説明

無機酸化物粉体

【課題】 ゾル−ゲル法によって得られる、小粒径の一次粒子径を有する球状の無機酸化物粒子よりなり、金属不純物量が少なく、且つ、弱い力で解砕することが可能な乾燥状態の無機酸化物粉体を提供する。
【解決手段】 ゾル−ゲル法によって得られる、メジアン径が0.01〜5μmの球状の無機酸化物粉体であって、金属塩が粒子表面に存在せず、且つ、該無機酸化物粉体の水分散液について、レーザー回折散乱法により測定される粒径分布曲線のピーク極大値が1つであり、且つメジアン径の10倍以上の径の粒子の体積頻度が0.1%以下である、乾燥状態の無機酸化物粉体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な無機酸化物粉体に関する。詳しくは、ゾル−ゲル法によって得られる、小粒径の一次粒子径を有する球状の無機酸化物粒子よりなり、金属不純物量が少なく、且つ、弱い力で解砕することが可能な乾燥状態の無機酸化物粉体を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ等の無機酸化物粒子の製造方法の1種として、ゾル−ゲル法が知られている。この製造方法は、酸又は塩基性触媒の存在下、水を含む有機溶媒中で、テトラエトキシシラン等の金属アルコキシドの加水分解及び重縮合反応によって、無機酸化物粒子を得る方法である。ゾル−ゲル法は、比較的粒径が揃った微細な無機酸化物粒子が得られることが特徴であり、該粒子は樹脂への充填剤や研磨剤等に用いられている。
【0003】
上記触媒の存在下、金属アルコキシドの加水分解及び重縮合反応、すなわち、ゾル−ゲル法の反応により得られる無機酸化物粒子分散液中では、無機酸化物粒子が、微細な一次粒子として高度に分散しており、かかる分散液中より、分散媒を除去し、無機酸化物粒子を得る方法として、ろ過を採用することは非常に困難である。このため、上記無機酸化物粒子を得る方法として、該分散液を加熱濃縮、或いは減圧濃縮等により、分散媒を揮発させる方法、遠心分離機により無機酸化物粒子を沈降させた後、デカンテーションを行う方法等が採用されている。そして、これらの方法によって得られる湿体を乾燥するにより、分散媒がさらに除去された、乾燥状態の無機酸化物粒子が得られる。
【0004】
しかしながら、無機酸化物粒子分散液の上記分散媒除去においては、無機酸化物粒子同士が強固な力で凝集した凝集塊が生成する。このため、得られる無機酸化物粒子の解砕処理を行っても、粒径が揃った無機酸化物粒子が得られず、かかる無機酸化物粒子を樹脂や溶剤に分散させた場合、該凝集塊は、分散機のシェアでは容易に解砕されず、樹脂や溶剤に均一に分散されないという課題があった。特に、ゾル−ゲル法の反応により、一次粒子の粒子径が1μm以下の微細な無機酸化物粒子を製造した場合、該粒子の凝集力が強く、極めて強固な力で凝集した凝集塊が生成する傾向がある。
【0005】
かかる課題の解決方法として、これまでに様々な提案がされている。例えば、特許文献1では、無機酸化物粒子分散液を乾燥処理後の無機酸化物粒子をジェットミルにより解砕処理を行う方法が提案されている。この方法により、ある程度粒径の揃った無機酸化物粒子を得ることは可能であるが、乾燥処理時に生成する強固な力で凝集した凝集塊を減少することはできず、前記課題に対する根本的な解決策とは言い難い。
【0006】
上記乾燥状態における凝集の問題は、ゾル−ゲル法によって生成する一次粒子のメジアン径が小さいほど顕著である。
【0007】
また、前記特許文献2には、解砕処理を行わずに金属酸化物の凝集や焼結の問題を解決する方法として、分散媒の濃縮途中でエチレングリコールを添加し、凝集を防ぐ方法も記載されている。この方法により、解砕が困難な凝集塊の生成は抑制されるが、乾燥、及び焼成の条件によっては、エチレングリコールが金属酸化物中に残存してしまうおそれがあり、当該方法は、用途によっては適用が困難であるという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−115925号公報
【特許文献2】特開2003−277025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、ゾル−ゲル法によって小粒径の一次粒子径を有する球状の無機酸化物粒子を生成させる場合においても、乾燥状態とした際に弱い力で解砕することが可能であり、しかも、粒子表面に付着する不純物量が少ない無機酸化物粉体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った。その結果、触媒の存在下、アルコール−水溶媒中で金属アルコキシドの加水分解及び重縮合反応、いわゆる、ゾル−ゲル法の反応により得られる無機酸化物粒子分散液に金属塩を凝析剤として存在させると、該分散液中で無機酸化物粒子の弱い力で凝集した凝集体が生成し、このような凝集体をろ過、乾燥することにより得られる無機酸化物粉体は、弱い力での解砕が容易となり、樹脂等に充填する際の分散性が良好であるであることを確認した。
【0011】
ところが、高純度の無機酸化物粉体を得ようとして、上記金属塩を含有する無機酸化物粒子分散液のケークを水洗し、ケーク中に残留する金属塩を除去した場合、弱い力で凝集した無機酸化物粒子の凝集体が解れ、これを乾燥状態とすると、無機酸化物粒子の強固な凝集塊が生成することが判明した。それ故、上記無機酸化物粒子の凝集体を乾燥状態で得るまで、金属塩の存在は必須であり、乾燥状態で金属塩が残存してしまうとうという課題があった。そのため、例えば、半導体用等の用途に無機酸化物粉体を使用する場合、特にナトリウム等のアルカリ金属塩による不具合が懸念される。
【0012】
上記知見に基づき、更に検討を重ねた結果、無機酸化物粒子分散液に、熱分解性を有する特定の塩を凝析剤として存在させることにより、分散液の状態では、上記特定の塩の作用により、無機酸化物粒子の弱い力で凝集した凝集体を安定的に存在させながらろ過を行うことができ、しかも、乾燥時、或いは、乾燥後に、かかる塩は容易に熱分解せしめられ、粒子表面に金属塩が存在しない高純度の無機酸化物粉体が得られること、更に、かかる無機酸化物粉体は、前記塩が存在しないにも拘わらず、乾燥状態において、弱い力で解砕が可能な状態で得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、ゾル−ゲル法によって得られる、メジアン径が0.01〜5μmの球状の無機酸化物粒子により構成され、水分量が15質量%以下の無機酸化物粉体であって、上記無機酸化物粉体は金属塩が粒子表面に存在せず、且つ、該無機酸化物粉体の水分散液について、レーザー回折散乱法による粒径測定でのピーク極大値が1つであり、且つメジアン径の10倍以上の径の粒子の体積頻度が0.1%以下であることを特徴とする無機酸化物粉体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の無機酸化物粉体は、ゾル−ゲル法によって得られる、メジアン径が0.01〜5μmと小粒径で、球状の酸化物粒子であるにも拘わらず、乾燥して得られる無機酸化物粉体は弱い力で容易に解砕させることが可能であり、樹脂や溶剤に分散させる際の分散機のシェアにより、容易に解れて、該樹脂や溶剤中で、粒径の揃った一次粒子の状態で均一に分散させることが可能である。
