説明

無段変速装置

【課題】 変速動作の応答性を向上させると共に、油の使用量を低減することができる無段変速装置を提供する。
【解決手段】 無段変速装置1は、プライマリシーブ4及びセカンダリシーブ5を有する無段変速機2と、油を使用して無段変速機2の変速比を制御する油圧制御回路3とを備えている。油圧制御回路3は、油をタンク9から吸い上げて吐出する油圧ポンプ10と、油圧ポンプ10及びタンク9とプライマリシーブ4の油圧シリンダ7との間に接続された密閉式の開閉バルブ14,16と、油圧ポンプ10及びタンク9とセカンダリシーブ5の油圧シリンダ8との間に接続された密閉式の開閉バルブ17,19とを有している。また、油圧シリンダ7,8間には、密閉式の開閉バルブ21を有するバイパス回路22が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無段階での変速が可能な無段変速装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無段変速装置としては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1に記載の無段変速装置は、駆動側プーリと、従動側プーリと、両プーリ間に巻き掛けたVベルトと、駆動側プーリ及び従動側プーリにそれぞれ設けられ、Vベルトの巻き掛け径を可変とする2つの油圧サーボ装置とを備えている。各油圧サーボ装置の油室には、第1オイルポンプの吐出圧が一方弁を介して供給される。また、各油圧サーボ装置の油室を結ぶ油路には、可逆的に油を吐出する第2オイルポンプが設けられている。
【特許文献1】特開平4−157256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術においては、変速時には第2オイルポンプを駆動し、第2オイルポンプから一方の油室に油を供給する。しかし、駆動側プーリと従動側プーリとの間の油の移動を第2オイルポンプで行うため、変速動作の応答性を高めることができない。また、第2オイルポンプより油を汲み上げて油室に供給するため、装置全体として油の使用量を低減することができない。
【0004】
本発明の目的は、変速動作の応答性を向上させると共に、油の使用量を低減することができる無段変速装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、プライマリシーブ及びセカンダリシーブを有する無段変速機と、プライマリシーブ及びセカンダリシーブに油を供給して無段変速機の変速比を制御する油圧制御回路とを備えた無段変速装置において、油圧制御回路は、油を吐出する油圧源と、油圧源とプライマリシーブの油圧シリンダとの間に接続された第1開閉バルブ手段と、油圧源とセカンダリシーブの油圧シリンダとの間に接続された第2開閉バルブ手段と、プライマリシーブの油圧シリンダとセカンダリシーブの油圧シリンダとの間に接続された第3開閉バルブ手段とを有することを特徴とするものである。
【0006】
このような本発明の無段変速装置においては、アップシフトするときは、プライマリシーブの油圧シリンダに油を供給し、セカンダリシーブの油圧シリンダから油を排出する。一方、ダウンシフトするときは、セカンダリシーブの油圧シリンダに油を供給し、プライマリシーブの油圧シリンダから油を排出する。ここで、例えばアップシフト時に、任意の変速比になったら、第1開閉バルブ手段及び第2開閉バルブ手段を閉じて油を密閉すると共に、第3開閉バルブ手段を開き、プライマリシーブの油圧シリンダとセカンダリシーブの油圧シリンダとを連通させるようにする。これにより、セカンダリシーブの油圧シリンダの油が第3開閉バルブ手段を介してプライマリシーブの油圧シリンダに供給されるため、変速動作の応答性を高くすることができる。また、油圧源からプライマリシーブの油圧シリンダに油を供給すると共にセカンダリシーブの油圧シリンダの油を排出することが必要無くなるため、油圧源からプライマリシーブへの油の供給量を低減することができる。
【0007】
