説明

無機薄膜付プラスチック用アンダーコート剤、無機薄膜付プラスチックフィルム、インモールド成型用加飾フィルムおよびインサート成型用加飾フィルム

【課題】無機薄膜層との密着性に優れ、無機薄膜面の平滑性を保つことができる、無機薄膜付プラスチックを製造する際に使用するアンダーコート剤を提供すること。
【解決手段】分子内に特定のアジリジニル基を少なくとも3つ有する成膜成分としての多官能アジリジン誘導体(A)、アジリジニル基開環触媒(B)、及び溶媒(C)を含有し、かつ、下記式(1)で表されるアジリジニル基と反応する官能基を分子内に有する重合体(D)を成膜成分として含有しない、無機薄膜付プラスチック用アンダーコート剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム金属層や酸化ケイ素層等の無機薄膜層とプラスチック基材との間において使用されるアンダーコート剤、および当該アンダーコート剤を用いて得られる無機薄膜付プラスチックフィルム、ならびに当該無機薄膜付プラスチックフィルムを部材とするインモールド成形用加飾フィルム、およびインサート成型用加飾フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
無機薄膜付プラスチックとは、一般には、アルミニウムなどの金属や酸化ケイ素などの金属酸化物等からなる無機薄膜を、プラスチック成型体またはプラスチックフィルムの表面に形成したものをいい、無機薄膜をなす化学種や薄膜の厚さ等に応じて、ボトルやキャップ、ガスバリアフィルム、導電シート、フィルムコンデンサ、表示用ラベル等の種々の用途に供されている。
【0003】
また、無機薄膜付プラスチックの中でも、アルミニウム層の厚みが数十nm程度と極めて薄いアルミニウム蒸着プラスチックフィルムは、従来、加飾フィルムの部材として賞用されており、成型品に電波透過性等の技術的機能やミラー感等の意匠性を付与できることから、近年、例えば、携帯電話やオーディオ製品、パソコン等の種々の電子製品の筐体に供されている。
【0004】
これらの無機薄膜付プラスチックを製造する際には、プラスチック基材の表面に、各種ポリマーを主成分とするアンダーコート剤を予め塗工し、柔軟性のあるアンダーコート層の上に金属を蒸着させる方法が採られている。これは、プラスチックの表面には通常、微細な凹凸や不純物(プラスチック添加剤等)が存在するため、無機薄膜層とプラスチック基材との密着性や、無機薄膜の平滑性を確保し難いためである。
【0005】
そうしたアンダーコート剤として、本出願人は既に、カルボキシラートアニオン基を有するアクリルコポリマーに、架橋剤としてのポリアジリジン化合物を組み合わせたものを提案している(特願2010−41532号)。このように、従来のアンダーコート剤は、主剤たる高分子量重合体に各種硬化剤を組み合わせた2液タイプのものが一般的である(特許文献1〜3を参照)。ただし、従来のアンダーコート剤の中には性能が十分でないものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−238403号公報
【特許文献2】特開2005−271467号公報
【特許文献3】特開2006−116703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、無機薄膜およびプラスチック基材との密着性に優れるだけでなく、高度に平滑な無機薄膜面を形成できる、成膜成分としての重合体を使用しない新規なアンダーコート剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討の結果、従来は架橋剤として専ら利用されていたポリアジリジン誘導体を成膜成分として使用することにより、前記課題を解決できることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、分子内に下記式(1)で表されるアジリジニル基を少なくとも3つ有する成膜成分としての多官能アジリジン誘導体(A)、アジリジニル基開環触媒(B)、及び溶媒(C)を含有し、かつ、下記式(1)で表されるアジリジニル基と反応する官能基を分子内に有する重合体(D)を成膜成分として含有しない、無機薄膜付プラスチック用アンダーコート剤;プラスチックフィルム、当該アンダーコート剤からなる層、および無機薄膜からなる層を有する無機薄膜付プラスチックフィルム;当該無機薄膜付プラスチックフィルムを部材とするインモールド成型用加飾フィルム;当該無機薄膜付プラスチックフィルムを部材とするインサート成型用加飾フィルム、に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアンダーコート剤は、所定の低分子量の多官能アジリジン誘導体を成膜成分としたものであり、従来の2液タイプのものとは異なり、アクリル樹脂やポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の主剤を必要としない。