【0015】
しかも、本発明の無機酸化物粉体は、粒子表面に金属塩等の不純物が存在せず、高純度であり、不純物の除去処理を行うことも不要である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の無機酸化物粉体は、ゾル−ゲル法によって得られる、球状の無機酸化物粒子よりなり、且つ、水分量が15質量%以下、特に、1質量%以下の乾燥状態の粉体の性状を成す。
【0017】
なお、上記水分量は、後述の製造方法において、ろ過後の乾燥温度によって制御することが可能である。例えば、乾燥温度を35〜250℃とした場合、無機酸化物粉体に含まれる水分量は、3〜15質量%である。乾燥後、更に600〜1300℃で焼成を行った場合、無機酸化物粉体に含まれる水分量は、1質量%以下にすることが可能である。例えば、無機酸化物粉体をトナー用外添剤として使用する場、トナーの帯電安定性を保つには、無機酸化物粒子に3〜15質量%程度の水分が存在することが必要である。また、半導体等の封止材用フィラーでは、半田を行う際に発生するクラックを防止するために、水分量を極力少なくする必要がある。本発明の無機酸化物粉体は、それら用途に応じて、適宜水分量を調整して使用することができる。
【0018】
上記無機酸化物としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどの周期表第4族金属、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムなどの周期表第13族金属、ゲルマニウム、スズなどの周期表第14族金属等の金属酸化物、シリカ(ケイ素の酸化物)、及びこれら元素で構成される複合無機酸化物等が挙げられる。
【0019】
上記無機酸化物の中でも、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウムの酸化物、及びこれらの元素で構成される複合無機酸化物が好ましく、特にシリカ、及びケイ素を含む元素で構成される複合無機酸化物、特にシリカが本発明の効果が顕著に現れるため好ましい。
【0020】
また、本発明の無機酸化物粉体を形成する無機酸化物粒子の一次粒子は、メジアン径が0.01〜5μm、特に、0.01〜1μmである。このように粒径が小さな無機酸化物粒子は、凝集力が強く、かかる粒径の小さい粒子において、後述の特性を有することが、本発明の無機酸化物粒子の最大の特徴である。
【0021】
即ち、本発明の無機酸化物粉体は、上記範囲のメジアン径を有しながら、以下の特徴を有する。
【0022】
(1)上記無機酸化物粉体は金属塩が粒子表面に存在しないこと、
(2)上記無機酸化物粉体の水分散液について、レーザー回折散乱法による粒径測定でのピーク極大値が1つであり、且つメジアン径の10倍以上の径の粒子の体積頻度が0.1%以下であること
すなわち、上記(1)の特徴について、本発明の無機酸化物粒子は、後述するように、特定の塩を凝析剤として使用することにより、ろ過、乾燥等における加熱により、該塩を分解除去することができるため、粒子表面には、空気中に存在する金属塩の吸着等による不可避的な汚染を除き、実質的に金属塩が存在しない。例えば、無機酸化物粉体が、シリカ粉体である場合、後述する実施例にも示すように、粒子表面に存在する金属塩の総含量は、金属元素換算で10ppm以下、特に、5ppm以下とすることが可能である。また、具体的な金属については、ナトリウム含有量が2ppm以下、好ましくは1ppm以下、鉄含有量1ppm以下、好ましくは、0.5ppm以下、更に好ましくは0.1ppm以下である。そのため、本発明の無機酸化物粉体は、金属不純物が嫌われる半導体用途等でも好適に使用することができる。
【0023】
また、(2)の特性について、本発明の無機酸化物粒子は、ゾル−ゲル反応後の、ろ過、乾燥時に前記塩が存在することによって、上記無機酸化物粉体の水分散液について、レーザー回折散乱法による粒径測定でのピーク極大値が1つであり、且つメジアン径の10倍以上の径の粒子の体積頻度が0.1%以下という極めて良好な解砕特性を有する。
【0024】
尚、上記水分散液の調整方法は、無機酸化物粉体0.08gに純水40gを加え、周波数20kHz、出力50Wで16分間超音波分散することにより実施される。具体的には、まず、アズワン株式会社製ラボランスクリュー管瓶50ml(商品名:口内径20.3mm、全長35mm)に、無機酸化物粉体0.08gを入れ、更に純水40gを添加し、測定液とする。超音波分散には、BRABSON社製SONIFIRE250(商品名)を使用し、先端径12.5mm、全長7cmのタップ型ホーンの先端から3cmを上記測定液に浸し、周波数20kHz、出力50Wで16分間超音波分散を行う。
【0025】
そして、上記方法により調整したスラリーを、0.04〜2000μmの範囲でのレーザー回折散乱法による粒径測定し、これ基づき粒径分布曲線を作成する。本発明の無機酸化物粉末の前記(2)の特徴は、かかる粒度分布曲線において、ピーク極大値が1つである。このことは、前記した分散液の調整において無機酸化物粉体にかけた軽いエネルギーにより、一次粒子まで容易に分散し、残存する二次凝集粒子が存在しないことを示している。
【0026】
また、メジアン径の10倍以上の径の粒子の体積頻度が0.1%以下であることは、巨大に成長した粒子も含有しないことを示している。
【0027】
ゾル−ゲル法によって得られ、前記メジアン径を有する無機酸化物粉体において、前記の(1)、(2)に示す特性を有するものは、本発明によって初めて提供されるものである。
【0028】
また、本発明の無機酸化物粉体は、ゾル−ゲル法により製造されることにより、粒度分布幅が狭いことも特徴である。無機酸化物粉体の粒度分布幅は、通常、粒度分布幅の広がりを示す指標の一つである変動係数が40%以下であり、好ましくは35%以下、更に好ましくは30%以下である。
【0029】
本発明の無機酸化物粉体の製造方法は、ゾル−ゲル法を採用するものである。ゾル−ゲル法は、触媒の存在下、アルコール−水溶媒中で金属アルコキシドの加水分解及び重縮合反応を行い、無機酸化物粒子を生成するものであり、かかる方法によれば、粒子径が揃った球状の無機酸化物粒子を得ることが可能である。
【0030】
本発明の無機酸化物を製造する際に用いる金属アルコキシドとしては、ゾル−ゲル法の反応による無機酸化物粒子の製造に用いられる公知の化合物であれば、特に制限されず、製造する無機酸化物の種類に応じて、適宜用いれば良い。
【0031】