無段変速機の変速比は、無段変速機の推力比及び負荷状態によって変わってくる。無段変速機の推力は、プライマリシーブ及びセカンダリシーブの油圧シリンダの面積(シリンダ面積)とプライマリシーブ及びセカンダリシーブの油圧シリンダに加わる圧力(油圧)との積で表される。ここで、第3開閉バルブ手段を開き、プライマリシーブの油圧シリンダとセカンダリシーブの油圧シリンダとを連通させると、プライマリシーブの油圧シリンダの油圧とセカンダリシーブの油圧シリンダの油圧とが等しくなる。このため、そのような状態では、無段変速機の変速比は、プライマリシーブ及びセカンダリシーブのシリンダ面積比と負荷状態とによって変わることになる。
【0008】
ここで、好ましくは、プライマリシーブの油圧シリンダとセカンダリシーブの油圧シリンダとのシリンダ面積比は、ロードロード走行時の負荷状態において無段変速機の変速比を最小変速比とするような比に設定されている。
【0009】
この場合には、任意の車速でロードロード走行(軽負荷走行)する際に、第1開閉バルブ手段及び第2開閉バルブ手段を閉じ、第3開閉バルブ手段を開いた状態では、負荷状態に応じて無段変速機の変速比が最小変速比となるまでのアップシフトが可能となる。これにより、ロードロード走行時には、油の供給量を十分低減することができる。
【0010】
また、プライマリシーブの油圧シリンダとセカンダリシーブの油圧シリンダとのシリンダ面積比は、無負荷状態では無段変速機の変速比を最小変速比とし、有負荷状態では無段変速機の変速比をほぼ1とするような比に設定されていても良い。
【0011】
この場合には、加減速を伴った通常走行を行う際に、第1開閉バルブ手段及び第2開閉バルブ手段を閉じ、第3開閉バルブ手段を開いた状態では、負荷を下げるとアップシフトし、負荷を上げるとダウンシフトするような変速を行うことが可能となる。これにより、通常走行時には、油の供給量を十分低減することができる。
【0012】
また、好ましくは、第1開閉バルブ手段は、プライマリシーブへの油の供給側通過面積とプライマリシーブからの油の排出側通過面積とが異なるように構成されており、第2開閉バルブ手段は、セカンダリシーブへの油の供給側通過面積とセカンダリシーブからの油の排出側通過面積とが異なるように構成されている。
【0013】
この場合には、無段変速機の変速特性、具体的にはプライマリシーブ及びセカンダリシーブの油圧シリンダのシリンダ面積比と負荷状態とに応じた油の供給及び排出が可能となり、円滑な変速制御を実現することができる。
【0014】
このとき、第1開閉バルブ手段は、プライマリシーブへの油の供給側通過面積がプライマリシーブからの油の排出側通過面積よりも小さくなるように構成されており、第2開閉バルブ手段は、セカンダリシーブへの油の供給側通過面積がセカンダリシーブからの油の排出側通過面積よりも大きくなるように構成されていることが好ましい。
【0015】
ダウンシフトさせるときは、アップシフト時よりも早く油をシーブの油圧シリンダに供給して、迅速に変速を行う必要がある。従って、第1開閉バルブ手段及び第2開閉バルブ手段の供給側通過面積及び排出側通過面積を上記のように構成することにより、システムの小型化を図りつつ、必要な変速速度を確保することができる。
【0016】
また、第1開閉バルブ手段におけるプライマリシーブへの油の供給側通過面積と第2開閉バルブ手段におけるセカンダリシーブからの油の排出側通過面積との比は、プライマリシーブの油圧シリンダとセカンダリシーブの油圧シリンダとのシリンダ面積比と等しくなっており、第1開閉バルブ手段におけるプライマリシーブからの油の排出側通過面積と第2開閉バルブ手段におけるセカンダリシーブへの油の供給側通過面積との比は、プライマリシーブの油圧シリンダとセカンダリシーブの油圧シリンダとのシリンダ面積比と等しくなっていることが好ましい。
【0017】
この場合には、アップシフトするときは、プライマリシーブの油圧シリンダへの油の供給流量とセカンダリシーブの油圧シリンダからの油の排出流量とがほぼ等しくなる。一方、ダウンシフトするときは、セカンダリシーブの油圧シリンダへの油の供給流量とプライマリシーブの油圧シリンダからの油の排出流量とがほぼ等しくなる。このようにシステムの小型化を図りつつ、油の供給能力と油の排出能力とをほぼ等しくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、変速動作の応答性を向上させることができると共に、油の使用量を低減し、省エネルギー化に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係わる無段変速装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係わる無段変速装置の一実施形態を示す概略構成図である。同図において、本実施形態の無段変速装置1は、無段変速機2と、油を使用して無段変速機2の変速比を制御する油圧制御回路3とを備えている。