【0011】
また、本発明のアンダーコート剤によれば、平滑性に優れた無機薄膜をプラスチック基材上に形成できる。特に無機薄膜がアルミニウム等の金属薄膜である場合には、光沢に優れた無機薄膜が得られる。また、当該アンダーコート剤からなるアンダーコート層は、無機薄膜層との密着性が良好であるため、無機薄膜付プラスチックの取り扱いに際して無機薄膜の剥がれ等が低減する。
【0012】
また、当該アンダーコート剤を用いた無機薄膜付プラスチックは、高温環境下に於いても無機薄膜に白化現象(曇り、ボケ等)や干渉縞が生じ難いため、外観が良好である。さらに、当該無機薄膜付プラスチックは、高温下での成型加工に付しても、加工部位に白化現象や干渉縞、さらにはクラックが生じないという予期せぬ効果を奏する。
【0013】
よって、当該アンダーコート剤は、例えばボトルやキャップ、レトルトパック等の包装容器や、ガスバリアフィルム、導電シート、フィルムコンデンサ、表示用ラベル、加飾フィルムの部材として好適である。特にアルミニウム蒸着プラスチックフィルムの場合には、耐白化性、耐干渉縞性、および耐クラック性が良好であることから、高温下での成型加工がなされるインモールド成型またはインサート成型用加飾フィルムの部材の製造に適している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のアンダーコート剤は、分子内に下記式(1)で表されるアジリジニル基を少なくとも3つ有する成膜成分としての多官能アジリジン誘導体(A)(以下、(A)成分という)、アジリジニル基開環触媒(B)(以下、(B)成分という)、及び溶媒(C)(以下、(C)成分という)を主成分として含有する。
【0015】
【化1】

【0016】
(式(1)中、R及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0017】
(A)成分は、(B)成分の作用により前記式(1)で表されるアジリジニル基が開環し、自己重合(ポリマー化)することによって皮膜を形成する成分であり、各種公知のもの(米国特許4382135号、日本国特開2003−104970号、日本国特開2009−256623号等)を特に制限なく使用できる。
【0018】
(A)成分としては、皮膜の密着性、平滑性、耐白化性、耐干渉縞性、および耐クラック性などの性能(以下、単に皮膜性能ということがある)のバランスを考慮して、特に3官能アジリジン化合物及び/又は4官能アジリジン化合物が好ましい。
【0019】
3官能アジリジン化合物としては、入手が容易であることから、下記一般式(2)で表されるものが好ましい。
【0020】
【化2】

【0021】
(式(2)中、Xは水素、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜3のアルキロール基を表す。R及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。Rは水素又はメチル基を表す。)
【0022】
式(2)で表される化合物としては、例えば、グリセロール−トリス(1−アジリジニルプロピオネ−ト)、グリセロール−トリス[2−プロピル−(1−アジリジニル)]プロピオネ−ト、グリセロール−トリス[2,3−ジメチル−(1−アジリジニル)]プロピオネ−ト、トリメチロールプロパン−トリス(1−アジリジニルプロピオネ−ト)、トリメチロールプロパン−トリス[2−ヘキシル−(1−アジリジニル)]プロピオネ−ト、トリメチロールプロパン−トリス[2,3−ジヘキシル−(1−アジリジニル)]プロピオネ−ト、テトラメチロールメタン−トリス(1−アジリジニルプロピオネ−ト)、テトラメチロールメタン−トリス[2−ヘキシル−(1−アジリジニル)]プロピオネ−ト、テトラメチロールメタン−トリス[2,3−ジヘキシル−(1−アジリジニル)]プロピオネ−ト等が挙げられる。
【0023】
4官能アジリジン化合物としては、例えば、下記一般式(3)で表されるものが好ましい。
【0024】
【化3】

【0025】
(式(3)中、R及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。また、Rは水素又はメチル基を表す。)
【0026】
