説明

無機電界発光表示装置及びその製造方法

【課題】無機電界発光表示装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】無機電界発光表示装置の光取出し効率の向上のために、基板110、基板110上に備えられる第1電極120、第1電極120上に備えられる第1絶縁層132、第1絶縁層150に備えられる発光層142、発光層142上に備えられる第2絶縁層150、及び第2絶縁層152上に備えられる第2電極160を備え、第1絶縁層132と発光層142との第1界面、及び第2絶縁層150と発光層142との第2界面のうち、少なくともいずれか一つの界面に回折格子を備えたことを特徴とする無機電界発光表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機電界発光表示装置及びその製造方法に係り、特に、光取出し効率が向上した無機電界発光表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機電界発光表示装置の光取出し効率は、次のように表れる。
【0003】
【数1】

【0004】
前記数式1で、ηinとηoutとは、それぞれ内部の光取出し効率と外部の光取出し効率とを表すものであって、ηinは、各層の内部で、自己消滅されることに起因して決定されるものであり、ηoutは、各層間での全反射、すなわち光が屈折率の高い層から屈折率の低い層に入射する時、臨界角以上に入射して全反射を起こして、外部への取出しが阻害されることにより決定されるものである。後述するように、無機電界発光表示装置の場合、発光層の屈折率が高いため、光取出し効率は、主に発光層と絶縁層との界面での全反射の影響により決定される。
【0005】
図1に示したような従来の無機電界発光表示装置において、発光層140から放出された光が、第1絶縁層130、第1電極120、及び基板110を経て空気中に透過される時、各層間での全反射を考慮した光透過効率ηoutは、次の式のように表すことができる。
【0006】
【数2】

【0007】
前記式で、Nは、各層の屈折率である。一方、無機電界発光表示装置に一般的に使われる各層の屈折率は、次の通りである。
【0008】
【表1】

【0009】
前記表で、発光層としては、最も多く使われるZnSの屈折率を示しており、絶縁層としては、Case Iの場合には、SiO、Al、Case IIの場合には、SiN、Case IIIの場合には、ZnSを使用した場合の屈折率を示している。
【0010】
前記のようなCaseI、II、IIIの場合に、外部に光が取出されず、各層で消滅される比率を測定すれば、次の表2の通りである。
【0011】
【表2】

【0012】
前記表2で、発光層モードとは、発光層と第1絶縁層との界面での全反射によるものをいい、第1絶縁層モードとは、第1絶縁層と第1電極との界面での全反射によるものをいい、第1電極モードとは、第1電極と基板との界面での全反射によるものをいい、基板モードとは、基板と空気との界面での全反射によるものをいう。
【0013】
前記表2の数値は、前記表1の値を利用して、各層間で光が取出されず、全反射される比率をFDTD(Finite Difference Time Domain Method)法を用いたシミュレーターを利用して計算した結果である。
【0014】
FDTD法は、時間領域差分法、あるいは有限差分時間領域法と呼ばれる。FDTD法を用いたシミュレーターは、マクスウェル(Maxwell)方程式を精密に解くシミュレーターであって、高度の正確性が認定されるシミュレーション方式である。
【0015】
一般的に、無機電界発光の層別の光学的特性を考慮した光取出し特性は、前記表2の通りであり、前記case I、case IIの場合が一般的な無機電界発光表示装置の膜構成であるということを考慮すれば、発光層から第1絶縁層に透過される光量が、30%以下というように非常に少なく、その主要な原因は、発光層から第1絶縁層に光が入射する時に発生する全反射(発光層モード)であることが分かる。また、Case IIIの場合の光取出し効率は、電極と絶縁層との界面での全反射特性によるものである。
【0016】
結果的に、あらゆる場合において、外部に取出される光量は、前記表2の最後の列に記載されているように、約10%以下となって、多くの光量が損失されるという構造的な問題が発生する。
【0017】
このような光損失及び輝度低下の問題を解決するために、多様な試みがなされた。このような試みのうち、供給電圧を高める方法は、意図した輝度向上の達成を可能にするが、駆動電圧の上昇によるドライバICの負担、素子寿命の減縮、消費電力の増加などの問題点がある。したがって、駆動電圧を高めず、かつ輝度を向上させるために、次の特許文献が提案された。
【0018】
また、これら試みは、バッテリーの容量増加を伴って軽量化に反し、またバッテリー及び自発光素子の寿命を減縮させる。このため、供給電圧をかえって低め、かつ輝度を向上させるために、次の特許文献が提案された。
【0019】
