説明

無機質絶縁被膜付き電磁鋼板

【課題】クロム化合物の含有せず、従って環境の劣化を伴うことなしに、耐食性および耐水性の劣化を防ぎ、さらには歪み取り焼鈍後の被膜外観および溶接性を改善した無機質絶縁被膜付き電磁鋼板を提供する。
【解決手段】電磁鋼板の表面に、無機被膜の全固形分質量に対する割合が、B23換算で2〜20質量%のB化合物と、SiO2換算で80〜98質量%のSi化合物を有する無機被膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロム化合物の含有なしでも耐食性および耐水性の劣化がなく、しかも歪取り焼鈍後の被膜外観の均一性にも優れ、かつ溶接性に優れた無機質絶縁被膜付き電磁鋼板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータや変圧器等に使用される電磁鋼板の絶縁被膜には、層間抵抗だけでなく、加工成形時の利便さおよび保管、使用時の安定性など種々の特性が要求される。電磁鋼板は多様な用途に使用されるため、その用途に応じて種々の絶縁被膜の開発が行われている。電磁鋼板に打抜加工、せん断加工、曲げ加工などを施すと残留歪みにより磁気特性が劣化するが、劣化した磁気特性を回復させるために750〜850℃程度の温度で歪取り焼純を行う場合が多い。この場合には絶縁被膜が歪取り焼鈍に耐え得るものでなければならない。
【0003】
電磁鋼板の絶縁被膜は、大別して
(1) 溶接性、耐熱性を重視し、歪取り焼鈍に耐える無機被膜、
(2) 打抜性、溶接性の両立を目指し歪取り焼鈍に耐える樹脂含有の無機被膜(半有機被膜ともいう)、
(3) 特殊用途で歪取り焼鈍不可の有機被膜
の3種類に分類される。
【0004】
上記した3種類の絶縁被膜のうち、(1)のタイプの無機被膜としては、特許文献1に、 クロム酸塩、重クロム酸塩、リン酸塩、縮合リン酸塩、二酸化ケイ素(シリカ)およびケイ酸塩のうち、単独もしくは2種以上の組み合わせから構成される絶縁被膜が提案されている。
かかる無機被膜は、打抜性には若干の問題があるものの、絶縁性、溶接性および耐熱性に優れていることから、特に耐テンションパッド性が求められる用途に好適に用いられている。
【0005】
上述したとおり、従来の無機被膜は、クロム化合物を含有しているため、その使用時にCrが溶出して環境を害するおそれがある。そのため、昨今の環境意識の高まりに伴って、電磁鋼板の分野においてもクロム化合物を含まない絶縁被膜を有する製品が需要家等から望まれていた。
しかしながら、被膜中のクロム化合物は、被膜の耐食性および耐水性に有効に寄与するため、クロム化合物を削除した場合にはこれらの特性の劣化が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−294464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、クロム化合物を含有せず、従って環境の劣化を伴わずに、耐食性および耐水性の劣化を防止し、さらには歪取り焼鈍後の被膜外観および溶接性にも優れた無機質絶縁被膜付き電磁鋼板を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
さて、発明者らは、上記の目的を達成するために、無機被膜の成分について綿密な検討を行った。
その結果、B化合物とSi化合物とを、適正な割合で複合含有させることにより、所期した目的が有利に達成されることの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0009】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.表面に、B化合物およびSi化合物を含有する無機被膜をそなえる電磁鋼板であって、
該無機被膜の全固形分質量に対する、B化合物の割合がB23換算で2〜20質量%、Si化合物の割合がSiO2換算で80〜98質量%であることを特徴とする無機質絶縁被膜付き電磁鋼板。
【0010】
2.前記無機被膜中に、さらに硝酸化合物(NO3換算)、シランカップリング剤(固形分換算)およびリン化合物(P25換算)のうちから選んだ一種または二種以上を合計で、乾燥被膜中における比率で30質量%以下含有することを特徴とする前記1に記載の無機質絶縁被膜付き電磁鋼板。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、絶縁性、溶接性および耐熱性等の諸特性に優れるのはいうまでもなく、クロム化合物を含有していなくても耐水性や耐食性の劣化がなく、しかも歪取り焼鈍後の被膜外観および溶接性に優れた無機質絶縁被膜付き電磁鋼板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、被膜の必須成分であるB化合物およびSi化合物の配合割合を前記の範囲に限定した理由について説明する。
なお、これらの成分の質量%は、絶縁被膜の全固形分質量に対する割合である。ここに、全固形分質量とは、電磁鋼板表面に形成した被膜の乾燥後の付着量であり、アルカリ剥離による被膜除去後の重量減少から測定することができる。
【0013】
