説明

無溶剤型合成皮革の製造方法

【課題】 常温下で有機溶剤や水を希釈剤として用いることなく、無溶剤で得た配合物を用いて、環境問題、シックハウス症候群等の規制に適合した、車輌、家具等に使用できる後エンボス加工可能な高耐久性を有する合成皮革を提供する。
【解決手段】 常温で液状のポリカーボネートジオールと単鎖のアルキレングリコールとからなる混合物(A)、常温で液状のMDI化合物(B)、アミン系触媒(C)とからなり、上記混合物(A)とMDI化合物(B)の混合比率を、混合物(A)中のヒドロキシル基1モルに対するMDI化合物(B)中のイソシアネート基を0.8〜1.2モルとして、常温下で瞬間混合機にて均一混合を行い、この混合物を離型紙上に流延し、加熱後基布と貼り合せることで、後エンボス加工可能な高耐久性を有する合成皮革を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、常温下で有機溶剤や水を希釈剤として用いずに無溶剤で得た配合物を離型紙上に流延して加熱後、基布を貼り合せることで、後エンボス加工の可能な高耐久性合成皮革を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成皮革は、ポリウレタン樹脂を織布や編布からなる基布に離型紙上で積層することにより得られるものであり、一般的な製造方法としては、
(1)ポリウレタン樹脂の有機溶剤溶液を離型性基材としての離型紙上に流延し、加熱乾燥することによって、含まれている有機溶剤を蒸発させた後、得られたフィルムに基布を貼り合せて得られる乾式ラミネート法。
(2)基布に直接ポリウレタン樹脂の有機溶剤溶液をコーティングし、加熱乾燥することによって得られるダイレクトコーティング法。
(3)ジメチルホルムアミドに溶解したポリウレタン樹脂溶液を、直接基布にコーティングあるいは含浸させたのち、水を主成分とする凝固浴に浸漬してポリウレタン樹脂を凝固させ、多孔質層として得られる湿式凝固法。
などが挙げられる。
【0003】
しかしながら、最近の環境問題、シックハウス症候群等による規制の結果、有機溶剤の使用は社会的に制限されてきており、合成皮革の製造においても有機溶剤を含有しないものが要望されている。
【0004】
その対応としては、水系化、無溶剤化に二極化され、水系タイプについては、離型紙上への塗工均一性に欠けること、有機溶剤系に比べて乾燥時に多量の熱量が必要であること、物理物性面では耐水性、耐加水分解性等が不足すること、などが問題とされている。
【0005】
無溶剤化については、従来から用いられてきた有機溶剤からなるポリウレタン樹脂溶液を単に無溶剤化したのみでは、その重合度が非常に高いため粘度が高くなり、離型紙上への均一塗工が不可能になってしまう、といった問題があった。また、重合度を塗工可能なレベルまでに低減すると、得られたフィルムの強度および耐久性が不足するといった問題があった。
【0006】
無溶剤化について、上記したような問題を解決すべく、常温で半固体または固体状のイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを60〜250℃に加熱溶解した(A)成分に、これらと反応可能な(B)成分を混合することで、ポリウレタン多孔体を製造する方法(特許文献1および2)、あるいはポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)からなる組成物に、結晶性を示すポリオール成分を一定量含有させることで接着力を向上させる無溶剤型接着剤組成物(特許文献3)が提案されている。
【0007】
また、ポリオールと多官能イソシアネートからなる末端イソシアネート基含有プレポリマーのイソシアネート基をブロック化剤で反応したブロックウレタンプレポリマーと、活性水素を2個以上有する化合物からなる配合物を、基材上に塗工後100〜250℃の範囲で加熱してブロック化剤を解離させ、その後反応させることからなる皮革状物の製造法(特許文献4)も提案されている。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載の方法や、得られる組成物は、何れも配合液ならびに塗工機のコーティングヘッド部を一定温度に加熱しておく必要があり、安定した品質の量産化に問題を有している。また、特許文献4に記載の製造法では、ブロック化剤の解離に高い温度と時間を必要とし、かつ解離したブロック化剤に起因する臭気に問題があった。
【特許文献1】特開2002−249534号公報
【特許文献2】特開2004−216880号公報
【特許文献3】特開2002−249745号公報