本発明の無機酸化物粉体を製造する際に原料として使用する金属アルコキシドとしては、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn−ブトキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、インジウム(III)イソプロポキシド、ゲルマニウム(IV)イソプロポキシド、ゲルマニウム(IV)メトキシド、すず(IV)ブトキシド、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどの金属アルコキシドが例示される。
【0032】
上記の金属アルコキシドの中でも特に、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn−ブトキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシランが好ましく、チタンテトライソプロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランは、工業的に入手が容易に可能である点、及び取扱いが容易である点から特に好ましい。
【0033】
また、上記金属アルコキシドにより得られる無機酸化物との複合酸化物を得るために用いる金属アルコキシドとして具体的には、リチウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムメトキシド、マグネシウムイソプロポキシド、カルシウムエトキシド、ストロンチウムイソプロポキシド、バリウムイソプロポキシド、イッテルビウム(III)イソプロポキシド、ランタン(III)エトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn−ブトキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、インジウム(III)イソプロポキシド、ゲルマニウム(IV)イソプロポキシド、ゲルマニウム(IV)メトキシド、すず(IV)ブトキシド、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどの金属アルコキシドが例示される。
【0034】
本発明の製造方法において、上記金属アルコキシドは、1種類のみを用いることも、或いは、2種類以上のものを使用することも可能である。2種類以上のものを使用する場合は、特に、ケイ素を含有するアルコキシシランと、アルコキシシラン以外の金属アルコキシドを混合して使用することで、シリカを含有する複合無機酸化物を得ることが可能である。また、アルコキシシランを加水分解及び重縮合した後、金属アルコキシドの加水分解及び重縮合を行うことも可能であり、かかる場合には、シリカの表面に金属酸化物が結合した複合無機酸化物を得ることができる。
【0035】
また、金属アルコキシドが、常温常圧で液体である場合には、そのまま使用することも可能であるし、有機溶媒で希釈して使用することも可能である。金属アルコキシドが、常温常圧で固体である場合には、有機溶媒に溶解、又は分散して使用すれば良い。
【0036】
上記ゾル−ゲル反応で用いられる触媒としては、ゾル−ゲル法の反応による無機酸化物の製造に用いられる公知の触媒を採用することが可能である。これらの触媒の中でも、本発明の球状の無機酸化物粒子により形成される無機酸化物粉体を得るには、塩基性触媒を用いることが好適である。
【0037】
塩基性触媒としては、例えば、アミン類、水酸化アルカリ金属等が挙げられる。特に目的とする無機酸化物粒子を形成する金属以外の金属不純物量が少なく、高純度の無機酸化物粒子が得られるという観点から、アミン類を用いることが好適である。アミン類を具体的に例示すれば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン等が挙げられる。この内特に、揮発性が高いこと、ゾル−ゲル法の反応速度が速いことから、アンモニアを使用するのが好ましい。なお、上記塩基性触媒は、単独で使用することも、或いは2種類以上を使用することも可能である。
【0038】
また、塩基性触媒は、工業的に入手可能なものを、そのまま使用することも可能であるし、例えばアンモニア水等のように、水や有機溶媒に希釈して使用することも可能である。特に、反応の進行速度を制御しやすい点で、塩基性触媒を水に希釈し、適宜濃度を調整して、水溶液として使用することが好ましい。塩基性触媒として水溶液を使用する場合の濃度は、工業的に入手が容易な点、或いは濃度調整が容易な点から、触媒の濃度が1〜30質量%の範囲の水溶液を使用することが好ましい。
【0039】
塩基性触媒の使用量は、金属アルコキシドの加水分解及び重縮合反応速度等を勘案して適宜決定すれば良い。通常、塩基性触媒の含量が、使用する金属アルコキシドの質量に対し、0.1〜60質量%、より好ましくは0.5から40質量%の範囲で使用すれば十分である。
【0040】
また、酸性触媒は、後述する金属アルコキシドの予備加水分解反応の触媒として好適に使用できる。具体的には、塩化水素、硫酸、硝酸、酢酸等が挙げられる。
【0041】
酸性触媒も、塩基性触媒と同様、そのまま使用することも可能であるし、水等の溶媒に希釈して使用することも可能である。
【0042】
酸性触媒の使用量は、金属アルコキシドの加水分解及び重縮合反応速度等を勘案して適宜決定すれば良い。通常、使用する金属アルコキシドの質量に対し、0.00001〜10質量%、より好ましくは0.0001から1質量%の範囲で使用すれば十分である。
【0043】
なお、前記ゾル−ゲル法の反応には水が必須である。よって、触媒を水溶液として使用しない場合は、上記反応に必要な水を添加する必要がある。水の使用量は、製造する無機酸化物粒子の粒径に応じて適宜調整して使用すればよい。但し、少なすぎるとゾル−ゲル法の反応速度が遅くなり、多すぎると乾燥の際に長時間を要するため、通常、ゾル−ゲル法の反応により得られる無機酸化物粒子分散液の質量に対し、2〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%の範囲で適宜調整すれば良い。
【0044】
本発明の分散性に優れる無機酸化物粉体を得るには、反応溶媒として水とアルコール類の混合溶媒を用いることが好ましい。アルコール類を具体的に例示すれば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等が挙げられる。使用するアルコールの種類により、反応速度や得られる無機酸化物粒子の粒径も変化するので、適宜調整、選択して使用すれば良い。特に、乾燥により容易に除去できるという観点から、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールを使用するのが良い。
【0045】
アルコール類は、単独で用いることも、あるいは2種以上を混合して使用することも可能である。また、アルコール類の使用量は、目的とする無機酸化物粒子の粒径、及びゾル−ゲル法の反応後の無機酸化物粒子分散液中の無機酸化物粒子の濃度に応じて適宜決定すればよい。例えば、ゾル−ゲル法の反応により得られる無機酸化物粒子分散液の質量に対し、10〜90質量%、より好ましくは15〜80質量%の範囲となるように使用すれば十分である。