B化合物:B23換算で2〜20質量%
B化合物は、被膜の耐食性の向上に有効な成分である。しかしながら、乾燥被膜の全固形分質量に対するB化合物の含有量がB23換算で2質量%に満たないとその添加効果に乏しく、一方20質量%を超えると未反応物が被膜中に残存して、歪取り焼鈍後に被膜同士が融着する不具合(スティック)が発生するので、B化合物はB23換算で2〜20質量%の範囲に限定した。
かようなB化合物としては、ホウ酸、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、メタホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム等が挙げられ、これらを単独または複合して使用することができる。しかしながら、これらに限定されるものではなく、例えば、水に溶けてホウ酸イオンを生じさせるような化合物でもよく、またホウ酸イオンは直線型や環状に重合していてもよい。
【0014】
Si化合物:SiO2換算で80〜98質量%
Si化合物は、適量の配合により耐食性を向上させる効果がある。ここに、乾燥被膜の全固形分質量に対するSi化合物の含有量が、SiO2換算値で80質量%に満たないと十分な耐食性が得られず、一方98質量%を超えると、歪取り焼鈍後に斑の発生が著しく、均一な外観が得られなくなるため、Si化合物はSiO2換算で80〜98質量%の範囲に限定した。
かようなSi化合物としては、耐食性や歪取焼鈍後の密着性向上の観点から、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、アルコキシランおよびシロキサンなどを使用するのが好ましく、特にコロイダルシリカ、フュームドシリカは有利に適合する。
【0015】
また、本発明では、上記したB化合物やSi化合物の他に、以下に述べる硝酸化合物、シランカップリング剤およびリン化合物のうちから選んだ一種または二種以上を合計で、乾燥被膜中における比率で30質量%以下で含有させることもできる。なお、硝酸化合物、シランカップリング剤およびリン化合物の乾燥被膜中における比率は、それぞれNO3換算(硝酸化合物)、固形分換算(シランカップリング剤)およびP25換算(リン化合物)で示したものである。
かような硝酸化合物、シランカップリング剤およびリン化合物は、耐食性の改善に有効に寄与するが、乾燥被膜中における比率が30質量%以下であると、未反応物が被膜中に残存することがなく耐水性を低下させないので、含有量は30質量%以下とすることが好ましい。なお、これらの成分の効果を十分に発揮させるには、乾燥被膜中における比率で1質量%以上含有させることが好ましい。
【0016】
本発明において、硝酸化合物としては、以下に示すような硝酸系および亜硝酸系が有利に適合する。
・硝酸系
硝酸(HNO3)、硝酸カリウム(KNO3)、硝酸ナトリウム(NaNO3)、硝酸アンモニウム(NH4NO3)、硝酸カルシウム(Ca(NO32)、硝酸銀(AgNO3)、硝酸鉄(II)(Fe(NO32)、硝酸鉄(III)(Fe(NO33)、硝酸銅(II)(Cu(NO32)、硝酸バリウム(Ba(NO32)、硝酸アルミニウム(Al(NO33)、硝酸マグネシウム(Mg(NO32)、硝酸亜鉛(Zn(NO32)、硝酸ニッケル(II)(Ni(NO32)、硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32)。
・亜硝酸系
亜硝酸(HNO2)、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸銀、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸エチル、亜硝酸イソアミル、亜硝酸イソブチル、亜硝酸イソプロピル、亜硝酸−t−ブチル、亜硝酸−n−ブチル、亜硝酸−n−プロピル。
【0017】
また、シランカップリング剤としては、以下に示すものが有利に適合する。
・ビニル系
ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン。
・エポキシ系
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン。
・スチリル系
p−スチリルトリメトキシシラン。
・メタクリロキシ系
3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン。
・アクリロキシ系
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン。
・アミノ系
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンとその部分加水分解物、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、特殊アミノシラン。
・ウレイド系
3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン。
・クロロプロピル系
3−クロロプロピルトリメトキシシラン。
・メルカプト系