【特許文献4】特開2003−73984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、上記した従来の無溶剤型合成皮革の製造方法が有する問題点に着目し、それらを解決して、車輌、家具等の用途に使用可能な高い耐久性能を有し、かつ後エンボス加工の可能な合成皮革を、従来とは異なる素材と手段によって提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、常温で液状のポリカーボネートジオールと単鎖のアルキレングリコールとからなる混合物(A)、常温で液状のMDI化合物(B)、アミン系触媒(C)とからなり、上記混合物(A)と上記常温で液状のMDI化合物(B)の混合比率が、上記混合物(A)中のヒドロキシル基1モルに対して、上記MDI化合物(B)中のイソシアネート基を0.8〜1.2モルである上記混合物(A)と上記MDI化合物(B)を、常温下で瞬間混合機にて均一混合を行ったのち、この混合物を離型紙上に流延し、加熱後基布と貼り合せることを特徴とする後エンボス加工可能な無溶剤型高耐久性合成皮革の製造方法である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、常温で液状のポリカーボネートジオールが、重量平均分子量400〜4000からなる液状のポリカーボネートジオールとジイソシアネートを反応させて、両末端にヒドロキシル基を有する重量平均分子量800〜7000のウレタン結合を含むポリカーボネートジオールからなることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、常温で液状のポリカーボネートジオールと単鎖のアルキレングリコールとからなる混合物(A)における、ポリカーボネートジオールとアルキレングリコールの混合比が、それぞれのモル分率で20:80〜100:0であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかの項に記載の発明において、常温で液状のMDI化合物(B)が、クルードMDIまたはカルボジイミド化変成MDI単独あるいはそれらの混合物であることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れかの項に記載の発明において、アミン系触媒(C)が、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7と、オクチル酸、フェノール、蟻酸、p−トルエンスルホン酸から選ばれる酸の一種との塩であり、かつこれらの単独あるいは混合物を上記混合物(A)と上記常温で液状のMDI化合物(B)との合計重量に対して20〜100ppm含有していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
上記請求項に記載したこの発明によれば、常温で液状のポリカーボネートジオールと単鎖のアルキレングリコールとからなる混合物(A)、常温で液状のMDI化合物(B)、アミン系触媒(C)を用いることによって、希釈剤として有機溶剤や水を用いることなく、無溶剤で常温での均一攪拌が可能であり、合成皮革とする際の加熱条件も現在一般的に行われている有機溶剤を使用したウレタン樹脂溶液を用いる際の条件と殆ど変らず、かつ、上記(A)、(B)、(C)から得た配合物を、離型紙上に流延し、加熱後基布を貼り合せることで、後エンボス加工可能な、家具や車輌等の用途に適した高耐久性の合成皮革を得ることができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明を詳細に説明する。まず、この発明で目的とする常温でのハンドリング性と、得られた合成皮革の耐久性を無溶剤型のウレタン樹脂配合物で満足させるためには、主材料として用いるポリカーボネートジオールと単鎖のアルキレングリコール、そしてMDI化合物の全てが、常温で液状であることが必要である。
【0017】
また、一般的に有機溶剤からなるウレタン樹脂溶液を用いた際の合成皮革製造における温度とは、80〜130℃、加熱時間は0.5〜3分の範囲である。
【0018】
上記のような温度条件下で、常温で液状のポリカーボネートジオールと単鎖のアルキレングリコールとの混合物(A)と、常温で液状のMDI化合物(B)が反応して、基布とラミネートできる程度に高分子量化させるためには、反応促進のためにアミン系触媒(C)が必要であり、この触媒(C)として、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下、これをDBUと略称する)と各種有機酸とからなる塩を、上記常温で液状のポリカーボネートジオールと単鎖のアルキレングリコールとの混合物(A)と、常温で液状のMDI化合物(B)との合計重量に対して20〜100ppm含有することが必要である。