【0021】
無段変速機2は、プライマリシーブ4と、セカンダリシーブ5と、これらのプライマリシーブ4及びセカンダリシーブ5に掛け渡されたベルト6とを有し、プライマリシーブ4及びセカンダリシーブ5の径を変えることで、変速比(ギア比)を変化させる。プライマリシーブ4には第1の油圧シリンダ7が設けられ、セカンダリシーブ5には第2の油圧シリンダ8が設けられている。
【0022】
油圧制御回路3は、油をタンク9から吸い上げて吐出する油圧ポンプ10を有している。油圧ポンプ10は、モータ(図示せず)により駆動される。油圧ポンプ10とプライマリシーブ4の油圧シリンダ7とは配管11を介して接続され、油圧ポンプ10とセカンダリシーブ5の油圧シリンダ8とは配管12を介して接続されている。配管12は、配管11に分岐接続されている。配管11には、油圧ポンプ10を補助するためのアキュムレータ(蓄圧器)13が接続されている。
【0023】
配管11には、密閉式の開閉バルブ14が接続されている。開閉バルブ14は、油圧ポンプ10から油圧シリンダ7に油を供給する開位置と、油圧ポンプ10から油圧シリンダ7への油の供給を遮断する閉位置とを有している。
【0024】
配管11における開閉バルブ14と油圧シリンダ7との間には、タンク9と接続された配管15が分岐接続されている。配管15には、密閉式の開閉バルブ16が接続されている。開閉バルブ16は、油圧シリンダ7からタンク9に油を排出(ドレイン)する開位置と、油圧シリンダ7からタンク9への油の排出を遮断する閉位置とを有している。
【0025】
配管12には、密閉式の開閉バルブ17が接続されている。開閉バルブ17は、油圧ポンプ10から油圧シリンダ8に油を供給する開位置と、油圧ポンプ10から油圧シリンダ8への油の供給を遮断する閉位置とを有している。
【0026】
配管12における開閉バルブ17と油圧シリンダ8との間には、タンク9と接続された配管18が分岐接続されている。配管18には、密閉式の開閉バルブ19が接続されている。開閉バルブ19は、油圧シリンダ8からタンク9に油を排出(ドレイン)する開位置と、油圧シリンダ8からタンク9への油の排出を遮断する閉位置とを有している。
【0027】
配管11,12には配管20が接続され、この配管20には密閉式の開閉バルブ21が接続されている。配管20の一端は、配管11における開閉バルブ14と油圧シリンダ7との間に接続され、配管20の他端は、配管12における開閉バルブ17と油圧シリンダ8との間に接続されている。開閉バルブ21は、油圧シリンダ7,8同士を連通させる開位置と、油圧シリンダ7,8同士の連通を遮断する閉位置とを有している。なお、配管20及び開閉バルブ21は、バイパス回路22を構成している。
【0028】
開閉バルブ14,16,17,19,21は、電磁制御弁であり、コントローラ23からの制御信号によって開位置と開位置とが切り換えられる。開閉バルブ14,16,17,19,21は、通常は閉位置にある。
【0029】
コントローラ23には、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ24と、車速を検出する車速センサ25とが接続されている。コントローラ23は、アクセル開度センサ24で検出されたアクセル開度と車速センサ25で検出された車速とに応じた変速比を設定し、その変速比となるように開閉バルブ14,16,17,19,21を制御して、プライマリシーブ4及びセカンダリシーブ5に対する油の供給・排出を制御する。
【0030】
このような無段変速装置1において、ローギアからハイギアにアップシフトするときは、コントローラ23により開閉バルブ14,19を閉位置から開位置に切り換える。すると、油圧ポンプ10から吐出された油が開閉バルブ14を介してプライマリシーブ4の油圧シリンダ7に供給されるため、プライマリシーブ4の径が大きくなると共に、セカンダリシーブ5の油圧シリンダ8の油が開閉バルブ19を介してタンク9に排出されるため、セカンダリシーブ5の径が小さくなる。
【0031】
