説明

無線アクセスネットワークシステム及び運用パラメータ設定方法

【課題】無線アクセスネットワークシステム及び運用パラメータ設定方法に関し、無線基地局装置で運用パラメータのデータ破壊や変更が発生した場合でも、遠隔の保守・運用センタから運用パラメータの再設定を可能にする。
【解決手段】無線基地局装置7−1は、自装置に割り当てられた基地局識別子と、ネットワーク7−2とのインタフェース部に予め割り当てられたMACアドレスとを対応付けて保守・運用を行うOMCサーバ7−3へ通知する。OMCサーバ7−3は、無線基地局装置7−1から通知される基地局識別子とMACアドレスと該基地局識別子の無線基地局装置に対する運用パラメータファイル名とを、運用パラメータ管理テーブルの各フィールドに対応付けて登録する。MACアドレスを元に運用パラメータ管理テーブルを検索し、該MACアドレスに対応した運用パラメータを無線基地局装置7−1に転送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線アクセスネットワークシステム及び運用パラメータ設定方法に関する。本発明は、例えば、LTE(Long-Term Evolution:3.9G)システムの無線アクセスネットワークを構成するeNB(evolved Node B)等の無線基地局装置の運用パラメータ設定に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
図7に無線アクセスネットワークシステムの接続構成例の概略を示す。無線アクセスネットワークシステムは、IPネットワーク7−2を介して接続された無線基地局装置(eNB)7−1と保守・運用を行うOMCサーバ7−3と有する。無線基地局装置(eNB)7−1は、DNS(Domain Name System)サーバ7−4により、OMCサーバ7−3のFQDN(Fully Qualified Domain Name)形式アドレスに対するIPアドレスを取得する。また、無線基地局装置(eNB)7−1は、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバ7−5により、自装置に割り当てられるIPアドレスを取得する。
【0003】
無線基地局装置を新たに設置する場合は、その無線基地局装置をIPネットワーク7−2内に組み込み、サービスを行わせるための立ち上げ作業(コミッショニング)を行う。コミッショニング作業は、通常、作業者が実際に設置される無線基地局装置に赴き、当該無線基地局装置にローカル端末を接続して、運用パラメータ等のデータを当該無線基地局装置に設定することにより行う。このとき設定されるデータの一つに基地局識別子がある。基地局識別子は、ネットワーク内で各無線基地局装置を一意に識別するための識別子である。
【0004】
基地局識別子は、無線基地局装置の識別に使用され、無線基地局装置の管理運用上の重要なデータである。しかし、この基地局識別子も無線基地局装置における運用パラメータの一部であり、他の運用パラメータと同様、無線基地局装置のソフトウェアにより書き換え可能な不揮発記憶領域(例えばハードディスクやフラッシュメモリ等)に収容される。
【0005】
図8に無線基地局装置の内部構成例の概略を示す。無線基地局装置(eNB)は、ローカル保守ポート8−1、対OMCインタフェース部8−2、CPU8−3、ソフトウェアによる書き込みアクセスの有る第1の不揮発記憶領域8−4、ソフトウェアによる書き込みアクセスの無い第2の不揮発記憶領域8−5、信号処理部8−6を備える。なお、図8において、運用パラメータの設定に係る構成例のみを示し、ベースバンド処理部やCPRI(Common Public Radio Interface)のインタフェース部等は、図示を省略している。
【0006】
ローカル保守ポート8−1は、コミッショニング用のローカル端末8−7と接続され、該ローカル保守ポート8−1を介して、立ち上げ作業や保守作業用のデータが、ローカル端末8−7とCPU8−3との間で送受される。
【0007】
対OMCインタフェース部8−2は、IPネットワーク等のネットワークを介してOMCサーバと接続され、該対OMCインタフェース部8−2を介してOMCサーバからの遠隔操作による保守・運用のデータが、CPU8−3との間で送受される。対OMCインタフェース部8−2には、MACアドレスが設定されている。
【0008】