【0019】
そのような常温で液状のポリカーボネートジオールとしては、重量平均分子量が400〜4000のものが使用でき、組成としては、ヘキシレングリコールとブチレングリコール、ヘキシレングリコールと3−メチル−1,5−ペンタンジオール等に代表されるような2種以上のグリコールを併用することにより非晶性とした、ポリカーボネートジオールを用いることができる。
【0020】
あるいは、これら常温で液状のポリカーボネートジオールを、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートに代表されるジイソシアネート類とモル比で2:1あるいは3:2等で反応させてウレタン結合をその分子中に含有させ、かつ両末端にヒドロキシル基を有する重量平均分子量が800〜7000、望ましくは1000〜5000の反応物としたポリカーボネートジオールを用いることもできる。
【0021】
上記のように、反応させることでウレタン結合をその分子中に含有させ、かつ両末端にヒドロキシル基を有する常温で液状のポリカーボネートジオールは、カーボネート結合のみで合成された常温で液状のポリカーボネートジオールに比べて、耐薬品性、耐溶剤性、皮膜の反発弾性において優れたものとなる傾向があり、車輌、家具用途における合成皮革には特に有用である。また、反応させることでウレタン結合をその分子中に含有させたポリカーボネートジオールは、重量平均分子量が800より小さい場合は、耐薬品性、耐溶剤性、皮膜の反発弾性における効果が十分でなく、また7000より大きい場合には、得られたポリカーボネートジオールの常温での液状態が安定せず支障が生じる。
【0022】
常温で液状の単鎖のアルキレングリコールとしては、エチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール等を用いることができる。
【0023】
また、これら常温で液状のポリカーボネートジオールと単鎖のアルキレングリコールの使用比率は、それぞれのモル分率で、20:80〜100:0、望ましくは30:70〜100:0である。これは、常温で液状のポリカーボネートジオールが20%以下の場合には、得られる合成皮革の風合いが硬くなり、柔軟性に問題が発生するためである。
【0024】
次に、常温で液状のMDI化合物としては、グルードMDI、カルボジイミド化変成MDIの単独あるいはそれらの混合物が使用できる。上記のグルードMDIとは、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートに、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の異性体や、2量体を含むことで非晶化された官能基数2.8前後のイソシアネート化合物である。クルードとは、粗製即ち、単品の純粋物ではなく、上記したような少なくとも2種の材料からなる混合物のことである。
【0025】
カルボジイミド化変成MDIとは、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートの2分子を脱炭酸し、カルボジイミド結合を介して結合した2量体を含むことで非晶化された官能基数2.0前後のイソシアネート化合物である。
【0026】
これら常温で液状のMDI化合物(B)は、蒸気圧も低く、取扱いも安全で、ほぼ二官能のイソシアネート化合物であることから、得られるウレタン樹脂は主としてほぼ線状高分子となり、後エンボス加工適性も良好である。
【0027】
これら常温で液状のMDI化合物(B)は、常温で液状のポリカーボネートジオールと単鎖のアルキレングリコールとの混合物(A)に含まれるヒドロキシル基1モルに対して、(B)のイソシアネート基の割合が0.8〜1.2モル、望ましくは0.9〜1.1モルとなるように配合することが必要である。(B)のイソシアネート基の割合が0.8モルより低い場合は、(A)と(B)が反応することで得られるポリウレタン樹脂の重合度が低くなり、得られた合成皮革のフィルム強度も低くなる。その結果、耐久性に劣るものとなるのである。また、(B)のイソシアネート基の割合が1.2モルより高い場合は、過剰となったイソシアネート基が空気中の水分あるいは基布に含まれる水分と経時で反応するが、ここで生成する結合は、尿素結合、アロファネート結合あるいはビュレット結合であり、ウレタン結合に比べて結合力が弱く、得られる合成皮革の耐久性において望ましくない。また、同時に生成したアロファネート結合、ビュレット結合は、ポリウレタン樹脂を三次元化させるため、後エンボス加工適性が低下し望ましくない。
