説明

無細胞移植片

本発明は、(i)生物学的かつ医薬的に許容される材料で作られた、結合力のある開放多孔性構造形成マトリックスおよび(ii)血清を含む、無細胞移植片を提案する。
一つの特に好ましい実施態様において、マトリックスはゲルをさらに含有する。
第二の態様により、かかる無細胞移植片の生成方法が提案され、それにより、マトリックスおよびゲルが提供される場合にはゲルは、血清と接触される。血清を含む移植片は、任意に、乾燥されてもよい。あるいは、マトリックスおよびゲル(ゲルが提供される場合)は、血清と接触される前、乾燥状態である。
最後に、第三の態様により、本発明は、組織を再生する、特に、軟骨および/または骨を再生するための無細胞移植片の使用を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織を再生するため、特に、軟骨を再生するための無細胞移植片、それを生成する方法および組織を再生するための移植片の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
軟骨は結合組織から生成された中胚葉組織の形態であり、そしてそれは、多分化能の未分化中胚葉系前駆細胞によって生成される。3種類の軟骨間の区別は、硝子軟骨、弾性軟骨および線維軟骨である。硝子軟骨は、最も一般的な軟骨の形態であり、例えば、関節表面においてみられる。摩耗または損傷により引き起こされる軟骨の欠損は、広範囲に及ぶ医療上の問題である。身体の通常の炎症系および修復系は軟骨に関しては機能しないので、それは低い自己治癒能しか有さない。それ故に、関節軟骨における軟骨領域ならびに骨軟骨領域を置き換える手段としての方法および技術が、過去、特に、ここ数年にわたり開発されてきた。例えば、関節軟骨は、骨膜、軟骨膜、同種異系および自家骨軟骨移植片、同種異系半月または合成材料で作られた人工関節により置き換えられてきた。
【0003】
軟骨細胞の自家移植にあっては、患者から採取された軟骨細胞は細胞培養において成長し、再び患者に戻される。それらは、種々の異なる種類の移植片の形態で戻されてもよい。これらの例は、関節に注射される注射液、軟骨細胞を注入されたマトリックスおよび類似のものである。
【0004】
例えば、特許文献1には、三次元細胞外マトリックスおよび遺伝子操作された細胞を含む人工組織が記載されており、該マトリックスが免疫抑制因子または細胞分化誘導因子を放出することができる。好ましくは、これらのマトリックスは、ポリマーフリースの形態を取り、それを介して、細胞懸濁液(フィブリノーゲン溶液に懸濁されていてもよい)が分布される。成長および/または分化過程に必要な対応する細胞外マトリックスの因子または成分もマトリックスに添加されてよい。マトリックスにおいて細胞を維持するために、細胞懸濁液は、トロンビンを添加することにより固められてもよく、それにより完成した移植片が得られる。
【0005】
特許文献2には、細胞培養物からの移植物の生成方法が記載されており、該方法において、細胞が適用される三次元担体構造物がまず被包され、次に、栄養溶液が浸み込まされる。吸収性の微小体が担体構造物に取り込まれ、そしてそれらが吸収されると、組織形成に影響する因子を放出する。
【0006】
特許文献3には、三次元担体構造物(好ましくは、ポリマーフリースで作られる)が記載されており、該構造物中に細胞が取り込まれる。次いで、この担体構造物に、細胞成長および細胞外マトリックスの形成を細胞により促進するために、栄養溶液を浸み込ませる。細胞が遊走したり、あるいは排出されることを防ぐために、担体構造物はアガロースで被包される。
【0007】
特許文献4には、滑液における間葉系細胞の使用も記載されている。必要に応じて、この組成物はまた、フリースまたはプラスチックなどの担体に適用され、この形態の移植片として用いられ得る。そうでなければ、滑液中の細胞懸濁液自体が、関連の関節に注入される。
【0008】
あるいは、実質的に細胞を全く含有しない、マトリックス構造物が作られる特許文献5には、細胞成長に適した1種類以上の構造形成タンパク質を含有する補強マトリックスメンブレンが記載されている。適当なタンパク質は、例えば、コラーゲンである。得られた、メンブレン中のマトリックスに、細胞が注入されてもよく、あるいはそのまま移植されてもよい。後者の場合、身体自身の組織由来の細胞がマトリックス構造物に遊走すると考えられる。それは、例えば、通常のプライディー(Pridie)穿刺または微破砕により行われる。これらの技術を用いて、わずかな穿刺穴または破砕が、関節骨(骨髄の範囲まで)において作られる。血液は、穿刺穴を介して欠損部まで流れ、結果として、欠損部が血液移植片で満たされる。移植片は、間葉系前駆細胞を含有し、それは適当な起動力により刺激され、いわゆる線維軟骨である軟骨型置換組織を形成することができる。マトリックス材料がプライディー穿刺穴を覆って置かれると、血液細胞は、このマトリックス材料内に遊走することができ、それにより、次に、それらは定着する。
【0009】
特許文献6および特許文献7は、この効果を使用し、動員手段としてマトリックス構造物中に成長因子および分化因子(前記特許文献6)またはケモカイン(前記特許文献7)を取込むことよってそれを増強する。全ての因子は、軟骨形成間葉系前駆細胞の動員を増大するように意図されている(究極の目的は、軟骨をより迅速に再生することである)。
【0010】