【0046】
本発明の無機酸化物粉体を得る際のゾル−ゲル法の反応は、前記触媒の存在下で進行する。金属アルコキシドと触媒との接触方法は、特に制限されず、反応装置の構成やスケールを勘案して適宜決定すれば良い。
【0047】
具体的には、反応容器にアルコール類、水を仕込み、金属アルコキシドと触媒、或いは触媒の水溶液(以下、触媒、或いは触媒の水溶液を、単に触媒と総称する)とを各々添加する方法、反応容器にアルコール類、水と触媒を仕込み、金属アルコキシドを添加する方法、或いは、反応容器にアルコール類と触媒を仕込み、金属アルコキシドと触媒を同時に添加する方法等が挙げられる。これらの方法の中でも、反応効率が良好な点で、反応容器にアルコール類と触媒を仕込み、金属アルコキシドと触媒とを同時に添加する方法が好適である。この場合、例えば、先に金属アルコキシドの一部を添加した後に、残りの金属アルコキシドと触媒を同時に添加することも可能である。
【0048】
また、2種類以上の金属アルコキシドを用いる場合、各々を混合して同時に添加することも、或いは各々を順次添加することも可能である。特に、シリカを含有する複合無機酸化物の製造を行う際、予備加水分解を行い、複合金属アルコキシドとして使用することも可能である。例えば、アルコキシシランを塩酸触媒下、メタノール中で反応させることで、酸による加水分解を行い、そこへ、チタンテトライソプロポキシド等のアルコキシシラン以外の金属アルコキシドを添加することで、調整が可能である。
【0049】
また、金属アルコキシドと触媒の添加は、液中滴下することが、より好ましい。液中滴下とは、上記原料を反応液中に滴下する際、滴下口先端が反応液中に浸されていることを言う。滴下口先端の位置は、液中にあれば特に限定されないが、攪拌羽根の近傍などの十分に攪拌が行われる位置が望ましい。
【0050】
金属アルコキシドと触媒の添加時間は、粒度分布幅の狭い粒子を調整する上で非常に重要な因子であり、添加時間が短くなるにつれて粒度分布幅が広くなる傾向にある。また、長すぎても粒子成長が安定して行われない。従って、粒度分布幅が狭く、粒径が揃った無機酸化物粒子を得る場合には、上記添加時間は、触媒の濃度等を勘案し、0.5〜15時間の範囲で行うのが好ましい。
【0051】
反応温度は、ゾル−ゲル法の反応が速やかに進行する温度であれば、特に制限されず、目的とする無機酸化物粉体を形成する無機酸化物粒子の粒径に応じて適宜調整すれば良い。一般的に、反応温度が低いほど得られる無機酸化物粒子の粒径が大きくなる傾向にある。メジアン径が0.01〜5μmの無機酸化物粒子を得る場合、反応温度としては、−10〜60℃の範囲で適宜選択すれば良い。
【0052】
ゾル−ゲル法の反応を確実に進行させるために、金属アルコキシド、または触媒の滴下が終了した後、反応の熟成を行うことも可能である。この場合、熟成温度としては、反応温度と同じ範囲、即ち−10〜60℃とするのが好ましく、熟成時間としては、0.25〜5時間あれば十分である。
【0053】
なお、本発明の方法では、所望の粒径の無機酸化物粒子を得るために、熟成後、再度金属アルコキシドと触媒を添加し、無機酸化物粒子の粒径を成長させる等の手法を用いても良い。
【0054】
前記、ゾル−ゲル法の反応により得られる無機酸化物粒子分散液中の無機酸化物粒子の濃度は、分散液中に含まれる無機酸化物粒子の量が多いと、分散液の粘度が高くなるため取り扱い辛く、少なすぎると1回の反応で得られる無機酸化物粒子の量が少なくなり、不経済である。従って、ゾル−ゲル法の反応により得られる無機酸化物粒子分散液中の無機酸化物粒子の濃度は、1〜40質量%、特に2〜25質量%、更に好ましくは15〜25質量%に調整することが好ましい。なお、上記分散液中の無機酸化物粒子の濃度の調整は、反応後の無機酸化物粒子の濃度が所定の範囲内となるように、前記アルコール類及び水の使用量を調整して行うことも可能であるし、反応後に、前記アルコール類又は水を添加することにより、分散液中の無機酸化物粒子の濃度の調整を行うことも可能である。
【0055】
本発明の無機酸化物粒子粉体は、前記ゾル−ゲル法の反応により得られる無機酸化物粒子分散液に、比較的低い温度、好ましくは、100℃以下の温度で熱分解可能な、熱分解性を有する特定の塩よりなる凝析剤(以下、特定凝析剤ともいう)として存在させた状態で、該分散液のろ過を行うことにより取得できる。上記特定凝析剤を前記分散液に存在させる態様は特に制限されるものではなく、上記塩を前記無機酸化物粒子分散液に添加しても良いし、前記無機酸化物粒子分散液中でかかる塩を形成する化合物を添加しても良い、具体的には、前記無機酸化物粒子分散液中でかかる塩を形成する化合物としては、二酸化炭素が挙げられる。すなわち、前記ゾル−ゲル法の反応に用いる塩基性触媒が、アンモニア水のようなアンモニアである場合、ゾル−ゲル法の反応により得られる無機酸化物粒子分散液に二酸化炭素を添加することにより、反応により塩が生成し、かかる塩を特定凝析剤として該分散液中に存在させることが可能である。また、二酸化炭素でも、取り扱いが容易である点、上記分散液中での滞在時間がより長くいことから、固体状の二酸化炭素、すなわちドライアイスを使用するのが好ましい。
【0056】
一方、前記無機酸化物粒子分散液に添加する塩としては、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム等が挙げられ、これらを一種又は二種以上組み合わせて使用することができる。なお、市販されている「炭酸アンモニウム」は、一般的に炭酸水素アンモニウムとカルバミン酸アンモニウムとの混合物であり、そのまま添加して使用することができる。
【0057】
本発明の無機酸化物粉体の製造方法において、特定凝析剤を上記分散液に存在させることで、該分散液中で無機酸化物粒子の弱い力で凝集した凝集体が形成される。かかる凝集体は、特定凝析剤の存在により、分散媒の存在下でも安定的に存在させることができ、後述する乾燥時の無機酸化物粒子の強固な力で凝集した凝集体の生成を防止することが可能である。上記の製造方法において、特定凝析剤は、作用機構は不明であるが、少なくとも、無機酸化物粒子分散液のろ過を行う段階まで存在していれば前記効果を達成することが可能である。
【0058】
上記特定凝析剤の使用割合は、使用する特定凝析剤の種類に応じて下記のように設定することができる。特定凝析剤の使用割合は、分散媒中での無機酸化物粒子が弱い力で凝集した凝集体の形成の程度と、不当に多量の原料を使用することの無駄のバランスを勘案することによって設定される。以下における特定凝析剤の使用割合の基準として無機酸化物粒子の質量は、用いた金属アルコキシドが全て加水分解及び重縮合して無機酸化物粒子となっていると仮定した場合の換算値である。
【0059】
上記特定凝析剤を存在せしめるために、前記した二酸化炭素を使用する場合、その使用割合は、分散媒中に含有される無機酸化物粒子100質量部に対して、0.005質量部以上、更には0.05質量部以上とするのが好ましく、0.05〜300質量部とするのが特に好ましく、0.25〜200質量部とするのがとりわけ好ましい。