【0028】
アミン系触媒(C)としては、DBUと、選択された有機酸からなる塩を用いることができる。これらの触媒は、常温で液状のポリカーボネートジオールと単鎖のアルキレングリコールとの混合物(A)と、常温で液状のMDI化合物(B)との反応を促進するために用いるものである。その使用量は、上記(A)、(B)の合計重量に対して、20〜100ppm(好ましくは30〜50ppm)である。これは、触媒量が20ppmより少ない場合は、反応促進効果が不足して前記した温度条件下で充分に反応させることができず、また100ppmより多く用いると、上記(A)、(B)、(C)配合後の粘度が急激に上昇して均一塗工性が期待できない、あるいは合成皮革製品として仕上げた後に、残存するアミン系化合物が多くなり、耐加水分解性等の耐久物性に支障が生じることによる。
【0029】
次に、この発明においては、後エンボス加工適性を向上させる目的で、攪拌時に発生する泡を発泡セルとして合成皮革内に取り込むための整泡シリコーン、無孔質の合成皮革用表皮樹脂層を形成させる目的で攪拌時に発生する泡を取り去る消泡シリコーン等のシリコーン系添加剤を、常温で液状のポリカーボネートジオールと単鎖のアルキレングリコールとからなる混合物(A)と、常温で液状のMDI化合物(B)との合計重量に対して、1000〜10000ppm(好ましくは3000〜7000ppm)添加することができる。これは、シリコーン量が1000ppmより少ない場合は、整泡あるいは消泡効果が十分でなく、また10000ppmより多く用いると、得られた合成皮革の表面にシリコーン系添加剤がブリードし、合成皮革として支障が生じることによる。
【0030】
さらには、フィルム強度を向上させる目的でシリカ、炭酸カルシウム、タルクに代表される無機系充填剤を、発泡セルを積極的に生成させる目的でオキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッドやアゾジカーボンアミドと尿素化合物との混合物に代表される加熱分解型有機系発泡剤、不活性ガスを封入したマイクロビーズ、あるいはこれを加熱することでビーズ化するマイクロバルーン等を用いることができる。
【0031】
さらに、この発明において合成皮革が、ウレタン樹脂を2回あるいは3回以上積層して得られる場合において、1層目の表皮層樹脂、2層目の中間層樹脂となる部分には、後エンボス加工適性を保つためには不適であるが、基布との接着に用いる接着剤層樹脂についてのみ、基布との接着力を向上させる目的で、常温で液体の三量体ポリイソシアネートを常温で液状のMDI化合物(B)と併用することもできる。
【0032】
なお、この発明において、常温で瞬間混合機を用いて均一混合する手段としては、例えば、トミタエンジニアリング社製、Twinflow VR50/100のような二液自動計量混合吐出装置を用いればよく、具体的には瞬間混合ミキサーを有する塗工部に、常温で液状のポリカーボネートジオールと単鎖のアルキレングリコールとの混合物(A)、常温で液状のMDI化合物(B)、とアミン系触媒(C)を別々に充填したタンクから、それぞれ供給され、均一混合直後に離型紙上に塗工できるものである。また、アミン系触媒(C)については、予め(A)あるいは(B)と混合しておき、(A)と(C)との混合物と(B)、あるいは(B)と(C)との混合物と(A)を2個のタンクからなる瞬間混合ミキサーを用いて均一に混合した直後に離型紙上に塗工することも可能である。
【0033】
以下、実施例によりこの発明を詳細に説明するが、この発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、部数はすべて重量部である。
【実施例1】
【0034】
両末端にヒドロキシル基を有する重量平均分子量2000のヘキシレングリコールと3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる常温で液状のポリカーボネートジオール1000部、カルボジイミド化変成MDI(日本ポリウレタン工業社製、ミリオネートMTL、NCO含有量:29.0%)120.2部、DBU/フェノール塩0.0336部を25℃に設定した室内で、瞬間混合ミキサーを用いて均一混合し、離型紙に約100μmの厚さに表皮兼接着剤層樹脂として塗工した。次いで、120℃で5分加熱した後、経糸がポリエステル系、緯糸がレーヨン系からなる起毛布と120℃に加熱したプレスロールを用いて貼り合わせ、80℃で48時間熟成したのち、離型紙を剥離して合成皮革を得た。
