説明

無毒化されたEscherichiacoli免疫原

病原性E.coli「AcfD前駆体」(orf3526)の無毒化改変体は、被験体において天然のAcfD(orf3526)タンパク質と実質的に類似する免疫応答を惹起させることが同定されている。該無毒化改変体は、天然のAcfD(orf3526)タンパク質と比較して増大した溶解度を持つようにさらに修飾され得る。例えば、本発明は、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質に関して変異を含むE.coli AcfD(orf3526)ポリペプチドを含む免疫原性ポリペプチドを提供し、該変異が、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して該免疫原性ポリペプチドの毒性を低下させ、また、この免疫原性ポリペプチドは、被験体においてE.coli AcfD(orf3526)タンパク質と実質的に類似する免疫応答を惹起させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2009年7月16日に出願された米国仮出願第61/226,219号、および2009年12月29日に出願された同第61/290,654号(これらの両方の完全な内容は、全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
本発明は、病原性Escherichia coli株に対する免疫化に関する。
【背景技術】
【0003】
E.coli株は、伝統的に、片利共生的または病原性のいずれかとして分類されており、そして病原性株は、その後、腸内株または腸外株として下位分類される。病原性E.coliは、参考文献1(非特許文献1)の中でさらに詳細に議論されており、多数の様々な病原型(すなわち、共通する毒性因子のセットを使用して1つの共通する疾患を引き起こすE.coli株の1つのグループ)に該当する。株の病原型決定(pathotyping)は日常的に行われている技術であり、これは、遺伝子型によって行うことができ、また、表現型によって行うこともできる。1つの最近の遺伝子型に基づく病原型決定の方法[2(非特許文献2)]では、DNAマイクロアレイが使用される。
【0004】
腸内株の間では、少なくとも6種類の十分に記載されている病原型が公知である:腸病原性(EPEC)、腸出血性(EHEC)、腸管凝集性(EAEC)、腸侵入性(EIEC)、腸毒性(ETEC)、および分散接着性(DAEC)。
【0005】
E.coliの腸外病原性株(すなわち、「ExPEC」株[3(非特許文献3)、4(非特許文献4)])には、尿路病原性(UPEC)株、新生児髄膜炎(NMEC)株、および敗血症関連株(SEPEC)が含まれる。ExPECは、尿管感染の最も一般的な原因であり、重篤な合併症および死に至る可能性があるヒトの新生児髄膜炎および新生児敗血症の主原因の1つである。他のタイプの腸外感染としては、骨髄炎、肺、腹内、柔組織、および血管内装置が関係している感染が挙げられる。ヒト以外の別のExPEC病原型は鳥病原性(APEC)であり、これは、家禽において腸外感染を引き起こす。
【0006】
ほとんどの以前からあるExPECワクチンは、細胞溶解物または細胞構造をベースとするものである。SOLCOUROVAC(商標)には、6種類のExPEC株を含む10種類の熱によって死滅させられた細菌が含まれている。URO−VAXOM(商標)は、18種類の選択されたE.coli株の凍結乾燥させられた細菌溶解物を含む、経口用の錠剤型のワクチンである。Baxter Vaccineによっては、6種類から10種類の異なる株に由来する繊毛をベースとするUTIワクチンが開発された。MedImmuneによっては、FimH付着因子複合体をベースとする、MEDI516と呼ばれる製品が開発されている。対照的に、参考文献5および6(特許文献1および2)には、NMEC株およびUPEC株の両方に対して、定義されているワクチンに基づいて使用することができる、ExPEC株由来の特異的免疫原が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2006/089264号
【特許文献2】国際公開第2006/091517号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Kaperら、Nat Rev Microbiol.(2004)2(2):123−40
【非特許文献2】Anjumら、Appl Environ Microbiol(2007)73:5692−7
【非特許文献3】RussoおよびJohnson、J Infect Dis(2000)181:1753−1754
【非特許文献4】Smithら、Foodborne Pathogens And Disease(2007)4:134−63
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、病原性E.coli株に対する、より詳しくは、腸内病原型(例えば、EAEC、EIEC、EPECおよびETEC株)ならびにExPEC病原型に対する免疫化における使用のためのさらなるさらに良好な抗原を提供すること、特に、免疫化のための成分としての使用が可能になるように無毒化した抗原、または惹起される免疫応答を低減させることなく発現と精製が改善されるように(to as to)短くした抗原を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の開示
参考文献5に開示されている多くの抗原の1つは、アクセサリー定着因子D(accessory colonization factor D)(「AcfD」)前駆体(orf3526)と注釈が付けられている(その中の配列番号7051および7052;本明細書中では配列番号1)。参考文献5には、NMEC株のIHE3034に由来する配列が開示されており、本発明は、ExPEC「AcfD前駆体」(orf3526)の改変体(これは、APEC、UPEC、EAEC、EIEC、EPEC、およびETEC株を含むさらなる病原型においても同定されている)に基づく。参考文献5の開示とは異なり、これらの改変体は、腸内病原型の処置に特に有用であり得る。したがって、本発明により、そのような改変体が、E.coli感染に対して患者を免疫化することにおけるそれらの使用とともに提供される。加えて、本開示には、全てのE.coli病原型のAcfD(orf3526)タンパク質の断片および改変体が含まれる。ここでは、これらの断片は、全長と比較して高い溶解度を有しているが、被験体においては、全長のタンパク質によって惹起されるものと実質的に類似する免疫応答を惹起させる。さらに、本開示は、全長のタンパク質と比較して毒性は低下しているが、被験体において全長のタンパク質によって惹起されるものと実質的に類似する免疫応答を惹起させる、すべてのE.coli病原型のAcfD(orf3526)タンパク質の断片および変異体を含む。また、本開示は、被験体において全長のタンパク質によって惹起されるものと実質的に類似する免疫応答を惹起させるとともに、E.coliにおいて発現させた場合、精製に関して改善された特性を持つ、すべてのE.coli病原型のAcfD(orf3526)タンパク質の断片および変異体を含む。
【0011】
本発明とともに使用されるポリペプチド
本発明は、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質に関して変異を含むE.coli AcfD(orf3526)ポリペプチドを含む免疫原性ポリペプチドであって、該変異が、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して該免疫原性ポリペプチドの毒性を低下させるものである、被験体においてE.coli AcfD(orf3526)タンパク質と実質的に類似する免疫応答を惹起させる、免疫原性ポリペプチドを提供する。
【0012】
E.coli AcfD(orf3526)タンパク質は、配列番号1〜19からなる群より選択されるアミノ酸配列を持つものであり得る。
【0013】
毒性を低下させる例示的な変異としては、ジンシン(zincin)メタロプロテアーゼドメインの全体またはその一部の欠失、およびジンシンメタロプロテアーゼドメインにおける該プロテアーゼの活性を低下させる点変異が挙げられる。一部の特定の場合では、該点変異は亜鉛結合残基の変異または触媒性残基の変異である。好ましい点変異は、配列番号1とのアラインメントに基づくアミノ酸番号1305の置換である。
【0014】
例示的な欠失は、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の100個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の200個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の300個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の400個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の500個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の600個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の700個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の750個のC末端アミノ酸、もしくはE.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の758個のC末端アミノ酸の除去を含むか、またはE.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の100個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の200個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の300個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の400個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の500個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の600個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の700個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の750個のN末端アミノ酸、もしくはE.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の760個のN末端アミノ酸を含まない。
【0015】
本発明は、E.coli AcfD(orf3526)ポリペプチドを含む免疫原性ポリペプチドであって、
(a) 配列番号20〜76からなる群より選択されるアミノ酸配列;
(b) 配列番号20〜76のいずれか1つに対して少なくともa%の配列同一性
を含む;または
(c) 1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個(もしくはそれより多い)の1アミノ酸の変化(欠失、挿入、置換)を持つ(これは、(a)もしくは(b)の配列と比較して、別々の位置であってもよく、連続していてもよい);および/または;
(d)配列番号20〜76のいずれか1つと、ペアワイズアラインメントアルゴリズムを使用してアラインメントされた場合に、N末端側からC末端側に向かうx個のアミノ酸のそれぞれのムービングウィンドウ(その結果、p個のアミノ酸までに延ばす(ここでは、p>xである)アラインメントについては、p−x+1個のそのようなウィンドウが存在する)は、少なくともx・y個の同一であるアラインメントされたアミノ酸を有しており、ここでは、xは、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200から選択され、yは、0.50、0.60、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99から選択され、そして、x・yが整数でない場合は、これは最も近い整数になるように丸められる。ここで、該免疫原性ポリペプチドはE.coli AcfD(orf3526)タンパク質に関して変異を含み、該変異は、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して該免疫原性ポリペプチドの毒性を低下させるものであり、また、該免疫原性ポリペプチドは、被験体においてE.coli AcfD(orf3526)タンパク質と実質的に類似する免疫応答を惹起させる。
【0016】
好ましいペアワイズアラインメントアルゴリズムは、Needleman−Wunschグローバルアラインメントアルゴリズム[7]であり、デフォルトパラメーターが使用される(例えば、ギャップ解放ペナルティー=10.0、およびギャップ伸長ペナルティー=0.5とともに、EBLOSUM62スコアリングマトリックスが使用される)。このアルゴリズムは、通常は、EMBOSSパッケージのneedleツール(needle tool)の中で実行される[8]。
【0017】
これらのポリペプチドには、配列番号20〜76の他の無毒化改変体が含まれる。これには、対立遺伝子改変体、多形形態、ホモログ、オルトログ、パラログ、変異体などが含まれる。
【0018】
aの値は、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、87.5%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれを超えるものから選択され得る。
【0019】
前述の免疫原性ポリペプチドは、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質に関して、該E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して該免疫原性ポリペプチドの溶解度を増大させる欠失をさらに含むが、依然として、被験体においてE.coli AcfD(orf3526)タンパク質と実質的に類似する免疫応答を惹起させるものであってもよい。
【0020】
溶解度を増大させる例示的な欠失としては、gly−ser領域までのN末端アミノ酸の実質的にすべての除去、N末端プロリンリッチリピート全体もしくはその一部の除去、またはそれらの両方が挙げられる。該欠失が、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の20個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の20個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の30個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の38個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の40個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の50個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の60個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の70個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の80個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の90個のN末端アミノ酸、またはE.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の94個のN末端アミノ酸の除去である請求項8に記載の免疫原性ポリペプチド。
【0021】
また、本発明は、E.coli AcfD(orf3526)ポリペプチドの免疫原性ポリペプチド断片であって、
(a) 配列番号77〜95からなる群より選択されるアミノ酸配列;
(b) 配列番号77〜95のいずれか1つに対して少なくともa%の配列同一性
を含む;または
(c) 1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個(もしくはそれより多い)の1アミノ酸の変化(欠失、挿入、置換)を持つ(これは、(a)もしくは(b)の配列と比較して、別々の位置であってもよく、連続していてもよい);および/または;
(d) 配列番号77〜95のいずれかと、ペアワイズアラインメントアルゴリズムを使用してアラインメントされた場合に、N末端側からC末端側に向かうx個のアミノ酸のそれぞれのムービングウィンドウ(したがって、p>xであるp個のアミノ酸に拡張されるアラインメントでは、そのようなウィンドウはp−x+1個となる)が、少なくともx・y個の同一であるアラインメントされたアミノ酸を有しており、ここでは:xが、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200から選択され;yが、0.50、0.60、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99から選択され;x・yが整数でない場合は、最も近い整数に丸めを行なう、
アミノ酸配列を含み、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質よりも低い毒性を有し、被験体においてE.coli AcfD(orf3526)タンパク質と実質的に類似する免疫応答を惹起させる免疫原性ポリペプチド断片を提供する。
【0022】
好ましいペアワイズアラインメントアルゴリズムは、Needleman−Wunschグローバルアラインメントアルゴリズムであり[7]、デフォルトパラメータが使用される(例えば、ギャップ解放ペナルティ=10.0、およびギャップ伸長ペナルティ=0.5とともに、EBLOSUM62スコアリングマトリックスが使用される)。このアルゴリズムは、EMBOSSパッケージのneedleツールにおいて簡便に実行される[8]。
【0023】
これらのポリペプチドには、配列番号77〜95の他の無毒化改変体、例えば、対立遺伝子改変体、多形形態、ホモログ、オルトログ、パラログ、変異体などが含まれる。
【0024】
aの値は、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、87.5%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれを超えるものから選択され得る。
【0025】
該免疫原性ポリペプチド断片には、一部の特定の実施形態において、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の10個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の20個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の25個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の30個のN末端アミノ酸、またはE.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の33個のN末端アミノ酸が含まれていない。
【0026】
該免疫原性ポリペプチド断片には、一部の特定の実施形態において(先の実施形態との組合せであってもよい)、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の125個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の150個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の175個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の200個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の210個のC末端アミノ酸、またはE.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の217個のC末端アミノ酸が含まれていない。
【0027】
さらに、本発明は、E.coli AcfD(orf3526)ポリペプチドを含む免疫原性ポリペプチド断片であって、該免疫原性ポリペプチドが
(a) 配列番号20〜76からなる群より選択されるアミノ酸配列;
(b) 配列番号20〜76のいずれか1つに対して少なくともa%の配列同一性
を含む;または
(c) 1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個(もしくはそれより多い)の1アミノ酸の変化(欠失、挿入、置換)を持つ(これは、(a)もしくは(b)の配列と比較して、別々の位置であってもよく、連続していてもよい);および/または;
(d) 配列番号20〜76のいずれかと、ペアワイズアラインメントアルゴリズムを使用してアラインメントされた場合に、N末端側からC末端側に向かうx個のアミノ酸のそれぞれのムービングウィンドウ(したがって、p>xであるp個のアミノ酸に拡張されるアラインメントでは、そのようなウィンドウはp−x+1個となる)が、少なくともx・y個の同一であるアラインメントされたアミノ酸を有しており、ここでは:xが、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200から選択され;yが、0.50、0.60、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99から選択され;x・yが整数でない場合は、最も近い整数に丸めを行なう、
アミノ酸配列を含み、被験体においてE.coli AcfD(orf3526)タンパク質と実質的に類似する免疫応答を惹起させる免疫原性ポリペプチド断片を提供する。
【0028】
好ましいペアワイズアラインメントアルゴリズムは、Needleman−Wunschグローバルアラインメントアルゴリズムであり[7]、デフォルトパラメータが使用される(例えば、ギャップ解放ペナルティ=10.0、およびギャップ伸長ペナルティ=0.5とともに、EBLOSUM62スコアリングマトリックスが使用される)。このアルゴリズムは、EMBOSSパッケージのneedleツールにおいて簡便に実行される[8]。
【0029】
これらのポリペプチドには、配列番号20〜76の他の改変体、例えば、対立遺伝子改変体、多形形態、ホモログ、オルトログ、パラログ、変異体などが含まれる。
【0030】
aの値は、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、87.5%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれを超えるものから選択され得る。
【0031】
例示的な断片は、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の100個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の200個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の300個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の400個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の500個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の600個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の700個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の750個のC末端アミノ酸、もしくはE.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の758個のC末端アミノ酸が含まれていないもの、またはE.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の100個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の200個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の300個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の400個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の500個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の600個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の700個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の750個のN末端アミノ酸、もしくはE.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の760個のN末端アミノ酸が含まれていないものである。
【0032】
前述の免疫原性ポリペプチドは、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質に関して、該E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して該免疫原性ポリペプチドの溶解度を増大させる欠失をさらに含むが、依然として、被験体においてE.coli AcfD(orf3526)タンパク質と実質的に類似する免疫応答を惹起させるものであってもよい。
【0033】
溶解度を増大させる例示的な欠失としては、gly−ser領域までのN末端アミノ酸の実質的にすべての除去、N末端プロリンリッチリピート全体もしくはその一部の除去、またはそれらの両方が挙げられる。該欠失が、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の20個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の20個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の30個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の38個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の40個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の50個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の60個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の70個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の80個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の90個のN末端アミノ酸、またはE.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の94個のN末端アミノ酸の除去である請求項8に記載の免疫原性ポリペプチド。
【0034】
E.coli AcfD(orf3526)タンパク質は、配列番号1〜19からなる群より選択されるアミノ酸配列を持つものであり得る。
【0035】
また、本発明は、E.coli AcfD(orf3526)ポリペプチドの免疫原性ポリペプチド断片であって、
(a) 配列番号77〜95からなる群より選択されるアミノ酸配列;
(b) 配列番号77〜95のいずれか1つに対して少なくともa%の配列同一性
を含む;または
(c) 1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個(もしくはそれより多い)の1アミノ酸の変化(欠失、挿入、置換)を持つ(これは、(a)もしくは(b)の配列と比較して、別々の位置であってもよく、連続していてもよい);および/または;
(d) 配列番号77〜95のいずれかと、ペアワイズアラインメントアルゴリズムを使用してアラインメントされた場合に、N末端側からC末端側に向かうx個のアミノ酸のそれぞれのムービングウィンドウ(したがって、p>xであるp個のアミノ酸に拡張されるアラインメントでは、そのようなウィンドウはp−x+1個となる)が、少なくともx・y個の同一であるアラインメントされたアミノ酸を有しており、ここでは:xが、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200から選択され;yが、0.50、0.60、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99から選択され;x・yが整数でない場合は、最も近い整数に丸めを行なう、
アミノ酸配列を含み、被験体においてE.coli AcfD(orf3526)タンパク質と実質的に類似する免疫応答を惹起させる免疫原性ポリペプチド断片を提供する。
【0036】
好ましいペアワイズアラインメントアルゴリズムは、Needleman−Wunschグローバルアラインメントアルゴリズムであり[7]、デフォルトパラメータが使用される(例えば、ギャップ解放ペナルティ=10.0、およびギャップ伸長ペナルティ=0.5とともに、EBLOSUM62スコアリングマトリックスが使用される)。このアルゴリズムは、EMBOSSパッケージのneedleツールにおいて簡便に実行される[8]。
【0037】
これらのポリペプチドには、配列番号77〜95の他の改変体、例えば、対立遺伝子改変体、多形形態、ホモログ、オルトログ、パラログ、変異体などが含まれる。
【0038】
aの値は、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、87.5%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれを超えるものから選択され得る。
【0039】
該免疫原性ポリペプチド断片には、一部の特定の実施形態において、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の10個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の20個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の25個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の30個のN末端アミノ酸、またはE.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の33個のN末端アミノ酸が含まれていない。
【0040】
該免疫原性ポリペプチド断片には、一部の特定の実施形態において(先の実施形態との組合せであってもよい)、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の125個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の150個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の175個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の200個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の210個のC末端アミノ酸、またはE.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の217個のC末端アミノ酸が含まれていない。
【0041】
本発明は、さらに、E.coli AcfD(orf3526)ポリペプチドの免疫原性ポリペプチド断片を含む免疫原性組成物であって、該免疫原性ポリペプチド断片が、配列番号77〜95のいずれか1つに対して少なくともa%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含み、また、該免疫原性ポリペプチド断片が、被験体においてE.coli AcfD(orf3526)タンパク質と実質的に類似する免疫応答を惹起させ、また、該免疫原性ポリペプチド断片に、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の125個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の150個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の175個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の200個のC末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の210個のC末端アミノ酸、またはE.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の217個のC末端アミノ酸が含まれていない免疫原性組成物を提供する。
【0042】
