無機被膜形成方法
【課題】ワックスやポリマ加工を不要にし、耐久性にすぐれた無機被膜を形成する方法を提供する。
【解決手段】水と接触して珪素成分とアルミニウム成分を溶出し得る石英斑岩、電気石、麦飯石から選ばれた1種または2種以上の選択された鉱石を素材としてなり、化学組成として珪素50〜80%(重量%、以下同様)、アルミニウム10〜50%、チタニウム1.0〜10%、鉄1.0〜9.0%を含むセラミック材の粒子14またはそれらセラミック材を表層成分とした表層を有する粒子に原水aを接触させ、この原水aに電荷を帯びた前記化学成分を励起電流とともに溶出させて電荷水bとなし、次いでその電荷水bを電磁界内に導入、通過させ誘導電流を発生させた後、その磁界処理を行った電荷水bをワーク33表面に噴射またはワーク33をこの電荷水bに浸漬して接触させて、そのワーク33表面に前記溶出成分の酸化物を主成分とする無機被膜を形成する。
【解決手段】水と接触して珪素成分とアルミニウム成分を溶出し得る石英斑岩、電気石、麦飯石から選ばれた1種または2種以上の選択された鉱石を素材としてなり、化学組成として珪素50〜80%(重量%、以下同様)、アルミニウム10〜50%、チタニウム1.0〜10%、鉄1.0〜9.0%を含むセラミック材の粒子14またはそれらセラミック材を表層成分とした表層を有する粒子に原水aを接触させ、この原水aに電荷を帯びた前記化学成分を励起電流とともに溶出させて電荷水bとなし、次いでその電荷水bを電磁界内に導入、通過させ誘導電流を発生させた後、その磁界処理を行った電荷水bをワーク33表面に噴射またはワーク33をこの電荷水bに浸漬して接触させて、そのワーク33表面に前記溶出成分の酸化物を主成分とする無機被膜を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、鉄道車輌、船舶、航空機、家電製品などの他、眼鏡、アクセサリーなどの宝飾品にも用いられる鉄,アルミニウム、合成樹脂、ガラス、ゴム、陶磁器などの構成部材表面およびそれらの塗装面の保護を対象とした無機被膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、鉄道車輌、船舶、航空機など屋外で用いられる前記構成部材の表面は、埃、煤塵、虫などが付着しやすく、常時清掃が必要であった。これら装置表面には、通常、ワックス、ポリマ加工など表面被膜で被覆、保護しているものの、それら材料は有機質精製品であるため環境汚染源となることが指摘されている。
【0003】
また、これら保護被膜は、紫外線などによって風化の影響を受けやすく、塗膜の褪色、光沢の低下など外観や機能が低下する弱点があり、さらに保護被膜自体が軟質なため加傷を受けやすく、外観の保護は十分でなかった。このため、頻繁にワックスやポリマ加工を繰り返す必要があって、材料コスト、工数を要するという問題もあった。さらに、眼鏡、宝飾品、鏡など人が接する生活品では、その表面が曇り易く、付着した油脂分が除去し難いなどの問題もあった。
【0004】
このような問題に対処するものとして、トルマリンの発生する電荷による電着作用でホウ酸シリカ被膜を形成させる手法が提案されている(特許文献1を参照)。しかし、この方法で得られる保護被膜は被膜耐久性の点で未だ十分とは言えなかった。
さらに、本件出願の発明者は、特許文献2に示すような、新しい無機被膜形成方法およびその装置の発明(以下、先行発明という)を提案した。そして、この技術を基にして無機被膜が高品質で安定して得られるよう改善を行い、また機能をさらに高めるための開発を行ってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−192086号公報
【特許文献2】特許第3948671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、自動車、鉄道車輌、船舶、航空機など屋外部材の表面を保護するための、耐久性にすぐれ、低コストな無機被膜を実現でき、従来のワックスやポリマ加工を不要にし、汚染抑制、環境保全に寄与することができるという先行発明と同様なメリットがあるうえ、さらに、高品質の無機被膜が安定して得られること、無機被膜の光輝・光沢性能、防曇性など表面性を改質すること、電荷水の除菌性など自然生態系に対する安全性を高めることなどの改善が可能な無機被膜形成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、本発明は、前記先行発明をベースにしており、その課題解決のため被膜形成液中の特定の溶出化学成分に着目したものであり、具体的には、その溶出成分の基になる素材の化学組成が特定の値の場合に、安定して高い値の被膜機能が得られるという知見に基づいている。
【0008】
上記の問題は、水と接触して珪素成分とアルミニウム成分を溶出し得る石英斑岩、電気石、麦飯石から選ばれた1種または2種以上の選択された鉱石を素材としてなり、化学組成として珪素50〜80%(質量%、以下同様)、アルミニウム10〜50%、チタニウム1.0〜10%、鉄1.0〜9.0%を含むセラミック材の粒子またはそれらセラミック材を表層成分とした表層を有する粒子に原水を接触させ、この原水に電荷を帯びた前記化学成分を励起電流とともに溶出させて電荷水となし、次いでその電荷水を電磁界内に導入、通過させ誘導電流を発生させた後、その磁界処理を行った電荷水をワーク表面に噴射またはワークをこの電荷水に浸漬して接触させて、そのワーク表面に前記溶出成分の酸化物を主成分とする無機被膜を形成することを特徴とする本発明の無機被膜形成方法によって、解決することができる。
【0009】
なお、本発明における化学組成(質量%)は、構成元素のうち酸素を除外した構成元素の含有量を100%とした場合の値で示している。以下の説明でも、酸化物として明記した場合を除き、同様である。
【0010】
そして本発明は、被膜機能を改質するため、前記セラミック材には、銀を0.01〜0.5%含有させた形態に具体化でき、さらに、前記銀が方鉛鉱、輝銀鉱、およびまたは、角銀鉱から精錬、抽出したものである形態に好ましく具体化できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の無機被膜形成方法は、以上説明したように構成されており、これから得られる処理水によって得られる無機被膜は、次の特徴的原理に基づいている。
本発明によって得られる無機被膜は、前記セラミック材の粒子またはそれらセラミック材を表層成分とした表層を有する粒子の溶出成分から構成されるSiO2−Al2O3−TiO2系の鉱石(ストーン)被膜であり、副成分として、酸化鉄(FeOと総称する)を有し、さらに、酸化銀を付加させることもできる。さらに酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)などを付随成分として含むことがある。そして、これら被膜はナノメータ・レベルの超薄膜型メッキの性格を備えており、電気化学反応メッキの性格も備えている。