【実施例2】
【0035】
まず、両末端にヒドロキシル基を有する重量平均分子量1000のヘキシレングリコールとブチレングリコールからなる常温で液状のポリカーボネートジオール950部に、トリレンジイソシアネート82.7部を反応させ、両末端にヒドロキシル基を有する重量平均分子量2174のウレタン結合を分子中に含有する常温で液状のポリカーボネートジオール1032.7部、2−メチル−1,3−プロパンジオール2.25部、クルードMDI(日本ポリウレタン工業社製、ミリオネートMR−100、NCO含有量:31.25%)141.1部、DBU/オクチル酸塩0.0328部、消泡シリコーン(信越化学工業社製、KF−96)5部を、実施例1と同様の手法で混合し、離型紙に約20μmの厚さに塗工したのち、120℃で5分加熱して表皮樹脂層を得た。
【0036】
次に、両末端にヒドロキシル基を有する重量平均分子量1000のヘキシレングリコールとブチレングリコールからなる常温で液状のポリカーボネートジオール1000部に、トリレンジイソシアネート87部を反応させ、両末端にヒドロキシル基を有する重量平均分子量2174のウレタン結合を分子中に含有する常温で液状のポリカーボネートジオール1084部、ミリオネートMTL 166.6部、DBU/フェノール塩0.0933部、整泡シリコーン(東レ・ダウコーニング社製、SH−194)5部を実施例1と同様の手法で混合し、先に得た表皮樹脂層上に約150μmの厚さに発泡接着剤層樹脂として積層し、120℃で5分加熱後、実施例1と同様に起毛布と貼り合せて合成皮革を得た。
【実施例3】
【0037】
両末端にヒドロキシル基を有する重量平均分子量3000のヘキシレングリコールと3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる常温で液状のポリカーボネートジオール450部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール41.3部、ミリオネートMTL 152.1部、整泡シリコーン(SH−194)3部を実施例1と同様の手法で混合し、離型紙に約100μmの厚さに塗工したのち、120℃で5分加熱して表皮兼発泡中間樹脂層を得た。
【0038】
次に、両末端にヒドロキシル基を有する重量平均分子量2000のヘキシレングリコールとブチレングリコールからなる常温で液状のポリカーボネートジオール950部、2−メチル−1,3−プロパンジオール2.25部、クルードMDI(ミリオネートMR−100)141.1部、DBU/オクチル酸塩0.0328部、消泡シリコーン(KF−96)5部、常温で液体の三量体ポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、コロネートHX、HDI系イソシアヌレート、NCO含有量:21.3%)50部を、先に得た表皮兼発泡中間樹脂層上に約50μmの厚さに接着剤層樹脂として積層し、実施例1と同様に起毛布と貼り合せて合成皮革を得た。
(比較例1)
【0039】
両末端にヒドロキシル基を有する重量平均分子量2000のヘキシレングリコールと、3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる常温で液状のポリカーボネートジオール1000部、ミリオネートMTL 86.9部、DBU/フェノール塩0.0326部を実施例1と同様の手法で混合し、離型紙に約100μmの厚さに表皮兼接着剤層樹脂として塗工したのち、実施例1と同様に起毛布と貼り合せて合成皮革を得た。
(比較例2)
【0040】
両末端にヒドロキシル基を有する重量平均分子量2000のヘキシレングリコールとブチレングリコールからなる常温で液状のポリカーボネートジオール100部、2−メチル−1,3−プロパンジオール40.5部、ミリオネートMR−100 147.8部、DBU/オクチル酸塩0.0058部を、実施例1同様に混合し、離型紙に約100μmの厚さに表皮兼接着剤層樹脂として塗工したのち、実施例1と同様に起毛布と貼り合せて合成皮革を得た。
(比較例3)
【0041】
両末端にヒドロキシル基を有する重量平均分子量2000のヘキシレングリコールとブチレングリコールからなる常温で液状のポリカーボネートジオール1000部、ミリオネートMR−100 141.1部、DBU/フェノール塩0.137部を、実施例1同様に混合し、離型紙に約100μmの厚さに表皮兼接着剤層樹脂として塗工したのち、実施例1と同様に起毛布と貼り合せて合成皮革を得た。
【0042】