好ましいペアワイズアラインメントアルゴリズムは、Needleman−Wunschグローバルアラインメントアルゴリズムであり[7]、デフォルトパラメータが使用される(例えば、ギャップ解放ペナルティ=10.0、およびギャップ伸長ペナルティ=0.5とともに、EBLOSUM62スコアリングマトリックスが使用される)。このアルゴリズムは、EMBOSSパッケージのneedleツールにおいて簡便に実行される[8]。
【0043】
これらのポリペプチドには、配列番号77〜95の他の改変体、例えば、対立遺伝子改変体、多形形態、ホモログ、オルトログ、パラログ、変異体などが含まれる。
【0044】
aの値は、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、87.5%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれを超えるものから選択され得る。
【0045】
一部の特定の実施形態の免疫原性組成物の免疫原性ポリペプチド断片には、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の10個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の20個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の25個のN末端アミノ酸、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の30個のN末端アミノ酸、またはE.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の33個のN末端アミノ酸が含まれていない。
【0046】
免疫原性組成物は、一部の特定の実施形態において、1体積%〜12体積%の代謝可能な油と0.2重量%〜2.5重量%の乳化剤を含み得るアジュバントであって、該代謝可能な油と該乳化剤とが、実質的に全部が1ミクロン未満の直径である油滴を持つ水中油型エマルジョンの形態で存在しているアジュバント;4体積%〜5体積%のスクアレン、および(b)ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートとソルビタントリオレエートとを含む約1%の乳化剤であって、該スクアレンと該乳化剤が、実質的に全部が1ミクロン未満の直径である油滴を持つ水中油型エマルジョンの形態で存在している、スクアレンと乳化剤;またはMF59(TM)をさらに含むものであってもよい。
【0047】
前述の無毒化した免疫原性ポリペプチドおよび免疫原性ポリペプチド断片は、好ましくは、配列番号1〜19の少なくとも1つのエピトープまたは免疫原性断片を保持しているものである。断片内のエピトープは、B細胞エピトープおよび/またはT細胞エピトープであり得る。そのようなエピトープは、経験的に(例えば、PEPSCAN[9,10]もしくは類似する方法を用いて)同定することができ、または、それらは、(例えば、Jameson−Wolf抗原性指数(antigenic index)[11]、マトリックスに基づくアプローチ[12]、MAPITOPE[13]、TEPITOPE[14、15]、神経ネットワーク(neural network)[16]、OptiMer&EpiMer[17,18]、ADEPT[19]、Tsites[20]、親水性[21]、抗原性指数[22]、または参考文献23〜27に開示されている方法などを使用して)予測することもできる。エピトープは、抗体またはT細胞受容体の抗原結合部位によって認識され、それらに結合する抗原の一部分であり、「抗原性決定基」と称されることもあり得る。
【0048】
前述の無毒化した免疫原性ポリペプチドおよび免疫原性ポリペプチド断片には、適当な組成物(これには、アジュバント(以下の「免疫原性組成物および医薬品」のセクションの中で列挙されるかまたは議論される任意のアジュバントが含まれるがこれに限定されない)、または該ポリペプチドにカップリングさせた適当な担体を含めてもよい)にて被験体に投与されると、それぞれ、単離された全長のポリペプチドである配列番号1〜19(これらから免疫原性ポリペプチドが導かれる)を認識する抗体またはT細胞に媒介される免疫応答を誘導する免原性ポリペプチドが含まれるが、これに限定されない。
【0049】
前述の無毒化した免疫原性ポリペプチドおよび免疫原性ポリペプチド断片には、適当な組成物(これには、アジュバント(以下の「免疫原性組成物および医薬品」のセクションの中で列挙されるかまたは議論される任意のアジュバントが含まれるがこれに限定されない)、または該ポリペプチドにカップリングさせた適当な担体を含めてもよい)にて被験体に投与されると、それぞれ、単離された全長のポリペプチドである配列番号1〜19(これらから免疫原性断片が導かれる)を認識する抗体またはT細胞に媒介される免疫応答を誘導する免疫原性ポリペプチドが含まれるが、これに限定されない。
【0050】
前述の無毒化した免疫原性ポリペプチドおよび免疫原性ポリペプチド断片には、適当な組成物(これには、アジュバント(以下の「免疫原性組成物および医薬品」のセクションの中で列挙されるかまたは議論される任意のアジュバントが含まれるがこれに限定されない)、または該ポリペプチドにカップリングさせた適当な担体を含めてもよい)にて被験体に投与されると、それぞれ、単離された全長のポリペプチドである配列番号1〜19(これらから免疫原性断片が導かれる)を認識する抗体またはT細胞に媒介される免疫応答を誘導する免疫原性ポリペプチドが含まれるが、これに限定されない。
【0051】
本発明の無毒化ポリペプチドは、配列番号1〜19のいずれか1つと比較して、1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9個など)のアミノ酸置換、例えば、保存的置換(すなわち、あるアミノ酸の、関連する側鎖を持つ別のアミノ酸での置換)を含むものであり得る。遺伝子にコードされたアミノ酸は、一般的に、4つのファミリー:(1)酸性、すなわち、アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性、すなわち、リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性、すなわち、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)電荷を持たない極性、すなわち、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンに分けられる。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは、場合によっては、まとめて芳香族アミノ酸として分類される。一般的に、これらのファミリー内の単一アミノ酸の置換は、生物学的活性に対して大きな影響はない。
【0052】
無毒化ポリペプチドは、配列番号1〜19のいずれか1つに関して1つまたは複数の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9個など)の単一アミノ酸欠失を含むものであり得る。同様に、ポリペプチドは、配列番号1〜19のいずれか1つに関して1つまたは複数の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9個など)の挿入(例えば、各々、1、2、3、4または5アミノ酸)を含むものであり得る。
【0053】
一般的に、本発明の無毒化ポリペプチドまたは免疫原性ポリペプチド断片に、配列番号1〜19のうちの1つの完全なものと同一でない配列が含まれている場合(例えば、それに対して<100%の配列同一性を有する配列表が含まれている場合、またはその断片が含まれている場合)、該ポリペプチドは、該配列番号の完全な配列からなるポリペプチドを認識する抗体(すなわち、前記配列番号1〜19の1つまたは複数に結合する抗体)を誘発できるものであることが好ましい。そのような抗体は、それぞれ、配列番号1〜19に特異的に結合し得るが、非AcfD(orf3526)タンパク質には、非特異的結合の参照標準としてのヒト血清アルブミンに対する該抗体の非特異的親和性よりも有意に高い親和性で結合しない。
【0054】
本発明とともに使用されるポリペプチドは、様々な形態をとり得る(例えば、天然の形態、融合形態、グリコシル化形態、非グリコシル化形態、脂質化形態、非脂質化形態、リン酸化形態、非リン酸化形態、ミリストイル化形態、非ミリストイル化形態、単量体、多量体、粒子形態、変性形態など)。例えば、本発明のポリペプチドは、脂質化されたN末端のシステイン(例えば、配列番号1〜19のCys−24)を持つものであり得る。
【0055】
本発明とともに使用されるポリペプチドは、様々な手段(例えば、組み換え発現、細胞培養物からの精製、化学合成など)によって調製することができる。組み換えによって発現されるタンパク質が好ましい。
【0056】
本発明とともに使用されるポリペプチドは、精製された形態または実質的に精製された形態、すなわち、他のポリペプチドを実質的に含まない(例えば、自然界に存在しているポリペプチドを含まない)形態、特に、他のE.coliもしくは宿主細胞のポリペプチドを含まない形態で提供されることが好ましい。本発明とともに使用されるポリペプチドには、一般的には、少なくとも約50%純粋であり(重量で)、そして通常は、少なくとも約90%純粋であり、すなわち、組成物の約50%未満、より好ましくは約10%未満(例えば、5%)が、他の発現されたポリペプチドで構成される。したがって、組成物中の抗原は、その分子を発現させるために用いられる生命体全体から分離される。
【0057】
本発明とともに使用されるポリペプチドは、好ましくは、E.coliポリペプチドである。そのようなポリペプチドは、さらに、NMEC、APEC、UPEC、EAEC、EIEC、EPEC、およびETEC E.coliポリペプチドから選択され得る。
【0058】
用語「ポリペプチド」は、任意の長さのアミノ酸ポリマーをいう。ポリマーは、直鎖であっても、または分枝していてもよく、これには、修飾されたアミノ酸が含まれる場合があり、そして、これには、非アミノ酸が間に挟まれる場合もある。この用語にはまた、自然に修飾されたか、または介入(例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは修飾(例えば、標識成分との結合体化))によって修飾されたアミノ酸ポリマーも含まれる。例えば、1つまたは複数のアミノ酸のアナログ(例えば、天然にはないアミノ酸などを含む)、ならびに当該分野で公知の他の修飾を含むポリペプチドも含まれる。ポリペプチドは、単鎖として存在することができ、また、会合した鎖として存在することもできる。
【0059】
本発明により、配列−P−Q−または−Q−P−を含むポリペプチドが提供される。ここでは、−P−は上記で定義されたアミノ酸配列であり、そして−Q−は上記で定義された配列ではない。すなわち、本発明により、融合タンパク質が提供される。−P−のN末端コドンがATGではなく、このコドンがポリペプチドのN末端に存在しないとき、これは、Metではなく、そのコドンの標準的なアミノ酸として翻訳されるであろう。しかし、このコドンがポリペプチドのN末端にある場合には、これはMetとして翻訳されるであろう。−Q−部分の例としては、ヒスチジンタグ(すなわち、His、ここでは、n=3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多い)、マルトース結合タンパク質、またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
本発明によってはまた、本発明のポリペプチドを含むオリゴマータンパク質も提供される。このオリゴマーは、二量体、三量体、四量体などであり得る。オリゴマーはホモオリゴマーでも、またヘテロオリゴマーでもあり得る。オリゴマーの中のポリペプチドは、共有結合されている場合も、また、非共有的に結合されている場合もある。
【0061】
被験体において該ポリペプチドによって惹起される免疫応答と、全長のタンパク質によって惹起される免疫応答との比較は、当業者に利用可能な任意の手段を用いて行なわれ得る。以下の実施例で使用している簡単な方法の一例は、モデル被験体(マウスなど)の免疫化、次いで、致死量のE.coliでの抗原投与(challenge)を伴うものである。適正な比較のため、当業者であれば、当然、同じアジュバント(フロイント完全アジュバントなど)を選択するであろう。そのような試験において、本発明の免疫原性ポリペプチド断片は、例えば、該ポリペプチドにより全長のタンパク質によって提供される防御の少なくとも70%、全長のタンパク質によって提供される防御の少なくとも80%、全長のタンパク質によって提供される防御の少なくとも85%、全長のタンパク質によって提供される防御の少なくとも90%、全長のタンパク質によって提供される防御の少なくとも95%、全長のタンパク質によって提供される防御の少なくとも97%、全長のタンパク質によって提供される防御の少なくとも98%、または全長のタンパク質によって提供される防御の少なくとも99%が提供される場合、被験体において実質的に類似する免疫応答を惹起させる(すなわち、該致死性の抗原投与に対して実質的に同じ防御をもたらす)ものである。
【0062】
該免疫原性ポリペプチド断片と比較され得る(溶解度、毒性および惹起される免疫応答について)全長のAcfD(orf3526)タンパク質は、任意の代表的なE.coli AcfD(orf3526)タンパク質、例えば、配列番号1〜19であり得るが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、AcfD(orf3526)タンパク質は、該免疫原性ポリペプチド断片が取得される対応する全長のタンパク質である。
【0063】
本発明によってはまた、本発明のポリペプチドを生産するためのプロセスも提供される。これには、本発明の核酸で形質転換された宿主細胞を、ポリペプチドの発現を誘導する条件下で培養する工程が含まれる。その後、ポリペプチドは、例えば、培養上清から精製され得る。
【0064】
本発明により、本発明のポリペプチドをコードするプラスミドを含むE.coli細胞が提供される。E.coli細胞の染色体にはAcfD(orf3526)のホモログが含まれる場合があり、また、そのようなホモログが含まれない場合もある。しかし、いずれの場合にも、本発明のポリペプチドはプラスミドから発現させることができる。プラスミドには、マーカーをコードする遺伝子などが含まれ得る。これらおよび適切なプラスミドについての他の詳細は以下に提供される。
【0065】
本発明のポリペプチドの発現はE.coli株の中で行わせることができるが、本発明では、通常は、発現のために異種宿主が使用されるであろう。異種宿主は原核生物(例えば、細菌)である場合も、また真核生物である場合もある。適している宿主としては、Bacillus subtilis、Vibrio cholerae、Salmonella typhi、Salmonella typhimurium、Neisseria lactamica、Neisseria cinerea、Mycobacteria(例えば、M.tuberculosis)、酵母などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
本発明により、本発明のポリペプチドを生産させるためのプロセスが提供される。これには、化学的手段によってポリペプチドの少なくとも一部を合成する工程が含まれる。
【0067】
上記タンパク質、ポリペプチド、ハイブリッドポリペプチド、エピトープ、および免疫原性断片のいずれかおよび全ては、以下を含む多数の形態のいずれか1つであり得るが、これらに限定されない:組み換え体、(そのようなタンパク質、ポリペプチド、ハイブリッドポリペプチド、エピトープ、および免疫原性断片と、それらの自然な状態において一緒に存在している物質から)単離されたかまたは実質的に精製された形態。
【0068】
核酸
本発明によってはまた、本発明のポリペプチドおよびハイブリッドポリペプチドをコードする核酸が提供される。本発明によってはまた、本発明の1つもしくは複数のポリペプチドまたはハイブリッドポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸が提供される。
【0069】
本発明によってはまた、そのようなヌクレオチド配列に対して配列同一性を有しているヌクレオチド配列を含む核酸も提供される。配列間の同一性は、上記に記載されたようなSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定されることが好ましい。そのような核酸には、同じアミノ酸をコードするために別のコドンを使用する核酸が含まれる。
【0070】
本発明によってはまた、これらの核酸にハイブリダイズすることができる核酸が提供される。ハイブリダイゼーション反応は、様々な「ストリンジェンシー」の条件下で行うことができる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーを高める条件は広く知られており、当該分野で公開されている(例えば、参考文献211の7.52頁)。(ストリンジェンシーを高めるための)関連する条件の例としては、以下が挙げられる:25℃、37℃、50℃、55℃、および68℃のインキュベーション温度;10×SSC、6×SSC、1×SSC、0.1×SSCのバッファー濃度(ここでは、SSCは、0.15MのNaClおよび15mMのクエン酸バッファーである)、および他のバッファー系を使用するそれらの等価物;0%、25%、50%、および75%のホルムアミド濃度;5分〜24時間のインキュベーション時間;1回、2回、またはそれより多い洗浄工程;1分、2分、または15分の洗浄インキュベーション時間;および、6×SSC、1×SSC、0.1×SSC、または脱イオン水である洗浄溶液。ハイブリダイゼーション技術とそれらの最適化は当該分野で周知である(例えば、参考文献28、29、211、213などを参照のこと)。
【0071】
いくつかの実施形態では、本発明の核酸は、低いストリンジェンシーの条件下で標的にハイブリダイズする。他の実施形態では、本発明の核酸は、中程度のストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズする。好ましい実施形態では、本発明の核酸は、高ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズする。低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーションの条件の例示的なセットは、50℃と10×SSCである。中程度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の例示的なセットは、55℃と1×SSCである。高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の例示的なセットは、68℃と0.1×SSCである。
【0072】
本発明には、(例えば、アンチセンスまたはプロ−ビングのための、あるいは、プライマーとしての使用のための)これらの配列に対して相補的な配列を含む核酸が含まれる。
【0073】
本発明の核酸は、ハイブリダイゼーション反応において(例えば、ノーザンブロットもしくはサザンブロット、または核酸マイクロアレイ、または「遺伝子チップ」)、そして増幅反応において(例えば、PCR、SDA、SSSR、LCR、TMA、NASBAなど)、ならびに他の核酸技術において使用することができる。
【0074】
本発明の核酸は様々な形態をとることができる(例えば、一本鎖、二本鎖、ベクター、プライマー、プローブ、標識された形態など)。本発明の核酸は、環状である場合も、または分枝されている場合もあるが、通常は直鎖であろう。特に明記されないか必要とされない場合は、核酸を利用する本発明の任意の実施形態では、二本鎖形態と、二本鎖形態を形成する2つの相補的な一本鎖形態のそれぞれのいずれを利用することもできる。プライマーおよびプローブは、これらがアンチセンス核酸であるので、一般的には一本鎖である。
【0075】
本発明の核酸は、精製された形態または実質的に精製された形態、すなわち、他の核酸を(特に、他のE.coliまたは宿主細胞の核酸を)実質的に含まない形態(例えば、自然界に存在している核酸を実質的に含まない形態)で提供されることが好ましく、一般的には、少なくとも約50%純粋(重量で)であり、通常は、少なくとも約90%純粋である。本発明の核酸は、E.coli核酸であることが好ましい。
【0076】
本発明の核酸は、多くの方法で、例えば、全体または一部が化学合成(例えば、DNAのホスホルアミダイト合成)によって、ヌクレアーゼ(例えば、制限酵素)を使用したより長い核酸の消化によって、より短い核酸もしくはヌクレオチドの(例えば、リガーゼもしくはポリメラーゼを使用する)連結によって、ゲノムもしくはcDNAライブラリーからなどで調製することができる。
【0077】
本発明の核酸は、固体支持体(例えば、ビーズ、プレート、フィルター、薄膜、スライド、マイクロアレイ支持体、樹脂など)に付着させることができる。本発明の核酸は、例えば、放射性標識もしくは蛍光標識、またはビオチン標識で標識することができる。これは、核酸が検出技術において使用される場合、例えば、核酸がプライマーであるかまたはプローブとして使用される場合に特に有用である。
【0078】
用語「核酸」には、一般的な意味において、任意の長さのヌクレオチドの多量体形態が含まれる。これには、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、および/またはそれらのアナログが含まれる。これには、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッドが含まれる。核酸にはまた、DNAアナログまたはRNAアナログ、例えば、修飾された骨格(例えば、ペプチド核酸(PNS)もしくはホスホロチオエート)または修飾された塩基を含むものが含まれる。したがって、本発明には、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、DNA、cDNA、組み換え体である核酸、分枝された核酸、プラスミド、ベクター、プローブ、プライマーなどが含まれる。本発明の核酸がRNAの形態をとる場合には、これは5’キャップを持つ場合も、また5’キャップを持たない場合もある。
【0079】
本発明の核酸は、ベクターの一部、すなわち、1つまたは複数の細胞のタイプの形質導入/トランスフェクションのために設計された核酸構築物の一部である場合もある。ベクターは、例えば、「クローニングベクター」(これは、挿入されたヌクレオチドの単離、増殖、および複製のために設計される)、「発現ベクター」(これは、宿主細胞の中でのヌクレオチド配列の発現のために設計される)、「ウイルスベクター」(これは、組み換え体ウイルスもしくはウイルス様粒子の生産を生じるように設計される)、あるいは「シャトルベクター」(これには、ベクターの2種類以上のタイプの属性が含まれる)であり得る。好ましいベクターは上記のようなプラスミドである。「宿主細胞」には、個々の細胞または細胞培養物が含まれ、これらは、外因性核酸のレシピエントであり得るかまたは外因性核酸のレシピエントである。宿主細胞には、単一の宿主細胞の子孫が含まれ、この子孫は、自然な、偶発的な、または意図的な変異および/または変化が原因で、最初の親細胞と(形態に関して、または全DNA量に関して)必ずしも完全に同じではない場合がある。宿主細胞には、本発明の核酸でインビボまたはインビトロでトランスフェクションされたか、あるいは感染させられた細胞が含まれる。
【0080】
核酸がDNAである場合は、RNA配列中の「U」は、DNAにおいては「T」に置き換わるであろうことが理解されるであろう。同様に、核酸がRNAである場合には、DNA配列中の「T」が、RNAにおいては「U」に置き換わるであろうことが理解されるであろう。
【0081】
用語「相補物(complement)」または「相補性」は、核酸に関して使用される場合は、Watson−Crick塩基対合をいう。したがって、Cの相補物はGであり、Gの相補物はCであり、Aの相補物はT(またはU)であり、そしてT(またはU)の相補物はAである。例えば、ピリミジン(CまたはT)に相補的なI(プリンであるイノシン)のような塩基を使用することも可能である。
【0082】
本発明の核酸は、例えば、ポリペプチドを生産するために;生物学的試料中の核酸の検出のためのハイブリダイゼーションプローブとして、;核酸のさらなるコピーを生じさせるために;リボザイムまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドを生じさせるために;一本鎖のDNAプライマーまたはプローブとして;あるいは、三本鎖を形成するオリゴヌクレオチドとして使用することができる。
【0083】
本発明により、本発明の核酸を生産するためのプロセスが提供される。ここでは、核酸は、一部が、または全体が、化学的手段を使用して合成される。
【0084】
本発明により、本発明のヌクレオチド配列を含むベクター(例えば、クローニングベクターまたは発現ベクター)、およびそのようなベクターで形質転換された宿主細胞が提供される。
【0085】
本発明による核酸の増幅は、定量的および/またはリアルタイムであり得る。
【0086】
本発明の特定の実施形態については、核酸は、少なくとも7ヌクレオチドの長さ(例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50、55、60、65、70、75、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、225、250、275、300ヌクレオチド、またはさらに長い)であることが好ましい。
【0087】
本発明の特定の実施形態については、核酸は、最長500ヌクレオチドの長さ(例えば、450、400、350、300、250、200、150、140、130、120、110、100、90、80、75、70、65、60、55、50、45、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15ヌクレオチド、またはさらに短い)であることが好ましい。
【0088】
本発明のプライマーおよびプローブ、ならびに、ハイブリダイゼーションに使用される他の核酸は、10ヌクレオチド〜30ヌクレオチドの長さ(例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド)であることが好ましい。
【0089】
免疫原性組成物および医薬品
本発明のポリペプチドは、免疫原性組成物において有効成分(免疫原)として有用であり、そのような組成物はワクチンとして有用であり得る。本発明のワクチンは、予防的(すなわち、感染を防ぐため)または治療的(すなわち、感染を処置するため)のいずれかであり得るが、通常は予防的であろう。
【0090】
免疫原性組成物は薬学的に許容されるであろう。これらには、通常は、抗原に加えて複数の成分が含まれるであろう。例えば、これらには、典型的には、1つまたは複数の薬学的担体(単数または複数)、賦形剤(単数または複数)、および/またはアジュバント(単数または複数)が含まれる。担体と賦形剤についての十分な議論は、参考文献208の中のものを利用することができる。ワクチンアジュバントについての十分な議論は、参考文献30および31の中のものを利用することができる。
【0091】
組成物は、一般的には、水性の形態で哺乳動物に投与されるであろう。しかし、投与前は、この組成物は、非水性の形態であり得る。例えば、いくつかのワクチンは、水性形態で製造され、その後、充填され、分配され、そしてまた水性の形態で投与されるが、他のワクチンは、製造の間に凍結乾燥させられ、使用時に水性の形態になるように再構成される。したがって、本発明の組成物は、乾燥させられた、例えば、凍結乾燥させられた処方物であり得る。
【0092】
組成物には、保存剤(例えば、チメロサールまたは2−フェノキシエタノール)が含まれ得る。しかし、ワクチンには、水銀性物質は実質的には含まれない(すなわち、5μg/ml未満)(例えば、チメロサールが含まれない)ことが好ましい。水銀を含まないワクチンがより好ましい。保存剤が含まれていないワクチンが特に好ましい。
【0093】
熱安定性を改善するために、組成物に、温度保護剤(temperature protective agent)が含まれる場合がある。
【0094】
張度を制御するためには、生理学的塩(例えば、ナトリウム塩)が含まれることが好ましい。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、これは、1mg/ml〜20mg/mlの間(例えば、約10±2mg/mlのNaCl)で存在し得る。存在し得る他の塩としては、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、脱水リン酸二ナトリウム(disodium phosphate dehydrate)、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。
【0095】
組成物は、一般的には、200mOsm/kg〜400mOsm/kgの間、好ましくは、240mOsm/kg〜360mOsm/kgの間の重量オスモル濃度を持つであろう。さらに好ましくは、290mOsm/kg〜310mOsm/kgの範囲にあるであろう。
【0096】
組成物には、1種類または複数の種類のバッファーが含まれ得る。典型的なバッファーとしては、リン酸塩バッファー、Trisバッファー、ホウ酸塩バッファー、コハク酸塩バッファー、ヒスチジンバッファー(特に、水酸化アルミニウムアジュバントを含むもの)、またはクエン酸塩バッファーが挙げられる。バッファーは、典型的には、5mM〜20mMの範囲で含まれるであろう。
【0097】
組成物のpHは、一般的には、5.0〜8.1の間、より典型的には、6.0〜8.0の間、例えば、6.5〜7.5の間、または7.0〜7.8の間であろう。
【0098】
組成物は、好ましくは、滅菌されている。組成物は非発熱性であることが好ましい。例えば、1用量あたり<1EU(内毒素単位、標準的な基準)が含まれ、好ましくは、1用量あたり<0.1EUが含まれる。組成物にはグルテンが含まれないことが好ましい。
【0099】
組成物には、1回の免疫化のための材料が含まれる場合があり、また、複数回の免疫化のための材料が含まれる場合もある(すなわち、「複数用量の」キット)。複数用量の構成においては、保存剤が含められることが好ましい。複数用量の組成物に保存剤を含めることの代わりに(またはそれに加えて)、組成物は、物質を取り出すための無菌のアダプターを持つ容器の中に入れられる場合もある。
【0100】
ヒト用のワクチンは、典型的には、約0.5mlの投薬体積で投与されるが、その半分の用量(すなわち、約0.25ml)が子供に投与される場合もある。
【0101】
本発明の免疫原性組成物にはまた、1種類または複数の種類の免疫調節因子が含まれる場合もある。免疫調節因子の1つまたは複数に、1つまたは複数のアジュバントが含まれることが好ましい。アジュバントには、以下でさらに議論されるTH1アジュバントおよび/またはTH2アジュバントが含まれ得る。
【0102】
本発明の組成物において使用することができるアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
A.無機物を含む組成物
本発明においてアジュバントとしての使用に適している無機物を含む組成物としては、無機塩、例えば、アルミニウム塩およびカルシウム塩(またはそれらの混合物)が挙げられる。カルシウム塩としては、リン酸カルシウム(例えば、参考文献32の中で開示されている「CAP」粒子)が挙げられる。アルミニウム塩としては、水酸化物、リン酸塩、硫酸塩などが挙げられ、これらの塩は任意の適切な形態(例えば、ゲル、結晶、無定形など)をとる。これらの塩への吸着が好ましい。無機物を含む組成物はまた、金属塩の粒子として処方される場合がある[33]。
【0103】
水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムとして公知のアジュバントが使用され得る。これらの名称は便宜上であるが、便宜のためだけに使用される。なぜなら、これは、存在する実際の化合物の正確な記載ではないからである(例えば、参考文献30の第9章を参照のこと)。本発明では、アジュバントとして一般的に使用されている、「水酸化物」アジュバントまたは「リン酸塩」アジュバントの任意のものを使用することができる。「水酸化アルミニウム」として知られているアジュバントは、典型的には、オキシ水酸化アルミニウム塩であり、これは通常は、少なくとも一部が結晶である。「リン酸アルミニウム」として知られているアジュバントは、典型的には、ヒドロキシリン酸アルミニウムであり、多くの場合には、少量の硫酸塩(すなわち、ヒドロキシリン酸アルミニウム硫酸塩)も含まれる。これらは沈殿によって得ることができ、沈殿の間の反応条件と濃度が、塩の中のホスフェートでのヒドロキシルの置換の程度に影響を及ぼす。
【0104】
繊維状の形態(例えば、透過型電子顕微鏡写真で見られるようなもの)が、水酸化アルミニウムアジュバントについての典型である。水酸化アルミニウムアジュバントのpIは、典型的には、約11であり、すなわち、アジュバント自体は、生理学的pHで正の表面電荷を有する。水酸化アルミニウムアジュバントについては、pH7.4で、1mgのAl+++あたり1.8mg〜2.6mgの間のタンパク質の吸着能力が報告されている。
【0105】
リン酸アルミニウムアジュバントは、一般的には、0.3〜1.2の間、好ましくは、0.8〜1.2の間、さらに好ましくは、0.95±0.1のPO/Alモル比を有する。リン酸アルミニウムは、特に、ヒドロキシリン酸塩については、一般的には無定形であろう。典型的なアジュバントは、0.84〜0.92の間のPO/Alモル比を有する、0.6mgのAl3+/mlで含まれる無定形のヒドロキシリン酸アルミニウムである。リン酸アルミニウムは、一般的には粒子状であろう(例えば、透過型電子顕微鏡写真において見られる平板様の形態)。いずれかの抗原吸着後の粒子についての典型的な直径は、0.5μm〜20μmの範囲(例えば、約5μm〜10μm)である。リン酸アルミニウムアジュバントについては、pH7.4で、1mgのAl+++あたり、0.7mg〜1.5mgのタンパク質の吸着能力が報告されている。
【0106】