【0012】
かくして、本発明の無機被膜形成方法によれば、得られる無機被膜は、SiO2−Al2O3−TiO2、FeO被膜の場合、低コストと優れた耐久性を実現して、従来のワックスやポリマ加工を不要にする他、汚染物質自体を分解して除去できる光触媒機能や、高光沢性、親水性、防曇性など有益な表面改質が期待できる。さらに、酸化銀(AgO)を含む被膜では、除菌性が付与されて生態系により好ましいものとなる。かくして、本発明は、従来の問題点を解消した無機被膜形成装置として、実用的価値はきわめて大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を説明するための主要な装置の模式的ブロック図。
【図2】噴射圧力と被膜厚さの関係を示すグラフ。
【図3】処理時間と被膜厚さの関係を示すグラフ。
【図4】処理面の反射率を示すグラフ。
【図5】処理面の摩擦係数を示すグラフ。
【図6】処理面の表面硬度を示すグラフ。
【図7】処理面の光電子分析(ESCA)結果を示すグラフ。
【図8】処理面の汚染分解性を示すグラフ。
【図9】磁界処理の効果を示すグラフ。
【図10】電荷水中の鉄分とセラミック材の鉄分との関係を示すグラフ。
【図11】屋外曝露における光沢度の変化を示すグラフ。
【図12】Si量、Al量と光沢度の関係を示すグラフ。
【図13】超音波処理前後の接触角の変化を示すグラフ。
【図14】超音波照射と活性酸素の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の無機被膜形成方法に係る実施形態について、図1〜8、図9〜13を参照しながら説明する。
先ず、図1は、本発明に用いられる無機被膜形成装置の原理を示し、その基本的な構成は、電荷水を生成する電荷水生成槽1、電荷水を磁界処理する磁界処理槽2、ワーク表面に磁界処理水を接触させ、無機被膜を形成させる被膜形成槽3とから少なくとも構成され、この点は先行発明と同様である。
【0015】
(電荷水生成槽)
この電荷水生成槽1は、水道水や井水などの原水aを導入する原水供給口11と処理後の電荷水bを取り出す電荷水取出し口12を備え、その内部に水と接触して少なくとも珪素、アルミニウム、チタニウム、鉄成分を溶出成分として溶出するするセラミック材からなる無数の粒子(以下、この粒子と、それらセラミック材を表層成分とした表層を有する粒子とを総称して、単にセラミック粒子14という)を装填したセラミック粒子装填部13から構成されている。
【0016】
このセラミック粒子14は、下記化学組成を持つSiO2−Al2O3−TiO2系セラミック材からなる粒径3〜10mmの略球形粒子が適当であるが、後記する電荷水の生成効率を高めるには、石英斑岩、電気石、麦飯石から選ばれた1種または2種以上の選択された鉱石を素材として50%以上含有させたセラミック材から構成されるのがより好ましい。そして、このセラミック材は、化学組成(酸化物換算)として珪素50〜80%(質量%、以下同様)、アルミニウム10〜50%、チタニウム1.0〜10%、鉄1.0〜9.0%を含むことが重要であり、これらの範囲を外れると好ましい無機被膜を形成することができない。
【0017】
前記石英斑岩、電気石、麦飯石は天然鉱石であり、その種類も多く存在するが代表的なものについて解説する。
先ず、石英斑岩は、火山岩である花崗岩類似の鉱物構成を持ち、石英、長石を主とし黒雲母など副成分を10%内外含み、その化学組成の一例は、SiO2:77%、Al2O3:13% NaKO:8% 、その他TiO2、Fe2O3、MgOなど1%以下含む、である。
また、電気石(トルマリン)は、一般化学式は、(Ca/Na)(Mg/Fe2+/Fe3+/Al/Li)3Al6(BO3)3(Si6O18)(OH、F)4 で表されるが、(Mg/Fe2+/Fe3+/Al/Li)中の特定成分が主成分となる場合には、例えば、Mgが主の場合に「苦土電気石」、鉄が主となると「鉄電気石」と呼ばれる。
麦飯石は、花崗岩が風化したもので、その化学組成の一例は、SiO2:66%、Al2O3:16% NaKO:6%、その他Fe2O3:2%、CaO:3%、MgO:1%などからなる。
【0018】
本発明のセラミック材およびセラミック粒子は次のような手順で製作することができる。
石英斑岩、電気石、麦飯石から選択された鉱石を粒径0.1mm以下に粉砕して鉱石粉砕物とし、これを調湿し、造粒機で粒径3〜10mm程度で球形、柱形状など適宜な立体形状に造粒する。そのその造粒物を乾燥後、加熱炉で焼結する。焼結の程度は、前記電荷水生成槽1に装填するなどの取り扱いで破損しない程度に焼結させるが、吸水率5%以上を保持する多孔質とするのがより好ましい。
【0019】
そして、このセラミック粒子は、石英斑岩、電気石、麦飯石から選択された鉱石だけで構成してもよいが、それら鉱石に適宜な成形助剤(粘土類)、増量剤(珪砂、シャモットなど)、焼結バインダ(長石、ガラス粉など)を添加してもよい。その場合は、本発明の作用効果を確実ならしめるためには選択された前記鉱石が50%以上を占めることが重要である。そして、それらセラミック粒子の化学組成(酸化物換算)として珪素50〜80%(質量%、以下同様)、アルミニウム10〜50%、チタニウム1.0〜10%、鉄1.0〜9.0%を含むことが重要である。
【0020】
なお、前記石英斑岩、電気石、麦飯石から選択された鉱石から、前記化学組成が構成できない場合、不足する成分については、別途添加する必要がある。通常、チタニウム1.0〜10%、鉄1.0〜9.0%は、選択された鉱石からは十分に得られないので、この鉱石の粉砕前または粉砕後に、酸化チタンまたは酸化鉄の形態の要量を添加・混合することで目的の化学組成が得られる。
【0021】
さらに、チタニウム、鉄成分の添加方法として好ましい手法を説明する。
焼結前または焼成後の多孔質の鉱石造粒粒子に可溶性チタニウム、可溶性鉄の水溶液、例えば、硝酸チタニウム、硝酸鉄などの適宜濃度の水溶液を含浸させ、加熱、分解すれば、造粒粒子の表面から中央部分に向けてその気孔内に微細なチタニウム、鉄の酸化物を露出させて分散させて保持させることができる。この手法によれば、添加量のほぼ全量が水と接触可能な状態で分散していることから、酸化チタンまたは酸化鉄を単純に混合した場合に較べて溶出し易く、各成分に基づく被膜性能の改質に効果的を寄与することができる。
【0022】
また、本発明の所定の化学組成のセラミック粒子を得るには、予め化学組成のうち特定の元素、例えば、珪素、アルミニウム、チタニウム、鉄などの含有量を変化させて焼結したセラミック粒子を適当な種類に準備し、それらを所定の化学組成になるよう、組み合せて混合するようにしてもよい。このような混合するための組成を持った事例であるセラミック粒子1〜3を、次の表1に示しておく。このような方法によれば、実用に供するセラミック粒子の化学組成を所望の範囲のものに、容易に設定することができる。
