説明

無端ベルトとその製造方法、およびこれを備えた画像形成装置

【課題】使用中にクラックや破断を起こさない無端ベルトとその製造方法、及びこれを利用した電子写真方式の画像形成装置の提供。
【解決手段】導電性樹脂組成物からなり、耐折強さ試験(JIS P 8115)で曲げ角度90度における耐折強さ(回)が1000回以上で、下式(A)で示される耐折強さ角度係数aが−0.030〜−0.040である無端ベルト、および遠心成形法による無端ベルトの製造方法、並びにこの無端ベルトを備えた電子写真方式の画像形成装置。
式(A) a=(logx−logx)/(135−45)
但し、xは曲げ角度135度における耐折強さ(回)、xは曲げ角度45度における耐折強さ(回)を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無端ベルトとその製造方法、およびこれを備えた画像形成装置、詳しくは使用中に破断やクラックの起こらない無端ベルトとその製造方法、およびこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタ、複写機、ファクシミリ装置などには、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。電子写真方式を利用した画像形成装置は、感光ドラムに記憶された潜像に現像ローラからトナーを供給して現像し、このトナー像を感光ドラム下部で接する無端ベルトに転写し、さらに無端ベルトから印刷用紙などの記録体に転写し、トナーが転写された記録体は加圧ローラおよび定着ローラによって圧着され、転写されたトナーが圧着固定されて記録体上に画像や文字が完全に定着する構造となっている。
このような無端ベルトは駆動ローラ等により高速で無限走行する構造になっている。そして、通常のプリンタ等では10万枚近い印刷用紙等の記録体に印刷する期間中、弛みやずれがないように応力をかけたまま使用できなければならない。そのため、無端ベルトは引張り強度、ヤング率、可撓性、耐折強さ、導電特性などをバランスよく備えていないといけない。そこで、無端ベルトは材料や製造工程などに各種の検討がなされている。特許文献1では、熱可塑性樹脂組成物を成形して得た表面抵抗率、体積抵抗率の均一性に優れ、耐折性、ヤング率など総合的な物性のバランスのよいシームレスベルトを、特許文献2では、導電性フィラーとポリイミド樹脂組成物を成形して得た可撓性と剛性のバランスのよいベルトを、特許文献3では、トナー転写濃度を正確に測定できる無端ベルトを、また特許文献4では、クラックやわれの発生し難いポリイミド製無端ベルトが報告されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−6411号公報
【特許文献2】特開2004−99709号公報
【特許文献3】特開2005−10220号公報
【特許文献4】特開2005−31301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、使用前の無端ベルトの引張り強度やヤング率、耐折強さなどの通常のベルト特性測定や材料の物性試験による評価では、長期使用中の無端ベルトの破断やクラックの発生は判断できない場合があった。
本発明では、使用前の無端ベルトの特定性能を評価することにより、使用中にクラックや破断を起こさない無端ベルトを提供すること、およびそのような無端ベルトの製造方法、並びにこの無端ベルトを利用した画像形成装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するため本発明者らは、無端ベルトの破断の原因となる長期間の屈曲ストレスを模して耐折強さ試験を検討した。耐折強さ試験(JIS P 8115)で曲げ角度90度における耐折強さが1000回以上で、曲げ角度を変えて測定したときに耐折強さの変化率が一定の範囲内にある無端ベルトが、上記課題を解決できることを見出した。また、ベルト状に形成したフィルムの厚さの変化に対し耐折強さの変化率が一定の範囲内にある無端ベルト材料が好ましい材料であることが分かった。この結果をもとに上記課題を解決するための手段を以下に記す。
(1)導電性樹脂組成物からなり、耐折強さ試験(JIS P 8115)で曲げ角度90度における耐折強さ(回)が1000回以上で、下式(A)で示される耐折強さ角度係数aが−0.030〜−0.040である無端ベルト。
式(A) a=(logx−logx)/(135−45)
但し、xは曲げ角度135度における耐折強さ(回)、xは曲げ角度45度における耐折強さ(回)を表す。
(2)導電性樹脂組成物を無端ベルトに成形した際、下式(B)で示される耐折強さ厚み係数bが−15〜−35である導電性樹脂組成物からなる(1)に記載の無端ベルト。
式(B) b=(logy−logy)/(0.13−0.07)
但し、yは厚さ0.13mmの無端ベルトの曲げ角度90度における耐折強さ(回)、yは厚さ0.07mmの無端ベルトの曲げ角度90度における耐折強さ(回)を表す。
(3)導電性樹脂組成物が、カーボンブラックを含むポリアミドイミド樹脂である(1)または(2)に記載の無端ベルト。
(4)導電性樹脂組成物を遠心成形法で成形する(1)〜(3)のいずれかに記載の無端ベルトの製造方法。
(5)(1)〜(3)のいずれかに記載の無端ベルトを備えた電子写真方式の画像形成装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明の無端ベルトは使用中に破断やクラックの発生がなく長期間安定して使用できる。そして、無端ベルトおよびその原料である導電性樹脂組成物を簡便な試験法により評価できるので、本発明の無端ベルトの製造にこの評価方法が利用できる。また、本発明の無端ベルトを遠心成形法で成形するので、厚さ精度に優れ、抵抗値のばらつきを小さくすることができる。さらに、本発明の無端ベルトを使用した画像形成装置は高速で画像を形成することができ、しかも長期間にわたって使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の無端ベルトは、導電性樹脂組成物からなり、耐折強さ試験(JIS P 8115)で曲げ角度90度における耐折強さ(回)が1000回以上で、下式(A)で示される耐折強さ角度係数aが−0.030〜−0.040である。
式(A) a=(logx−logx)/(135−45)
但し、xは曲げ角度135度における耐折強さ(回)、xは曲げ角度45度における耐折強さ(回)を表す。
無端ベルトは通常図1に示すような形状をしており、これを転写ベルトとして使用する際、たるみを防止するため、かなりの引張り応力をかけたまま、高速で複数のローラの間を回転させる。さらに、無端ベルトの回転中横ずれが起きそうになると、横から強制的に修正する応力もかかる。このため、ローラとの接触面では引張り応力だけでなく、ねじれや折曲げなど複雑な応力がかかり、使用中に破断することがある。
そこで、本発明の無端ベルトは耐折強さ試験(JIS P 8115)で曲げ角度90度における耐折強さ(回)が1000回以上の強度を必要とする。さらに、本発明の無端ベルトは、曲げ角度を変えて測定した耐折強さ(回)の対数の変化率である耐折強さ角度係数aを上記範囲にすることが必要である。なお、無端ベルト材料としてカーボンブラック含有ポリアミドイミド樹脂組成物を使用した場合は、曲げ角度と耐折強さの対数の関係は、45度から135度の間ではほぼ直線的な変化を示す。耐折強さ角度係数aが上記範囲より大きい(aの絶対値が小さい) 無端ベルト材料は曲げ角度の大小に係らず耐折強さが低いものが多いという不都合があり、aが上記範囲より小さく(aの絶対値が大きく)なると、大きな曲げ角度での耐折強さが低下するという不都合がある。そして転写ベルトとして使用した際、破断やクラックが発生し易い。
通常、無端ベルトとして使用される、導電性樹脂組成物であるカーボンブラック含有ポリアミドイミド樹脂から製造した厚さ0.07〜0.13mmのフィルムで作成した無端ベルトは、上記範囲に入るものが多く、導電性樹脂組成物としてカーボンブラック含有ポリアミドイミド樹脂は、本発明の好ましい無端ベルト材料である。しかし、カーボンブラック含有ポリアミドイミド樹脂製無端ベルトでも、ポリアミドイミド樹脂の重合度やカーボンブラックの種類、添加量などによって必ずしも上記範囲を満足しない。無端ベルト材料の導電性樹脂組成物を選択し、目標とする厚みの無端ベルトまたはフィルムを作成し、これを上記試験法により評価し上記範囲内にあれば、この材料から製造した同じ厚さの無端ベルトは本発明の無端ベルトとなる。
そして、耐折強さ角度係数aは−0.030〜−0.040が好ましく、−0.032〜−0.037がより好ましい。この範囲に制御することにより、無端ベルトの耐折強さが高く、転写ベルトとして使用した際、破断やクラックが発生しにくい。
【0008】
さらに、本発明の無端ベルトは、導電性樹脂組成物を無端ベルトに成形した際、下式(B)で示される耐折強さ厚み係数bが−15〜−35である導電性樹脂組成物からなることが好ましい。
式(B) b=(logy−logy)/(0.13−0.07)
但し、yは厚さ0.13mmの無端ベルトの曲げ角度90度における耐折強さ(回)、yは厚さ0.07mmの無端ベルトの曲げ角度90度における耐折強さ(回)を表す。
カーボンブラック含有ポリアミドイミド樹脂組成物のような好適な無端ベルト用材料をベルトまたはフィルム状にして、その厚さと曲げ角度90度における耐折強さの対数との関係を調べたところ、厚さ0.07mmから0.13mmの範囲でほぼ直線関係が成り立つことがわかった。そして、本発明の耐折強さ厚み係数bは、その直線の傾斜を表している。この傾斜すなわち、耐折強さ厚み係数bが上記範囲にある導電性樹脂組成物が、好ましい本発明の無端ベルト材料である。
耐折強さ厚み係数bが、上記範囲より大きい(bの絶対値が小さい)とベルトの厚みに関わらず耐折強さが低いという不都合があり、上記範囲より厚み係数bが小さい(bの絶対値が大きい)とベルトの厚みを厚くした時に耐折強さが低下する不都合がある。そして、このような材料で作成したベルトを転写ベルトとして使用した際、破断やクラックが発生し易い。
【0009】
好適な本発明の無端ベルトの製造方法は、導電性樹脂組成物を遠心成形法で成形することである。遠心成形法を利用すれば、導電性樹脂組成物から容易に耐折強さ試験(JIS P 8115)で曲げ角度90度における耐折強さ(回)が1000回以上で、下式(A)で示される耐折強さ角度係数aが−0.030〜−0.040である無端ベルトを成形することができる。
式(A) a=(logx−logx)/(135−45)
但し、xは曲げ角度135度における耐折強さ(回)、xは曲げ角度45度における耐折強さ(回)を表す。
また、さらに好適な本発明の無端ベルトの製造方法は、下式(B)で示される耐折強さ厚み係数bが−15〜−35である導電性樹脂組成物を遠心成形法で成形することである。
式(B) b=(logy−logy)/(0.13−0.07)
但し、yは厚さ0.13mmのベルトの曲げ角度90度における耐折強さ(回)、yは厚さ0.07mmのベルトの曲げ角度90度における耐折強さ(回)を表す。
【0010】
次に、本発明の無端ベルトの材料について説明する。無端ベルトは、可撓性と弾性に富んだ導電性樹脂組成物から成形される。樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、アラミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、エポキシ樹脂、架橋型ポリエステル樹脂、メラミン樹脂等があげられる。その中でも、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましく、特にポリアミドイミド樹脂、さらに芳香族ポリアミドイミド樹脂が最も好ましい。
無端ベルトは、ある程度の導電性が要求され、上記導電性樹脂組成物には導電性付与剤が含まれる。このような導電性付与剤としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の各種カーボンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛粉末、金属や合金からなる針状、球状、板状、不定形等の粉末、セラミックス粉末、表面が金属メッキされた各種粒子等があげられる。この中でもカーボンブラックが、粒径、導電性、樹脂材料との親和性等のバランスが取れた材料であり使用し易い。この導電性付与剤の形状、サイズは、球状あるいは不定形で、0.01〜10μm程度が好ましい。
導電性付与剤の添加量は、導電性付与剤の導電性や粒径、および無端ベルトに要求される導電性の程度により適宜調整すればよいが、一般には1〜25質量%の範囲が好ましい。1質量%未満の場合には、導電性物質同士の距離が大きくなり導電性の発現が悪くなる。逆に、25質量%を超える場合、無端ベルトの機械的強度が低下するおそれがある。
導電性付与剤を樹脂材料に分散させる方法としては、樹脂材料の性状に適する公知の分散方法が用いられる。例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダ、押出機、三本ロール、ホモジナイザー、ボールミル、ピースミル等が用いられる。その他の添加剤として、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、老化防止剤、酸化防止剤、補強性フィラー、反応助剤、反応抑制剤等の各種添加剤を必要に応じ、導電性樹脂組成物中に添加してもよい。このようにして作成した導電性樹脂組成物から、下記の成形法により所定の厚さの無端ベルトを作成し、耐折強さ厚み係数bを測定して本発明に用いる導電性樹脂組成物を選択することができる。
【0011】
次に、本発明の無端ベルトの成形方法を説明する。無端ベルトの樹脂材料として熱可塑性樹脂を選択した場合、遠心成形、押出成形、射出成形等によればよい。また、熱硬化性樹脂を選択した場合、遠心成形やRIM成形等を採用すればよい。これらの方法の中でも、材料を問わずに適用可能であること、厚さ精度に優れていること、そして導電性を付与した場合に抵抗値のばらつきが小さいこと等から遠心成形法が好適である。
遠心成形法は、例えば、円筒の金型に流動性の材料を少量注入し、円筒の軸を中心にして金型を回転させて遠心力でその内周面に材料の層を均一に成形する。同じ金型であれば材料の量と無端ベルトの厚さには相関関係があるので、材料の量により厚さを制御できる。溶剤を含む場合は、材料を乾燥、加熱、あるいは過熱水蒸気処理して溶剤を除去し円筒状の成形品を成形し、この成形品を金型から脱型すればよい。金型は各種金属管を用いることができ、内周面は鏡面研磨し、フッ素樹脂やシリコーン樹脂等の離型剤により離型処理し、容易に脱型できるようにするとよい。脱型した円筒状の成形体の両側端部を除去し、所定幅毎に裁断して無端ベルトを得ることができる。この無端ベルトの曲げ角度90度における耐折強さ、および耐折強さ角度係数aを計測して本発明の無端ベルトとすることができる。上記物性値を一度計測して本発明の無端ベルトであることを確認して、同じ導電性樹脂組成物から同じ厚さの無端ベルトを作れば、上記計測をしなくとも本発明の無端ベルトが大量生産できる。
金型で遠心成形する際、準備する流動性の材料は、成形時の粘度が50,000mPa・s以下となるように調整することが好ましい。粘度が50,000mPa・sを超えると、厚さの均一な無端ベルトが作り難くなる。粘度の下限については、特に限定されるものではないが、材料の取り扱い上、10mPa・s以上が好ましい。材料の粘度が上記範囲を外れる場合は、材料に溶媒を加えて溶解・希釈して、粘度を調整して使用すればよい。
【0012】
無端ベルトの機械的強度と可撓性を考慮すると、その厚さは0.03〜1.0mm、好ましくは0.05〜0.2mm、さらに好ましくは0.07〜0.13mm程度が望ましい。薄すぎれば機械的強度が損なわれ、厚すぎれば可撓性が損なわれる。また、無端ベルトは単層構造に限らず、多層構造としても良い。
無端ベルトの内面には作動中の横ぶれ防止用のガイドとして紐状、或いは帯状の細長いビードを配置する場合もある。ビードの材料は、適度なゴム弾性と耐摩耗性を有する弾性材料、例えばウレタン系エラストマー、シリコーン系エラストマー、フッ素系樹脂エラストマー、スチレン系エラストマー等があげられる。これらの中でも、耐摩耗性に優れるJIS K 6253−1997A硬度30Hs以上95Hs以下のウレタン系エラストマーが好適である。
上述の本発明の無端ベルトは、各種画像形成装置の感光体基体用、現像用、定着用等の用途で使用可能であるが、転写ベルトとして利用すればトラブルの少ない電子写真方式の画像形成装置とすることができる。
