、経糸および緯糸のうち少なくとも一方が単糸径3.5〜5.5μmのガラスフィラメントをそれぞれ40〜220本収束させた繊維束からなり、かつ経糸および緯糸のうち少なくとも一方の織り密度が50〜110本/25mmの範囲にあり、かつ厚さが8〜50μmのガラスクロスである。このような薄手のガラスクロスにおいては、従来の方法では外観を損ねることなく繊維表面の不要な付着物を洗い流すことが困難であったので、本発明の洗浄方法が好ましく適用される。
【0028】
本発明をガラスクロスの洗浄に適用する場合においては、ガラス繊維表面から余分な付着物をすべて除去する目的からはガラスクロスにシランカップリング剤等の表面処理剤を付着させた後に適用するのがもっとも好都合であるが、表面処理剤を付与させる前であっても、生機クロスを脱油する前であっても適用可能であり、また任意の複数の工程で適用することもできる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。実施例、比較例中のガラスクロスの物性および試験方法は以下の方法により測定した。
1.ガラスクロスの物性測定方法:
JIS R3420に従い、測定した。
2.樹脂含浸性の評価方法:
洗浄効果の確認のため、樹脂含浸性を光透過率法で次のようにして測定した。
ポリエステルフィルムを貼ったガラス板の真上からハロゲンランプを照射した際の透過光の強度を測定し、次いでポリエステルフィルムを貼ったガラス板にガラスクロスを置き、その上から温度20℃に調整したエポキシ樹脂のワニス約0.5g/cmをのせてから60秒後の透過光の強度を測定し、これらの前者に対する後者の比を百分率で表した値を光透過率とした。測定は5回行い、その平均値を算出して樹脂含浸性の指標とした。含浸性が高い場合には光透過率の値が大きくなるが、その絶対値はガラスクロスの構成にも大きく影響されるので、後述するように同じ規格のガラスクロス同士で相対比較して評価することとした。
なお、エポキシ樹脂のワニスとしてはNBMA規格のFR−4組成のエポキシ樹脂100重量部に対して14重量部のメチルエチルケトン溶液で希釈したワニスを用いた。
3.洗浄後のガラスクロスの外観変化
目視により以下の基準で評価した。
○:洗浄前と比較してほとんど外観が変化していない
△:洗浄前と比較するとわずかにシワ/目荒れなどの外観変化が認められる。
×:洗浄前と比較すると明らかにシワ/目荒れなどの外観変化が生じている。
4.スプレー液滴粒子径:
レーザー回折法で次のようにして測定した。
扇形フラットスプレーから照射されることにより液滴分裂した水滴の粒子径を、レーザー光を回折させてマルバーン社製マスターサイザーを用いて測定した。
5.スプレー照射面のインパクト面圧:
受圧プレート上にスプレー照射して計測した。
【0030】
(実施例1)
下記表1に示すIPC規格のスタイル#1015ガラスクロス(ユニチカグラスファイバー株式会社製:商品名E02Z)の生機を400℃で40時間加熱焼却して紡糸油剤および経糸糊剤を焼却除去した。
続いてシランカップリング剤SZ6032(東レ・ダウコーニング製)をあらかじめ加水分解して得られる処理液に上記ガラスクロスを浸漬し、パダーロールにて絞液後130℃で2分間乾燥させることにより得られたシラン処理クロスを駆動ロールで搬送されるネット状のコンベア上に導いた。散水流噴射前にウォーターカーテンであらかじめ水を含浸させ、拡布状に保持したガラスクロスに対して拡散スプレーから散水流を噴射すると同時に、上記コンベアの裏側に設置されたサクションボックスにより−80gf/cmの負圧で吸引を行うことでガラスクロスの洗浄を行った。このときスプレーの噴射水圧は1.5MPaであり、液滴分裂したスプレーの水滴径はφ130μm、インパクト面圧は29.8mN/cmと測定された。
【0031】
(実施例2)
下記表1に示すIPC規格のスタイル#1037ガラスクロス(ユニチカグラスファイバー株式会社製:商品名E03E)の生機を400℃で40時間加熱焼却して紡糸油剤および経糸糊剤を焼却除去した。
続いてシランカップリング剤SZ6032(東レ・ダウコーニング製)をあらかじめ加水分解して得られる処理液に上記ガラスクロスを浸漬し、パダーロールにて絞液後130℃で2分間乾燥させることにより得られたシラン処理クロスを駆動ロールで搬送されるネット状のコンベア上に導いた。散水流噴射前にウォーターカーテンであらかじめ水を含浸させ、拡布状に保持したガラスクロスに対して拡散スプレーから散水流を噴射すると同時に、上記コンベアの裏側に設置されたサクションボックスにより−80gf/cmの負圧で吸引を行うことでガラスクロスの洗浄を行った。このときスプレーの噴射水圧は2MPaであり、液滴分裂したスプレーの水滴径はφ110μm、インパクト面圧は38.2mN/cmと測定された。
【0032】
(実施例3)