リン酸アルミニウムの電荷ゼロ点(PZC)は、ホスフェートでのヒドロキシルの置換の程度と逆の関係にあり、この置換の程度は、沈殿による塩の調製に使用される反応条件と反応物の濃度に応じて変わり得る。PZCはまた、溶液中の遊離のホスフェートイオンの濃度を変えることによって(より多くのホスフェート=より酸性のPZC)、またはバッファー(例えば、ヒスチジンバッファー)を加えることによって(PZCをより塩基性にする)も変化させられる。本発明にしたがって使用されるリン酸アルミニウムは、一般的には、4.0〜7.0の間、より好ましくは、5.0〜6.5の間、例えば、約5.7のPZCを有するであろう。
【0107】
本発明の組成物を調製するために使用されるアルミニウム塩の懸濁液には、バッファー(例えば、リン酸塩バッファー、またはヒスチジンバッファー、またはTrisバッファー)が含まれ得るが、これは、必ずしもそうである必要はない。懸濁液は、滅菌されており、発熱物質が含まれないことが好ましい。懸濁液には、遊離の水性のホスフェートイオンが含まれる場合があり、例えば、1.0mM〜20mMの間、好ましくは、5mM〜15mMの間、そしてより好ましくは、約10mMの濃度で存在する。懸濁液にはまた、塩化ナトリウムも含まれる場合がある。
【0108】
本発明では、水酸化アルミニウムとリン酸アルミニウムの両方の混合物を使用することができる。この場合、リン酸アルミニウムは水酸化物よりも多く存在し得、例えば、少なくとも2:1の重量比、例えば、≧5:1、≧6:1、≧7:1、≧8:1、≧9:1などで存在し得る。
【0109】
患者に投与される組成物中でのAl+++の濃度は、好ましくは、10mg/ml未満であり、例えば、≦5mg/ml、≦4mg/ml、≦3mg/ml、≦2mg/ml、≦1mg/mlなどである。好ましい範囲は、0.3mg/ml〜1mg/mlの間である。最大0.85mg/用量が好ましい。
【0110】
B.油エマルジョン
本発明においてアジュバントとしての使用に適している油エマルジョン組成物としては、スクアレン−水エマルジョン、例えば、MF59[参考文献30の第10章;参考文献34もまた参照のこと](マイクロフルイダイザーを使用して1ミクロン未満の粒子になるように処方された、5%のスクアレン、0.5%のTween 80、および0.5%のSpan 85)が挙げられる。完全なフロイトのアジュバント(CFA)および不完全なフロイトのアジュバント(IFA)もまた使用される場合がある。
【0111】
様々な水中油型エマルジョンアジュバントが公知であり、これらには、典型的には、少なくとも1種類の油、および少なくとも1種類の界面活性剤が含まれ、この油(単数または複数)および界面活性剤(単数または複数)は、生体分解性(代謝可能)であり、かつ生体適合性である。エマルジョンの中の油滴は、一般的には、5μm未満の直径であり、理想的には1ミクロン未満の直径であり、これらの小さい大きさは、安定なエマルジョンを提供するためのマイクロフルイダイザーを用いて得ることができる。220nm未満の大きさの液滴が好ましい。なぜなら、これらは、濾過滅菌を行うことができるからである。
【0112】
エマルジョンには、油、例えば、動物(例えば、魚)を供給源とするものまたは植物を供給源とするものが含まれ得る。植物油についての供給源としては、堅果、種子および穀粒が挙げられる。ピーナッツ油、大豆油、ココナッツ油、およびオリーブ油が、最も一般的に入手可能な堅果油の例である。例えば、ホホバ豆から得られるホホバ油を使用することができる。種子油としては、サフラワー油、綿実油、ヒマワリ種子油、ゴマ種子油などが挙げられる。穀粒の群において、コーン油が最も容易に入手可能であるが、小麦、オート麦、ライ麦、米、テフ、ライ小麦などのようなその他の穀類の穀粒の油も用いてよい。グリセロールおよび1,2−プロパンジオールの6個〜10個の炭素の脂肪酸エステルは、種子油の中には自然界においては存在しないが、堅果油および種子油由来の適切な出発材料の加水分解、分離、およびエステル化によって調製することができる。哺乳動物の乳汁由来の脂肪および油は代謝可能であり、したがって、本発明の実施において使用することができる。動物供給源から純粋な油を得るために必要な、分離、精製、鹸化、および他の手段についての手順は当該分野で周知である。ほとんどの魚には、容易に回収することができる代謝可能な油が含まれている。例えば、タラの肝油、サメの肝油、およびクジラの油(例えば、鯨ろう)が、本明細書中で使用することができる魚の油のいくつかの例である。多数の分枝鎖の油が、5個の炭素のイソプレン単位で生化学的に合成され、これは、一般的には、テルペノイドと呼ばれる。サメの肝油には、スクアレンとして知られている、分枝不飽和テルペノイドである、2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエン(これは、本明細書中では特に好ましい)が含まれる。スクアラン(スクアレンの飽和アナログ)もまた好ましい油である。スクアレンとスクアランを含む魚の油は、商業的な供給業者から容易に入手することができ、また、当該分野で公知の方法によって得ることもできる。他の好ましい油はトコフェロールである(下記を参照のこと)。油の混合物を使用することができる。
【0113】
界面活性剤は、それらの「HLB」(親水性/親油性バランス)によって分類することができる。本発明の好ましい界面活性剤は、少なくとも10、好ましくは、少なくとも15、そしてより好ましくは、少なくとも16のHLBを持つ。本発明は、以下を含むがこれらに限定されない界面活性剤とともに使用することができる:ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(一般的にTweensと呼ばれる)、特に、ポリソルベート20およびポリソルベート80;DOWFAX(商標)の商標名で販売されている、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、および/またはブチレンオキサイド(BO)のコポリマー、例えば、直鎖のEO/POブロックコポリマー;オクトキシノール(これは、エトキシ(オキシ−1,2−エタンジイル)基の繰り返し回数が様々であり得、オクトキシノール−9(Triton X−100、またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)が特に興味深い;(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40);リン脂質、例えば、ホスファチジルコリン(レシチン);ノニルフェノールエトキシレート、例えば、Tergitol(商標)NPシリーズ;ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、およびオレイルアルコール由来のポリオキシエチレン脂肪エーテル(Brij界面活性剤として公知である)、例えば、トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30);ならびに、ソルビタンエステル(SPANとして一般的に知られている)、例えば、ソルビタントリオレエート(Span 85)およびソルビタンモノラウレート。非イオン性界面活性剤が好ましい。エマルジョンを含めるために好ましい界面活性剤は、Tween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Span 85(ソルビタントリオレエート)、レシチン、およびTriton X−100である。
【0114】
界面活性剤の混合物、例えば、Tween 80/Span 85混合物を使用することができる。ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween 80))とオクトキシノール(例えば、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X−100))との組み合わせもまた適している。別の有用な組み合わせには、ラウレス9とポリオキシエチレンソルビタンエステル、および/またはオクトキシノールが含まれる。
【0115】
界面活性剤(重量%)の好ましい量は以下である:ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えば、Tween 80)0.01%〜1%、特に、約0.1%;オクチル−もしくはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えば、Triton X−100、もしくはTritonシリーズの他の界面活性剤)0.001%〜0.1%、特に、0.005%〜0.02%;ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ラウレス9)0.1%〜20%、好ましくは、0.1%〜10%、および特に、0.1%〜1%、または約0.5%。
【0116】
好ましいエマルジョンアジュバントは、<1μmの平均の液滴の大きさを持ち、例えば、≦750nm、≦500nm、≦400nm、≦300nm、≦250nm、≦220nm、≦200nm、またはそれ未満である。これらの液滴の大きさは、マイクロフルイダイゼーションのような技術によって簡単に得ることができる。
【0117】
本発明に有用な具体的な水中油型エマルジョンアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
・スクアレン、Tween 80、およびSpan 85の1ミクロン未満のエマルジョン。このエマルジョンの組成は、体積で、約5%のスクアレン、約0.5%のポリソルベート80、および約0.5%のSpan 85であり得る。重量では、これらの比率は、4.3%のスクアレン、0.5%のポリソルベート80、および0.48%のSpan 85になる。このアジュバントは、参考文献38の第10章および参考文献39の第12章にさらに詳細に記載されているように、「MF59」として知られている[35〜37]。MF59エマルジョンには、クエン酸イオン、例えば、10mMのクエン酸ナトリウムバッファーが含まれることが有利である。
【0118】
・スクアレン、トコフェロール、およびTween 80のエマルジョン。エマルジョンには、リン酸緩衝化生理食塩水が含まれ得る。これにはまた、Span 85(例えば、1%)および/またはレシチンも含まれ得る。これらのエマルジョンは、2%〜10%のスクアレン、2%〜10%のトコフェロール、および0.3%〜3%のTween 80が含まれ得、そしてスクアレン:トコフェロールの重量比は、好ましくは、≦1である。なぜなら、これによってより安定なエマルジョンが提供されるからである。スクアレンとTween 80は、約5:2の体積比で存在し得る。1つのそのようなエマルジョンは、PBS中にTween 80を溶解させて、2%の溶液とし、その後、90mlのこの溶液を(5gのDL−α−トコフェロールおよび5mlのスクアレン)の混合物と混合し、その後、この混合物をマイクロフルイダイズすることによって作製することができる。得られるエマルジョンは、1ミクロン未満の油滴を有し得、例えば、100nm〜250nmの間、好ましくは、約180nmの平均直径を有し得る。
【0119】
・スクアレン、トコフェロール、およびTriton界面活性剤(例えば、Triton X−100)のエマルジョン。このエマルジョンにはまた、3d−MPL(下記を参照のこと)もまた含まれ得る。このエマルジョンには、リン酸塩バッファーが含まれる場合がある。
【0120】
・ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)、Triton界面活性剤(例えば、Triton X−100)、およびトコフェロール(例えば、α−トコフェロールスクシネート)を含むエマルジョン。エマルジョンには、これらの3種類の成分が、約75:11:10の質量比(例えば、750μg/mlのポリソルベート80、110μg/mlのTriton X−100、および100μg/mlのα−トコフェロールスクシネート)が含まれ得、そしてこれらの濃度には、抗原に由来するこれらの成分の任意の寄与が含まれるはずである。このエマルジョンにはまた、スクアレンも含まれる場合がある。このエマルジョンにはまた、3d−MPLも含まれ得る(下記を参照のこと)。水相には、リン酸塩バッファーが含まれ得る。
【0121】
・スクアラン、ポリソルベート80、およびポロキサマー401(「Pluronic(商標)L121」)のエマルジョン。このエマルジョンは、リン酸緩衝化生理食塩水(pH7.4)の中に処方することができる。このエマルジョンは、ムラミルジペプチドについての有用な送達媒体であり、「SAF−1」アジュバントにおいてはスレオニル−MDPとともに使用されている[40](0.05%〜1%のThr−MDP、5%のスクアラン、2.5%のPluronic L121、および0.2%のポリソルベート80)。これはまた、「AF」アジュバントと同様に、Thr−MDPを伴わずに使用することもできる[41](5%のスクアラン、1.25%のPluronic L121、および0.2%のポリソルベート80)。マイクロフルイダイゼーションが好ましい。
【0122】
・スクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテル)、および疎水性非イオン性界面活性剤(例えば、ソルビタンエステルまたはマンニドエステル、例えば、ソルビタンモノオレエートまたは「Span 80」)を含むエマルジョン。このエマルジョンは、好ましくは、熱可逆性であり、そして/または、200nm未満の大きさを持つ油滴を少なくとも90%(体積で)含む[42]。このエマルジョンにはまた、アルジトール;凍結防止剤(例えば、糖、例えば、ドデシルマルトシドおよび/またはスクロース);および/またはアルキルポリグリコシドの1つまたは複数が含まれ得る。そのようなエマルジョンは凍結乾燥させられ得る。
【0123】
・スクアレン、ポロキサマー105、およびAbil−Careのエマルジョン[43]。アジュバント添加(adjuvanted)ワクチン中でのこれらの成分の最終濃度(重量)は、5%のスクアレン、4%のポロキサマー105(プルロニックポリオール(pluronic polyol))、および2%のAbil−Care 85(Bis−PEG/PPG−16/16 PEG/PPG−16/16ジメチコン;カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)である。
【0124】
・0.5%〜50%の油、0.1%〜10%のリン脂質、および0.05%〜5%の非イオン性界面活性剤を含むエマルジョン。参考文献44に記載されているように、好ましいリン脂質成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリン、およびカルジオリピンである。1ミクロン未満の液滴の大きさが有利である。
【0125】
・代謝不可能な油(例えば、軽鉱油(light mineral oil))および少なくとも1種類の界面活性剤(例えば、レシチン、Tween 80、またはSpan 80)の1ミクロン未満の水中油型エマルジョン。添加物,例えば、QuilAサポニン、コレステロール、サポニン−脂質親和性結合体(例えば、参考文献45に記載されている、グルクロン酸のカルボキシル基を介するデスアシルサポニンへの脂肪族アミンの付加によって得られるGPI−0100)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド、および/またはN,N−ジオクタデシル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミンが含まれ得る。
【0126】
・サポニン(例えば、QuilAまたはQS21)とステロール(例えば、コレステロール)がへリックスミセルとして会合しているエマルジョン[46]。
【0127】
・鉱油、非イオン性親油性エトキシル化脂肪アルコール、および非イオン性親水性界面活性剤(例えば、エトキシル化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含むエマルジョン[47]。
【0128】
・鉱油、非イオン性親水性エトキシル化脂肪アルコール、および非イオン性親油性界面活性剤(例えば、エトキシル化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含むエマルジョン[47]。
【0129】
いくつかの実施形態では、エマルジョンは、送達時に、即座に抗原と混合することができ、したがって、アジュバントと抗原は、使用時の最終的な処方の準備として、パッケージされたワクチンまたは分配されたワクチンの中に別々に保たれ得る。他の実施形態では、エマルジョンは、製造の際に抗原と混合され、したがって、組成物は、液体のアジュバント添加された形態でパッケージされる。抗原は、一般的には、ワクチンが2種類の液体を混合することによって最終的に調製されるように、水性の形態であろう。混合される2種類の液体の体積比は様々であり得る(例えば、5:1〜1:5の間)が、一般的には、約1:1である。成分の濃度が特定のエマルジョンについての上記の記載の中にある場合には、これらの濃度は、典型的には、未希釈の組成物についての濃度であり、したがって、抗原溶液との混合後の濃度は下がるであろう。
【0130】
組成物にトコフェロールが含まれる場合は、α、β、γ、δ、ε、またはζのいずれのトコフェロールも使用することができるが、α−トコフェロールが好ましい。トコフェロールは、いくつかの形態(例えば、様々な塩および/または異性体)をとることができる。塩としては、有機塩(例えば、コハク酸塩、酢酸塩、ニコチン酸塩など)が挙げられる。D−α−トコフェロールおよびDL−α−トコフェロールのいずれを使用することもできる。トコフェロールは、高齢の患者(例えば、60歳以上)に使用されるワクチンに含められることが有利である。なぜなら、ビタミンEが、この患者のグループにおいて免疫応答に対してポジティブな影響を有することが報告されているからである[48]。これらはまた、エマルジョンの安定化を助けることができる、抗酸化特性も持つ[49]。好ましいα−トコフェロールは、DL−α−トコフェロールであり、そしてこのトコフェロールの好ましい塩はコハク酸塩である。コハク酸塩は、インビボでTNF関連リガンドと協働することが明らかにされている。
【0131】
C.サポニン処方物[参考文献30の第22章]
サポニン処方物もまた、本発明においてアジュバントとして使用することができる。サポニンは、多種多様な植物種の樹皮、葉、茎、根、およびさらには花でも見られる、ステロールグリコシドとトリテルペノイドグリコシドの不均質なグループである。Quillaia saponaria Molinaの木の樹皮由来のサポニンは、アジュバントとして広く研究されている。Smilax ornata(サルサプリラ(sarsaprilla))、Gypsophilla paniculata(ブライダルヴェール(brides veil))、およびSaponaria officianalis(サボンソウ(soap root))由来のサポニンはまた、商業的に入手することもできる。サポニンアジュバント処方物には、精製された処方物(例えば、QS21)、ならびに、脂質処方物(例えば、ISCOM)が含まれる。QS21は、Stimulon(商標)として販売されている。
【0132】
サポニン組成物は、HPLCおよびRP−HPLCを使用して精製されている。QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−B、およびQH−Cを含む、これらの技術を使用した特異的な精製された画分が同定されている。好ましくは、サポニンはQS21である。QS21の生産方法は、参考文献50に開示されている。サポニン処方物にはまた、コレステロールのようなステロールも含まれ得る[51]。
【0133】
サポニンとコレステロールの組み合わせを、免疫刺激複合体(ISCOM)と呼ばれる特有の粒子を形成させるために使用することができる[参考文献30の第23章]。ISCOMにはまた、典型的には、リン脂質(例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリン)も含まれる。任意の公知のサポニンをISCOMの中で使用することができる。好ましくは、ISCOMには、QuilA、QHA、およびQHCの1つまたは複数が含まれる。ISCOMについては、参考文献51〜53の中でさらに記載されている。状況に応じて、ISCOMSには、追加の界面活性剤は含まれない場合がある[54]。
【0134】
サポニン系のアジュバントの開発についての概要は、参考文献55および56の中で見ることができる。
【0135】
D.ヴィロソームおよびウイルス様粒子
ヴィロソームおよびウイルス様粒子(VLP)もまた、本発明においては、アジュバントとして使用することができる。これらの構造には、一般的には、状況に応じてリン脂質と組み合わされたか、またはリン脂質と一緒に処方された、ウイルスに由来する1種類または複数の種類のタンパク質が含まれる。これらは、一般的には、非病原性、非複製性であり、一般的には、天然のウイルスゲノムは全く含まれない。ウイルスタンパク質は、組み換えによって生産することができ、また、完全なウイルスから単離することもできる。ヴィロソームまたはVLPにおける使用に適しているこれらのウイルスタンパク質としては、以下に由来するタンパク質が挙げられる:インフルエンザウイルス(例えば、HAまたはNA)、B型肝炎ウイルス(例えば、コアタンパク質またはキャプシドタンパク質)、E型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、シンドビスウイルス、ロタウイルス、口蹄疫ウイルス、レトロウイルス、ノーウォークウイルス、ヒトパピローマウイルス、HIV、RNA−ファージ、Qβ−ファージ(例えば、外被タンパク質)、GA−ファージ、fr−ファージ、AP205ファージ、およびTy(例えば、レトロトランスポゾンTyタンパク質p1)。VLPは、参考文献57〜62の中でさらに議論されている。ヴィロソームは、例えば、参考文献63の中でさらに議論されている。
【0136】
E.細菌誘導体または微生物誘導体
本発明での使用に適しているアジュバントとしては、細菌誘導体または微生物誘導体、例えば、腸内細菌のリポ多糖体(LPS)の非毒性誘導体、リピドA誘導体、免疫刺激オリゴヌクレオチド、およびADP−リボシル化毒素、ならびにそれらの無毒化誘導体が挙げられる。
【0137】
LPSの非毒性誘導体としては、モノホスホリルリピドA(MPL)および3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)が挙げられる。3dMPLは、3脱−O−アシル化モノホスホリルリピドA(3 de−O−acylated monophosphoryl lipid A)の、4、5、または6のアシル化された鎖を有するものの混合物である。3脱−O−アシル化モノホスホリルリピドAの好ましい「小さい粒子」の形態は、参考文献64に開示されている。そのような3dMPLの「小さい粒子」は、0.22μmの膜を通して濾過滅菌するためには十分に小さい[66]。他の非毒性LPS誘導体としては、モノホスホリルリピドA模倣物、例えば、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体(例えば、RC−529)が挙げられる[65、66]。
【0138】
リピドA誘導体には、Escherichia coli由来のリピドAの誘導体、例えば、OM−174が含まれる。OM−174は、例えば、参考文献67および68に記載されている。
【0139】
本発明においてアジュバントとしての使用に適している免疫刺激オリゴヌクレオチドとしては、CpGモチーフを含むヌクレオチド配列(グアノシンに結合させられたホスフェートによって連結された非メチル化シトシンを含むジヌクレオチド配列)が挙げられる。二本鎖RNA、およびパリンドローム配列またはポリ(dG)配列を含むオリゴヌクレオチドもまた、免疫刺激性であることが示されている。
【0140】
CpG’には、ホスホロチオエート修飾のようなヌクレオチドの修飾/アナログが含まれ得、そしてこれは、二本鎖であってもまた一本鎖であってもよい。参考文献69、70、および71には、可能なアナログでの置換、例えば、グアノシンの2’−デオキシ−7−デアザグアノシンでの置換が開示されている。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、参考文献72〜77の中でさらに議論されている。
【0141】
CpG配列は、TLR9(例えば、モチーフGTCGTTまたはTTCGTT)に特異的であり得る[78]。CpG配列は、CpG−A ODNのように、Th1免疫応答を誘導することについて特異的である場合があり、また、CpG−B ODNのように、B細胞応答を誘導することについてより特異的である場合もある。CpG−A ODNとCpG−B ODNは、参考文献79〜81で議論されている。CpGはCpG−A ODNであることが好ましい。
【0142】
好ましくは、CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端が受容体認識のために利用しやすいように構築される。状況に応じて、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列を、「イムノマー」を形成させるために、それらの3’末端に結合させることができる。例えば、参考文献78、および82〜84を参照のこと。
【0143】
有用なCpGアジュバントはCpG7909であり、これは、ProMune(商標)(Coley Pharmaceutical Group,Inc.)としても公知である。別のものはCpG1826である。CpG配列を使用する代わりに、またはそれに加えて、TpG配列を使用することができ[85]、そしてこれらのオリゴヌクレオチドには、メチル化されていないCpGモチーフは含まれない場合がある。免疫刺激性オリゴヌクレオチドには、ピリミジンが多く含まれる場合がある。例えば、これには、2つ以上の連続するチミジンヌクレオチド(例えば、参考文献87に開示されているように、TTTT)が含まれ得、そして/またはこれは、>25%のチミジン(例えば、>35%、>40%、>50%、>60%、>80%など)を含むヌクレオチド組成を持ち得る。例えば、これには、2つ以上の連続するシトシンヌクレオチド(例えば、参考文献85に開示されているように、CCCC)が含まれ得、そして/またはこれは、>25%のシトシン(例えば、>35%、>40%、>50%、>60%、>80%など)を含むヌクレオチド組成を持ち得る。これらのオリゴヌクレオチドには、メチル化されていないCpGモチーフは含まれない場合がある。免疫刺激オリゴヌクレオチドには、典型的には、少なくとも20個のヌクレオチドが含まれるであろう。これらには、100個未満のヌクレオチドが含まれ得る。
【0144】
免疫刺激オリゴヌクレオチドに基づく特に有用なアジュバントは、IC−31(商標)として知られている[86]。したがって、本発明とともに使用されるアジュバントには、以下の混合物が含まれ得る:(i)少なくとも1つの(および好ましくは、複数の)CpIモチーフ(すなわち、ジヌクレオチドを形成させるためにイノシンに連結させられたシトシン)を含むオリゴヌクレオチド(例えば、15ヌクレオチド〜40ヌクレオチドの間)、ならびに、(ii)少なくとも1つの(および好ましくは、複数の)Lys−Arg−Lysトリペプチド配列(単数または複数)を含むオリゴペプチド(例えば、5アミノ酸〜20アミノ酸の間)のようなポリカチオン性ポリマー。オリゴヌクレオチドは、26マーの配列5’−(IC)13−3’(配列番号110)を含むデオキシヌクレオチドであり得る。ポリカチオン性ポリマーは、11マーのアミノ酸配列KLKLLLLLKLK(配列番号111)を含むペプチドであり得る。
【0145】
細菌のADP−リボシル化毒素およびその無毒化誘導体を、本発明においてアジュバントとして使用することができる。好ましくは、このタンパク質は、E.coli(E.coli熱不安定性腸毒素「LT」)、コレラ(「CT」)、または百日咳(「PT」)に由来する。無毒化されたADP−リボシル化毒素の粘膜アジュバントとしての使用は、参考文献87に記載されており、そして非経口アジュバントとしての使用は参考文献88に記載されている。毒素または類毒素は、好ましくは、ホロ毒素の形態であり、これには、AサブユニットとBサブユニットの両方が含まれる。Aサブユニットには、無毒化変異が含まれることが好ましい。Bサブユニットは変異していないことが好ましい。好ましくは、アジュバントは、無毒化されたLT変異体、例えば、LT−K63、LT−R72、およびLT−G192である。ADP−リボシル化毒素およびその無毒化誘導体(特に、LT−K63およびLT−R72)のアジュバントとしての使用は、参考文献89〜96の中で見ることができる。有用なCT変異体は、CT−E29Hである[97]。アミノ酸の置換についての数字での言及は、好ましくは、その中のアラインメントおよびアミノ酸ナンバリングの目的だけのためにその全体が引用により具体的に本明細書中に組み入れられる、参考文献98に示されるADP−リボシル化毒素のAサブユニットおよびBサブユニットのアラインメントに基づく。
【0146】
F.ヒトの免疫調節因子
本発明においてアジュバントとしての使用に適しているヒトの免疫調節因子としては、サイトカイン、例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12[99]など)[101]、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子が挙げられる。好ましい免疫調節因子はIL−12である。
【0147】
G.生体接着剤および粘膜接着剤
生体接着剤および粘膜接着剤もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。適切な生体接着剤としては、エステル化ヒアルロン酸マイクロスフェア[101]、または粘膜接着剤(例えば、ポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリサッカライド、およびカルボキシメチルセルロースの架橋誘導体)が挙げられる。キトサンおよびその誘導体もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る[102]。
【0148】
H.マイクロ粒子
マイクロ粒子もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。生体分解性であり、かつ非毒性である材料(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)から、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)とともに形成させられるマイクロ粒子(すなわち、直径約100nm〜約150μm、より好ましくは、直径約200nm〜約30μm、および最も好ましくは直径約500nm〜約10μmの粒子)が好ましく、状況に応じて、負に荷電した表面を持つように(例えば、SDSで)処理されるか、または正に荷電した表面を持つように(例えば、陽イオン性界面活性剤(例えば、CTAB)で)処理される。
【0149】
I.リポソーム(参考文献30の第13章および第14章)
アジュバントとしての使用に適しているリポソーム処方物の例は、参考文献103〜105に記載されている。
【0150】
J.ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステルの処方物
本発明での使用に適しているアジュバントとしては、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステルが挙げられる[106]。そのような処方物としては、さらに、オクトキシノールと組み合わせられたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤[107]、ならびに少なくとも一種のさらなる非イオン性界面活性剤(例えば、オクトキシノール)と組み合わせられたポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤またはポリオキシエチレンアルキルエステル界面活性剤[108]が挙げられる。好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群から選択される:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(ラウレス9)、ポリオキシエチレン−9−ステアリル(steoryl)エーテル、ポリオキシエチレン(polyoxytheylene)−8−ステアリル(steoryl)エーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。
【0151】
K.ホスファゼン
例えば、参考文献109および110に記載されているホスファゼン{例えば、ポリ[ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン](「PCPP」)}を使用することができる。
【0152】
L.ムラミルペプチド
本発明においてアジュバントとしての使用に適しているムラミルペプチドの例としては、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、およびN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミンMTP−PE)が挙げられる。
【0153】
M.イミダゾキノロン化合物
本発明においてアジュバントとしての使用に適しているイミダゾキノロン化合物の例としては、イミキモド(Imiquimod)(「R−837」)[111、112]、レシキモド(Resiquimod)(「R−848」)[113]、およびそれらのアナログ、ならびにそれらの塩(例えば、塩酸塩)が挙げられる。免疫刺激性のイミダゾキノリンについてのさらなる詳細は、参考文献114〜118の中で見ることができる。
【0154】
N.置換された尿素
アジュバントとして有用な置換された尿素としては、「ER 803058」、「ER 803732」、「ER 804053」、「ER 804058」、「ER 804059」、「ER 804442」、「ER 804680」、「ER 804764」、「ER 803022」、または「ER 804057」のような、参考文献119において定義されているような、式I、II、またはIIIの化合物、あるいはそれらの塩が挙げられ:
【0155】
【化1】