一方、ハイギアからローギアにダウンシフトするときは、コントローラ23により開閉バルブ16,17を閉位置から開位置に切り換える。すると、油圧ポンプ10から吐出された油が開閉バルブ17を介してセカンダリシーブ5の油圧シリンダ8に供給されるため、セカンダリシーブ5の径が大きくなると共に、プライマリシーブ4の油圧シリンダ7の油が開閉バルブ16を介してタンク9に排出されるため、プライマリシーブ4の径が小さくなる。
【0032】
ここで、油圧ポンプ10から油圧シリンダ7または油圧シリンダ8に任意量の油が供給されたときは、コントローラ23により開閉バルブ14,16,17,19を閉位置にし、開閉バルブ21を閉位置から開位置に切り換える。このため、油圧ポンプ10から油圧シリンダ7,8に油が供給されると共に油圧シリンダ7,8からタンク9に油が排出されることが無くなり、開閉バルブ14,16,17,19と油圧シリンダ7,8との間で油が密閉されるようになる。また、開閉バルブ21が開位置になることで油圧シリンダ7,8が連通するので、アップシフト時には油圧シリンダ8の油が開閉バルブ21を介して油圧シリンダ7に供給され、ダウンシフト時には油圧シリンダ7の油が開閉バルブ21を介して油圧シリンダ8に供給されるようになる。これにより、油圧ポンプ10から油圧シリンダ7,8への油の供給量が大幅に少なくなり、無段変速機2の変速比を維持するために使われていたエネルギーを十分低減することができる。
【0033】
ところで、無段変速機2の変速比は、図2に示すように、プライマリシーブ4及びセカンダリシーブ5の推力比(Win/Wout)と負荷状態(具体的にはアクセル状態)とによって異なる。具体的には、負荷状態が一定である場合には、プライマリシーブ4及びセカンダリシーブ5の推力比が高くなるほど、変速比が低くなる。また、プライマリシーブ4及びセカンダリシーブ5の推力比が一定である場合には、負荷が高くなる、つまりアクセル開度が大きくなるほど、変速比が高くなる。
【0034】
推力Winは、プライマリシーブ4及びセカンダリシーブ5のうち油供給側の油圧シリンダにかかる押し力のことであり、推力Woutは、プライマリシーブ4及びセカンダリシーブ5のうち油排出側の油圧シリンダにかかる押し力のことである。推力Win及び推力Woutは、下記式で表される。
【0035】
in=Ain×Pin
out=Aout×Pout
但し、Ain:油供給側の油圧シリンダのシリンダ面積(ピストン面積に相当)
in:油供給側の油圧シリンダにかかる圧力(油圧)
out:油排出側の油圧シリンダのシリンダ面積(ピストン面積に相当) Pout:油排出側の油圧シリンダにかかる圧力(油圧)
【0036】
上述したように開閉バルブ21を開位置とし、油圧シリンダ7,8を連通させると、圧力Pin,Poutは等しくなる。このため、無段変速機2の変速比は、シリンダ面積Ain,Aoutの比(油圧シリンダ7,8のシリンダ面積比)によって変わることになる。
【0037】
ここで、油圧シリンダ7,8のシリンダ面積比は、ロードロード走行(任意の一定速度での道路負荷抵抗走行)する時の最小負荷状態において変速比γが最小変速比γmin(図2参照)となるような比に設定されるのが望ましい。この場合には、ロードロード走行時に油圧シリンダ7,8を連通させたときに、変速比γが最小変速比γminとなるまでアップシフトすることが可能となる。これにより、ロードロード走行時において、油圧ポンプ10から油圧シリンダ7,8への油の供給量を低減することができる。
【0038】
また、無負荷状態では変速比γが最小変速比γminとなり、有負荷状態では変速比γ≒1となるような値に設定されても良い。この場合には、油圧シリンダ7,8を連通させると、負荷を下げたときには変速比γが最小変速比γminとなるまでアップシフトし、負荷をかけたときには変速比γ≒1となるまでダウンシフトすることが可能となる。これにより、加減速を行うような通常走行時においても、油圧ポンプ10から油圧シリンダ7,8への油の供給量を低減することができる。
【0039】
また、ローギアからハイギアにアップシフトするときは、特に早く変速しなくても良いが、ハイギアからローギアにダウンシフトするときは、素早く変速する必要がある。このため、ダウンシフト時には、油圧ポンプ10から油圧シリンダ8に迅速に油を供給すると共に、油圧シリンダ7の油を迅速にタンク9に排出する必要がある。
【0040】
