説明

無機質粉粒体の加熱乾燥方法

【課題】無機質粉粒体の加熱乾燥における燃焼効率を高めて燃料費の低減を図ると共に2次的な環境汚染も低減させうる効果的な方法を提供する。
【解決手段】燃焼装置5を備えた回転式加熱乾燥設備4を用いて無機質粉粒体を加熱乾燥するに際し、炭化水素系の気体燃料または液体燃料と水素ガスとからなる混合物を前記燃焼装置へ供給して前記粉粒体を回転下に加熱乾燥することを特徴とする無機質粉粒体の加熱乾燥方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油で汚染された土壌の浄化処理における土壌の加熱乾燥やアスファルトプラントでの骨材の加熱乾燥等の無機質粉粒体の加熱乾燥技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製油所跡地等の油分で汚染された土壌の浄化における汚染土壌の加熱乾燥工程やアスファルトプラントにおけるドライヤーでの骨材の加熱乾燥工程等の無機質粉粒体の加熱乾燥に燃焼装置を備えた回転式加熱乾燥設備が広く用いられている。これらの従来技術における加熱乾燥には燃料として灯油、LPG、軽油、重油等の炭化水素系の燃料が用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した従来の無機質粉粒体の加熱乾燥方法では、燃焼効率が十分ではなく、また多量の二酸化炭素が放出される等の2次的な環境汚染の問題点も有している。
このような観点から、本発明者等は上記した無機質粉粒体の加熱乾燥における燃焼効率を高めて燃料費の低減を図ると共に2次的な環境汚染も低減させうる効果的な技術を開発すべく検討を続けた結果、効果の顕著な本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、第1に、燃焼装置を備えた回転式加熱乾燥設備を用いて無機質粉粒体を加熱乾燥するに際し、炭化水素系の気体燃料または液体燃料と水素ガスとからなる混合物を前記燃焼装置へ供給して前記粉粒体を回転下に加熱乾燥することを特徴とする無機質粉粒体の加熱乾燥方法である。
【0005】
本発明は、第2に、前記粉粒体が汚染土壌または舗装用骨材である上記の方法である。
【0006】
本発明は、第3に、前記燃料を前記燃焼装置へ供給する配管内に前記水素ガスを供給して前記混合物を形成する上記の方法である。
【0007】
本発明は、第4に、前記配管が、前記燃焼装置の送風機から燃焼口に至る配管である上記の方法である。
【0008】
本発明は、第5に、前記配管の一部に管径を小さくした狭小部を設け、該狭小部より燃焼口に近い位置で前記水素ガスを供給する上記の方法である。
【0009】
本発明は、第6に、前記水素ガスを供給する位置から燃焼口までの距離が、前記水素ガスと前記燃料とが前記配管内を移動する間に十分均一に混合される距離である上記の方法である。
【0010】
本発明は、第7に、前記配管が、内側に螺旋状の筋を有する上記の方法である。
【0011】
本発明は、第8に、空気を前記燃焼装置へ供給する配管内に前記水素ガスを供給する上記の方法である。
【0012】
本発明は、第9に、前記燃焼装置の燃焼口に設けたノズルから噴射する前記燃料中に前記水素ガスを供給する上記の方法である。
【0013】
本発明は、第10に、前記燃焼装置の燃焼口に設けたノズルが、液体燃料を微粒化して噴霧する渦流式二流体ノズルである上記の方法である。
【0014】
本発明は、第11に、前記燃料が、灯油、LPG、軽油または重油である上記の方法である。
【0015】
本発明は、第12に、前記水素ガスが、水素酸素発生装置から供給される水素ガスと酸素ガスとの混合ガスである上記の方法である。
【0016】
本発明は、第13に、炭化水素系の気体燃料または液体燃料を供給する配管に水素ガスを供給する配管を取りつけて前記燃料と水素ガスとの混合燃料を燃焼装置へ供給するようにしたことを特徴とする燃料供給装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、無機質粉粒体の加熱乾燥における燃焼効率が顕著に向上し燃料費を低減できると共に、2次的な環境汚染も低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明方法に供する無機質粉粒体は、加熱によって揮発ないし分解して気体を発生させてそれらを分離することが必要な無機質粉粒体であれば本質的にはいずれでもよく、その典型例は、前記した油汚染土壌や舗装用のアスファルト混合物をつくる際にストックヤードからアスファルトプラントに搬送した骨材である。図1に油汚染土壌の加熱浄化プラントの概略工程図を示す。
【0019】
油汚染土壌1を、直接または必要に応じ生石灰などで予備処理した後に投入ホッパ2およびベルトコンベア3を介して円筒状の回転式加熱乾燥設備4に連続的に供給する。同設備には一端部に燃焼装置のバーナ5が設けられており、油汚染土壌1を連続的に供給しつつ、加熱乾燥する。
【0020】