特許文献1には、電界発光シートの基板上に互いに平行した長さの方向軸を有する複数のプリズムが形成されている、アクリル樹脂剤のプリズムレンズシートが装着された電界発光装置が開示されている。透明基板と空気との界面に臨界角以上の角度で入射した光が、プリズムレンズの各辺では、臨界角以下の入射角を有するように全反射を減らし、光の射出方向を所定の方向に指向させて、その方向での輝度を向上させることである。しかし、前記特許文献1には、プリズムレンズ内でも、全反射によって消失される光が存在し、像の重複により像の鮮明度が低下するという問題点がある。また、無機電界発光表示装置においては、全反射によって外部に取出されない光の大部分は、発光層と絶縁層との界面で発生するものであるので、前記のような方法では、無機電界発光表示装置での光取出し効率の向上の効果が微小であるという問題点がある。
【0020】
特許文献2には、有機電界発光表示装置の反射電極上に回折格子を備えた有機電界発光素子が開示されている。反射電極上に回折格子を形成して、各界面で全反射された光を、前記界面に臨界角以下に再び入射できるように反射させて、全反射を減らすということである。しかし、前記構造は、基板と電極との界面での全反射特性の大きい有機電界発光素子で効果が大きい考案であり、絶縁層と電極との界面でない発光層と絶縁層との界面での全反射が問題となる無機電界発光表示装置に適用した時は、特別な効果がない。
【特許文献1】特開平9−73983号公報
【特許文献2】特開平11−283751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、上記のような問題点を含む種々の問題点を解決するためのものであって、光取出し効率が向上した無機電界発光表示装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記のような目的及びその他の種々の目的を達成するために、本発明は、基板、前記基板上に備えられる第1電極、前記第1電極上に備えられる第1絶縁層、前記第1絶縁層上に備えられる発光層、前記発光層上に備えられる第2絶縁層、及び前記第2絶縁層上に備えられる第2電極を備え、前記第1絶縁層と前記発光層との第1界面、及び前記第2絶縁層と前記発光層との第2界面のうち、少なくともいずれか一つの界面に回折格子を備えることを特徴とする無機電界発光表示装置を提供する。
【0023】
このような本発明の他の特徴によれば、前記回折格子は、前記第1界面及び第2界面が屈曲を有するように形成される。
【0024】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記第1電極及び第2電極のうちいずれか一つの電極は、反射型電極である。
【0025】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記回折格子は、複数の突出部を有し、各突出部は、ライン型、四角柱または円柱で形成される。
【0026】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記回折格子は、複数の突出部を有し、当該突出部の間隔周期は、前記発光層から放出される光の波長の1/4倍ないし4倍である。
【0027】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記第1絶縁層または第2絶縁層の屈折率は、1.5ないし2.5である。
【0028】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記第1絶縁層または第2絶縁層は、透明酸化物または透明硫化物を含む。
【0029】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記第1絶縁層または第2絶縁層は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム及び窒化ケイ素(SiN)の酸化物のうち、少なくともいずれか一つを含む。
【0030】
本発明は、また、前記のような目的を達成するために、基板上に第1電極を形成する工程、前記第1電極上に第1絶縁層を形成する工程、前記第1絶縁層上に回折格子を形成する工程、前記回折格子上に発光層を形成する工程、前記発光層の上面に第2絶縁層を形成する工程、及び前記第2絶縁層上に第2電極を形成する工程を含むことを特徴とする無機電界発光表示装置の製造方法を提供する。
【0031】
このような本発明の他の特徴によれば、前記回折格子は、前記第1絶縁層の前記発光層の方向の面をパターニングして形成される。
【0032】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記第1絶縁層の前記発光層の方向の面のパターニングは、前記第1絶縁層上にフォトレジストを塗布し、電子ビーム、レーザーホログラム、またはフェーズマスクを利用してパターニングして形成される。
【0033】
