説明

無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサン、その製造方法、オルガノシロキサン組成物及び熱硬化性樹脂組成物

【課題】官能基と反応性を有する有機基を含有した化合物との組成物を調製した際にバインダーとしての機能を発現する他、シランカップリング剤としての効果も期待できる材料を提供する。
【解決手段】式(1)で示される無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサン。


(R1はアルキル基又はアリール基、R2は水素原子又はハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、加水分解性シリル基、無水コハク酸基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基から選ばれる置換基を有してもよいアルキル基であり、その内加水分解性シリル基を置換基とするR2が1個以上、無水コハク酸基を置換基とするR2が2個以上である。nは3〜6の整数。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状シロキサンを主骨格とした1分子中に1個以上の加水分解性シリル基と2個以上の無水コハク酸基を含有する環状オルガノシロキサン、その製造方法、この環状オルガノシロキサンと酸無水物基安定化剤として活性水素含有化合物捕捉剤を含むオルガノシロキサン組成物、及び上記環状オルガノシロキサンを含有する熱硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
1分子中に2個以上の酸無水物基を有する化合物はポリイミドの構成材料として使用されているが、1分子中に3個以上の酸無水物基を有する化合物は知られていない。3官能以上の酸無水物を使用することで樹脂の架橋密度を飛躍的に増大できることから、得られる樹脂成形品の機械的強度の向上が期待される。また、2官能酸無水物である場合にも、その他の有機基として例えば加水分解性シリル基を有する化合物は、樹脂中のバインダーとして機能する他、シランカップリング剤としての効果が期待される。
【0003】
酸無水物残基と加水分解性シリル基とを有するシランカップリング剤は、粘着剤組成物における粘着力調整剤(特許文献1:特開平8−302320号公報)、エポキシ樹脂ベースの硬化性組成物の架橋剤(特許文献2:特開2006−22158号公報)等が代表的な用途として挙げられ、他にもポリイミド樹脂改質剤等の様々な分野で使用されているが、この場合は加水分解性シリル基と酸無水物基とを1分子中に1個ずつ有するシランカップリング剤のみであり、先述したようなバインダー効果は期待できない。
【0004】
一般に、シランカップリング剤を部分加水分解縮合して得られるオルガノオリゴシロキサン(以下シロキサンオリゴマーと呼称する。)は、構造中に有機基と加水分解性シリル基を複数持った材料であるが、酸無水物官能基のような加水分解性のある有機基である場合には、シリル基部分の加水分解縮合と同時に酸無水物基も反応してしまうため同技術が応用できず、経時安定性が求められていた。
【0005】
特許第4013023号公報(特許文献3)では、環状シロキサン骨格でフッ素アルキル基及び酸無水物基を有する化合物を接着助剤に用いた技術が開示されている。しかし、同公報では分子中に酸無水物基が1個のみの化合物である他、加水分解性シリル基を含まないためカップリング剤としての作用もなく、したがってバインダー効果並びにカップリング効果は期待されない。
【0006】
特許第2682359号公報(特許文献4)では鎖状、分岐状シロキサン骨格で酸無水物基を有する化合物に関する技術が開示されており、特許第2546104号公報(特許文献5)では環状シロキサン骨格で酸無水物基を有する化合物に関する技術が開示されている。しかし、これらはエポキシ樹脂等の硬化剤として用いるため酸無水物基が不飽和脂環式骨格を有する必要があり、酸無水物構造自体の反応性は同様であるものの、環骨格による材料の高粘度化(固体化)を引き起こし、上記カップリング剤ないし、樹脂のバインダーとして使用する際には望ましくない。また、得られるオルガノシロキサンは環骨格内に不飽和結合が残存するため、同部位が酸化や熱分解の起点となりやすく、例えば樹脂組成物のバインダーとして用いた際に該樹脂の耐熱変色性等を低下させてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−302320号公報
【特許文献2】特開2006−22158号公報
【特許文献3】特許第4013023号公報
【特許文献4】特許第2682359号公報
【特許文献5】特許第2546104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、環状シロキサンを主骨格とした1分子中に加水分解性シリル基を1個以上及び無水コハク酸基を2個以上有する環状オルガノシロキサン、その製造方法、該環状オルガノシロキサンとこのオルガノシロキサンの経時変化を抑制する安定化剤を含み、経時安定性が付与されたオルガノシロキサン組成物、及び該環状オルガノシロキサンを構成成分に含む熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、1分子中に複数のヒドロシリル基を有する環状オルガノハイドロジェンシロキサンと、炭素−炭素不飽和結合を有する加水分解性シリル基含有化合物と、炭素−炭素不飽和結合を有する無水コハク酸とを白金及び/又は白金錯体存在下においてヒドロシリル化させることで得られ、下記式(1)で示される化合物が上記課題の解決に有用であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
従って、本発明は、下記に示す無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサン、その製造方法、オルガノシロキサン組成物及び熱硬化性樹脂組成物を提供する。
〔1〕
下記一般式(1)で示される無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサン。
【化1】

(式中、R1は各々独立に炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基、R2は各々独立に水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基であって、該置換基はハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、加水分解性シリル基、無水コハク酸基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基から選ばれるものであり、その内加水分解性シリル基を置換基とするR2が1個以上、無水コハク酸基を置換基とするR2が2個以上である。nは3〜6の整数である。)
〔2〕
下記一般式(2)で示される〔1〕記載の無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサン。
【化2】

(式中、R1は上記と同様であり、R4は各々独立に炭素数1〜4のアルキル基、R5は各々独立にハロゲン原子、酸素原子を間に挟んでもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、又は炭素数6〜10のアリーロキシ基であり、R6は各々独立に水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基であって、該置換基はハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基から選ばれるものであり、kは2〜6の整数、mは2〜10の整数、xは1〜3の整数である。p≧2、q≧1、r≧0、p+q+rは3〜6の整数である。)
〔3〕
下記一般式(3)で表されることを特徴とする〔2〕記載の無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサン。
【化3】

(式中、p’≧2、q’≧1、p’+q’は3〜6の整数である。)
〔4〕
環状シロキサンがシクロテトラシロキサンであることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサン。
〔5〕
1分子中に少なくとも3個のSi−H基を有する環状オルガノハイドロジェンシロキサンと、炭素−炭素不飽和結合を有する加水分解性シリル基含有化合物と、炭素−炭素不飽和結合を有する無水コハク酸とを白金及び/又は白金錯体存在下においてヒドロシリル化させることを特徴とする下記一般式(1)で示される無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサンの製造方法。
【化4】