【0023】
【表1】
【0024】
なお、本発明のセラミック粒子は、前記した特定の化学組成を持つセラミック材を表層成分とした表層を有する粒子、つまり表層と芯部とが成分を異なる複数の層構造の粒子に具体化してもよい。この場合、溶出成分は表層部分から供給されることになるので、原材料コストを低減できる利点がある。なお、この表層部分は、前記の選択された鉱石50%以上含み、かつ前記の化学組成をもつことが要求されるのは言うまでもない。
【0025】
また、本発明では、被膜性能を改質し、除菌性能を付与するために、前記セラミック粒子の少なくとも表面部分に銀を含有させることが好ましい。この場合、銀の含有量は0.1%未満ではその効果が希薄であり、0.5%超えでは含有量の割にはその効果が向上しないので、含有量は0.1〜0.5%で十分である。
【0026】
また、この銀成分は、選択された鉱石に金属銀を混合して粉砕するようにしてもよいが、前記したチタニウム、鉄の場合のように、焼結前または焼成後の造粒粒子に銀塩水溶液、例えば、硝酸銀、塩化銀、酢酸銀などの適宜濃度の水溶液を含浸させ、加熱、分解すれば、セラミック粒子の表面から芯にかけて、その気孔内に微細な酸化銀を露出させて分散させて保持させるのが好ましい。かくして、分散させた銀が他の成分で覆われることがないので、添加量の全量が溶出可能となるので、比較的少ない銀の含有量で前記被膜性能の改質に効果的を寄与することができる。
【0027】
また、この方法によれば、銀の含有量を簡単に調節できる利点がある。銀含有量は、対象となるセラミック粒子に対する銀塩水溶液の含浸量に比例する、また銀塩水溶液の濃度にも比例するという関係があるから、銀塩水溶液の濃度あるいは含浸量を制御することで、セラミック粒子の銀含有量を調整することができる。
なお、前記銀が方鉛鉱、輝銀鉱、およびまたは、角銀鉱から精錬、抽出したものであるが好ましい。
【0028】
そして、これらセラミック粒子は、原水供給口11から送入された原水aが該セラミック粒子14に接触しながら通過可能な状態にセラミック粒子装填部13に装填されている。例えば、原水aの水流によってセラミック粒子14が流動し撹拌され、セラミック粒子14と原水aとが十分に接触するのが好ましいので、その場合には、セラミック粒子14は流動可能に装填されるのがよい。
【0029】
この電荷水生成槽1では、原水aが前記した鉱石成分を含むセラミック粒子14に接触すると瞬間的に水中に放電され、その励起電流とともに、セラミック粒子14から少なくとも珪素、アルミニウム、チタニウム、鉄の溶出成分が、電荷を帯びた状態で溶出して活性化した電荷水bが得られる。この励起電流は、前記セラミック粒子14から半永久的に得られるもので、本発明により得られる無機被膜形成のための主要な起動力となっているのである。
【0030】
(磁界処理槽)
次に、磁界処理槽2は、前記電荷水生成槽1で得られた電荷水bを送り込む電荷水送入口21と磁界処理水cを取り出す磁界処理水取出し口22を備え、内部に電磁界を形成するS極23aおよびN極23bとを配置し、その間に電荷水bの通過水路24を設けて構成される。
この磁界処理槽2においては、電荷を帯びた前記電荷水bをS極23aとN極23bとで形成される電磁界内に導入し、その通過水路24を通過させれば、ファラデーの法則によって所定の誘導電流が発生し、電荷水bは、より活性化した磁界処理水cとして取り出される。この磁界処理の目的には、この電磁界の強度を0.10〜0.80mGに設定するのが好ましく、より好ましくは0.30〜0.80mGに設定するのがよい。このような条件は先行発明と全く同様である。
【0031】
この場合、この磁界処理を行わなくても、前記電荷水によりある程度の無機被膜が得られるものの、磁界処理を行った場合は、特に被膜形成の安定性、形成被膜の耐久性などの点で好ましい結果が得られため、本発明ではこの磁界処理槽は省くことのできない重要な装置である。
【0032】
(被膜形成槽)
次ぎに、本発明における被膜形成槽3は、前記磁界処理槽2で得られた磁界処理水cを送り込む磁界処理水送入口31と処理排水dを取り出す処理排水取出し口32を備え、槽内に配置したワーク33の表面に磁界処理水cを接触させる手段として、図1の事例では、ワーク33表面に加圧した磁界処理水cを噴射するノズル34を備えている。
【0033】
この被膜形成槽3では、ワーク33表面に磁界処理水cが接触することにより、磁界処理水c中の少なくとも珪素、アルミニウム、チタニウム、マグネシウム、鉄の各溶出成分が、カソード還元析出に準じた電気化学的反応によって、ワーク33表面に無機被膜を形成するのである。なお、この無機被膜は、光電子分析(ESCA)の結果、珪素、アルミニウム、チタニウム、マグネシウム、鉄の溶出成分の酸化物を主成分とし、それぞれの酸化物が結合したSiO2−Al2O3−TiO2、MgO、FeO系のガラス状被膜であることが判明している。
【0034】
このような、被膜形成には、ワーク33を磁界処理水c中に浸漬するような方法ももちろん可能であるが、図1に例示するような噴射ノズルを用いて、ワーク33表面全体に加圧した磁界処理水cを噴射するのが好ましい。その理由は、ノズル34から噴射して衝撃を与えると、衝撃電流が発生し、被膜形成の効率を向上させるからである。
【0035】
本発明においては、前記した励起電流、誘導電流、衝撃電流の総和を0.05〜0.07mAに保持するのが好ましい。その理由は、後述のような耐久性にすぐれた無機被膜が確実に形成されるからである。
【0036】
次に、本発明における無機被膜の特性の一部を図2〜9および図10に示す。これら特性では先行発明の場合と実質的に差異のないことが判った。
すなわち、図2に示す前記噴射圧力と得られる被膜の厚さの関係によれば、10〜500N/cm2の圧力範囲において膜厚は10〜60nmの範囲でほぼ安定して得られることが分った。(図中の複数の〇印は被膜形成条件を変えた場合を示す。図3も同様)
【0037】
また、図3に示す被膜形成槽3の処理時間と得られる被膜の厚さの関係によれば、瞬間的な1秒前後でも厚さ10〜100nmの被膜は得られるが、10〜60nmの安定な被膜を得るには10秒以上が好ましく、なお、60秒以上は経済的でなく不要である。また、前記電荷水を前記被膜形成に供するに際し本発明の被膜形成槽3における、処理液の温度を30〜50℃に保持するが好ましい。
【0038】
さらに、図4は、被膜表面の肌荒れ、退色あるいは光沢劣化を示す指標となる鏡面反射率に関するもので、本発明の1回処理面(記号f)、2回処理面(記号g)、5回処理面(記号h)と、ワックス処理面(記号e、以下の各図も同様に表示)のそれぞれを比較しても、本発明の被膜による下地の塗装表面に対する保護効果が大であることが分る。
【0039】
また、図5は、塗装表面への塵埃や汚損物の付着し難さおよび清掃のし易さの指標である摩擦係数(動摩擦)に関するもので、これによれば、図4と同様な本発明処理面とワックス処理面とを比較したグラフであり、これによっても、本発明の被膜による塵埃などの付着し難さや清掃のし易さが格段に優れていることが分る。