【0060】
上記特定凝析剤として炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、又はカルバミン酸アンモニウム等を添加して使用する場合、その使用割合は、分散液中に含有される無機酸化物粒子100質量部に対して、0.001質量部以上、更には0.001〜80質量部とするのが好ましく、0.001〜15質量部とするのが特に好ましく、0.001〜10質量部とすることがとりわけ好ましい。
【0061】
上記特定凝析剤を存在せしめる際の無機酸化物粒子分散液のpHとしては、分散液中で特定凝析剤由来の塩が好ましくない分解を起こさず、本発明の効果が有効に発揮できるpH領域を選択して設置することが望まれる。このような観点から、分散液のpHは塩基領域とすることが好ましく、pH9以上とするのがより好ましい。特に、ゾル−ゲル法の反応の触媒としてアンモニア水等のアンモニアを用いた場合、反応後の無機酸化物粒子分散液のpHは通常9以上であり、反応後の無機酸化物粒子分散液に対して、pH調整を行うことなく特定凝析剤を存在せしめることが好ましい。
【0062】
また、ゾル−ゲル法の反応により得られる無機酸化物粒子分散液に、特定凝析剤を存在せしめる際の温度は、生成した無機酸化物粒子が弱い力で凝集した凝集体が安定に存在できる温度であれば、特に制限されず、適宜設定すれば良い。特定凝析剤の分解温度等を考慮し、通常、反応温度と同じ−10〜60℃、好ましくは、10〜40℃の範囲で行えば良い。
【0063】
また、特定凝析剤を存在せしめた後、ろ過等による分散液の濃縮を行うまでの時間は特に制限はされず、作業状況等を勘案して適宜決定すれば良く、通常0.25〜72時間、好ましくは、1〜48時間の範囲で適宜決定すれば十分である。
【0064】
上記したとおり、本発明の無機酸化物粉体は、前記無機酸化物粒子の弱い力で凝集した凝集体が生成した無機酸化物粒子分散液を減圧濾過、加圧ろ過、遠心ろ過等のろ過を行うことにより、ケークとして効率良く取り出すことが可能である。ろ過に用いる、ろ紙やフィルター、ろ布等は、工業的に入手可能なものであれば、特に制限なく、分離装置のスケールに応じて適宜選択すれば良い。メジアン径が、0.01〜5μmの無機酸化物粒子であれば、孔径5μm程度のもので十分である。また、ろ紙やフィルター、ろ布等を重ねて行うことも可能である。
【0065】
ろ過後の無機酸化物粒子のケークは、乾燥を行うことにより、前記目的とする水分量を有する無機酸化物粉体とする。乾燥方法としては、ケーク中に残存する分散媒が除去できる方法であれば、特に制限されず、減圧乾燥、送風乾燥等、公知の乾燥方法により行うことが可能である。
【0066】
また乾燥時の温度は、分散媒(アルコール類と水)が除去できる温度であれば特に制限されず、乾燥時の減圧度等を勘案して適宜決定すれば良い。乾燥温度として、35〜250℃、より好ましくは、50〜250℃で乾燥を行えば、分散媒の除去と共に、特定凝析剤由来の塩の除去が可能であるため好ましい。また、上記温度以下で乾燥を行った場合には、分散媒の除去後に特定凝析剤の熱分解温度以上に加熱することで、無機酸化物粒子より特定凝析剤を熱分解により除去することが可能である。なお、乾燥の終了は、無機酸化物粒子の重量変化が生じなくなるまで行えば十分である。
【0067】
上記乾燥により、無機酸化物粒子の表面に存在する分散媒が除去され、通常、分散媒の含有量が15質量%以下の無機酸化物粒子を得ることが可能である。ここで、残存する分散媒は、通常、水である。
【0068】
上記乾燥処理により、無機酸化物粒子表面の分散媒が除去され、高純度で、且つ解砕処理が困難な凝集塊が生成せず、分散性に優れ、粒径が揃った微細な無機酸化物粒子から形成される無機酸化物粉体を得ることが可能である。このような無機酸化物粉体の圧壊強度は、後述する実施例にも記載されているとおり、0.2N程度と極めて低く、特段の解砕処理を行うことなく、樹脂や溶剤に分散させる際の分散機のシェアにより、容易に解砕され、該樹脂や溶剤中で、粒径の揃った一次粒子の状態で均一に分散させることが可能である。
【0069】
また、上記無機酸化物粉体に対し、シリコーンオイルや、シランカップリング剤、シラザン、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等、公知の表面処理剤で表面処理を行い、目的の用途に使用することも可能である。これらの中でも特に、シリコーンオイル、シランカップリング剤、シラザンを使用するのが好ましい。
【0070】
本発明で使用するシリコーンオイルは、通常表面処理に用いられる公知のシリコーンオイルを、特に制限なく使用することが可能であり、必要とする表面処理無機酸化物粉体の性能等に応じて適宜選択して、使用すれば良い。具体的に例示すれば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等を挙げることができる。これらの中でも、単に疎水化を行うことが目的であれば、ジメチルシリコーンオイルを使用するのが好ましい。
【0071】
シリコーンオイルを使用する際の使用量は特に制限はされないが、少なすぎると表面処理が不十分となり、多すぎると後処理が煩雑となるので、使用する無機酸化物粉体100質量部に対し、0.05〜30質量部、より好ましくは、0.1〜20質量部とするのが良い。
【0072】
本発明で使用するシランカップリング剤は、通常表面処理に用いられる公知のシランカップリング剤を、特に制限なく使用することが可能であり、必要とする表面処理無機酸化物粉体の性能等に応じて適宜選択して、使用すれば良い。具体的に例示すれば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジメチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、4−スチリルトリメトキシシラン等を挙げることが出来る。これらの中でも、単に疎水化を行うことが目的であれば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランを使用するのが好ましい。
【0073】
シランカップリング剤を使用する際の使用量は、特に制限はされないが、少なすぎると表面処理が不十分となり、多すぎると後処理が煩雑となるので、使用する無機酸化物粉体100質量部に対し、0.05〜40質量部、より好ましくは、0.1〜20質量部とするのが良い。
【0074】
本発明で使用するシラザンは、通常表面処理に用いられる公知のシラザンを、特に制限なく使用することが可能である。シラザンの中でも、特に反応性の良さ、取り扱いの良さ等より、ヘキサメチルシラザンを使用するのが好ましい。
【0075】
シラザンを使用する際の使用量は、特に制限はされないが、少なすぎると表面処理が不十分となり、多すぎると後処理が煩雑となるので、使用する無機酸化物粉体100質量部に対し、0.05〜60質量部、より好ましくは、0.1〜50質量部とするのが良い。
