説明

無水マレイン酸−スチレン共重合体をベースにした分散剤粘度調整剤

本発明により、以下のモノマー誘導単位を含むインターポリマー組成物:(i)2個〜30個の炭素原子を含有する脂肪族オレフィンおよびビニル芳香族モノマーのうちの少なくとも1種、および(ii)少なくとも1種のα,β−不飽和アシル化剤が提供される。ここで、そのアシル化剤モノマーの一部は、エステル化され、ここで、そのアシル化剤の一部は、少なくとも1種の芳香族アミンと縮合されて、良好な粘度調整および分散性能を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、特に、ヘビーデューティーディーゼルエンジンにおいて、すすで誘発される粘度上昇を減らすために、燃料およびエンジン油潤滑剤で使用される分散剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘビーデューティーディーゼル車両は、環境への排気を減らすために、排気ガス再循環(EGR)エンジンを使用し得る。このエンジンを通して排気ガスを再循環させる結果として、EGRなしのエンジンと比較して、すすの構造が異なり、より低いすすレベルで、そのオイルの粘度が上昇する。オイルは、最小限の粘度上昇(例えば、6%のすす装填で、12mm/秒(cSt)未満)を示すことが望ましい。
【0003】
また、潤滑油組成物は、広範囲の温度にわたって、比較的に安定した粘度を維持することが望ましい。温度の上昇に伴う粘度低下の程度を少なくするために、または温度の低下に伴う粘度上昇の程度を少なくするために、またはそれらの両方のために、粘度向上剤がしばしば使用される。それゆえ、粘度向上剤は、それを含有するオイルの温度変化に伴う粘度の変化を改善する。このオイルの流動特性が向上する。
【0004】
無水マレイン酸でラジカル的にグラフトされ種々のアミンと反応されたエチレン−プロピレン共重合体から製造される伝統的な分散剤粘度調整剤(DVM)は、ディーゼルエンジンにおいて油が濃厚になることを防ぐという、望ましい性能を示した。芳香族アミンは、このことに関して、良好な性能を示すと言われている。この種のDVMは、例えば、特許文献1(Valchoら)および特許文献2(Escheら)(各々、2000年8月22日)および特許文献3(Liuら、2000年9月12日)で開示されている。
【0005】
分散剤を調製するために、他の重合体骨格もまた使用されている。例えば、イソブチレンおよびイソプレンから誘導された重合体(「IOB/IP」)は、分散剤の調製で使用され、特許文献4で報告されている。また、無水マレイン酸およびスチレン含有重合体から調製された窒素含有エステル化カルボキシル含有インターポリマーは、特許文献5(Vargoら)から公知である。
【特許文献1】米国特許第6,107,257号明細書
【特許文献2】米国特許第6,107,258号明細書
【特許文献3】米国特許第6,117,825号明細書
【特許文献4】国際公開第01/98387号パンフレット
【特許文献5】米国特許第6,544,935号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、エンジン試験において改良された性能を有する低価格の粘度調整剤を提供し、特に、ディーゼルエンジン(とりわけ、排気ガス再循環を使用するヘビーデューティーディーゼルエンジン)において、良好な粘度指数、および良好な分散および寛容(toleration)特性を提供するという問題を解決する。本発明の物質は、さらに、潤滑剤に、酸化防止性能特性を与えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン)およびエステル共重合体(例えば、エステル化無水マレイン酸モノマー)の重合体をベースにした分散剤粘度調整剤を提供し、これは、とりわけ、重合体骨格の分子量および種類と、一般に、アミン成分(これは、著しく異なる重合体骨格につながる)の選択とによって、このような以前の分散剤とは区別される。本発明の材料は、エンジン試験において、優れた性能を示す。
【0008】
(発明の要旨)
従って、本発明は、(i)(a)ビニル芳香族モノマーおよび(b)2個〜30個の炭素原子を含有する脂肪族オレフィンから選択される少なくとも1種のモノマーと(ii)少なくとも1種のα,β−不飽和アシル化剤とを含有するモノマーから誘導された、エステル化窒素官能基化インターポリマー組成物を提供する;ここで、該アシル化剤誘導単位の一部は、エステル化され、ここで、該アシル化剤誘導単位の一部は、該アシル化剤モノマー誘導単位と縮合できる少なくとも1個のN−H基を含有する少なくとも1種の芳香族アミンと縮合される。
【0009】
本発明はまた、前述の反応生成物と潤滑粘性のあるオイルとを含有する潤滑剤および潤滑剤濃縮物だけでなく、内燃機関にこれらの潤滑剤および潤滑剤濃縮物を供給することにより、この内燃機関を潤滑させる方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、分散剤粘度調整剤を調製する方法を提供し、該方法は、以下の(a)、(b)および(c)を任意の順序で反応させる工程を包含する:(a)(i)(a)ビニル芳香族モノマーおよび(b)2個〜30個の炭素原子を含有する脂肪族オレフィンから選択される少なくとも1種のモノマーと(ii)少なくとも1種のα,β−不飽和アシル化剤とのモノマー誘導単位を含有するカルボキシ含有インターポリマー;(b)8個〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルコール;および(c)該アシル化剤と縮合できる少なくとも1個のN−H基を含有する少なくとも1種の芳香族アミン。
【0011】
本発明はまた、潤滑油組成物の粘度指数を向上させる方法を提供し、該方法は、該組成物に、少量で粘度向上量の本明細書中で記述した組成物を取り込む工程を包含する。
【0012】
本発明はまた、内燃機関(特に、ディーゼルエンジン(例えば、ヘビーデューティーディーゼルエンジン))を潤滑させる方法を提供し、該方法は、この内燃機関に、本明細書中で記述した組成物を供給する工程を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
種々の特徴および実施形態は、非限定的な例示として以下に記載される。
【0014】
本明細書中で使用する「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」との用語は、通常の意味で使用され、これは、当業者に周知である。具体的には、それは、分子の残部に直接結合した炭素原子を有しそして主として炭化水素的な性質を有する基を意味する。ヒドロカルビル基の例には、以下が挙げられる:
炭化水素置換基、すなわち、脂肪族置換基(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環族置換基(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)、および芳香族置換された芳香族置換基、脂肪族置換された芳香族置換基および脂環族置換された芳香族置換基などだけでなく、環状置換基。ここで、この環は、分子の他の部分により、完成されている(例えば、2個の置換基は、一緒になって、環を形成する);
置換された炭化水素置換基、すなわち、非炭化水素基を含有する置換基。この非炭化水素基は、本発明の文脈では、置換基の主として炭化水素的な性質を変化させない(例えば、ハロ(特に、クロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ);
ヘテロ置換基、すなわち、本発明の文脈内では、主として炭化水素的な性質を有しながら、環または鎖の中に存在する炭素以外の原子を有するが、その他は炭素原子で構成されている置換基。ヘテロ原子には、イオウ、酸素、窒素が挙げられ、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基を包含する。一般に、このヒドロカルビル基では、各10個の炭素原子に対し、2個以下の非炭化水素置換基、または1個以下の非炭化水素置換基が存在する。典型的には、このヒドロカルビル基には、このような非炭化水素置換基は存在しない。
【0015】
(カルボキシ含有インターポリマー)
本発明は、モノマー誘導単位(i)および(ii)を含むインターポリマー組成物に関し、ここで、(i)は、2個〜30個の炭素原子を含有する脂肪族オレフィンおよびビニル芳香族モノマーの少なくとも1種であり、そして(ii)は、少なくとも1種のα,β−不飽和アシル化剤である。
【0016】
本明細書中で使用するカルボキシ含有インターポリマーとの用語は、カルボキシ含有モノマーを使用して調製される重合体を意味する。このカルボキシ含有モノマーは、他のモノマーと重合されて、このカルボキシ含有インターポリマーを形成する。このカルボキシ含有モノマーは、その重合体骨格に取り込まれるので、そのカルボキシ基は、この重合体骨格から伸長し、例えば、このカルボキシ基は、直接、この重合体骨格に結合される。本発明の芳香族アミンが固着され得る適当なカルボキシ含有共重合体は、米国特許第6,544,935号で詳細に記載されており、このような重合体の合成および組成のさらなる詳細については、その文献を参照すべきである。
【0017】
本発明で有用なエステルを調製する際に有用なカルボキシ含有インターポリマー(すなわち、「骨格」重合体)は、少なくとも2種のモノマーの共重合体、三元共重合体および他のインターポリマーである。モノマー(i)の一方は、2個〜30個の炭素原子を含有する脂肪族オレフィンおよびビニル芳香族モノマーのうちの少なくとも1種である。該モノマー(ii)の他方は、少なくとも1種のα,β−不飽和アシル化剤(典型的には、カルボン酸またはそれらの誘導体)である。このカルボン酸の誘導体は、(i)オレフィンまたはビニル芳香族モノマーと重合されるものであり、従って、そのエステル(特に、低級アルキルエステル(例えば、そのエステルアルキル基中に、2個〜7個の炭素原子(特に、2個の炭素原子)を含有するもの))、これらの酸のハロゲン化物または無水物であり得る。(i)と(ii)とのモル比は、1:2〜3:1であり得、1実施形態では、1:1である。このカルボキシ含有インターポリマーは、典型的には、このオレフィンまたはビニル芳香族モノマーとα,β−不飽和カルボン酸またはそれらの誘導体とを重合することにより、調製される。別々に調製される2種またはそれ以上の適合性(すなわち、互いに非反応性)インターポリマーの混合物もまた、これらの重合体または重合体混合物の各々が、全体的に、以下で特定する分子量またはRSVを有するなら、使用できる。
【0018】
(脂肪族オレフィン)
本発明のインターポリマーの調製で有用な適当な脂肪族オレフィンモノマーには、2個〜30個の炭素原子のモノオレフィンが挙げられる。この群には、内部オレフィン(すなわち、ここで、そのオレフィン性不飽和は、「1」位、すなわち、アルファ位にはない)およびモノ−1−オレフィンまたはアルファ−オレフィン(これは、有利に使用できる)が含まれる。代表的なオレフィンには、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1−ヘンエイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、1−ペンタコセン、1−ヘキサコセン、1−オクタコセンおよび1−ノナコセンが挙げられる。市販のアルファ−オレフィン混合物もまた、使用できる。代表的なアルファ−オレフィン混合物には、C15〜C18 アルファ−オレフィン、C12〜C16 アルファ−オレフィン、C14〜C16 アルファ−オレフィン、C14〜C18 アルファ−オレフィン、C16〜C18 アルファ−オレフィン、C16〜C20 アルファ−オレフィン、およびC22〜C28 アルファ−オレフィンが挙げられる。さらに、C30+ アルファ−オレフィン画分(例えば、Conoco,Inc.から市販されているもの)は、使用できる。適当なオレフィンモノマーには、エチレン、プロピレンおよび1−ブテンが挙げられる。モノ−オレフィンを調製する手順は、当業者に周知である。
【0019】
(ビニル芳香族モノマー)
これらのα,β−不飽和アシル化剤と重合できる適当なビニル芳香族モノマーには、スチレンおよび置換スチレンが挙げられる。他のビニル芳香族モノマー(例えば、ビニルアントラセンおよびビニルナフタレン)もまた、使用できる。置換スチレンには、ハロ−置換基、アルコキシ−置換基、カルボキシ−置換基、ヒドロキシ−置換基、スルホニル−置換基、ニトロ−置換基、ニトロソ−置換基およびヒドロカルビル−置換基(ここで、そのヒドロカルビル基は、典型的には、1個〜12個の炭素原子を有する)、ならびに他の置換基を有するスチレンが挙げられる。これらのヒドロカルビル置換スチレンの代表的なものには、アルファ−メチルスチレン、パラ−第三級ブチルスチレン、アルファ−エチルスチレンおよびパラ−低級アルコキシスチレンがある。2種またはそれ以上のビニル芳香族モノマーの混合物は、使用できる。しばしば、スチレンおよびアルキルスチレンが選択される。
【0020】
(α,β−不飽和アシル化剤)
本発明のインターポリマーの調製で有用な適当なα,β−不飽和アシル化剤は、カルボン酸、それらの無水物、ハロゲン化物または低級アルキルエステルに代表される。このような物質の混合物もまた、使用できる。これらには、モノ−カルボン酸(例えば、アクリル酸およびメタクリル酸)およびそれらのエステル(例えば、低級アルキルエステル)だけでなく、ジカルボン酸、それらの無水物およびエステル(例えば、低級アルキルエステル)が挙げられる。これらの物質において、炭素−炭素二重結合は、典型的には、そのカルボキシ官能基の少なくとも1個に対して、α,β−位置にあり(例えば、イタコン酸、その無水物またはエステル、α−メチレングルタル酸またはそのエステル)、そしてα,β−ジカルボン酸、それらの無水物またはエステル(例えば、マレイン酸または無水物、フマル酸、またはそれらのエステル(例えば、それらの低級アルキル(すなわち、7個以下の炭素原子を含有するもの)エステル)のカルボキシ官能基の両方に対して、α,β−位置にあり得る。通常、これらの化合物のカルボキシ官能基は、4個までの炭素原子(例えば、2個の炭素原子)で分離されている。
【0021】
適当なα,β−不飽和ジカルボン酸、無水物またはエステルの1種には、次式に対応する化合物(それらの幾何異性体(すなわち、シスおよびトランス)を含めて)が挙げられる:
【0022】
【化1】