そこで、開閉バルブ16の流路面積(プライマリシーブ4からの油の排出側通過面積)を開閉バルブ14の流路面積(プライマリシーブ4への油の供給側通過面積)よりも大きくし、開閉バルブ17の流路面積(セカンダリシーブ5への油の供給側通過面積)を開閉バルブ19の流路面積(セカンダリシーブ5からの油の排出側通過面積)よりも大きくする。これにより、ダウンシフトするときには、油圧ポンプ10から油圧シリンダ8への油の供給量が増大し、油圧シリンダ8に油が速く供給されるようになるため、適切な変速速度を確保することができる。
【0041】
このとき、開閉バルブ14の流路面積と開閉バルブ19の流路面積との比は、油圧シリンダ7と油圧シリンダ8とのシリンダ面積比と等しくなっており、開閉バルブ16の流路面積と開閉バルブ17の流路面積との比は、油圧シリンダ7と油圧シリンダ8とのシリンダ面積比と等しくなっている。これにより、アップシフトするときには、油圧シリンダ7への油の供給量と油圧シリンダ8からの油の排出量とがほぼ等しくなり、ダウンシフトするときには、油圧シリンダ8への油の供給量と油圧シリンダ7からの油の排出量とがほぼ等しくなる。従って、油の供給能力及び排出能力をほぼ同じにすることができる。
【0042】
なお、開閉バルブ14の流路面積と開閉バルブ19の流路面積との比、開閉バルブ16の流路面積と開閉バルブ17の流路面積との比は、油圧シリンダ7,8にかかる圧力、油圧シリンダ7,8のシリンダ面積等をパラメータとする関数を用いて設定することができる。
【0043】
以上のように本実施形態においては、プライマリシーブ4の油圧シリンダ7とセカンダリシーブ5の油圧シリンダ8との間に開閉バルブ21を有するバイパス回路22を接続したので、開閉バルブ21を開位置に切り換えて油圧シリンダ7,8を連通させることで、アップシフト時には油圧シリンダ8の油が油圧シリンダ7に供給され、ダウンシフト時には油圧シリンダ7の油が油圧シリンダ8に供給されるようになる。これにより、開閉バルブ21の代わりに油圧ポンプをバイパス回路22に設けるシステムと比較して、変速動作の応答性を向上させることができる。
【0044】
また、油圧シリンダ7,8を連通させることにより、油圧ポンプ10から油圧シリンダ7,8への油の供給が不要となるため、油の使用量を十分低減することができる。これにより、油圧ポンプ10により油を汲み上げる際に必要とするエネルギーを抑制し、省エネルギー化を図ることが可能となる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、油圧ポンプ10からプライマリシーブ4に油を供給するための開閉バルブ14と、プライマリシーブ4の油を排出するための開閉バルブ16と、油圧ポンプ10からセカンダリシーブ5に油を供給するための開閉バルブ17と、セカンダリシーブ5の油を排出するための開閉バルブ19という4つの2方弁を用いたが、これらの代わりに2つの3方弁を使用しても良い。3方弁を使用した変形例を図3に示す。
【0046】
図3において、配管11には、密閉式の開閉バルブ31が接続されている。開閉バルブ31は、油圧ポンプ10から油圧シリンダ7に油を供給する第1開位置と、油圧シリンダ7からタンク9に油を排出する第2開位置と、油の供給・排出を遮断する閉位置とを有している。配管12には、密閉式の開閉バルブ32が接続されている。開閉バルブ32は、油圧ポンプ10から油圧シリンダ8に油を供給する第1開位置と、油圧シリンダ8からタンク9に油を排出する第2開位置と、油の供給・排出を遮断する閉位置とを有している。
【0047】
このとき、開閉バルブ31では、第2開位置にある時の流路面積が第1開位置にある時の流路面積よりも大きくなっており、開閉バルブ32では、第1開位置にある時の流路面積が第2開位置にある時の流路面積よりも大きくなっている。また、開閉バルブ31が第1開位置にある時の流路面積と開閉バルブ32が第2開位置にある時の流路面積との比は、油圧シリンダ7と油圧シリンダ8とのシリンダ面積比と等しくなっており、開閉バルブ31が第2開位置にある時の流路面積と開閉バルブ32が第1開位置にある時の流路面積との比は、油圧シリンダ7と油圧シリンダ8とのシリンダ面積比と等しくなっている。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係わる無段変速装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】プライマリシーブ及びセカンダリシーブを有する無段変速機の推力比特性の一例を示すグラフである。