【0076】
これら表面処理剤は、単独で1種類のみ使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0077】
このようにして得られた表面処理無機酸化物粉体は、後述するM値(疎水度)が、50%以上と疎水化されており、圧壊強度の値も0.1以下と未表面処理品よりも低く、更に解砕性に優れている。樹脂とのなじみをよくする必要がある場合や、樹脂に練りこんだ際、高粘度化するのを防止するには、本発明の表面処理無機酸化物粉体の使用が非常に有用である。
【0078】
上記したとおり、乾燥後の無機酸化物粉体中に吸収された水は15質量%以下ではあるものの、完全に除去されていないため、該粉体中の水分量を更に低減する必要がある場合は、更に焼成処理を行う。
【0079】
上記焼成処理時の焼成温度は、低すぎると分散媒成分の除去が困難であり、高すぎると無機酸化物粒子の融着が生じるため、300〜1300℃、更には600〜1200℃で行うのが好ましい。
【0080】
焼成時間については、残存する水が除去されれば特に制限されないが、あまり長すぎると不経済であるため、目的とする焼成温度まで昇温した後、0.5〜48時間、より好ましくは、2〜24時間の範囲で保持し焼成を行えば十分である。
【0081】
焼成時の雰囲気も特に制限はされず、アルゴンや窒素等の不活性ガス下、又は大気雰囲気下で行うことができる。
【0082】
このようにして得られた無機酸化物粉体は、水分量が1質量%以下であると共に、分散性にも優れるため、封止材用フィラー等の水分を嫌う用途で好適に使用できる。
【0083】
上記焼成処理後に得られる無機酸化物粉体は、解砕処理を行うことなく種々の用途に使用することが可能であるが、目的に応じて、公知の解砕手段により解砕させて使用することも可能である。また、シリコーンオイルや、シランカップリング剤、シラザン、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等、公知の表面処理剤で表面処理を行い、目的の用途に使用することも可能である。
【0084】
表面処理剤や表面処理方法は、前記した内容と同様の手法で行えば良く、得られる表面処理無機酸化物粉体のM値(疎水度)は、50%以上と疎水化されている。また、水分量も1質量%以下である。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を具体的に説明するため、実施例及び比較例を示すが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。本発明における諸物性の測定方法は、以下の通りである。
【0086】
<分散液中の無機酸化物粒子のメジアン径の測定>
分散液中の無機酸化物粒子のメジアン径の測定は、走査型電子顕微鏡(以下、SEMという)を使用し、画像解析法により実施した。ゾル−ゲル反応終了後に得られた分散液を、純水で希釈し、シリコンウェハー上に滴下した。その後、室温で2時間以上減圧乾燥を行うことで、分散媒を除去し、SEM観察用のサンプルとした。なお、作製したサンプルに存在する無機酸化物粒子の観察は、撮影場所を適宜変更し、200個以上実施した。また値は、体積基準に換算して記載した。
【0087】
<分散方法>
アズワン株式会社製ラボランスクリュー管瓶50ml(商品名:口内径20.3mm、全長35mm)に、無機酸化物粉体0.08gを入れ、更に純水40gを添加し、測定液とする。超音波分散には、BRABSON社製SONIFIRE250(商品名)を使用し、先端径12.5mm、全長7cmのタップ型ホーンの先端から3cmを上記測定液に浸し、周波数20kHz、出力50Wで超音波分散を実施した。乾燥後に得た無機酸化物粉体に関しては、4分間、焼成後に得た無機酸化物粉体に関しては16分間分散を行い、後述するレーザー回折散乱法による粒径測定を行い、ピーク極大値の数と、メジアン径の10倍以上の径の粒子の体積頻度を測定した。メジアン径の10倍以上の径の粒子の体積頻度の合計を、凝集塊量とした。
【0088】
<乾燥後及び焼成後の無機酸化物粒子のメジアン径、及び変動係数の測定>
上述した分散方法により得られた分散液のメジアン径、変動係数を、ベックマン・コールター株式会社製、ベックマンコールターLS230(商品名)を使用し、偏光散乱強度差計測により、0.04μm〜2000μmの範囲で測定した。また、変動係数は、下記式より算出した。変動係数が小さいほど、粒度分布幅が狭いことを示す。
【0089】
変動係数(%)=粒子径の標準偏差(μm)/粒子径の数平均値(μm)
<圧壊強度の測定>
後述する実施例及び比較例の測定条件を統一するため、以下の方法により測定を実施した。ゾル−ゲル反応後の分散液を遠心分離機にかけ、分散媒と無機酸化物粒子を分離した。その後、100℃で真空乾燥後に得られた無機酸化物粉体を、目開き1.4mm、続いて0.71mmの篩にかけ、目開き0.71mmの篩に残った無機酸化物粉体を測定に使用した。
【0090】
無機酸化物粉体を上皿天秤に載せ、金属製のヘラで荷重をかけ、粉体が解砕された時の荷重を測定した。測定は、50回実施し、上下5つの値を除いた40回分の平均値を圧壊強度値とした。値が小さいほど、粒子が解砕され易いことを示す。
【0091】
<M値(疎水度)の測定>
表面処理を行った無機酸化物粒子0.2gを容量250mlのビーカー中の50mlの水に加え、マグネチックスターラーで攪拌した。これにビュレットを使用してメタノールを加え、試料粉末の全量がビーカー内の溶媒に濡れて懸濁した時点を終点として、滴定した。この際、メタノールが直接試料に触れないように、チューブで溶液内に導いた。終点におけるメタノール−水混合溶媒中のメタノールの容量%をM値とした。
【0092】
<水分量測定方法>
無機酸化物粉体を温度25℃、湿度60%で24時間調湿した。調湿後のサンプルを約2g秤量し、120℃で24時間加熱した。加熱減量を、加熱前のサンプル重量(約2g)で割り、その百分率を水分量とした。
【0093】
<金属元素成分量の測定方法>
乾燥後の無機酸化物粉体2gを精秤して白金皿に移し、濃硝酸10ml、フッ酸10mLをこの順に加えた。これを200℃に設定したホットプレート上に乗せて加熱して内容物を乾固した。室温まで冷却後、更に濃硝酸2mLを加え、200℃に設定したホットプレート上に乗せて加熱して溶解した。室温まで冷却後、白金皿の内容物である溶液を容量50mLのメスフラスコに移し、超純水で希釈して漂線に合わせた。これを試料として、ICP発光分析装置((株)島津製作所製、型番「ICPS−1000IV」)により、金属元素成分量を測定した。
【0094】
<窒素含有量の測定>
(株)住化分析センター製の高感度N.CアナライザーNC−22Fを用い、ボードにシリカ粒子50mgを秤り取り、830℃において完全酸化させた後、TCDガスクロマトグラフィーにて窒素成分の定量分析を行うことによって、無機酸化物粒子中の窒素含有量(質量%)を測定した。
【0095】
実施例1
