説明

無機質板

【課題】耐ブロッキング性と耐透水性の高い裏面性能を有する無機質板を提供する。
【解決手段】スチレンモノマーとアルコキシシリル基含有モノマーを含む塗料を基材1の裏面に塗布して耐透水性塗膜2を形成する。スチレンモノマーと(メタ)アクリル酸メチルとステアリルメタアクリレートとを含む塗料を耐透水性塗膜2の裏面に塗布して耐ブロッキング性塗膜3を形成する。耐透水性塗膜2と耐ブロッキング性塗膜3とをこの順で基材1の裏面に形成することによって、耐透水性塗膜2で基材1に水が浸漬するのを防止することができると共に耐ブロッキング性塗膜3で積載した際の密着(ブロッキング)を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根材や壁材などの建築板等として用いられる無機質板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、セメントを含む水硬性材料からなる基材を養生硬化させると共に基材に塗装を施して建築板として用いられる無機質板を形成している。この場合、図3(a)に示すように、未硬化の基材1の裏面に第一シーラー層10を形成した後、基材1を養生硬化するようにしている。この第一シーラー層10により、多数枚の基材1を積み重ねて養生した場合でも上下に隣接する基材1、1同士が密着して剥がれないようになる、いわゆるブロッキングの発生を防止したり、エフロ(白華)の発生を防止したりしている。そして、基材1を養生硬化した後、基材1の表面を塗装等により化粧し、その後、図3(b)に示すように、第一シーラー層10の裏面に第二シーラー層11を形成する。この第二シーラー層11は、無機質板の裏面に特に求められる性能(無機質板の裏面性能)に応じて塗料種を変更している。例えば、多数枚の無機質板を積載して保存等する場合に、上下に隣接する無機質板同士が密着して剥がれないようになる、いわゆるブロッキングの発生を防止する耐ブロッキング性や、無機質板の裏面から水が含浸するのを防止する耐透水性や、無機質板の裏面の接着性などを考慮して第二シーラー層11の組成等が決められている。
【0003】
無機質板の裏面性能の中で、耐ブロッキング性と耐透水性は特に建築板に使用される無機質板では特に高い性能が要求されているが、耐ブロッキング性と耐透水性の両方を満たす塗膜を形成できる塗料はほとんど知られていない(例えば、特許文献1参照)。尚、耐透水性の塗膜を形成できる塗料は一般的にある。
【0004】
一般的に、耐ブロッキング性の高い塗膜は耐透水性は低い。これは、耐ブロッキング性の高い塗膜は塗膜高度が高く、塗膜の融着性が低いため、塗膜欠陥が発生しやすく、この塗膜欠陥から水が含浸するためである。逆に、耐透水性の高い塗膜は耐ブロッキング性が低い。これは、耐透水性の高い塗膜は塗膜を融着させて耐透水性を確保するため、塗膜が軟らかく、他の無機質板と密着(ブロッキング)しやすいからである。また、第一シーラー層10として耐透水性の塗膜を形成するのは好ましくない。第一シーラー層10としては養生時の耐ブロッキング性の高い塗膜が求められ、耐透水性の高い塗膜は上記のように軟らかくてブロッキングしやすいからである。
【0005】
従来、無機質板は、製造工程でのハンドリング等を重視して、第二シーラー層11として耐ブロッキング性の高い塗膜を形成することが多いが、裏面性能に耐透水性を求める場合は融着しやすい塗膜であるために、第二シーラー層11の裏面にさらに塗装した後、無機質板を積載して保存や搬送をした場合にブロッキングが発生しやすいという問題があった。
【特許文献1】特開2002−256203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、耐ブロッキング性と耐透水性の高い裏面性能を有する無機質板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る無機質板Aは、スチレンモノマーとアルコキシシリル基含有モノマーを含む塗料を基材1の裏面に塗布して耐透水性塗膜2を形成し、スチレンモノマーと(メタ)アクリル酸メチルとステアリルメタアクリレートとを含む塗料を耐透水性塗膜2の裏面に塗布して耐ブロッキング性塗膜3を形成して成ることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項2に係る無機質板Aは、請求項1において、2コート・2ベーク方式により耐透水性塗膜2と耐ブロッキング性塗膜3とを形成して成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、耐透水性塗膜2と耐ブロッキング性塗膜3とをこの順で基材1の裏面に形成することによって、耐透水性塗膜2で基材1に水が浸漬するのを防止することができると共に耐ブロッキング性塗膜3で積載した際の密着(ブロッキング)を防止することができ、耐ブロッキング性と耐透水性の高い裏面性能を備えることができるものである。