(式中、R1は各々独立に炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基、R2は各々独立に水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基であって、該置換基はハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、加水分解性シリル基、無水コハク酸基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基から選ばれるものであり、その内加水分解性シリル基を置換基とするR2が1個以上、無水コハク酸基を置換基とするR2が2個以上である。nは3〜6の整数である。)
〔6〕
1分子中に少なくとも3個のSi−H基を有する環状オルガノハイドロジェンシロキサン中に含まれる一部のSi−H基と、炭素−炭素不飽和結合を有する加水分解性シリル基含有化合物と、必要により、置換基としてハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基から選択される少なくとも1種による置換又は非置換の不飽和炭化水素化合物とを白金及び/又は白金錯体存在下においてヒドロシリル化反応させた後、得られた環状オルガノハイドロジェンシロキサン中の残るSi−H基と、炭素−炭素不飽和結合含有無水コハク酸とをヒドロシリル化反応させることを特徴とする〔5〕記載の無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサンの製造方法。
〔7〕
炭素−炭素不飽和結合を有する加水分解シリル基含有化合物が、下記式
【化5】

(式中、R1は上記と同様であり、R4は各々独立に炭素数1〜4のアルキル基、R5は各々独立にハロゲン原子、酸素原子を間に挟んでもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、又は炭素数6〜10のアリーロキシ基であり、m1は0〜8の整数、xは1〜3の整数である。)
で示されるものであり、必要により加えられる不飽和炭化水素化合物が、下記式
CH2=CH−R6a
(式中、R6aは、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜8のアルキル基であって、該置換基はハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基から選ばれるものである。)
で示されるものであり、炭素−炭素不飽和結合含有無水コハク酸が、下記式
【化6】

(式中、k1は0〜4の整数である。)
で示されるものであり、下記一般式(2)
【化7】

(式中、R1、R4、R5、xは上記の通り。R6は、各々独立に水素原子又は置換基を有してもよい炭素数3〜10のアルキル基であって、該置換基はハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基から選ばれるものであり、kは2〜6の整数、mは2〜10の整数、xは1〜3の整数である。p≧2、q≧1、r≧0、p+q+rは3〜6の整数である。)
で示される無水コハク酸含有環状オルガノシロキサンを得ることを特徴とする〔6〕記載の無水コハク酸含有環状オルガノシロキサンの製造方法。
〔8〕
炭素−炭素不飽和結合を有する加水分解シリル基含有化合物がビニルトリメトキシシランであり、炭素−炭素不飽和結合含有無水コハク酸がアリル無水コハク酸であり、下記一般式(3)
【化8】

(式中、p’≧2、q’≧1、p’+q’は3〜6の整数である。)
で示される無水コハク酸含有環状オルガノシロキサンを得ることを特徴とする〔7〕記載の無水コハク酸含有環状オルガノシロキサンの製造方法。
〔9〕
〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサンと、活性水素含有化合物の捕捉剤として下記一般式(4)で示されるα−シリル脂肪族エステル化合物とを含んでなるオルガノシロキサン組成物。
【化9】

(式中、R7は非置換もしくは置換の炭素原子数1〜20のアルキル基、非置換もしくは置換の炭素原子数5〜20のシクロアルキル基、又は非置換もしくは置換の炭素原子数6〜20のアリール基であり、R8は水素原子又はメチル基であり、R9は独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜4のアルキル基であり、R10は独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜4のアルキル基である。yは1〜3の整数である。)
〔10〕
下記一般式(1)で示される無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサンを含む熱硬化性樹脂組成物。
【化10】

(式中、R1は各々独立に炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基、R2は各々独立に水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基であって、該置換基はハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、加水分解性シリル基、無水コハク酸基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基から選ばれるものであり、その内加水分解性シリル基を置換基とするR2が1個以上、無水コハク酸基を置換基とするR2が2個以上である。nは3〜6の整数である。)
〔11〕
無水コハク酸基含有オルガノポリシロキサンが、下記一般式(2)で示されるものである〔10〕記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化11】

(式中、R1は上記と同様であり、R4は各々独立に炭素数1〜4のアルキル基、R5は各々独立にハロゲン原子、酸素原子を間に挟んでもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、又は炭素数6〜10のアリーロキシ基であり、R6は各々独立に水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基であって、該置換基はハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基から選ばれるものであり、kは2〜6の整数、mは2〜10の整数、xは1〜3の整数である。p≧2、q≧1、r≧0、p+q+rは3〜6の整数である。)
〔12〕
無水コハク酸基含有オルガノポリシロキサンが下記一般式(3)で示されるものである〔11〕記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化12】

(式中、p’≧2、q’≧1、p’+q’は3〜6の整数である。)
〔13〕
上記熱硬化性樹脂組成物がポリアミド樹脂又はポリイミド樹脂を含むものである〔10〕〜〔12〕のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の環状オルガノシロキサンは、1分子中に無水コハク酸基を2個以上有しているため該官能基と反応性を有する有機基(例えばアミン、水酸基)を含有した化合物との組成物を調製した際にバインダーとしての機能を発現する他、更に加水分解性シリル基も含むためシランカップリング剤としての効果も期待できるこれまでに実例のない材料である。また、安定化剤を共存させることにより、室温(25℃)及び高温(30〜100℃、好ましくは40〜80℃)のいずれにおいても本発明を長期にわたって安定に保存することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0013】
[環状オルガノシロキサン]
本発明の環状オルガノシロキサンは、環状シロキサン構造を主骨格とし、1分子中に加水分解性シリル基を1個以上、及び無水コハク酸基を2個以上含んでなるものであればよく、より好ましくは無水コハク酸基を3個以上含むものである。該オルガノシロキサンの詳細な構造は下記一般式(1)に示す環状シロキサンであり、加水分解性シリル基及び無水コハク酸基以外にも下記に列挙した有機官能基を有してもよい。
【化13】