例えば、以下である:
【0156】
【化2】

O.さらなるアジュバント
本発明とともに使用することができるさらなるアジュバントとしては、以下が挙げられる:
・アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体、例えば、RC−529[120、121]。
【0157】
・参考文献122の中で開示されているもののような、チオセミカルバゾン化合物。活性化合物を処方する、製造する、およびスクリーニングする方法もまた、参考文献122の中で記載されている。チオセミカルバゾンは、サイトカイン(例えば、TNF−α)の生産のためのヒト末梢血単核細胞の刺激に特に有効である。
【0158】
・参考文献123に開示されているもののような、トリプタントリン化合物。活性化合物を処方する、製造する、およびスクリーニングする方法もまた、参考文献123の中で記載されている。チオセミカルバゾンは、サイトカイン(例えば、TNF−α)の生産のためのヒト末梢血単核細胞の刺激に特に有効である。
【0159】
・以下のようなヌクレオシドアナログ:(a)イサトラビン(Isatorabine)(ANA−245;7−チア−8−オキソグアノシン):
【0160】
【化3】

およびそのプロドラッグ;(b)ANA975;(c)ANA−025−1;(d)ANA380;(e)参考文献124〜126に開示されている化合物ロキソリビン(Loxoribine)(7−アリル−8−オキソグアノシン)[127]。
【0161】
・以下を含む、参考文献128に開示されている化合物:アシルピペラジン化合物、インドールジオン化合物、テトラヒドライソキノリン(THIQ)化合物、ベンゾシクロジオン化合物、アミノアザビニル化合物、アミノベンズイミダゾールキノリノン(ABIQ)化合物[129、130]、ヒドラフタルアミド化合物、ベンゾフェノン化合物、イソキサゾール化合物、ステロール化合物、キナジリノン化合物、ピロール化合物[131]、アントラキノン化合物、キノキサリン化合物、トリアジン化合物、ピラザロピリミジン化合物およびベンザゾール化合物[132]。
【0162】
・ホスフェートを含む非環式骨格に対して連結させられた脂質を含む化合物(例えば、TLR4アンタゴニストE5564)[133、134]:
・ポリオキシドニウムポリマー[135、136]または他のN−酸化ポリエチレンピペラジン誘導体。
【0163】
・メチルイノシン5’−モノホスフェート(「MIMP」)[137]。
【0164】
・ポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物[138]あるいはその薬学的に許容される塩または誘導体、例えば、以下の式を持つもの:
【0165】
【化4】

式中、Rは、水素、直鎖または分枝鎖である、非置換または置換の、飽和したまたは不飽和のアシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含む群より選択される。例として以下が挙げられるが、これらに限定されない:カスアリン(casuarine)、カスアリン−6−α−D−グルコピラノース、3−エピ−カスアリン、7−エピ−カスアリン、3,7−ジエピ−カスアリンなど。
【0166】
・CD1dリガンド、例えば、α−グリコシルセラミド[139〜146](例えば、α−ガラクトシルセラミド)、フィトスフィンゴシン含有α−グリコシルセラミド、OCH、KRN7000[(2S,3S,4R)−1−O−(α−D−ガラクトピラノシル)−2−(N−ヘキサコサノイルアミノ)−1,3,4−オクタデカントリオール]、CRONY−101、3”−O−スルホ−ガラクトシルセラミドなど。
【0167】
・γイヌリン[147]またはその誘導体、例えば、アルガムリン(algammulin)。
【0168】
【化5】