ここで、各Rは、別個に、水素、または8個までの炭素原子を有するヒドロカルビル(例えば、アルキル、アルカリールまたはアリール)である。特定の実施形態では、少なくとも1個のRは、水素であり、そして両方のRは、水素であり得る。各R’は、別個に、水素またはヒドロカルビル(例えば、7個までの炭素原子を有する低級アルキル(例えば、メチル、エチル、ブチルまたはヘプチル))である。R’’は、別個に、芳香族(単核性または縮合多核性)炭化水素であり、これには下記の芳香族アミンまたはポリアミンを代表する。これらのα,β−不飽和ジカルボン酸、それらの無水物またはアルキルエステルは、典型的には、全体で、25個までの炭素原子、通常、15個までの炭素原子を含有する。例には、マレイン酸または無水物;ベンジル無水マレイン酸;クロロ無水マレイン酸;マレイン酸ヘプチル;イタコン酸または無水物;シトラコン酸または無水物、フマル酸エチル;フマル酸、メサコン酸;マレイン酸エチルイソプロピル;フマル酸イソプロピル;マレイン酸ヘキシルメチル;およびフェニル無水マレイン酸が挙げられる。これらのおよび他のα,β−不飽和ジカルボン酸化合物は、当該技術分野で周知である。無水マレイン酸、マレイン酸およびフマル酸およびそれらの低級アルキルエステルがしばしば使用される。これらのいずれかの2種またはそれより多い混合物から誘導されたインターポリマーもまた、使用できる。
【0023】
あるいは、上式における(OR’)基は、7個より多い炭素原子を含有し得、これらは、アルコールの混合物(その一部は、7個を超える炭素原子を含有する)から誘導され、このような場合、そのエステル基は、このインターポリマーの形成中および形成後にて、そのカルボキシ基に結合されたままであり得る。この手順は、望ましいエステル基を最初に導入する方法を提供し、そして引き続く別の工程(その引き続くエステル化工程は、以下でさらに詳細に記述する)において、これらのエステル基を導入する必要性をなくす。
【0024】
1実施形態では、このα,β−不飽和試薬は、2種またはそれより多い成分を含み、これらは、互いに対して、任意の量で存在し得る。
【0025】
本発明の特定の適当なインターポリマーには、マレイン酸またはその無水物もしくは低級エステルと、スチレンとを反応させることにより製造されるものがある。このインターポリマーが、酸または無水物の反応により調製される場合、得られた重合体は、得られたインターポリマーの適当なエステル化により、エステル含有重合体に変換できる。適当なインターポリマーには、無水マレイン酸およびスチレンから製造されるものであって、0.03もしくは0.05〜0.8、または0.08〜0.5もしくは0.45、または0.12〜0.35の範囲のRSV(その骨格重合体、すなわち、エステル化およびアミンとの反応前の重合体について測定したとき)を有するものがある。約1:1の無水マレイン酸とスチレンとのモル比を有する無水マレイン酸とスチレンとの共重合体は、特に有用である。それらは、当該技術分野で公知の方法(例えば、遊離ラジカル開始(例えば、過酸化ベンゾイル)溶液重合)に従って、調製できる。適当なインターポリマー化技術は、当該技術分野で周知であり、そして多数の米国特許(米国特許第2,938,016号;第2,980,653号;第3,085,994号;第3,342,787号;第3,418,292号;第3,451,979号;第3,536,461号;第3,558,570号;第3,702,300号;第3,723,375号;第3,933,761号;第4,284,414号および第4,604,221号を含めて)で記載されている。
【0026】
これらのカルボキシ含有インターポリマーは、1種またはそれより多いインターポリマー化可能なコモノマーを使用して、調製され得る。この追加コモノマーは、比較的に少ない割合で、存在している。一般に、その全量は、このオレフィンまたはα,β−不飽和カルボン酸アシル化剤のいずれかの各モルに対して、0.3モル未満、通常、0.15モル未満の追加コモノマーである。追加コモノマーの例には、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニルピロリジノン、ビニルピリジン、ビニルエーテルおよびビニルカルボキシレートが挙げられる。1実施形態では、これらの追加コモノマーは、ビニルエーテルまたはビニルカルボキシレートである。これらの物質は、前記米国特許第6,544,935号で、さらに詳細に記載されている。
【0027】
適当なインターポリマーは、ビニル芳香族モノマーと、脂肪族カルボン酸またはそれらの無水物およびエステルとから調製され得る。このビニル芳香族モノマーは、スチレンまたは置換スチレン(環置換されているか、または脂肪族−C=C基上で置換されているかのいずれか)であり得、1実施形態では、スチレンである。1実施形態では、この脂肪族カルボン酸またはその無水物およびエステルは、マレイン酸または無水物、イタコン酸または無水物、フマル酸、α−メチレングルタル酸、アクリル酸、メタクリル酸またはそのエステルまたは二塩基性化合物の半酸−エステルからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである。1実施形態では、このインターポリマーは、スチレンおよび無水マレイン酸から誘導される。別の実施形態では、このインターポリマーは、スチレンと、無水マレイン酸と、メタクリル酸またはそのエステルとから誘導される。後者の実施形態では、スチレン:無水マレイン酸:メタクリル酸またはそのエステルのモル比は、(1〜3):(2〜1):(0.01〜0.3)、例えば、(1〜2):(1.5〜1):(0.01〜0.03)、あるいは、1:1:(0.03〜0.08)、または1:1:0.05の範囲である。
【0028】
本発明の別の特徴は、このカルボキシ含有インターポリマーの分子量である。所定の用途に対して最も高い有用な分子量は、剪断安定性のような他の効果によって、制限され得る。さらに、当業者は、下に記載されるように、分子量とRSV(下記)との関係が、ある程度、このα,β−不飽和アシル化剤、アルファオレフィンおよび不飽和芳香族モノマーの性質および量だけでなく、最終生成物に含有されるエステル基およびカルボニル−アミノ基の量および性質にも依存していることを理解する。
【0029】
1局面では、この重合体(そのエステル官能性を含むが、典型的には、そのアミン成分を除く)の重量平均分子量
【0030】
【数1】

は、ポリスチレン標準を使うゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したとき、5,000もしくは10,000もしくは20,000〜300,000;または25,000〜180,000;または40,000〜130,000であり得る。対応する数平均分子量
【0031】
【数2】

は、2500もしくは5000もしくは10,000〜150,000;または12,000〜90,000;または20,000〜65,000であり得る。このアミンを含有する重合体の分子量は、それに対応してある程度高く、このアミンの量および分子量に基づいて、容易に算出できる。
【0032】
特に、このインターポリマーの分子量はまた、その粘度に関連し得る。本願では、RSVまたは「還元比粘度」が言及されているときはいつでも、この言及は、アミンとエステル化される前のインターポリマーに対してである。還元比粘度は、以下により定義される:
【0033】
【数3】