加熱乾燥処理によって浄化された土壌はクーリングミキサ6で冷却されて浄化土壌7となる。一方、加熱乾燥処理で発生した排気分8は脱臭炉9でさらに高温に加熱して脱臭処理されると共にダスト分10が分離される。脱臭炉からの排気分はガスクーラ11で冷却され排気分とダスト分に分離され、排気分はバグフィルタ12および煙突13を経て大気中に放出される。図中、14は水タンク、15は熱交換器を示す。
【0021】
本発明は、上記した回転式加熱乾燥設備のような回転下に無機質粉粒体を加熱乾燥する装置を加熱するための燃焼手段として、従来用いられている炭化水素系の燃料に、同燃料を燃焼装置に供給し燃焼させる過程で水素ガスを混入して燃焼を行うものである。
【0022】
従来用いられている炭化水素系燃料の供給ラインに水素ガスを供給・混合する手段を付加するだけで無機質粉粒体の加熱乾燥効率を顕著に向上させることが可能となる。次に水素ガスを燃料に供給・混合する好ましい手段を図面を用いて説明する。
【0023】
図2〜図4は、本発明に好適な実施形態を示す模式図である。
図2に示す第1の実施形態は、燃焼装置を備えた加熱乾燥設備において、気体燃料または液体燃料を配管に通して燃焼装置へ供給する方法であって、燃焼装置に燃料を供給する配管の途中で水素ガスを噴射する燃料供給方法であり、図2において、21は気体燃料または液体燃料と水素ガスとの混合燃料を燃焼させるバーナ(燃焼装置)であり、ケーシング23およびインペラ24からなるブロワ(送風機)22と、燃焼筒25と、燃焼筒25に燃料を送る燃料配管26および空気を送る空気配管27と、から構成されている。燃料配管26は図示しない燃料タンクに接続されており、この燃料配管26の途中に水素酸素発生装置に接続される2流体ノズル28を装着する。
【0024】
燃料配管26には燃料タンクからLPGが供給され、このLPGと2流体ノズル28から供給される水素ガス(酸素を含む)とが、2流体ノズル28の装着位置からバーナ口29に至るまでに燃料配管26内で適度に混合され混合燃料となる。このときの2流体ノズル28の装着位置からバーナ口29に至るまでの距離は、LPGと水素ガスとが十分均一に混合される距離であることが好ましい。また、燃料配管26内に螺旋状の筋や突起を設けて、燃料配管26内を流れる燃料に乱流を発生させて燃料の混合を促進するようにしてもよい。混合燃料はバーナ21に供給され、ブロワ22から供給される空気と共にバーナ口(燃焼口)29から大気中に噴射されて燃焼する。
【0025】
図3に示す第2の実施形態は、燃焼装置を備えた加熱乾燥設備において、気体燃料または液体燃料を配管に通して燃焼装置へ供給する方法であって、燃焼装置の送風機から燃焼口に至る配管内に水素ガスを噴射する燃料供給方法であり、図3に示すとおり、第2の実施形態では、バーナ21内の燃料配管26の一部に管径を小さくした狭小部30を設け、燃料が狭小部30を通過するときに流速が高められ、狭小部30を通過したのちに解放されて拡散する。このときに燃料として液体燃料を用いた場合は、液体燃料の気化が促進される。狭小部30とバーナ口29との間の位置には2流体ノズル28が装着されており、このノズルから供給される水素ガスと拡散した燃料とが混合され、バーナ口29から大気中に噴射されて燃焼する。
【0026】
図4に示す第3の実施形態は、燃焼装置を備えた加熱乾燥設備において、気体燃料または液体燃料を配管に通して燃焼装置へ供給する方法であって、燃焼装置により燃料を燃焼させて、燃焼口から噴射される火炎中に水素ガスを噴射する燃料供給方法であり、図4に示すとおり、第3の実施形態では、バーナ21で気体燃料または液体燃料を燃焼させて、バーナ21のバーナ口29から噴射される火炎中に水素ガス配管31を挿入する。そして、この火炎中に水素ガス配管31から水素ガスが供給されることにより、バーナ21による燃焼が促進される。
【0027】
本発明で炭化水素系の燃料に供給・混合する水素ガスとしては、水素ガス単体または水素酸素発生装置で発生させた水素酸素混合ガスが特に好ましく用いられる。水素酸素発生装置としては水の電気分解によって水素ガスと酸素ガスとを発生させる市販の水素酸素発生装置を適宜用いることができる。水素酸素発生装置から得られる混合ガス組成は、体積比で、水素ガス2:酸素ガス1であり、本発明ではこの混合ガスを直接用いることが好ましい。
【0028】
炭化水素系の燃料に対する水素ガスの供給・混合量は、重量換算で、燃料に対し0.01〜30%、特に0.1〜10%が好ましい。
本発明で用いる炭化水素系燃料の供給手段と水素ガスの供給・混合手段とを備えた燃焼装置は、前記した無機質粉粒体の加熱乾燥において有効に用いられるが、クリーニング施設や公衆浴場などのボイラ設備などにも用いることが可能である。
【0029】
〔実施例〕
次に本発明を実施例によって例証する。
図1に示す加熱浄化プラントを用いて製油所跡地からの油汚染土壌を10トン/時の供給速度で回転式加熱乾燥設備に連続的に供給しつつ加熱乾燥処理を行った。加熱乾燥処理は、回転式加熱乾燥設備の両端部に配したバーナ5及び脱臭炉9に配したバーナ5’として図2に示した2流体ノズルをもつバーナを用いて、9台の市販の水素酸素混合ガス発生器(図示せず)からの水素酸素混合ガス(水素ガス:酸素ガスの体積比2:1)を800リットル/分の供給速度(水素ガスの供給速度は、1600/3(リットル/分)、0.0476(kg/分)に相当)で供給して、LPGと混合した混合ガスの形で燃焼させて行った(実施例)。