(式中、R1は各々独立に炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基、R2は各々独立に水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基であって、該置換基はハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、加水分解性シリル基、無水コハク酸基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基から選ばれるものであり、その内加水分解性シリル基を置換基とするR2が1個以上、無水コハク酸基を置換基とするR2が2個以上である。nは3〜6の整数である。各繰り返し単位の配列は任意である。)
【0014】
ここで、本発明において酸無水物基とは、酸無水物から炭素原子に結合した水素原子1個を除いた残りの原子団をいう。本発明において、酸無水物基はコハク酸無水物基である。
【0015】
上記オルガノシロキサンの一般式(1)において、nはシロキサンのユニット数を示し、nは3〜6の範囲であれば分布を持つものであっても問題ないが、より好ましくは熱力学的に安定であり、原料シロキサンの製造が容易なn=4(シロキサン4量体;シクロテトラシロキサン)が好ましい。
【0016】
上記オルガノシロキサンの一般式において、R1の炭素数1〜10のアルキル基、アリール基としては直鎖状、分岐状、環状であってよく、代表的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等がアルキル基として挙げられ、フェニル基、ナフチル基等がアリール基として挙げられる。また、R2は水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10、特に1〜6のアルキル基であって、主構造のアルキル基は先述したR1についてのアルキル基と同様であり、置換基としては塩素原子、フッ素原子等のハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、加水分解性シリル基、無水コハク酸基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ヘプタデカフルオロオクチル基等のパーフルオロアルキル基、ポリ(エチレンオキシド)基、ポリ(プロピレンオキシド)基等のポリエーテル基、ポリ(ヘキサフルオロエチレンオキシド)基等のパーフルオロポリエーテル基が挙げられる。
【0017】
本発明のオルガノシロキサンは無水コハク酸基以外に加水分解性シリル基を含むことが必須である。加水分解性シリル基を含有することにより該オルガノシロキサンはシランカップリング剤としての機能を有する。加水分解性シリル基は、ケイ素原子に直結した1価の加水分解性原子(水と反応することでシラノール基を生成する原子)及びケイ素原子に直結した1価の加水分解性基(水と反応することでシラノール基を生成する基)の少なくとも一方を有するシリル基である限り特に限定されない。加水分解性シリル基は、前記オルガノシロキサン中に1個のみ存在しても2個以上存在してもよく、2個以上存在する場合は同種であっても異種であってもよい。加水分解性シリル基及び無水コハク酸基を有するオルガノシロキサンの具体的な構造としては、下記一般式(2)
【化14】

(式中、R1は上記と同様であり、R4は各々独立に炭素数1〜4のアルキル基、R5は各々独立にハロゲン原子、酸素原子を間に挟んでもよい炭素数1〜20、特に1〜6のアルコキシ基、又は炭素数6〜10のアリーロキシ基であり、R6は各々独立に水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜10、特に1〜6のアルキル基であって、該置換基はハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基、及びパーフルオロポリエーテル基から選ばれるものであり、kは2〜6の整数、mは2〜10、特に2〜8の整数、xは1〜3の整数である。p≧2、q≧1、r≧0、p+q+rは3〜6の整数である。各繰り返し単位の配列は任意である。)
で表すことができる。
【0018】
加水分解性シリル基の構造の詳細として、R4は直鎖状又は分岐状であってよく、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等が挙げられ、原料の製造容易さからメチル基が好ましい。R5は水と反応することでシラノールを生成する基であり、具体的は塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシ基、エチレングリコールモノアルキルエーテル基(例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル基)等の炭素原子の一部が酸素原子で置換されたアルコキシ基などが挙げられるが、ここに例示されたものに限らない。それらの中でも原料製造の容易さ、加水分解性のバランスからメトキシ基、エトキシ基が好ましい。また、R6の置換基のハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基、パーフルオロポリエーテル基としては、上記一般式(1)のR2について説明したものと同じものを挙げることができる。
【0019】
上記一般式(2)で示されるオルガノシロキサンの具体例としては、例えば下記式(3)で示されるものが挙げられる。
【化15】

(式中、p’≧2、q’≧1、p’+q’は3〜6の整数である。各繰り返し単位の配列は任意である。)
【0020】
本発明のオルガノシロキサンとして、より具体的には、1,3,5−トリス(無水コハク酸プロピル)−7−トリメトキシシリルオクチルテトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリス(無水コハク酸プロピル)−7−トリメトキシシリルエチルテトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3−ビス(無水コハク酸プロピル)−5,7−ビス(トリメトキシシリルエチル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ビス(無水コハク酸プロピル)−3,7−ビス(トリメトキシシリルエチル)テトラメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
【0021】
本発明のオルガノシロキサンは、1分子中に少なくとも3個のSi−H基を有する環状オルガノハイドロジェンシロキサンと、炭素−炭素不飽和結合を有する加水分解性シリル基含有化合物と、炭素−炭素不飽和結合を有する無水コハク酸とを白金及び/又は白金錯体存在下においてヒドロシリル化させることにより製造される。加水分解性シリル基と、必要により他の有機官能基を導入する場合には、これらの有機官能基を含有する不飽和化合物を上記オルガノハイドロジェンシロキサン中の一部のSi−H基に対してヒドロシリル化した後に、得られた環状オルガノハイドロジェンシロキサン中の残るSi−H基を炭素−炭素不飽和結合を有する無水コハク酸でヒドロシリル化させることで所望の化合物を得ることができる。この際、ヒドロシリル化させる順序としては特に限定されないが、反応効率の観点から炭素−炭素不飽和結合を含有する無水コハク酸を後でヒドロシリル化させることが好ましい。
【0022】
即ち、1分子中に少なくとも3個のSi−H基を有する環状オルガノハイドロジェンシロキサン中に含まれる一部のSi−H基と、炭素−炭素不飽和結合を有する加水分解性シリル基含有化合物と、必要により、置換基としてハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基から選択される少なくとも1種による置換又は非置換の不飽和炭化水素化合物とを白金及び/又は白金錯体存在下においてヒドロシリル化反応させた後、得られた環状オルガノハイドロジェンシロキサン中の残るSi−H基と、炭素−炭素不飽和結合含有無水コハク酸とをヒドロシリル化反応させることが好ましい。
【0023】
本発明のオルガノシロキサンの製造方法において、反応温度は室温(25℃)〜150℃であり、好ましくは40〜130℃、より好ましくは70〜120℃である。室温未満であると反応が進行しない、又は著しく反応速度が低いため生産性に欠ける場合がある。一方、150℃を超える場合には熱分解、又は意図しない副反応が生じるおそれがある。
【0024】
本発明のオルガノシロキサンの製造方法において、反応時間は10分〜24時間である。反応の進行により原料が十分に消費されるような時間であればよいが、好ましくは1〜10時間、より好ましくは2〜7時間である。10分未満であると原料消費が不十分となるおそれがあり、24時間を超えると既に原料が完全に消費されていて、不要な工程となり生産効率が低下してしまう場合がある。
【0025】
本発明のオルガノシロキサンの製造方法において適宜反応溶媒を使用してもよい。原料と非反応性並びに反応に使用する白金錯体の触媒毒にならないようなものであれば特に限定されないが、代表的にはヘキサン、ヘプタンといった脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレンといった芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールといったアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系溶媒が挙げられる。
【0026】
本発明におけるオルガノハイドロジェンシロキサンは、環状シロキサンを主骨格とし、1分子中にSi−H基を3個以上含むものであれば特に限定されず、その他の構造として直鎖状、分岐状といった構造を有してもよい。但し、バインダー成分として用いた際に、ある程度分子量分布が狭い方が不必要な架橋密度の増大を避けることができるため、低分子量とするためにも環状シロキサンであることは必須である。
【0027】
環状オルガノハイドロジェンシロキサンの具体的な例としては1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1−プロピルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられるが、ここに例示されたものに限らない。これらの中でも上述した理由と原料の入手の容易さから1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンが最も好ましい。
【0028】
ここで、本発明においては、炭素−炭素不飽和結合を有する加水分解シリル基含有化合物として下記式
【化16】

