説明

無機EL素子およびその製造方法

【課題】高輝度無機EL素子を低コストで製造する。
【解決手段】無機EL電極として従来ITO(インジウム酸化錫)が使用されていたが、この電極は透明性は高いが、高価であると同時にフレキシビリティーがないなど問題が多かった。これに対し、フレキシビリティーに富む導電性高分子を無機ELの電極に用いて従来に匹敵する高輝度な発光デバイスを低コストで提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明電極と背面電極との間に発光層と絶縁層とが介在する無機EL素子おいてその電極が有機導電性高分子であり、また、その他の層を形成する材料が有機ポリマーに分散されており、これら全材料がワニス化されていることにより全ての工程を印刷によって行うことを可能とした技術に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電源による電界発光素子(以下「無機EL素子」という。)は、印刷技術により紙、高分子フィルム上にそのデバイス形成が可能であり、フレキシビリティーを要求される電飾素子として市場を形成している。この無機EL素子は、例えば特公平7−58636号公報「電界発光灯」等に示されるように、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明フィルム上に形成された透明電極上に発光層、絶縁層及び背面電極が形成されているもので、発光層、絶縁層及び背面電極は、それぞれ発光インク、絶縁インク及び導電インクをスクリーン印刷技術を用いて膜状に順次積層して製造している。裏面電極としては例えば、特開2002−308257号公報に示されているようにアルミニウムの蒸着もしくはスパッタリング膜、カーボンペーストや銀ペーストをスクリーン印刷することが行われていた。
【特許文献1】特公平7−58636号公報
【特許文献2】特開2002−308257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、透明電極としてはインジウム錫酸化物のスパッタリング膜が用いられており、非常に高価でかつ本来要求されているフレキシブル発光素子のフレキシビリティーを大きく阻害する問題を持っていた。また、一方導電性有機材料はポリアニリン、ポリチオフェンなどパイ共役系高分子材料が知られているがその導電率が低く、大面積電極として用いることが難しく、発熱などの問題をもっていた。
【0004】
すなわち、全ての層を高分子材料で構成することができなかったため、従来期待されているフレキシビリティーにおいて十分満足されるものが提供できなかった。
【0005】
導電性高分子材料ではポリアニリンの開発が精力的に行われているが、近年ドイツオルメコン社により高導電性ポリアニリンの発表があり(例えば、US Pat.5720903参照)、すでに200S/cmの導電率を示している。しかし、これは有機溶媒に対する光波長を越える粒子の分散であること、ポリアニリン自身が緑色を呈しているため、発光を効率的に外部に取り出せないことに問題がある。
【特許文献3】US Pat.5720903
【0006】
また、大面積にした無機EL素子では電界の均一性を保つため、銀ペーストの様な高導電率を期待できる材料をスクリーン印刷により形成していたが、非常に高価な電極となっていた。
【0007】
また、コスト低減を行うためグリッド電極などを用いることが検討されているが、良好な特性が出たことは報告されていない。
【0008】
また、導電性高分子のうちポリアニリンは一般に熱劣化が激しく、特に120℃以上の温度にさらされる場合その導電率が大きく劣化することが知られている。また、電界にも弱く還元電位以上の電界がかかった場合、導電性の起源であるドーパンが外れるなどの問題があった。
【0009】
また、各層に用いる材料はそれぞれ独立に形成されるため層界面での密着力が問題になることが多く、特に従来用いられている透明電極では長時間発光させた場合電極と発光層の界面がはがれるなどの問題を有しており、十分に安定な製品を提供するには至っていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基材に支持された第1層として透明電極、第2層として無機蛍光材料を含む発光層、第3層として誘電体層、第4層として電極層からなる無機EL発光デバイスにおいて、第1層、第4層の電極のうち両方もしくは第1層の透明電極が有機導電性材料であり、その有機導電性材料がイオウ、窒素を含有する有機分子からなり、その導電率が1S/cm以上、可視光領域での光線透過率が80%以上である電極からなる無機EL素子であり、好ましくは、前記有機導電材料がポリチオフェン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、これら誘導体、共重合体、若しくはこれら高分子の少なくとも2種以上の混合物である無機EL素子であり、また好ましくは、前記第2層の無機蛍光材料が硫化亜鉛を含有する材料で、その粒子径が500μm以下の球状以外の粒子である無機EL素子である。また、好ましくは前記第4層の電極層がカーボンであり、有機導電材料で形成した第4層の電極上に金属もしくはカーボンによるグリッドを形成し補助電極を設けた無機EL素子である。
また本発明は、基材に支持された第1層として透明電極、第2層として無機蛍光材料を含む発光層、第3層として誘電体層、第4層として電極層からなる無機EL発光デバイスの製造法において、第1層、第4層の電極のうち両方もしくは第1層の透明電極が有機導電性材料であり、その有機導電性材料がイオウ、窒素を含有する有機分子からなり、その導電率が1S/cm以上、可視光領域での光線透過率が80%以上である電極からなる無機EL素子を製造するに際し、第3層の誘電体層としてチタン酸バリウム(BaTiO)をバインダーに分散したものを使用する無機EL素子の製造法であり、好ましくは、前記第3層の誘電体層としてチタン酸バリウム(BaTiO)粉体をシランアルコキシド、チタンアルコキシド、もしくはそれら混合物と混合した分散したものを塗布、乾燥、焼成する無機EL素子の製造法であり、また好ましくは、前記バインダーの熱分解温度が150℃以上のものを使用する無機EL素子の製造法である。
また本発明は、基材に支持された第1層として透明電極、第2層として無機蛍光材料を含む発光層、第3層として誘電体層、第4層として電極層からなる無機EL発光デバイスの製造法において、第1層、第4層の電極のうち両方もしくは第1層の透明電極が有機導電性材料であり、その有機導電性材料がイオウ、窒素を含有する有機分子からなり、その導電率が1S/cm以上、可視光領域での光線透過率が80%以上である電極からなる無機EL素子を製造するに際し、第2層の無機蛍光材料がバインダーに分散されている無機EL素子の製造法である。
更に本発明は、基材に支持された第1層として透明電極、第2層として無機蛍光材料を含む発光層、第3層として誘電体層、第4層として電極層からなる無機EL発光デバイスの製造法において、第1層、第4層の電極のうち両方もしくは第1層の透明電極が有機導電性材料であり、その有機導電性材料がイオウ、窒素を含有する有機分子からなり、その導電率が1S/cm以上、可視光領域での光線透過率が80%以上である電極からなる無機EL素子を製造するに際し、第1層ないし第4層のそれぞれの層を形成する材料が、スクリーン印刷、グラビア印刷で賦与される無機EL素子の製造法である。
【発明の効果】
【0011】
前記の課題を解決すべく、本発明による無機EL素子およびその製造方法の第1の特徴は、第1層の光取り出し側電極として有機導電性ポリマーであるポリチオフェン、もしくはその誘導体を用いることにある。即ち、当材料は可視光領域での光線透過率が80%以上で、かつその導電率は安定して100S/cm以上を示すことから、この材料を透明高分子フィルム上に印刷し、500μ以下の膜厚で形成することによりフレキシビリティーに富む電極を容易に高分子フィルム上に形成することができる。また、上部に形成される発光層に用いられるバインダーポリマーとの密着も良好であり、素子寿命の観点からも良好な結果を与えている。また、ポリチオフェンが溶剤に分散されているため印刷が可能であり、今までのような高価なスパッタリング装置や蒸着装置を用いることがないため非常に安価に素子を製造することができる。