本発明は、また、前記のような目的を達成するために、基板上に第1電極を形成する工程、前記第1電極上に第1絶縁層を形成する工程、前記第1絶縁層上に発光層を形成する工程、前記発光層上に回折格子を形成する工程、前記回折格子上に第2絶縁層を形成する工程、及び前記第2絶縁層の上面に第2電極を形成する工程を含むことを特徴とする無機電界発光表示装置の製造方法を提供する。
【0034】
このような本発明の他の特徴によれば、前記回折格子は、前記発光層の前記第2絶縁層の方向の面をパターニングして形成される。
本発明のさらに他の特徴によれば、前記発光層の前記第2絶縁層の方向の面のパターニングは、前記発光層上にフォトレジストを塗布し、電子ビーム、レーザーホログラム、またはフェーズマスクを利用してパターニングして形成される。
【0035】
本発明は、また、前記のような目的を達成するために、基板上に第1電極を形成する工程、前記第1電極上に第1絶縁層を形成する工程、前記第1絶縁層上に第1回折格子を形成する工程、前記第1回折格子上に発光層を形成する工程、前記発光層の上面に第2回折格子を形成する工程、前記第2回折格子上に第2絶縁層を形成する工程、及び前記第2絶縁層の上面に第2電極を形成する工程を含むことを特徴とする無機電界発光表示装置の製造方法を提供する。
このような本発明の他の特徴によれば、前記第1回折格子は、前記第1絶縁層の前記発光層の方向の面をパターニングして形成され、前記第2回折格子は、前記発光層の前記第2絶縁層の方向の面をパターニングして形成される。
【0036】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記第1絶縁層の前記発光層の方向の面上の第1回折格子は、前記第1絶縁層上にフォトレジストを塗布し、電子ビーム、レーザーホログラム、またはフェーズマスクを利用してパターニングして形成され、前記発光層の前記第2絶縁層の方向の面上の第2回折格子は、前記発光層上にフォトレジストを塗布し、電子ビーム、レーザーホログラム、またはフェーズマスクを利用してパターニングして形成される。
【発明の効果】
【0037】
本発明の無機電界発光表示装置及びその製造方法によれば、次のような効果を得ることができる。
【0038】
第1に、発光層と絶縁層との界面に回折格子を備えることによって、発光層から発生した光が前記界面で全反射される量を減らし、光取出し効率及び輝度を向上させ、これにより、消費電力の浪費を解消すると共に、無機電界発光表示装置の長寿命化を図ることができる。
【0039】
第2に、別途の回折格子層を介在させるものではなく、発光層と絶縁層との界面をパターニングして回折格子を備えることによって、別途の回折格子層を介在させた場合より、発光層から発生した光が通過する界面の数を減らすことによって、光取出し効率及び輝度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、添付した図面を参照して、本発明の望ましい実施形態を詳細に説明すれば、次の通りである。
【0041】
図2は、本発明の望ましい第1実施形態による無機電界発光表示装置を概略的に示した断面図である。
【0042】
図2に示すように、本発明の望ましい第1実施形態による無機電界発光表示装置は、基板110の第1面に第1電極120が形成され、前記第1電極120の上部に第1絶縁層132が形成され、前記第1絶縁層132の上部に、順次に発光層142、第2絶縁層150、及び前記第1電極120と異なる極性を有する第2電極160が備えられる。すなわち、発光層142の上部に第2絶縁層が備えられ、第2絶縁層の上部に第2電極が備えられる。この際、記第1絶縁層132と発光層142との界面(第1界面)に回折格子が形成される。そして、前記第2電極160の上部には、図示していないが、前記第1電極120、第1絶縁層132、発光層142、第2絶縁層150及び第2電極160を外部から密封させる密封部材(図示せず)がさらに備えられる。以下、説明する本発明の実施形態では、説明の便宜上、前記密封部材を省略した概略的な構造を中心に説明する。
【0043】
前記基板110として、SiOを主成分とする透明なガラス材の基板を使うことができる。図示していないが、前記基板110の上面には、基板の平滑性及び不純元素の侵入を遮断するために、バッファ層をさらに具備でき、前記バッファ層は、SiO等で形成できる。また、前記基板110としては、ガラス材だけでなく、プラスチック材の基板を使うこともでき、例えばポリマー系のフレキシブルタイプ(可撓性を持った基板)が適用されることもある。
【0044】
前記基板110上に積層される第1電極120は、透明素材の伝導性物質で形成できるが、ITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)で形成でき、フォトリソグラフィ法により所定のパターンとなるように形成できる。前記第1電極120のパターンは、受動駆動型(Passive Matrix:PM、以下、「PM」と称する)の場合には、互いに所定間隔で離れたストライプ状のラインで形成でき、能動駆動型(Active Matrix:AM、以下、「AM」と称する)の場合には、画素に対応する形態で形成できる。AMの場合には、また、この第1電極120と基板110との間に、少なくとも一つの薄膜トランジスタを備えたTFT(Thin Film Transistor)層をさらに備え、前記第1電極120は、このTFT層に電気的に連結される。これは、以下に説明する本発明のあらゆる実施形態で同一に適用される。
