説明

無水マレイン酸含有混合物からストリッピングによって無水マレイン酸を分離する方法

本発明は、
無水マレイン酸を無水マレイン酸含有ガス流から分離するために、a)無水マレイン酸含有ガス流を、無水マレイン酸用の少なくとも1種の高沸点不活性吸収媒体を含有する液状の吸収性相と接触させ、b)得られた液状の被吸収相から無水マレイン酸を、ストリッピング媒体として水素含有ガスを用いたストリッピングにより1つの塔において分離する方法において、ストリッピング媒体を、塔の少なくとも1理論分離段だけ離れた2つの位置で供給することを特徴とする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無水マレイン酸含有ガス流から無水マレイン酸を分離する方法、マレイン酸エステルの製造方法並びにマレイン酸誘導体の水素化生成物を製造する方法であって、無水マレイン酸を無水マレイン酸含有ガス流から分離することを含む方法に関する。
【0002】
無水マレイン酸は、大工業的に、ベンゼン、ブテン又はブタンのような炭化水素の触媒的空気酸化によって製造される。この場合に得られるガス状の反応混合物は、無水マレイン酸の他に、とりわけ水、一酸化炭素及び二酸化炭素を含有する。
【0003】
炭化水素の酸化の反応器排出ガスから得られる無水マレイン酸あるいは無水マレイン酸からアルコールとの反応によって得られるマレイン酸誘導体、例えばマレイン酸エステルは、しばしば、引き続き水素化に供され、ブタンジオール、テトラヒドロフラン又はγ−ブチロラクトンが得られる。WO97/43234号において、γ−ブチロラクトン、ブタン−1,4−ジオール及びテトラヒドロフランの製造方法が記載されており、その方法では、無水マレイン酸は、炭化水素の酸化の無水マレイン酸含有反応器排出ガスから高沸点不活性有機溶剤を吸収媒体として用いて洗出され、そして無水マレイン酸は、得られた吸収排出物から水素ガス流によるストリッピングによって分離される。そこからストリッピングされた無水マレイン酸は、引き続き気相水素化に至り、ブタンジオール、テトラヒドロフラン及びγ−ブチロラクトンが製造される。前記方法の欠点は、遊離のマレイン酸あるいはフマル酸の形成が吸収媒体循環において増大することである。無水マレイン酸を吸収媒体で洗出させるにあたり高い効率を達成するために、該吸収媒体はできる限り冷却して使用する必要がある。しかしながら、より低温であることによって、工程の間に生じうる不所望な低沸点の副生成物の可溶性も下がり、それが沈積をもたらすこととなる。従って、少量の水が存在するだけで(水は炭化水素の酸化の反応器排出ガス中にしばしば含まれており、また吸収媒体から一緒に洗出される)、無水マレイン酸から腐蝕性の遊離のマレイン酸が副生成物として形成してしまう。遊離のマレイン酸は、特に高温でかつ長い滞留時間で異性体化されて、非常に可溶性が乏しいに過ぎないフマル酸となる傾向にあり、このことは、熱交換器及び塔のようなプラント部で特に沈積することにより、洗浄目的で全プラントを止めることが必要となる。
【0004】
本発明の課題は、マレイン酸誘導体あるいはその水素化生成物の製造のために適しており、上述の欠点が明らかに少なくなった、無水マレイン酸を炭化水素の酸化の無水マレイン酸含有反応器排出ガスから分離するための方法を提供することである。
【0005】
本発明は、無水マレイン酸を無水マレイン酸含有ガス流から分離する方法において、無水マレイン酸含有ガス流を、無水マレイン酸用の少なくとも1種の高沸点不活性吸収媒体を含有する液状の吸収性相と接触させ、そして得られた液状の被吸収相から無水マレイン酸を水素含有ガスでのストリッピングにより他の塔において分離する方法から出発する。本発明による方法は、ストリッピング媒体を、塔の少なくとも1理論分離段だけ離れた2つの位置で供給することを特徴とする。
【0006】
理論分離段についての定義は、例えばE.−U.Schluender,F.Thurner,Destillation,Absorption,Extraktion,Thieme出版 1986,第66頁及び第131〜132頁を参照できる。
【0007】
吸収性相とは、吸収媒体からなる液状の混合物を表す。被吸収相は、吸収物(本願では無水マレイン酸あるいはその反応生成物)で負荷された吸収性相である。
【0008】