この場合、濃度は、g/dLで表わされる。この相対粘度は、典型的には、希釈粘度計によって、30℃±0.02℃で、このインターポリマー0.4グラムのアセトン100mL溶液の粘度とアセトンの粘度とを測定することにより、決定される。0.03または0.05〜0.80または0.70のRSVを有するインターポリマーは、本発明に適当なもののうちに入る。RSVの他の適当な値には、0.08〜0.6または0.1〜0.5または0.12〜0.35が挙げられる。
【0034】
(エステル化)
このインターポリマーのエステル化(またはこのインターポリマーが既にエステル基を含有し、異なる種類のものが望ましい場合は、エステル交換)は、エステル化を引き起こすのに典型的な条件下にて、(必要なRSVを有する)任意のインターポリマーおよび所望のアルコールおよびアルコキシレートを加熱することより、達成できる。このような条件には、例えば、少なくとも80℃(例えば、150℃まで、またはそれ以上)の温度が挙げられるが、但し、この温度は、その反応混合物またはそれらの生成物のいずれかの成分の最も低い分解温度未満で維持される。このエステル化が進行するにつれて、水または低級アルコールは、通常、除去される。これらの条件には、必要に応じて、実質的に不活性で通常液状の有機溶媒または希釈剤(例えば、鉱油、トルエン、ベンゼン、キシレンなど)およびエステル化触媒(例えば、トルエンスルホン酸、硫酸、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素−トリエチルアミン、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩酸、硫酸アンモニウムおよびリン酸)の使用が挙げられ得る。これらの条件およびそれらのバリエーションは、当該技術分野で周知である。
【0035】
このインターポリマーのカルボキシ官能基の少なくとも5%、または特定の実施形態では、10%〜20%は、エステル基に変換されないまま残る。(それらの殆どは、窒素含有基に変換される)。このエステル化過程では、その重合体のエステル含量が適当な範囲(80〜85%の範囲内)にとどまるという条件で、これらのカルボキシ基の完全なエステルのための化学量論的な所要量より過剰なアルコールおよびアルコキシレートが使用され得る。過剰のアルコールおよびアルコキシレートまたは未反応アルコールおよびアルコキシレートは、(例えば、このようなアルコールおよびアルコキシレートが、例えば、これらのエステルの使用時における希釈剤または溶媒として供することができるので)除去する必要はなく、また、同様に、任意の反応媒体(例えば、トルエン)は、同様に、これらのエステルの使用時における希釈剤または溶媒として供することができるので、除去する必要はないものの、未反応アルコール、アルコキシレートおよび希釈剤は、当該技術分野で周知である技術(例えば、蒸留)により除去するのが一般的である。
【0036】
本発明の1実施形態では、このインターポリマー中のカルボキシル基の全モル数に基づいて、20または30〜100モル%、あるいは、30〜70モル%は、そのアルコール基(すなわち、このエステルのアルコール誘導部分またはアルコキシ部分)に12個〜19個の炭素原子を有するエステル基を含有し、そして、このインターポリマー中のカルボキシル基の全モル数に基づいて、70または80〜0モル%、あるいは、80〜30モル%は、そのアルコール部分に8個〜10個の炭素原子を有するエステル基を含有する。1実施形態では、このエステルは、そのインターポリマー中のカルボキシル基のモル数に基づいて、少なくとも45モル%で、そのアルコール部分に12個〜18個の炭素原子を含有するエステル基を含有する。任意の実施形態では、このエステル化インターポリマーは、このインターポリマー中のカルボキシル基の全モル数に基づいて、20モル%まで、または0〜5%または1〜2%で、そのアルコール部分に1個〜6個の炭素原子を有するエステル基を含有する。1実施形態では、これらの組成物は、3個〜7個の炭素原子を含有するエステル基を実質的に含まない。これらのエステル基は、通常、このカルボキシ含有インターポリマーとアルコールとを反応させることにより形成されるものの、頻繁には、特に、低級アルキルエステルについて、このエステル基は、このインターポリマーを調製するのに使用されるモノマーの1つから取り込まれ得る。有用なアルコール反応物の例には、ブタノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノールおよびオクタデカノールが挙げられる。
【0037】
1つの種類のアルコールには、市販のアルコール混合物が挙げられる。これらには、オキソアルコール(これは、例えば、8個〜24個の炭素原子を有するアルコールの種々の混合物を含み得る)が挙げられる。本発明で有用な種々の市販アルコールのうちでは、1つは、8個〜10個の炭素原子を含有し、別のものは、12個〜18個の脂肪族炭素原子を含有する。これらのアルコールは、例えば、オクチルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコールおよびオクタデシルアルコールを含み得る。これらのアルコール混合物のいくつかの適当な供給源には、NEODOL(登録商標)アルコール(Shell Oil Company,Houston,Texas)の名称およびALFOL(登録商標)アルコール(Sasol,Westlake,LA)の名称で販売されている工業グレードのアルコール、動物性および植物性脂肪から誘導され、例えば、Henkel、SasolおよびEmeryから市販されている脂肪アルコールがある。
【0038】
第三級アルカノールアミン(すなわち、N,N−ジ−(低級アルキル)アミノアルカノールアミン)は、これらのエステル化インターポリマーを調製するのに使用され得る他のアルコールである。例には、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミンおよび5−ジエチルアミノ−2−ペンタノールが挙げられる。
【0039】
アルコールの量および種類は、このインターポリマー組成物の物理的特性に影響を与える。溶解性および粘度(特に、低温粘度)は、使用するアルコールの選択および量により、影響される。当業者は、例えば、高級アルコール(これは、より多くの炭素原子を含有する)を使用するか大部分が高級アルコールを使用すると、炭化水素媒体中の物質の溶解性が向上することを認識する。より長いヒドロカルビル基(特に、典型的には、15個より多い炭素原子を有する直鎖基)はまた、もし適当な濃度で存在しているなら、炭化水素油中のワックスと相互作用して、流体の流動点および低温粘度を低下させることが知られている。しかしながら、これらの長い直鎖基が多すぎると、低温粘度および流動点を上昇させて、この重合体の低温特性に悪影響を与え得る。従って、アルコールの最良の組成は、使用するアルコールの種類および量、そのブレンド組成物中で使用する最終重合体の量、およびブレンドを使用する用途に依存している。特定の実施形態では、種々のアルコールの相対量(重量基準)は、a:b:c=40〜50:40〜60:0〜10(または:1〜10)、またはa:b:c=20〜40:55〜75:0〜5で表わすことができる。特定の実施形態では、この比は、45:45:5または39:59:2または24:74:2または30:68:2または0:97:3であり得る。前述の比において、「a」は、C8〜10アルコールの混合物であり、「b」は、C12〜18アルコールの混合物であり、そして「c」は、Cアルコールであるか、またはC3〜5アルコールの混合物である。
【0040】
これらのエステル化インターポリマーは、アルコールの組み合わせ(これは、少なくとも7個、しばしば、少なくとも12個の炭素原子を含有するアルコール(比較的に高分子量のアルコール)と、7個未満の炭素原子を含有するアルコール(比較的に低分子量のアルコール)とを含む)から誘導された混合エステルであり得る。7個未満の炭素原子を含有するアルコールには、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールおよびヘキサノール(それらの異性体を含む)が挙げられる。このカルボキシ含有インターポリマーの混合エステルは、そのインターポリマーのカルボキシ基のおよそ80%〜90%をエステル基に変換するのに適当な量で、まず最初に、このカルボキシ含有インターポリマーを比較的に高分子量のアルコールでエステル化することにより、次いで、比較的に低分子量のアルコールでエステル化することにより、調製できる。このエステル化を行うそれ以上の詳細は、前記米国特許6,544,935号、11欄で見られる。
【0041】
高分子量アルコールと低分子量アルコールとの組み合わせを利用するとき、このエステル化は、例えば、最初は、そのカルボキシラジカルを高分子量アルコールでエステル化することにより、引き続いて、部分的にエステル化されたカルボキシ含有インターポリマーを低分子量(例えば、1個〜6個の炭素原子)アルコールでエステル化して、カルボキシインターポリマー(これは、そのエステル基の少なくとも80%が高分子量エステルであり、このエステル基の残りが低分子量エステルである)を得ることより、実行され得る。例えば、高分子量アルコールと低分子量アルコールとの組み合わせを使うエステル化は、まず最初に、高分子量アルコールを使うエステル化を実行し、次いで、残留しているカルボン酸基を低分子量アルコールでエステル化して、所望程度のエステル化に到達させることにより、連続して、達成できる。
【0042】
下記のアミン成分もまた、これらのアルコール成分と共に、以下で述べる反応により、連続して、この初期カルボキシ含有重合体と反応される。
【0043】
(アミノ化合物および芳香族アミン)
これらのカルボキシ含有インターポリマーは、カルボニル−アミノ基を含有する。これらのカルボニル−アミノ基には、アミド、イミド、アミジン、アンモニウム塩、アミド酸塩またはそれらの混合物が挙げられる。それゆえ、「中和する、中和してなど」の表現の使用は、塩形成には限定されず、アミノ化合物とカルボン酸またはその官能性誘導体との反応も意味する。しかしながら、「縮合する」または「縮合された」との言葉は、このアミノ化合物との反応に関連して、共有結合した種を得るためのアミンとカルボン酸、無水物またはエステルとの反応生成物のものである。これらには、アミドおよびイミドが挙げられるが、アミド酸塩を含まない。カルボニル−アミノ基は、典型的には、このエステル化インターポリマーの非エステル化カルボン酸または無水物基とアミノ化合物とから誘導される。
【0044】
本発明の1つの特徴は、エステル化の程度およびカルボキシ含有インターポリマーの未エステル化カルボキシ基と縮合可能芳香族アミンとの反応の程度にある。本発明の特に有利な実施形態では、その連結は、アミドまたはイミド、主に、イミドである。このような連結は、総称的に、カルボニル−アミノ基またはカルボニル−アミノ連結と呼ぶことができる。
【0045】
この重合体には、異なる様式および異なる反応順序で、エステル基およびカルボニル−アミノ基が取り込まれ得る。1実施形態では、各々の殆どまたは全部は、重合前に存在し得る。すなわち、このα,β−不飽和アシル化剤またはモノマーは、エステル含有、カルボニル−アミノ含有、またはそれらの両方であり得る。適当なモノマーは、両方の官能性を含有できるか、またはモノマーの混合物が使用でき、ここで、各々は、これらの官能性の1つを含有する。このα,β−不飽和アシル化剤の一部だけがエステルまたはカルボニル−アミノである場合は、残りの酸基または無水物基は、重合後にさらに反応でき、これらをエステル基またはカルボニル−アミノ基に変換する。さらに、α,β−不飽和アシル化剤に存在している低級エステル基は、もし望ましいなら、この重合反応後、高級エステル基またはカルボニル−アミノ基に変換され得る。あるいは、このα,β−不飽和アシル化剤は、アルコールおよびアミンとの反応により、これらのインターポリマーに取り込まれた後、エステルおよび/またはカルボニル−アミノ官能性に変換でき、これらは、いずれかの順序で連続してかまたは同時のいずれかで、加えられて反応される。ある場合には、このアミンとの反応は、エステル化前に、さらに容易に行われる。
【0046】
本発明のカルボン酸誘導体組成物は、典型的には、上記エステル含有共重合体、またはこのエステル含有重合体の酸または無水物含有前駆体と、この重合体のカルボン酸官能性と縮合できる少なくとも1個(特定の実施形態では、正確に1個)のN−H基を含有する芳香族アミンとを反応させることにより、得られる。これらのエステル含有インターポリマーは、典型的には、未エステル化カルボン酸官能性の一部を含有し、これは、アミンと反応して、カルボニル−アミン基を形成できるが、適当な反応条件下にて、このアミンは、エステル官能性と反応して、アルコール部分を置き換え、カルボニル−アミン基を生じる。
【0047】
この芳香族アミンは、アルコールとの反応前、このインターポリマーとアルコールとの反応後、またはアルコールの反応と同時のいずれかで、このインターポリマーと反応され得る。もし望ましいなら、不活性溶媒(例えば、トルエンまたはオイル)が存在できる。1実施形態では、そのアルコール成分の一部は、無水物含有重合体と混合され、その後、この芳香族アミン成分が加えられる。このアミンは、自発的にこの無水物成分と反応できるものの、アルコールの初期充填物は、このアミンとの反応を促進するように働く。このアミンが反応した後、このアルコールの残りが加えられ得る。次いで、酸触媒(例えば、メタンスルホン酸)をさらに加えて、このアルコール充填物とのエステル化を触媒できる。引き続いて、この重合体上の任意の残りの酸基または無水物基との実質的に完全な反応を確実にするために、比較的に低分子量のアルコール(例えば、ブタノール)の充填物が供給できる。
【0048】
別のバリエーションとしては、アルコールとの反応前または反応中に、1種のアミンが使用され得、その後、第二のアミンが使用され得る。アミンとのこのような引き続いた反応は、上記低分子量アルコールの添加と殆ど同じように、いずれかの残留している未反応カルボキシ酸基または無水物基を消費するために、望まれ得る。すなわち、比較的大きい芳香族アミンを使用する場合は、それは、この重合体のカルボキシ酸基または無水物基の全てとは反応でき得ない。その場合、これらをカルボニル−アミノ基にさらに変換するために、本明細書中で列挙したもののうちから、より小さいアミン(例えば、8個または10個までの炭素原子を有する脂肪族(非芳香族)アミン)、またはアンモニア、またはヒドラジンが使用できる。このような用途に適当なアミンには、アミノプロピルモルホリンおよびジメチルアミノプロピルアミンが挙げられる。アミン官能性を含む分散剤および他の物質もまた、アミン源として、使用できる。例えば、芳香族ジアミン(例えば、フェニレンジアミン)は、単一の反応性(非ブロック化)アミン基を備えた芳香族化合物を提供する割合で、無水コハク酸またはヒドロカルビル無水コハク酸(例えば、ポリイソブチレン無水コハク酸)と反応できる。
【0049】
さらに別の実施形態では、予めエステル化されたインターポリマー樹脂の残留している無水物基のイミド化(imidization)を保証するための接触促進剤として、界面活性剤が存在できる。この一般的なアプローチは、他の種類の重合体について、ヨーロッパ特許公報EP 0 922 752 A2で開示されており、ここでは、アミンを可溶化するために、5〜40重量%の界面活性剤が使用されている。適当な界面活性剤の例には、エトキシル化ノニルフェノール、さらに一般的には、脂肪族ヒドロキシ化合物または芳香族ヒドロキシ化合物と、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはそれらの混合物との反応生成物が挙げられる。
【0050】
芳香族アミンをカルボキシ含有インターポリマー鎖に連結する他の特定の手段もまた、「該アシル化剤モノマーの一部が少なくとも1種の芳香族アミンと縮合される」との表現により、本発明の範囲内に含まれると意図される。例えば、アミン官能性は、インターポリマーを最初に調製するとき、その反応混合物にアミン含有コモノマーを含ませることにより、この重合体に導入できる。このアミン含有コモノマーは、アミンと上記α,β−不飽和アシル化剤との反応生成物または縮合生成物であり得る。例えば、無水マレイン酸と芳香族アミン(例えば、4−アミノジフェニルアミンまたは4−フェニルアゾアニリン)との縮合生成物が使用できる。後者の物質は、公知であり、そしてCAS番号[16201−96−0]を持つ。それは、以下の構造(その幾何異性体および位置異性体を含む)を有すると考えられる:
【0051】
【化2】