【0012】
この発明の製造方法によれば、次の作用効果を得ることができる。第1に、電極層を印刷、塗布などウェットプロセスで行うことができ、非常に安価に素子製造ができる。
【0013】
第2に、有機樹脂同士であるため層間密着性を向上させることができ剥離等の問題を解決することができる。
【0014】
第3に、高価な無機電極に比べて非常に安価な材料で素子を提供できる。
【0015】
第4に、後部電極にも用いることができるため全工程を印刷工程でできる。
【0016】
本発明による無機EL素子の製造方法の第2の特徴は、全工程を1ラインに並べることが容易な点にある。このように構成することによって、一貫した製造ラインを組むことが容易になり、また均一な品質のEL素子を効率的に量産することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明による無機EL素子の製造方法の好適な実施例について説明する。
本発明方法によって製造した無機EL素子はガラス、プラスチックなどの基板上に透明電極層、発光層、誘電体層、電極層の4層を形成した構造からなり、透明電極層として用いる第1層の導電性ポリマー層と後部電極層として用いる第4層の導電性ポリマー層以外の、発光体層、高誘電体層は公知の無機EL素子と実質的に同じである。第1層の透明電極層は、透明基材(透明フィルム)に導電性ポリマーであるポリチオフェン誘導体(1,4ジオキシチオフェン)を印刷、スピンコート等の方法で形成したものであり、その可視光透過率は80%以上を示し、導電率は100S/cm程度を示す。一例としては、透明基板上の、透明電極の厚みは10nm〜500μm程度である。ここで透明電極の厚みとしては薄いもの程よいが、使用できる範囲としては50nm〜500μm、好ましくは50nm〜100μm、より好ましくは50nm〜10μmである。
【0018】
また、透明基板との密着力を高めるために、ポリチオフェン誘導体ワニスに密着力向上剤としてシランカップリング剤などを用いることもできる。シランカップリング剤としては特に限定するものではないが、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノシラン、スルフィドシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジアリルジメチルシランなどを用いることができる。またチタン酸バリウムとの相溶性を考慮してチタンアルコキシドを添加することも有効である。チタンアルコキシドとしては特に限定するものではないが、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトラブトキシドテトラマー、チタンテトラフェノキシドなどが挙げられる。
【0019】
発光体層としては母核に硫化亜鉛をもちこれに微量ドーパントとして銀、アルミニウム、マンガン、鉛などがドープされた所謂従来使用されている無機蛍光材料がバインダーポリマーに分散された状態で用いられる。近年は、蛍光剤の酸素、水なのによる劣化を防ぐ目的で酸化アルミニウムなどでコートされた材料が用いられている。この層もスクリーン印刷など印刷により形成することが可能でその厚みは1〜500μmで制御される。膜厚は使用される状態に応じて変えることができるが、一般に高発光素子を目的とする場合は膜厚を大きくしすぎると電界強度が低くなるため目的を達成できない。そのため、使用する発光インクの蛍光剤濃度と絡め適切な膜厚を求める必要がある。
【0020】
誘電体層は一般にはチタン酸バリウムがバインダーポリマーに分散されたインク状態で用いられる。一般に無機ELでは素子中を電流は流れない。要するに電界発光素子である。そのため誘電体層は非常に大きな役割を果たす。即ち電流が素子に流れ込まないようにするための絶縁層の役割を果たす。実際の無機ELでは実効的に100〜200V程度の交流電源を用い、素子厚みは全体で最大1mm程度であることから、その電界強度は1kV/cm以上と考えられる。高光度での発光を目的とする場合、その手段として誘電体層の厚みを薄くすることが安易な方法として考えられるが、漏れ電流がないことが重要で、これも用いる誘電体インクのチタン酸バリウム固形分、バインダーポリマー種によって変わってくる。
【0021】
チタン酸バリウムはその上下の層と密着していることが非常に重要である。このためその密着力を高めるため誘電体インク中に密着力向上剤としてシランカップリング剤などを用いることもできる。シランカップリング剤としては特に限定するものではないが、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノシラン、スルフィドシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジアリルジメチルシランなどを用いることができる。
【0022】
発光剤粒子及び誘電体粒子はそれぞれバインダーに分散されているが、これらバインダーは有機、無機いずれの材料でも作成することが可能であるが、その耐熱性は熱分解温度150℃以上が望まれる。有機のバインダーとしては特に限定するものではないが、ポリアクリル、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。また、無機バインダーとしては特に限定するものではないがポリシランなど有機シラン化合物などがもちいられる。
【0023】
第4層の後部電極としては、導電率で1S/cm以上の導電率を有するものであれば特に光線透過率の問題なく使用することが可能である。しかし、大面積での発光素子を目的とする場合やはり高導電率は必要であり、少なくとも50S/cm以上、さらに最適な電極とする場合100S/cm以上、さらに安定な発光を求めるには200S/cm以上の導電率を示す材料を用いることがのぞましい。材料としては、特に限定するものでないが、第1層の光取り出し側電極に用いたポリチオフェン、及びその誘導体以外にもポリアニリン、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール、ポリピロール誘導体、ポリパラフェニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン誘導体さらにはこれらポリマーの混合物、さらにはパイ共役系で連なることが可能な共重合体などがあげられる。共重合体としては特に限定するものではないが、チオフェン−チオフェン誘導体の共重合体、チオフェン−アニリンの共重合体、チオフェン−アニリン誘導体の共重合体、チオフェン誘導体−アニリンの共合体重合体、チオフェン−ピロール共重合体、チオフェン誘導体−ピロール共重合体、ピロール−アニリン共重合体、ピロール誘導体−アニリン共重合体などが上げられる。また、電界強度を高面積で一定に保つために形成した後部電極上に電極グリッドを形成することも高効率発光を達成する上では有効な手段である。
【0024】
電極グリッドとしてはカーボンペースト、銀ペーストなどがその材料として用いられるが、前面にこれら材料を塗布するよりグリッド電極のほうが安価である。
【0025】
以上のように形成された積層膜はさらに樹脂塗布により封止したり、プラスチックフィルムを貼り付けたりすることによって製品化される。以下その実施例を示すが、本発明に対してなんら限定するものではない。
【実施例1】
【0026】
基板材料としてはガラスを用い、このガラス基板上に透明導電性高分子電極はスピンコートでその他の層はスクリーン印刷によって形成した。透明電極の導電率に対する発光輝度の関係を表1に示す。
【表1】