(式中、R1は上記と同様であり、R4は各々独立に炭素数1〜4のアルキル基、R5は各々独立にハロゲン原子、酸素原子を間に挟んでもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、又は炭素数6〜10のアリーロキシ基であり、m1は0〜8の整数、xは1〜3の整数である。)
で示されるものであり、必要により加えられる不飽和炭化水素化合物が、下記式
CH2=CH−R6a
(式中、R6aは、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜8のアルキル基であって、該置換基はハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基から選ばれるものである。)
で示されるものであり、炭素−炭素不飽和結合含有無水コハク酸が、下記式
【化17】

(式中、k1は0〜4の整数である。)
で示されるものであり、下記一般式(2)
【化18】

(式中、R1、R4、R5、xは上記の通り。R6は、各々独立に水素原子又は置換基を有してもよい炭素数3〜10のアルキル基であって、該置換基はハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基から選ばれるものであり、kは2〜6の整数、mは2〜10の整数、xは1〜3の整数である。p≧2、q≧1、r≧0、p+q+rは3〜6の整数である。)
で示される無水コハク酸含有環状オルガノシロキサンを得ることが好ましい。
【0029】
本発明における炭素−炭素不飽和結合を有する無水コハク酸は、ヒドロシリル化反応性を有するオレフィン含有の無水コハク酸であれば特に限定されないが、具体的にはアリル無水コハク酸が挙げられる。
また、加水分解性シリル基を導入する際の原料としては、ヒドロシリル化反応性を有するオレフィン含有の加水分解性シランであれば特に限定されないが、具体的にはビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ヘキセニルトリクロロシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ヘキセニルトリエトキシシラン、オクテニルトリクロロシラン、オクテニルトリメトキシシラン、オクテニルトリエトキシシラン等が挙げられるが、ここに例示されたものに限らない。
【0030】
無水コハク酸基及び加水分解性シリル基以外の上述した置換基R6を導入する場合は、その置換基を有するオレフィン化合物(上述した、CH2=CH−R6a)を用いればよい。
【0031】
本発明における反応原料の使用比率はオルガノハイドロジェンシロキサン中のSi−H基1モルに対してオレフィン化合物を合計で0.7〜1.5モルが好ましく、より好ましくは0.9〜1.1モルである。無水コハク酸基含有オレフィン化合物と、加水分解性シリル基含有オレフィン化合物との使用比率は、モル比で5:1〜1:2の割合であることが好ましい。
【0032】
なお、上記環状シロキサンのSi−H基数に対し、上記炭素−炭素不飽和結合を有する加水分解シリル基含有化合物、炭素−炭素不飽和結合無水コハク酸、更に必要により添加されるオレフィン化合物の合計炭素−炭素不飽和結合基の数が少ない場合、R6が水素原子であるものが得られる。
【0033】
本発明におけるヒドロシリル化反応触媒は、公知の技術として知られている白金(Pt)及び/又は白金(Pt)を中心金属とする錯体化合物である。具体的には、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体並びに該錯体を中和処理した化合物や、中心金属の酸化数がPt(II)やPt(0)の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。好ましくは中心金属の酸化数がPt(IV)以外の錯体であることが付加位置選択性の点から望ましく、特にPt(0)、Pt(II)であることが好ましい。
【0034】
本発明におけるヒドロシリル化反応触媒の使用量は、ヒドロシリル化反応の触媒効果が発現する量であれば特に限定されないが、好ましくはオレフィン化合物の合計量1モルに対して白金金属換算で0.000001〜1モルであり、より好ましくは0.0001〜0.01モルである。0.000001モル未満である場合には十分な触媒効果が発現しないおそれがあり、1モルより多い場合には効果が飽和するため生産コストが高くなり不経済になってしまうおそれがある。
【0035】
[オルガノシロキサン組成物]
本発明のオルガノシロキサン組成物は、上記無水コハク酸基及び加水分解性シリル基含有環状オルガノシロキサンを含むものである。この場合、このオルガノシロキサンの保存安定性を維持するために、下記に示す活性水素含有化合物の捕捉剤を安定化剤として添加することが好ましい。本発明における活性水素含有化合物の捕捉剤は無水コハク酸基と加水分解性シリル基とを含有する環状オルガノシロキサンの安定化剤である。
【0036】
ここで、活性水素含有化合物とは、酸無水物基と反応性を有する水素原子含有基(以下、「活性水素含有基」という場合がある。)を含む化合物を指す。該水素原子含有基としては、例えば、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH2)、イミノ基(−NH−)、メルカプト基(−SH)等が挙げられる。よって、活性水素含有化合物としては、例えば、水、アルコール、カルボン酸等の水酸基含有化合物;アンモニア、1級アミン等のアミノ基含有化合物;2級アミン等のイミノ基含有化合物;硫化水素、チオール等のメルカプト基含有化合物等が挙げられる。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。カルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、ギ酸等が挙げられる。1級アミンの具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。2級アミンの具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン等が挙げられる。チオールの具体例としては、メチルチオール、エチルチオール等が挙げられる。
【0037】
上記活性水素含有化合物が、無水コハク酸基と加水分解性シリル基とを含有するオルガノシロキサンと共存していると、まず該活性水素含有化合物が該オルガノシロキサンの経時変化の開始剤となり、その後、活性水素含有化合物が新たに生成しつつ、該オルガノシロキサンは経時変化が連鎖的に進行して純度が低下する。具体的には、例えば、開始剤となる活性水素含有化合物が大気中に湿気として存在する水であり、前記オルガノシロキサンが1,3,5−トリス(無水コハク酸プロピル)−7−トリメトキシシリルエチルテトラメチルシクロテトラシロキサンである場合、下記の反応1が開始反応となり、その後、反応2及び3が繰り返し進行して、該オルガノシロキサンの純度は経時的に低下する。
【0038】
反応1:大気中の水分によるメトキシシリル基の加水分解→メタノール生成
【化19】