最後に、特許文献8には、血液由来の適当な移植片を生成する可能性およびポリマー成分が開示されている。この明細書により強調される根本的な問題は、プライディーの穿刺技術を用いて標準として形成する血液移植片が、凝固物上で収縮し、ゆえに、形を変えるという事実である。添加されたポリマーは、この形状の変化を阻止し、形状に忠実な治癒を可能にする。移植片を生成するために、ポリマーは血液または赤血球、白血球、単球、血小板、フィブリノーゲン、トロンビンおよび血小板濃縮血漿などの血液成分と混合され、欠損部に導入される。しかしながら、血液成分を用いる場合には、凝固させることが可能な材料の存在が所望の効果の達成に関して重要な因子となる。
【0011】
キトサンで作られた移植片および軟骨細胞が、代替物として用いられてもよい。細胞は上述の通り欠損部に導入されるので、誘引目的の物質および/または成長因子および分化因子の添加なしですますことができる。
【0012】
移植片自体が細胞を含有する場合には、それらはしばしば取扱い中の操作により損傷される、または細胞、特に自己細胞が移植片のため用いられる場合には、それらは、長い培養過程により生成され、かつコンタミネーションを防ぐために注意深く制御されなければならず、最終的には、保存できなくなるので、上述の技術は不都合である。同時に、誘引目的のため用いられる物質を含むか、あるいは含まない、プライディー穿刺穴を介した間葉系細胞の無細胞移植片の動員は、満足できないものであることが判った。コロニー形成は遅く、僅かな細胞により開始され、そしてまた特定的でない。このことは、異なる細胞タイプが、プライディー穿刺穴からの血液から移植片に流れ込み、そこにとどまることを意味する。しかしながら、軟骨細胞に分化する間葉系前駆細胞によるコロニー形成のみが望まれるが、通常の移植片では、これは保証されない。
【特許文献1】国際公開第97/15655号
【特許文献2】独国特許出願公開第4431598号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第4306661号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第10139783号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/003153号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第19957388号明細書
【特許文献7】国際公開第2005/014027号
【特許文献8】国際公開第02/00272号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
それゆえ、特に本発明の目的は、生成するのが簡単で、容易に保存することができ、かつ適用するのが簡単である、移植片を提供することである。さらに、移植片による動員率を増大すること、移植片に動員され、配置された細胞の種類について良好な選択性を得ること、および可能な限り、可能性のあるアレルゲンを表す、身体にとって外来性の成長因子の使用、任意に、組換え成長因子の使用さえなしですますことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、技術分野で知られている上記および他の諸問題を解消することである。この目的のため、(i)生物学的かつ医薬的に許容される材料で作られた、結合力のある開放多孔性構造形成マトリックスおよび(ii)血清を含む、無細胞移植片を提供される。特に好ましい実施態様において、マトリックスはゲルをさらに含有する。
【0015】
第二の態様により、かかる無細胞移植片の生成方法が提案され、それにより、マトリックスおよびゲル(いずれかが提供される場合)は、血清と接触される。所望に応じて、血清を含む移植片は乾燥されてもよい。あるいは、マトリックスおよびゲル(ゲルが提供される場合)は、血清と接触する前に、乾燥状態であってもよい。
【0016】
第三の態様に基づいて、最終的に本発明は、組織を再生する、特に、軟骨および/または骨を再生するための無細胞移植片の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上記の通り、本発明は、(i)生物学的かつ医薬的に許容される材料で作られた、結合力のある開放多孔性構造形成マトリックスおよび(ii)血清を含む、無細胞移植片に関する。驚くべきことに、本発明により提案される無細胞移植片において血清を用いることにより、骨髄(それを介して、血液が流れる)からの間葉系前駆細胞の動員効率が、数種の因子により増大される。この動員効率における驚くべき増大は、分化した細胞または前駆細胞の移植片を別途導入することを不要とし、それにより移植片の取扱いを容易、かつ短縮し、かつ保存も可能にする。
【0018】
血清は、通常の方法で容易に得ることができる。なるべくなら、それは、移植中に患者から直接採取できるのがよい。それゆえ、自己材料が患者に移植され、他の、アレルギー誘発性因子および/または免疫活性因子を添加する必要がない。
【0019】
本発明により提案される無細胞移植片のマトリックスは、結合力のある、開放多孔性構造形成マトリックスである。本明細書において、表現「結合力のある」はマトリックスが、個々の部分に分離することなく移植片の取扱いを可能にすることを意味すると解釈されなくてはならない。マトリックスの全ての部分が、互いに化学結合または相互作用により結合する必要はない。織物、縮充、ねじりまたは類似のものの形態の機械的結合で足りる。
【0020】