式(3)で表される化合物としては、例えば、ペンタエリスリトール−テトラ(1−アジリジニルプロピオネ−ト)、ペンタエリスリトール−テトラ[2−ヘキシル−(1−アジリジニル)]プロピオネ−ト、ペンタエリスリトール−テトラ[2,3−ジヘキシル−(1−アジリジニル)]プロピオネ−ト等が挙げられる。
【0027】
他の(A)成分としては、テトラアジリジニルメタキシレンジアミン、テトラアジリジニルメチルパラキシレンジアミン等の他の4官能アジリジン化合物や、前記日本国特開2003−104970号に記載された6官能アジリジン化合物等が挙げられる。
【0028】
なお、必要に応じて、2−メチルアジリジン、2−エチルアジリジン、2−フェニルアジリジン等の単官能アジリジン類や、ネオペンチルグリコールジ(β−アジリジニルプロピオネ−ト)等の2官能アジリジン化合物を併用できる。
【0029】
(B)成分としては、(A)成分のアジリジニル基を開環できる触媒であれば各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体種としては、パラトルエンスルホン酸、塩酸、臭素酸、ヨウ素酸、フッ素酸、フルオロスルホン酸、硫酸、リン酸等の酸触媒や、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアリールホスホニウム塩等が挙げられる。これらの中では、取り扱いが容易であるため、酸触媒、特にパラトルエンスルホン酸が好ましい。また、必要に応じ、(B)成分は各種中和剤で中和したものであってよい。
【0030】
中和剤としては、アンモニア;モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン、シクロヘキシルアミン等の第1級アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン等の第2級アミン類;トリエチルアミン等の第3級アミン類;アニリン、アリールアミン、アルカノールアミン等の他のアミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物;水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物等が挙げられる。これらの中でも、皮膜性能のバランスを考慮すると、前記アンモニア及び/又は第3級アミン類(特にトリメチルアミン、トリエチルアミン)が好ましい。
【0031】
(C)成分としては、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらの中でも、皮膜性能のバランスを考慮すると、炭素数が1〜4程度のアルコール類(特にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール)および水が好ましい。
【0032】
また、本発明のアンダーコート剤は、前記したように、一般的には各種の高分子量重合体に組み合わせる架橋剤として用いる(A)成分を、成膜成分それ自体として使用するものであるため、(A)成分を架橋剤とする重合体(合成樹脂、合成ポリマーともいう)、すなわち、前記式(1)で表されるアジリジニル基と反応する官能基を分子内に有する重合体(D)(以下、(D)成分という)を成膜成分として含有しない、(D)成分としては、例えば、カルボキシル基やカルボキシラートアニオン基等を有するポリウレタン、アクリルホモポリマー、アクリルコポリマー(特願2010−41532号等参照)、ポリエステル等が挙げられる。また、該重合体の数平均分子量は通常1500〜50000程度、具体的には3500〜50000程度である。
【0033】
本発明のアンダーコート剤における各成分の使用量は特に限定されないが、通常は、(A)成分100重量部に対し、(B)成分が1〜10重量部程度(好ましくは3〜8重量部)、(C)成分が50〜900重量部(好ましくは100〜500重量部)程度である。
【0034】
また、塩基性化合物は、通常、アンダーコート剤のpHを4〜12程度とできる量で使用するのが好ましい。
【0035】
本発明のアンダーコート剤には、必要に応じて、消泡剤、防滑剤、防腐剤、防錆剤、pH調整剤、酸化防止剤、顔料、染料、滑剤等の添加剤を含ませてもよい。また、コロイダルシリカ、フィラーなどの添加材を含ませてもよい。これらの使用量は通常、0〜10重量%程度である。
【0036】
本発明のアンダーコート剤は、前記(A)成分〜(C)成分を各種公知の方法で混合して得られる。具体的には、全成分を一度に混合する方法や、(C)成分、(B)成分および中和剤を混合した溶液に(A)成分を添加して混合する方法が挙げられる。該アンダーコート剤の固形分重量は、実用上の利便を考慮すると、通常は5〜50重量%程度である。
【0037】