ポリアニリンの重合:
減圧下で蒸留したアニリン1モルと1.5モルの塩酸で塩酸塩を形成させた後に水800mlに溶解させ室温でかき混ぜる。その後水500mlに溶解した1モルの過硫酸アンモニウムを零度で徐々にアニリン塩酸塩溶液へ添加する。添加後0℃を保ったまま24時間攪拌し反応させる。反応終了後、反応物をろ過し、ろ液の色が無くなるまでアセトンで洗浄する。洗浄後、アンモニアにより塩酸を除去し、中性のポリアニリンを得る。得られたポリアニリンはジクロロ酢酸、ジクロロメタン混合溶媒(1:1)固形分濃度3%で溶解させポリアニリンワニスを作成する。得られたワニス中のポリアニリン粒子は十分な膨潤状態にないため一昼夜室温で攪拌を行う。次にこのワニスをナノマイザーなどの粉砕機で処理してすう100nmの微粒子分散体を得る。
発光層及び誘電体層:
デュポン社製発光インキ7151J(Green−Blue)をそのまま使用した。誘電体材料はデュポン社高k誘電体絶縁膜(チタン酸バリウム)7153をそのまま使用した。
ポリチオフェン:スタルクヴィテック社のバイトロンP、及びバイトロンPAGを用いた。
【実施例2】
【0027】
導電性ポリマー電極の厚みに対する発光輝度の関係を表2に示す。
【表2】