【0045】
このようにITOで形成された第1電極120は、外部の第1電極端子(図示せず)に連結されて、たとえば、アノード電極として機能する。
【0046】
前記第1電極120の上部には、第2電極160が位置するが、この第2電極160は、反射型電極となり、アルミニウムおよび/またはカルシウム等で形成され、外部の第2電極端子(図示せず)に連結されて、カソード電極として機能する。
【0047】
前記第2電極160は、PMの場合には、第1電極120のパターンに直交するストライプ状のラインで形成でき、AMの場合には、画素に対応する形態で形成できる。AMの場合には、画像が具現されるアクティブ領域の全体にかけて形成されることもある。
【0048】
前記のような第1電極120と第2電極160とは、その極性が互いに逆になってもよい。
【0049】
前記第1電極120と第2電極160との間には、発光層142、第1絶縁層132及び第2絶縁層150を備える。これらの層の種類によって、電界発光素子が有機電界発光素子または無機電界発光素子に区分される。
【0050】
本発明のような無機電界発光素子の場合、発光層142は、ZnS、SrS、CaSなどのような金属硫化物、またはCaGa、SrGaなどのようなアルカリ土類カリウム硫化物、及びMn、Ce、Tb、Eu、Tm、Er、Pr、Pbなどを含む遷移金属、またはアルカリ希土類金属のような物質で形成される。
【0051】
前記第2電極160の上部には、密封部材(図示せず)が備えられるが、前記密封部材は、内部に吸湿剤が備えられたメタルキャップで備えられ、または密封用樹脂材を塗布して、内部への水分の侵入を遮断する。前記密封部材は、その他にも基板を利用して形成されてもよい。
【0052】
以上説明したような本発明の望ましい第1実施形態による無機電界発光表示装置は、発光層142から発光される光が、基板110の方向に発光される背面発光型であるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、前面発光型や両面発光型の場合にもそのまま適用できる。
【0053】
前記のような構造において、前記発光層142から発生した光が、前記第1絶縁層132に入射しつつ、その界面に形成されている回折格子によって、全反射される量が減る。すなわち、回折格子がなければ、前記発光層142から発生した光が、前記第1絶縁層132に臨界角以上の角度で入射して全反射されるが、前記回折格子を備えることによって全反射されず、前記第1絶縁層132に透過されて、最終的に外部に光が取出される。また、前記発光層142から発生した光が、前記第2絶縁層150に臨界角以上の角度で入射して全反射された後、再び前記第1絶縁層132に臨界角以上の角度で入射する場合にも、前記回折格子を通じて全反射されず、前記第1絶縁層132に透過される。このような構造を通じて、外部への光取出し効率が向上する。また、本実施形態において、前記第2電極160を反射型電極で形成することによって、光取出し効率をさらに向上させることができる。
【0054】
前記回折格子は、図2に示すように、前記発光層142と前記第1絶縁層132との界面に直接形成されることもあり、その他にも、その両層間に新たな層として回折格子層を介在させることもある。しかし、各層での反射量を減らすという観点からみれば、新たな回折格子層を介在させることより、図2に示すように、前記発光層142と前記第1絶縁層132との界面が屈曲を有するように形成させることが、光取出し効率の面において有利である。
【0055】
図3は、回折格子及びこれによる光路変化を示す概念図である。
【0056】
図3に示すように、θiの角度で入射する光は、回折格子により反射される場合、回折次数k、反射角θo、回折格子の突出部の周期d、前記入射光の波長λ及び屈折率nの間に次のような関係が成立する。
【0057】
【数3】

【0058】
前記式によって、回折格子の突出部の周期dを適切に調節すれば、反射角の角度θoを調節でき、これを通じて臨界角以上の角度で入射した光が、臨界角以下の角度で反射されるように調節できる。
【0059】
前記のような理論的根拠に基づいて、図1に示したような従来の無機電界発光表示装置を次のような方法で第1比較例として製作して、前記第1実施形態による無機電界発光表示装置と光取出し効率を比較した。
【0060】
まず、基板110上にITOとして第1電極120を形成し、前記第1電極120上にSiOを500nmで成膜して、第1絶縁層130を形成した後、ZnS及びTbをスパッタリング方法を利用して発光層140を形成した。この際、発光層140の厚さは、8000Åとし、ラピッドサーマルアニーリングを600℃で約3分間実施した後、第2絶縁層150と第2電極160とをそれぞれAlとAlとで蒸着して形成した。