本発明の無機薄膜付プラスチックとしては、基材の形状により、無機薄膜付プラスチック構造体や、無機薄膜付プラスチックフィルムが挙げられる。
【0038】
当該無機薄膜付プラスチック構造体をなすプラスチック基材の形状は特に限定されず、例えば球状、円柱状、円筒状、直方体状、板状であってよく、凹凸や曲面を有していてよい。
【0039】
当該無機薄膜付プラスチックフィルムは、プラスチックフィルム、前記アンダーコート剤からなる層、および無機薄膜からなる層を有する。
【0040】
プラスチック基材としては、ポリエステル(PET等)、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ABS、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。これらの中でも、アンダーコート層との密着性等を考慮すると、ポリエステルが好ましい。
【0041】
無機薄膜をなす種としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、スズ等の金属や、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ、酸化チタン等の金属酸化物が挙げられる。これらの中でも、アンダーコート層との密着性や、平滑性等を考慮すると、アルミニウムが好ましい。
【0042】
本発明の無機薄膜付プラスチックは、(1)前記プラスチックフィルム基材に本発明のアンダーコート剤を各種公知の方法(ディップ、スプレー、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター等)で塗工し、通常80〜185℃程度において、10秒〜5分程度加熱処理することによりアンダーコート層を形成した後、(2)アンダーコート面に、各種公知の薄膜形成法(真空熱蒸着、スパッタリング、化学的気相反応等)により前記無機薄膜種を蒸着することで、得ることができる。アンダーコート剤の塗工量は特に限定されないが、通常は乾燥固形分として0.01〜10g/m程度である。また、無機薄膜層の厚みは、通常は5〜800nm程度である。
【0043】
本発明の無機薄膜付プラスチックフィルムは、用途に応じ、プラスチックフィルム、アンダーコート層、および無機薄膜層のそれぞれに、他の機能性層が隣接していてもよい。、例えば、プラスチックフィルムとアンダーコート層との間に離型層、ハードコート層、ハードコート層用アンカー層、柄インキ層等が存在していてよい。また、無機薄膜層の上には接着剤層が存在していてもよい。
【0044】
本発明の無機薄膜付プラスチックフィルムのうち、ポリエステルフィルム、アンダーコート層、および5〜50nm程度のアルミニウム層を有するアルミニウム薄膜付プラスチックフィルムは、特に耐白化性および耐クラック性が良好であるため、インモールド成型用加飾フィルムやインサート成型用加飾フィルムとして好適である。
【実施例】
【0045】
以下、製造例、実施例及び比較例を通じて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例中「%」、「部」は重量部を基準とする。
【0046】
合成例1(成膜成分としてのアクリル樹脂の製造)
撹拌装置、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた反応容器に、メタクリル酸メチル215.4部、アクリル酸23.9部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.2部およびイソプロピルアルコール398部を仕込み、窒素ガス気流下にて80℃、5時間保持した。さらに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2.4部を仕込み、反応系を同温度付近において更に3時間保温した。次いで、イソプロピルアルコール140.7部、水385.3部、トリエチルアミン33.5部を仕込み、数平均分子量が30000、カルボキシラートアニオン基の含有量が1.4mmol/gのアクリルコポリマーの溶液(不揮発分:20%)を得た。
【0047】
合成例2(成膜成分としてのポリウレタン樹脂の製造)
合成例1と同様の4つ口フラスコに、市販ポリカーボネートジオール(製品名「ニッポラン980R」、数平均分子量2000、日本ポリウレタン工業(株)製)を362.3部、イソホロンジイソシアネート151.4部、2,2−ジメチロールプロピオン酸36.3部、メチルエチルケトン550部を仕込み、80℃で10時間ウレタン化反応を行ってイソシアネート基末端のウレタンプレポリマー1100部を得た。次いで、当該組成物を、撹拌状態にある鎖伸長剤溶液(トリエチルアミン24.6部、イソプロピルアルコール41.1部、イソホロンジアミン3.6部、アジピン酸ジヒドラジド12.1部、メチルエチルケトン434.9部)へ滴下して、反応系全体を混合した。その後、反応系を60℃で2時間撹拌保持して、鎖伸長反応を完了させることにより、カルボキシラートアニオン基の含有量が0.5mmol/g、数平均分子量が4000のポリウレタンの溶液(不揮発分:35%)を得た。