【0010】
請求項2の発明では、ウェットオンウェット(Wet on Wet)方式で耐透水性塗膜2と耐ブロッキング性塗膜3とを形成する場合に比べて、各塗膜の性能が互いに影響しにくくなって、耐ブロッキング性と耐透水性の裏面性能をより高くすることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0012】
本発明の無機質板Aは、図1に示すように、基材1の裏面に第一シーラー層10を形成し、第一シーラー層10の裏面(基材1と反対側の面)に第二シーラー層11を形成したものである。また、第二シーラー層11は耐透水性塗膜2と耐ブロッキング性塗膜3とを第一シーラー層10側から順に積層して形成したものである。さらに、第二シーラー層11の耐ブロッキング性塗膜3の裏面(耐透水性塗膜2と反対側の面)に裏面化粧塗膜を形成することもできる。尚、基材1の表面の塗装は特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂系塗料の塗膜12などで形成することができる。
【0013】
基材1としては、窯業系基材や金属系基材のように無機質のものであっても、樹脂系基材のように有機質のものであっても、いずれでもよい。窯業系基材の場合は瓦や外壁材等の用途に使用される無機質板を形成することができる。
【0014】
窯業系の基材1は、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無機充填材、繊維質材料等を配合し、成形した後に養生硬化させて作製されるものである。水硬性膠着材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポルトランドセメント、高炉セメント、高炉スラグ、ケイ酸カルシウム、石膏等から選ばれたものの一種あるいは複数種を用いることができる。また、無機充填材としては、フライアッシュ、ミクロシリカ、珪砂等を、繊維質材料としては、針葉樹パルプや広葉樹パルプあるいはそれらの混合物のパルプ、合成繊維等の無機繊維や、スチールファイバー等の金属繊維を、それぞれ単独であるいは複数種併せて用いることができる。成形は押出成形や注型成形、長網式や丸網式などの各種の抄造法による抄造成形、プレス成形等の方法により行うことができる。そして、成形の後の抄造シート等の成形シートを、オートクレーブ養生、蒸気養生、常温養生を行って硬化することによって、基材1を作製することができる。例えば、基材1を抄造法により成形する場合は、原料組成物としては、水硬性材料のセメント成分が30〜95質量%、シリカ、珪石粉、フライアッシュ等の無機充填材が2〜60質量%、パルプ等の補強繊維が3〜10質量%を占める固形分からなるものとし、この固形分100質量部に対し、水40〜100質量部程度の割合としたスラリーを用いることができる。また、オートクレーブ養生としては、例えば、150〜200℃の温度で7〜15hrの養生硬化を行うことができる。
【0015】
また、基材1の裏面には第一シーラー層10が形成されるが、この第一シーラー層10は、オートクレーブ養生等の養生する前に、上記の成形シートを10分〜1時間乾燥させた後、成形シートの裏面にシーラー用の塗料を塗布して形成することができる。この第一シーラー層10は、養生工程の際に、多数枚の基材1を積み重ねて養生した場合でも上下に隣接する基材1、1同士が密着して剥がれないようになる、いわゆるブロッキングの発生を防止したり、エフロ(白華)の発生を防止したりするものである。第一シーラー層10を形成するための塗料は、溶剤系、水溶性あるいはエマルション系のシーラーを用いることができ、例えば、水溶性アクリル樹脂系塗料などを使用することができる。
【0016】