【0061】
一方、図2に示したような前記実施形態による無機電界発光表示装置は、次のような方法で製作された。まず、基板110上にITOとして第1電極120を形成した。次いで、前記第1電極120上にSiOをPECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition:プラズマ支援化学気相成長)法で約500nm厚さに蒸着し、その上部を深さ200nm、周期350nm、サイズ比率50%のドット型のナノ構造にパターニングして、回折格子が備えられた第1絶縁層132を形成した。次いで、前記比較例と同一に、ZnS及びTbをスパッタリング方法を利用して発光層140を形成した。この際、発光層140の厚さは、8000Åとし、ラピッドサーマルアニーリングを600℃で約3分間実施した後、第2絶縁層150と第2電極160とをそれぞれAlとAlとで蒸着して形成した。
【0062】
上述したように、比較例と第1実施形態とを製作して光取出し効率を測定した結果、前記のように製作された第1実施形態による電界発光表示装置の光取出し効率が、前記第1比較例の光取出し効率の約5.6倍に達すると現れた。
【0063】
また、第2比較例として、前記第1比較例と異なり、前記第1絶縁層130がSiNで備えられた従来の無機電界発光表示装置を製作し、やはり図2に示したような第1実施形態において、第1絶縁層132を、前記第2比較例と同一にSiNで形成して、無機電界発光表示装置を製作し、その輝度を比較した結果、後者の輝度が前者の輝度の約4倍の効率を有すると現れた。
【0064】
一方、基板上に、第1電極、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層及び第2電極を順次に備える、一般的な有機電界発光表示装置においては、前記層がいずれも有機膜からなり、前記有機膜とITO等とで備えられる前記第1電極の屈折率が類似しているので、全反射による光取出し効率の低下は、ITO等で形成される第1電極とガラス等で形成される基板との界面で主に起きる。したがって、従来の有機電界発光表示装置に回折格子を備えても、これは、本発明と異なり、前記第1電極と前記基板との界面のみに備えることが、最もその効果が高い。
【0065】
第3比較例として、前記のような回折格子を備えない従来の有機電界発光素子を、ITOが100nm厚さに備えられたガラス基板上に、TPDとAlq3とをそれぞれ70nm、80nm厚さに形成し、LiFを10Åの厚さに形成した後、Alから形成される1000Å厚さの負極を形成することによって製作した。この時の光取出し効率は、5cd/Aであった。
【0066】
一方、第4比較例として、前記第3比較例のような従来の有機電界発光素子の第1電極と基板との界面に、350nmの周期、0.5程度のサイズ比率、及び300nmの深さを有するように、SiOから形成されるドット構造の2次元回折格子と、前記回折格子を平坦化させるために、SiNを利用してPECVD方法で形成した800nmの厚さの平坦化層とを介在させた。その上部の第1電極の以上の構造は、前記第3比較例と同一であった。この時の光取出し効率は、8cd/Aと評価された。
【0067】
これを総合すれば、前述したように、無機電界発光素子において、前記本発明の望ましい第1実施形態によれば、その光取出し効率が4倍ないし6倍に達するが、前記第3比較例及び第4比較例に示すように、有機電界発光素子においては、約1.6倍が向上することに止まる。したがって、本発明は、前記第1実施形態及び後述する実施形態のように、無機電界発光素子のみにおいて、顕著な効率の向上をもたらすということが分かる。
【0068】
図4は、前記数式3の原理を利用した本発明の望ましい第2実施形態による無機電界発光表示装置を概略的に示す断面図である。
【0069】
図4に示すように、本発明の望ましい第2実施形態による無機電界発光表示装置は、基板110上に、順次に第1電極120、第1絶縁層130、発光層144、第2絶縁層152及び第2電極160を備え、前記発光層144と前記第2絶縁層152との界面(第2界面)に回折格子が形成される。この場合は、発光層144と前記第2絶縁層152との界面が屈曲を有するように形成させることが、光取出し効率の面において有利である。上記のような構造において、前記発光層144から臨界角以上の角度で第2絶縁層152に入射した光は、前記回折格子を備えなければ、前記界面で全反射された後、さらに臨界角以上の角度で第1絶縁層130上に入射して、再び全反射されてしまい、外部に取出されない。この際、図4に示すように、前記発光層144と前記第2絶縁層152との界面に回折格子を形成することによって、前記界面で反射される光を臨界角以下の反射角で反射させて、前記第1絶縁層130上に入射する時、臨界角以下の角度で入射させることによって、光を外部に取出すことができる。また、本実施形態において、前記第2電極160を反射型電極で形成することによって、光取出し効率をさらに向上させることもある。
【0070】
図5は、本発明の望ましい第3実施形態による無機電界発光表示装置を概略的に示す断面図である。