同様に、4−アミノジフェニルアミンとの付加物およびその調製方法は、米国特許出願公報2004/0043909で報告されている;例えば、15ページの実施例1を参照のこと。該出願では、アミン含有モノマーは、ベース重合体(例えば、オレフィン共重合体)にグラフト化される。本発明に関連して、それらはまた、その共重合中に存在し得、それゆえ、他の無水マレイン酸ベースの部分と共に、重合体鎖それ自体に取り込まれ得る。
【0052】
このような代替経路の別の例では、ヒドロキシアミドは、その重合体鎖上のカルボキシ基とエステル化できる。代表的なヒドロキシアミドは、
【0053】
【化3】

により表わされ、ここで、Arは、芳香族アミン(これは、追加窒素または他の官能性を含み得る)の芳香族部分であり、そしてRは、アルキレンまたはヒドロカルビレン連結基である。あるいは、ヒドロキシ酸は、まず、この骨格インターポリマー上のカルボキシ基とエステル化でき、その後、芳香族アミンと反応できる;いずれかの場合、このヒドロキシ酸は、この重合体鎖と芳香族アミンとの間の連結基として働く。
【0054】
芳香族アミンには、一般構造式NH−Arで表わすことができるものが挙げられ、ここで、Arは、芳香族基(窒素含有芳香族基および次の構造のいずれかを含むAr基だけでなく複数の非縮合芳香環を含めて)である:
【0055】
【化4】

これらの構造および関連した構造では、R、RおよびRは、別個に、本明細書中で開示した他の基のうちで、−H、−C1〜18アルキル基、ニトロ基、−NH−Ar、−N=N−Ar、−NH−CO−Ar、−OOC−Ar、−OOC−C1〜18アルキル、−COO−C1〜18アルキル、−OH、−O−(CHCH−O)1〜18アルキル基、および−O−(CHCHO)Ar(ここで、nは、0〜10である)であり得る。
【0056】
芳香族アミンには、芳香環構造の炭素原子がアミノ窒素に直接結合されたアミンが挙げられるが、これらに限定されない。これらのアミンは、モノアミンまたはポリアミンであり得る。この芳香環は、典型的には、単核芳香環(すなわち、ベンゼンから誘導されたもの)であるが、縮合芳香環(特に、ナフタレンから誘導されたもの)を含むことができる。芳香族アミンの例には、アニリン、N−アルキルアニリン(例えば、N−メチルアニリンおよびN−ブチルアニリン)、ジ−(パラ−メチルフェニル)アミン、ナフチルアミン、4−アミノジフェニルアミン、N,N−ジメチルフェニレンジアミン、4−(4−ニトロフェニル−アゾ)アニリン(分散オレンジ(disperse orange)3)、スルファメタジン、4−フェノキシアニリン、3−ニトロ−アニリン、4−アミノアセトアニリド、(N−(4−アミノフェニル)アセトアミド)、4−アミノ−2−ヒドロキシ−安息香酸フェニルエステル(アミノサリチル酸フェニル)、N−(4−アミノ−フェニル)−ベンズアミド、種々のベンジルアミド(置換φ−CHNH)(例えば、2,5−ジメトキシベンジルアミン、4−フェニルアゾアニリン、およびこれらの置換されたバージョン)が挙げられる。他の例には、パラ−エトキシアニリン、パラ−ドデシルアニリン、シクロヘキシル置換ナフチルアミン、およびチエニル置換アニリンが挙げられる。他の適当な芳香族アミンの例には、アミノ置換芳香族化合物およびそのアミン窒素が芳香環の一部であるアミン(例えば、3−アミノキノリン、5−アミノキノリンおよび8−アミノキノリン)が挙げられる。また、2−アミノベンゾイミダゾールのような芳香族アミンも挙げられ、これは、その芳香環に直接結合した第二級アミノ基およびイミダゾール環に結合した第一級アミノ基を含有する。他のアミンには、N−(4−アニリノフェニル)−3−アミノブタンアミド(すなわち、φ−NH−φ−NH−COCHCH(CH)NH)が挙げられる。さらに他のアミンには、2,5−ジメトキシベンジルアミンが挙げられる。
【0057】
追加芳香族アミンおよび関連化合物は、米国特許第6,107,257号および第6,107,258号で開示されている;これらの一部には、アミノカルバゾール、アミノインドール、アミノピロール、アミノインダゾリノン、アミノペリミジン(aminoperimidines)、メルカプトトリアゾール、アミノフェノチアジン、アミノピリジエン(aminopyridiens)、アミノピラジン、アミノピリミジン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、アミノチアジアゾール、アミノチオチアジアゾールおよびアミノベンゾトリアゾールが挙げられる。他の適当なアミンには、3−アミノ−N−(4−アニリノフェニル)−N−イソプロピルブタンアミド、およびN−(4−アニリノフェニル)−3−{(3−アミノプロピル)−(ココアルキル)アミノ}ブタンアミドが挙げられる。使用できる他の芳香族アミンには、例えばアミド構造により連結された複数の芳香環を含有する種々の芳香族アミン色素中間体が挙げられる。例には、以下の一般構造を有する物質およびそれらの異性体バリエーションが挙げられる:
【0058】
【化5】