本明細書中、表現「構造形成」は、生成されるべき組織マトリックスへの細胞遊走のための構造形成体として機能するマトリックスの特性を意味すると解釈されなくてはならない。マトリックスはまた、例えば、滑液または血液によって細胞がマトリックス外に運ばれないように、細胞がコロニー形成することができ、かつしっかりした足場を見出すフレームまたは格子として作用する。
【0021】
最後に、本発明で意味する「開放多孔性」とは、マトリックスのフレーム構造物間の空間が、構造物とマトリックスの周辺領域との間で、物質、特には流動体の交換を可能にすることを意味すると解釈されなくてはならない。孔の孔径は、好ましくは、貫通または循環が細胞によって可能となるよう、決められる。しかしながら、本発明の意味合いで用いられる開放多孔性という表現は、例えば、ゲルに見られるような構造を意味するようにも意図されている。ここでは、マトリックスのフレーム構造物がゲル形成体の骨格により提供される。それらの間で含水ポケットおよび流動体が分配され、そしてそれを細胞が貫通することができ、かつそれが流動体の交換を可能にする。それゆえ、適当なゲル構造物とは、本発明での意味合いにおいて、開放多孔性マトリックスとも解釈される。
【0022】
開放多孔性フレーム構造物は、好ましくは、織布あるいは不織布(特に、フリースおよびフェルト構造物)、メンブレン、スポンジ、詰め物、開放気泡フォーム、ウール、ヒモ、規則的に配列された繊維束およびランダムな繊維束、多孔質セラミック材料、海綿質およびゲル、ならびにこれらの組合せから選択される。マトリックスは、好ましくは、フリースまたはフェルト構造物を有する。例えば、層状配列で異なる構造物を組合せることも可能であり、本発明の範囲内である。
【0023】
原則として、マトリックス材料は、生物学的および医薬的に許容される適切な材料であり得る。本発明により提案されるマトリックスにおいて用いられるマトリックス材料は、吸収性または非吸収性のいずれであってもよいが、吸収性材料が好ましい。マトリックスは、好ましくは、コラーゲン、ヒアルロン酸、キトサン、キチン、多糖類、セルロースおよびそれらの誘導体などの天然および合成ポリマー、タンパク質、ポリペプチド、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ(グリコリド、乳酸塩)、カプロラクタム、金属の酸化物、炭化物、窒化物および炭窒化物などのセラミック材料、特に、シリコン酸化物、酸化チタンおよび酸化カルシウム;金属の、ハロゲン化物(特にはフッ化物)、水酸化物、リン酸塩、硫酸塩などの鉱物、好ましくは、リン酸カルシウム、アパタイト、ヒドロキシルアパタイトなどの生理的に無害な材料;チタン、アルミニウム、金、銀、ステンレス鋼およびそれらの混合物からなる群より選択される材料である。より具体的には、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸、コラーゲンまたはヒアルロン酸が好ましい。
【0024】
ポリグリコール酸に関しては、20,000より大きい分子量、好ましくは、30,000〜70,000g/mol、特に好ましくは、約50,000g/molの分子量を有する純ポリグリコール酸を用いることが好ましい。マトリックス材料は、アルファ・リサーチ・スイス GmbH(Alpha Reserch Switzerland GmbH)により販売されているPGA−Soft Felt7(登録商標)などのポリグリコール酸のフリースであってもよい。この製品の場合、インビボでの吸収時間は、約40〜60日である。インビトロで7日後、機械的強度は、加水分解の結果、依然最初の値の約50%である。
【0025】
一つの特に好ましい実施態様において、無細胞移植片は、マトリックスに加えてゲルをも含有する。ゲルは、マトリックスの少なくとも片側に適用されるか、および/または少なくとも部分的にそれを貫通している。なるべくなら、ゲルはそれを完全に貫通しているのがよい。マトリックスがかかるゲルを含有する場合、好ましくは、マトリックス自体がゲルのものと異なる構造を有する。特に好ましくは、ゲル以外は、上で明確に特定されたより固い構造物が用いられる。従って、ゲルは、マトリックスより低い剛性のものが好ましい。最も好ましくは、フリースおよびフェルト構造物が用いられ、それにゲルが導入される。
【0026】
ゲルは天然または合成ヒドロゲルであってもよい。それは、マトリックスより低い剛性のものが好ましい。例えば、ゲルは、多糖類、ポリペプチド、ヒアルロン酸、フィブリン、コラーゲン、アルギン酸塩、アガロースおよびキトサン、ならびにそれらの塩、誘導体および混合物から選択することができる。適当な塩は、例えば、当該ゲルのアルカリ塩およびアルカリ土類塩である。ヒアルロン酸またはヒアルロン酸ナトリウムなどのヒアルロン酸塩が最も好ましい。
【0027】
ヒアルロン酸の品質に関しては、発酵により生成された品質を用いることができる。あるいは、動物から得られたヒアルロン酸を用いることも可能である。用いられる品質の平均分子量は、一般に、250から6,000kDaの間であり、好ましくは、1,000〜2,000kDa、最も好ましくは、約1,200kDaである。好適なヒアルロン酸製品が市販されている。好適なヒアルロン酸の品質は、例えば、TRB ケメディカ AG(TRB Chemedika AG)から販売されているオステニル(Ostenil(登録商標))である。この材料は、EC認定されており、それゆえ、医薬目的に適している。
【0028】
ゲルは、生理的に適した溶液中の適当なゲル形成材の供給源、沈殿または重合から得ることができる。かかる適当な溶液の例は、水または塩(例えば、ハロゲン(Cl、Br、I)化アルカリおよびアルカリ土類、炭酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩および類似のもの)、有機酸、緩衝物質およびそれらの混合物の水溶液である。あるいは、培養培地または体液、あるいは滑液または血清などのそれらからもたらされた溶液などの、より複雑な溶液が用いられてもよい。用いられるゲル形成材の量は、ゲルの適切な粘性が得られるように、選択される。ヒアルロン酸の場合、これは、通常、0.5〜50mg/mlの範囲、好ましくは、0.5〜20mg/ml、最も好ましくは、10mg/mlである。
【0029】
最も好ましい移植片は、ヒアルロン酸ゲルが取り込まれた、PGAフリースまたはフェルトで作られたマトリックスを有するものである。
【0030】
本発明により提案される無細胞移植片の寸法は、一般に、処置されるべき欠損部の寸法および移植片の必須サイズに依存する。処置を施す医師により必要とされる寸法のものが適応され得る。軟骨組織、特に、膝関節における損傷の場合には、これらの寸法は、通常、10〜50mmの長さ、10〜50mmの幅、そして0.5〜3mmの厚さ、好ましくは、10〜30mmの長さ、10〜30mmの幅、そして1〜2mmの厚さの範囲にある。20×20mmの幅と長さ、そして1.1〜2mmの厚さからなるサイズが最も好ましい。寸法は、長方形、円形、楕円形、多面体などの非正方形について適応され得る。
【0031】
本発明により提案される無細胞移植片におけるマトリックスとゲルの組合せの利点は、ゲルが、プライディー穿刺穴または類似の裂け目を貫通する血液の間葉系前駆細胞以外の細胞に対しては機械的バリアを形成することである。これにより、間葉系前駆細胞の移植片への選択的遊走が可能になる。これらだけが、マトリックスにおいてそれら自体を定着させ、所望の組織細胞に分化する。それゆえ所望の組織形成細胞以外の細胞の成長が妨げられるか、あるいは有意に低減される。
【0032】
同時に、ゲルは、機械的ストレス下で所望の細胞の保持を促進し、その後軟骨の天然生物マトリックスが後者の周辺で形成する。これにより、患者は一度移植を受けると、ストレスをより早く除去できる。
【0033】
本発明により提案される無細胞移植片に必要とされる第二の要素は、血清、通常、ヒト血清である。これは、自家、同種または異種性であってもよい。本発明の目的のための血清とは、血液が一度凝固すると、液体のままである血液の一部分を意味する。血清は、血液細胞もそして血漿とは異なりフィブリノーゲンをも全く含有しない。血漿の他の要素は、血清においても見出されるべきである。これらは、脂肪、脂肪酸、グリセリン、糖、塩、金属および血漿タンパク質である。血漿タンパク質は、例えば、輸送タンパク質、酵素、プロ酵素、酵素インヒビター、補体系、免疫タンパク質、炎症メディエーターおよび類似のものを含む。
【0034】
本発明の目的のために用いられるべき血清は、少なくとも1種類の要素を添加することおよび/または少なくとも1種類の血清成分を除去することにより、修飾されてもよい。しかしながら、好ましい実施態様において、血清は修飾されない。特には自己血清が好ましい。これは、患者から血液を採取し、通常の方法を用いて血清を得ることにより得られる。この方法で得られると、血清は、マトリックスおよび提供される場合にはゲルと接触して置いてもよく、ゆえに場合によっては処置を施す医師により、移植の場で、直接移植片に取り込むことができる。
【0035】
あるいは、修飾された血清が用いられる。修飾が少なくとも1種類の構成物質を添加することを含む場合、成長因子、分化因子(この点について、参照により本明細書に取り込まれる前記特許文献6:独国特許出願公開第19957388号明細書を参照)、ホルモン、サイトカイン、細胞接着分子、(例えば、参照により本明細書に取り込まれる前記特許文献7:国際公開第2005/014027号に記載されているような)ケモカインを含む走化因子、酵素、酵素インヒビター、補酵素、鉱物、脂肪、脂質、多糖類、医薬物質(抗生物質、鎮痛剤、炎症阻害剤および免疫抑制剤など)、緩衝物質、安定剤、特に、低温安定剤、およびビタミン、好ましくは、ホルモン、ケモカイン、成長因子および分化因子を含む群から後者を選択することが好ましい。ホルモン、ケモカイン、成長因子および分化因子は、好ましくは、インスリン、PDGF、IGF、GMCSF、GDF5、GDF6、FGF、BMP2、BMP4、BMP7、IL8、SDF1−αおよびEGFから選択される。インスリンが最も好ましい。マトリックスおよび/またはゲルは、上で挙げられた要素またはそれらの混合物を取り込むことにより修飾されてもよい。
【0036】
あるいは、例えば、酵素、免疫タンパク質、プロ酵素、糖などのような特定の要素が、例えば、アフィニティークロマトグラフィーにより選択的に除去されてもよい。血清はまた希釈されてもよい。この目的のため、血清は、所望の量のクエン酸バッファー、PBSまたは類似のものなどの生理的に許容される液体と混合される。
【0037】
上述の無細胞移植片は、マトリックスとゲルが提供される場合にはゲルとが、血清と接触されることによる方法により生成されてもよい。この接触は、滴下、軟化、含浸および浸漬により成されてもよい。好ましくは、ゲルが提供される場合、それは、マトリックスに先ずに取り込まれる、および/またはそれに適用され、血清との接触過程が行われた後、無細胞移植片が、上で挙げられたような他の要素を含有する場合、これらは、マトリックス、ゲルおよび血清のうちの1つ以上に取り込まれ得る。
【0038】
本発明により提案される方法は、乾燥工程を含んでもよい。乾燥工程を用いる利点は、移植片が乾燥形態でより長期間保存され得ることである。マトリックスおよびゲル(提供される場合)が、血清と接触される前に乾燥される場合、この構造物は、血清と接触して置かれたときの浸漬または軟化により元に戻され、それにより、それをすぐに使用できる状態に転換することができる。あるいは、マトリックスと、提供される場合にはゲルと、血清と、を含む構造物が乾燥される場合、それは、生理的に許容される塩溶液などのゲルの形成について上述したように、血清またはいくつかの他の適当な医薬的かつ生理学的に許容される溶液中に浸漬または軟化により元に戻され、すぐに使用できる状態に転換され得る。本発明により提案される移植片が他の要素を含有する場合、これらは、無細胞移植片をすぐに使用できる状態に戻すために用いられる溶液中に取り込まれてもよい。これは、特に、他の要素がタンパク質または不安定な共因子である場合、望まれる。
【0039】
上述のヒアルロン酸ゲルを有するポリグリコール酸フリースで作られる好ましい実施態様の場合、20mm×20mm×1.1mmのフリースサイズが、生理的に適当な溶液中の材料に取り込まれたか、あるいは血清に既に取り込まれた約400μlのヒアルロン酸溶液(10mg/ml)と共に用いられる。20mm×20mm×2mmのフリースの場合、約730μlのヒアルロン酸溶液が用いられる。このような寸法の移植片が、例えば、凍結乾燥により乾燥される場合、それらは、1〜2mlの溶液にそれらを浸すことにより、元に戻され得る。血清を含まない乾燥材料の場合、それらは、好ましくは、血清または希釈血清で戻されるのに対して、血清含有乾燥マトリックス材料は、好ましくは、生理食塩水溶液において元に戻される。
【0040】
適当な血清濃度は、マトリックスにおいて含有されるゲルおよび液体の容量の1〜100容量%である。好ましくは、ゲルを含まないマトリックスの場合、液体容量の10〜100%、好ましくは、50〜100%、最も好ましくは、100%の血清濃度が用いられ、他のものの中に毛管力により取り込まれる。血清濃度を100%未満に低減するために、生理的に許容される塩溶液で希釈された血清が用いられてもよい。
【0041】
ゲルを含むマトリックスの場合、血清の0.01〜50容量%、またはそれ以上、好ましくは、0.5〜20容量%、最も好ましくは、1〜10容量%の血清含有量が、ゲル、血清および任意に、医薬的に許容される液体の総容量に対して用いられてもよい。
【0042】
本発明により提案される無細胞移植片は、組織を再生するため、特に、軟骨および/または骨を再生するために用いられ得る。好ましくは、それは、間葉組織を再生するために用いられる。最も好ましくは、それは、特に、プライディー穿刺法または微破砕を用いて軟骨および/または骨を再生するために用いられる。移植片は、関節表面を元に戻すために、プライディー穿刺または微破砕後、正確に合わせて軟骨に導入される理にかなったカバーとして作用する。マトリックス材料、好ましくは、フェルト材料は、機械的安定性を与え、伝導性構造物として作用し、そしてそれが、骨髄および海綿様骨から遊走した患者の細胞の均一な三次元分布を促進する。ヒアルロン酸などのゲルは、赤血球細胞および白血球の内側への遊走を防ぐために、バリアとして作用する。血清、好ましくは、自己血清は、細胞、特に間葉系前駆細胞の移植片、ゆえに、欠損部への遊走を促進する。移植片に遊走して、軟骨細胞を形成し、ゆえに、軟骨性再生組織を構築する間葉系前駆細胞の成熟または分化は、関節に存在するヒアルロン酸、血清および滑液により誘導される。驚くべきことに、血清の使用により動員数を有意に増加させることが見出された。
【0043】
以下に示す実施例は、本発明を説明することを意図しているにすぎず、決して限定と解釈されるべきではない。
【実施例】
【0044】
実施例1
インビトロでの成長因子および分化因子、ケモカインおよびヒト血清によるヒト間葉系幹細胞の動員
A ヒト間葉系幹細胞の単離および培養
ヒト間葉系幹細胞(MSC)を骨髄から単離する方法は、既に記載されている[独国特許出願公開第10333901号明細書]。最大3mlの骨髄穿刺液を10mlのPBSと混合し、310g、室温にて10分間遠心分離する。細胞ペレットを再懸濁し、再びPBSで洗浄する。細胞を20mlのDME培地(10〜20% FBS、2% HEPES、4mMのL−グルタミン、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンを含む)に入れる。この細胞懸濁液を5mlずつ、1.073g/mlの密度を有するパーコール密度勾配(Percoll density gradient)20ml上に導入する。細胞を900gにて32分間遠心分離する。上相を新しい遠心チューブに移す。2.5倍量のPBSを添加した後、310gにて6分間遠心分離する。細胞ペレットをDME培地に入れる。細胞培養フラスコにて培養するために1.5×10〜3.5×10個細胞/cmを移し、37℃、5% COにてインキュベートする。培地を72時間後に初めて交換し、次に、3〜4日毎に交換する。この方法で単離すると、細胞は2〜3週間後にコンフルエントに成長し、次に、それをトリプシン処理により6,000個細胞/cm培養表面の細胞密度で新たな培養容器に移す(継代1)。約1週間後、再び細胞をトリプシン処理する(継代2)。ヒト間葉系幹細胞のこの培養物の均一性を、FACS分析により確かめる。FACS分析では表面抗原のエンドグリンとALCAMが同定されるが、表面抗原のCD34、CD45およびCD14は同定されない。
【0045】
B インビトロでのヒト間葉系幹細胞に対する成長因子および分化因子(CDMP1、CDMP2)およびケモカイン(SDF1−α、IL−8)の走化活性の試験
間葉系幹細胞および前駆細胞に対する、軟骨由来形態形成タンパク質−1(CDNP1または成長因子および分化因子−5、GDF5)および軟骨由来形態形成タンパク質−2(SDNP2または成長因子および分化因子−6、GDF6)などの成長因子および分化因子の走化効果は、既に記載されている[前記特許文献6:独国特許出願公開第19957388号明細書]。間葉系幹細胞および前駆細胞を動員するためのストローマ由来因子−1α(SDF1−α)またはインターロイキン−8(IL8)などのケモカインの走化効果または使用も記載されている[独国特許出願公開第10333901号明細書]。
【0046】
走化活性を、いわゆる96ウェル走化性プレート(ケモ Tx(Chemo Tx)システム、ニューロプローブ(Neuroprobe)、米国)において試験する。試験の原理は、溶液中、所定の量および濃度での、試験すべき物質のウェルへの移動に基づく。その際に、メンブレン底面が走化性溶液を含有する溶液で湿るよう、ウェルを有孔(この場合の孔のサイズは8μm)メンブレンで覆う。
【0047】
試験すべき物質を含有していない細胞懸濁液の所定の量を、ウェルから離れたメンブレンの上面に置く。数時間後、試験すべき物質の濃度勾配が生じ、それは下側のウェルからメンブレンを通して始まるものである。試験すべき物質が走化活性であるなら、細胞懸濁液の細胞は、メンブレンの孔を通って、メンブレンの底面、そして下側のウェルへと遊走する。遊走した細胞を染色し、それらの数を顕微鏡を用いて決定する。
【0048】
対照の目的で、下側のウェルに試験すべき物質の溶媒を入れ、メンブレンで覆い、次に、細胞懸濁液でコートする。メンブレン底面(表面:25mm)上および下側のウェル中の細胞を顕微鏡でカウントすることにより、刺激なしで走化性物質により自然に遊走した細胞を決定する。走化性物質により動員された細胞カウントを決定するために、自然に遊走した細胞数を引く。
【0049】
上述の成長因子および分化因子およびケモカインの試験の開始に先立ち、骨髄由来ヒト間葉系幹細胞をダイエット培地(DME培地+1%のペニシリン/ストレプトマイシン+0.5%のウシ血清アルブミン(BSA))と24時間接触させた。成長因子および分化因子およびケモカインをダイエット培地に異なる量で入れ、それぞれ、250nM、500nM、750nMおよび1000nMの因子の所定の溶液を得た。メンブレン底面が溶液で湿るよう、36μlのそれぞれの溶液を96ウェル走化性プレートの下側のウェルにトリプリケートで入れ、メンブレンで覆った。ダイエット培地を対照として用いた。
【0050】
30,000個のヒト間葉系幹細胞を含む40μlのダイエット培地をメンブレンの上面に置いた。増殖キャビネット中で、37℃、5% COにて20時間培養後、メンブレンを取り出し、氷冷エタノール/アセトン(1:1 v/v)中に3分間置き、細胞を固定した。メンブレン上面を綿棒で完全にきれいにして、付着した細胞を取り除いた。メンブレン底面上の細胞をヘマカラー(Hemacolor)、溶液(メルク(Merck)、ダルムシュタット(Darmstadt))で染色した。下側のウェル中では細胞を全く検出できなかった。
【0051】
メンブレンの底面上に並んだ細胞を、顕微鏡下でそれらをカウントすることによりカウントした。対照セット(走化因子なし)において遊走した細胞を引いた後、異なる濃度のCDMP1、CDMP2、SDF1−αおよびIL8により動員された幹細胞数を決定した。標準偏差を伴った細胞カウントの平均値を、図1においてそれぞれの因子について示す。CDMP1は、最大、25mm当たり156個のMSC(750nM CDMP1)の遊走を誘導することができた。CDMP2は、最大、25mm当たり38個のMSC(500nM CDMP2)を、SDF1−αは、最大、25mm当たり79個のMSC(750nM SDF1−α)を、そしてIL8は、最大、25mm当たり814個のMSC(500nM IL8)を動員した。
【0052】
C インビトロでのヒト間葉系幹細胞におけるヒト血清の走化活性の試験
驚くべきことに、Bにおいて記載した試験方法によるヒト血清の試験は、ヒト血清が、成長因子および分化因子およびケモカインと比べて、インビトロでヒト間葉系幹細胞および前駆細胞に対して有意により強い走化効果を有することを示した。異なる処方(ダイエット培地中またはヒアルロン酸中)のヒト血清により動員されたヒト間葉系幹細胞および前駆細胞の細胞カウントの平均を、対応する標準偏差と一緒に図2に示す。処方に依存して、最小2,135個(PGA−HA lyo.+HS)および最大10,332個(5% HS−HA−培地)のヒト間葉系幹細胞および前駆細胞がヒト血清により動員された。走化因子としてダイエット培地中にヒト血清を含まないヒアルロン酸における試験は、平均24個(HA培地)および平均48個(PGA−HA lyo.+NaCl)のヒト間葉系幹細胞および前駆細胞が動員されたことを示した。
【0053】