反応2:生成したメタノールによる酸無水物環の開環反応→カルボン酸生成
【化20】

反応3:生成したカルボン酸とメトキシシリル基とのエステル交換反応→メタノール生成
【化21】

【0039】
また、本発明において、活性水素含有化合物の捕捉剤とは、活性水素含有化合物と反応して該活性水素含有化合物中の活性水素含有基を消滅させる物質をいい、活性水素含有化合物中の活性水素含有基を消滅させることを「捕捉する」という。
【0040】
活性水素含有化合物によって無水コハク酸基と加水分解性シリル基とを含有するオルガノシロキサンが経時変化する上記の反応機構を考慮すると、活性水素含有化合物の捕捉剤が満たすべき条件は下記のとおりである。
条件1:捕捉剤は、開始剤となる活性水素含有化合物(上記の具体例では大気中の水分)を捕捉できること
条件2:捕捉剤は、反応系で新たに生成する活性水素含有化合物(上記の具体例ではメタノール及び反応2で生成するカルボン酸)を捕捉できること
条件3:捕捉剤が活性水素含有化合物と反応して生成する捕捉生成物自身が無水コハク酸基及び加水分解性シリル基と非反応性であること
条件4:捕捉剤と活性水素含有化合物との反応性が無水コハク酸基及び加水分解性シリル基各々と活性水素含有化合物との反応性よりも優れること
【0041】
活性水素含有化合物の捕捉剤としては、以上の条件を満たす限り、いかなる捕捉剤でも特に限定されずに使用することができるが、好ましくは、例えば、α−シリル脂肪族エステル化合物が挙げられる。本発明において、α−シリル脂肪族エステル化合物とは、α位の炭素原子にシリル基が直結した脂肪族カルボン酸のエステルをいう。該シリル基は、活性水素含有基を含まない限り、いかなるものでもよいが、例えば、活性水素含有基を含まない加水分解性シリル基等が挙げられる。該加水分解性シリル基としては、例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基等を含むものが好ましく、アルコキシ基を含むものが特に好ましい。
【0042】
前記α−シリル脂肪族エステル化合物は、下記一般式(4)
【化22】


(式中、R7は非置換もしくは置換の炭素原子数1〜20、特に1〜10のアルキル基、非置換もしくは置換の炭素原子数5〜20、特に6〜10のシクロアルキル基、又は非置換もしくは置換の炭素原子数6〜20、特に6〜10のアリール基であり、R8は水素原子又はメチル基であり、R9は独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜4のアルキル基であり、R10は独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜4のアルキル基である。yは1〜3の整数である。)
で表される化合物であることが好ましい。
【0043】
上記R7がアルキル基である場合、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。上記R7の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等で置換した基が挙げられ、中でもエチル基、オクチル基が好ましい。
【0044】
上記R9,R10の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられ、メチル基、エチル基が好ましい。
【0045】
α−シリル脂肪族エステル化合物の具体例としては、α−トリメトキシシリルプロピオン酸メチル、α−トリメトキシシリルプロピオン酸エチル、α−トリメトキシシリルプロピオン酸プロピル、α−トリメトキシシリルプロピオン酸ブチル、α−トリメトキシシリルプロピオン酸ペンチル、α−トリメトキシシリルプロピオン酸ヘキシル、α−トリメトキシシリルプロピオン酸オクチル、α−トリメトキシシリルプロピオン酸デシル、α−トリメトキシシリルプロピオン酸シクロヘキシル、α−トリメトキシシリルプロピオン酸イソプロピル、α−トリメトキシシリルプロピオン酸フェニル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸メチル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸エチル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸プロピル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸ブチル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸ペンチル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸ヘキシル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸オクチル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸デシル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸シクロヘキシル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸イソプロピル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸フェニル、α−メチルジメトキシシリルプロピオン酸メチル、α−メチルジメトキシシリルプロピオン酸エチル、α−メチルジメトキシシリルプロピオン酸プロピル、α−メチルジメトキシシリルプロピオン酸ブチル、α−メチルジメトキシシリルプロピオン酸ペンチル、α−メチルジメトキシシリルプロピオン酸ヘキシル、α−メチルジメトキシシリルプロピオン酸オクチル、α−メチルジメトキシシリルプロピオン酸デシル、α−メチルジメトキシシリルプロピオン酸シクロヘキシル、α−メチルジメトキシシリルプロピオン酸イソプロピル、α−メチルジメトキシシリルプロピオン酸フェニル、α−メチルジエトキシシリルプロピオン酸メチル、α−メチルジエトキシシリルプロピオン酸エチル、α−メチルジエトキシシリルプロピオン酸プロピル、α−メチルジエトキシシリルプロピオン酸ブチル、α−メチルジエトキシシリルプロピオン酸ペンチル、α−メチルジエトキシシリルプロピオン酸ヘキシル、α−メチルジエトキシシリルプロピオン酸オクチル、α−メチルジエトキシシリルプロピオン酸デシル、α−メチルジエトキシシリルプロピオン酸シクロヘキシル、α−メチルジエトキシシリルプロピオン酸イソプロピル、α−メチルジエトキシシリルプロピオン酸フェニル、α−ジメチルメトキシシリルプロピオン酸メチル、α−ジメチルメトキシシリルプロピオン酸エチル、α−ジメチルメトキシシリルプロピオン酸プロピル、α−ジメチルメトキシシリルプロピオン酸ブチル、α−ジメチルメトキシシリルプロピオン酸ペンチル、α−ジメチルメトキシシリルプロピオン酸ヘキシル、α−ジメチルメトキシシリルプロピオン酸オクチル、α−ジメチルメトキシシリルプロピオン酸デシル、α−ジメチルメトキシシリルプロピオン酸シクロヘキシル、α−ジメチルメトキシシリルプロピオン酸イソプロピル、α−ジメチルメトキシシリルプロピオン酸フェニル、α−ジメチルエトキシシリルプロピオン酸メチル、α−ジメチルエトキシシリルプロピオン酸エチル、α−ジメチルエトキシシリルプロピオン酸プロピル、α−ジメチルエトキシシリルプロピオン酸ブチル、α−ジメチルエトキシシリルプロピオン酸ペンチル、α−ジメチルエトキシシリルプロピオン酸ヘキシル、α−ジメチルエトキシシリルプロピオン酸オクチル、α−ジメチルエトキシシリルプロピオン酸デシル、α−ジメチルエトキシシリルプロピオン酸シクロヘキシル、α−ジメチルエトキシシリルプロピオン酸イソプロピル、α−ジメチルエトキシシリルプロピオン酸フェニル、α−トリメチルシリルプロピオン酸メチル、α−トリメチルシリルプロピオン酸エチル、α−トリメチルシリルプロピオン酸プロピル、α−トリメチルシリルプロピオン酸ブチル、α−トリメチルシリルプロピオン酸ペンチル、α−トリメチルシリルプロピオン酸ヘキシル、α−トリメチルシリルプロピオン酸オクチル、α−トリメチルシリルプロピオン酸デシル、α−トリメチルシリルプロピオン酸シクロヘキシル、α−トリメチルシリルプロピオン酸イソプロピル、α−トリメチルシリルプロピオン酸フェニル、α−トリエチルシリルプロピオン酸メチル、α−トリエチルシリルプロピオン酸エチル、α−トリエチルシリルプロピオン酸プロピル、α−トリエチルシリルプロピオン酸ブチル、α−トリエチルシリルプロピオン酸ペンチル、α−トリエチルシリルプロピオン酸ヘキシル、α−トリエチルシリルプロピオン酸オクチル、α−トリエチルシリルプロピオン酸デシル、α−トリエチルシリルプロピオン酸シクロヘキシル、α−トリエチルシリルプロピオン酸イソプロピル、α−トリエチルシリルプロピオン酸フェニル等が挙げられる。これらの中でも捕捉反応性の高さ及び材料の入手のしやすさからα−トリメトキシシリルプロピオン酸エチル、α−メチルジメトキシシリルプロピオン酸オクチルがより好ましい。
【0046】
α−シリル脂肪族エステル化合物が活性水素含有化合物と反応すると、α位の炭素原子からシリル基が分離して、活性水素含有基を含まない有機ケイ素化合物と活性水素含有基を含まない脂肪族カルボン酸エステルとが生成する。いずれの生成物も活性水素含有基を含まないので、無水コハク酸基と加水分解性シリル基とを含有するオルガノシロキサンとは反応性を有しない。具体的には、例えば、活性水素含有化合物がメタノールであり、活性水素含有化合物の捕捉剤がα−トリメトキシシリルプロピオン酸エチルである場合、下記に示した捕捉反応により生成する化合物はテトラメトキシシラン及びプロピオン酸エチルであり、いずれも無水コハク酸基と加水分解性シリル基とを含有するオルガノシロキサンとは反応性を有しない。
【化23】