ここで、RおよびRは、別個に、アルキルまたはアルコキシ基(例えば、メチル、メトキシまたはエトキシ)である。ある場合においては、RおよびRは、両方とも、−OCHであり、この物質は、ファストブルーRR[CAS# 6268−05−9]として、知られている。別の場合においては、Rは、−OCHであり、そしてRは、−CHであり、この物質は、ファストバイオレットB[99−21−8]として、知られている。RおよびRの両方がエトキシである場合は、この物質は、ファストブルーBB[120−00−3]である。米国特許第5,744,429号は、他の芳香族アミン化合物(特に、アミノアルキルフェノチアジン)を開示している。N−芳香族置換酸アミド化合物(例えば、米国特許出願第2003/0030033 A1で開示されたもの)はまた、本発明の目的のために、使用され得る。適当な芳香族アミンには、そのアミン窒素が芳香族カルボン酸化合物で置換されているものが挙げられ、すなわち、この窒素は、芳香環内にて、spハイブリダイズされていない。この芳香族アミンは、典型的には、カルボン酸アシル化剤と縮合できるN−H基を有する。
【0059】
特定の芳香族アミンは、酸化防止剤として、一般的に使用される。その点において、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミンおよびジノニルジフェニルアミン)は、特に重要である。これらの物質が重合体鎖のカルボン酸官能性と縮合する範囲まで、それらはまた、本発明で使用するのに適当である。しかしながら、そのアミン窒素に結合された2個の芳香族基は、立体障害を引き起こし得、反応性が低下し得ると考えられる。それゆえ、適当なアミンには、これらのヒドロカルビル置換基の1個が比較的に短鎖のアルキル基(例えば、メチル)である第一級窒素原子(−NH)または第二級窒素原子を有するものが挙げられる。このような芳香族アミンには、4−フェニルアゾアニリン、4−アミノ−ジフェニルアミン、2−アミノベンゾイミダゾール、およびN,N−ジメチルフェニレンジアミンがある。これらのおよび他の芳香族アミンのいくつかはまた、これらの重合体に、分散性および他の特性に加えて、酸化防止剤性能を与え得る。
【0060】
本発明の1実施形態では、この反応生成物のアミン成分は、さらに、この重合体のカルボン酸官能性と縮合できる少なくとも2個のN−H基を有するアミンを含む。この物質は、このカルボン酸官能性を含有する2種の重合体を共に連結するのに使用できるので、以下、「連結アミン」と呼ぶ。これらの高分子量物質は、性能を向上させ得、これは、その物質の分子量を高める1方法であることが認められている。この連結アミンは、脂肪族アミンまたは芳香族アミンのいずれかであり得る;もし、芳香族アミンであるなら、それは、上記芳香族アミンとは別の異なる要素とみなされ、その要件は、それらの重合体鎖の過度の架橋を避けるために、1個だけの縮合可能または反応性NH基を有し、典型的には、有するべきである。このような連結アミンの例には、エチレンジアミン、フェニレンジアミンおよび2,4−ジアミノトルエンが挙げられる;他のものには、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンおよび他のα,ω−ポリメチレンジアミンが挙げられる。このような連結アミン上の反応性官能基の量は、もし望ましいなら、化学量論量より少ないブロッキング物質(例えば、ヒドロカルビル置換無水コハク酸)との反応により、少なくできる。
【0061】
この重合体のカルボン酸官能性と縮合できるアミンおよびアルコールの全量は、すなわち、その重合体上の実質的に全ての反応性カルボキシ官能性と反応するために、典型的には、上記重合体鎖上のカルボキシ化合物1当量あたり、約1当量である。もし、化学量論量より多いアミンまたはアルコールを使用するなら、過剰分は残留し得、そして生成物から除去する必要があり得る。もし、化学量論量より少ない量を使用するなら、残余の未反応の酸または無水物官能性は、この重合体中に残留し得、これは、同様に望ましくないかもしれない。特定の実施形態では、得られる重合体の全酸価は、10未満、または6未満、または4未満である。
【0062】
本発明のカルボキシル含有重合体と上記アミンとを反応させることにより生成されるカルボン酸誘導体組成物は、アシル化アミンであり、これには、アミン塩、アミド、イミドおよびイミダゾリンだけでなく、それらの混合物が挙げられる。これらの芳香族アミンと反応するカルボキシ含有重合体は、いずれかの縮合反応前にモノマー(i)および(ii)から重合されたインターポリマーであり得るか、または上記アルコール成分の一部または全部と縮合された対応する重合体であり得るかのいずれかであり得る。いずれかの場合、この重合体は、アミンと反応する基または残基(カルボキシ酸、無水物またはエステルを含む)を含有する。これらのカルボン酸誘導体組成物とアミンとをさらに反応させるためには、1種またはそれより多いカルボキシル化共重合体と1種またはそれより多いアミンとは、必要に応じて、通常液状で実質的に不活性の有機液状溶媒/希釈剤の存在下にて、80℃から反応物または生成物の分解点までの温度で、通常100℃〜300℃(300℃が反応物または生成物の分解点を超えないという条件で)で、加熱できる。通例、125℃〜250℃の温度が使用される。もし、1種より多いアミンを使用するなら、これらのアミンは、いずれかの順序で、または同時に加えられ、反応できる。
【0063】
1実施形態では、このアミン部分は、このインターポリマー組成物の3〜25重量パーセントを構成する;他の実施形態では、5〜20%または6〜15%を構成する。1実施形態では、10モルパーセントより多いカルボン酸官能性が芳香族アミン成分と縮合される。カルボン酸基の大部分は、この芳香族アミン成分と縮合される。この重合体上のカルボン酸基の大部分は、通常、非酸性官能性(例えば、エステル、イミドまたはアミド)に変換される。アミンと縮合してイミドを形成するのに対して、アミドは、縮合可能な窒素1個あたり、異なる量のカルボキシルを消費することが注目される。第二級アミン(R−N(R’)H)は、カルボキシ化合物(酸、無水物またはエステル)と反応されて、アミドを形成し得、ここで、1個の窒素は、1個のカルボキシ基と反応される。第一級アミン(R−NH)は、反応されて、特に無水物と反応するとき、アミドまたはイミドのいずれかを形成し得る:イミド(R−C(=O)−NR−C(=O)−R)の形成は、窒素1個あたり、2個のカルボキシル基を消費する。この差異は、反応のためにアミンおよびアルコールの量を選択するとき、考慮すべきである。
【0064】
芳香族モノアミンに加えて、ジアミンを使用する場合は、このジアミンは、その重合体鎖上の5〜6モルのカルボキシ化合物あたり、1モル(すなわち、2当量)の縮合可能アミンの量で、存在できる。それゆえ、このジアミンは、芳香族モノアミン4〜5モルあたり、1モル(2当量)であり得る。その重合体がゲル化する可能性をできるだけ少なくするために、いずれかの所定の重合体鎖上の無水物(またはカルボキシ物質)が1個だけの連結アミン分子に由来のアミン窒素と反応するような量で、任意の連結アミンが使用されることが望ましい。
【0065】
(潤滑粘性のあるオイル)
本発明の潤滑組成物は、潤滑粘性のあるオイルを使用し、これには、天然または合成潤滑油およびそれらの混合物が挙げられる。天然油には、動物油および植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油)だけでなく、鉱物性の潤滑油(例えば、液状の石油オイル、およびパラフィンタイプ、ナフテンタイプまたは混合パラフィン−ナフテンタイプであって、かつ溶媒処理された鉱物性潤滑油または酸処理された鉱物性潤滑油)が挙げられる。石炭またはけつ岩から誘導される潤滑粘性のあるオイルもまた、有用である。合成の潤滑油には、以下の炭化水素油およびハロ置換炭化水素油が包含される。この炭化水素油およびハロ置換炭化水素油には、例えば、重合されたオレフィンおよびインターポリマー化されたオレフィンおよびそれらの混合物、アルキルベンゼン、ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化されたポリフェニル);アルキル化されたジフェニルエーテルおよびアルキル化されたジフェニルスルフィドおよびそれらの誘導体、それらの類似物および同族体がある。アルキレンオキシド重合体およびインターポリマーおよびそれらの誘導体は、末端水酸基がエステル化またはエーテル化のようなプロセスにより修飾された場合、他の有用な種類の公知の合成潤滑油を構成する。別の適当な種類の合成潤滑油には、ジカルボン酸およびポリカルボン酸のエステル、およびC〜C20モノカルボン酸およびポリオールおよびポリオールエーテルから製造したものが包含される。他の合成潤滑油には、リン含有酸の液状エステル、重合体テトラヒドロフラン、シリコンベースオイル(例えば、ポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−またはポリアリールオキシ−シロキサンオイルおよびシリケートオイル)が挙げられる。合成潤滑油には、また、気液(GTL)またはフィッシャー−トロプシュプロセスにより生成されたもの(GTLプロセスから水素異性化されたオイルを含む)が挙げられる。
【0066】
上で開示のタイプの天然油または合成油のいずれかである、未精製油、精製油および再精製油(および、これらの2種またはそれ以上のいずれかの混合物)が、本発明の組成物中で用いられ得る。未精製油とは、天然原料または合成原料から、さらに精製処理することなく、直接得られるオイルである。精製油は、1種またはそれ以上の特性を改良するべく、1段またはそれ以上の精製段階でさらに処理されたこと以外は、未精製油と類似している。精製油には、溶媒精製油、水素化精製油、水素化仕上げ油、水素処理油、および水素化分解および水素化異性化技術により得られるオイルが挙げられる。
【0067】
潤滑粘性のあるオイルはまた、American Petroleum Institute(API)Base Oil Interchangeability Guidelinesで明記されたように、定義できる。5つの基油群は、以下のとおりである:
【0068】
【表1】

第I族、第II族および第III族は、鉱油ベースストックである。第III族基油はまた、時には、合成基油とみなされる。
【0069】
(他の添加剤)
本発明の潤滑油組成物は、他の成分を含有し得る。このような添加剤の使用は、任意であり、本発明の組成物中でのそれらの存在は、特定の用途および必要な性能のレベルに依存している。それゆえ、他の添加剤は、含有されても含有されなくてもよい。これらの組成物は、金属塩(しばしば、ジチオリン酸の亜鉛塩)を含有し得る。ジチオリン酸の亜鉛塩は、しばしば、ジチオリン酸亜鉛またはO,O’−ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛と呼ばれ、時には、ZDP、ZDDPまたはZDTPの略語で呼ばれる。ジチオリン酸の1種またはそれより多い亜鉛塩は、追加の極圧、耐摩耗および酸化防止性能を与えるために、少量で存在し得る。ジチオリン酸の他の金属塩(例えば、銅塩またはアンチモン塩)は、公知であり、そして本発明の潤滑油組成物に含有され得る。
【0070】
必要に応じて、本発明の潤滑油で使用され得る他の添加剤には、清浄剤、分散剤、粘度向上剤、酸化防止剤、流動点降下剤、極圧剤、耐摩耗剤、色安定化剤、摩擦調整剤(例えば、硫化オレフィン、脂肪エステル)および消泡剤が挙げられる。前述の分散剤および粘度向上剤は、本発明の組成物に加えて、使用され得る。
【0071】
本発明の組成物に含有され得る補助的な極圧剤および腐食防止剤および酸化防止剤は、塩素化脂肪族炭化水素、有機スルフィドおよびポリスルフィド、亜リン酸ジ炭化水素およびトリ炭化水素を含めたリン含有エステル、およびモリブデン化合物により、例示される。
【0072】
補助的な粘度改良剤(これはまた、時には、粘度指数改良剤または粘度調整剤と呼ばれる)は、本発明の組成物に含有され得る。粘度改良剤は、通常重合体であり、これらには、ポリイソブテン、ポリメタクリル酸エステル、ジエン重合体、ポリアルキルスチレン、エステル化スチレン−無水マレイン酸共重合体、アルケニルアレン−共役ジエン共重合体)、およびポリオレフィンが含まれる。本発明のもの以外の多機能性粘度改良剤(これらは、分散剤特性および/または酸化防止特性を有する)は、公知であり、必要に応じて、本発明の生成物に加えて、使用され得る。使用され得る適当な補助の粘度調整剤には、水素化スチレン/ジエン共重合体(例えば、SeptonTMの商品名で市販されている水素化スチレン/ジエンブロック共重合体)がある。
【0073】
清浄剤は、典型的には、オーバーベース化物質である。オーバーベース化物質は、別に、オーバーベース化塩またはスーパーベース化塩と呼ばれるが、一般に、単一相の均一なニュートン系であり、これは、その金属および金属と反応される特定の酸性有機化合物の化学量論に従って中和するために存在している金属含量よりも過剰の金属含量により、特徴付けられる。これらのオーバーベース化物質は、酸性物質(典型的には、無機酸または低級カルボン酸、例えば、二酸化炭素)と、以下を含有する混合物とを反応させることにより、調製される:酸性有機化合物、該酸性有機物質用の少なくとも1種の不活性有機溶媒(例えば、鉱油、ナフサ、トルエン、キシレン)を含む反応媒体、化学量論的に過剰な金属塩基、および促進剤(例えば、フェノールまたはアルコール)。この酸性有機物質は、通常、オイル中で一定の溶解度を与えるのに十分な数の炭素原子を有する。過剰な金属量は、通常、金属比で表わされる。「金属比」との用語は、この酸性有機化合物の当量に対する金属の全当量の比である。中性の金属塩は、金属比1を有する。正塩中に存在する金属の4.5倍の金属を有する塩は、3.5当量過剰の金属、すなわち、4.5の金属比を有する。
【0074】
このようなオーバーベース化物質は、当業者に周知である。スルホン酸、カルボン酸、フェノール、ホスホン酸、サリキサレン、およびそれらのいずれかの2種またはそれより多い混合物の塩基性塩を製造する技術を記述している特許には、米国特許第2,501,731号;第2,616,905号;第2,616,911号;第2,616,925号;第2,777,874号;第3,256,186号;第3,384,585号;第3,365,396号;第3,320,162号;第3,318,809号;第3,488,284号;および第3,629,109号が挙げられる。
【0075】
分散剤は、潤滑剤の分野で周知であり、これらには、主として、無灰型分散剤として知られているものが挙げられる。無灰型分散剤は、比較的に高分子量の炭化水素鎖に結合された極性基により、特徴付けられる。典型的な無灰分散剤には、N−置換長鎖アルケニルスクシンイミドが挙げられ、これは、典型的には、以下を含む種々の化学構造を有する:
【0076】
【化6】