アジュバントの組み合わせ
本発明にはまた、上記で同定されたアジュバントの1つまたは複数の態様の組み合わせが含まれる場合もある。例えば、以下のアジュバント組成物を、本発明において使用することができる:(1)サポニンと水中油型エマルジョン[148];(2)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)[149];(3)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)+コレステロール;(4)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(状況に応じて+ステロール)[150];(5)3dMPLと、例えば、QS21および/または水中油型エマルジョンとの組み合わせ[151];(6)10%のスクアラン、0.4%のTween 80(商標)、5%のプルロニック−ブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含むSAF(1ミクロン未満のエマルジョンになるようにマイクロフルイダイズされるか、またはより大きな粒子サイズのエマルジョンが生じるようにボルテックスされるかのいずれか);(7)2%のスクアレン、0.2%のTween 80、ならびにモノホスホリル脂質A(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)、好ましくは、MPL+CWS(Detox(商標))からなる群からの1種類または複数の種類の細菌細胞壁成分を含む、Ribi(商標)アジュバントシステム(RAS)、(Ribi Immunochem);ならびに(8)1種類または複数の種類の無機塩(例えば、アルミニウム塩)+LPSの非毒性誘導体(例えば、3dMPL)。
【0169】
免疫刺激因子として作用する他の物質は、参考文献30の第7章に開示されている。
【0170】
水酸化アルミニウムアジュバントおよび/またはリン酸アルミニウムアジュバントの使用が特に好ましく、抗原は、一般的には、これらの塩に吸着される。リン酸カルシウムが別の好ましいアジュバントである。他の好ましいアジュバントの組み合わせとしては、Th1アジュバントとTh2アジュバントとの組み合わせ、例えば、CpGとalum、またはレシキモド(resiquimod)とalumの組み合わせが挙げられる。リン酸アルミニウムと3dMPLとの組み合わせを使用することができる。
【0171】
本発明の組成物は、細胞に媒介される免疫応答と、体液性の免疫応答の両方を誘発することができる。この免疫応答は、長期間持続する(例えば、中和)抗体、および肺炎球菌に曝されると直ちに反応することができる細胞に媒介される免疫を誘導するであろうことが好ましい。
【0172】
T細胞の2つのタイプ(CD4細胞とCD8細胞)は、一般的には、細胞媒介性の免疫と体液性免疫を開始および/または増大させるために必要であると考えられている。CD8 T細胞は、CD8共受容体を発現することができ、一般的には、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)と呼ばれている。CD8 T細胞は、MHCクラスI分子上に提示される抗原を認識するか、またはそれと相互作用することができる。
【0173】
CD4 T細胞は、CD4共受容体を発現することができ、一般的には、Tへルパー細胞と呼ばれている。CD4 T細胞は、MHCクラスII分子に結合した抗原性ペプチドを認識することができる。MHCクラスII分子と相互作用すると、CD4細胞は、サイトカインのような因子を分泌することができる。これらの分泌されたサイトカインは、B細胞、細胞傷害性T細胞、マクロファージ、および免疫応答に関与している他の細胞を活性化させることができる。ヘルパーT細胞またはCD4+細胞は、さらに、それらのサイトカインおよびエフェクター機能が異なる、以下のような2種類の機能的に異なるサブセットに分類することができる: TH1表現型およびTH2表現型。
【0174】
活性化されたTH1細胞は、細胞性免疫(抗原特異的CTLの生産の増大を含む)を増強し、したがって、細胞内感染に応答することにおいて特に有用である。活性化されたTH1細胞は、IL−2、IFN−γ、およびTNF−βの1つまたは複数を分泌することができる。TH1免疫応答は、マクロファージ、NK(ナチュラルキラー)細胞、およびCD8細胞傷害性T細胞(CTL)を活性化させることによって、局所炎症反応を生じ得る。TH1免疫応答はまた、IL−12でB細胞およびT細胞の増殖を刺激することによって、免疫応答を拡大させるようにも作用し得る。TH1によって刺激されたB細胞は、IgG2aを分泌し得る。
【0175】
活性化されたTH2細胞は、抗体の生産を増強させ、したがって、細胞外感染に応答することにおいて有用である。活性化されたTH2細胞は、IL−4、IL−5、IL−6、およびIL−10の1つまたは複数を分泌し得る。TH2免疫応答によっては、さらなる防御のための、IgG1、IgE、IgA、およびメモリーB細胞の生産が生じ得る。
【0176】
増強された免疫応答には、増強されたTH1免疫応答およびTH2免疫応答の1つまたは複数が含まれ得る。
【0177】
TH1免疫応答には、CTLの増加、TH1免疫応答と関係があるサイトカイン(例えば、IL−2、IFN−γ、およびTNF−β)の1つまたは複数の増加、活性化されたマクロファージの増加、NK活性の増大、あるいはIgG2aの生産の増大の1つまたは複数が含まれ得る。好ましくは、増強されたTH1免疫応答には、IgG2aの生産の増大が含まれるであろう。
【0178】
TH1免疫応答は、TH1アジュバントを使用して誘発され得る。TH1アジュバントは、一般的には、アジュバントを用いない抗原の免疫化と比較して、IgG2aの生産レベルの増大を誘発するであろう。本発明での使用に適しているTH1アジュバントとしては、例えば、サポニン処方物、ヴィロソーム、およびウイルス様粒子、腸内細菌のリポ多糖体(LPS)の非毒性誘導体、免疫刺激オリゴヌクレオチドが挙げられ得る。免疫刺激オリゴヌクレオチド(例えば、CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチド)が、本発明での使用に好ましいTH1アジュバントである。
【0179】
TH2免疫応答には、TH2免疫応答と関係があるサイトカイン(例えば、IL−4、IL−5、IL−6、およびIL−10)の1つまたは複数の増加、あるいは、IgG1、IgE、IgA、およびメモリーB細胞の生産の増大の1つまたは複数が含まれ得る。好ましくは、増強されたTH2免疫応答には、IgG1の生産の増大が含まれるであろう。
【0180】
TH2免疫応答は、TH2アジュバントを使用して誘発され得る。TH2アジュバントは、一般的には、アジュバントを用いない抗原の免疫化と比較して、IgG1の生産レベルの増大を誘発するであろう。本発明での使用に適しているTH2アジュバントとしては、例えば、無機物を含む組成物、オイルエマルジョン、ならびにADP−リボシル化毒素およびその無毒化誘導体が挙げられ得る。無機物を含む組成物(例えば、アルミニウム塩)が、本発明での使用に好ましいTH2アジュバントである。
【0181】
本発明に、TH1アジュバントとTH2アジュバントとの組み合わせを含む組成物が含まれることが好ましい。好ましくは、そのような組成物は、増強されたTH1応答と増強されたTH2応答を誘発する、すなわち、アジュバントを用いない免疫化と比較して、IgG1の生産とIgG2aの生産の両方の増大を誘発する。なおより好ましくは、TH1アジュバントとTH2アジュバントとの組み合わせを含む組成物は、単一のアジュバントでの免疫化と比較して(すなわち、TH1アジュバントだけでの免疫化、またはTH2アジュバントだけでの免疫化と比較して)、TH1免疫応答の増大および/またはTH2免疫応答の増大を誘発する。
【0182】
免疫応答は、TH1免疫応答およびTH2応答の一方または両方であり得る。好ましくは、免疫応答により、増強されたTH1応答および増強されたTH2応答の一方または両方が提供される。
【0183】
増強された免疫応答は、全身性免疫応答および粘膜免疫応答の一方または両方であり得る。好ましくは、免疫応答により、増強された全身性免疫応答および増強された粘膜免疫応答の一方または両方が提供される。好ましくは、粘膜免疫応答はTH2免疫応答である。好ましくは、粘膜免疫応答には、IgAの生産の増大が含まれる。
【0184】
E.coliは、多数の解剖学的部位で疾患を引き起こす可能性があり[4]、したがって、本発明の組成物は、様々な形態で調製され得る。例えば、組成物は、注射剤として、液体溶液または懸濁液のいずれかとして調製することができる。注射前の、液体媒体中の溶液または懸濁液に適している固体形態(例えば、凍結乾燥組成物または噴霧凍結乾燥組成物)もまた、調製することができる。組成物は、局所投与のために、例えば、軟膏、クリーム剤、または散剤として調製される場合もある。組成物は、経口投与のために、例えば、錠剤またはカプセル剤として、噴霧剤として、あるいはシロップ剤として(状況に応じて、香味づけされたもの)調製される場合もある。組成物は、肺投与のために、例えば、微粉末を使用する吸入剤または噴霧剤として、調製される場合もある。組成物は、坐剤またはペッサリーとして調製される場合もある。組成物は、鼻腔内投与、耳投与、または眼投与のために、例えば、滴剤として調製され得る。組成物は、組み合わせられた組成物が患者への投与の直前に再構成されるように設計された、キットの形態であり得る。そのようなキットには、液体形態の中にある1つまたは複数の抗原と、1つまたは複数の凍結乾燥させられた抗原とが含まれる場合がある。
【0185】
組成物が、使用前に即座に調製され(例えば、1種類の成分が凍結乾燥させられた形態で存在する場合)、そしてキットとして提示される場合には、このキットには2つのバイアルが含まれるか、または、キットには、1つの既に充填された注射器と1つのバイアルが含まれ、ここで、注射器の内容物は、注射前にバイアルの内容物を再度活性化させるために使用される場合もある。
【0186】
ワクチンとして使用される免疫原性組成物には、免疫学的有効量の抗原(単数または複数)、ならびに、任意の他の成分が必要に応じて含まれる。「免疫学的有効量」によっては、単回用量または一連のものの一部としてのいずれかでの個体へのその量の投与が、処置または予防に有効であることが意味される。この量は、処置される個体の健康状態および身体状態、年齢、処置される個体の分類群(例えば、ヒト以外の霊長類、霊長類など)、抗体を合成する個体の免疫系の能力、所望される防御の程度、ワクチンの処方、医学的状況についての処置を行う医師による評価、および他の関連する要因に応じて様々である。この量は、日常的に行われている試験を通じて決定することができる比較的広い範囲に入るであろうと予想される。
【0187】
処置方法、およびワクチンの投与
本発明によってはまた、有効量の本発明の組成物を投与する工程を含む、哺乳動物において免疫応答を惹起させるための方法が提供される。免疫応答は、好ましくは防御的であり、抗体および/または細胞媒介性の免疫が含まれることが好ましい。この方法によっては、追加免疫応答(booster response)が惹起され得る。
【0188】
本発明によってはまた、医薬品として使用される、例えば、哺乳動物において免疫応答を惹起させるために使用される、本発明のポリペプチドが提供される。
【0189】
本発明によってはまた、哺乳動物において免疫応答を惹起させるための医薬品の製造における本発明のポリペプチドの使用も提供される。
【0190】
本発明によってはまた、本発明の免疫原性組成物が予め充填されている送達デバイスも提供される。
【0191】
これらの使用および方法によって哺乳動物の中で免疫応答を惹起させることにより、哺乳動物を、ExPEC株および非ExPEC株を含むE.coli感染に対して防御することができる。本発明は、腸内病原型(例えば、EPEC、EAEC、EIEC、ETECおよびDAEC病原型)を含む病原性E.coliに対する広範囲に及ぶ防御を提供するために特に有用である。したがって、哺乳動物は、以下を含むがこれらに限定されない疾患に対して防御され得る:腹膜炎、腎盂腎炎、膀胱炎、心内膜炎、前立腺炎、尿管感染症(UTI)、髄膜炎(特に、新生児髄膜炎)、敗血症(またはSIRS)、脱水症、肺炎、下痢(乳児下痢、旅行者下痢(travellers’ diarrhea)、急性下痢、持続性下痢など)、細菌性赤痢、溶血性尿毒症症候群(HUS)、心膜炎、細菌尿症など。
【0192】
配列番号21、30、35、40、49、54、59、68および73、ならびにそれらの他の無毒化改変体は、EAEC病原型に対して免疫化するのに、したがって、下痢(急性および慢性の両方)の予防に特に有用である。
【0193】
配列番号22、28、36、41、47、55、56、60、66、74、および75ならびにこれらの他の無毒化改変体は、UPEC病原型に対する免疫化、したがって、UTI(腎盂腎炎、膀胱炎(急性と再発性の両方)、腹膜炎、カテーテルに関連するUTI、前立腺炎(prostatisis)、細菌尿症(無症候性細菌尿症を含む)が含まれるが、これらに限定されない)の予防に特に有用である。
【0194】
配列番号23、42、および61ならびにこれらの他の無毒化改変体は、EIEC病原型に対する免疫化、したがって、赤痢(特に、細菌性赤痢)およびHUS(例えば、小児の)の予防に特に有用である。
【0195】
配列番号24、27、29、43、46、48、62、65、および67ならびにこれらの他の無毒化改変体は、ETEC病原型に対する免疫化、したがって、下痢(例えば、旅行者下痢および乳児下痢)の予防に特に有用である。
【0196】
配列番号25、26、33、34、45、53、63、64、および72ならびにこれらの他の無毒化改変体は、EAEC病原型に対する免疫化、したがって、下痢(急性と慢性の両方)の予防に特に有用である。
【0197】
配列番号79、85、93および94、ならびにそれらの他の無毒化改変体は、UPEC病原型に対して免疫化するのに、したがって、以下を含むが、これらに限定されないUTIの予防に特に有用である:腎盂腎炎,膀胱炎(急性および再発の両方)、腹膜炎、カテーテルに関連するUTI、前立腺炎(prostatisis)、および細菌尿症(無症候性細菌尿症を含む)。
【0198】
配列番号80およびその他の無毒化改変体は、EIEC病原型に対して免疫化するのに、したがって、赤痢(特に、細菌性赤痢)およびHUS(例えば、小児において)の予防に、特に有用である。
【0199】
配列番号81、84および86、ならびにそれらの他の無毒化改変体は、ETEC病原型に対して免疫化するのに、したがって、下痢(旅行者下痢、および乳児下痢を含む)の予防に、特に有用である。
【0200】
配列番号82、83および91、ならびにそれらの他の無毒化改変体は、EPEC病原型に対して免疫化するのに、したがって、下痢(乳児下痢を含む)の予防に、特に有用である。
【0201】
配列番号21、30、35、40、49、54、59、68、および73ならびにこれらの他の改変体は、EAEC病原型に対する免疫化、したがって、下痢(急性と慢性の両方)の予防に特に有用である。
【0202】
配列番号22、28、36、41、47、55、56、60、66、74、および75ならびにこれらの他の改変体は、UPEC病原型に対する免疫化、したがって、UTI(腎盂腎炎、膀胱炎(急性と再発性の両方)、腹膜炎、カテーテルに関連するUTI、前立腺炎、細菌尿症(無症候性細菌尿症を含む)が含まれるが、これらに限定されない)の予防に特に有用である。
【0203】
配列番号23、42、および61ならびにこれらの他の改変体は、EIEC病原型に対する免疫化、したがって、赤痢(特に、細菌性赤痢)およびHUS(例えば、小児の)の予防に特に有用である。
【0204】
配列番号24、27、29、43、46、48、62、65、および67ならびにこれらの他の改変体は、ETEC病原型に対する免疫化、したがって、下痢(例えば、旅行者下痢および乳児下痢)の予防に特に有用である。
【0205】
配列番号25、26、33、34、45、53、63、64、および72ならびにこれらの他の改変体は、EAEC病原型に対する免疫化、したがって、下痢(急性と慢性の両方)の予防に特に有用である。
【0206】
配列番号79、85、93、および94ならびにこれらの他のものは、UPEC病原型に対する免疫化、したがって、UTI(腎盂腎炎、膀胱炎(急性と再発性の両方)、腹膜炎、カテーテルに関連するUTI、前立腺炎、細菌尿症(無症候性細菌尿症を含む)が含まれるが、これらに限定されない)の予防に特に有用である。
【0207】
配列番号80ならびにこの他の改変体は、EIEC病原型に対する免疫化、したがって、赤痢(特に、細菌性赤痢)およびHUS(例えば、小児の)の予防に特に有用である。
【0208】
配列番号81、84、および86ならびにこれらの他の改変体は、ETEC病原型に対する免疫化、したがって、下痢(例えば、旅行者下痢および乳児下痢)の予防に特に有用である。
【0209】
配列番号82、83および91、ならびにそれらの他の改変体は、EPEC病原型に対して免疫化するのに、したがって、下痢(乳児下痢を含む)の予防に、特に有用である。
【0210】
哺乳動物は、好ましくはヒトであるが、例えば、ウシ、ブタ、ニワトリ、ネコ、またはイヌでもあり得る。なぜなら、E.coli病はまた、これらの種においても問題であるからである。[4]。ワクチンが予防的用途のためのものである場合には、ヒトは、好ましくは、子供(例えば、幼児または乳児)であるか、あるいは十代の若者であり、ワクチンが治療的用途のためのものである場合には、ヒトは、好ましくは、十代の若者または成人である。子供用に意図されるワクチンはまた、例えば、安全性、投与量、免疫原性などを評価するために、成人にも投与され得る。
【0211】
治療的処置の効力をチェックする1つの方法には、本発明の組成物の投与後にE.coli感染をモニタリングすることが含まれる。予防的処置の効力をチェックする1つの方法には、組成物の投与後に、本発明の組成物中の抗原に対する免疫応答を、全身的に(例えば、IgG1およびIgG2aの生産レベルをモニタリングする)および/または粘膜的に(例えば、IgAの生産レベルをモニタリングする)モニタリングすることが含まれる。典型的には、抗原特異的血清抗体応答は、免疫化後、抗原投与前に決定されるが、抗原特異的粘膜抗体応答は、免疫化後、抗原投与後に決定される。
【0212】
本発明の組成物の免疫原性を評価する別の方法は、免疫ブロットおよび/またはマイクロアレイによって患者の血清または粘膜分泌物をスクリーニングするために、組み換えによってタンパク質を発現させることである。タンパク質と患者の試料との間でのポジティブな反応は、その患者が、問われているタンパク質に対する免疫応答を確立させていることを示す。この方法はまた、免疫優勢抗原および/または抗原内のエピトープを同定するために使用され得る。
【0213】
ワクチン組成物の効力はまた、ワクチン組成物を用いてE.coli感染の動物モデル(例えば、モルモットまたはマウス)に抗原投与することによって、インビボで決定することもできる。ExPECおよび致死性敗血症のマウスモデルが、参考文献152に記載されている。コットンラットモデルが、参考文献153に開示されている。
【0214】
本発明の組成物は、一般的には、患者に直接投与されるであろう。直接送達は、非経口注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、もしくは組織の間隙腔に対して)によって、または経直腸、経口(例えば、錠剤、噴霧剤)、経膣、局所、経皮、もしくは鼻腔内、眼、経耳、肺もしくは他の粘膜投与によって行われ得る。また、該新規な直接送達形態として、食品における本明細書中に開示したポリペプチドのトランスジェニック発現(例えば、イモにおけるトランスジェニック発現)も挙げられ得る。
【0215】
本発明は、全身性免疫および/または粘膜免疫を誘発するために、好ましくは、増強された全身性免疫および/または粘膜免疫を誘発するために使用され得る。
【0216】
好ましくは、増強された全身性免疫および/または粘膜免疫は、増強されたTH1免疫応答および/またはTH2免疫応答において反映される。好ましくは、増強された免疫応答には、IgG1および/またはIgG2aおよび/またはIgAの生産の増大が含まれる。
【0217】
投薬は、単回用量スケジュールまたは複数回用量スケジュールによって行うことができる。複数回用量は、初回免疫化スケジュールにおいて、および/または追加免疫化スケジュールにおいて使用され得る。複数回用量スケジュールでは、様々な用量が、同じ経路または異なる経路(例えば、非経口での初回と粘膜からの追加、粘膜からの初回と非経口での追加など)によって投与され得る。複数回用量は、典型的には、少なくとも1週間の間隔をあけて(例えば、約2週間、約3週間、約4週間、約6週間、約8週間、約10週間、約12週間、約16週間など)投与されるであろう。
【0218】
本発明のワクチンは、子供および成人の両方を処置するために使用され得る。したがって、ヒト患者は、1歳未満、1歳〜5歳、5歳〜15歳、15歳〜55歳、または少なくとも55歳であり得る。ワクチンが投与される好ましい患者は、高齢(例えば、≧50歳、≧60歳、および好ましくは、≧65歳)、若い(例えば、≦5歳)、入院患者、医療従事者、兵役に従事している者および軍人、妊婦、慢性疾患患者、または免疫不全患者である。ワクチンは、これらのグループについてのみ適しているわけではなく、集団においてより一般的に使用され得る。
【0219】
本発明のワクチンは、外科手術が予想される患者、または他の入院患者に特に有用である。これらはまた、カテーテルが挿入されるであろう患者にも有用である。これらはまた、思春期の女性(例えば、11歳〜18歳)および慢性尿管感染の患者においても有用である。
【0220】
本発明のワクチンは、他のワクチンと実質的に同時に(例えば、同じ医療的診察、または医療の専門家もしくは予防接種センターを訪れた際に)、例えば、麻疹ワクチン、おたふく風邪ワクチン、風疹ワクチン、MMRワクチン、水痘ワクチン、MMRVワクチン、ジフテリアワクチン、破傷風ワクチン、百日咳ワクチン、DTPワクチン、結合型H.influenzae b型ワクチン、不活化ポリオウイルスワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン、結合型髄膜炎菌ワクチン(例えば、4価A−C−W135−Yワクチン)、呼吸器合胞体ウイルスワクチンなどと実質的に同時に、患者に投与され得る。
【0221】
核酸での免疫化
上記に記載された免疫原性組成物には、ポリペプチド抗原が含まれる。しかし、全ての場合において、ポリペプチド抗原は、そのようなポリペプチドをコードする核酸(典型的には、DNA)に置き換えることができ、核酸での免疫化に基づく組成物、方法、および使用が提供される。核酸での免疫化は、現在では、発展済みの分野である(例えば、参考文献154〜161などを参照のこと)。