【0071】
図5に示すように、本発明の望ましい第3実施形態による無機電界発光表示装置は、基板110上に、順次に第1電極120、第1絶縁層132、発光層146、第2絶縁層152及び第2電極160を備え、前記発光層146と前記第1絶縁層132との界面(第1界面)、及び前記発光層146と前記第2絶縁層152との界面(第2界面)に、それぞれ回折格子(第1回折格子、第2回折格子)が形成されている。上記のような構造を取ることによって、前記発光層146から発生した光が、前記第2絶縁層152に臨界角以上の角度で入射して全反射される時、前記発光層146と前記第2絶縁層152との界面に形成された回折格子により、臨界角以下の角度の反射角を有するようにすることによって、前記第1絶縁層132に臨界角以下の角度で入射させて、光取出し効率を向上できると共に、前記発光層146から発生した光が、臨界角以上の角度で前記第1絶縁層132に入射する時、前記発光層146と前記第1絶縁層132との界面に形成された回折格子により、前記光を前記第1絶縁層132に透過させることによって、光取出し効率を向上させることができる。また、本実施形態において、前記第2電極160を反射型電極で形成することによって、光取出し効率をさらに向上させることもできる。
【0072】
前述した本発明の望ましい第1、第2及び第3実施形態は、前記第2電極160が反射型電極である背面発光型についてのみ説明したが、前記第1電極120が反射型電極である前面発光型、そして前記第1電極及び前記第2電極がいずれも透明電極で備えられる両面発光型にも適用できるということはいうまでもない。
【0073】
図6は、本発明の望ましい第4実施形態による無機電界発光表示装置に備えられる回折格子が、2次元構造の突出部を有する場合の回折格子の写真である。
【0074】
回折格子は、複数の突出部を有し、その突出部が一定した間隔周期で形成されているものである。突出部は、ストライプ状(ライン型)に形成されてもよい。ただし、このように突出部がストライプ状に形成される場合には、そのストライプに平行する方向には、光の回折が起きない。したがって、突出部が2次元形態の配列を有する回折格子を利用すれば、さらに、回折発生率が増加して、光取出し効率が向上できる。この場合、突出部は、四角柱または円柱などの形状に備えられる。
【0075】
一方、前述した数式3のように、回折格子の突出部の間の間隔周期により光の角度が決定されるところ、前記回折格子の突出部の間の周期は、発光層から発生した光の波長の1/4倍ないし4倍にすることが望ましい。回折格子の突出部の間の周期がこれより大きい場合には、光が回折される程度が小さくなって、回折された光の角度が臨界角以内に十分に小さくならず、回折格子の突出部の間の周期がこれより小さい場合には、光が回折格子を通過する比率が小さくなって、かえって光取出し効率が低下することがある。したがって、前記回折格子の突出部の間の周期は、発光層から発生した光の波長の1/4倍ないし4倍にすることが望ましい。
【0076】
一方、前述した本発明の望ましい実施形態において、前記第1絶縁層及び第2絶縁層の屈折率は、1.5ないし2.5にすることができる。第1絶縁層130を例にとれば、図4に示すように、前記第1絶縁層130の屈折率が小さいほど、臨界角が小さくなって、前記発光層144から発生した光が、前記第1絶縁層130に入射する時に全反射される比率が大きくなるところ、これにより、前記第1絶縁層130の屈折率が約1.5以下となれば、これにより、光取出し効率が顕著に低下する。したがって、前記第1絶縁層の屈折率は、1.5以上であることが望ましい。
【0077】
また、前記第1絶縁層130の屈折率が大きくなるほど、前記発光層144から発生した光が、前記第1絶縁層130に入射する時に全反射される比率が減少するので、前記第1絶縁層130の屈折率が大きいほど良いが、前記第1電極120の屈折率が約1.9であるので、前記第1絶縁層130の屈折率が1.9より大きくなるほど、前記第1絶縁層130から前記第1電極120に入射する光が全反射される比率が増加するので、その上限線がある。したがって、前記第1絶縁層130の屈折率が、前記発光層144で最も多く使われるZnSの屈折率である2.5より小さいことが望ましい。同様に、第2絶縁層も、屈折率が1.5ないし2.5であることが望ましい。
【0078】
前記のような屈折率を有する絶縁体としては、酸化物または硫化物があり、第1絶縁層および第2絶縁層として、酸化物または窒化物、特に酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム及びSiNの酸化物のような物質が適当である。前記第1絶縁層および第2絶縁層としては、透明なものが良いということはいうまでもない。
【0079】
図7は、本発明の望ましい第5実施形態による無機電界発光表示装置を製造する工程を概略的に示すフローチャートであり、図8及び図9は、前記各工程のうち、一部の工程を概略的に示す断面図である。
【0080】