以下の異なる処方のヒト血清を上記試験方法において用い、ヒト間葉系幹細胞および前駆細胞を動員した。全血試料(n=5)から抗凝固剤を用いることなく自然の凝固に基づいてヒト血清を得、等量で混合し、それを用いて異なる血清処方を生成した。試験セットの「5% HS培地」および「10% HS培地」を生成するために、ダイエット培地をヒト血清と混ぜて、5%および10%の溶液を得た。「HA培地」試験セットは、ダイエット培地と、平均分子量1,200kDaを有する、発酵により得られたヒアルロン酸(オステニル(Ostenil(登録商標))、TRB ケメディカ AG(TRB Chemedica AG))とを等量含む。「1% HS−HA培地」、「5% HS−HA培地」および「20% HS−HA培地」の試験セットは、ヒト血清が添加された「HA培地」を含有し、1%、5%および10%の強度の溶液となる。
【0054】
「PGA−10% HS−HA,lyo.」の試験セットを得るために、発酵により得られた270μlのヒアルロン酸(オステニル(Ostenil(登録商標))、TRB ケメディカ AG(TRB Chemedica AG))を、30μlのヒト血清と混合し、20mm×15mm×1.1mmの寸法を有する、ポリグルコール酸(PGA)を含むフリース(PGA−ソフト フェルト(PGA−Soft Felt(登録商標))、アルファ・リサーチ・スイス GmbH(Alpha Research Switzerland GmbH))に適用した。ヒアルロン酸−血清混合物に浸したフリースを−20℃で1時間凍結し、次に、凍結乾燥機にて16時間凍結乾燥した。それをもどすために、凍結乾燥したフリースを1mlの生理食塩水溶液に10分間置き、2,000rpmで10分間の遠心分離により約80〜100μlのヒアルロン酸−血清溶液を得た。溶液を等量のダイエット培地で希釈することにより、処方「PGA−10% HS−HA,lyo.」を生成し、直接、走化活性の試験に用いた。
【0055】
「PGA−HA,lyo.+HS」の試験セットを作るために、発酵により得られた300μlのヒアルロン酸(オステニル(Ostenil(登録商標))、TRB ケメディカ(TRB Chemedica)AG)を、20mm×15mm×1.1mmの寸法を有する、ポリグリコール酸(PGA)を含むフリース(PGA−ソフト フェルト(PGA−Soft Felt(登録商標))、アルファ・リサーチ・スイス GmbH(Alpha Research Switzerland GmbH))に適用した。ヒアルロン酸に浸したフリースを−20℃にて1時間凍結し、次に、凍結乾燥機にて16時間凍結乾燥した。それをもどすために、凍結乾燥したフリースを1mlの血清に10分間置き、2,000rpmで10分間の遠心分離により約80〜100μlのヒアルロン酸−血清溶液を得た。溶液を等量のダイエット培地で希釈することにより、処方「PGA−HA,lyo.+HS」を生成し、直接、走化活性の試験に用いた。
【0056】
「PGA−HA,lyo.+NaCl」の試験セットを作るために、発酵により得られた300μlのヒアルロン酸(オステニル(Ostenil(登録商標))、TRB ケメディカ(TRB Chemedica)AG)を、20mm×15mm×1.1mmの寸法を有する、ポリグリコール酸(PGA)を含むフリース(PGA−ソフト フェルト(PGA−Soft Felt(登録商標))、アルファ・リサーチ・スイス GmbH(Alpha Research Switzerland GmbH))に適用した。ヒアルロン酸に浸したフリースを−20℃にて1時間凍結し、次に、凍結乾燥機にて16時間凍結乾燥した。それをもどすために、凍結乾燥したフリースを1mlの生理食塩水溶液に10分間置き、2,000rpmで10分間の遠心分離により約80〜100μlのヒアルロン酸−溶液を得た。溶液を等量のダイエット培地で希釈することにより、処方「PGA−HA,lyo.+NaCl」を生成し、直接、走化活性の試験に用いた。
【0057】
実施態様2の例
アルファ・リサーチ・スイス GmbH(Alpha Research Switzerland GmbH)により(登録商標)PDA−ソフト フェルト(PDA−Soft Felt(登録商標))で市販されているポリグリコール酸フリースを、20mm×15mm×1.1mmの寸法に切断した。この材料に、実施例1記載の10% 血清含有ヒアルロン酸混合物を染み込ませ、次に、乾燥させた。乾燥をまず−20℃で、次に、凍結乾燥機にて16時間行った。1〜2mlの生理食塩水溶液に10分間浸すことにより、フリースをもどした。
【0058】
別の試験セットにおいて、フリースに、生理食塩水溶液に溶解した10mg/mlの純ヒアルロン酸を染み込ませた。この方法で調製し、材料を上記の通り乾燥させた。それを1〜2mlの血清に10分間浸すことにより、それをもどした。両方のフリースを直接、移植に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】インビトロでのヒト間葉系幹細胞に対するCDMP1、CDMP2、SDF1−αおよびIL8の走化効果を示す。
【図2】インビトロでのヒト間葉系幹細胞に対する血液のヒト血清の走化効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)生物学的かつ医薬的に許容される材料で作られた、結合力のある開放多孔性構造形成マトリックスおよび(ii)血清を含む、無細胞移植片。
【請求項2】
マトリックス材料が吸収性または非吸収性である、請求項1に記載の無細胞移植片。
【請求項3】