【0048】
合成例3(成膜成分としてのポリエステル樹脂の製造)
合成例1と同様の反応容器に、テレフタル酸479部、イソフタル酸402部、アゼライン酸87部、エチレングリコール256部、1,6−ヘキサンジオール354部およびグリセリン23部を仕込み、撹拌下に反応系を加熱してこれらを溶融した。次いで、反応系を、脱水縮合反応で生成する水を除去しながら、160℃から200℃まで3時間かけて昇温し、更に200℃で1時間保温した。次いで三酸化アンチモンを0.16部加えた。次いで、反応容器に真空減圧装置を接続し、235℃、2.8kPaで1時間、減圧重縮合反応を行った。次いで、減圧状態を解除して反応系を150℃まで冷却し、反応系に無水トリメリット酸119部を仕込み、1時間保温した。次いで、メチルイソブチルケトン1935部、メチルエチルケトン1935部を加え均一に溶解させた。次いでトリエチルアミン125部を仕込み、中和し、カルボキシラートアニオン基の含有量が0.4mmol/g、数平均分子量が10000のポリエステルの溶液(不揮発分:35%)を得た。
【0049】
<アンダーコート剤の調製>
実施例1
イオン交換水50.5部、パラトルエンスルホン酸6部、及びトリエチルアミン3.5部を加え、よく混合した。次いで、得られた水溶液にテトラメチロールメタン−トリス(1−アジリジニルプロピオネート)(商品名「TAZO」、相互薬工(株)製)のイソプロピルアルコール溶液333部(不揮発分30重量%)を混合し、アンダーコート剤を調製した。
【0050】
実施例2
イオン交換水50.5部、パラトルエンスルホン酸1部、及びトリエチルアミン0.6部を加え、よく混合した。次いで、得られた水溶液にTAZOのイソプロピルアルコール溶液333部(不揮発分30重量%)を混合し、アンダーコート剤を調製した。
【0051】
実施例3
イオン交換水50.5部、パラトルエンスルホン酸6部、及びトリエチルアミン3.5部を加え、よく混合した。次いで、得られた水溶液にトリメチロールプロパン−トリス(1−アジリジニルプロピオネート)(商品名「TAZM」、相互薬工(株)製)のイソプロピルアルコール溶液333部(不揮発分30重量%)を混合し、アンダーコート剤を調製した。
【0052】
比較例1
合成例1で得られたカルボキシル基含有アクリル樹脂の溶液50部、パラトルエンスルホン酸0.4部、及びトリエチルアミン0.3部を加え、良く混合した。ついでTAZOのイソプロピルアルコール溶液20部(不揮発分30重量%)を混合し、アンダーコート剤を調製した。
【0053】
比較例2
合成例2で得られたカルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の溶液50部に、TAZOのイソプロピルアルコール溶液3.3部(不揮発分30重量%)を混合し、アンダーコート剤を調製した。
【0054】
比較例3
合成例3で得られたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂の溶液50部に、TAZOのイソプロピルアルコール溶液3.3部(不揮発分30重量%)を混合し、アンダーコート剤を調製した。
【0055】
<無機薄膜付プラスチックフィルムの作製および評価>
市販PETフィルム(製品名「E5100」、東洋紡績(株)製、38μm厚)に、実施例1のアンダーコート剤を、バーコーターを用いて乾燥膜厚が1μとなるように塗工した。次いで、塗工フィルムを循風乾燥機にて乾燥(150℃、60秒間)させた。
【0056】
次に、前記乾燥フィルムを市販の蒸着装置(製品名「NS−1875−Z」、西山製作所(株)製、無機薄膜種としてアルミを使用)を用い、蒸着層の厚が50nmであるアルミニウム蒸着フィルムを得た。これを実施例1の試験フィルムとして用いた。他の実施例及び比較例についても同様にして試験フィルムを作製した。
【0057】
(密着性)
実施例および比較例の各アルミニウム蒸着フィルムについて、蒸着面に粘着テープ(製品名「セロテープ」、ニチバン(株)製)を貼り付け、これを垂直方向に勢い良く引き剥がしたところ、いずれにおいてもアルミニウム蒸着面に剥がれは認められなかった(表1において○とした。)
【0058】
(平滑性)