ここで、各Rは、別個に、アルキルまたはアルケニル基(これは、1個より多いスクシンイミド基を有し得る)、しばしば、500〜5000の分子量を有するポリイソブチル基であり、そしてRは、アルキレン基(通例、エチレン(C)基)である。このような分子は、通例、アルケニルアシル化剤とポリアミンとの反応から誘導される。そして、上で示した簡単なイミド構造のほかに、これらの2つの部分の間の広範囲の連結が可能であり、種々のアミドおよび第四級アンモニウム塩が挙げられる。スクシンイミド分散剤は、米国特許4,234,435号および第3,172,892号で、さらに詳細に記載されている。特に有用なスクシンイミド分散剤には、1:1より大きいN:CO比を有するもの、すなわち、コハク酸基から誘導されたカルボニル官能性と比較して、ポリアミンから誘導された全体的に過剰の窒素官能性を有するものがある。このよう物質は、また、高窒素分散剤としても記述され得、これは、その分散剤中にて、(オイルを含まない活性化学物質基準で)、少なくとも1.6%または少なくとも2%の窒素を含有し、そして少なくとも30、40または50(活性化学物質基準で、試料1グラムあたりのmg当量KOH)の比較的に高い全塩基価(TBN)を有する。望ましい物質はまた、比較的に高い分子量の分散剤であり、これは、例えば、1300より高い
【0077】
【数4】

を有するアルキルまたはヒドロカルビル(重合体)基を有する。
【0078】
別の種類の無灰分散剤には、高分子量エステルがある。これらの物質は、ヒドロカルビルアシル化剤と多価脂肪族アルコール(例えば、グリセロール、ペンタエリスリトールまたはソルビトール)との反応により調製されるとみなされ得ること以外は、上記スクシンイミドと類似している。このような物質は、米国特許第3,381,022号で、さらに詳細に記載されている。
【0079】
他の種類の無灰分散剤には、マンニッヒ塩基がある。これらは、高分子量アルキル置換フェノール、アルキレンポリアミンおよびアルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド)の縮合により形成される物質である。このような物質は、以下の一般構造(当業者に明らかな種々の他の異性体バリエーションを含む)を有し得、
【0080】
【化7】