5Lの4つ口フラスコに、塩基性触媒として15質量%アンモニア水を150g(金属アルコキシドの質量に対し、1.2質量%)、及び有機溶媒としてメタノールを1040g(無機酸化物粒子分散液の質量に対し、27質量%)を投入し、35℃で攪拌した。金属アルコキシドとしてテトラメトキシシラン1940g、塩基性触媒として5質量%アンモニア水700g(金属アルコキシドの質量に対し、アンモニアの含量として1.8質量、先に仕込んだアンモニア水との合計で3.0質量%)を、それぞれ独立に液中滴下した。滴下は、5時間で終了するように速度を調整して実施した。滴下開始後10分の段階で、反応液が白濁しており、反応が進行している様子が確認された。なお、無機酸化物粒子分散液の質量は、3830gである。
【0096】
滴下終了後、0.5時間熟成を行い、ドライアイス(固体状の二酸化炭素)20g(分散液中の無機酸化物粒子に対し、2.6質量%)を投入後、20時間放置した。20時間経過した段階でシリカ粒子が沈降しており、定量ろ紙(保留粒子径7μm)を使用し、減圧濾過を行い、1303gのケークを得た。ろ液は透明であり、ろ過漏れは確認されなかった。更に、100℃で16時間減圧乾燥を行い、804gのシリカ粒子を得た。続けて、900℃で10時間焼成を行った。焼成雰囲気の調整は特に行わず、空気雰囲気下で実施した。焼成後に焼結している様子はなく、743gのシリカ粒子を得た。
【0097】
実施例2
ドライアイスの代わりに、炭酸水素アンモニウムを20g(分散液中の無機酸化物粒子に対し、2.6質量%)を投入した以外は、実施例1と同様に操作を実施した。
【0098】
実施例3
ドライアイスの添加量を200g(分散液中の無機酸化物粒子に対し、26質量%)に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0099】
実施例4
ドライアイスの添加2時間後にろ過した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0100】
実施例5
反応温度を15℃に変更した以外は、実施例1と同様に操作を行った。
【0101】
実施例6
5Lの4つ口フラスコに、塩基性水溶液として25質量%アンモニア水を210g(金属アルコキシドの質量に対し、アンモニアの含量として3.1質量%)、及び有機溶媒としてメタノールを310g、及びイソプロピルアルコールを710g(無機酸化物粒子分散液の質量に対し、26.8質量%)を投入し、40℃で攪拌した。金属アルコキシドとしてテトラエトキシシラン26gを滴下後、10分経過したところで反応液が白濁しており、反応が進行したことが確認された。続いて、金属アルコキシドとしてテトラメトキシシシラン1650g、メタノール170g(無機酸化物粒子分散液の質量に対し4.5質量%、アルコールの合計で31質量%)の混合溶液と、塩基性触媒として25%アンモニア水730g(金属アルコキシドの質量に対し、アンモニアの含量として10.9質量%、先に仕込んだアンモニア水との合計で14質量%)を、それぞれ独立に液中滴下した。滴下は、2時間で終了するように速度を調整して実施した。なお、無機酸化物粒子分散液の質量は、3806gである。
【0102】
滴下終了後、ドライアイス(固体状の二酸化炭素)20g(分散液中の無機酸化物粒子に対し、3.0質量%)を投入後、20時間放置した。20時間経過した段階でシリカ粒子が沈降しており、定量ろ紙(保留粒子径7μm)を使用し、減圧濾過を行い、1266gのケークを得た。ろ液は透明であり、ろ過漏れは確認されなかった。更に、100℃で16時間真空乾燥し、693gのシリカ粒子を得た。続いて、900℃で10時間焼成を行った。焼成雰囲気の調整は特に行わず、空気雰囲気下で実施した。焼成後に焼結している様子はなく、659gのシリカ粒子を得た。
【0103】
実施例7
ろ紙(孔径6μm)を使用し、0.1MPaの圧力で、加圧ろ過を行った以外は、実施例6と同様に操作を行った。
【0104】
実施例8
ろ布(通気量0.2cc/(cm・sec))及び、ろ紙(孔径6μm)を重ねて使用し、回転数1000rpmで遠心ろ過を実施した以外は、実施例6と同様に操作を行った。
【0105】
実施例9
3Lの4つ口フラスコに、金属アルコキシドとしてテトラメトキシシラン475gを仕込み、有機溶媒としてメタノールを238g(無機酸化物粒子分散液の質量に対し、11質量%)と、酸触媒として0.035質量%塩酸56g(金属アルコキシドの質量に対し、塩化水素の含量として、0.003質量%)を加え、室温で10分間攪拌することによって、テトラメトキシシランを加水分解した。続いて、金属アルコキシドとしてチタンテトライソプロポキシド250gをイソプロピルアルコール500g(無機酸化物粒子分散液の質量に対し、23質量%)で希釈した液を添加し、透明な複合アルコキシド溶液を得た。
【0106】
5Lの4つ口フラスコに、イソプロピルアルコールを256g(無機酸化物粒子分散液の質量に対し、12質量%、合計で46質量%)、25質量%アンモニア水を64g(金属アルコキシドの質量に対し、アンモニアの含量として2.2質量%)仕込み、40℃で保持、攪拌した。これに、上記複合アルコキシド溶液と、25質量%アンモニア水344g(金属アルコキシドの質量に対し、アンモニアの含量として3.9質量%、合計で6質量%)を、それぞれ独立に液中滴下した。滴下は、5時間で終了するように速度を調整して実施した。滴下開始後10分の段階で、反応液が白濁しており、反応が進行している様子が確認された。なお、無機酸化物粒子分散液の質量は、2183gである。
【0107】
滴下終了後、0.5時間熟成を行い、ドライアイス(固体状の二酸化炭素)150g(分散液中の無機酸化物粒子に対し、58質量%)を投入後、4時間放置した。4時間放置した段階でシリカ−チタニア複合酸化物粒子が沈降しており、定量ろ紙(保留粒子径5μm)を使用し、減圧濾過を行い、398gのケークを得た。ろ液は透明であり、ろ過漏れは確認されなかった。得られたシリカ−チタニア複合酸化物粒子を100℃で16時間真空乾燥し、260gのシリカ−チタニア複合酸化物を得た。更に、1050℃で12時間焼成を行った。焼成雰囲気の調整は特に行わず、空気雰囲気下で実施した。焼成後に焼結している様子はなく、247gのシリカ−チタニア複合酸化物粒子を得た。
【0108】
実施例10
3Lの4つ口フラスコに、酸触媒として0.1質量%塩酸4.0g(金属アルコキシドの質量に対し、塩化水素の含量として0.001質量%)と、金属アルコキシドとしてテトラエトキシシラン158g、メタノール950g(無機酸化物粒子分散液の質量に対し、24質量%)を投入し、室温で2時間攪拌させながら、加水分解を行った。そこへ、金属アルコキシドとして、ジルコニウムn−ブトキシド38gとイソプロパノール400g(無機酸化物粒子分散液の質量に対し、10質量%)の混合溶液を添加し、複合アルコキシド溶液とした。
【0109】