まず、図8に示したような構造は、次のような工程を通じて製作する。基板110上に、第1電極120をスパッタリング方法で形成してパターニングした後、その上に、酸化ケイ素等から形成される第1絶縁層をCVD方法を利用して形成する。次いで、前記第1絶縁層上に、クロムまたはシリコン薄膜をスパッタリング方法で形成し、その上に、ポジティブフォトレジストをコーティングした後、電子ビーム、レーザーホログラムまたはフェーズマスク等の方法でパターニングし、現像剤で前記フォトレジストをエッチングする。次いで、反応性イオンエッチングの方法を利用して、前記第1絶縁層をエッチングして回折格子を製作する。
【0081】
上記のような方法で、第1絶縁層132の上面を回折格子状に形成した後、図9に示すように、発光層142aをスパッタリング方法を利用して形成した後、その上部に第2電極を備えるようにすることができる。
【0082】
前記第5実施形態は、第1絶縁層132と発光層142との界面(第1回面)に回折格子を備えさせるものであるが、その他にも、図10に示すように、第2絶縁層152と発光層144との界面(第2界面)に回折格子を備えることもあり、前記両界面(第1界面および第2界面)にいずれも回折格子(第1回折格子、第2回折格子)を備えることもある。
【0083】
本発明は図面に示した実施形態を参考として説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者であれば、これから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。従って、本発明の真の技術的な保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想により決まらねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、発光層と絶縁層との界面に回折格子を備えて、発光層から発生した光が前記界面で全反射される量を減少させることによって、光取出し効率及び輝度が向上し、これにより、消費電力の浪費が防止され、寿命が延びた無機電界発光表示装置の分野に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】既存の無機電界発光表示装置において、光が取出されないことを示す断面図である。
【図2】本発明の望ましい一実施形態による回折格子を備えた無機電界発光表示装置を示す断面図である。
【図3】回折格子及びこれによる光路変化を示す概念図である。
【図4】本発明の望ましいさらに他の一実施形態による回折格子を備えた無機電界発光表示装置を示す断面図である。
【図5】本発明の望ましいさらに他の一実施形態による回折格子を備えた無機電界発光表示装置を示す断面図である。
【図6】本発明の望ましいさらに他の一実施形態に使われる回折格子の写真である。
【図7】本発明の望ましいさらに他の一実施形態による無機電界発光表示装置を製造する工程を概略的に示すフローチャートである。
【図8】前記実施形態による無機電界発光表示装置を製造する工程のうち、一部を概略的に示す断面図である。
【図9】前記実施形態による無機電界発光表示装置を製造する工程のうち、一部を概略的に示す断面図である。
【図10】本発明の望ましいさらに他の一実施形態による無機電界発光表示装置の製造方法により製造された無機電界発光表示装置を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0086】
110 基板、
120 第1電極、
130、132 第1絶縁層、
142、144、146 発光層、
150、152 第2絶縁層、
160 第2電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に備えられる第1電極と、
前記第1電極上に備えられる第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に備えられる発光層と、
前記発光層上に備えられる第2絶縁層と、
前記第2絶縁層上に備えられる第2電極と、を備え、
前記第1絶縁層と前記発光層との第1界面、及び前記第2絶縁層と前記発光層との第2界面のうち、少なくともいずれか一つの界面に回折格子を備えることを特徴とする無機電界発光表示装置。
【請求項2】
前記回折格子は、前記第1界面及び第2界面が屈曲を有するように形成されることを特徴とする請求項1に記載の無機電界発光表示装置。
【請求項3】
前記第1電極及び前記第2電極のうちいずれか一つの電極は、反射型電極であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無機電界発光表示装置。
【請求項4】
前記回折格子は、複数の突出部を有し、各突出部は、ライン型、四角柱または円柱で形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無機電界発光表示装置。
【請求項5】
前記回折格子は、複数の突出部を有し、当該突出部の間隔周期は、前記発光層から放出される光の波長の1/4倍ないし4倍であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無機電界発光表示装置。