【実施例3】
【0028】
導電性ポリマーとしてポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体を用いた場合の発光輝度の関係を表3に示す。
【表3】

チオフェンーアニリン共重合体膜の合成:
チオフェン塩酸塩、アニリン塩酸塩の混合溶液(0.5mol/l濃度)の電界重合法によりFTO基板上に作成した。電界重合は電圧走印法でアニリンとチオフェンの酸化電位間を100mV/secで走印することにより作成した。
チオフェンー3,4−エチレンジオキシチオフェン共重合体膜の合成:
p−トルエンスルホン酸水溶液中にチオフェン及びエチレンジオキシチオフェンを1:1で溶解し電界重合法によりフッ素ドープ型酸化錫(FTO)基板上に作成した。電界重合は電圧走印法で3,4−エチレンジオキシチオフェンとチオフェンの酸化電位間を100mV/secで走査することにより作成した。
ポリフェネチジンの重合:
減圧下で蒸留したフェネチジン1モルと1.5モルの塩酸で塩酸塩を形成させた後に水800mlに溶解させ室温でかき混ぜる。その後水500mlに溶解した1モルの過硫酸アンモニウムを零度で徐々にフェネチジン塩酸塩溶液へ添加する。添加後0℃を保ったまま24時間攪拌し反応させる。反応終了後、反応物をろ過し、ろ液の色が無くなるまでアセトンで洗浄する。洗浄後、アンモニアにより塩酸を除去し、中性のポリフェネチジンを得る。得られたポリフェネチジンはジクロロ酢酸、ジクロロメタン混合溶媒(1:1)固形分濃度3%で溶解させポリフェネチジンワニスを作成する。得られたワニス中のポリフェネチジン粒子は十分な膨潤状態にないため一昼夜室温で攪拌を行う。次にこのワニスをナノマイザーなどの粉砕機で処理して数百nmの微粒子分散体を得る。
【実施例4】
【0029】
発光材料厚みに対する輝度の関係を表4に示す。
【表4】