10Lの4つ口フラスコに、メタノール1980g(無機酸化物粒子分散液の質量に対し、51質量%)、25質量%アンモニア水を125g(金属アルコキシドの質量に対し、9.5質量%)を加え、そこへ、金属アルコキシドとしてテトラエトキシシラン4.0gとメタノール80g(無機酸化物粒子分散液の質量に対し、2質量%)の混合溶液を20℃に保持し、5分かけて添加したところ、反応液が僅かに白濁している様子が確認された。そこへ、上記複合アルコキシド溶液を2時間かけて滴下した。更に、金属アルコキシドとしてテトラエトキシシラン128gとメタノール400g(無機酸化物粒子分散液の質量に対し、1質量%、全体で88質量%)の混合溶液を2時間かけて滴下した。なお、無機酸化物粒子分散液の質量は、4267gである。
【0110】
滴下終了後、0.5時間熟成を行い、ドライアイス(固体状の二酸化炭素)を20g(分散液中の無機酸化物粒子に対し、21質量%)を投入後、20時間放置した。20時間放置した段階でシリカ−ジルコニア複合酸化物粒子が沈降しており、定量ろ紙(保留粒子径5μm)を使用し、減圧濾過を行い、153gのケークを得た。得られたシリカ−ジルコニア複合酸化物粒子を100℃で16時間真空乾燥し、98gのシリカ−ジルコニア複合酸化物を得た。更に、1000℃で6時間焼成を行った。焼成雰囲気の調整は特に行わず、空気雰囲気下で実施した。焼成後に焼結している様子はなく、89gのシリカ−ジルコニア複合酸化物粒子を得た。
【0111】
実施例11
有機溶媒として、メタノール780g、イソプロピルアルコール260gを使用した以外は、実施例1と同様に操作を行った。
【0112】
実施例12
ドライアイスの代わりに、炭酸アンモニウムを20g(分散液中の無機酸化物粒子に対し、2.6質量%)を投入した以外は、実施例1と同様に操作を実施した。
【0113】
実施例13
ドライアイスの代わりに、カルバミン酸アンモニウムを20g(分散液中の無機酸化物粒子に対し、2.6質量%)を投入した以外は、実施例1と同様に操作を実施した。
【0114】
実施例14
乾燥温度を150℃とした以外は、実施例1と同様に操作を実施した。窒素含有量の測定を行ったところ、0.01%であった。
【0115】
実施例15
乾燥温度を150℃とした以外は、実施例2と同様に操作を実施した。窒素含有量の測定を行ったところ、0.01%であった。
【0116】
実施例16
炭酸水素アンモニウムを110g(分散液中の無機酸化物粒子に対し、15質量%)を投入した以外は、実施例1と同様に操作を実施した。
【0117】
実施例17
炭酸水素アンモニウムを370g(分散液中の無機酸化物粒子に対し、50質量%)を投入した以外は、実施例1と同様に操作を実施した。
【0118】
比較例1
実施例1において、ドライアイスの添加を行わずにろ過を実施したところ、分散液が、ろ紙をすり抜け、シリカを回収することが出来なかった。得られた分散液を室温で真空乾燥させ、ある程度の分散媒を留去した後、実施例1同様に、乾燥、焼成を行った。
【0119】
比較例2
実施例1で得られた無機酸化物粒子分散液3830gに、純水を3830g添加し、40℃で減圧濃縮し、3830gのメタノール水を留去した。更に、純水1530gを添加し後、1530gのメタノール水を留去し、分散媒が水に置換された無機酸化物粒子分散液を得た。得られた無機酸化物粒子分散液に、炭酸水素アンモニウムを110g(分散液中の無機酸化物粒子に対し、15質量%)を添加した後は、実施例1と同様に操作を行ったが、分散媒にメタノールが存在しなかったため、減圧濾過時に分散液がろ紙をすり抜け、シリカ粒子を回収することができなかった。
【0120】
比較例3
炭酸水素アンモニウムを370g(分散液中の無機酸化物粒子に対し、50質量%)を投入した以外は、比較例2と同様に操作を実施した。
【0121】
上記実施例1〜17、比較例1〜3において、無機酸化物分散液中の無機酸化物粒子のメジアン径、乾燥後、及び焼成後の無機酸化物粒子のメジアン径、及び変動係数、並びに乾燥後の無機酸化物粒子の圧壊強度の結果を表1に示す。表1の結果より、本発明の製造方法により、得られた無機酸化物粒子は、いずれも圧壊強度が非常に低く、無機酸化物粒子分散液の濃縮、及び濃縮後の乾燥において、解砕処理の必要な、無機酸化物粒子の強固な凝集塊の生成が防止されていることが分かる。
【0122】
【表1】

【0123】
実施例18
実施例1において得られた100℃で16時間乾燥後のシリカ粒子400gを容積20Lの容器に入れ、窒素置換すると同時に、250℃に加熱した。10L/分の速度で窒素の流通を15分間継続した後、容器内を密閉して、水蒸気をミキサー内の分圧で60kPa導入した。続いて、ヘキサメチルジシラザン120g(無機酸化物粒子に対し、30質量部)を一流体ノズルで噴霧し、そのまま60分間攪拌を継続することにより、表面処理を行った。ミキサーを開放し、雰囲気を窒素ガスで置換した後に、表面処理品を取り出した。
【0124】
実施例19
実施例11で得られたシリカ粒子400gを使用し、実施例14と同様の操作で表面処理を行った。
【0125】
実施例20
実施例11で得られたシリカ粒子140g、トルエン700gを1L4つ口フラスコに入れ、室温で攪拌した。そこへアミノ変性オイル1.68g(無機酸化物粒子に対し、1.2部)投入し、110℃で1時間加熱還流を行った。その後、減圧蒸留により溶媒留去を行い、表面処理品を得た。
【0126】
実施例21
実施例11で得られたシリカ粒子140g、トルエン700gを1L4つ口フラスコに入れ、室温で攪拌した。そこへデシルトリメトキシシラン3.76g(無機酸化物粒子に対し、2.7部)投入し、110℃で1時間加熱還流を行った。その後、減圧蒸留により溶媒留去を行い、表面処理品を得た。
【0127】
上記実施例18〜21に関して、乾燥前後での疎水度の値と圧壊強度の値を示した。表面が疎水化されていた。また、圧壊強度の値も表面処理することにより低くなっていた。
【0128】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゾル−ゲル法によって得られる、メジアン径が0.01〜5μmの球状の無機酸化物粒子により構成され、水分量が15質量%以下の無機酸化物粉体であって、上記無機酸化物粉体は金属塩が粒子表面に存在せず、且つ、該無機酸化物粉体の水分散液について、レーザー回折散乱法による粒径測定でのピーク極大値が1つであり、且つメジアン径の10倍以上の径の粒子の体積頻度が0.1%以下であることを特徴とする無機酸化物粉体。
【請求項2】
疎水化処理され、M値が50%以上である請求項1記載の無機酸化物粉体。
【請求項3】
無機酸化物がシリカである、請求項1又は2に記載の無機酸化物粉体。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の無機酸化物粉体を含む封止剤用フィラー。

【公開番号】特開2013−18690(P2013−18690A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155363(P2011−155363)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】