【請求項6】
前記第1絶縁層または第2絶縁層の屈折率は、1.5ないし2.5であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無機電界発光表示装置。
【請求項7】
前記第1絶縁層または第2絶縁層は、透明酸化物または透明硫化物を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無機電界発光表示装置。
【請求項8】
前記第1絶縁層または第2絶縁層は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム及び窒化ケイ素の酸化物のうち、少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無機電界発光表示装置。
【請求項9】
基板上に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極上に第1絶縁層を形成する工程と、
前記第1絶縁層上に回折格子を形成する工程と、
前記回折格子上に発光層を形成する工程と、
前記発光層の上面に第2絶縁層を形成する工程と、
前記第2絶縁層上に第2電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする無機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記回折格子は、前記第1絶縁層の前記発光層の方向の面をパターニングして形成されることを特徴とする請求項9に記載の無機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1絶縁層の前記発光層の方向の面のパターニングは、前記第1絶縁層上にフォトレジストを塗布し、電子ビーム、レーザーホログラム、またはフェーズマスクを利用してパターニングして形成されることを特徴とする請求項10に記載の無機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項12】
基板上に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極上に第1絶縁層を形成する工程と、
前記第1絶縁層上に発光層を形成する工程と、
前記発光層上に回折格子を形成する工程と、
前記回折格子上に第2絶縁層を形成する工程と、
前記第2絶縁層の上面に第2電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする無機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記回折格子は、前記発光層の前記第2絶縁層の方向の面をパターニングして形成されることを特徴とする請求項12に記載の無機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記発光層の前記第2絶縁層の方向の面のパターニングは、前記発光層上にフォトレジストを塗布し、電子ビーム、レーザーホログラム、またはフェーズマスクを利用してパターニングして形成されることを特徴とする請求項13に記載の無機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項15】
基板上に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極上に第1絶縁層を形成する工程と、
前記第1絶縁層上に第1回折格子を形成する工程と、
前記第1回折格子上に発光層を形成する工程と、
前記発光層の上面に第2回折格子を形成する工程と、
前記第2回折格子上に第2絶縁層を形成する工程と、
前記第2絶縁層の上面に第2電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする無機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記第1回折格子は、前記第1絶縁層の前記発光層の方向の面をパターニングして形成され、 前記第2回折格子は、前記発光層の前記第2絶縁層の方向の面をパターニングして形成されることを特徴とする請求項15に記載の無機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項17】
前記第1絶縁層の前記発光層の方向の面上の第1回折格子は、前記第1絶縁層上にフォトレジストを塗布し、電子ビーム、レーザーホログラム、またはフェーズマスクを利用してパターニングして形成され、
前記発光層の前記第2絶縁層の方向の面上の第2回折格子は、前記発光層上にフォトレジストを塗布し、電子ビーム、レーザーホログラム、またはフェーズマスクを利用してパターニングして形成されることを特徴とする請求項16に記載の無機電界発光表示装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate