説明

無溶剤2液型塗料組成物

【課題】低温条件下であっても、相溶性および硬化性を良好に維持することができる道路表面塗工用の無溶剤2液型塗料組成物を提供すること。
【解決手段】道路表面塗工用である無溶剤2液型塗料組成物であって、ヒドロキシル基および/またはアミノ基を合計で2個以上有する化合物を含む主剤と、ポリイソシアネート化合物を含む硬化剤と、からなり、上記ポリイソシアネート化合物としてジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを含み、上記ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを上記硬化剤中に5質量%以上含むことを特徴とする無溶剤2液型塗料組成物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無溶剤2液型塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の識別性の向上や、道路舗装の蓄熱の抑制を目的として、道路の表面に塗料組成物が塗工されることがある。特に、近年は、道路舗装の熱吸収によって、都市部の気温がその周辺の郊外部の気温に比べて高温となる、いわゆるヒートアイランド現象が深刻化していることから、遮熱性に優れた道路表面塗工用塗料組成物へのニーズが高まっている。
【0003】
道路表面塗工に使用される塗料組成物としては、例えば、特許文献1に、アクリル酸アルキルエステル等を含む塗膜形成成分と、可視領域で吸収を示し近赤外線領域で反射を示す顔料とを含有する遮熱塗料が開示されている。しかし、アクリル酸アルキルエステルは独特の臭気を有するため、このような遮熱塗料を道路表面に塗工した場合には、その臭気が問題となることがある。
【0004】
また、臭気をほとんど有さない塗料組成物として、特許文献2には、ポリオール等を含む主剤と、脂肪族多官能性イソシアネートを含む硬化剤とからなる、乾燥性および耐候性を有する道路表面塗工用塗料組成物が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびジシクロヘキシルメタンジイソシアネートからなるプレポリマーが開示されている。当該プレポリマーは、低温下でのポリオール化合物との相溶性、および常温での反応性に優れるものの、粘度が高く、道路表面塗工には適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−23277号公報
【特許文献2】特開2009−155552号公報
【特許文献3】特開平9−40734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
道路工事は、四季を通じて行われるものであるため、道路表面塗工用塗料組成物には、冬場の厳寒期においても、安定した塗工特性が要求される。厳寒期に求められる塗工特性としては、道路表面の温度が5℃以下の低温条件下においても塗料組成物中の成分の分離が抑制される特性、すなわち、相溶性が良いことが挙げられる。しかし、先行技術においては、低温条件下での、ポリオール化合物等とイソシアネート化合物との相溶性が不足する場合がある。この場合には、塗工後の外観性や、塗工面の硬化性が不足することがあり、改善の余地があった。
【0008】
また、道路においては、普通自動車の他、普通自動車以上の車重を有する重車両(例えば、トラック、トレーラー、重機車両等)も通行する。そのため、道路表面には、強靭な機械的物性を有する塗膜を塗工する必要がある。さらに、塗工された塗膜には、機械的物性を通年維持するために、特に夏場における塗膜の軟化を防ぐ目的で、高いガラス転移温度(一般的に25℃以上)が要求される。
【0009】
本発明は、上記現状に鑑み、道路表面の温度が5℃以下の低温条件下であっても、相溶性および硬化性を良好に維持することができる道路表面塗工用である無溶剤2液型塗料組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、高いガラス転移温度を有し、夏場であっても軟化しない塗膜を得ることができる、道路表面塗工用である無溶剤2液型塗料組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、良好な遮熱性を有し、その遮熱性を維持できる塗膜を得ることができる、道路表面塗工用である無溶剤2液型塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、道路表面塗工用である無溶剤2液型塗料組成物における硬化剤として、特にジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを含有することにより、道路表面の温度が5℃以下の低温条件下においても、ポリオール化合物等との相溶性が良好となることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、道路表面塗工用である無溶剤2液型塗料組成物であって、ヒドロキシル基および/またはアミノ基を合計で2個以上有する化合物を含む主剤と、ポリイソシアネート化合物を含む硬化剤と、からなり、上記ポリイソシアネート化合物としてジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを含み、上記ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを上記硬化剤中に5質量%以上含むことを特徴とする無溶剤2液型塗料組成物を提供する。
【0012】
また、上記主剤は、ヒドロキシル基を合計で2個以上有する化合物を含む主剤であってもよい。
【0013】
また、上記硬化剤の成分として、さらにヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体を添加してもよい。上記硬化剤の成分として、さらにヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体を添加することによって、硬化後の塗膜の硬度およびガラス転移温度を高くすることができ、道路表面の温度が40℃以上となる夏場においても軟化せず、道路表面において安定した物性を保つ塗膜を得ることができる。
【0014】
本発明の無溶剤2液型塗料組成物に含まれるヒドロキシ基を有する化合物としては、ヒマシ油変性ポリオールが好ましい。
【0015】
また、本発明の無溶剤2液型塗料組成物は、遮熱顔料を含んでもよい。遮熱顔料を含む本発明の無溶剤2液型塗料組成物は、遮熱機能を有する。また、遮熱機能を有する本発明の無溶剤2液型塗料組成物から得られる塗膜においては、JIS K 5602に規定される日射反射率ρ、およびJIS K 5600−4−4に規定される明度Lが、Lが40.0超の場合にはρ≧Lを満たし、Lが40.0以下の場合にはρ≧40.0を満たす。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低温条件下であっても、相溶性および硬化性を良好に維持することができる道路表面塗工用である無溶剤2液型塗料組成物が提供される。また、本発明によれば、高いガラス転移温度を有し、夏場であっても軟化しない塗膜を得ることができる、道路表面塗工用である無溶剤2液型塗料組成物が提供される。また、本発明によれば、良好な遮熱性を有し、その遮熱性を維持できる塗膜を得ることができる、道路表面塗工用である無溶剤2液型塗料組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の無溶剤2液型塗料組成物は、主剤と硬化剤とからなり、当該主剤と硬化剤とを、例えば、塗工の直前に混合した後に使用される。本発明の塗料組成物は、溶剤を含まないため、塗工後に塗料組成物の成分が揮発することがなく、道路表面への塗工において好ましく使用することができる。
【0018】
(主剤)
主剤はヒドロキシル基および/またはアミノ基を合計で2個以上有する化合物を含む。主剤中のヒドロキシル基および/またはアミノ基を合計で2個以上有する化合物の活性水素と、後述する硬化剤中のポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と、が結合することによって、ヒドロキシル基および/またはアミノ基を合計で2個以上有する化合物が架橋される。架橋されたヒドロキシル基および/またはアミノ基を合計で2個以上有する化合物は高分子化し、塗料組成物が硬化する。
【0019】
ヒドロキシル基を2個以上有する化合物としては特に限定されず、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール等を挙げることができ、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、ポリオクタメチレンエーテルグリコール等のポリアルキレングリコール、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリ−3−メチルペンチルアジペート、ポリエチレン/ブチレンアジペート、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペート等のポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリ−3−メチルバレロラクトンジオール等のポリラクトンジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等のポリカーボネートジオール、ヒマシ油変性ポリオール、これらの変性物およびこれらの混合物等を挙げることができる。
【0020】
ヒドロキシル基を2個以上有する化合物としては、ヒマシ油変性ポリオールが好ましい。ヒマシ油変性ポリオールとは、分子内にヒドロキシル基を有するヒマシ油を出発原料として合成したポリオールをいう。ヒマシ油変性ポリオールが有するヒドロキシル基と、後述の硬化剤中の化合物が有するイソシアネート基とを反応させ、ウレタン結合を形成させることにより、ヒマシ油変性ポリオールを高分子化させることができる。ヒマシ油変性ポリオールは、低粘度であり、顔料分散性、耐水性および耐衝撃性が良好である等の利点を有する。ヒマシ油変性ポリオールとしては特に限定されず、ヒマシ油およびその誘導体、例えば、ヒマシ油脂肪酸のジグリセライド、モノグリセライドおよびこれらの混合物等を挙げることができる。ヒマシ油変性ポリオールの市販品としては、URIC−H368(ヒドロキシル基官能基数2.5、分子量:約720、伊藤製油株式会社製)等を挙げることができる。
【0021】
主剤中のヒドロキシル基を2個以上有する化合物の含有量は、硬化剤中の化合物のイソシアネート基1当量に対して、0.5〜1.5当量の範囲であることが好ましく、0.7〜1.1当量であることがより好ましい。上記の範囲であれば、均一な塗膜性能が得られ、塗膜物性が安定化する。
【0022】
アミノ基を2個以上有する化合物としては特に限定されず、例えば、ジアミノジフェニルメタン系(例えば、商品名:キュアミンMT、イハラケミカル工業株式会社製等)、フェニレンジアミン系(例えば、商品名:DETDA、ロンザジャパン株式会社製等)等の化合物を挙げることができる。
【0023】
主剤中のアミノ基を2個以上有する化合物の含有量は、硬化剤中の化合物のイソシアネート基1当量に対して、0.5〜1.5当量の範囲であることが好ましく、0.7〜1.1当量であることがより好ましい。上記の範囲であれば、均一な塗膜性能が得られ、塗膜の塗膜物性が安定化する。
【0024】
ヒドロキシル基およびアミノ基を合計で2個以上有する化合物としては特に限定されず、例えば、N−メチルヒドロキシルアミン、エタノールアミン、N,N−ジメチルヒドロキシアミン、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、N−メチルエタノールアミン、1−アミノ−2−ブタノール、4−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノ−2,2−ジメチル−1−プロパノール、5−アミノ−1−ペンタノール、2−アミノシクロヘキサノールおよび6−アミノ−1−ヘキサノール等の第1級または第2級アミノ基含有モノオールやジエタノールアミン、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールおよび2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール等の第1級または第2級アミノ基および水酸基含有化合物等を挙げることができる。
【0025】
主剤中のヒドロキシル基およびアミノ基を合計で2個以上有する化合物の含有量は、硬化剤中の化合物のイソシアネート基1当量に対して、0.5〜1.5当量の範囲であることが好ましく、0.7〜1.1当量であることがより好ましい。上記の範囲であれば、均一な塗膜性能が得られ、塗膜物性が安定化する。
【0026】
塗料組成物における主剤の含有量は、硬化剤中にポリイソシアネート化合物として含まれる全ての化合物のイソシアネート基の合計当量に対して、ヒドロキシル基および/またはアミノ基の合計当量で0.5〜1.5当量の範囲であることが好ましく、0.7〜1.1当量であることがより好ましい。上記の範囲であれば、均一な塗膜性能が得られ、塗膜物性が安定化する。
【0027】
(硬化剤)
硬化剤はポリイソシアネート化合物を含む。ポリイソシアネート化合物とは、イソシアネート基を分子中に複数含む化合物であり、当該イソシアネート基が、主剤中のヒドロキシル基および/またはアミノ基を合計で2個以上有する化合物の活性水素と結合することによって、ヒドロキシル基および/またはアミノ基を合計で2個以上有する化合物を架橋する。架橋されたヒドロキシル基および/またはアミノ基を合計で2個以上有する化合物は高分子化し、塗膜組成物が硬化する。本発明では、硬化剤中のポリイソシアネート化合物として、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを少なくとも含む。
【0028】
ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートは、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の水添物であり、水添MDIとも呼ばれる。従来、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートは、含溶剤型の塗料組成物において、溶剤とともに使用されてきた。上記含溶剤型の塗料組成物に含まれる溶剤は、道路舗装に使用されるアスファルトの溶解や膨潤をもたらすため、道路表面塗工用の塗料組成物として含溶剤型の塗料組成物を使用することはできない。そのため、道路表面塗工用の塗料組成物は、無溶剤型の塗料組成物であることが求められ、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを含有する従来の塗料組成物は、道路表面塗工の分野においては使用されることがなかった。しかし、本発明者らが鋭意検討した結果、無溶剤2液型塗料組成物においてジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを含む硬化剤を使用することによって、塗料組成物を道路表面等にスプレー等で塗布した場合に、道路舗装に使用されるアスファルトの溶解や膨潤をもたらすことなく、低温条件下であっても、道路表面に形成された塗膜に含まれる未硬化の塗料組成物中の成分が分離する等の問題が生じず、樹脂と硬化剤の相溶性が顕著に改善されることを見出した。そのため、本発明の塗料組成物によれば、道路表面の温度が5℃以下の低温条件下においても、塗料組成物中の成分の均一性が維持され、塗工面上での化学反応が均一に進行し、塗膜の硬化不良を防ぐことができる。
【0029】
本発明では、硬化剤中のポリイソシアネート化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体をさらに含んでもよい。ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体は、HDIヌレートとも呼ばれる。上記硬化剤の成分としてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体を含むことによって、硬化後の塗膜の硬度およびガラス転移温度を高くすることができ、道路表面の温度が40℃以上となる夏場においても軟化せず、道路表面において安定した物性を保つ塗膜を得ることができる。
【0030】
硬化剤には、ポリイソシアネート化合物の他に、硬化剤に通常含まれる成分を含んでもよい。このような成分としては、ポリイソシアネート化合物を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、ジブチルフタル酸エステル等の可塑剤が挙げられる。
【0031】
ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートは、上記硬化剤において5質量%以上含まれる。硬化剤にジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが5質量%以上、より好ましくは10質量%以上含まれていると、主剤と硬化剤との相溶性が良好となるため、低温条件下においても塗料組成物中の成分の均一性が維持される。
【0032】
また、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートは、上記硬化剤において85質量%未満含まれることが好ましい。上記硬化剤においてジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが85質量%未満含まれていると、15質量%以上のジシクロヘキシルメタンジイソシアネート以外の成分が硬化剤に含まれることになるため、硬化剤中のジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが低温下で結晶化することを防ぐことができる。そのため、硬化剤を溶解、および/または、ろ過等の作業を必要とせずに使用することができる。
【0033】
また、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体は、上記硬化剤において15質量%以上95質量%未満含まれることが好ましい。上記硬化剤においてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体が95質量%以上含まれると、硬化剤と主剤との相溶性が低下するという不具合が生じる。
【0034】
(その他の成分)
本発明の無溶剤2液型塗料組成物は、脱水剤を含んでもよい。脱水剤を含有することにより、塗工面に付着している水分とポリイソシアネート化合物との反応による二酸化炭素の発生をより抑制し、塗膜上に凹凸や多孔が発生することを防止することができる。脱水剤としては特に限定されず、従来公知のものを使用でき、例えば、合成ゼオライトのモレキュラーシーブ、硫酸カルシウム、酸化カルシウム等を挙げることができる。脱水剤は、主剤および硬化剤を混合した状態で、これらを合計した量に対して0.1〜1.0質量%の割合で含有されることが好ましい。
【0035】
本発明の無溶剤2液型塗料組成物は、硬化触媒を含んでもよい。この場合、硬化触媒は、主剤に添加することができる。硬化触媒としては特に限定されず、従来公知のものが使用でき、例えば、有機金属触媒等を挙げることができる。有機金属触媒としては、スズ、鉛、ビスマス、亜鉛等のエステルを使用でき、スズエステルおよび/またはビスマスエステルが好ましい。硬化触媒を使用する場合、主剤の全量に対して0.01〜1.0質量%の割合で含まれることが好ましい。
【0036】
本発明の無溶剤2液型塗料組成物は、上記成分以外に、可塑剤、粘性制御剤、消泡剤、光劣化防止剤、分散剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、中空ガラスビーズ、顔料等の、通常の塗料に配合される添加剤を含んでもよい。これらの成分を配合する場合、主剤および硬化剤のいずれに配合してもよい。
【0037】
本発明の無溶剤2液型塗料組成物は、無溶剤であるため揮発性成分を放出せず、屋外での使用に好適に用いられる。本発明の無溶剤2液型塗料組成物を屋外で使用する場合、遮熱性顔料を添加することによって、遮熱機能を有する塗料として使用することができる。遮熱機能を有する塗料として使用する場合は、道路面等の舗装体の表面に塗布することによって、ヒートアイランド現象等の問題にも対応することができる。上記舗装体としては特に限定されず、例えば、アスファルト舗装、コンクリート舗装等を挙げることができる。
【0038】
(遮熱機能)
本発明の無溶剤2液型塗料組成物は、遮熱顔料を含んでもよい。このような遮熱顔料を含む本発明の無溶剤2液型塗料組成物は、遮熱機能を有する。遮熱機能を有する本発明の無溶剤2液型塗料組成物は、ヒートアイランド現象への対策等に有効であり、日本塗料工業会規格(JPMS)27において規定される「2種」の耐候性屋根用塗料に分類されるような高い反射率を持つ塗料組成物である。
【0039】
遮熱顔料とは、近赤外波長域(波長:780nm〜2500nm)の光を吸収しない、または近赤外波長域(波長:780nm〜2500nm)の光の吸収率が小さい顔料を指す。このような遮熱顔料としては、例えば、黒色遮熱顔料、白色遮熱顔料、赤色遮熱塗料、青色遮熱顔料、黄色遮熱顔料等が挙げられる。黒色遮熱顔料としては、例えば、アゾメチアゾ系顔料、ペリレン系顔料、アニリン系顔料、複合酸化物焼成顔料を挙げることができる。白色遮熱顔料として、酸化チタンを挙げることができる。さらに、着色を目的としない体質顔料を添加してもよい。これらの顔料を塗料組成物に添加することによって、JIS K 5602に規定される日射反射率を高くすることができるため、塗膜に遮熱機能を与えることができる。
【0040】
本発明の無溶剤2液型塗料組成物における遮熱機能の有無は、JPMS 27に従い、本発明の無溶剤2液型塗料組成物から得られる塗膜の「日射反射率」および「明度」を算出した後に判定される。
【0041】
日射反射率とは、規定の波長域において求めた分光反射率から算出され、塗膜表面に入射する日射に対する塗膜からの反射光束の比率を指す。日射反射率は、JIS K 5602に従い、近赤外波長域(波長:780nm〜2500nm)および全波長域(波長:300nm〜2500nm)において求められる。
【0042】
明度は、JIS K 5600−4−4の3.2、およびJIS K 5600−4−5に従って算出される。
【0043】
算出された明度(L)が40.0超である場合は、近赤外波長域の日射反射率(ρ)の値が、当該明度の値以上である塗膜が、遮熱性を有する塗膜であると判定される。また、塗膜の明度(L)が40.0以下である場合には、近赤外波長域の日射反射率(ρ)が40.0%以上である塗膜が、遮熱性を有する塗膜であると判定される。
【0044】
本発明の無溶剤2液型塗料組成物を調製する方法としては特に限定されず、上記主剤および硬化剤等を混合および撹拌し、必要に応じて、含まれる粒子を分散させる方法等を挙げることができる。撹拌方法としては、特に限定されないが、ディスパー等を使用できる。また、分散方法としては、特に限定されないが、ロール分散機、サンドグラインドミル等を使用できる。
【0045】
本発明の無溶剤2液型塗料組成物の塗布方法としては特に限定されないが、例えば、上記主剤と硬化剤の2液の成分を衝突混合させて噴霧する2液衝突混合スプレー塗布を挙げることができる。上記2液衝突混合スプレー塗布は、高圧2液衝突混合型吹付装置を使用することが好ましい。また、上記主剤と硬化剤の2液の成分は、塗工直前に混合することが好ましい。
【0046】
本発明の無溶剤2液型塗料組成物を塗布する際に、一般的な道路用塗装機を使用する場合は、主剤と硬化剤との体積比をあらかじめ定めて混合することが作業上好ましい。そのため、主剤と硬化剤とを、例えば1対1の体積比で混合できるように塗料組成物を設計することがより好ましい。
【0047】
本発明の無溶剤2液型塗料組成物は、低温条件下での相溶性に優れるため、道路表面の温度が5℃以下となる冬場の道路表面塗工においても成分が分離しづらく、塗料組成物を均一に塗工することができ、塗工面上で均一に硬化反応が進行する。そのため、厳寒期においても、ムラやツブ等の異常がない塗膜を形成でき、道路表面の温度が5℃以下となる冬場の塗工においても好ましく使用することができる。
【0048】
また、本発明の無溶剤2液型塗料組成物から得られる塗膜は、25℃超のガラス転移温度(Tg)を有するため、高温においても軟化しづらく、形成された硬化塗膜の、夏場の軟化が抑制される。なお、ガラス転移温度は、一般的な測定方法、例えば、TMA法、DTA法、DSC法、DMA法等によって測定できる。
【0049】
上記のように、本発明の無溶剤2液型塗料組成物は、道路表面の温度が5℃以下となる冬場においても相溶性が良好であり、かつ、当該組成物から得られる塗膜は、道路表面の温度が40℃以上となる夏場も軟化せず良好であるため、時期を問わず道路表面塗工のために通年使用できる。
【0050】
道路塗工時には、本発明の無溶剤2液型塗料組成物から形成される塗膜を、1層または複数層形成してもよい。複数層の塗膜を形成する場合には、例えば、滑り止め剤を含む1層目の塗膜を形成した後に、さらにその上に2層目の塗膜を形成することができる。形成される塗膜の膜厚は、特に限定されないが、1層を形成する場合は50〜1,000μmの範囲にし、複数層を形成する場合は各層を50〜1,000μmの範囲にすることが好ましい。
【実施例】
【0051】
以下の実施例に基づき、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0052】
(実施例1〜8ならびに比較例1および5)
ヒドロキシル基を2個以上有する化合物としてヒマシ油変性ポリオール樹脂(商品名:URIC−H368、ヒドロキシル基官能基数:2.5、分子量:約720、伊藤製油株式会社製)、硬化触媒としてジブチルスズラウレート(略称:DBTL、商品名:TVSチンロウ、日東化成株式会社製)、脱水剤としてゼオライト(商品名:ゼオラムA4、東ソー株式会社製)、遮熱性顔料(白色系顔料:酸化チタン、商品名:タイペークCR−97、石原産業株式会社製)、および黒色系顔料(アゾメチアゾ系顔料、商品名:クロモファインA−1103、大日精化工業株式会社製)を、表1および2に示した配合量(単位:質量部)で混合し、ロール分散機を用いて主剤を調製した。
この主剤に、硬化剤として、メチレンビス(4,1−シクロヘキシレン)ジイソシアネート(略称:水添MDI、エボニックデグサ社製)と、脂肪族イソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(略称:HDIヌレート、商品名:コロネートHXR、イソシアネート基含有量22%、分子量:約570、日本ポリウレタン工業株式会社製)とを、表1および2に記載の配合量(単位:質量部)で混合し、実施例1〜8ならびに比較例1および5の塗料組成物を調製した。
【0053】
(比較例2)
硬化剤に含まれるイソシアネート化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のアロファネート変性体(略称:HDIアロファネート、商品名:コロネート2770、日本ポリウレタン工業株式会社製)を単独で使用したこと以外は、上記実施例1〜8ならびに比較例1および5の塗料組成物と同様の手順によって比較例2の塗料組成物を調製した。
【0054】
(比較例3)
HDIヌレートと、HDIアロファネートとを、50対50の割合で混合したものを硬化剤として使用したこと以外は、上記実施例1〜8ならびに比較例1および5の塗料組成物と同様の手順によって比較例3の塗料組成物を調製した。
【0055】
(比較例4)
硬化剤に含まれるイソシアネート化合物として、HDIヌレートを使用せず、芳香族系イソシアネートであるジフェニルメタンジイソシアネート(略称:MDI、商品名:ミリオネートMR−200、日本ポリウレタン工業株式会社製)を単独で使用したこと以外は、上記実施例1〜8ならびに比較例1および5の塗料組成物と同様の手順によって比較例4の塗料組成物を調製した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
(硬化剤の粘度評価)
実施例1〜8および比較例1〜5の塗料組成物の調製において使用した硬化剤について、B型粘度計(商品名:LVDV−1、BROOKFIELD社製)を用いて、23℃、回転数20および50rpm(ローター番号:63)の条件で粘度を測定した。得られた測定結果を表3および4に示す。
【0059】
(0℃における硬化剤とポリオール化合物との相溶性評価)
実施例1〜8および比較例1〜5の塗料組成物の調製において使用した硬化剤と、ポリオール化合物としてヒマシ油変性ポリオール(商品名:URIC−H368、ヒドロキシル基官能基数:2.5、分子量:約720、伊藤製油株式会社製)とを、50対50の割合で、ガラス製サンプル瓶中で混合して塗料組成物を調製した直後に、得られた塗料組成物のそれぞれを、0℃に保持された恒温槽に入れ、30分後に硬化剤とポリオール化合物との混合状態を目視観察した。その結果を表3および4に示す。
評価基準は下記の通りである。
○:塗料組成物がクリヤーであり、透明で濁りがなかった
△:塗料組成物が白濁し、不透明だった
×:塗料組成物中の成分が分離した
【0060】
(常温での反応性)
実施例1〜8および比較例1〜5の塗料組成物の調製において使用した主剤と硬化剤とを、官能基当量で活性水素:イソシアネート基=1:1.1の割合になるように、塗布直前に混合し、塗料組成物を調製した後に、得られた塗料組成物を、30milドクターブレードを使用して、乾燥膜厚が400μmになるように金属板(200mm×100mm×0.3mmブリキ板、日本テストパネル株式会社製)にそれぞれ塗工し、実施例1〜8および比較例1〜5の塗料組成物から得られる塗膜が表面に形成された試験板を得た。得られた試験板を常温(23℃)で指触し、試験板のタック感がなくなるまでの時間を測定した。その結果を表3および4に示す。
【0061】
(0℃での塗工性)
実施例1〜8および比較例1〜5の塗料組成物の調製において使用した主剤と硬化剤とを、官能基当量で活性水素:イソシアネート基=1:1.1の割合になるように、塗布直前に混合し、塗料組成物を調製した後に、得られた塗料組成物のそれぞれを、エアレススプレー(商品名:XTR−5、GRACO社製)によって、乾燥膜厚が400μmになるように、0℃に冷却した金属板に塗工し、実施例1〜8および比較例1〜5の塗料組成物から得られる塗膜が表面に形成された試験板を得た。得られた試験板を0℃で3時間保持した後、その状態を目視観察し、塗工性の評価を行った。その結果を表3および4に示す。
評価基準は下記の通りである。
○:全く異常がない塗膜
△:わずかなタックあり
×:タック感が残り、硬化不良である塗膜、または、表面に塗膜異常が残る塗膜
【0062】
(ガラス転移温度の測定)
実施例1〜8および比較例1〜5の塗料組成物について、上述の「常温の反応性」の評価で用いた試験板を用いて、TMA(熱機械分析)法によって、熱機械分析装置(商品名:TMA−SS120C、セイコーインスツル株式会社製)を使用し、昇温条件(−12℃から120℃、5℃/分)で、−196mNの押し込み加重で、塗膜のガラス転移温度(Tg)を測定した。その結果を表3および4に示す。
評価基準は下記の通りである。
◎:Tgが30℃超である
○:Tgが25〜30℃である
×:Tgが25℃未満である
【0063】
(耐侯性)
実施例1〜8および比較例1〜5の塗料組成物について、上述の「常温の反応性」の評価で用いた試験板を、サンシャインウェザーメーター(略称:SWOM、商品名:M6R、メタルハライドランプ6kW、スガ試験機株式会社製)で促進曝露した。曝露を200時間行った後の塗膜のL色差値を、JIS Z 8729に従い、色差計(商品名:CR−410、使用光源:C光源、コニカミノルタセンシング株式会社製)を用いて測定した。測定結果から色差ΔE値を算出し、塗膜の耐侯性評価を行った。その結果を表3および4に示す。
なお、ΔE値は下記式より求めた。
ΔE={(ΔL+(Δa+(Δb1/2
(式中、ΔL:照射部分のL値−非照射部分L値、Δa:照射部分のa値−非照射部分a値、Δb:照射部分のb値−非照射部分b値である)
算出されたΔE値についての評価基準は下記の通りである。
○:3未満
△:3以上、6未満
×:6以上
【0064】
(遮熱性)
日本塗料工業会規格(JPMS)27に従い、日射反射率および明度を算出することにより、実施例1〜8および比較例1〜5の塗料組成物について、当該組成物から得られる塗膜の遮熱性を評価した。