CPU8−3は、無線基地局装置(eNB)内の各機能部の制御及びデータ処理を実行する。ソフトウェアによる書き込みアクセスの有る第1の不揮発記憶領域8−4は、運用パラメータ及びオンラインソフトウェアの格納領域であり、運用パラメータとしては、当該無線基地局装置(eNB)を識別するための基地局識別子(eNB−ID)及び他のパラメータを収容する。
【0009】
ソフトウェアによる書き込みアクセスの無い第2の不揮発記憶領域8−5は、ブートローダ、OMCサーバのアドレス等が格納される。このOMCサーバのアドレスは、例えば、omc.abc.netのようなFQDN(Fully Qualified Domain Name)形式のアドレスである。
【0010】
対OMCインタフェース部8−2に設定されたMACアドレスや、第2の不揮発記憶領域8−5に格納されたブートローダやOMCサーバのアドレス等は、ソフトウェアによる書き込みアクセスが無いため、ソフトウェアの暴走等による内容破壊は発生しない。
【0011】
移動体通信システムにおいて、アクセスポイントを識別するための識別子(ID)とアクセスポイントとの接続情報とを対応付けたリストを保持し、接続不具合のあるアクセスポイントを把握する技術等は、例えば下記の特許文献1等に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−164882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
無線基地局装置において、ソフトウェアにより書き換え可能な第1の不揮発記憶領域8−4の収容データは、ソフトウェア障害により破壊される場合がある。該第1の不揮発記憶領域8−4に収容された運用パラメータのデータ破壊が発生すると、無線基地局装置として通信サービスの提供はできなくなる。
【0014】
そのため、無線基地局装置内の運用パラメータが破壊すると、従来は、保守者が当該無線基地局装置へ赴き、ローカル端末8−7を用いて、再度、当該無線基地局装置に運用パラメータを設定し、破壊された運用パラメータを復旧させる作業を行っていた。但し、OMCサーバから当該無線基地局装置の基地局識別子(eNB−ID)を取得することができれば、それを基に、OMCサーバから他の運用パラメータをダウンロードすることが可能である。
【0015】
しかし、運用パラメータの破壊状況によっては、基地局識別子(eNB−ID)そのものが破壊・紛失する場合がある。このような場合には、保守者が無線基地局装置に赴き、基地局識別子(eNB−ID)を設定して復旧する作業を行うため、保守・運用コストの増大に繋がっていた。また、復旧手順に人手が係わるため、手順誤りなどによる誤設定が発生する可能性もあった。
【0016】
本発明は、無線基地局装置で運用パラメータのデータ破壊や変更が発生した場合でも、遠隔の保守・運用を行うサーバから運用パラメータを再設定することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決する一つの形態としての無線アクセスネットワークシステムは、保守・運用を行うサーバとネットワークを介して接続される無線基地局装置を含む無線アクセスネットワークシステムにおいて、前記無線基地局装置は、自装置に割り当てられた基地局識別子と、前記ネットワークとのインタフェース部に予め割り当てられたアドレスとを対応付けて前記サーバへ通知する通知手段を備え、前記サーバは、前記通知手段から通知される基地局識別子とアドレスと該基地局識別子の無線基地局装置に対する運用パラメータとを、対応付けて格納する記憶手段と、前記アドレスに基づいて前記記憶手段から取得した該基地局識別子及び運用パラメータを、前記無線基地局装置に転送する転送手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0018】
無線基地局装置で運用パラメータのデータ破壊や変更が発生した場合でも、遠隔の保守・運用を行うサーバから適切な運用パラメータの設定を行うことができる。これにより、保守者が無線基地局装置の設置場所に赴いて、無線基地局装置に運用パラメータを設定する作業がなくなり、無線アクセスネットワークの保守コストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1の基地局識別子/MACアドレス登録シーケンス例を示す図である。
【図2】実施例1の運用パラメータ復旧シーケンス例を示す図である。
【図3】実施例2の無線基地局装置移設時の運用パラメータ更新シーケンス例を示す図である。