液状の吸収性相あるいは被吸収相は、無水マレイン酸用の少なくとも1種の高沸点不活性吸収媒体を含有する。高沸点不活性吸収媒体は、一般に、無水マレイン酸の沸点よりも、少なくとも30℃だけ高い、有利には少なくとも50℃だけ高い、特に有利には少なくとも70℃だけ高い沸点を有する。好適な吸収媒体は、例えばWO97/43234号に記載されている。それらの例は、フタル酸、テレフタル酸又はマレイン酸の高沸点エステル、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート又はジブチルフタレート、ジメチルテレフタレート又はジブチルマレエート、芳香族炭化水素、例えばジベンジルベンゼン、脂環式の酸のエステル、例えばジブチルヘキサヒドロフタレート、更にポリメチルベンゾフェノン、エチレングリコールエーテル及びポリシロキサンエーテルである。有利な吸収媒体は、芳香族もしくは脂環式のジカルボン酸のエステルであり、特にフタル酸もしくはテレフタル酸のエステルが好ましい。高沸点吸収媒体は、被吸収相中に一般に過剰に存在する。吸収媒体と無水マレイン酸との質量比は、一般に、1:1〜100:1、有利には2:1〜100:1、特に有利には4:1〜100:1である。
【0009】
被吸収相からの無水マレイン酸の分離は、ストリッピング媒体として水素含有ガスを用いたストリッピングによって行われる。ストリッピングとは、被吸収相中に存在する吸収物を、脱着助剤(ストリッピング媒体)を用いて分離することを表し、その際、吸収物はストリッピング媒体中に濃縮される。被吸収相は、相応して吸収物について枯渇し、この場合に再生される。水素含有ガスとしては、水素及び水素と反応条件下に不活性なガス、例えば窒素又は引き続いての水素化に際して生じうる他の成分との混合物が適している。最後に挙げた水素混合物を使用することが好ましい。
【0010】
水素と無水マレイン酸とのモル比は、一般に、1:1〜500:1、有利には5:1〜400:1、特に有利には10:1〜400:1である。
【0011】
標準立方メートル(Nm3)での全水素量は、上方あるいは下方の添加位置で、1:1〜1000:1、有利には1:1〜100:1、特に有利には1:1〜30:1の比率で分かれる。この場合に、より多い部分流については水素含有ガスを使用し、そしてより少ない部分流については純粋水素を使用することが好ましい。
【0012】
ストリッピングは、一般に向流法で実施される。この場合に、無水マレイン酸で負荷された被吸収相は、ガス状のストリッピング媒体と対向し、その際、強力な物質交換と熱交換が、下降する液状の被吸収相と上昇する水素相との間で行われる。液状の被吸収相は、連続的に無水マレイン酸について枯渇し、水素相は、相応して無水マレイン酸もしくはその反応生成物について濃縮される。有利には、ストリッピングは、向流法において、塔、例えば不規則充填塔、規則充填塔又は泡鐘塔中で実施される。有利には、ストリッピング媒体として使用される水素は、塔の下方区分もしくは中間区分の2つの位置で、そして無水マレイン酸で負荷された被吸収相は、塔の上方区分で、塔中に導入される。塔底部では、無水マレイン酸について枯渇した被吸収相が得られ、塔の頂部では、ストリッピング媒体として使用される水素と一緒にマレイン酸誘導体が得られる。
【0013】
ストリッピング媒体は、本発明によれば、少なくとも2つの添加位置で、有利には2つの位置で塔中に供給される。位置的に下方の添加位置としては、この場合に、有利には塔底部を通じての添加が選択され、又は特に有利には塔底部の上のガス空間中に添加することが選択される。塔底部を通じての添加の場合には、ストリッピング媒体として使用される水素は底部を冷却し、そしてこのようにして高沸点の、すなわち無水マレイン酸より高沸点の副生成物、例えばフマル酸の形成が低減される。残りのストリッピング媒体(水素混合物が好ましい)を添加する第二の添加位置は、少なくとも1理論分離段だけ高い位置で塔中に供給される。該ストリッピング媒体は、塔中に入れる前に予熱することができる。位置的に下方の添加位置でのストリッピング媒体の部分流は、有利には上方の添加位置でのストリッピング媒体の部分流より低い温度となる。この場合に、上方の添加位置でのストリッピング媒体の温度は、100〜250℃、有利には100℃〜230℃、特に有利には130〜230℃である。
【0014】
下方の添加位置でのストリッピング媒体の温度は、一般に25℃〜250℃、有利には25℃〜230℃、特に有利には25℃〜200℃である。
【0015】
本発明のように、2つの添加位置で水素含有ストリッピング媒体を添加することによって、他方で、底部の上のガス空間中にか、又は底部を通じて、全体で必要なストリッピング媒体の一部のみが供給される。同じ流動速度を前提とした場合に、塔は、この領域では直径をより小さくできるので、かなりのコスト的利点を共にもたらす。更に、それによって底部内容物は減少するので、無水マレイン酸もしくは遊離のマレイン酸の滞留時間は底部で短縮され、そうして高沸点副生成物、例えばフマル酸の形成は低減される。
【0016】