そして米国特許第3,634,515号でさらに詳細に記載されている。
【0081】
他の分散剤には、重合体分散剤添加剤(これは、一般に、その重合体に分散特性を与える極性官能性を含む炭化水素ベース重合体である)が挙げられる。
【0082】
分散剤はまた、種々の試薬のいずれかで後処理できる。これらには、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、ニトリル、エポキシド、ホウ素化合物およびリン化合物がある。このような処理を詳述している参考文献は、米国特許第4,654,403号に列挙されている。
【0083】
上で説明した添加剤は、それぞれ、潤滑組成物中にて、0.001重量%程度に低い濃度、通常、0.01重量%〜20重量%で存在し得る。ほとんどの場合、それらは、それぞれ、0.1重量%〜10重量%、さらに多くの場合、5重量%までに寄与する。
【0084】
(添加剤濃縮物)
本明細書中で記述した種々の添加剤は、この潤滑剤に直接加えることができる。しかしながら、特定の実施形態では、それらは、濃縮物形成量の実質的に不活性で通常液状の有機希釈剤(例えば、鉱油または合成油(例えば、ポリアルファオレフィン))で希釈されて、添加剤濃縮物が形成される。これらの濃縮物は、通常、0.1〜80重量%の本発明の組成物を含み、それに加えて、当該技術分野で公知またはこの上で記述した1種またはそれ以上の他の添加剤を含有し得る。15%、20%、30%または50%またはそれ以上のような濃度の添加剤が使用され得る。「濃縮物形成量」とは、一般に、十分に調合された潤滑剤中に存在している量よりも少ない(例えば、85%または80%または70%または60%未満)オイルまたは他の溶媒の量を意味する。添加剤濃縮物は、しばしば、高温(通常、150℃または130℃または115℃まで)で、所望の成分を共に混合することにより、調製できる。
【0085】
(潤滑油組成物)
本発明はまた、本発明のアミン含有重合体組成物を含有する潤滑油組成物に関する。十分に調合された潤滑剤中の重合体の量は、典型的には、0.1〜10重量%、あるいは、0.5〜6重量%または1〜3重量%である。この上で述べたように、本発明の組成物は、潤滑粘性のあるオイルに直接ブレンドされ得るか、さらに多くの場合、他の添加剤を含有する添加剤濃縮物に取り込まれ、これは、順に、このオイルにブレンドされる。
【0086】
上記物質のいくつかは、最終調合物と相互作用し得、その結果、最終調合物の成分は、最初に加えたものとは異なり得ることが知られている。例えば、金属イオン(例えば、清浄剤のもの)は、他の分子の他の酸性またはアニオン性部位に移動できる。そのように形成された生成物は、本発明の組成物をその目的用途で使用すると形成される生成物を含めて、簡単に記述できない場合がある。それにもかかわらず、このような全ての改良および反応生成物は、本発明の範囲内に含まれる;本発明は、上記成分を混合することにより調製された組成物を包含する。
【実施例】
【0087】
以下の実施例における全ての「部」は、重量部である。
【0088】
(実施例1)
反応器に、無水マレイン酸/スチレン(1:1のモル比)共重合体(これは、RSV=0.12を有する)のトルエンスラリー中の9.9%固形分2285.6部および希釈油194部を充填する。窒素を吹き込みつつ、これらの物質を135℃まで加熱し、その間、トルエン1700部を除去する。その反応物に、AlfolTM810(90部)およびアミノジフェニルアミン20.6部の混合物を加える。粘度の上昇が観察され、そして撹拌を停止する。この反応物に、希釈油(50部)を加える。加熱を取り除き、この反応物を、窒素下にて、15時間放置する。この反応物を100℃までゆっくりと加熱し、そしてキシレン300部を加える。AlfolTM1218(135部)を加える。撹拌を再開する。その反応物を、6時間にわたって、145℃まで加熱する。メタンスルホン酸(50%水溶液17.1部)を加え、その反応物を、145℃で、15時間撹拌する。アリコートは、全酸価=8.33および強酸価=5.57を有する。この反応物を150℃まで加熱するように設定し、そして滴下漏斗を経由して、30分間にわたって、水酸化ナトリウム(50%水溶液)5.8部を加える。ノニルジフェニルアミン(2部)を加え、その反応物を30分間撹拌する。150℃および2.7kPa(20mmHg)で溶媒を除去する。その粘稠な物質は、ケイ藻土の濾過パッドでの濾過を通らない。この黒色ガラス状固形物を、トルエンで、53%まで希釈する。全酸価=13.2。
【0089】
(実施例2)
反応器に、無水マレイン酸/スチレン(1:1のモル比)共重合体(これは、RSV=0.12を有する)のトルエンスラリー中の13.2%固形分2100部およびAlfolTM1218(275部)を充填する。その反応物を、窒素流下にて、135℃まで加熱し、そして6時間にわたって、トルエン(およそ800部)を除去する。滴下漏斗を経由して、30分間にわたって、メタンスルホン酸(14.3部)およびAlfolTM810(181.2部)を充填する。その反応物を10時間保持し、そして水/トルエン共沸によって、水を除去する。この反応物にキシレン(200部)を充填する。その反応物を150℃まで加熱し、この温度で6時間保持する。この反応物を、50%水酸化ナトリウム水溶液15部で中和する。この反応物を30分間保持する。アミノジフェニルアミン(25.1部)およびエトキシル化ノニルフェノール(10部)を混合して、この反応物に充填する。その反応物を、150℃で、24時間保持する。この反応物にブタノール(7.11部)を充填する。その反応物を2時間保持する。この反応物にアルキルジフェニルアミン(3.71部)を充填し、そして15分間混合させる。この反応物に100N 第1族基油(496.5部)を充填する。その反応物を、150℃で、30分間保持する。この反応物を135℃まで冷却する。2.7kPa(20mmHg)での真空下にて、蒸留により、揮発性物質を除去する。その反応物をケイ藻土および布パッドで濾過する。
【0090】
(実施例3)
12L丸底反応器フラスコに、無水マレイン酸/スチレン(1:1のモル比)共重合体(これは、RSV=0.12を有する)のトルエンスラリー中の13.2%固形分7831.5部を充填する。120℃での蒸留により、トルエンを除去する。その反応物に、100N 第1族基油1230部、AlfolTM810(604部)およびアミノジフェニルアミン83.8部を加える。この反応物を、窒素流下にて、135℃まで加熱し、およそ24時間保持する。この反応物に、AlfolTM1218(916.8部)およびメタンスルホン酸(滴下)47.7部を加える。その温度を150℃まで上げ、そして24時間にわたって、水/トルエン共沸によって、水を除去する。およそ28部の水を除去する。ブタノール(23.7部)を加え、その反応物を、150℃で、6時間保持する。アリコートは、全酸価=3.27、強酸価=2.61および正味(net)=0.66を有する。この反応物に、アルキルジフェニルアミン12.36部を加える(これは、15分間混合する)。その反応物を135℃まで冷却する。2.7kPa(20mmHg)での真空下にて、蒸留により、揮発性物質を除去する。この反応物をケイ藻土および布パッドで濾過する。
【0091】
(実施例4)
1L丸底反応器フラスコに、無水マレイン酸/スチレン(1:1のモル比)共重合体(これは、RSV=0.42を有する)のトルエンスラリー中の12.2%固形分500部を充填する。120℃での蒸留により、トルエンを除去する。その反応物に、100N 第1族基油79.3部、AlfolTM810(40.7部)およびアミノジフェニルアミン0.72部を加える。この反応物を、窒素流下にて、135℃まで加熱し、およそ24時間保持する。この反応物に、AlfolTM1218(62.4部)およびメタンスルホン酸水溶液(滴下)4.6部を加える。その温度を150℃まで上げ、そして24時間にわたって、水/トルエン共沸によって、水を除去する。その温度を150℃まで上げ、そして24時間にわたって、水/トルエン共沸によって、水を除去する。この反応混合物は、粘稠になり、撹拌をし易くするために、およそ100mLのキシレンを加える。ブタノール(1.63部)を加え、その反応物を、150℃で、さらに1時間保持する。アリコートは、全酸価=4.2、強酸価=3.11および正味(net)=1.1を有する。この反応物に、50%水酸化ナトリウム水溶液1.9部を滴下し、さらに1時間混合する。4.0kPa(30mmHg)での真空下にて、蒸留により、揮発性物質を除去する。この反応物をケイ藻土および布パッドで濾過する。
【0092】
(実施例5)
Alfol 810の量が39.2部であり、Alfol 1218の量が60部であり、アミノジフェニルアミンの量が2.8部であり、そしてブタノールの量が1.48部であること以外は、実施例4を実質的に繰り返す。アリコートは、全酸価=6.8および強酸価=5.3を有する。
【0093】
(実施例6)
反応器に、無水マレイン酸/スチレン(1:1のモル比)共重合体(これは、RSV=0.12を有する)のトルエンスラリー中の13.2%固形分7387.0部を充填する。120℃での蒸留により、トルエンを除去する。その反応物に、100N 第1族基油1796.0部、AlfolTM810(850.7部)およびアミノジフェニルアミン59.96部を加える。この反応物を、窒素流下にて、135℃まで加熱し、およそ24時間保持する。この反応物に、AlfolTM1218(1302.7部)およびメタンスルホン酸(滴下)70.31部を加える。その温度を150℃まで上げ、そして24時間にわたって、水/トルエン共沸によって、水を除去する。およそ97部の水を除去する。ブタノール(48.6部)を加え、その反応物を、150℃で、3時間保持する。アリコートは、全酸価=8.4および強酸価=4.27を有する。50%水酸化ナトリウム水溶液35.0部を加え、その反応物を、150℃で、2時間混合させる。この反応物を135℃まで冷却する。2.7kPa(20mmHg)での真空下にて、蒸留により、揮発性物質を除去する。この反応物をケイ藻土および布パッドで濾過する。
【0094】
(実施例7)
Alfol 810の量が33.78部であり、Alfol 1218の量が51.27部であり、アミノジフェニルアミンの量が5.36部であり、そしてブタノールの量が1.35部であること以外は、実施例4を実質的に繰り返す。13.2%固形分トルエンスラリーの無水マレイン酸/スチレン共重合体(これは、RSV 0.12を有する)の仕込みは、500部である。アリコートは、全酸価=6.7および強酸価=2.5を有する。
【0095】
(実施例8)
Alfol 810の量が31.65部であり、Alfol 1218の量が48.11部であり、第1族100N基油の量が69.4部であり、アミノジフェニルアミンの量が9.0部であり、そしてブタノールの量が1.35部であること以外は、実施例4を実質的に繰り返す。13.2%固形分トルエンスラリーの無水マレイン酸/スチレン共重合体(これは、RSV 0.12を有する)の仕込みは、500部である。アリコートは、全酸価=6.4および強酸価=5.8を有する。
【0096】
(実施例9)
反応器に、無水マレイン酸/スチレン(1:1のモル比)共重合体(これは、RSV=0.12を有する)のトルエンスラリー中の18.92%固形分7000部を充填する。120℃での蒸留により、トルエンを除去する。その反応物に、100N 第1族基油1643.3部、Alfol 810(749.1部)およびアミノジフェニルアミン212.9部を加える。この反応物を、窒素流下にて、135℃まで加熱し、およそ24時間保持する。この反応物に、Alfol 1218(1138.6部)およびメタンスルホン酸(滴下)92.0部を加える。その温度を150℃まで上げ、そして24時間にわたって、水/トルエン共沸によって、水を除去する。およそ102.3部の水を回収する。ブタノール(29.4部)を加え、その反応物を、150℃で、3時間保持する。アリコートは、全酸価=6.4、強酸価=5.8および正味(net)=0.4を有する。50%水酸化ナトリウム水溶液24.7部を加え、その反応物を、150℃で、3時間混合させる。この反応物を135℃まで冷却する。2.70kPa(20mmHg)での真空下にて、蒸留により、揮発性物質を除去する。この反応物をケイ藻土および布パッドで濾過する。
【0097】
(実施例10)
Alfol 810の量が35.53部であり、Alfol 1218の量が53.92部であり、第1族100N基油の量が71.35部であり、アミノジフェニルアミンの量が3.0部であり、そしてブタノールの量が1.35部であること以外は、実施例4を実質的に繰り返す。11.2%固形分トルエンスラリーの無水マレイン酸/スチレン共重合体(これは、RSV 0.12を有する)の仕込みは、500部である。
【0098】
(実施例11)
Alfol 810の量が37.32部であり、Alfol 1218の量が56.55部であり、第1族100N基油の量が76.9部であり、アミノジフェニルアミンの量が5.8部であり、そしてブタノールの量が1.47部であること以外は、実施例4を実質的に繰り返す。
【0099】
(実施例12)
Alfol 810の量が36.95部であり、Alfol 1218の量が56.14部であり、第1族100N基油の量が72.64部であり、アミノジフェニルアミンの量が2.0部であり、そしてブタノールの量が1.4部であること以外は、実施例4を実質的に繰り返す。11.2%固形分トルエンスラリーの無水マレイン酸/スチレン共重合体(これは、RSV 0.12を有する)の仕込みは、500部であった。
【0100】
(実施例13)
反応器に、無水マレイン酸/スチレン(1:1のモル比)共重合体(これは、RSV=0.36を有する)のトルエンスラリー中の16.4%固形分7342.5部を充填する。120℃での蒸留により、トルエンを除去する。その反応物に、100N 第1族基油1492.2部、Alfol 810(679.5部)およびアミノジフェニルアミン193.4部を加える。100N 第1族基油(1537部)およびAlfol 1218(1033.1部)を追加する。その混合物を、窒素流下にて、135℃まで加熱し、およそ24時間保持する。この反応物に、メタンスルホン酸(滴下)64.25部を加える。その温度を150℃まで上げ、そして24時間にわたって、水/トルエン共沸によって、水を除去する。およそ150部の水を除去する。ブタノール(26.6部)を加え、その反応物を、150℃で、6時間保持する。アリコートは、全酸価=4.3および強酸価=1.2を有する。NaOH水溶液(50%)(11.2部)を加え、そして2時間撹拌する。その反応物を135℃まで冷却する。2.7kPa(20mmHg)での真空下にて、蒸留により、揮発性物質を除去する。この反応物をケイ藻土および布パッドで濾過する。
【0101】
(実施例14)
反応器に、無水マレイン酸/スチレン(1:1のモル比)共重合体(これは、RSV=0.07を有する)のトルエンスラリー中の18.92%固形分7000部を充填する。120℃での蒸留により、トルエンを除去する。その反応物に、100N 第1族基油1643.3部、Alfol 810(749.1部)およびアミノジフェニルアミン212.9部を加える。この反応混合物を、窒素流下にて、135℃まで加熱し、およそ24時間保持する。この反応混合物に、Alfol(商標)1218(1138.6部)およびメタンスルホン酸(滴下)92.0部を加える。その温度を150℃まで上げ、そして24時間にわたって、水/トルエン共沸によって、水を除去する。およそ102.3部の水を回収する。ブタノール(29.4部)を加え、その反応物を、150℃で、3時間保持する。50%水酸化ナトリウム水溶液24.7部を加え、その反応物を、150℃で、3時間混合させる。この反応物を135℃まで冷却する。2.7kPa(20mmHg)での真空下にて、蒸留により、揮発性物質を除去する。この反応物をケイ藻土および布パッドで濾過する。
【0102】
(実施例15)
反応器に、無水マレイン酸/スチレン(1:1のモル比)共重合体(これは、RSV=0.70を有する)のトルエンスラリー中の18.92%固形分7000部を充填する。120℃での蒸留により、トルエンを除去する。その反応物に、100N 第1族基油1643.3部、Alfol 810(749.1部)およびアミノジフェニルアミン212.9部を加える。この反応物を、窒素流下にて、135℃まで加熱し、およそ24時間保持する。この反応物に、Alfol 1218(1138.6部)およびメタンスルホン酸(滴下)92.0部を加える。その温度を150℃まで上げ、そして24時間にわたって、水/トルエン共沸によって、水を除去する。およそ102.3部の水を回収する。ブタノール(29.4部)を加え、その反応物を、150℃で、3時間保持する。50%水酸化ナトリウム水溶液24.7部を加え、その反応物を、150℃で、3時間混合させる。この反応物を135℃まで冷却する。2.7kPa(20mmHg)での真空下にて、蒸留により、揮発性物質を除去する。この反応物をケイ藻土および布パッドで濾過する。
【0103】
(実施例16)
反応器に、無水マレイン酸/スチレン(2:1のモル比)共重合体2005部を充填する。トルエン(およそ1000部)を加え、その重合体を分散させる。その反応混合物に、100N 第1族基油1643.3部、Alfol 810(749.1部)およびアミノジフェニルアミン212.9部を加える。この反応物を、窒素流下にて、135℃まで加熱し、およそ24時間保持する。この反応混合物に、Alfol 1218(1138.6部)およびメタンスルホン酸(滴下)92.0部を加える。その温度を150℃まで上げ、そして24時間にわたって、水/トルエン共沸によって、水を除去する。およそ102.3部の水を回収する。ブタノール(29.4部)を加え、その反応物を、150℃で、3時間保持する。50%水酸化ナトリウム水溶液24.7部を加え、その反応物を、150℃で、3時間混合させる。この反応物を135℃まで冷却する。2.7kPa(20mmHg)での真空下にて、蒸留により、揮発性物質を除去する。この反応物をケイ藻土および布パッドで濾過する。
【0104】
(実施例17)
反応器に、無水マレイン酸/スチレン(1:1のモル比)共重合体(これは、RSV=0.70を有する)のトルエンスラリー中の18.92%固形分7000部を充填する。120℃での蒸留により、トルエンを除去する。その反応物に、100N 第1族基油1643.3部、Alfol 810(749.1部)および4−フェニルアゾアナリン(azoanaline)227.6部を加える。この反応物を、窒素流下にて、135℃まで加熱し、およそ24時間保持する。この反応物に、Alfol 1218(1138.6部)およびメタンスルホン酸(滴下)92.0部を加える。その温度を150℃まで上げ、そして24時間にわたって、水/トルエン共沸によって、水を除去する。およそ102.3部の水を回収する。ブタノール(29.4部)を加え、その反応物を、150℃で、3時間保持する。50%水酸化ナトリウム水溶液24.7部を加え、その反応物を、150℃で、3時間混合させる。この反応物を135℃まで冷却する。2.7kPa(20mmHg)での真空下にて、蒸留により、揮発性物質を除去する。この反応物をケイ藻土および布パッドで濾過する。
【0105】
(実施例18)
反応器に、無水マレイン酸/スチレン(1:1のモル比)共重合体(これは、RSV=0.42を有する)のトルエンスラリー中の12.2%固形分500部を充填する。120℃での蒸留により、トルエンを除去する。その反応物に、100N 第1族基油160部、Alfol 1218(94.7部)およびアミノジフェニルアミン15.4部(これは、溶融状態で、約2時間にわたって、滴下する)を加える。この反応物を、窒素流下にて、135℃まで加熱し、およそ24時間保持する。この反応物に、メタンスルホン酸水溶液(滴下)4.6部を加える。その温度を150℃まで上げ、そして24時間にわたって、水/トルエン共沸によって、水を除去する。ブタノール(1.63部)を加え、その反応物を、150℃で、さらに1時間保持する。この反応物に、50%水酸化ナトリウム水溶液1.9部を滴下し、さらに1時間混合する。4.0kPa(30mmHg)での真空下にて、蒸留により、揮発性物質を除去する。この反応物をケイ藻土および布パッドで熱濾過する。
【0106】
(実施例19および参照例1)
2種の潤滑剤調合物を調製し、そしてShort MackTMT−11試験にかける。この試験では、潤滑剤の試料を、MackTMT−11エンジンにて、約80時間まで運転させる。時間の経過につれて、このオイルにすすが蓄積し、試料を取り出し、それらの動粘度を100℃で測定する。結果を、粘度上昇(mm/s(cSt))として、報告する。
【0107】
参照例1は、ベースライン試料であり、これは、オイルおよび市販の組成物(これは、オレフィン共重合体粘度調整剤、分散剤、オーバーベース化カルシウム清浄剤、酸化防止剤(芳香族アミン酸化防止剤を含む)、腐食防止剤および他の従来の成分を含む)を含有する。実施例19は、4%の本発明の分散剤粘度調整剤(一般に、上記実施例から誘導され、これは、潤滑剤に、約2.7%の活性化学物質を与える)を含有すること以外は、実質的に同じ処方である。この重合体に含まれる芳香族アミン官能性の代わりに、このアミン酸化防止剤を除き、従来の粘度調整剤の量を匹敵する量だけ減らす。試験結果は、以下で示す:
【0108】
【表2】