【0040】
さらに、塗装表面の耐久性の指標でもある表面硬度を鉛筆硬度で示す図6によれば、前記と同様な処理面の比較を行った結果を示したもので、この点においても顕著な相違が認められ、耐久性においても優れていることが理解される。
【0041】
また、図7は、溶出成分珪素、アルミニウム、チタニウムとした場合の無機被膜の光電子分析(ESCA)の結果であり、珪素、アルミニウム、チタニウムの各溶出成分の酸化物を主成分とし、それぞれの酸化物が結合したSiO2−Al2O3−TiO2系のガラス状被膜が最大深さが約80nmになるNMレベルの被膜層として形成されていることが判明している。なお、図7においては、○はSi、△はTiに基づく光電子数/秒を示す。なお、Tiを含まない場合の被膜を●で示してある。
【0042】
なお、図8は、白色ガラス板に本発明の被膜形成を行い、その上に墨汁液を汚染物質として塗布し、屋外に暴露し退色していく状況を透明度(完全透明=100、不透明=0とした)で示したもので、○は本発明の場合、△はSiO2−Al2O3系被膜の場合、□は酸化チタン光触媒を塗布したケース、×は無処理のケースを示している。これによれば、本発明の場合(○)は、酸化チタン光触媒の場合(□)に匹敵する分解特性を持つことが分かっている。
【0043】
図9は、磁界処理の効果を示すもので、形成被膜の代表的厚さについて磁界処理の有無の影響を示している。噴射圧力に関りなく、磁界処理を行った場合に被膜の厚さを約2倍、厚くすることができることが分かった。
【0044】
次に、図10は、セラミック粒子中の鉄分と電荷水中の鉄分の関係を示すものである。
これによれば、電荷水中に存在する鉄分が、含有重金属の許容範囲(0.3mg/l以下)内であって、通常のミネラル成分として適切かつ有効な量として0.01〜0.3mg/l存在することが確認された。このように、セラミック材に含有される1〜9%の鉄分は、被膜の形成において生物生態系へのミネラル富化に極めて有効なのである。
【0045】
次に、本発明によって実現された無機被膜の表面の改質(光沢性、親水性、防曇性、除菌性など)の状況を図11〜14、表1を参照して説明する。
ここで、セラミック粒子に用いる選択された鉱石の化学成分を次の2種類に区分して、実施例に相当する高Si−Al−Ti系:珪素50〜80%、アルミニウム10〜50%、チタニウム1〜10%、鉄1〜9%の場合の被膜(各図では○で表示)と、比較例に相当する低Si−Al−Ti系:珪素50%未満、アルミニウム20%未満、チタニウム1%未満の場合の被膜(黒点付き○で表示)との各被膜について比較を行った。参考に、ワックス処理は□、ポリマーコートは△で表示した。
【0046】
図11は、屋外曝露期間に対応した光沢度の変化で被膜の優劣を表示したものであり、実施例の場合が最も劣化が少なく屋外耐久性においても優れていることが分かる。また、図12は、珪素、アルミニウムの組成が光沢度(図面中の数値が光沢度%を示す)に及ぼす影響を示すものであり、実施例のものは、比較例の低Si−Al−Ti系(低珪素、低アルミニウム)の場合より優れた光沢度の被膜が得られることが示されている。
【0047】
車両ボデー塗装面における洗浄水の接触角(2θ)は、実施例が13°、比較例が18°、ワックス処理面が40°であり、実施例が最も親水性が高い。さらに、図13は、実施例と比較例の親水性の変化を示すものであり、超音波照射によって活性酸素を発生させた場合でも、接触角の低下傾向は実施例の場合が最も顕著であり、親水性に優れていることが分かる。
【0048】
図14は、被膜の防曇性に関するもので、実施例の場合は比較例に較べて活性酸素が多く発生していることが分かる。この活性酸素は前述のように被膜表面の親水性向上に寄与するので、曇り止め効果(防曇性)が得られることが理解される。
この場合、超音波照射は、本発明の成分効果にもならず、超音波照射との相乗効果も存在することを意味する処置である。
【0049】
次に、実施例の除菌性について、表2に示す。これは、東京食品技術研究所で行った試験結果の要約であり、それぞれの被膜に接した通常の飲料水が24時間経過後、有害菌がどのようになるかを調査したもので、通常のポリ容器の場合には、大腸菌は大増殖、ブドウ球菌は微減であるのに、実施例被膜の容器では、大幅な除菌効果あることが立証された。特に、銀を含む場合には、除菌効果が顕著であることが分かる。
【0050】
【表2】
【0051】
なお、本発明の処理水について水質試験を厚生労働大臣登録検査機関にて行い、次の結果を得た。一般細菌:0、大腸菌:不検出、重金属(カドミウム、水銀、鉛、砒素、6価クロム、亜鉛、鉄、銅、マンガン):基準の0.1以下、その他(シアン、硝酸窒素、フッ素、塩素イオンなど):基準の0.1以下などの通り、食品衛生法水質基準に適合するものであった。
【0052】
本発明によって得られる無機被膜は、以上説明したようにワックスやそれに類似するポリマ加工に比較して優れた性能を発揮するうえ、前記したように、本発明の無機被膜形成方法では、消耗品がほとんど必要なく、また運転動力なども僅かで済むので装置の運転費用がごく軽微であり、メンテナンスも容易なところから、その経済性は特に優れているものである。そして、ひいては公害防止、環境改善、地球温暖化抑制などにも寄与、貢献できることが期待される。
【0053】
なお、本発明の処理対象には、自動車、鉄道車輌、船舶、航空機、家電製品などの構成部材として用いられる鉄、アルミニウム、合成樹脂、ガラス、ゴムなどの多品種の部材が対象とされ得る。そして、これらワークの表面性状は、素材露出面および樹脂塗料などの塗装面のいずれであっても、支障なく適用できるが、塗装面を対象とした方が部材表面の保護の観点から好ましいものである。
【符号の説明】
【0054】
1 電荷水生成槽、11 原水供給口、12 電荷水取出し口、13 セラミック粒子装填部、14 セラミック粒子
2 磁界処理槽、21 電荷水送入口、22 磁界処理水取出し口、23a S極、23b N極、24 通過水路
3 被膜形成槽、31 磁界処理水送入口、32 処理排水取出し口、33 ワーク、34 ノズル
a 原水、b 電荷水、c 磁界処理水、d 処理排水
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、鉄道車輌、船舶、航空機、家電製品などの他、眼鏡、アクセサリーなどの宝飾品にも用いられる鉄,アルミニウム、合成樹脂、ガラス、ゴム、陶磁器などの構成部材表面およびそれらの塗装面の保護を対象とした無機被膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、鉄道車輌、船舶、航空機など屋外で用いられる前記構成部材の表面は、埃、煤塵、虫などが付着しやすく、常時清掃が必要であった。これら装置表面には、通常、ワックス、ポリマ加工など表面被膜で被覆、保護しているものの、それら材料は有機質精製品であるため環境汚染源となることが指摘されている。