驚くべきことに、更に、本発明による方法によって、低沸点の、つまり無水マレイン酸より低沸点の副生成物、例えばメタノール、エタノール、ブタノール及びテトラヒドロフランを、底部の上方の1つだけの水素の添加位置での水素−ストリッピングよりも5〜15倍良好に、吸収媒体から枯渇させることができると判明した。従って、無水マレイン酸用の不活性吸収媒体は、場合により更なる精製無くして、実質的に何度も再循環することができる。
【0017】
本発明の範囲でのマレイン酸誘導体とは、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル及びフマル酸ジエステルを表し、その際、該エステルは、脂肪族C1〜C4−アルコールに基づくものである。有利には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、n−ペンタノール及びイソペンタノール、特に有利にはメタノール、エタノール及びn−ブタノールのエステル及びジエステルが使用される。
【0018】
向流法での作業は、本発明の有利な実施態様に相当する。特に有利な一実施態様では、被吸収相用の供給位置と塔頂との間に、高沸点不活性吸収媒体を留めるための更なる分離段が存在する。底部において、枯渇された被吸収相が得られ、それは新たな吸収に供給することができる。高い枯渇の程度は必要ないが、望ましくはある。その程度は、頂部供給物の無水マレイン酸含量に対して、一般に80〜100、有利には95〜100%である。
【0019】
ストリッピングは、一般に、100℃より高い温度で底部で実施される。有利には、その温度は、ストリッピングに際して、100〜250℃、特に有利には130〜250℃である。圧力は、ストリッピングに際して、一般に10ミリバール〜100バール、有利には100ミリバール〜60バール、特に有利には300ミリバール〜20バールである。本発明による方法では、頂部生成物中の遊離のマレイン酸もしくはフマル酸の割合が低いことが好ましい。一般に、頂部生成物中の遊離酸の割合は、マレイン酸誘導体の全量に対して、存在する水量とは無関係である。
【0020】
更に、本発明の対象は、マレイン酸エステルの製造方法であって、
a)炭化水素の酸化による無水マレイン酸の製造での無水マレイン酸含有反応器排出ガスからのガス流と、無水マレイン酸より少なくとも30℃だけ高い沸点を有する少なくとも1種の不活性高沸点吸収媒体を含有する液状の吸収性相とを接触させる工程、
b)無水マレイン酸を得られた液状の被吸収相から、ストリッピング媒体として水素含有ガスを用いるストリッピングによって分離する工程、
c)分離された無水マレイン酸と脂肪族のC1〜C5−アルコールとでエステル化させる工程
を含む方法である。
【0021】
脂肪族のC1〜C5−アルコールとしては、エステル化のために、有利には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、n−ペンタノール及びイソペンタノール、特に有利にはメタノール、エタノール及びn−ブタノールが使用される。
【0022】
分離工程b)で得られる混合物あるいは前記の方法の工程c)による十分なエステル化によって得られる混合物あるいはこれらの混合物から蒸留によって得られるマレイン酸誘導体は、引き続き水素化に供することができる。反応条件に応じて、有利には1,4−ブタンジオール、テトラヒドロフラン及び/又はγ−ブチロラクトンが得られる。
【0023】
無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル又は一般にカルボン酸のエステル化は、EP−A0255399号、EP−A0454719号、DE−A5543673号、DE−A19607953号又は"Organikum",VEB Deutscher Verlag der Wissenschaften,第15版,ベルリン 1977年,第498〜502頁に記載されている。有利には、本発明による方法によりマレイン酸ジエステルが製造される。
【0024】
また本発明の対象は、1,4−ブタンジオール、γ−ブチロラクトン及びテトラヒドロフランからなる群から選択される少なくとも1種の化合物の製造方法であって、
a)炭化水素の酸化による無水マレイン酸の製造での無水マレイン酸含有反応器排出ガスからのガス流と、無水マレイン酸より少なくとも30℃だけ高い沸点を有する少なくとも1種の不活性高沸点吸収媒体を含有する液状の吸収性相とを接触させる工程、
b)無水マレイン酸を、ストリッピング媒体として水素含有ガスを用いるストリッピングによって分離する工程、
c)場合により、分離された無水マレイン酸と脂肪族のC1〜C5−アルコールとでエステル化させる工程
d)場合により、アルコールと工程c)で得られるマレイン酸誘導体を含有する混合物とを分離する工程、
e)得られたマレイン酸誘導体を水素化する工程
を含む方法である。