本発明の分散剤粘度調整剤を含有する潤滑剤は、参照例1の潤滑剤よりも高いすす濃度まで、許容できる程度に低い粘度上昇(すなわち、12cSt未満の上昇)を保持している。
【0109】
上で引用した各文献の内容は、本明細書中で参考として援用されている。実施例を除いて、他に明らかに指示がなければ、物質の量を特定している本記述の全ての数値量、反応条件、分子量、炭素原子数などは、「約」という用語により修飾されることが分かる。他に指示がなければ、本明細書中で言及した各化学物質または組成物は、その異性体、副生成物、誘導体、および市販等級の物質中に存在すると通常考えられているような他のこのような物質を含有し得る、市販等級の物質であると解釈されるべきである。しかしながら、各化学成分の量は、他に指示がなければ、市販等級の物質に通例存在し得る溶媒または希釈油を除いて、提示されている。同様に、本発明の各要素の範囲および量は、他の要素のいずれかの範囲または量と併用できる。本明細書中で示した上限および下限の量、範囲および比は、別個に組み合わされ得ることが分かる。本明細書中で使用する「本質的になる」との表現には、問題の組成物の基本的で新規な特性に著しく影響を与えない物質が含まれていてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)(a)ビニル芳香族モノマーおよび(b)2個〜約30個の炭素原子を含有する脂肪族オレフィンから選択される少なくとも1種のモノマーと(ii)少なくとも1種のα,β−不飽和アシル化剤とを含有するモノマーから誘導された、エステル化窒素官能基化インターポリマー組成物;
ここで、該アシル化剤誘導単位の一部は、エステル化され、ここで、該アシル化剤誘導単位の一部は、該アシル化剤モノマー誘導単位と縮合できる少なくとも1個のN−H基を含有する少なくとも1種の芳香族アミンと縮合される、
組成物。
【請求項2】
モノマー(i)が、ビニル芳香族モノマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ビニル芳香族モノマーが、スチレンである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記α,β−不飽和アシル化剤(ii)が、アクリル酸化合物、メタクリル酸化合物、マレイン酸化合物、フマル酸化合物またはイタコン酸化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記α,β−不飽和アシル化剤(ii)が、無水マレイン酸モノマーまたはそれらの反応性等価物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記エステル化窒素官能基化インターポリマーが、約0.03〜約0.8のRSVを有する骨格重合体に基づいている、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記エステル化窒素官能基化インターポリマーが、約5,000〜約300,000の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記芳香族アミンが、前記組成物の約3〜約25重量パーセントを構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記芳香族アミンが、4−アミノジフェニルアミン、4−フェニルアゾアニリン、2−アミノベンゾイミダゾール、3−ニトロアニリンおよびN,N−ジメチルフェニレンジアミンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記アミン成分が、さらに、前記カルボン酸官能性と縮合できる少なくとも2個のN−H基を有するアミンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも2個のN−H基を有するアミンが、エチレンジアミン、フェニレンジアミンまたは2,4−ジアミノトルエンを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記アミン成分が、10個までの炭素原子の脂肪族アミンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記アシル化剤誘導単位のエステル化部分が、1個〜30個の炭素原子を含有するアルコールのエステルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記アルコールが、C1〜6アルコール、C8〜10アルコール、C12〜18アルコール、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
主要量の潤滑粘性のあるオイルと、少量の請求項1に記載の組成物とを含有する、潤滑組成物。
【請求項16】
さらに、清浄剤、分散剤、粘度調整剤、酸化防止剤、流動点降下剤、摩擦調整剤および耐摩耗剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含有する、請求項13に記載の潤滑組成物。
【請求項17】
約1:1より高いN:CO比を有するスクシンイミド分散剤を含有する、請求項14に記載の潤滑組成物。
【請求項18】
請求項14に記載の成分を混合することにより調製される、潤滑組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の組成物と、濃縮物形成量の潤滑粘性のあるオイルとを含有する、濃縮物。
【請求項20】
内燃機関を潤滑させる方法であって、該内燃機関に、請求項1に記載の組成物を供給する工程を包含する、方法。
【請求項21】
前記内燃機関が、ヘビーデューティーディーゼルエンジンである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
潤滑油組成物の粘度指数または抗酸化性を向上させる方法であって、該組成物に、少量で粘度向上量の請求項1に記載の組成物を取り込む工程を包含する、方法。
【請求項23】
分散剤粘度調整剤を調製する方法であって、以下の(a)、(b)および(c):
(a)(i)(a)ビニル芳香族モノマーおよび(b)2個〜約30個の炭素原子を含有する脂肪族オレフィンから選択される少なくとも1種のモノマーと(ii)少なくとも1種のα,β−不飽和アシル化剤とのモノマー誘導単位を含有するカルボキシ含有インターポリマー;
(b)約8個〜約30個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルコール;および
(c)該カルボン酸アシル化剤と縮合できる少なくとも1個のN−H基を含有する少なくとも1種の芳香族アミン、
を任意の順序で反応させる工程を包含する、方法。
【請求項24】
(b)の前記アルコールの全充填物の一部が、まず最初に、(a)の前記インターポリマーと反応され、そして得られた生成物が、その後、前記芳香族アミン(c)および(b)の該アルコールの残りと反応される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記カルボキシ含有インターポリマーが、さらに、(d)1個〜6個の炭素原子を含有する少なくとも1種のアルコール、または非芳香族アミン、またはそれらの両方と反応される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記1個〜6個の炭素原子を含有するアルコールまたは前記非芳香族アミンの少なくとも一部が、(a)の前記アシル化剤成分の約90モルパーセントが前記成分(b)および(c)と反応された後に、供給されて、それによって、任意の残りの未反応アシル化剤成分の大部分が、成分(d)と反応される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
分散剤粘度調整剤を調製する方法であって、以下の工程:
(a)以下の(i)、(ii)および(iii):
(i)(a)ビニル芳香族モノマーおよび(b)2個〜約30個の炭素原子を含有する脂肪族オレフィンから選択される少なくとも1種のモノマー;
(ii)少なくとも1種のα,β−不飽和アシル化剤;および
(iii)α,β−不飽和アシル化剤と芳香族アミンとの縮合生成物、
を共重合する工程;ならびに
(b)(a)の生成物を、約8個〜約30個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルコールと反応させる工程、
を包含する、方法。
【請求項28】
前記芳香族アミンが、4−アミノジフェニルアミン、4−フェニルアゾアニリン、2−アミノ-ベンゾイミダゾール、3−ニトロアニリンおよびN,N−ジメチルフェニレンジアミンからなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項23に記載の方法により調製された、生成物。
【請求項30】
請求項27に記載の方法により調製された、生成物。

【公表番号】特表2007−532770(P2007−532770A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509544(P2007−509544)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/013159
【国際公開番号】WO2005/103093
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】