上記実施例1〜3、比較例1〜3で得た合成皮革について、均一塗工性、後エンボス加工適性、合成皮革の風合い、耐加水分解性等の性能テストを行った。その結果は表1に示した。なお、これらテストの評価方法および評価基準は次の通りである。
【0043】
均一塗工性試験:25℃に設定した室内で、瞬間混合ミキサーを用いて均一に混合し、離型紙に約100μmの厚さに表皮兼接着剤層樹脂として塗工した際の均一塗工性を以下のように評価した。
○:均一塗工できている。×:塗工スジが発生し、均一塗工ができていない。
【0044】
後エンボス加工適性試験:130℃に加熱した銅製エンボス板を合成皮革上に圧着後、室温まで冷却し、静かにエンボス板を剥がし、合成皮革表面のエンボス加工適正を以下のように評価した。
◎:エンボスのパターンが十分に転写されている。○:エンボスのパターンが転写されている。△:エンボスのパターンが一部のみ転写されている。×:エンボスのパターンが転写されていない。
【0045】
合成皮革の風合い評価試験:合成皮革を曲げた際に感じる硬さ、ボリューム感および反発弾性を以下のように判定した。
◎:非常に良好。○:良好。△:やや問題あり。×:使用不可。
【0046】
耐加水分解性試験:合成皮革を70℃で95%RH下に10週間保持し、その後、合成皮革の表面を爪で傷付け、その傷の付き易さから以下のように判定した。
○:傷が付かない。△:傷は付くが、基材から剥がれることはない。×:被覆膜が基材から部分的に剥がれる。
と判定した。
【0047】
耐エタノール性試験:合成皮革表面にエタノールを滴下し、ガラス製小型シャーレで覆った後24時間放置した。その後合成皮革の表面状態を以下のように判定した。
◎:全く変化なし。○:僅かに跡がつく。△:部分的に変化が見られる。×:表面が大きく変化している。
【0048】
【表1】

【0049】
上記表1から、この発明で得た合成皮革は何れも良好な結果を示した。これに対して、比較例1で得た合成皮革は、弾性に欠け、俗にいうヘタリ現象が発生し、不具合を生じた。比較例2で得た合成皮革は、風合いが硬く、後エンボス加工適性も劣っていた。また、比較例3で得た合成皮革は、均一混合直後から発熱、増粘が激しく、離型紙上に均一塗工ができなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で液状のポリカーボネートジオールと単鎖のアルキレングリコールとからなる混合物(A)、常温で液状のMDI化合物(B)、アミン系触媒(C)とからなり、上記混合物(A)と上記常温で液状のMDI化合物(B)の混合比率が、上記混合物(A)中のヒドロキシル基1モルに対して、上記MDI化合物(B)中のイソシアネート基を0.8〜1.2モルである上記混合物(A)と上記MDI化合物(B)を、常温下で瞬間混合機にて均一混合を行ったのち、この混合物を離型紙上に流延し、加熱後基布と貼り合せることを特徴とする後エンボス加工可能な無溶剤型高耐久性合成皮革の製造方法。
【請求項2】
常温で液状のポリカーボネートジオールが、重量平均分子量400〜4000からなる液状のポリカーボネートジオールとジイソシアネートを反応させて、両末端にヒドロキシル基を有する重量平均分子量800〜7000のウレタン結合を含むポリカーボネートジオールからなる請求項1に記載の無溶剤型合成皮革の製造方法。
【請求項3】
常温で液状のポリカーボネートジオールと単鎖のアルキレングリコールとからなる混合物(A)における、ポリカーボネートジオールとアルキレングリコールの混合比が、それぞれのモル分率%で20:80〜100:0である請求項1または2に記載の無溶剤型合成皮革の製造方法。
【請求項4】
常温で液状のMDI化合物(B)が、クルードMDIまたはカルボジイミド化変成MDI単独あるいはそれらの混合物である請求項1〜3の何れかの項に記載の無溶剤型合成皮革の製造方法。
【請求項5】
アミン系触媒(C)が、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7と、オクチル酸、フェノール、蟻酸、p-トルエンスルホン酸から選ばれる酸の一種との塩であり、かつこれらの単独あるいは混合物を上記混合物(A)と上記常温で液状のMDI化合物(B)との合計重量に対して20〜100ppm含有している請求項1〜4の何れかの項に記載の無溶剤型合成皮革の製造方法。


【公開番号】特開2007−169819(P2007−169819A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367955(P2005−367955)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000107952)セイコー化成株式会社 (12)
【Fターム(参考)】