【0003】
また、これら保護被膜は、紫外線などによって風化の影響を受けやすく、塗膜の褪色、光沢の低下など外観や機能が低下する弱点があり、さらに保護被膜自体が軟質なため加傷を受けやすく、外観の保護は十分でなかった。このため、頻繁にワックスやポリマ加工を繰り返す必要があって、材料コスト、工数を要するという問題もあった。さらに、眼鏡、宝飾品、鏡など人が接する生活品では、その表面が曇り易く、付着した油脂分が除去し難いなどの問題もあった。
【0004】
このような問題に対処するものとして、トルマリンの発生する電荷による電着作用でホウ酸シリカ被膜を形成させる手法が提案されている(特許文献1を参照)。しかし、この方法で得られる保護被膜は被膜耐久性の点で未だ十分とは言えなかった。
さらに、本件出願の発明者は、特許文献2に示すような、新しい無機被膜形成方法およびその装置の発明(以下、先行発明という)を提案した。そして、この技術を基にして無機被膜が高品質で安定して得られるよう改善を行い、また機能をさらに高めるための開発を行ってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−192086号公報
【特許文献2】特許第3948671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、自動車、鉄道車輌、船舶、航空機など屋外部材の表面を保護するための、耐久性にすぐれ、低コストな無機被膜を実現でき、従来のワックスやポリマ加工を不要にし、汚染抑制、環境保全に寄与することができるという先行発明と同様なメリットがあるうえ、さらに、高品質の無機被膜が安定して得られること、無機被膜の光輝・光沢性能、防曇性など表面性を改質すること、電荷水の除菌性など自然生態系に対する安全性を高めることなどの改善が可能な無機被膜形成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、本発明は、前記先行発明をベースにしており、その課題解決のため被膜形成液中の特定の溶出化学成分に着目したものであり、具体的には、その溶出成分の基になる素材の化学組成が特定の値の場合に、安定して高い値の被膜機能が得られるという知見に基づいている。
【0008】
上記の問題は、水と接触して珪素成分とアルミニウム成分を溶出し得る石英斑岩、電気石、麦飯石から選ばれた1種または2種以上の選択された鉱石を素材としてなり、化学組成として珪素50〜80%(質量%、以下同様)、アルミニウム10〜50%、チタニウム1.0〜10%、鉄1.0〜9.0%を含むセラミック材の粒子またはそれらセラミック材を表層成分とした表層を有する粒子に原水を接触させ、この原水に電荷を帯びた前記化学成分を励起電流とともに溶出させて電荷水となし、次いでその電荷水を電磁界内に導入、通過させ誘導電流を発生させた後、その磁界処理を行った電荷水をワーク表面に噴射またはワークをこの電荷水に浸漬して接触させて、そのワーク表面に前記溶出成分の酸化物を主成分とする無機被膜を形成することを特徴とする本発明の無機被膜形成方法によって、解決することができる。
【0009】
なお、本発明における化学組成(質量%)は、構成元素のうち酸素を除外した構成元素の含有量を100%とした場合の値で示している。以下の説明でも、酸化物として明記した場合を除き、同様である。
【0010】
そして本発明は、被膜機能を改質するため、前記セラミック材には、銀を0.01〜0.5%含有させた形態に具体化でき、さらに、前記銀が方鉛鉱、輝銀鉱、およびまたは、角銀鉱から精錬、抽出したものである形態に好ましく具体化できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の無機被膜形成方法は、以上説明したように構成されており、これから得られる処理水によって得られる無機被膜は、次の特徴的原理に基づいている。
本発明によって得られる無機被膜は、前記セラミック材の粒子またはそれらセラミック材を表層成分とした表層を有する粒子の溶出成分から構成されるSiO2−Al2O3−TiO2系の鉱石(ストーン)被膜であり、副成分として、酸化鉄(FeOと総称する)を有し、さらに、酸化銀を付加させることもできる。さらに酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)などを付随成分として含むことがある。そして、これら被膜はナノメータ・レベルの超薄膜型メッキの性格を備えており、電気化学反応メッキの性格も備えている。
【0012】
かくして、本発明の無機被膜形成方法によれば、得られる無機被膜は、SiO2−Al2O3−TiO2、FeO被膜の場合、低コストと優れた耐久性を実現して、従来のワックスやポリマ加工を不要にする他、汚染物質自体を分解して除去できる光触媒機能や、高光沢性、親水性、防曇性など有益な表面改質が期待できる。さらに、酸化銀(AgO)を含む被膜では、除菌性が付与されて生態系により好ましいものとなる。かくして、本発明は、従来の問題点を解消した無機被膜形成装置として、実用的価値はきわめて大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を説明するための主要な装置の模式的ブロック図。
【図2】噴射圧力と被膜厚さの関係を示すグラフ。
【図3】処理時間と被膜厚さの関係を示すグラフ。
【図4】処理面の反射率を示すグラフ。
【図5】処理面の摩擦係数を示すグラフ。
【図6】処理面の表面硬度を示すグラフ。
【図7】処理面の光電子分析(ESCA)結果を示すグラフ。
【図8】処理面の汚染分解性を示すグラフ。
【図9】磁界処理の効果を示すグラフ。
【図10】電荷水中の鉄分とセラミック材の鉄分との関係を示すグラフ。
【図11】屋外曝露における光沢度の変化を示すグラフ。
【図12】Si量、Al量と光沢度の関係を示すグラフ。
【図13】超音波処理前後の接触角の変化を示すグラフ。
【図14】超音波照射と活性酸素の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の無機被膜形成方法に係る実施形態について、図1〜8、図9〜13を参照しながら説明する。
先ず、図1は、本発明に用いられる無機被膜形成装置の原理を示し、その基本的な構成は、電荷水を生成する電荷水生成槽1、電荷水を磁界処理する磁界処理槽2、ワーク表面に磁界処理水を接触させ、無機被膜を形成させる被膜形成槽3とから少なくとも構成され、この点は先行発明と同様である。
【0015】
(電荷水生成槽)
この電荷水生成槽1は、水道水や井水などの原水aを導入する原水供給口11と処理後の電荷水bを取り出す電荷水取出し口12を備え、その内部に水と接触して少なくとも珪素、アルミニウム、チタニウム、鉄成分を溶出成分として溶出するするセラミック材からなる無数の粒子(以下、この粒子と、それらセラミック材を表層成分とした表層を有する粒子とを総称して、単にセラミック粒子14という)を装填したセラミック粒子装填部13から構成されている。