実施例および比較例の各アルミニウム蒸着フィルムについて、蒸着面の外観を以下の規準で目視評価した。結果を表1に示す。
○…光沢に優れる
×…光沢に乏しい
【0059】
実施例および比較例の各アルミニウム蒸着フィルムについて、循風乾燥機にて150℃で1時間加熱した後の蒸着面の白化と干渉縞の程度を、目視により、以下の基準で評価した。
【0060】
(耐白化性)
5…白化が生じていない
4〜1…白化が生じている。数字が小さくなるほどその程度が大きい。
(耐干渉縞性)
5…干渉縞が生じていない
4〜1…干渉縞が生じている。数字が小さくなるほどその程度が大きい。
【0061】
次に、市販アクリルパネル(製品名「コモグラス」、(株)クラレ製、5cm×5cm×1mm)に、実施例1で得られたアンダーコート剤を、乾燥膜厚が1μとなるようバーコーターにて塗工し、順風乾燥機において、150℃で60秒間、乾燥させた。次いで、前記蒸着装置を用い、当該テストパネルのアンダーコート面に、蒸着層の厚みが50nmとなるようにアルミニウムを蒸着させたることにより、耐クラック性および耐干渉縞試験用のテストパネルを作製した。他の実施例及び比較例に係るアンダーコート剤についても同様にしてテストパネルを作製した。
【0062】
また、当該テストパネルの屈曲器具として、アルミニウム板(15cm×5cm×1mm)を真中で60°に折り曲げたものを用意した。
【0063】
続けて、順風乾燥機(250℃)において加熱した当該屈曲器具の折り曲げ辺上に、前記テストパネルをアクリルパネル側から約3秒間押し付けた後、約80°に折り曲げた。折り曲げ部位におけるアルミ蒸着層の状態について、加工部の割れ・剥がれ、および、干渉縞のそれぞれにおいて、以下の基準により目視評価した。
【0064】
(耐クラック性)
5…割れや剥がれが生じていない。
4〜1…割れや剥がれが生じている。数値が小さくなるほど程度が大きい。
(耐干渉縞性)
5…干渉縞が生じていない。
4〜1…干渉縞が生じている。数値が小さくなるほど程度が大きい。
【0065】
なお、厚手のアクリルパネルを使用することにより、パネルの曲げ方向にアンダーコート面(層)が過度に引き伸ばされる。その結果、アルミニウム蒸着層にクラックがより生じ易い状況となる。こうした過酷な試験条件は、インモールド射出成形の実機を意図したものである。
【0066】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に下記式(1)で表されるアジリジニル基を少なくとも3つ有する成膜成分としての多官能アジリジン誘導体(A)、アジリジニル基開環触媒(B)、及び溶媒(C)を含有し、かつ、下記式(1)で表されるアジリジニル基と反応する官能基を分子内に有する重合体(D)を成膜成分として含有しない、無機薄膜付プラスチック用アンダーコート剤。
【化1】


(式(1)中、R及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【請求項2】
(A)成分が3官能アジリジン化合物及び/又は4官能アジリジン化合物である、請求項1のアンダーコート剤。
【請求項3】
3官能アジリジン化合物が下記一般式(2)で表されるものである、請求項2のアンダーコート剤。
【化2】

(式(2)中、Xは水素、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜3のアルキロール基を表す。R及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。Rは水素又はメチル基を表す。)
【請求項4】
(B)成分がパラトルエンスルホン酸である、請求項1〜3のいずれかのアンダーコート剤。
【請求項5】
(C)成分が炭素数1〜4のアルコール類および水である、請求項1〜4のいずれかのアンダーコート剤。
【請求項6】
プラスチックフィルム、請求項1〜5のいずれかのアンダーコート剤からなる層、および無機薄膜からなる層を有する無機薄膜付プラスチックフィルム。
【請求項7】
無機薄膜層がアルミニウム層である、請求項6の無機薄膜付プラスチックフィルム。
【請求項8】
請求項6または7の無機薄膜付プラスチックフィルムを部材とするインモールド成型用加飾フィルム。
【請求項9】
請求項6または7の無機薄膜付プラスチックフィルムを部材とするインサート成型用加飾フィルム。


【公開番号】特開2011−208037(P2011−208037A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77627(P2010−77627)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】