【実施例】
【0013】
(実施例1)
反応器中でトリメリット酸無水物1モル、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート1モルからなる反応原料、およびフッ化カリウム0.01モルをN−メチル−2−ピロリドン1600gと混合し、30分間かけて20℃から150℃に昇温後、150℃にて5時間の加熱反応し、固形分濃度(実質的全閉環のポリアミドイミド)20質量%の芳香族ポリアミドイミド溶液を得た。これにN−メチル−2−ピロリドンを加え、固形分濃度15質量%、固形分の比重1.2のポリアミドイミド溶液を調製した。これに導電性付与剤のカーボンブラックとして、#3400(pH5.8 商品名 三菱化学株式会社製)をポリアミドイミド樹脂固形分に対して10質量%となるように配合し、ポットミルで24時間混合分散し混合液を得た。これを1000rpmの速度で回転する金型内周に190g注入した。金型は、内径226mm、外径246mm、長さ400mmの大きさとし、金型内面はポリッシングにより鏡面研磨されている。そして金型両端の開口部にはリング状の蓋(内径170mm、外径250mm)をそれぞれ嵌合して材料漏れを防止することとした。こうして温度80℃の金型に材料を注入したら、1000rpmの速度でレベリングして遠心成形し、熱風乾燥機で雰囲気温度を80℃に保ち、この状態を30分間保持して金型の回転を停止させるとともに、金型ごと180℃のオーブンに挿入し、45分間後に取り出した。取り出した金型を室温で放冷し、金型と導電性樹脂組成物の熱膨張差を利用して導電性樹脂組成物でできたフィルムを脱型した。このフィルムの両端部をそれぞれカットして240mmの幅とし、厚さ0.1mmの無端ベルトを作成した。この無端ベルトの組成であるカーボンブラック含有ポリアミドイミド樹脂組成物を導電性樹脂組成物1とした。
(実施例2)
実施例1において、金型に注入したポリアミドイミドとカーボンブラックとの混合液を190gから146gに替えた以外は、実施例1と同様にして厚さ0.07mmの無端ベルトを作成した。
(実施例3)
実施例1の芳香族ポリアミドイミド製造工程において、反応原料中にフッ化カリウムを添加せず、昇温時間を30分間から60分間に変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ0.1mmの無端ベルトを作成した。この無端ベルトの組成であるカーボンブラック含有ポリアミドイミド樹脂組成物を導電性樹脂組成物2とした。
(実施例4)
実施例3において、金型に注入したポリアミドイミドとカーボンとの混合液を190gから146gに替えた以外は、実施例3と同様にして厚さ0.07mmの無端ベルトを作成した。
【0014】
(比較例1)
実施例1において、金型に注入したポリアミドイミドとカーボンブラックとの混合液を190gから253gに替えた以外は、実施例1と同様にして厚さ0.13mmの無端ベルトを作成した。
(比較例2)
実施例3において、金型に注入したポリアミドイミドとカーボンブラックとの混合液を190gから253gに替えた以外は、実施例3と同様にして厚さ0.13mmの無端ベルトを作成した。
(比較例3)
実施例1の芳香族ポリアミドイミド製造原料調製工程において、反応原料としてトリメリット酸無水物1モル、ジフェニルメタンジイソシアネート1モル、および水酸基含有ポリエステル変性ポリシロキサン共重合体(ビックケミー社製:Byk370)46.5g(得られるポリアミドイミド樹脂組成物中の含有量5%に相当する。)をN−メチル−2−ピロリドン1600g中に混合した以外は、実施例1と同様にして厚さ0.1mmの無端ベルトを作成した。この無端ベルトの組成であるカーボンブラック含有ポリアミドイミド樹脂組成物を導電性樹脂組成物3とした。
(比較例4)
比較例3において、金型に注入したポリアミドイミドとカーボンブラックとの混合液を190gから146gに替えた以外は、比較例3と同様にして厚さ0.07mmの無端ベルトを作成した。
(比較例5)