【0016】
このセラミック粒子14は、下記化学組成を持つSiO2−Al2O3−TiO2系セラミック材からなる粒径3〜10mmの略球形粒子が適当であるが、後記する電荷水の生成効率を高めるには、石英斑岩、電気石、麦飯石から選ばれた1種または2種以上の選択された鉱石を素材として50%以上含有させたセラミック材から構成されるのがより好ましい。そして、このセラミック材は、化学組成(酸化物換算)として珪素50〜80%(質量%、以下同様)、アルミニウム10〜50%、チタニウム1.0〜10%、鉄1.0〜9.0%を含むことが重要であり、これらの範囲を外れると好ましい無機被膜を形成することができない。
【0017】
前記石英斑岩、電気石、麦飯石は天然鉱石であり、その種類も多く存在するが代表的なものについて解説する。
先ず、石英斑岩は、火山岩である花崗岩類似の鉱物構成を持ち、石英、長石を主とし黒雲母など副成分を10%内外含み、その化学組成の一例は、SiO2:77%、Al2O3:13% NaKO:8% 、その他TiO2、Fe2O3、MgOなど1%以下含む、である。
また、電気石(トルマリン)は、一般化学式は、(Ca/Na)(Mg/Fe2+/Fe3+/Al/Li)3Al6(BO3)3(Si6O18)(OH、F)4 で表されるが、(Mg/Fe2+/Fe3+/Al/Li)中の特定成分が主成分となる場合には、例えば、Mgが主の場合に「苦土電気石」、鉄が主となると「鉄電気石」と呼ばれる。
麦飯石は、花崗岩が風化したもので、その化学組成の一例は、SiO2:66%、Al2O3:16% NaKO:6%、その他Fe2O3:2%、CaO:3%、MgO:1%などからなる。
【0018】
本発明のセラミック材およびセラミック粒子は次のような手順で製作することができる。
石英斑岩、電気石、麦飯石から選択された鉱石を粒径0.1mm以下に粉砕して鉱石粉砕物とし、これを調湿し、造粒機で粒径3〜10mm程度で球形、柱形状など適宜な立体形状に造粒する。そのその造粒物を乾燥後、加熱炉で焼結する。焼結の程度は、前記電荷水生成槽1に装填するなどの取り扱いで破損しない程度に焼結させるが、吸水率5%以上を保持する多孔質とするのがより好ましい。
【0019】
そして、このセラミック粒子は、石英斑岩、電気石、麦飯石から選択された鉱石だけで構成してもよいが、それら鉱石に適宜な成形助剤(粘土類)、増量剤(珪砂、シャモットなど)、焼結バインダ(長石、ガラス粉など)を添加してもよい。その場合は、本発明の作用効果を確実ならしめるためには選択された前記鉱石が50%以上を占めることが重要である。そして、それらセラミック粒子の化学組成(酸化物換算)として珪素50〜80%(質量%、以下同様)、アルミニウム10〜50%、チタニウム1.0〜10%、鉄1.0〜9.0%を含むことが重要である。
【0020】
なお、前記石英斑岩、電気石、麦飯石から選択された鉱石から、前記化学組成が構成できない場合、不足する成分については、別途添加する必要がある。通常、チタニウム1.0〜10%、鉄1.0〜9.0%は、選択された鉱石からは十分に得られないので、この鉱石の粉砕前または粉砕後に、酸化チタンまたは酸化鉄の形態の要量を添加・混合することで目的の化学組成が得られる。
【0021】
さらに、チタニウム、鉄成分の添加方法として好ましい手法を説明する。
焼結前または焼成後の多孔質の鉱石造粒粒子に可溶性チタニウム、可溶性鉄の水溶液、例えば、硝酸チタニウム、硝酸鉄などの適宜濃度の水溶液を含浸させ、加熱、分解すれば、造粒粒子の表面から中央部分に向けてその気孔内に微細なチタニウム、鉄の酸化物を露出させて分散させて保持させることができる。この手法によれば、添加量のほぼ全量が水と接触可能な状態で分散していることから、酸化チタンまたは酸化鉄を単純に混合した場合に較べて溶出し易く、各成分に基づく被膜性能の改質に効果的を寄与することができる。
【0022】
また、本発明の所定の化学組成のセラミック粒子を得るには、予め化学組成のうち特定の元素、例えば、珪素、アルミニウム、チタニウム、鉄などの含有量を変化させて焼結したセラミック粒子を適当な種類に準備し、それらを所定の化学組成になるよう、組み合せて混合するようにしてもよい。このような混合するための組成を持った事例であるセラミック粒子1〜3を、次の表1に示しておく。このような方法によれば、実用に供するセラミック粒子の化学組成を所望の範囲のものに、容易に設定することができる。
【0023】
【表1】
【0024】
なお、本発明のセラミック粒子は、前記した特定の化学組成を持つセラミック材を表層成分とした表層を有する粒子、つまり表層と芯部とが成分を異なる複数の層構造の粒子に具体化してもよい。この場合、溶出成分は表層部分から供給されることになるので、原材料コストを低減できる利点がある。なお、この表層部分は、前記の選択された鉱石50%以上含み、かつ前記の化学組成をもつことが要求されるのは言うまでもない。
【0025】
また、本発明では、被膜性能を改質し、除菌性能を付与するために、前記セラミック粒子の少なくとも表面部分に銀を含有させることが好ましい。この場合、銀の含有量は0.1%未満ではその効果が希薄であり、0.5%超えでは含有量の割にはその効果が向上しないので、含有量は0.1〜0.5%で十分である。
【0026】
また、この銀成分は、選択された鉱石に金属銀を混合して粉砕するようにしてもよいが、前記したチタニウム、鉄の場合のように、焼結前または焼成後の造粒粒子に銀塩水溶液、例えば、硝酸銀、塩化銀、酢酸銀などの適宜濃度の水溶液を含浸させ、加熱、分解すれば、セラミック粒子の表面から芯にかけて、その気孔内に微細な酸化銀を露出させて分散させて保持させるのが好ましい。かくして、分散させた銀が他の成分で覆われることがないので、添加量の全量が溶出可能となるので、比較的少ない銀の含有量で前記被膜性能の改質に効果的を寄与することができる。
【0027】
また、この方法によれば、銀の含有量を簡単に調節できる利点がある。銀含有量は、対象となるセラミック粒子に対する銀塩水溶液の含浸量に比例する、また銀塩水溶液の濃度にも比例するという関係があるから、銀塩水溶液の濃度あるいは含浸量を制御することで、セラミック粒子の銀含有量を調整することができる。
なお、前記銀が方鉛鉱、輝銀鉱、およびまたは、角銀鉱から精錬、抽出したものであるが好ましい。
【0028】
そして、これらセラミック粒子は、原水供給口11から送入された原水aが該セラミック粒子14に接触しながら通過可能な状態にセラミック粒子装填部13に装填されている。例えば、原水aの水流によってセラミック粒子14が流動し撹拌され、セラミック粒子14と原水aとが十分に接触するのが好ましいので、その場合には、セラミック粒子14は流動可能に装填されるのがよい。
【0029】