【0222】
免疫原をコードする核酸は、患者への送達後にインビボで発現され、その後、発現された免疫原は、免疫系を刺激する。活性成分は、典型的には、以下を含む核酸ベクターの形態をとるであろう:(i)プロモーター;(ii)プロモーターに作動可能であるように連結させられた免疫原をコードする配列;および状況に応じて、(iii)選択マーカー。好ましいベクターにはさらに以下が含まれ得る:(iv)複製起点;および(v)(ii)に対して下流に、かつ作動可能であるように連結させられた転写終結点。一般的には、(i)と(v)は真核生物のものであろう。そして(iii)と(iv)は原核生物のものであろう。
【0223】
好ましいプロモーターは、ウイルスプロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)に由来するウイルスプロモーター)である。ベクターにはまた、プロモーターに加えて転写調節配列(例えば、エンハンサー)も含まれ得る。そしてこれは、プロモーターと機能的であるように相互作用する。好ましいベクターには、最初期CMVエンハンサー/プロモーターが含まれ、より好ましいベクターには、CMVイントロンAも含まれる。プロモーターは、免疫原をコードする下流の配列に作動可能であるように連結される。その結果、免疫原をコードする配列の発現は、プロモーターの制御下になる。
【0224】
マーカーが使用される場合は、これは、好ましくは、微生物宿主の中(例えば、原核生物の中、細菌の中、酵母の中)で機能するものであることが好ましい。マーカーは、好ましくは、原核生物の選択マーカー(例えば、原核生物のプロモーターの制御下で転写されるもの)である。便宜上、典型的なマーカーは、抗生物質耐性遺伝子である。
【0225】
本発明のベクターは、好ましくは、自立複製するエピソーム性または染色体外ベクター(例えば、プラスミド)である。
【0226】
本発明のベクターには、好ましくは、複製起点が含まれる。複製起点は、原核生物の中では活性であり、真核生物の中では活性ではないことが好ましい。
【0227】
したがって、好ましいベクターには、ベクターを選択するための原核生物のマーカー、原核生物の複製起点、しかし、免疫原をコードする配列の転写を駆動するための真核生物のプロモーターが含まれる。したがって、ベクターは、(a)原核生物宿主の中では、ポリペプチドを発現させることなく増幅され、そして選択されるであろうが、(b)真核生物宿主の中では、増幅されることなく発現されるであろう。この配置は、核酸免疫化ベクターについては理想的である。
【0228】
本発明のベクターには、コード配列の下流に、真核生物の転写終結配列が含まれ得る。これは、転写レベルを増強することができる。コード配列がそれ自体のポリアデニル化配列を持たない場合には、本発明のベクターには、好ましくは、ポリアデニル化配列が含まれる。好ましいポリアデニル化配列は、ウシ成長ホルモン由来のポリアデニル化配列である。
【0229】
本発明のベクターには、マルチクローニング部位が含まれ得る。
【0230】
免疫原およびマーカーをコードする配列に加えて、ベクターには、第2の真核生物のコード配列が含まれ得る。ベクターにはまた、免疫原と同じ転写物からの第2の真核生物ポリペプチドの翻訳を可能にするために、上記第2の配列の上流にあるIRESも含まれ得る。あるいは、免疫原をコードする配列は、IRESの下流にある場合もある。
【0231】
本発明のベクターには、メチル化されていないCpGモチーフ(例えば、2つの5’プリンと2つの3’ピリミジンが隣接している、グアノシンと先行するシトシンを共通して持つメチル化されていないDNA配列)が含まれ得る。それらのメチル化されていない形態の中では、これらのDNAモチーフは、いくつかのタイプの免疫細胞の強力な刺激因子であることが明らかにされている。
【0232】
ベクターは、標的化された方法で送達され得る。受容体に媒介されるDNA送達技術は、例えば、参考文献162〜167に記載されている。核酸を含む治療用組成物は、遺伝子治療プロトコールにおいては、局所投与について約100ng〜約200mgのDNAの範囲で投与される。約500ng〜約50mg、約1μg〜約2mg、約5μg〜約500μg、そして約20μg〜約100μgのDNAの濃度範囲もまた、遺伝子治療プロトコールの際に使用することができる。最終的な効力のために必要な投与量に影響を及ぼすであろう、作用方法(例えば、コードされる遺伝子産物のレベルを増強するかまたは阻害するための)、ならびに形質転換および発現の効率のような要因が考慮される。より広い組織領域にわたるより高い発現が所望される場合には、ポジティブな治療結果が得られるように、連続投与プロトコールで再度投与されるより多量または同じ量のベクター、あるいは異なる隣接組織部分または近い組織部分に対する数回の投与が必要とされ得る。全ての場合において、臨床試験において日常的に行われる実験によって、最適な治療結果のための特異的な範囲が決定されるであろう。
【0233】
ベクターは、遺伝子送達媒体を使用して送達することができる。遺伝子送達媒体は、ウイルス起源のものであっても、また、ウイルス以外の起源のものであってもよい(一般的には、参考文献168〜171を参照のこと)。
【0234】
所望される核酸の送達および所望される細胞の中での発現のためのウイルスをベースとするベクターは当該分野で周知である。例示的なウイルスをベースとする媒体としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:組み換え体レトロウイルス(例えば、参考文献172〜182)、アルファウイルスをベースとするベクター(例えば、シンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR−67;ATCC VR−1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR−373;ATCC VR−1246)、およびベネズエラウマ脳炎ウイルス(ATCC VR−923;ATCC VR−1250;ATCC VR−1249;ATCC VR−532);これらのウイルスのハイブリッドまたはキメラも使用され得る)、ポックスウイルスベクター(例えば、ワクシニア、鶏痘、カナリア痘、改変ワクシニアアンカラ(modified vaccinia Ankara)など)、アデノウイルスベクター、ならびにアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、参考文献183〜188を参照のこと)。死滅させられたアデノウイルスに連結させられたDNAの投与[189]もまた使用することができる。
【0235】
以下を含むが、これらに限定されない、非ウイルス送達媒体および方法もまた使用することができる:死滅させられたアデノウイルスだけに連結させられたか連結させられていないポリカチオン性縮合DNA[例えば、189]、リガンドに連結させられたDNA[190]、真核生物の細胞送達媒体細胞[例えば、参考文献191〜195]、および核の電荷の中和または細胞膜との融合。裸のDNAもまた、使用することができる。例示的な裸のDNAの導入方法は、参考文献196および197に記載されている。遺伝子送達媒体として作用し得るリポソーム(例えば、免疫リポソーム)は、参考文献198〜202に記載されている。さらに別のアプローチは、参考文献203および204に記載されている。
【0236】
使用に適しているさらなる非ウイルス送達としては、参考文献204に記載されているアプローチのような、機械的送達システムが挙げられる。さらに、コード配列とそのような発現産物は、光重合させられたヒドロゲル材料の沈着、または電離放射線の使用によって送達することができる[例えば、参考文献205および206]。コード配列の送達に使用することができる遺伝子送達の他の従来の方法としては、例えば、携帯型遺伝子導入粒子銃(hand−held gene transfer particle gun)の使用[207]または導入された遺伝子を活性化させるための電離放射線の使用[205および206]が挙げられる。
【0237】
PLG{ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)}マイクロ粒子を使用するDNAの送達が、特に好ましい方法であり、例えば、状況に応じて、負に帯電した表面を持つように処理された(例えば、SDSで処理される)または正に帯電した表面を持つように処理された(例えば、CTABのような陽イオン性界面活性剤で処理される)、マイクロ粒子への吸着によって行われる。
【0238】
一般論
本発明の実施では、他の場所に明記されない限りは、当業者の能力の範囲内である、化学、生化学、分子生物学、免疫学、および薬理学の従来の方法が使用されるであろう。そのような技術は、文献の中で十分に説明されている。例えば、参考文献208〜215などを参照のこと。
【0239】
用語「〜を含む(comprising)」には、「〜を含む(including)」ならびに「〜からなる(consisting)」が含まれる。例えば、Xを「含む」組成物は、Xのみからなる場合があり、また、付加的な他のものを含む場合もある(例えば、X+Y)。
【0240】
数値xに関する用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
【0241】
「GI」ナンバリングが本明細書中で使用される。GI番号、すなわち「GenInfo Identifier」は、配列がそのデータベースに加えられた時に、NCBIによって処理されたそれぞれの配列の記録に対して連続して割り当てられる一連の数字である。GI番号には、その配列記録の登録番号との類似性はない。配列がアップデートされると(例えば、修正のために、またはさらなる注釈もしくは情報を加えるために)、これには新しいGI番号が与えられる。したがって、与えられたGI番号と組み合わせられた配列は変わることはない。
【0242】
2つのアミノ酸配列間での配列同一性の割合(%)の言及は、アラインメントされた場合に、2つの配列を比較して同じであるアミノ酸の割合(%)を意味する。このアラインメントと相同性または配列同一性の割合(%)は、当該分野で公知のソフトウェアプログラム(例えば、参考文献216のセクション7.7.18の中で記載されているもの)を使用して決定することができる。好ましいアラインメントは、Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって、12のギャップ解放ペナルティー、および2のギャップ伸長ペナルティー、62のBLOSUMマトリックスを用いるアフィンギャップ検索を使用して決定される。Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムは、参考文献217に開示されている。
【0243】
当業者は、「単離された」が、その天然の状態から「人の手によって」変化させられたことを意味する。すなわち、それが自然界に存在している場合には、これは変化しているか、もしくはそのもともとの環境から取り出されているか、またはそれらの両方である。例えば、生存している生命体の中に自然界において存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、そのような生存している生命体の中にある場合には「単離され」ていないが、同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、その自然な状態において一緒に存在している物質から分離されている場合には、この用語が本開示において使用される限りは、「単離され」ている。さらに、形質転換、遺伝子操作によって、または任意の他の組み換え方法によって生命体に導入されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、そのような形質転換、遺伝子操作、または他の組み換え方法によって、自然界に存在している生命体と別の方法では区別することができない生命体を生じる場合を除いて、それがなおも上記生命体の中に存在する場合でも、「単離された」と理解される。この生命体は、生存している場合も、また生存していない場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0244】
【図1−1】図1は、配列番号2〜配列番号16のCLUSTALWアラインメントを示す。同じ免疫原性を実質的に維持しつつ、溶解度を増大させるために除去され得るN末端領域が、アラインメントの下部に示される。gly−serリンカーまたはgly−ser領域までのN末端領域は「G」で示され、プロリンリッチ領域は「P」で示される。
【図1−2】図1は、配列番号2〜配列番号16のCLUSTALWアラインメントを示す。同じ免疫原性を実質的に維持しつつ、溶解度を増大させるために除去され得るN末端領域が、アラインメントの下部に示される。gly−serリンカーまたはgly−ser領域までのN末端領域は「G」で示され、プロリンリッチ領域は「P」で示される。
【図1−3】図1は、配列番号2〜配列番号16のCLUSTALWアラインメントを示す。同じ免疫原性を実質的に維持しつつ、溶解度を増大させるために除去され得るN末端領域が、アラインメントの下部に示される。gly−serリンカーまたはgly−ser領域までのN末端領域は「G」で示され、プロリンリッチ領域は「P」で示される。
【図1−4】図1は、配列番号2〜配列番号16のCLUSTALWアラインメントを示す。同じ免疫原性を実質的に維持しつつ、溶解度を増大させるために除去され得るN末端領域が、アラインメントの下部に示される。gly−serリンカーまたはgly−ser領域までのN末端領域は「G」で示され、プロリンリッチ領域は「P」で示される。
【図1−5】図1は、配列番号2〜配列番号16のCLUSTALWアラインメントを示す。同じ免疫原性を実質的に維持しつつ、溶解度を増大させるために除去され得るN末端領域が、アラインメントの下部に示される。gly−serリンカーまたはgly−ser領域までのN末端領域は「G」で示され、プロリンリッチ領域は「P」で示される。
【図1−6】図1は、配列番号2〜配列番号16のCLUSTALWアラインメントを示す。同じ免疫原性を実質的に維持しつつ、溶解度を増大させるために除去され得るN末端領域が、アラインメントの下部に示される。gly−serリンカーまたはgly−ser領域までのN末端領域は「G」で示され、プロリンリッチ領域は「P」で示される。
【図1−7】図1は、配列番号2〜配列番号16のCLUSTALWアラインメントを示す。同じ免疫原性を実質的に維持しつつ、溶解度を増大させるために除去され得るN末端領域が、アラインメントの下部に示される。gly−serリンカーまたはgly−ser領域までのN末端領域は「G」で示され、プロリンリッチ領域は「P」で示される。
【図1−8】図1は、配列番号2〜配列番号16のCLUSTALWアラインメントを示す。同じ免疫原性を実質的に維持しつつ、溶解度を増大させるために除去され得るN末端領域が、アラインメントの下部に示される。gly−serリンカーまたはgly−ser領域までのN末端領域は「G」で示され、プロリンリッチ領域は「P」で示される。
【図2】図2は、配列の対の間でのアミノ酸同一性を示す。
【図3】図3は、DTTの非存在下で見ることができる高MWのバンドを持つ、精製されたタンパク質のゲル分析を示す。
【図4】図4は、病原性E.coli株と非病原性E.coli株の、抗AcfD(orf3526)血清を使用したウェスタンブロットを示す。パネル(A)は、全細胞溶解物のウェスタンブロットである。パネル(B)は、培養物に由来する上清のウェスタンブロットである。パネル(A)および(B)のそれぞれのレーンは、左から右に、以下のとおりである:レーンM−パネル(A)の左側に沿って示した各々のマーカータンパク質のkDaでの分子量とともに、マーカータンパク質;1−IHE3034;2−CFT073;3−536;4−BL21;5−MG1655;6−W3110;7−NISSLE1917;8−IHE3034ΔAcfD。分析から観察されるように、病原性株(IHE3034、レーン1;536、レーン3)は、AcfD(orf3526)を発現し、分泌するが、非病原性株(MG1655、レーン5;W3110、レーン6;Nissle 1917、レーン7)は、タンパク質を発現するが、その分泌が欠失している。株CFT073(レーン2)およびIHE3034ΔAcfD(レーン8)は、ネガティブ対照として使用される。なぜなら、これらはAcfD(orf3526)遺伝子を持たないからである。BL21株(レーン4)は、ポジティブ対照として使用される研究室株である。なぜなら、これは、AcfD(orf3526)を発現し、分泌するからである。
【図5】図5は、AcfD(orf3526)タンパク質とこのタンパク質の様々な断片の溶解度の比較を示す。パネル(A)は、上清(それぞれのタンパク質または断片について右側のレーン)に対してペレット(それぞれのタンパク質または断片について左側のレーン)を比較する、37℃での試料のSDS−PAGE勾配ゲル(4%〜12%のMOPSバッファー)である。レーンは、左から右に、以下のとおりである:分子量マーカー(191kDa、97kDa、および64kDaのバンドが示される)、挿入物を含まないpET発現ベクターで形質転換された対照の細菌、3526(ヒスタグ、リーダーペプチドが除去されている)の細菌での発現、L3526(ヒスタグ、全長)の細菌での発現、L3526−2stop(Hisタグの前に終止コドンを有する全長)の細菌での発現、ΔG3526(ヒスタグ、可堯性グリシン−セリンリンカーまでのAcfD(orf3526)のN末端の除去)の細菌での発現、およびΔP3526(ヒスタグ+プロリンリッチ領域全体のAcfD(orf3526)のN末端領域の除去)の細菌での発現。パネル(B)は、パネル(A)のレーンと同じ順序にしたがう、25℃での試料のSDS−PAGE勾配ゲル(4%〜12%のMOPSバッファー)である。
【図6】図6は、AcfD(orf3526)タンパク質およびこのタンパク質の様々な断片の発現と精製の比較を示す。パネル(A)は、様々な精製段階に由来する画分(faction)を比較している、25℃で培養された3526(ヒスタグ、リーダーペプチドが除去されている)を発現する細菌由来の試料のSDS−PAGEゲル(12%のMOPSバッファー)である。レーンは、左から右に、以下の通りである:M:分子量マーカー(191kDa、97kDa、および64kDaのバンドが示される)、TOT:全細菌溶解物、INS:細菌溶解物の不溶性画分、SM:細菌溶解物の可溶性画分、FT:ニッケルカラムからのフロースルー;500mMのイミダゾールバッファーを用いたE1、E2、およびE3の3つの溶離。パネル(B)は、様々な精製段階に由来する画分を比較している、25℃で培養されたΔG3526(ヒスタグ+可堯性グリシン−セリンリンカーまでのAcfD(orf3526)のN末端の除去)を発現している細菌由来の試料のSDS−PAGEゲル(12%のMOPSバッファー)である。レーンは、左から右に、以下の通りである:M:分子量マーカー(191kDa、97kDa、および64kDaのバンドが示される)、TOT:全細菌溶解物、INS:細菌溶解物の不溶性画分、SM:細菌溶解物の可溶性画分、FT:ニッケルカラムからのフロースルー;500mMのイミダゾールバッファーを用いたE1、E2、およびE3の3つの溶離。パネル(C)は、様々な精製段階に由来する画分を比較している、25℃で培養されたΔP3526(ヒスタグ、プロリンリッチ領域全体のAcfD(orf3526)のN末端の除去)を発現している細菌由来の試料のSDS−PAGEゲル(12%のMOPSバッファー)である。レーンは、左から右に、以下の通りである:M:分子量マーカー(191kDa、97kDa、および64kDaのバンドが示される)、TOT:全細菌溶解物、INS:細菌溶解物の不溶性画分、SM:細菌溶解物の可溶性画分、FT:ニッケルカラムからのフロースルー、500mMのイミダゾールバッファーを用いた、E1、E2、およびE3の3つの溶離。
【図7】図7は、配列のさらに別の対の間でのアミノ酸同一性を示す。16種類の腸管出血性E.coli(EHEC)が、AcfD(orf3526)遺伝子を持つとは見出されなかった(示されていない)。(示される場合)配列は、左から右に、または上から下に、以下のとおりである:10種類の非病原性株または片利共生的株(1:片利共生的E.coli株、2:DH10B株、3:MG1655株、4:W3110株(配列番号14);5:HS株(配列番号13);9:別の片利共生的E.coli株;および10:なお別の片利共生的E.coli株);3種類のNMEC株(1:NMEC株RS218;2:NMEC株IHE3034(配列番号2);および3:NMEC株S88(配列番号141));1種類のAPEC株(1:APECO1株);6種類のUPEC株(2:UPEC株536(配列番号4);3:UTI89;4:UPEC株F11(配列番号10);5:UPEC株IAI39(配列番号133);および6:UPEC株UMN026(配列番号137));3種類のEAEC株(1:EAEC株101−1(配列番号3);2:EAEC株O42(配列番号12;および3:EAEC株55989(配列番号129));1種類のEIEC株(1:EIEC株53638(配列番号5));4種類のEPEC株(2:EPEC株E22(配列番号8));3:EPEC株E2348/69(配列番号16);および4:EPEC株E110019(配列番号7));3種類のETEC株(1:ETEC株B7A(配列番号6);2:ETEC株E24377A(配列番号9);および3:ETEC株H10407(配列番号11));ならびに1種類の抗生物質耐性株(1:抗生物質耐性株SECEC(配列番号15))。
【図8】図8は、左から右に:脂質化モチーフ;プロリンリッチ領域、WxxxEモチーフ、亜鉛結合モチーフ、およびRGDドメインを含む、AcfD(orf3526)において同定された配列モチーフを示す。
【図9】図9は、様々な亜鉛メタロプロテアーゼのファミリー間の関係を示す。ジンシンモチーフはAcfD(orf3526)にみられるモチーフであるため、ジンシンを灰色の囲みで強調している(図8参照)。
【図10】図10は、orf3526C発現のSDS−PAGE(4〜12%の勾配,Bis−Tris)を示す。レーンの上部の表示は以下のとおり:(1)全細胞溶解物−IPTGなし,25℃で6時間;(2)全細胞溶解物−1mM IPTG,25℃で3時間;(3)全細胞溶解物−1mM IPTG,25℃で6時間;(M)マーカー(サイズは、単位:kDaで、ゲルの左側に沿って表示している);(4)超音波処理後の可溶性画分−1mM IPTG,25℃で3時間;および(5)超音波処理後の可溶性画分−1mM IPTG,25℃で6時間である。
【発明を実施するための形態】
【0245】
【表1−1】