【0025】
分離工程b)で得られた無水マレイン酸は、直接水素化することができる。しかしながらまた、分離工程b)で得られた混合物をアルコールとのエステル化に供することもでき、その際、上述の脂肪族のC1〜C5−アルコールはエステル化アルコールとして使用され、有利にはメタノール、エタノール及びn−ブタノールが使用される。
【0026】
分離工程b)で、もしくは工程c)によるエステル化によって得られた混合物は、直接的に水素化に供することができる。水素化の前に、工程d)により得られたアルコールを、得られた混合物から分離することが好ましい。
【0027】
得られたマレイン酸誘導体の水素化は、液相又は気相中で実施することができる。水素化は、均一に溶解された触媒によって、懸濁された触媒によって、又は固定相触媒によって実施することができる。一般に、使用される水素化触媒は、以下の元素:銅、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム、コバルト、マンガン、ニッケル、モリブデン及びクロムの1種又は複数種を含有する。かかる水素化触媒及びそれを用いて実施される水素化は、例えばWO97/43234号、EP−A0552463号、EP−A0724908号、DE−A2501499号、BE851227号、US4,115,919号、EP−A0147219号、EP−A0417867号、US5,115,086号及びEP−A0382050号に記載されている。気相水素化の場合には、温度は、一般に150〜250℃であり、圧力は、5〜100バールである。液相中での水素化の場合には、温度は、有利には100〜300℃であり、圧力は60〜300バールである。
【0028】
マレイン酸エステル中に結合されたアルコールは、水素化に際して遊離され、そして回収でき、かつ新たに使用することもできる。
【0029】
本発明による方法は、フマル酸の形成が十分に抑制されるので、吸収媒体循環における沈積による問題が十分に回避されるという点で卓越している。
【0030】
本発明を以下の実施例につき詳説する。
【0031】
実施例
以下に記載される試験は、塔底容器、規則充填塔及び頂部凝縮器からなり、直径が58mmの装置(高圧標準(Hochdrucknorm)NW58)中で実施される。該装置の塔底容器から頂部凝縮器までを含む全高さは、約6.7mである。該塔は、充填エレメントB1−500(Montz社)を備えており、理論分離段数18を有している。
【0032】
吸収媒体は、選択的に、装置の上方部、中間部又は下方部の3つの異なる位置で供給するが、そのため常に供給物の上方にも下方にも充填エレメントが存在する。水素含有ストリッピング媒体は、塔の下方領域の複数の位置で供給でき、全ては吸収媒体を供給する最も低い供給位置の下方にある。
【0033】
熱調節された頂部凝縮器によって、部分流を凝縮することができ、そして塔に還流として供給することができる。
【0034】
酸含量は、シリル化法によって測定した。そのために、0.05gの試料を、0.05gの内部標準(テトラエチレングリコール−ジメチルエーテル[TEGDME])及び0.5gのn,o−ビス−トリメチルシリル−トリフルオロアセトアミド(BSTFA)と混合し、そして該溶液を80℃で25分間加熱した。こうして処理された試料を、HP6890型のガスクロマトグラフ(カラムDB−1.60m長)でガスクロマトグラフィーにより分析した。水含量は、カール−フィッシャー法に従って測定した。
【0035】
実施例1:
前記の装置を、吸収媒体による一連の試験の開始前にジブチルフタレートですすぎ、残留物をなくしてから、新たな吸収媒体で充填した(=0%のフマル酸)。
【0036】
循環流は、吸収媒体としてのジブチルフタレート13kg/hであり、約10質量%の無水マレイン酸と1400ppmの水割合を有し、その循環流を塔の中間区分に供給した。向流において、水素含有ストリッピング媒体(純粋水素もしくは95容量%より高いH2を有する水素ガス混合物)を塔の下方部に以下のように供給した:
ストリッピング媒体(水素ガス混合物)のより多い部分流を、27Nm3/hで約225℃において、塔底部の上のガス空間中に導入した。ストリッピング媒体(純粋な水素)のより少ない部分流を、1.5Nm3/hで約30℃において、直接的に塔の底部に導入した。この場合に、底部温度が136℃となるのは、底部を通じてのより少ない部分流の添加が好ましい冷却作用を発揮するためである。72時間後に、底部排出物において0.22質量%のフマル酸の安定な最終値が達成された。水の値は、130ppmまでであり、無水マレイン酸の残留含分は、0.45質量%までであった。136℃で、ジブチルフタレート中のフマル酸の固液−飽和は0.38質量%までであった。
【0037】