比較例3において、金型に注入したポリアミドイミドとカーボンブラックとの混合液を190gから253gに替えた以外は、比較例3と同様にして厚さ0.13mmの無端ベルトを作成した。
【0015】
(半導電性無端ベルトの物性評価)
JIS P 8115の試験法に準拠して、45度、90度、135度における実施例1〜4、比較例1〜5のそれぞれの耐折回数を測定した。その結果を基に、各実施例、比較例毎の耐折強さ角度係数aを表1に、実施例1、3、比較例3で製造したカーボンブラック含有ポリアミドイミド樹脂組成物の耐折強さ厚み係数bを表2に示した。
(無端ベルトの実用性評価)
実施例1〜4、および比較例1〜5で作成した無端ベルトをそれぞれタンデム方式のカラープリンタ(MicroLine9055c 株式会社沖データ製)に装着して実機テストをした。プリント速度は、上記のプリンタの仕様に合わせ、A4用紙を横21枚/分(A4横210mm+余白50mmとして260mm×21枚で約5.5m/分の移動速度)で10万枚以上印刷を目標に無端ベルトの寿命テストを15万枚まで実施した。結果を表3に示した。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【0018】
【表3】

【0019】
表1において、耐折強さ回数、および耐折強さ角度係数aが本発明の範囲内にある無端ベルト(実施例1〜4)は、前記性能の少なくともひとつが本発明の範囲から外れる無端ベルト(比較例1〜5)に較べて、表3の実機テスト結果において明らかに長寿命であることが分かる。また、耐折強さ厚み係数bが第二の本発明の範囲内にある導電性樹脂組成物1または2からなる無端ベルト(実施例1〜4)は、耐折強さ厚み係数bが本発明の範囲から外れる導電性樹脂組成物3からなる無端ベルト(比較例3〜5)に較べて、表3の実機テスト結果において明らかに長寿命であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の無端ベルトは、破断やクラック発生が起こり難い特長があり、これを転写ベルトとして備えた電子写真方式の画像形成装置は長寿命で、メンテナンスフリーとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は無端ベルトの斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1:無端ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性樹脂組成物からなり、耐折強さ試験(JIS P 8115)で曲げ角度90度における耐折強さ(回)が1000回以上で、下式(A)で示される耐折強さ角度係数aが−0.030〜−0.040である無端ベルト。
式(A) a=(logx−logx)/(135−45)
但し、xは曲げ角度135度における耐折強さ(回)、xは曲げ角度45度における耐折強さ(回)を表す。
【請求項2】
導電性樹脂組成物を無端ベルトに成形した際、下式(B)で示される耐折強さ厚み係数bが−15〜−35である導電性樹脂組成物からなる請求項1に記載の無端ベルト。
式(B) b=(logy−logy)/(0.13−0.07)
但し、yは厚さ0.13mmの無端ベルトの曲げ角度90度における耐折強さ(回)、yは厚さ0.07mmの無端ベルトの曲げ角度90度における耐折強さ(回)を表す。
【請求項3】
導電性樹脂組成物が、カーボンブラックを含むポリアミドイミド樹脂である請求項1または2に記載の無端ベルト。
【請求項4】
導電性樹脂組成物を遠心成形法で成形する請求項1〜3のいずれかに記載の無端ベルトの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の無端ベルトを備えた電子写真方式の画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−171426(P2007−171426A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367357(P2005−367357)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】