【0246】
【表1−2】

【0247】
【表1−3】

本発明の実施のための態様
参考文献5に開示されている抗原の1つは、NMEC株IHE3034由来のアクセサリー定着因子D(AcfD)前駆体(orf3526)(本明細書中ではアミノ酸配列番号2)と注釈が付けられている。このタンパク質は、発現させられ、精製されており、これは、敗血症の動物モデルにおいてExPEC株に対する防御を付与する。
【0248】
様々な他のE.coli株の中のオルトログについての複数の配列が得られた。IHE3034の中で見られるアミノ酸配列はまた、APECO1株およびUTI89株の中でも見られたが、14種類のさらに別の配列も見られた(配列番号3〜配列番号16)。図1は、配列番号2〜配列番号16のアラインメントを示す。30個のN末端アミノ酸は100%保存されており、これらには、天然のリポタンパク質のシグナルペプチド(aa1〜23)とN末端システインが含まれる。
【0249】
いくつかの株は、AcfD(orf3526)遺伝子の中にフレームシフト変異を有しており、これによって、ポリペプチドの発現が起こらなかった。acfD遺伝子は、CFT073株、EDL933株、Sakai株、およびB171株からは完全に失われていた。
【0250】
図2は、アミノ酸配列間での%同一性を示す。標識は、株の名称を使用したMG1655、RS218、DH10B、APECO1、およびUTI89を除き、配列番号である。最も低い同一性のレベル(図2の中で四角で囲った)は、配列番号2と配列番号4(いずれもExPEC株)との間での85.9%であった。
【0251】
実施例1-全長AcfD(orf3526)の免疫原性
IHE3034株由来のAcfD(orf3526)配列をクローニングし、そしてE.coli宿主の中で、リーダーペプチドを持たない組み換え体Hisタグ付きタンパク質として、プラスミドから発現させた。タンパク質を精製し、分析した。ゲル濾過は、アミノ酸配列だけに基づいて予想したよりもはるかに大きな分子量を示した。DTTの非存在下でのゲル分析は、DTTの存在下とは異なり、このタンパク質のより大きな分子量の形態を示す(図3)。したがって、このタンパク質はオリゴマーを形成するようである。
【0252】
AcfD(orf3526)に対して惹起させた血清を、全細胞溶解物(図4(A))または60%のTCAで沈殿させた培養上清(図4(B))に対するウェスタンブロットにおいて使用した。この血清は、病原性株および片利共生的株の両方に由来する溶解物中の約150kDaのタンパク質を認識した。これらは、CFT073由来の溶解物、またはIHE3034のAcfD(orf3526)ノックアウト変異体由来の溶解物の中のこのバンドとは反応しなかった。上清中のタンパク質との反応性は、このタンパク質が分泌され得ることを示している。
【0253】
CD1マウス(5週齢)を、20μgの抗原およびフロイトのアジュバント(または以下に示す他のアジュバント)を使用して皮下に免疫化した。このマウスに、0日目、21日目、および35日目に接種した。3回目の接種の14日後、マウスに、致死量(LD80)の病原性E.coli株を抗原投与した。血液を抗原投与後24時間で尾から収集し、菌血症を評価した。死亡率を、抗原投与後4日間モニターした。防御率は、(対照グループ(免疫化なし)の中での%死亡−実験グループ(免疫化した)の中での%死亡)/対照グループの中での%死亡×100として計算され得る。
【0254】
【表1−4】

したがって、AcfD前駆体(orf3526)は、ワクチンまたはワクチン成分としての使用に有効な候補である。
【0255】
ワクチンまたはワクチン成分の候補としてのAcfD前駆体(orf3526)の有用性をさらに実証するため、AcfD前駆体(orf3526)を、E.coliの他の病原型株に対して交差防御をもたらす能力について、敗血症の動物モデルを使用し、上記に示したとおりに試験した。この試験の結果を以下の表2に示す(比較目的のため、表1の結果を含めている)。
【0256】
【表2−1】

したがって、AcfD前駆体(orf3526)は、該タンパク質を導いた株に対してだけでなく、関連株に対してもワクチンまたはワクチン成分としての使用に有効な候補であり、したがって有用性を増大させる。AcfD前駆体(orf3526)に対する応答と、以下において試験した3種類の免疫原性断片(3526A、3526B、および3526C)に対する応答との類似性に基づき、これらの3種類の断片によっても同様に、類似する交差防御がもたらされ得ることが予測され得る。
【0257】
実施例2-増大した溶解度を有する AcfD (orf3526)の断片
予想外に、AcfD(orf3526)タンパク質は、タンパク質が分泌型タンパク質であった場合にもなお、低い溶解度を示した。図5(B)に示すように、gly−serリンカーまたはgly−ser領域全体の、AcfD(orf3526)のN末端の除去は、25℃で発現させると、溶解度を有意に増大させた(pK1−ΔG3526 図5(B)を参照のこと)。同様に、プロリンリッチ領域全体の、AcfD(orf3526)のN末端の除去も、25℃で発現させた場合には、溶解度を有意に増大させた。(pK1−ΔP3526 図5(B)を参照のこと)。
【0258】
両方の断片が、全長のAcfD(orf3526)と実質的に同じ免疫原性を有していることを確認するために、これらの断片を精製した。精製した断片を、フロイトの完全なアジュバントでアジュバント添加した、マウスでの3回の免疫化実験に使用した。免疫化したマウスに、その後、致死量以下の用量のE.coliを抗原投与した。gly−serリンカーまたはgly−ser領域全体が除去されたN末端を持つAcfD(orf3526)での免疫化は、マウスを死から100%防御したが、免疫化しなかった対照グループにおいては、動物の90%が死亡した。プロリンリッチ領域全体が除去されたN末端を持つAcfD(orf3526)での免疫化によっては、マウスの90%が死から防御されたが、免疫化しなかった対照グループにおいては、動物の90%が死亡した。
【0259】
発現および精製
AcfD(orf3526)のヒスタグ付き改変体を発現する3種類の構築物の1種類を持つ細菌を、30mlの培地の中で培養し、25℃でAcfD(orf3526)改変体を発現するように誘導した(リーダーペプチドを持たないAcfD(orf3526)(3526)、gly−serリンカーまたはgly−ser領域全体が除去されたN末端を持つAcfD(orf3526)(ΔG3526)、およびプロリンリッチ領域全体が除去されたN末端を持つAcfD(orf3526)(ΔP3526))。細菌を回収し、そして超音波処理によって溶解させた。可溶性画分を単離し、そしてIMACカラムにロードした。このカラムを20mMのイミダゾールバッファーで3回洗浄した。AcfD(orf3526)改変体を、その後、500mMのイミダゾールバッファーで3回洗浄して溶離させた。図6に示すように、gly−serリンカーまたはgly−ser領域全体の、AcfD(orf3526)のN末端の除去により、溶解度と精製されたタンパク質の収量が有意に増大した。得られた収量を、以下のようにBradfordアッセイによって評価した:0.18mgの3526、および2.34mgのΔG3526。
【0260】
実施例3−毒性が低下したAcfD(orf3526)変異体
AcfD(orf3526)タンパク質において亜鉛結合モチーフが同定された(図8参照)。また、ジンシン亜鉛メタロプロテアーゼモチーフは、そのようなE.coliの病原に関与しているEHECによって分泌されるタンパク質であるStcE(EHEC由来のC1エステラーゼインヒビター分泌型プロテアーゼ)にもみられる。
【0261】
【化6】

このモチーフがAcfD(orf3526)のすべての改変体において保存されており、EHECが、AcfD(orf3526)が同定されない唯一の病原型であったことを考慮すると、AcfD(orf3526)も同様に、これが発現および分泌されるE.coli病原型の病原性に関与している亜鉛メタロプロテアーゼであると推測された。したがって、AcfD(orf3526)の毒性の不活化を模索した。当業者であれば、困難なく、該メタロプロテアーゼを不活化するためのAcfD(orf3526)の修飾がなされよう。該モチーフのGlu残基が触媒活性に最も重要であることがわかっているとともに、一方、2つのHis残基が亜鉛に配位するため、該メタロプロテアーゼ活性を不活化させる例示的な変異としてGluをAlaに変異させた(配列番号58〜76)(例えば,Microbiology and Molecular Biology Reviews,1998年9月,p.597−635,第62巻,3号を参照のこと)。また、2種類のさらなる無毒化改変体:C末端を欠失させたもの(配列番号20〜38)、およびN末端を欠失させたもの(配列番号39〜57)を設計した。
【0262】
全長のAcfD(orf3526)のインビトロ毒性の試験
2種類の異なる細胞株:ヒト骨髄内皮細胞(HBMEC)およびチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)を、AcfD(orf3526)タンパク質の毒性をアッセイする能力について試験した。HBMECでは、漸増用量のAcfD(orf3526)タンパク質(0.1μg/ml、1μg/ml、および10μg/ml)の効果を、TNF−α(ポジティブ対照)と比較した。TNF−α処理細胞では、平均約22.5%の細胞死(3つの実験の平均)が示されたが、最高用量のAcfD(orf3526)タンパク質で示された細胞死は平均わずか約5%(3つの実験の平均)であった(これに対して、ネガティブ対照で示された細胞死は平均わずか約2.5%(3つの実験の平均)であった)。CHO細胞では、漸増用量のAcfD(orf3526)タンパク質(1μg/ml、10μg/ml、および100μg/ml)の効果をTNF−α(ポジティブ対照)と、CHO細胞の細胞骨格の変化による経時的な電位差の変化を測定することにより比較した。AcfD(orf3526)タンパク質試験の最高レベルでは、46時間後に有意な減少が検出されたが、TNF−αに対する応答の減少は著しくより大きかった。
【0263】
したがって、強いシグナルを伴う毒性についての好ましい試験は同定されなかったが、以下の同定された断片は、依然として有意な有用性を有する。上記で議論したように、これらの3種類の断片により、上記で試験した全長型と類似した程度の交差防御がもたらされるはずである。さらに、片利共生的E.coliは、AcfD(orf3526)タンパク質の発現に好ましい株である。しかしながら、図4に示されるように、片利共生的E coliは、AcfD(orf3526)タンパク質の型を発現するが、該タンパク質を分泌しない。したがって、AcfD(orf3526)タンパク質の断片の発現により、大きさの違いに基づいて、親和性精製タグを必要とすることなく、該断片を内因性のAcfD(orf3526)タンパク質から分離することが可能になるという利点がもたらされる。
【0264】
クローニングおよび発現−3526Aおよび3526B
GeneTailor部位特異的変異誘発系(Invitrogen)を用いて変異体を得た。遺伝子をpET−21bベクター(Novagen)内にクローニングし、増殖のために化学的にコンピテントな(chemically competent)DH5α−T1細胞(Invitrogen)において形質転換を行なった。発現には、化学的にコンピテントなBL21(DE3)細胞を使用した。すべての候補をクローニングし、シグナル配列なしで、hisタグ融合タンパク質として発現させ、アフィニティクロマトグラフィーによって精製した。
【0265】
【表2−2】

免疫原性−3526Aおよび3526B
両断片と点変異が全長のAcfD(orf3526)と実質的に同じ免疫原性を有することを確認するため、該断片を精製した。この精製断片をマウスでの3つの免疫化実験に使用し、アジュバントとしてフロイント完全アジュバントを加えた。次いで、免疫化したマウスを致死量のE.coliで抗原投与した。抗原投与の結果を以下の表3に示す。
【0266】
【表3−1】

クローニングおよび発現−ΔG3526C
さらなる確認として、溶解度が改善されるΔG3526 N末端欠失と、C末端〜亜鉛モチーフの欠失を併せ持つ構築物(ΔG3526C)を設計した。例示的な構築物を配列番号77〜95で示す。
【0267】
ΔG3526C(E.coli株IHE3034−配列番号77)構築物のためのhisタグなし発現ベクターは、以下に示すプライマー(ΔG3526A/C_ForとΔG3526C_NatRev)を用いたPCRによって得た。増幅させたPCR断片をNdeIおよびXhoIで消化し、pET−24b(+)ベクター(Novagen)内にライゲートし、増殖のために化学的にコンピテントなDH5α−T1細胞(Invitrogen)において形質転換を行なった。発現には、化学的にコンピテントなBL21(DE3)細胞を使用した。
【0268】
ΔG3526C(E.coli株IHE3034−配列番号77)構築物のためのhisタグ付き発現ベクターは、以下に示すプライマー(I−PCRでは、ΔG3526A/C_ForとΔG3526C_Nat、およびV−PCRでは、pET−21bベクター(Novagen)のp−pet1とpet3)を使用し、ポリメラーゼ不完全プライマー伸長(Polymerase Incomplete Primer Extension)(PIPE)を用いて得た。この発現ベクターで、増殖のために化学的にコンピテントなDH5α−T1細胞(Invitrogen)において形質転換を行なった。発現には、化学的にコンピテントなBL21(DE3)細胞を使用した。
【0269】
ΔG3526Cのhisタグ付き型を、シグナル配列なしで発現させ(例えば、図10参照)、hisタグに基づいたアフィニティクロマトグラフィーによって精製した。
【0270】
【表3−2】

免疫原性−ΔG3526C
さらなる断片が全長のAcfD(orf3526)と実質的に同じ免疫原性を有することを確認するため、該断片を精製した。次いで、この精製断片を以下のようにして試験した。8匹のCD1マウス(4週齢)の2つの群を、ミョウバン中で製剤化した3つの用量の抗原ΔG3526C(2μgまたは20μgのいずれか)で、0日目、31日目および35日目にs.c.免疫化した。最後の免疫化の14日後(マウスは11週齢)、マウスをi.p.で病原性E.coli株IHE3034に感染させた。24時間後に尾部から血液を採取し、菌血症を評価した。感染後4日間、死亡率をモニタリングした。防御を4日目における生存%として計算し、フィッシャーの正確確率検定によって統計解析を行なった。抗原投与の結果を以下の表4に示す。
【0271】
【表4】