【図3】本発明に係わる無段変速装置の一実施形態の変形例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0049】
1…無段変速装置、2…無段変速機、3…油圧制御回路、4…プライマリシーブ、5…セカンダリシーブ、7…油圧シリンダ、8…油圧シリンダ、10…油圧ポンプ(油圧源)、14…開閉バルブ(第1開閉バルブ手段)、16…開閉バルブ(第1開閉バルブ手段)、17…開閉バルブ(第2開閉バルブ手段)、19…開閉バルブ(第2開閉バルブ手段)、21…開閉バルブ(第3開閉バルブ手段)、31…開閉バルブ(第1開閉バルブ手段)、32…開閉バルブ(第2開閉バルブ手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマリシーブ及びセカンダリシーブを有する無段変速機と、前記プライマリシーブ及び前記セカンダリシーブに油を供給して前記無段変速機の変速比を制御する油圧制御回路とを備えた無段変速装置において、
前記油圧制御回路は、
前記油を吐出する油圧源と、
前記油圧源と前記プライマリシーブの油圧シリンダとの間に接続された第1開閉バルブ手段と、
前記油圧源と前記セカンダリシーブの油圧シリンダとの間に接続された第2開閉バルブ手段と、
前記プライマリシーブの油圧シリンダと前記セカンダリシーブの油圧シリンダとの間に接続された第3開閉バルブ手段とを有することを特徴とする無段変速装置。
【請求項2】
前記プライマリシーブの油圧シリンダと前記セカンダリシーブの油圧シリンダとのシリンダ面積比は、ロードロード走行時の負荷状態において前記無段変速機の変速比を最小変速比とするような比に設定されていることを特徴とする請求項1記載の無段変速装置。
【請求項3】
前記プライマリシーブの油圧シリンダと前記セカンダリシーブの油圧シリンダとのシリンダ面積比は、無負荷状態では前記無段変速機の変速比を最小変速比とし、有負荷状態では前記無段変速機の変速比をほぼ1とするような比に設定されていることを特徴とする請求項1記載の無段変速装置。
【請求項4】
前記第1開閉バルブ手段は、前記プライマリシーブへの油の供給側通過面積と前記プライマリシーブからの油の排出側通過面積とが異なるように構成されており、
前記第2開閉バルブ手段は、前記セカンダリシーブへの油の供給側通過面積と前記セカンダリシーブからの油の排出側通過面積とが異なるように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の無段変速装置。
【請求項5】
前記第1開閉バルブ手段は、前記プライマリシーブへの油の供給側通過面積が前記プライマリシーブからの油の排出側通過面積よりも小さくなるように構成されており、
前記第2開閉バルブ手段は、前記セカンダリシーブへの油の供給側通過面積が前記セカンダリシーブからの油の排出側通過面積よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項4記載の無段変速装置。
【請求項6】
前記第1開閉バルブ手段における前記プライマリシーブへの油の供給側通過面積と前記第2開閉バルブ手段における前記セカンダリシーブからの油の排出側通過面積との比は、前記プライマリシーブの油圧シリンダと前記セカンダリシーブの油圧シリンダとのシリンダ面積比と等しくなっており、
前記第1開閉バルブ手段における前記プライマリシーブからの油の排出側通過面積と前記第2開閉バルブ手段における前記セカンダリシーブへの油の供給側通過面積との比は、前記プライマリシーブの油圧シリンダと前記セカンダリシーブの油圧シリンダとのシリンダ面積比と等しくなっていることを特徴とする請求項4または5記載の無段変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−159779(P2010−159779A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−775(P2009−775)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】