【0047】
なお、本発明で用いるα−シリル脂肪族エステル化合物は、α−シリル脂肪族エステル化合物とケト−エノール平衡の関係にあるシリルケテンアセタールとの混合物であってもよく、この場合、α−シリル脂肪族エステル化合物の量とは、α−シリル脂肪族エステル化合物とシリルケテンアセタールとの合計の量をいうものとする。
【0048】
安定化剤の使用量は本発明の環状オルガノシロキサン100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部であり、より好ましくは0.1〜5質量部である。該使用量が0.01〜10質量部の範囲であると、該オルガノシロキサンの純度を安定化剤の添加によって不要に低下させることなく、使用量に応じた安定化効果を得ることができる。
【0049】
本発明のオルガノシロキサン組成物は、無水コハク酸基と加水分解性シリル基とを含有する環状オルガノシロキサン及び上記の安定化剤を含んでなるものである。該組成物は安定化剤を含むため、室温及び高温のいずれにおいて長期に保存した後であっても、該オルガノシロキサンの純度の低下が生じにくく、酸無水物バインダー剤並びにカップリング剤の作用を効果的に発揮することができる。環状オルガノシロキサン及び安定化剤の各々は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、環状オルガノシロキサン(有機ケイ素化合物)及び安定化剤の配合量は、本発明の安定化方法について説明した使用量と同様である。本発明のオルガノシロキサン組成物は、該オルガノシロキサンと該安定化剤とを常法に従い均一に混合することにより得ることができる。本発明のオルガノシロキサン組成物は、特に樹脂改質剤、粘着剤、接着剤、粉体処理剤等の用途に有用である。
【0050】
[熱硬化性樹脂組成物]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサンと熱硬化性樹脂を含有する。本発明の無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサンを含む熱硬化性樹脂組成物において、熱硬化性樹脂はフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、バインダー剤として組み込むことが可能なポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂において本発明のオルガノシロキサンの性能を発揮しやすい。
【0051】
特に、ポリイミド樹脂組成物とする場合、本発明の無水コハク酸基含有オルガノシロキサンに対して、フェニレンジアミン、ベンジリデンジアミン、アルキレンジアミン、ビスフェノールA型ジアミン等のジアミン化合物とを当量比で好ましくは0.7〜1.3の割合で配合してポリアミック酸溶液を得た後、常法により加熱することでポリイミド樹脂を得ることができる。
【0052】
本発明の無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサンを含む熱硬化性樹脂組成物において、上述したバインダー剤としての使用だけでなく、一般のシランカップリング剤と同様に樹脂改質剤として使用することができる。
【0053】
該熱硬化性樹脂組成物は他成分として機械強度向上を狙った無機粉体添加時に樹脂−無機粉体のカップリング効果が発現し、従来の2官能酸無水物と比較して成形物の機械的強度向上を見込むことができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例、比較例を用いてより詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、粘度はB型粘度計により測定した25℃における値を示す。また、下記例において、部は質量部を表す。
【0055】
[実施例1]1,3,5−トリス(無水コハク酸プロピル)−7−トリメトキシシリルオクチルテトラメチルシクロテトラシロキサンの合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた500mlセパラブルフラスコに、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン24.0部(0.1モル)、トルエン24.0部、白金錯体(Pt(0)の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体)のトルエン溶液を、Si−H基1モルに対して白金錯体が0.00002モル(白金換算)に相当する量を納め撹拌混合した。その後、加熱して内温80℃となったところでオクテニルトリメトキシシラン23.2部(0.1モル)を30分かけて滴下した。滴下と同時に反応が起こり、発熱が生じ、反応液温度が80℃から徐々に上昇したため、加熱を停止し、反応液温度が90℃を超えないように調整しながら滴下を継続した。滴下終了後、内温90℃となるように加熱し、内温が90℃に到達したところでアリル無水コハク酸42.0部(0.3モル)を30分かけて滴下した。滴下と同時に反応が起こり、発熱が生じ、反応液温度が90℃から徐々に上昇したため、加熱を停止し、反応液温度が110℃を超えないように調整しながら滴下を継続した。滴下終了後、内温90℃となるように加熱をしながら反応液を1時間熟成した後に、反応液のIR並びに水素ガス発生量測定を行いSi−H基の残存が無いことを確認した。その後、減圧留去によりトルエンを除去することで表題シロキサンを粘度22100mPa・s、屈折率1.4502(25℃、以下同じ)の淡黄色透明液体として得た。
【0056】
[実施例2]1,3,5−トリス(無水コハク酸プロピル)−7−トリメトキシシリルエチルテトラメチルシクロテトラシロキサンの合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた500mlセパラブルフラスコに、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン24.0部(0.1モル)、トルエン24.0部、白金錯体のトルエン溶液を、Si−H基1モルに対して白金錯体が0.00002モル(白金換算)に相当する量を納め撹拌混合した。その後、加熱して内温80℃となったところでビニルトリメトキシシラン14.8部(0.1モル)を30分かけて滴下した。滴下と同時に反応が起こり、発熱が生じ、反応液温度が80℃から徐々に上昇したため、加熱を停止し、反応液温度が90℃を超えないように調整しながら滴下を継続した。滴下終了後、内温90℃となるように加熱し、内温が90℃に到達したところでアリル無水コハク酸42.0部(0.3モル)を30分かけて滴下した。滴下と同時に反応が起こり、発熱が生じ、反応液温度が90℃から徐々に上昇したため、加熱を停止し、反応液温度が110℃を超えないように調整しながら滴下を継続した。滴下終了後、内温90℃となるように加熱をしながら反応液を1時間熟成した後に、反応液のIR並びに水素ガス発生量測定を行いSi−H基の残存が無いことを確認した。その後、減圧留去によりトルエンを除去することで表題シロキサンを粘度20400mPa・s、屈折率1.4706の淡黄色透明液体として得た。
【0057】
[実施例3]1,3−ビス(無水コハク酸プロピル)−5,7−ビス(トリメトキシシリルエチル)テトラメチルシクロテトラシロキサンと1,5−ビス(無水コハク酸プロピル)−3,7−ビス(トリメトキシシリルエチル)テトラメチルシクロテトラシロキサンの混合物の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた500mlセパラブルフラスコに、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン24.0部(0.1モル)、トルエン24.0部、白金錯体のトルエン溶液を、Si−H基1モルに対して白金錯体が0.00002モル(白金換算)に相当する量を納め撹拌混合した。その後、加熱して内温80℃となったところでビニルトリメトキシシラン29.6部(0.2モル)を30分かけて滴下した。滴下と同時に反応が起こり、発熱が生じ、反応液温度が80℃から徐々に上昇したため、加熱を停止し、反応液温度が90℃を超えないように調整しながら滴下を継続した。滴下終了後、内温90℃となるように加熱し、内温が90℃に到達したところでアリル無水コハク酸28.0部(0.2モル)を30分かけて滴下した。滴下と同時に反応が起こり、発熱が生じ、反応液温度が90℃から徐々に上昇したため、加熱を停止し、反応液温度が110℃を超えないように調整しながら滴下を継続した。滴下終了後、内温90℃となるように加熱をしながら反応液を1時間熟成した後に、反応液のIR並びに水素ガス発生量測定を行いSi−H基の残存が無いことを確認した。その後、減圧留去によりトルエンを除去することで表題シロキサン混合物を粘度1030mPa・s、屈折率1.4570の淡黄色透明液体として得た。
【0058】
[比較例1]1,3,5,7−テトラキス(無水コハク酸プロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサンの合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた500mlセパラブルフラスコに、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン24.0部(0.1モル)、トルエン24.0部、白金錯体のトルエン溶液を、SiH基1モルに対して白金錯体が0.00002モル(白金換算)に相当する量を納め撹拌混合した。その後、加熱して内温90℃となったところでアリル無水コハク酸56.0部(0.4モル)を30分かけて滴下した。滴下と同時に反応が起こり、発熱が生じ、反応液温度が90℃から徐々に上昇したため、加熱を停止し、反応液温度が110℃を超えないように調整しながら滴下を継続した。滴下終了後、内温90℃となるように加熱をしながら反応液を1時間熟成した後に、反応液のIR並びに水素ガス発生量測定を行いSi−H基の残存が無いことを確認した。その後、N−メチルピロリドン24.0部を添加し、内温が150℃となるまで加熱しつつ留出するトルエンを除去することで表題シロキサンを主成分として50%有するN−メチルピロリドン溶液を粘度2140mPa・s、屈折率1.2331の淡黄色透明液体として得た。
【0059】
[実験例]
〔保存安定性試験〕
実施例1〜3で得られたオルガノシロキサンとそれらに安定化剤としてα−トリメトキシシリルプロピオン酸エチルを添加した組成物について室温(25℃)又は50℃の恒温槽で1ヶ月保存し、粘度増加の有無を確認した。促進試験前後の粘度測定結果を表1に示す。
【0060】
【表1】