比較例2:
前記の装置を、一連の試験の開始前にすすいで、残留物をなくしてから、新たな吸収媒体で充填した(=0質量%のフマル酸)。循環流は、吸収媒体としてのジブチルフタレート13kg/hであり、約10質量%の無水マレイン酸と1400ppmの水割合を有し、その循環流を塔の中間区分に供給した。
【0038】
しかしながら、実施例1に対して、水素含有ストリッピング媒体(95容量%より多いH2を有する水素混合物)を、向流で、塔の下方部の一箇所だけで供給した。
【0039】
完全な28.5Nm3/hのストリッピング媒体流を、約225℃で、塔底部の上のガス空間に導入した。
【0040】
この場合に、底部温度は148℃となった。72時間後に、底部排出物において0.28質量%のフマル酸の安定な最終値が達成された。148℃で、ジブチルフタレート中のフマル酸の固液−飽和は0.48質量%までであった。
【0041】
実施例3:
滞留時間と底部温度がもたらすフマル酸の形成に対する影響を試験するために、油熱される500mlの二重ジャケットガラスフラスコであって還流冷却器(標準的なすり合わせ面(Normalschliff)29mm、A=0.05m2)を有するフラスコ中で回分試験を実施した。
【0042】
そこに、吸収媒体のジブチルフタレート中の5質量%のマレイン酸を装入し、還流下に煮沸し、そして規定の時間間隔で試料を分析した。
【0043】
図1で明らかであるように、塔底部中での滞留時間もその温度もフマル酸形成率に明らかな影響を及ぼした。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、塔底部中での滞留時間とその温度によりもたらされるフマル酸形成率の変化を示すグラフである

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水マレイン酸を無水マレイン酸含有ガス流から分離するために、
a)無水マレイン酸含有ガス流を、無水マレイン酸用の少なくとも1種の高沸点不活性吸収媒体を含有する液状の吸収性相と接触させ、
b)得られた液状の被吸収相から無水マレイン酸を、ストリッピング媒体として水素含有ガスを用いたストリッピングにより1つの塔において分離する
方法において、
ストリッピング媒体を、塔の少なくとも1理論分離段だけ離れた2つの位置で供給することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、ストリッピング媒体の一部を、塔底部を通じてか、又は底部の上のガス空間中に供給することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法において、水素含有ガスによるストリッピングを、100〜250℃及び圧力10ミリバール〜100バールで実施することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法において、炭化水素の酸化による無水マレイン酸製造での無水マレイン酸含有反応器排出ガスを、ガス流として使用することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法であってマレイン酸エステルを製造する方法において、更に、分離された無水マレイン酸を脂肪族C1〜C5−アルコールとエステル化する工程を含む方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法であってマレイン酸のジエステルを製造するための方法。
【請求項7】
請求項4から6までのいずれか1項記載の方法であって1,4−ブタンジオール、γ−ブチロラクトン及びテトラヒドロフランからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を製造するための方法において、更に、
a)場合により、無水マレイン酸と脂肪族のC1〜C5−アルコールとでエステル化させる工程
d)場合により、アルコールと得られたマレイン酸誘導体を含有する混合物とを分離する工程、
e)得られたマレイン酸誘導体を水素化する工程
を含む方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−507576(P2008−507576A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523087(P2007−523087)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063744
【国際公開番号】WO2007/003600
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】