下記表1に示すIPC規格のスタイル#1078ガラスクロス(ユニチカグラスファイバー株式会社製:商品名E06E)の生機を400℃で40時間加熱焼却して紡糸油剤および経糸糊剤を焼却除去した。
続いて、シランカップリング剤SZ6032(東レ・ダウコーニング製)をあらかじめ加水分解して得られる処理液にガラスクロスを浸漬し、パダーロールにて絞液後130℃で2分間乾燥させることにより得られたシラン処理クロスを駆動ロールで搬送されるネット状のコンベア上に導いた。散水流噴射前にウォーターカーテンであらかじめ水を含浸させ、拡布状に保持したガラスクロスに対して拡散スプレーから散水流を噴射すると同時に、上記コンベアの裏側に設置されたサクションボックスにより−80gf/cmの負圧で吸引を行うことでガラスクロスの洗浄を行った。その後、このときスプレーの噴射水圧は3MPaであり、液滴分裂したスプレーの水滴径はφ80μm、インパクト面圧は53.5mN/cmと測定された。
【0033】
(比較例1)
拡散スプレーから散水流を噴射する際に事前のウォーターカーテンによる水の含浸を行わないこと、およびコンベアの裏側に設置されたサクションボックスにより吸引を行わないこと以外は全て実施例1と同じにしてガラスクロスの洗浄を行った。
【0034】
(比較例2)
拡散スプレーから散水流を噴射する際に事前のウォーターカーテンによる水の含浸を行わないこと、およびコンベアの裏側に設置されたサクションボックスにより吸引を行わないこと以外はすべて実施例2と同じにしてガラスクロスの洗浄を行った。
【0035】
(比較例3)
拡散スプレーから散水流を噴射する際に事前のウォーターカーテンによる水の含浸を行わないこと、およびコンベアの裏側に設置されたサクションボックスにより吸引を行わないこと以外はすべて実施例3と同じにしてガラスクロスの洗浄を行った。
【0036】
上記の実施例及び比較例で使用したガラスクロスの構成を下記表1に、ガラスクロス洗浄時の条件を下記表2に、洗浄後のガラスクロスの評価結果を下記表3にそれぞれ示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
上記の結果から、光透過率を同じ規格のガラスクロスを用いたもの同士で比較すると、実施例1は比較例1より1%、実施例2は比較例2より1%、実施例3は比較例3より3%高く、いずれも実施例が勝っており、余分な付着物が洗浄により十分に除去されたために樹脂含浸性が向上していることがわかる。また、実施例ではシワ/目荒れが防止されていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態の概観を模式的に示す前方図である。
【図2】本発明の実施形態の概観を模式的に示す側方図である。
【図3】ノズルの設置例を模式的に示す側方図である。
【図4】無機繊維布帛面上における散水流の噴射領域の分布の様子の一例を模式的に示す平面図である。
【図5】無機繊維布帛面上における散水流の噴射領域の分布の様子の他の例を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 無機繊維布帛
2 ネット状コンベヤ
3 駆動ロール
4 スプレーノズル
5 サクションボックス
6 散水流の噴射領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ロールで搬送されるネット状のコンベヤ上で拡布状に保持された無機繊維布帛に、拡散スプレーから噴射される散水流を当てつつ、上記コンベヤの裏側に設置されたサクションボックスにより吸引を行うことを特徴とする無機繊維布帛の洗浄方法。
【請求項2】
無機繊維布帛は、経糸および緯糸のうち少なくとも一方が単糸径3.5〜5.5μmのガラスフィラメントをそれぞれ40〜220本収束させた繊維束からなり、かつ経糸および緯糸のうち少なくとも一方の織り密度が50〜110本/25mmの範囲にあり、かつ厚さが8〜50μmのガラスクロスである請求項1に記載の洗浄方法
【請求項3】
拡散スプレーから噴射される散水流を、ザウター平均粒子径が30〜200μmの範囲内にて滴状分裂した状態で無機繊維布帛に当てる請求項1または2に記載の洗浄方法。
【請求項4】
拡散スプレーから噴射される散水流が無機布帛に当たる際のインパクト面圧が10〜70mN/cmの範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載の洗浄方法。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−291407(P2008−291407A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140772(P2007−140772)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(305040569)ユニチカグラスファイバー株式会社 (3)
【Fターム(参考)】