3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン。
・ポリスルフィド系
ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド。
・イソシアネート系
3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン。
【0018】
さらに、リン化合物としては、以下に示すようなリン酸およびリン酸塩が有利に適合する。
・リン酸
オルトリン酸、無水リン酸、直鎖状ポリリン酸、環状メタリン酸。
・リン酸塩
リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛。
【0019】
なお、本発明では、無機成分中に、不純物としてHfやHfO2、TiO2、Fe23などが混入することがあるが、これらの不純物の総量が乾燥被膜中における比率で1質量%以下であれば、特に問題は生じない。
【0020】
さらに、本発明では、上記した成分の他、通常用いられる添加剤や、その他の無機化合物や有機化合物の含有を妨げるものではない。
ここに、添加剤は、絶縁被膜の性能や均一性を一層向上させるために添加されるもので、界面活性剤や防錆剤、潤滑剤、酸化防止剤等が挙げられる。なお、かかる添加剤の配合量は、十分な被膜特性を維持する観点から、乾燥被膜中の配合割合が10質量%以下とすることが好ましい。
【0021】
本発明において、素材である電磁鋼板としては、特に制限はなく、従来から公知のものいずれもが適合する。
すなわち、磁束密度の高いいわゆる軟鉄板(電気鉄板)やSPCC等の一般冷延鋼板、また比抵抗を上げるためにSiやAlを含有させた無方向性電磁鋼板などいずれもが有利に適合する。
【0022】
次に、絶縁被膜の形成方法について説明する。
本発明では、素材である電磁鋼板の前処理については特に規定しない。すなわち、未処理でもよいが、アルカリなどの脱脂処理、塩酸、硫酸、リン酸などの酸洗処理を施すことは有利である。
そして、この電磁鋼板の表面に、B化合物およびSi化合物、さらには硝酸化合物、シランカップリング剤およびリン化合物のうちから選んだ一種または二種以上や、必要に応じて添加剤等を、所定の割合で配合した処理液を塗布し、焼き付けることにより絶縁被膜を形成させる。絶縁被膜用処理液の塗布方法は、一般工業的に用いられるロールコーター、フローコーター、スプレー、ナイフコーター等種々の方法が適用可能である。また、焼き付け方法についても、通常実施されるような熱風式、赤外式、誘導加熱式等が可能である。焼付け温度も通常レベルであればよく、到達鋼板温度で150〜350℃程度であればよい。
【0023】
本発明の絶縁被膜付き電磁鋼板は、歪取り焼鈍を施して、例えば、打抜き加工による歪みを除去することができる。好ましい歪取り焼鈍雰囲気としては、N2雰囲気、DXガス雰囲気などの鉄が酸化されにくい雰囲気が推奨される。ここで、露点を高く、例えばDp:5〜60℃程度に設定し、表面および切断端面を若干酸化させることで耐食性をさらに向上させることができる。また、好ましい歪取り焼鈍温度としては700〜900℃、より好ましくは750〜850℃である。歪取り焼鈍温度の保持時間は長い方が好ましいが、2時間以上がより好ましい。
【0024】
無機質絶縁被膜の付着量は特に限定しないが、片面当たり0.05〜5g/m2程度とすることが好ましい。付着量、すなわち本発明の絶縁被膜の全固形分質量は、アルカリ剥離による被膜除去後の重量減少から測定することができる。また、付着量が少ない場合にはアルカリ剥離法によって付着量を測定した、付着量が既知の標準試料を用いて、蛍光X線分析によるBまたはSiの検出強度と付着量の関係を被膜組成毎に求めておき、この検量線に基づきBまたはSiの蛍光X線分析強度を被膜組成に応じた付着量に換算し求めることができる。付着量が0.05g/m2以上であれば、耐食性と共に絶縁性を満足することができ、一方5g/m2以下であれば 、密着性が向上するだけでなく、塗装焼付け時にふくれが発生せず塗装性の低下を招くことがない。より好ましくは0.1〜3.0g/m2である。絶縁被膜は鋼板の両面にあるこ とが好ましいが、目的によっては片面のみでも構わない。また、目的によっては片面のみ施し、他面は他の絶縁被膜としても構わない。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の効果を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
乾燥後の絶縁被膜の全固形分質量に対する割合が表1−1,表1−2に示す割合になるように、B化合物およびSi化合物、さらには硝酸化合物、シランカップリング剤、リン化合物や添加剤を、脱イオン水に添加し、処理液とした。なお、脱イオン水量に対する添加濃度は50g/lとした。
これらの各処理液を、板厚:0.5mmの電磁鋼板「A230(JIS C 2552(2000))」から幅:150mm、長さ:300mmの大きさに切り出した試験片の表面にロールコーターで塗布し、熱風焼付け炉により表1−1,表1−2に示す焼付け温度(到達鋼板温度)で焼付けした後、常温に放冷して、両面に絶縁被膜を形成した。