上記のようにして第一シーラー層10を形成した後、養生硬化を行い、この後、第一シーラー層10の裏面に第二シーラー層11の一層目として耐透水性塗膜2を形成する。耐透水性塗膜2は第一シーラー層10の裏面に塗装することにより形成することができる。耐透水性塗膜2の塗料としては、スチレンモノマーとアルコキシシリル基含有モノマーを含む塗料であって、その他、顔料やワックスなどを必要に応じて含有する塗料を使用することができる。アルコキシシリル基含有モノマーとしては、例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。また、耐透水性塗膜2の塗料の組成は樹脂成分中(エマルション樹脂中)の20〜70質量%をスチレンモノマーとし、0.1〜5質量%をアルコキシシリル基含有モノマーとし、残部を(メタ)アクリルエステルモノマーなどとするものである。本発明で使用できる(メタ)アクリルエステルモノマーには、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、プリピル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等があるが、メチルアクリレート、ブチルアクリレートが特に好ましい。尚、本明細書では、アクリル系重合性不飽和モノマーとメタクリル系重合性不飽和モノマーとを「(メタ)アクリル系モノマー」のように称する。また、顔料は耐透水性塗膜2の塗料の固形成分中の0〜30質量%とし、ワックスは耐透水性塗膜2の塗料の固形成分中の0〜30質量%とすることができる。
【0017】
耐透水性塗膜2は第一シーラー層10の裏面に耐透水性塗膜2の塗料を塗布した後、焼き付けすることにより硬化させて形成することができる。焼き付けの条件は耐透水性塗膜2の塗料の組成等によって異なるが、例えば、100〜150℃、30〜180秒とすることができる。また、耐透水性塗膜2の厚みは5〜15μmにすることができるが、これに限定されるものではない。また、本発明において、耐透水性塗膜2とは、透水量が4.5ミリリットル以下(下限は0ミリリットル)のものをいう。
【0018】
上記のようにして耐透水性塗膜2を形成した後、透水性塗膜2の裏面に第二シーラー層11の二層目として耐ブロッキング性塗膜3を形成する。耐ブロッキング性塗膜3は耐透水性塗膜2の裏面に塗装することにより形成することができる。耐ブロッキング性塗膜3の塗料としては、スチレンモノマーと(メタ)アクリル酸メチルとステアリルメタクリレートとを含む塗料であって、その他、n−ブチルアクリレートなどを必要に応じて含有する塗料を使用することができる。尚、(メタ)アクリル酸メチルとはアクリル酸メチルとメタクリル酸メチルの両方を含むものである。また、耐ブロッキング性塗膜3の塗料の組成は樹脂成分(エマルション樹脂)中、4〜22質量%をスチレンモノマーとし、9〜47質量%を(メタ)アクリル酸メチルとし、30〜85質量%をステアリルメタクリレートとして、これらの合計量が100質量%になるようにする。また、n−ブチルアクリレートを配合する場合は上記樹脂成分中に0〜20質量%で配合することができる。
【0019】
耐ブロッキング性塗膜3は耐透水性塗膜2の裏面に耐ブロッキング性塗膜3の塗料を塗布した後、焼き付けすることにより硬化させて形成することができる。焼き付けの条件は耐ブロッキング性塗膜3の塗料の組成等によって異なるが、例えば、100〜150℃、30〜180秒とすることができる。また、耐ブロッキング性塗膜3の厚みは5〜15μmにすることができるが、これに限定されるものではない。また、本発明において、耐ブロッキング性塗膜3とは、無機質板を上下に積載した際に、上下に隣接する無機質板同士が密着せず、容易に剥がれる性能を有するものである。
【0020】
本発明では、耐透水性塗膜2と耐ブロッキング性塗膜3とをこの順で基材1の裏面に形成することによって、耐透水性塗膜2で基材1に水が浸漬するのを防止することができると共に耐ブロッキング性塗膜3で積載した際の密着を防止することができる。また、耐透水性塗膜2の塗料を塗布して焼き付けにより耐透水性塗膜2を形成した後、耐ブロッキング性塗膜3の塗料を塗布して焼き付けにより耐ブロッキング性塗膜3を形成する、いわゆる2コート2ベークにより第二シーラー層11を形成するので、ウェットオンウェット方式で耐透水性塗膜2と耐ブロッキング性塗膜3とを形成する場合に比べて、各塗膜の塗料が混じり合うことがなく、各塗膜の性能が互いに影響しにくくなって、各塗膜の性能を十分に発揮することができ、耐ブロッキング性と耐透水性の裏面性能をより高くすることができるものである。
【実施例】
【0021】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0022】