上記の結果は、室温及び高温において無水コハク酸基と加水分解性シリル基を有するオルガノシロキサンが経時増粘挙動を示し、安定化剤を配合することにより増粘を抑制可能であることを実証するものである。
【0061】
[実施例4〜9,比較例2〜5]
ポリイミド樹脂組成物の調製
下記表2に示す酸無水物、ジアミン化合物を官能基比:酸無水物/アミノ基=1となるように配合して調製したポリアミック酸溶液を150〜200℃で脱水、イミド化させた後、溶媒で希釈することで主成分30質量%のポリイミドワニスを得た。更に、溶剤分散型のシリカゾルを添加し、ポリイミド樹脂組成物とした。
【0062】
【表2】

酸無水物 CHAH−2:シクロヘキシルテトラカルボン酸無水物(下記構造)
【化24】

アミン化合物 AM−B:ビスフェノールA型ジアミン(下記構造)
【化25】

溶媒 NMP:N−メチルピロリドン
シリカゾル スノーテックスPMA(日産化学工業株式会社製)
【0063】
ポリイミド硬化皮膜の物性測定
実施例4〜9、比較例2〜5で得られた樹脂組成物をガラス基板上に厚さ20μmとなるように塗布した後、150℃×1時間乾燥し、ポリイミド硬化皮膜を形成した。得られた硬化皮膜について対ガラス基材への碁盤目密着性試験並びに鉛筆硬度(JIS K5600)を測定した。結果を表3に示す。
【0064】
【表3】

※ 上記碁盤目密着性は10×10マスに切れ目を入れた表面にセロハンテープを貼り付けた後に剥がして、基材に残った皮膜のマス目の数を示す。
【0065】
上記の結果は本発明のオルガノシロキサンが多官能酸無水物として機能するため、既存の二官能酸無水物を使用した樹脂よりも架橋密度が高くなり、結果として、皮膜硬度が向上することを示し、更に加水分解性シリル基を含有するためガラス基材並びにシリカとのカップリング効果が発現し、密着性向上と皮膜硬度が向上することを示す。一方、加水分解性シリル基を含まない多官能酸無水物は高硬度を発現するが接着性に劣り、既存の二官能酸無水物については十分な硬度も発現しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサン。
【化1】