【0026】
かくして得られた無機質絶縁被膜付き電磁鋼板の耐食性および打抜性について調べた結果を、表2に示す。
さらに、窒素雰囲気中にて750℃、2時間の歪取り焼鈍を行ったのちのスティッキング性、Tig溶接性、耐水性および歪取り焼鈍後の外観について調査を行い、得られた結果を表2に併記する。
また、B化合物の種類は表3に、Si化合物の種類は表4に、リン化合物および硝酸化合物の種類は表5に、そしてシランカップリング剤の種類は表6に、それぞれ示したとおりである。
【0027】
なお、各特性の評価方法は次のとおりである。
<耐食性>
供試材に対して湿潤試験(50℃、相対湿度≧98%)を行い、48時間後の赤錆発生率を目視で観察し、面積率で評価した。なお、錆び発生面積率とは、目視による観察全面積に対する、錆び発生面積の合計の百分率である。
(判定基準)
◎:赤錆面積率 20%未満
○:赤錆面積率 20%以上、40%未満
△:赤錆面積率 40%以上、60%未満
×:赤錆面積率 60%以上
【0028】
<スティッキング性>
50mm角の供試材10枚を重ねて荷重:20kPa(200g/cm2)をかけながら窒素雰囲気下で750℃,2時間の条件にて焼鈍を行った。ついで、供試材(鋼板)上に500gの分銅を落下させ、5分割するときの落下高さを調査した。
(判定基準)
◎:10cm以下
○:10cm超、15cm以下
△:15cm超、30cm以下
×:30cm超
【0029】
<打抜性>
供試材に対して、15mmφスチールダイスを用いて、かえり高さが50μmに達するまで打ち抜きを行い、その打ち抜き数で評価した。
(判定基準)
◎:100万回以上
○:50万回以上、100万回未満
△:10万回以上、50万回未満
×:10万回未満
【0030】
<Tig溶接性>
供試材を30mmの厚みになるように9.8MPa(100kgf/cm2)の圧力にて積層し、その端部に対して、次の条件でTig溶接を実施した。
・溶接電流:120A
・Arガス流量:6リットル/min
・溶接速度:10,20,30,40,50,60,70,80,90,100cm/m in
(判定基準)
ブローホールの数が1ビードにつき5個以下を満足する最大溶接速度で優劣を判定した。
◎:60cm/min以上
○:40cm/min以上、60cm/min未満
△:20cm/min以上、40cm/min未満
×:20cm/min未満
【0031】
<耐水性>
供試材を、沸騰水蒸気中に30分暴露させ、外観変化を目視観察した。
(判定基準)
◎:変化なし
○:目視で若干の変色が認められる程度
△:目視で変色がはっきり認められる程度
×:被膜溶解
【0032】
<歪取り焼鈍後の外観>
供試材に対して、N2雰囲気中にて750℃,2時間保持後、常温まで冷却した鋼板の 外観を目視観察した。
(判定基準)
◎:焼鈍後の外観が完全に均一な場合
○:焼鈍後の外観にムラが認められる場合
△:焼鈍後の外観に斑模様が認められる場合
×:焼鈍後の外観に顕著な斑模様が認められる場合
【0033】
【表1−1】

【0034】
【表1−2】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
【表5】

【0039】
【表6】

【0040】
表2に示したとおり、本発明に従い得られた無機質絶縁被膜付き電磁鋼板はいずれも、耐食性および打抜性に優れるのはいうまでもなく、歪取り焼鈍後のスティッキング性、Tig溶接性および耐水性に優れ、さらには歪取り焼鈍後の外観にも優れていた。
これに対し、B化合物が下限に満たない比較例1は、耐食性に劣り、一方B化合物が上限を超えた比較例2は、スティッキング性に劣っていた。
また、Si化合物が下限に満たない比較例3は、耐食性に劣り、一方Si化合物が上限を超えた比較例4は、歪取り焼鈍後の外観に斑模様の発生が著しく、被膜外観の均一性に劣っていた。 さらに、硝酸化合物やシランカップリング剤、リン化合物を適正範囲を超えて多量に含有させた比較例5〜11はいずれも、歪取り焼鈍後の耐水性に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に、B化合物およびSi化合物を含有する無機被膜をそなえる電磁鋼板であって、
該無機被膜の全固形分質量に対する、B化合物の割合がB23換算で2〜20質量%、Si化合物の割合がSiO2換算で80〜98質量%であることを特徴とする無機質絶縁被膜付き電磁鋼板。
【請求項2】
前記無機被膜中に、さらに硝酸化合物(NO3換算)、シランカップリング剤(固形分換算)およびリン化合物(P25換算)のうちから選んだ一種または二種以上を合計で、乾燥被膜中における比率で30質量%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の無機質絶縁被膜付き電磁鋼板。

【公開番号】特開2012−117104(P2012−117104A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267185(P2010−267185)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】