[基材1、第一シーラー層10、表面の塗膜12の作製]
基材1としては窯業系板材を用いた。この基材1はセメントと補強繊維を主成分とするものであって、セメント系の水性スラリーを原料組成物として用いて、長網式の抄造法により抄造シートを作成した後、乾燥させ、この後、水溶性アクリル樹脂系塗料を抄造シートの裏面に塗布し、次に、抄造シートを養生硬化することによって、水溶性アクリル樹脂系塗料の硬化塗膜からなる第一シーラー層10を裏面に有する基材1を形成した。
【0023】
上記の原料組成物としては、水硬性材料のセメント成分が50質量%、珪石粉(無機充填材)が45質量%、パルプ(補強繊維)が5質量%を占める固形分からなるものとし、この固形分100質量部に対し、水100質量部の割合としたスラリーを用いた。
【0024】
また、水溶性アクリル樹脂系塗料としては関西ペイント株式会社が製造するものであって、ダイアセトンアクリルアミド30質量部と、アクリル酸10質量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート5質量部と、メチルメタクリレート10質量部と、n−ブチルアクリレート40質量部と、スチレン5質量部と、スミマールM30−W(住友化学工業(株)製のメラミン樹脂)20質量部とを配合したものである。また、基材1の全体の厚みは25mmとし、第一シーラー層10の厚みは3μmとした。
【0025】
さらに、上記の基材1の表面に塗膜12を形成した。塗膜12はアクリル樹脂系塗料を塗布した後、焼き付けして硬化させるようにして形成した。アクリル樹脂系塗料としては、日本ペイント株式会社製の「ニッペウルトラシーラーIII」を用いた。また、塗膜12の厚みは50μmとした。また、焼き付けの条件は120℃で90秒とした。
【0026】
(実施例1)
上記の基材1の第一シーラー層10の裏面に第二シーラー層11の耐透水性塗膜2と耐ブロッキング性塗膜3とを2コート2ベークで形成することにより無機質板を得た。すなわち、まず、第一シーラー層10の裏面に耐透水性塗膜2の塗料を塗布し、これを焼き付けして硬化することにより、一層目の耐透水性塗膜2を形成した。耐透水性塗膜2はスチレンモノマー65.8質量%、アルコキシシリル基含有モノマー(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)2質量%、顔料(シリカ)2質量%、ワックス4質量%、残部として上記(メタ)アクリルエステルモノマーから選択されるものを配合したものである。また、耐透水性塗膜2の厚みは5〜7μmとした。また、焼き付けの条件は120℃で90秒とした。
【0027】
次に、耐透水性塗膜2の裏面に耐ブロッキング性塗膜3の塗料を塗布し、これを焼き付けして硬化することにより、二層目の耐ブロッキング性塗膜3を形成した。耐ブロッキング性塗膜3の塗料はスチレンモノマー4.3質量%、(メタ)アクリル酸メチル9.3質量%、ステアリルメタクリレート85.7質量%、n−ブチルアクリレート0.7質量%を配合したものである。また、耐ブロッキング性塗膜3の厚みは5〜7μmとした。また、焼き付けの条件は120℃で90秒とした。
【0028】
(実施例2)
上記の基材1の第一シーラー層10の裏面に第二シーラー層11の耐透水性塗膜2と耐ブロッキング性塗膜3とをウェットオンウェットで形成することにより無機質板を得た。すなわち、まず、第一シーラー層10の裏面に耐透水性塗膜2の塗料を塗布し、次に、耐ブロッキング性塗膜3の塗料を塗布し、これを焼き付けして硬化することにより、第一シーラー層10の裏面に一層目の耐透水性塗膜2と二層目の耐ブロッキング性塗膜3とをこの順で形成した。耐透水性塗膜2の塗料及び耐ブロッキング性塗膜3の塗料とは上記と同様のものを用いた。また、耐透水性塗膜2及び耐ブロッキング性塗膜3の厚みも上記と同様にした。また、焼き付けの条件は120℃で90秒とした。
【0029】
(比較例1)
上記の基材1の第一シーラー層10の裏面に第二シーラー層11として耐ブロッキング性塗膜3のみを形成することにより無機質板を得た。すなわち、第一シーラー層10の裏面に耐ブロッキング性塗膜3の塗料を塗布し、これを焼き付けして硬化することにより、耐ブロッキング性塗膜3を形成した。耐ブロッキング性塗膜3の塗料、厚み、焼き付け条件は実施例1と同様にした。
【0030】
(比較例2)