【0030】
また、LPGのみを燃焼させた実験も行った(比較例)。
上記に示した以外の実験条件と結果を表1に示す。表中、LPG及び水素酸素混合ガス使用量は油汚染土壌1トンを処理するために使用した量である。
【0031】
【表1】

【0032】
この試験結果より、本発明の方法によれば、従来の燃料(水素ガスを混入しない燃料)を用いた場合と同程度の処理能力を確保しつつ、炭化水素系燃料の使用量を大幅に低減させ、燃費改善に著しく寄与することが確認できた。また炭化水素系燃料の使用量が低減したことにより、大気中に放出される排気ガス中の二酸化炭素濃度も大幅に低減した。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】油汚染土壌の加熱浄化プラントの概略工程図。
【図2】本発明で用いるに適する燃焼装置の一例を示す概略断面図。
【図3】本発明で用いるに適する別の燃焼装置の一例を示す概略断面図。
【図4】本発明で用いるに適するさらに別の燃焼装置の一例を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0034】
1 油汚染土壌
2 投入ホッパ
3 ベルトコンベア
4 回転式加熱乾燥設備
5、5’ バーナ
6 クーリングミキサ
7 浄化土壌
8 排気分
9 脱臭炉
10 ダスト分
11 ガスクーラ
12 バグフィルタ
13 煙突
14 水タンク
15 熱交換器
21 バーナ
22 ブロワ
23 ケーシング
24 インペラ
25 燃焼筒
26 燃料配管
27 空気配管
28 2流体ノズル
29 バーナ口
30 狭小部
31 水素ガス配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼装置を備えた回転式加熱乾燥設備を用いて無機質粉粒体を加熱乾燥するに際し、炭化水素系の気体燃料または液体燃料と水素ガスとからなる混合物を前記燃焼装置へ供給して前記粉粒体を回転下に加熱乾燥することを特徴とする無機質粉粒体の加熱乾燥方法。
【請求項2】
前記粉粒体が汚染土壌または舗装用骨材である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記燃料を前記燃焼装置へ供給する配管内に前記水素ガスを供給して前記混合物を形成する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記配管が、前記燃焼装置の送風機から燃焼口に至る配管である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記配管の一部に管径を小さくした狭小部を設け、該狭小部より燃焼口に近い位置で前記水素ガスを供給する請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記水素ガスを供給する位置から燃焼口までの距離が、前記水素ガスと前記燃料とが前記配管内を移動する間に十分均一に混合される距離である請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記配管が、内側に螺旋状の筋を有する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
空気を前記燃焼装置へ供給する配管内に前記水素ガスを供給する請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記燃焼装置の燃焼口に設けたノズルから噴射する前記燃料中に前記水素ガスを供給する請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記燃焼装置の燃焼口に設けたノズルが、液体燃料を微粒化して噴霧する渦流式二流体ノズルである請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記燃料が、灯油、LPG、軽油または重油である請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記水素ガスが、水素酸素発生装置から供給される水素ガスと酸素ガスとの混合ガスである請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
炭化水素系の気体燃料または液体燃料を供給する配管に水素ガスを供給する配管を取りつけて前記燃料と水素ガスとの混合燃料を燃焼装置へ供給するようにしたことを特徴とする燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−293859(P2009−293859A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147795(P2008−147795)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(590002482)株式会社NIPPO (130)
【出願人】(507291992)YAMAテック株式会社 (4)
【Fターム(参考)】