まず、実施例1〜8および比較例1〜5の塗料組成物の調製において使用した主剤と硬化剤とを、官能基当量で活性水素:イソシアネート基=1:1.1の割合になるように、塗布直前に混合し、塗料組成物を調製した後に、得られた塗料組成物を、30milドクターブレードを使用して、乾燥膜厚が400μmになるように白黒隠蔽率試験紙(JIS K5600−4−1 4.1.2で規定されたもの、大佑機材株式会社製)に塗工し、実施例1〜8および比較例1〜5の塗料組成物から得られる塗膜が表面に形成された白黒隠蔽率試験紙を得た。
次いで、得られた白黒隠蔽率試験紙のそれぞれについて、JIS K 5602に従い、白黒隠蔽率試験紙上の塗膜の反射率を300nm〜2500nmまで分光光度計(UV3600;株式会社島津製作所製)で測定し、近赤外波長域(780nm〜2500nm)および全波長域(300nm〜2500nm)の、塗膜の日射反射率を求めた。求めた値の小数点以下一桁を、JIS Z 8401に従って四捨五入した。その結果を表3および4に示す。
また、上記白黒隠蔽率試験紙のそれぞれを用い、JIS K 5600−4−4の3.2およびJIS K 5600−4−5に従い、分光光度計(UV3600;株式会社島津製作所製)を使用して塗膜の明度を算出した。算出された値の小数点以下一桁を、JIS Z 8401に従って四捨五入した。その結果を表3および4に示す。
それぞれの塗膜において得られた日射反射率ρおよび明度Lについて、Lが40.0超の場合には、ρ≧Lを満たすものが遮熱性を有する塗膜であると判定した。また、Lが40.0以下の場合には、ρ≧40.0を満たすものが遮熱性を有する塗膜であると判定した。その結果を表3および4に示す。
なお、遮熱性の評価基準は下記の通りである。
○:L*が40.0超の場合にはρ≧L*を満たすもの
L*が40.0以下の場合にはρ≧40.0を満たすもの
×:L*が40.0超の場合にはρ≧Lを満たさないもの
L*が40.0以下の場合にはρ≧40.0を満たさないもの
【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
表3および4に示される通り、実施例1〜8の塗料組成物は、低温条件下での相溶性に優れる。また、実施例1〜8の塗料組成物から得られる塗膜は、高いガラス転移温度を有するため、形成された硬化塗膜の、夏場の軟化が抑制される。また、実施例1〜4および6〜8の塗料組成物から得られる塗膜は、耐候性に優れていることから、遮熱性を長期間にわたって維持することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路表面塗工用である無溶剤2液型塗料組成物であって、
ヒドロキシル基および/またはアミノ基を合計で2個以上有する化合物を含む主剤と、
ポリイソシアネート化合物を含む硬化剤と、からなり、
前記ポリイソシアネート化合物としてジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを含み、
前記ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを前記硬化剤中に5質量%以上含むことを特徴とする無溶剤2液型塗料組成物。
【請求項2】
前記主剤がヒドロキシル基を合計で2個以上有する化合物を含む主剤である請求項1に記載の無溶剤2液型塗料組成物。
【請求項3】
前記ポリイソシアネート化合物として、さらにヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体を含む請求項1または2に記載の無溶剤2液型塗料組成物。
【請求項4】
前記ヒドロキシル基を有する化合物としてヒマシ油変性ポリオールを含む請求項1〜3いずれか1項に記載の無溶剤2液型塗料組成物。
【請求項5】
遮熱顔料を含む前記無溶剤2液型塗料組成物であって、
前記遮熱顔料を含む前記無溶剤2液型塗料組成物から得られる塗膜の、JIS K 5602に規定される日射反射率ρ、およびJIS K 5600−4−4に規定される明度Lが、
が40.0超の場合には下記式:
ρ≧L
を満たし、
が40.0以下の場合には下記式:
ρ≧40.0
を満たすことにより遮熱機能を有する請求項1〜4いずれか1項に記載の無溶剤2液型塗料組成物。

【公開番号】特開2012−158709(P2012−158709A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20685(P2011−20685)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】