この電荷水生成槽1では、原水aが前記した鉱石成分を含むセラミック粒子14に接触すると瞬間的に水中に放電され、その励起電流とともに、セラミック粒子14から少なくとも珪素、アルミニウム、チタニウム、鉄の溶出成分が、電荷を帯びた状態で溶出して活性化した電荷水bが得られる。この励起電流は、前記セラミック粒子14から半永久的に得られるもので、本発明により得られる無機被膜形成のための主要な起動力となっているのである。
【0030】
(磁界処理槽)
次に、磁界処理槽2は、前記電荷水生成槽1で得られた電荷水bを送り込む電荷水送入口21と磁界処理水cを取り出す磁界処理水取出し口22を備え、内部に電磁界を形成するS極23aおよびN極23bとを配置し、その間に電荷水bの通過水路24を設けて構成される。
この磁界処理槽2においては、電荷を帯びた前記電荷水bをS極23aとN極23bとで形成される電磁界内に導入し、その通過水路24を通過させれば、ファラデーの法則によって所定の誘導電流が発生し、電荷水bは、より活性化した磁界処理水cとして取り出される。この磁界処理の目的には、この電磁界の強度を0.10〜0.80mGに設定するのが好ましく、より好ましくは0.30〜0.80mGに設定するのがよい。このような条件は先行発明と全く同様である。
【0031】
この場合、この磁界処理を行わなくても、前記電荷水によりある程度の無機被膜が得られるものの、磁界処理を行った場合は、特に被膜形成の安定性、形成被膜の耐久性などの点で好ましい結果が得られため、本発明ではこの磁界処理槽は省くことのできない重要な装置である。
【0032】
(被膜形成槽)
次ぎに、本発明における被膜形成槽3は、前記磁界処理槽2で得られた磁界処理水cを送り込む磁界処理水送入口31と処理排水dを取り出す処理排水取出し口32を備え、槽内に配置したワーク33の表面に磁界処理水cを接触させる手段として、図1の事例では、ワーク33表面に加圧した磁界処理水cを噴射するノズル34を備えている。
【0033】
この被膜形成槽3では、ワーク33表面に磁界処理水cが接触することにより、磁界処理水c中の少なくとも珪素、アルミニウム、チタニウム、マグネシウム、鉄の各溶出成分が、カソード還元析出に準じた電気化学的反応によって、ワーク33表面に無機被膜を形成するのである。なお、この無機被膜は、光電子分析(ESCA)の結果、珪素、アルミニウム、チタニウム、マグネシウム、鉄の溶出成分の酸化物を主成分とし、それぞれの酸化物が結合したSiO2−Al2O3−TiO2、MgO、FeO系のガラス状被膜であることが判明している。
【0034】
このような、被膜形成には、ワーク33を磁界処理水c中に浸漬するような方法ももちろん可能であるが、図1に例示するような噴射ノズルを用いて、ワーク33表面全体に加圧した磁界処理水cを噴射するのが好ましい。その理由は、ノズル34から噴射して衝撃を与えると、衝撃電流が発生し、被膜形成の効率を向上させるからである。
【0035】
本発明においては、前記した励起電流、誘導電流、衝撃電流の総和を0.05〜0.07mAに保持するのが好ましい。その理由は、後述のような耐久性にすぐれた無機被膜が確実に形成されるからである。
【0036】
次に、本発明における無機被膜の特性の一部を図2〜9および図10に示す。これら特性では先行発明の場合と実質的に差異のないことが判った。
すなわち、図2に示す前記噴射圧力と得られる被膜の厚さの関係によれば、10〜500N/cm2の圧力範囲において膜厚は10〜60nmの範囲でほぼ安定して得られることが分った。(図中の複数の〇印は被膜形成条件を変えた場合を示す。図3も同様)
【0037】
また、図3に示す被膜形成槽3の処理時間と得られる被膜の厚さの関係によれば、瞬間的な1秒前後でも厚さ10〜100nmの被膜は得られるが、10〜60nmの安定な被膜を得るには10秒以上が好ましく、なお、60秒以上は経済的でなく不要である。また、前記電荷水を前記被膜形成に供するに際し本発明の被膜形成槽3における、処理液の温度を30〜50℃に保持するが好ましい。
【0038】
さらに、図4は、被膜表面の肌荒れ、退色あるいは光沢劣化を示す指標となる鏡面反射率に関するもので、本発明の1回処理面(記号f)、2回処理面(記号g)、5回処理面(記号h)と、ワックス処理面(記号e、以下の各図も同様に表示)のそれぞれを比較しても、本発明の被膜による下地の塗装表面に対する保護効果が大であることが分る。
【0039】
また、図5は、塗装表面への塵埃や汚損物の付着し難さおよび清掃のし易さの指標である摩擦係数(動摩擦)に関するもので、これによれば、図4と同様な本発明処理面とワックス処理面とを比較したグラフであり、これによっても、本発明の被膜による塵埃などの付着し難さや清掃のし易さが格段に優れていることが分る。
【0040】
さらに、塗装表面の耐久性の指標でもある表面硬度を鉛筆硬度で示す図6によれば、前記と同様な処理面の比較を行った結果を示したもので、この点においても顕著な相違が認められ、耐久性においても優れていることが理解される。
【0041】
また、図7は、溶出成分珪素、アルミニウム、チタニウムとした場合の無機被膜の光電子分析(ESCA)の結果であり、珪素、アルミニウム、チタニウムの各溶出成分の酸化物を主成分とし、それぞれの酸化物が結合したSiO2−Al2O3−TiO2系のガラス状被膜が最大深さが約80nmになるNMレベルの被膜層として形成されていることが判明している。なお、図7においては、○はSi、△はTiに基づく光電子数/秒を示す。なお、Tiを含まない場合の被膜を●で示してある。
【0042】
なお、図8は、白色ガラス板に本発明の被膜形成を行い、その上に墨汁液を汚染物質として塗布し、屋外に暴露し退色していく状況を透明度(完全透明=100、不透明=0とした)で示したもので、○は本発明の場合、△はSiO2−Al2O3系被膜の場合、□は酸化チタン光触媒を塗布したケース、×は無処理のケースを示している。これによれば、本発明の場合(○)は、酸化チタン光触媒の場合(□)に匹敵する分解特性を持つことが分かっている。
【0043】
図9は、磁界処理の効果を示すもので、形成被膜の代表的厚さについて磁界処理の有無の影響を示している。噴射圧力に関りなく、磁界処理を行った場合に被膜の厚さを約2倍、厚くすることができることが分かった。
【0044】
次に、図10は、セラミック粒子中の鉄分と電荷水中の鉄分の関係を示すものである。
これによれば、電荷水中に存在する鉄分が、含有重金属の許容範囲(0.3mg/l以下)内であって、通常のミネラル成分として適切かつ有効な量として0.01〜0.3mg/l存在することが確認された。このように、セラミック材に含有される1〜9%の鉄分は、被膜の形成において生物生態系へのミネラル富化に極めて有効なのである。
【0045】
次に、本発明によって実現された無機被膜の表面の改質(光沢性、親水性、防曇性、除菌性など)の状況を図11〜14、表1を参照して説明する。