【実施例5】
【0030】
誘電体厚みに対する輝度の関係を表5に示す。
【表5】

【実施例6】
【0031】
有機導電性ポリマーを電極に用いた寿命特性を表6に示す。また、比較例として、インジウム酸化錫(ITO)電極を用いた無機EL発光特性及び寿命を表7に示す。
【表6】

【表7】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は無機EL発光素子に関り、特にその電極を有機導電性材料にすることで従来にないフレキシブルな発光素子を提供するものである。本発明で例えば導電性高分子としてポリチオフェン誘導体を用いた場合、その発光素子はすべて印刷技術で製造することが可能になり、さらに折り曲げに強く、湾曲した部分にも適応可能な発光素子を提供できる。また、今までにない高導電性のポリマーを用いることで大面積化が可能になり小型ディスプレイから広告用屋外看板にも展開が可能である。
【0033】
寿命に関しても、バインダーポリマーと電極ポリマーとの相性が良く加熱応力による剥離などの問題が発生しにくく耐久性の点からも従来にない素子を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に支持された第1層として透明電極、第2層として無機蛍光材料を含む発光層、第3層として誘電体層、第4層として電極層からなる無機EL発光デバイスにおいて、第1層、第4層の電極のうち両方もしくは第1層の透明電極が有機導電性材料であり、その有機導電性材料がイオウ、窒素を含有する有機分子からなり、その導電率が1S/cm以上、可視光領域での光線透過率が80%以上であることを特徴とする電極からなる無機EL素子。
【請求項2】
請求項1において、有機導電材料がポリチオフェン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、これら誘導体、共重合体、若しくはこれら高分子の少なくとも2種以上の混合物である無機EL素子。
【請求項3】
請求項1において、第2層の無機蛍光材料が硫化亜鉛を含有する材料で、その粒子径が500μm以下の球状以外の粒子である無機EL素子。
【請求項4】
請求項1において、第4層の電極層がカーボンである無機EL素子。
【請求項5】
請求項1において、有機導電材料で形成した第4層の電極上に金属もしくはカーボンによるグリッドを形成し補助電極を設けた無機EL素子。
【請求項6】
基材に支持された第1層として透明電極、第2層として無機蛍光材料を含む発光層、第3層として誘電体層、第4層として電極層からなる無機EL発光デバイスの製造法において、第1層、第4層の電極のうち両方もしくは第4層の電極が有機導電性材料であり、その有機導電性材料がイオウ、窒素を含有する有機分子からなり、その導電率が1S/cm以上、可視光領域での光線透過率が80%以上である電極からなる無機EL素子を製造するに際し、第3層の誘電体層としてチタン酸バリウム(BaTiO)をバインダーに分散したものを使用することを特徴とする無機EL素子の製造法。
【請求項7】
請求項6において、第3層の誘電体層としてチタン酸バリウム(BaTiO)粉体をシランアルコキシド、チタンアルコキシド、もしくはそれら混合物と混合した分散したものを塗布、乾燥、焼成する無機EL素子の製造法。
【請求項8】
請求項6において、バインダーの熱分解温度が150℃以上のものを使用する無機EL素子の製造法。
【請求項9】
基材に支持された第1層として透明電極、第2層として無機蛍光材料を含む発光層、第3層として誘電体層、第4層として電極層からなる無機EL発光デバイスの製造法において、第1層、第4層の電極のうち両方もしくは第4層の電極が有機導電性材料であり、その有機導電性材料がイオウ、窒素を含有する有機分子からなり、その導電率が1S/cm以上、可視光領域での光線透過率が80%以上である電極からなる無機EL素子を製造するに際し、第2層の無機蛍光材料がバインダーに分散されていることを特徴とする無機EL素子の製造法。
【請求項10】
基材に支持された第1層として透明電極、第2層として無機蛍光材料を含む発光層、第3層として誘電体層、第4層として電極層からなる無機EL発光デバイスの製造法において、第1層、第4層の電極のうち両方もしくは第4層の電極が有機導電性材料であり、その有機導電性材料がイオウ、窒素を含有する有機分子からなり、その導電率が1S/cm以上、可視光領域での光線透過率が80%以上である電極からなる無機EL素子を製造するに際し、第1層ないし第4層のそれぞれの層を形成する材料が、スクリーン印刷、グラビア印刷で賦与されることを特徴とする無機EL素子の製造法。

【公開番号】特開2007−173191(P2007−173191A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−381054(P2005−381054)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(593015850)
【出願人】(506023345)
【Fターム(参考)】