(式中、R1は各々独立に炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基、R2は各々独立に水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基であって、該置換基はハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、加水分解性シリル基、無水コハク酸基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基から選ばれるものであり、その内加水分解性シリル基を置換基とするR2が1個以上、無水コハク酸基を置換基とするR2が2個以上である。nは3〜6の整数である。)
【請求項2】
下記一般式(2)で示される請求項1記載の無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサン。
【化2】

(式中、R1は上記と同様であり、R4は各々独立に炭素数1〜4のアルキル基、R5は各々独立にハロゲン原子、酸素原子を間に挟んでもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、又は炭素数6〜10のアリーロキシ基であり、R6は各々独立に水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基であって、該置換基はハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基から選ばれるものであり、kは2〜6の整数、mは2〜10の整数、xは1〜3の整数である。p≧2、q≧1、r≧0、p+q+rは3〜6の整数である。)
【請求項3】
下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項2記載の無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサン。
【化3】

(式中、p’≧2、q’≧1、p’+q’は3〜6の整数である。)
【請求項4】
環状シロキサンがシクロテトラシロキサンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサン。
【請求項5】
1分子中に少なくとも3個のSi−H基を有する環状オルガノハイドロジェンシロキサンと、炭素−炭素不飽和結合を有する加水分解性シリル基含有化合物と、炭素−炭素不飽和結合を有する無水コハク酸とを白金及び/又は白金錯体存在下においてヒドロシリル化させることを特徴とする下記一般式(1)で示される無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサンの製造方法。
【化4】

(式中、R1は各々独立に炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基、R2は各々独立に水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基であって、該置換基はハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、加水分解性シリル基、無水コハク酸基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基から選ばれるものであり、その内加水分解性シリル基を置換基とするR2が1個以上、無水コハク酸基を置換基とするR2が2個以上である。nは3〜6の整数である。)
【請求項6】
1分子中に少なくとも3個のSi−H基を有する環状オルガノハイドロジェンシロキサン中に含まれる一部のSi−H基と、炭素−炭素不飽和結合を有する加水分解性シリル基含有化合物と、必要により、置換基としてハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基から選択される少なくとも1種による置換又は非置換の不飽和炭化水素化合物とを白金及び/又は白金錯体存在下においてヒドロシリル化反応させた後、得られた環状オルガノハイドロジェンシロキサン中の残るSi−H基と、炭素−炭素不飽和結合含有無水コハク酸とをヒドロシリル化反応させることを特徴とする請求項5記載の無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサンの製造方法。
【請求項7】
炭素−炭素不飽和結合を有する加水分解シリル基含有化合物が、下記式
【化5】

(式中、R1は上記と同様であり、R4は各々独立に炭素数1〜4のアルキル基、R5は各々独立にハロゲン原子、酸素原子を間に挟んでもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、又は炭素数6〜10のアリーロキシ基であり、m1は0〜8の整数、xは1〜3の整数である。)
で示されるものであり、必要により加えられる不飽和炭化水素化合物が、下記式
CH2=CH−R6a
(式中、R6aは、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜8のアルキル基であって、該置換基はハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基から選ばれるものである。)
で示されるものであり、炭素−炭素不飽和結合含有無水コハク酸が、下記式
【化6】

(式中、k1は0〜4の整数である。)
で示されるものであり、下記一般式(2)
【化7】

(式中、R1、R4、R5、xは上記の通り。R6は、各々独立に水素原子又は置換基を有してもよい炭素数3〜10のアルキル基であって、該置換基はハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基から選ばれるものであり、kは2〜6の整数、mは2〜10の整数、xは1〜3の整数である。p≧2、q≧1、r≧0、p+q+rは3〜6の整数である。)
で示される無水コハク酸含有環状オルガノシロキサンを得ることを特徴とする請求項6記載の無水コハク酸含有環状オルガノシロキサンの製造方法。
【請求項8】
炭素−炭素不飽和結合を有する加水分解シリル基含有化合物がビニルトリメトキシシランであり、炭素−炭素不飽和結合含有無水コハク酸がアリル無水コハク酸であり、下記一般式(3)
【化8】

(式中、p’≧2、q’≧1、p’+q’は3〜6の整数である。)
で示される無水コハク酸含有環状オルガノシロキサンを得ることを特徴とする請求項7記載の無水コハク酸含有環状オルガノシロキサンの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項記載の無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサンと、活性水素含有化合物の捕捉剤として下記一般式(4)で示されるα−シリル脂肪族エステル化合物とを含んでなるオルガノシロキサン組成物。
【化9】

(式中、R7は非置換もしくは置換の炭素原子数1〜20のアルキル基、非置換もしくは置換の炭素原子数5〜20のシクロアルキル基、又は非置換もしくは置換の炭素原子数6〜20のアリール基であり、R8は水素原子又はメチル基であり、R9は独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜4のアルキル基であり、R10は独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜4のアルキル基である。yは1〜3の整数である。)
【請求項10】
下記一般式(1)で示される無水コハク酸基含有環状オルガノシロキサンを含む熱硬化性樹脂組成物。
【化10】

(式中、R1は各々独立に炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基、R2は各々独立に水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基であって、該置換基はハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、加水分解性シリル基、無水コハク酸基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基から選ばれるものであり、その内加水分解性シリル基を置換基とするR2が1個以上、無水コハク酸基を置換基とするR2が2個以上である。nは3〜6の整数である。)
【請求項11】
無水コハク酸基含有オルガノポリシロキサンが、下記一般式(2)で示されるものである請求項10記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化11】

(式中、R1は上記と同様であり、R4は各々独立に炭素数1〜4のアルキル基、R5は各々独立にハロゲン原子、酸素原子を間に挟んでもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、又は炭素数6〜10のアリーロキシ基であり、R6は各々独立に水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基であって、該置換基はハロゲン原子、ビニル基、エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、パーフルオロアルキル基、ポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基から選ばれるものであり、kは2〜6の整数、mは2〜10の整数、xは1〜3の整数である。p≧2、q≧1、r≧0、p+q+rは3〜6の整数である。)
【請求項12】
無水コハク酸基含有オルガノポリシロキサンが下記一般式(3)で示されるものである請求項11記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化12】

(式中、p’≧2、q’≧1、p’+q’は3〜6の整数である。)
【請求項13】
上記熱硬化性樹脂組成物がポリアミド樹脂又はポリイミド樹脂を含むものである請求項10〜12のいずれか1項記載の熱硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2013−32498(P2013−32498A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−135484(P2012−135484)
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】