上記の基材1の第一シーラー層10の裏面に第二シーラー層11として耐透水性塗膜2のみを形成することにより無機質板を得た。すなわち、第一シーラー層10の裏面に耐透水性塗膜2の塗料を塗布し、これを焼き付けして硬化することにより、耐透水性塗膜2を形成した。耐透水性塗膜2の塗料、厚み、焼き付け条件は実施例1と同様にした。
【0031】
(比較例3)
上記の基材1の第一シーラー層10の裏面に第二シーラー層11として二層の耐ブロッキング性塗膜3をウェットオンウェットで形成することにより無機質板を得た。すなわち、まず、第一シーラー層10の裏面に耐ブロッキング性塗膜3の塗料を塗布し、次に、同じ耐ブロッキング性塗膜3の塗料を塗布し、これを焼き付けして硬化することにより、第一シーラー層10の裏面に二層の耐ブロッキング性塗膜3を形成した。耐ブロッキング性塗膜3の塗料、一層ずつの厚み、焼き付け条件は実施例1と同様にした。
【0032】
(比較例4)
上記の基材1の第一シーラー層10の裏面に第二シーラー層11として二層の耐透水性塗膜2をウェットオンウェットで形成することにより無機質板を得た。すなわち、まず、第一シーラー層10の裏面に耐透水性塗膜2の塗料を塗布し、次に、同じ耐透水性塗膜2の塗料を塗布し、これを焼き付けして硬化することにより、第一シーラー層10の裏面に二層の耐透水性塗膜2を形成した。耐透水性塗膜2の塗料、一層ずつの厚み、焼き付け条件は実施例1と同様にした。
【0033】
(比較例5)
耐ブロッキング性塗膜3と耐透水性塗膜2との作製順を逆にした以外は、実施例2と同様にして無機質板を得た。
【0034】
(比較例6)
耐ブロッキング性塗膜3と耐透水性塗膜2との作製順を逆にした以外は、実施例1と同様にして無機質板を得た。
【0035】
上記実施例1、2及び比較例1〜6の無機質板について、耐ブロッキング性と耐透水性を評価した。
【0036】
耐ブロッキング性は、5枚(表裏組み合わせ)の無機質板を積み重ねて40℃−90%RHの雰囲気中で24時間放置し、その後、冷却して確認した。また、積載荷重として0.5kg/cmを積み重ねた無機質板に上から付加した。そして、ブロッキングがないものを5点、非常に軽微なブロッキングしかないものを4点、軽微なブロッキングが数点あるものを3点、少し大きめのブロッキングがあるものを2点、大きなブロッキングがあるものを1点として評価した。結果を表1及び図2(a)に示す。
【0037】
また、耐透水性は透水量で評価した。この評価方法はJIS A 5422に準拠した。尚、透水量は少ないほど耐透水性が高い。結果を表1及び図2(b)に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例1、2と比較例1〜6を対比すると、実施例1、2は耐ブロッキング性及び耐透水性の両方の性能を満足する無機質板であったが、比較例1〜6は耐ブロッキング性及び耐透水性の一方の性能が低くなった。また、2コート2ベーク方式を採用した実施例1はウェットオンウェット方式を採用した実施例2よりも耐透水性が高くなった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】(a)は耐ブロッキング性評価を示すグラフ、(b)は耐透水性評価を示すグラフである。
【図3】従来例を示し、(a)(b)は断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 基材
2 耐透水性塗膜
3 耐ブロッキング性塗膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンモノマーとアルコキシシリル基含有モノマーを含む塗料を基材の裏面に塗布して耐透水性塗膜を形成し、スチレンモノマーと(メタ)アクリル酸メチルとステアリルメタクリレートとを含む塗料を耐透水性塗膜の裏面に塗布して耐ブロッキング性塗膜を形成して成ることを特徴とする無機質板。
【請求項2】
2コート・2ベーク方式により耐透水性塗膜と耐ブロッキング性塗膜とを形成して成ることを特徴とする請求項1に記載の無機質板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−84106(P2009−84106A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255392(P2007−255392)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】