ここで、セラミック粒子に用いる選択された鉱石の化学成分を次の2種類に区分して、実施例に相当する高Si−Al−Ti系:珪素50〜80%、アルミニウム10〜50%、チタニウム1〜10%、鉄1〜9%の場合の被膜(各図では○で表示)と、比較例に相当する低Si−Al−Ti系:珪素50%未満、アルミニウム20%未満、チタニウム1%未満の場合の被膜(黒点付き○で表示)との各被膜について比較を行った。参考に、ワックス処理は□、ポリマーコートは△で表示した。
【0046】
図11は、屋外曝露期間に対応した光沢度の変化で被膜の優劣を表示したものであり、実施例の場合が最も劣化が少なく屋外耐久性においても優れていることが分かる。また、図12は、珪素、アルミニウムの組成が光沢度(図面中の数値が光沢度%を示す)に及ぼす影響を示すものであり、実施例のものは、比較例の低Si−Al−Ti系(低珪素、低アルミニウム)の場合より優れた光沢度の被膜が得られることが示されている。
【0047】
車両ボデー塗装面における洗浄水の接触角(2θ)は、実施例が13°、比較例が18°、ワックス処理面が40°であり、実施例が最も親水性が高い。さらに、図13は、実施例と比較例の親水性の変化を示すものであり、超音波照射によって活性酸素を発生させた場合でも、接触角の低下傾向は実施例の場合が最も顕著であり、親水性に優れていることが分かる。
【0048】
図14は、被膜の防曇性に関するもので、実施例の場合は比較例に較べて活性酸素が多く発生していることが分かる。この活性酸素は前述のように被膜表面の親水性向上に寄与するので、曇り止め効果(防曇性)が得られることが理解される。
この場合、超音波照射は、本発明の成分効果にもならず、超音波照射との相乗効果も存在することを意味する処置である。
【0049】
次に、実施例の除菌性について、表2に示す。これは、東京食品技術研究所で行った試験結果の要約であり、それぞれの被膜に接した通常の飲料水が24時間経過後、有害菌がどのようになるかを調査したもので、通常のポリ容器の場合には、大腸菌は大増殖、ブドウ球菌は微減であるのに、実施例被膜の容器では、大幅な除菌効果あることが立証された。特に、銀を含む場合には、除菌効果が顕著であることが分かる。
【0050】
【表2】
【0051】
なお、本発明の処理水について水質試験を厚生労働大臣登録検査機関にて行い、次の結果を得た。一般細菌:0、大腸菌:不検出、重金属(カドミウム、水銀、鉛、砒素、6価クロム、亜鉛、鉄、銅、マンガン):基準の0.1以下、その他(シアン、硝酸窒素、フッ素、塩素イオンなど):基準の0.1以下などの通り、食品衛生法水質基準に適合するものであった。
【0052】
本発明によって得られる無機被膜は、以上説明したようにワックスやそれに類似するポリマ加工に比較して優れた性能を発揮するうえ、前記したように、本発明の無機被膜形成方法では、消耗品がほとんど必要なく、また運転動力なども僅かで済むので装置の運転費用がごく軽微であり、メンテナンスも容易なところから、その経済性は特に優れているものである。そして、ひいては公害防止、環境改善、地球温暖化抑制などにも寄与、貢献できることが期待される。
【0053】
なお、本発明の処理対象には、自動車、鉄道車輌、船舶、航空機、家電製品などの構成部材として用いられる鉄、アルミニウム、合成樹脂、ガラス、ゴムなどの多品種の部材が対象とされ得る。そして、これらワークの表面性状は、素材露出面および樹脂塗料などの塗装面のいずれであっても、支障なく適用できるが、塗装面を対象とした方が部材表面の保護の観点から好ましいものである。
【符号の説明】
【0054】
1 電荷水生成槽、11 原水供給口、12 電荷水取出し口、13 セラミック粒子装填部、14 セラミック粒子
2 磁界処理槽、21 電荷水送入口、22 磁界処理水取出し口、23a S極、23b N極、24 通過水路
3 被膜形成槽、31 磁界処理水送入口、32 処理排水取出し口、33 ワーク、34 ノズル
a 原水、b 電荷水、c 磁界処理水、d 処理排水
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と接触して珪素成分とアルミニウム成分を溶出し得る石英斑岩、電気石、麦飯石から選ばれた1種または2種以上の選択された鉱石を素材としてなり、化学組成として珪素50〜80%(質量%、以下同様)、アルミニウム10〜50%、チタニウム1.0〜10%、鉄1.0〜9.0%を含むセラミック材の粒子またはそれらセラミック材を表層成分とした表層を有する粒子に原水を接触させ、この原水に電荷を帯びた前記化学成分を励起電流とともに溶出させて電荷水となし、次いでその電荷水を電磁界内に導入、通過させ誘導電流を発生させた後、その磁界処理を行った電荷水をワーク表面に噴射またはワークをこの電荷水に浸漬して接触させて、そのワーク表面に前記溶出成分の酸化物を主成分とする無機被膜を形成することを特徴とする無機被膜形成方法。
【請求項2】
前記セラミック材が銀を0.01〜0.5%含むことを特徴とする請求項1記載の無機被膜形成方法。
【請求項3】
前記銀が方鉛鉱、輝銀鉱、およびまたは、角銀鉱から精錬、抽出したものである請求項2記載の無機被膜形成方法。
【請求項1】
水と接触して珪素成分とアルミニウム成分を溶出し得る石英斑岩、電気石、麦飯石から選ばれた1種または2種以上の選択された鉱石を素材としてなり、化学組成として珪素50〜80%(質量%、以下同様)、アルミニウム10〜50%、チタニウム1.0〜10%、鉄1.0〜9.0%を含むセラミック材の粒子またはそれらセラミック材を表層成分とした表層を有する粒子に原水を接触させ、この原水に電荷を帯びた前記化学成分を励起電流とともに溶出させて電荷水となし、次いでその電荷水を電磁界内に導入、通過させ誘導電流を発生させた後、その磁界処理を行った電荷水をワーク表面に噴射またはワークをこの電荷水に浸漬して接触させて、そのワーク表面に前記溶出成分の酸化物を主成分とする無機被膜を形成することを特徴とする無機被膜形成方法。
【請求項2】
前記セラミック材が銀を0.01〜0.5%含むことを特徴とする請求項1記載の無機被膜形成方法。
【請求項3】
前記銀が方鉛鉱、輝銀鉱、およびまたは、角銀鉱から精錬、抽出したものである請求項2記載の無機被膜形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−120010(P2010−120010A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226204(P2009−226204)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(503163745)有限会社エムズケーシー (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(503163745)有限会社エムズケーシー (1)
【Fターム(参考)】
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