交差株免疫原性(Cross−strain Immunogenicity)−ΔG3526C
多種類の株に対して防御をもたらすことにおける該さらなる断片の有用性をさらに確認するため、該精製断片を、以下のようにしてさらに試験した。CD1マウス(4週齢)を、ミョウバン中で製剤化した3つの用量の抗原ΔG3526C(10μgまたは20μgのいずれか)で、0日目、31日目および35日目にs.c.免疫化した。最後の免疫化の14日後(マウスは11週齢)、マウスをi.p.で、表5に示した病原性E.coli株に感染させた。24時間後に尾部から血液を採取し、菌血症を評価した。感染後4日間、死亡率をモニタリングした。防御を4日目における生存%として計算し、フィッシャーの正確確率検定によって統計解析を行なった。抗原投与の結果を以下の表5に示す。
【0272】
【表5】

本発明は例として記載されているにすぎず、本発明の範囲および精神の範囲内に含まれるように改変が行われ得ることが理解されるであろう。
【0273】
参考文献(これらの内容は、それらの全体が参考として本明細書に援用される)
【0274】
【化7】

【0275】
【化8】

【0276】
【化9】

【0277】
【化10】

【0278】
【化11】

【0279】
【化12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
E.coli AcfD(orf3526)タンパク質に関して変異を含むE.coli AcfD(orf3526)ポリペプチドを含む免疫原性ポリペプチドであって、前記変異が、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して前記免疫原性ポリペプチドの毒性を低下させ、そして、前記免疫原性ポリペプチドは、被験体において前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と実質的に類似する免疫応答を惹起させる、免疫原性ポリペプチド。
【請求項2】
前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質が配列番号1〜19からなる群より選択されるアミノ酸配列を持つ、請求項1に記載の免疫原性ポリペプチド。
【請求項3】
前記変異が、ジンシンメタロプロテアーゼドメインの全体またはその一部の欠失、およびジンシンメタロプロテアーゼドメインにおけるそのプロテアーゼの活性を低下させる点変異から選択される、請求項1または請求項2に記載の免疫原性ポリペプチド。
【請求項4】
前記点変異が亜鉛結合残基の変異または触媒性残基の変異である、請求項1〜3いずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
【請求項5】
前記亜鉛結合残基が配列番号1とのアラインメントに基づくアミノ酸番号1305である、請求項1〜4いずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
【請求項6】
前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の100個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の200個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の300個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の400個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の500個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の600個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の700個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の750個のC末端アミノ酸、もしくは前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の758個のC末端アミノ酸が含まれていないか、または前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の100個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の200個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の300個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の400個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の500個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の600個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の700個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の750個のN末端アミノ酸、もしくは前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の760個のN末端アミノ酸が含まれていない、請求項1〜5いずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
【請求項7】
免疫原性ポリペプチド断片が、以下:
(a)配列番号20〜76からなる群より選択されるアミノ酸配列;
(b)配列番号20〜76と比較して1個〜10個の1アミノ酸の変化;
(c)配列番号20〜76のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性;または
(d)配列番号20〜76のいずれかと、ペアワイズアラインメントアルゴリズムを使用してアラインメントされた場合に、N末端側からC末端側に向かうx個のアミノ酸のそれぞれのムービングウィンドウが、少なくともx・y個の同一であるアラインメントされたアミノ酸を有しており、ここでは、xが30であり、yが0.75である
を含むアミノ酸配列を含み、前記免疫原性ポリペプチドが、被験体において前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と実質的に類似する免疫応答を惹起させる、請求項1〜6いずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
【請求項8】
前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質に関して、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して前記免疫原性ポリペプチドの溶解度を増大させる欠失をさらに含む、請求項1〜7いずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
【請求項9】
前記欠失が、gly−ser領域までのN末端アミノ酸の実質的にすべての除去、N末端プロリンリッチリピート全体もしくはその一部の除去、またはそれらの両方である、請求項8に記載の免疫原性ポリペプチド。
【請求項10】
前記欠失が、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の20個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の20個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の30個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の38個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の40個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の50個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の60個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の70個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の80個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の90個のN末端アミノ酸、または前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の94個のN末端アミノ酸の除去である、請求項8に記載の免疫原性ポリペプチド。
【請求項11】
前記免疫原性ポリペプチド断片が、単離されているか、精製されているか、または組み換え体である、請求項1〜10いずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
【請求項12】
アジュバントをさらに含む、請求項1〜11いずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
【請求項13】
請求項1〜9いずれかに記載の免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項1〜9いずれかに記載の免疫原性ポリペプチドをコードするプラスミドを含むE.coli細胞。
【請求項15】
請求項11に記載の免疫原性ポリペプチドを含むワクチン成分。
【請求項16】
請求項15に記載のワクチン成分を含むワクチン。
【請求項17】
アジュバントをさらに含む、請求項16に記載のワクチン。
【請求項18】
Neisseria meningitidis抗原、Streptococcus pneumoniae抗原、Streptococcus pyogenes抗原、Moraxella catarrhalis抗原、Bordetella pertussis抗原、Staphylococcus aureus抗原、Staphylococcus epidermis抗原、Clostridium tetani抗原、Cornynebacterium diphtheriae抗原、Haemophilus influenzaeB型(Hib)抗原、Pseudomonas aeruginosa抗原、Legionella pneumophila抗原、Streptococcus agalactiae抗原、Neiserria gonorrhoeae抗原、Chlamydia trachomatis抗原、Treponema pallidum抗原、Haemophilus ducreyi抗原、Enterococcus faecalis抗原、Enterococcus faecium抗原、Helicobacter pylori抗原、Staphylococcus saprophyticus抗原、Yersinia enterocolitica抗原、さらなるE.coli抗原、Bacillus anthracis抗原、Yersinia pestis抗原、Mycobacterium tuberculosis抗原、Rickettsia抗原、Listeria monocytogenes抗原、Chlamydia pneumoniae抗原、Vibrio cholerae抗原、Salmonella typhi抗原、Borrelia burgdorferi抗原、Porphyromonas gingivalis抗原、およびKlebsiella抗原から選択されるさらなるワクチン成分をさらに含む、請求項16または請求項17に記載のワクチン。
【請求項19】
免疫原性ポリペプチド断片であって、前記免疫原性ポリペプチド断片は、以下:
(a) 配列番号77〜95からなる群より選択されるアミノ酸配列;
(b) 配列番号77〜95と比較して1個〜10個の1アミノ酸の変化;
(c) 配列番号77〜95のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性;または
(d) 配列番号77〜95のいずれかと、ペアワイズアラインメントアルゴリズムを使用してアラインメントされた場合に、N末端側からC末端側に向かうx個のアミノ酸のそれぞれのムービングウィンドウが、少なくともx・y個の同一であるアラインメントされたアミノ酸を有しており、ここでは、xが30であり、yが0.75である
を含むアミノ酸配列を含み、免疫原性ポリペプチドがE.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して低い毒性を有し、前記免疫原性ポリペプチドが被験体において前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と実質的に類似する免疫応答を惹起させる、免疫原性ポリペプチド断片。
【請求項20】
前記免疫原性ポリペプチド断片に、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の10個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の20個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の25個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の30個のN末端アミノ酸、または前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の33個のN末端アミノ酸が含まれていない、請求項19に記載の免疫原性ポリペプチド断片。
【請求項21】
前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の125個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の150個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の175個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の200個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の210個のC末端アミノ酸、または前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の217個のC末端アミノ酸が含まれていない、請求項19または20に記載の免疫原性ポリペプチド断片。
【請求項22】
前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質が配列番号1〜19からなる群より選択されるアミノ酸配列を持つ、請求項19〜21のいずれか1項に記載の免疫原性ポリペプチド断片。
【請求項23】
単離されているか、精製されているか、または組み換え体である、請求項19〜22のいずれか1項に記載の免疫原性ポリペプチド断片。
【請求項24】
アジュバントをさらに含む、請求項19〜23のいずれか1項に記載の免疫原性ポリペプチド断片。
【請求項25】
請求項19〜22のいずれか1項に記載の免疫原性ポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド。
【請求項26】
請求項19〜22のいずれか1項に記載の免疫原性ポリペプチド断片をコードするプラスミドを含むE.coli細胞。
【請求項27】
請求項19〜23のいずれか1項に記載の免疫原性ポリペプチド断片を含むワクチン成分。
【請求項28】
請求項27に記載のワクチン成分を含むワクチン。
【請求項29】
アジュバントをさらに含む、請求項28に記載のワクチン。
【請求項30】
Neisseria meningitidis抗原、Streptococcus pneumoniae抗原、Streptococcus pyogenes抗原、Moraxella catarrhalis抗原、Bordetella pertussis抗原、Staphylococcus aureus抗原、Staphylococcus epidermis抗原、Clostridium tetani抗原、Cornynebacterium diphtheriae抗原、Haemophilus influenzaeB型(Hib)抗原、Pseudomonas aeruginosa抗原、Legionella pneumophila抗原、Streptococcus agalactiae抗原、Neiserria gonorrhoeae抗原、Chlamydia trachomatis抗原、Treponema pallidum抗原、Haemophilus ducreyi抗原、Enterococcus faecalis抗原、Enterococcus faecium抗原、Helicobacter pylori抗原、Staphylococcus saprophyticus抗原、Yersinia enterocolitica抗原、さらなるE.coli抗原、Bacillus anthracis抗原、Yersinia pestis抗原、Mycobacterium tuberculosis抗原、Rickettsia抗原、Listeria monocytogenes抗原、Chlamydia pneumoniae抗原、Vibrio cholerae抗原、Salmonella typhi抗原、Borrelia burgdorferi抗原、Porphyromonas gingivalis抗原、およびKlebsiella抗原から選択されるさらなるワクチン成分をさらに含む、請求項28または請求項29に記載のワクチン。
【請求項31】
免疫原性ポリペプチド断片であって、前記免疫原性ポリペプチド断片は、以下:
(a) 配列番号20〜57からなる群より選択されるアミノ酸配列;
(b) 配列番号20〜57と比較して1個〜10個の1アミノ酸の変化;
(c) 配列番号20〜57のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性;または
(d) 配列番号20〜57のいずれかと、ペアワイズアラインメントアルゴリズムを使用してアラインメントされた場合に、N末端側からC末端側に向かうx個のアミノ酸のそれぞれのムービングウィンドウが、少なくともx・y個の同一であるアラインメントされたアミノ酸を有しており、ここでは、xが30であり、yが0.75である
を含むアミノ酸配列を含み、免疫原性ポリペプチドは、被験体においてE.coli AcfD(orf3526)タンパク質と実質的に類似する免疫応答を惹起させる、免疫原性ポリペプチド断片。
【請求項32】
前記免疫原性ポリペプチドに、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の100個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の200個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の300個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の400個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の500個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の600個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の700個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の750個のC末端アミノ酸、もしくは前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の758個のC末端アミノ酸が含まれていないか、または前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の100個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の200個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の300個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の400個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の500個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の600個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の700個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の750個のN末端アミノ酸、もしくは前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の760個のN末端アミノ酸が含まれていない、請求項31に記載の免疫原性ポリペプチド断片。
【請求項33】
前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質が配列番号1〜19からなる群より選択されるアミノ酸配列を持つ、請求項31または請求項32に記載の免疫原性ポリペプチド断片。
【請求項34】
前記免疫原性ポリペプチドが、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質に関して、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して前記免疫原性ポリペプチドの溶解度を増大させる欠失をさらに含む、請求項31〜33のいずれか1項に記載の免疫原性ポリペプチド断片。
【請求項35】
前記欠失が、gly−ser領域までのN末端アミノ酸の実質的にすべての除去、N末端プロリンリッチリピート全体もしくはその一部の除去、またはそれらの両方である、請求項34に記載の免疫原性ポリペプチド断片。
【請求項36】
前記欠失が、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の10個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の20個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の30個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の38個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の40個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の50個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の60個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の70個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の80個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の90個のN末端アミノ酸、または前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質と比較して少なくとも最初の94個のN末端アミノ酸の除去である、請求項34に記載の免疫原性ポリペプチド断片。
【請求項37】
単離されているか、精製されているか、または組み換え体である、請求項31〜36いずれかに記載の免疫原性ポリペプチド断片。
【請求項38】
アジュバントをさらに含む、請求項31〜37いずれかに記載の免疫原性ポリペプチド断片。
【請求項39】
請求項31〜36いずれかに記載の免疫原性ポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド。
【請求項40】
請求項31〜36いずれかに記載の免疫原性ポリペプチド断片をコードするプラスミドを含むE.coli細胞。
【請求項41】
請求項37に記載の免疫原性ポリペプチド断片を含むワクチン成分。
【請求項42】
請求項41に記載のワクチン成分を含むワクチン。
【請求項43】
アジュバントをさらに含む、請求項42に記載のワクチン。
【請求項44】
Neisseria meningitidis抗原、Streptococcus pneumoniae抗原、Streptococcus pyogenes抗原、Moraxella catarrhalis抗原、Bordetella pertussis抗原、Staphylococcus aureus抗原、Staphylococcus epidermis抗原、Clostridium tetani抗原、Cornynebacterium diphtheriae抗原、Haemophilus influenzaeB型(Hib)抗原、Pseudomonas aeruginosa抗原、Legionella pneumophila抗原、Streptococcus agalactiae抗原、Neiserria gonorrhoeae抗原、Chlamydia trachomatis抗原、Treponema pallidum抗原、Haemophilus ducreyi抗原、Enterococcus faecalis抗原、Enterococcus faecium抗原、Helicobacter pylori抗原、Staphylococcus saprophyticus抗原、Yersinia enterocolitica抗原、さらなるE.coli抗原、Bacillus anthracis抗原、Yersinia pestis抗原、Mycobacterium tuberculosis抗原、Rickettsia抗原、Listeria monocytogenes抗原、Chlamydia pneumoniae抗原、Vibrio cholerae抗原、Salmonella typhi抗原、Borrelia burgdorferi抗原、Porphyromonas gingivalis抗原、およびKlebsiella抗原から選択されるさらなるワクチン成分をさらに含む、請求項42または請求項43に記載のワクチン。
【請求項45】
免疫原性ポリペプチド断片であって、前記免疫原性ポリペプチド断片は、以下:
(a) 配列番号77〜95からなる群より選択されるアミノ酸配列;
(b) 配列番号77〜95と比較して1個〜10個の1アミノ酸の変化;
(c) 配列番号77〜95のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性;または
(d) 配列番号77〜95のいずれかと、ペアワイズアラインメントアルゴリズムを使用してアラインメントされた場合に、N末端側からC末端側に向かうx個のアミノ酸のそれぞれのムービングウィンドウが、少なくともx・y個の同一であるアラインメントされたアミノ酸を有しており、ここでは、xが30であり、yが0.75である
を含むアミノ酸配列を含み、免疫原性ポリペプチドは、被験体においてE.coli AcfD(orf3526)タンパク質と実質的に類似する免疫応答を惹起させる、免疫原性ポリペプチド断片。
【請求項46】
前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の10個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の20個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の25個のN末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の30個のN末端アミノ酸、または前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最初の33個のN末端アミノ酸が含まれていない、請求項31に記載の免疫原性ポリペプチド断片。
【請求項47】
前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の125個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の150個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の175個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の200個のC末端アミノ酸、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の210個のC末端アミノ酸、または前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質の少なくとも最後の217個のC末端アミノ酸が含まれていない、請求項31または46に記載の免疫原性ポリペプチド断片。
【請求項48】
前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質が配列番号1〜19からなる群より選択されるアミノ酸配列を持つ、請求項31〜47のいずれか1項に記載の免疫原性ポリペプチド断片。
【請求項49】
単離されているか、精製されているか、または組み換え体である、請求項31〜48のいずれか1項に記載の免疫原性ポリペプチド断片。
【請求項50】
アジュバントをさらに含む、請求項31〜49のいずれか1項に記載の免疫原性ポリペプチド断片。
【請求項51】
請求項31〜48のいずれか1項に記載の免疫原性ポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド。
【請求項52】
請求項31〜48のいずれか1項に記載の免疫原性ポリペプチド断片をコードするプラスミドを含むE.coli細胞。
【請求項53】
請求項31〜49のいずれか1項に記載の免疫原性ポリペプチド断片を含むワクチン成分。
【請求項54】
請求項53に記載のワクチン成分を含むワクチン。
【請求項55】
アジュバントをさらに含む、請求項54に記載のワクチン。
【請求項56】
Neisseria meningitidis抗原、Streptococcus pneumoniae抗原、Streptococcus pyogenes抗原、Moraxella catarrhalis抗原、Bordetella pertussis抗原、Staphylococcus aureus抗原、Staphylococcus epidermis抗原、Clostridium tetani抗原、Cornynebacterium diphtheriae抗原、Haemophilus influenzaeB型(Hib)抗原、Pseudomonas aeruginosa抗原、Legionella pneumophila抗原、Streptococcus agalactiae抗原、Neiserria gonorrhoeae抗原、Chlamydia trachomatis抗原、Treponema pallidum抗原、Haemophilus ducreyi抗原、Enterococcus faecalis抗原、Enterococcus faecium抗原、Helicobacter pylori抗原、Staphylococcus saprophyticus抗原、Yersinia enterocolitica抗原、さらなるE.coli抗原、Bacillus anthracis抗原、Yersinia pestis抗原、Mycobacterium tuberculosis抗原、Rickettsia抗原、Listeria monocytogenes抗原、Chlamydia pneumoniae抗原、Vibrio cholerae抗原、Salmonella typhi抗原、Borrelia burgdorferi抗原、Porphyromonas gingivalis抗原、およびKlebsiella抗原から選択されるさらなるワクチン成分をさらに含む、請求項54または請求項55に記載のワクチン。
【請求項57】
配列番号77〜95のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を含むアミノ酸配列を有する免疫原性ポリペプチド断片を含む免疫原性組成物であって、前記免疫原性ポリペプチド断片に、E.coli AcfD(orf3526)タンパク質のC末端の180個のアミノ酸が含まれていないか、または、前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質のC末端の200個のアミノ酸が含まれていない、免疫原性組成物。
【請求項58】
前記E.coli AcfD(orf3526)タンパク質が配列番号1〜19からなる群より選択されるアミノ酸配列を持つ、請求項57に記載の免疫原性組成物。
【請求項59】
アジュバントをさらに含む、請求項57または請求項58に記載の免疫原性組成物。
【請求項60】
前記アジュバントが、(a)1体積%〜12体積%の代謝可能な油と、(b)0.2重量%〜2.5重量%の乳化剤とを含み、前記代謝可能な油と前記乳化剤が、実質的に全部が1ミクロン未満の直径である油滴を持つ水中油型エマルジョンの形態で存在している、請求項59に記載の免疫原性組成物。
【請求項61】
アジュバントが、(a)4体積%〜5体積%のスクアレンと、(b)ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートとソルビタントリオレエートを含む約1%の乳化剤とを含み、前記スクアレンおよび前記乳化剤が、実質的に全部が1ミクロン未満の直径である油滴を有する水中油型エマルジョンの形態で存在している、請求項59に記載の免疫原性組成物。
【請求項62】
被験体に、請求項16〜18、28〜30、42〜44、および54〜56のいずれか1項に記載のワクチンまたは請求項57〜61のいずれか1項に記載の免疫原性組成物を投与することを含む、E.coliに対する免疫応答の誘導方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図1−6】
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【図1−7】
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【図1−8】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−532626(P2012−532626A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520121(P2012−520121)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【国際出願番号】PCT/IB2010/002043
【国際公開番号】WO2011/007257
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】