マトリックスが、織布あるいは不織布(特に、フリースおよびフェルト構造物)、メンブレン、スポンジ、詰め物、開放気泡フォーム、ウール、ヒモ、規則的に配列された繊維束およびランダムな繊維束、多孔質セラミック材料、海綿質およびゲル、ならびにこれらの組合せから選択される構造を有する、請求項1または2に記載の無細胞移植片。
【請求項4】
マトリックスが、コラーゲン、ヒアルロン酸、キトサン、キチン、多糖、セルロースおよびそれらの誘導体などの天然および合成ポリマー、タンパク質、ポリペプチド、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ(グリコリド、乳酸塩)、カプロラクタム、および金属の酸化物、炭化物、窒化物および炭窒化物などのセラミック材料、特に、シリコン酸化物、酸化チタンおよび酸化カルシウム;金属の、ハロゲン化物、特にはフッ化物、水酸化物、リン酸塩、硫酸塩などの鉱物、リン酸カルシウム、アパタイト、ヒドロキシルアパタイト;チタン、アルミニウム、金、銀、ステンレス鋼などの金属およびそれらの混合物からなる群より選択される材料である、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の無細胞移植片。
【請求項5】
マトリックスの片側に適用されるか、および/または少なくとも部分的にそれを貫通するゲルをさらに含有する、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の無細胞移植片。
【請求項6】
ゲルが天然または合成ヒドロゲルである、請求項5に記載の無細胞移植片。
【請求項7】
ゲルがマトリックスより低い剛性のものである、請求項5または6に記載の無細胞移植片。
【請求項8】
ゲルが、多糖、ポリペプチド、ヒアルロン酸、フィブリン、コラーゲン、アルギン酸塩、アガロースおよびキトサン、ならびにそれらの混合物から選択され、好ましくは、ヒアルロン酸である、請求項5〜7のうちのいずれか一項に記載の無細胞移植片。
【請求項9】
血清が、自系、同種または異種性であり、好ましくは少なくとも1種類の要素を添加すること、および/または少なくとも1種類の血清成分を除去することにより任意に修飾される、請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の無細胞移植片。
【請求項10】
成長因子、分化因子、ホルモン、ケモカイン、サイトカイン、細胞接着分子、走化因子、酵素、酵素インヒビター、補酵素、鉱物、脂肪、脂質、糖類、および抗生物質、鎮痛剤、炎症阻害剤および免疫抑制剤などの医薬物質、および緩衝物質、安定剤、特に、低温安定剤、およびビタミン、好ましくは、ホルモン、成長因子および分化因子からなる群から選択される1種類以上の要素をさらに含有する、請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載の無細胞移植片。
【請求項11】
ホルモン、成長因子および分化因子が、インスリン、PDGF、IGF、GMCSF、GDF5、GDF6、FGF、BMP2、BMP4、BMP7、IL8、SDF1−α、EGFまたはそれらの組合せである、請求項10記載の無細胞移植片。
【請求項12】
マトリックスおよびゲルが提供される場合にはゲルとが血清と接触されることによる、請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載の無細胞移植片の製造方法。
【請求項13】
接触が、滴下、軟化、含浸または浸漬により達成される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ゲルが、まずマトリックスに取り込まれ、および/またはそれに適用され、次に、血清と接触される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
ゲルが提供される場合にはゲルとマトリックスとの組合せ、ならびに他の任意の構成物質が接触前または後に乾燥される、請求項12〜14のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
移植片が乾燥状態から元に戻される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
組織を再生するための、請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載の無細胞移植片の使用。
【請求項18】
間葉組織、特に、軟骨および/または骨を再生するための、請求項17に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−541905(P2008−541905A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514034(P2008−514034)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006281
【国際公開番号】WO2007/003324
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(506022740)トランスティッシュテクノロジーズ ゲーエムベーハー (2)
【氏名又は名称原語表記】TransTissue Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Tucholskystrasse 2 10117 Berlin Germany
【Fターム(参考)】