【図4】実施例1の運用パラメータ管理テーブルの構成例を示す図である。
【図5】実施例2の運用パラメータ管理テーブルの構成例を示す図である。
【図6】無線基地局装置−OMCサーバ間で送受されるメッセージの構造例を示す図である。
【図7】無線アクセスネットワークシステムの接続構成例を示す図である。
【図8】無線基地局装置の内部構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
無線基地局装置と保守・運用を行うOMCサーバとは、例えばイーサネット(登録商標)で接続され、保守・運用のデータを相互に送受する。従って、無線基地局装置は、自装置の対OMCインタフェース部8−2に設定されたイーサネット(登録商標)用のMACアドレスを有している。MACアドレスは、全イーサネット(登録商標)機器間で一意の識別子である。
【0021】
MACアドレスは、運用パラメータとは異なり、ソフトウェアにより書き換え可能な第1の不揮発記憶領域8−4に収容されるデータではなく、イーサネット(登録商標)インタフェース機能を有するハードウェアに機器製造時に書き込み・保持され、当該ハードウェア障害が発生しない限りは失われることはない。
【0022】
開示の運用パラメータ設定方法では、コミッショニング時に、無線基地局装置が自装置に与えられた基地局識別子と自装置のMACアドレスとを、保守・運用を行うサーバへ通知し、該サーバではその対応を記憶する。該サーバでは、基地局識別子に加えてMACアドレスも運用パラメータを一意に識別する識別子として用い、無線基地局装置から基地局識別子を受領することができない状況であっても、MACアドレスにより、当該無線基地局装置にダウンロードすべき運用パラメータを決定するものである。以下、開示の運用パラメータ設定方法の実施例について説明する。
【0023】
開示の運用パラメータ設定方法は、LTE(Long-Term Evolution:3.9Gシステム)に限らず、3G UMTS(Universal Mobile Telecommunication System)のような無線アクセスノードとそれらの保守運用を行う保守・運用システムとを含む移動体通信システムに適用可能である。しかし、以下の説明では説明の簡明化のため、無線基地局装置として、LTEシステムにおける無線基地局装置を指すeNBという用語を使用するが、LTEシステムにおける無線基地局装置に限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
第1の本実施例の説明において、コミッショニング時の基地局識別子(eNB−ID)及びMACアドレスの登録シーケンスと、その後の基地局識別子(eNB−ID)を含む運用パラメータの修復シーケンスとに分けて説明する。
【0025】
[コミッショニング時の基地局識別子/MACアドレス登録シーケンス]
図1を参照して以下にこの登録シーケンス[1]〜[7]について説明する。なお、各シーケンスの番号[1]〜[7]は、図中のシーケンスの番号と対応している。
【0026】
[1]初期状態では、コミッショニング対象無線基地局装置(eNB)7−1には、基地局識別子(eNB−ID)の割当はなく、また、その他の運用パラメータについても設定されていない。
【0027】
[2]コミッショニング手順の一つとして、ローカル端末8−7から当該無線基地局装置(eNB)7−1に基地局識別子(eNB−ID)としてID_aを設定する。該基地局識別子(eNB−ID)をID_aに設定した後、ローカル端末8−7から当該無線基地局装置(eNB)7−1に対して再開動作を実施させる。
【0028】
[3]無線基地局装置(eNB)7−1は、再開動作を開始し、まず、ネットワーク上のDHCPサーバ7−5にアクセスし、自装置のIPアドレスの割当を受ける。次に、無線基地局装置(eNB)7−1は、ネットワーク上のDNSサーバ7−4に、OMCサーバ7−3のFQDN(Fully Qualified Domain Name)形式アドレスを通知してアドレス解決を行い、OMCサーバ7−3のIPアドレスを取得する。DNSサーバ7−4及びDHCPサーバ7−5の動作は、標準手順に従って行われる。
【0029】
なお、FQDN形式のOMCサーバ7−3アドレスは、ソフトウェアからの書き込みアクセスをすることができない第2の不揮発記憶領域8−5に記憶されるため、MACアドレスと同様、ソフトウェア障害などにより失われることのないデータである。
【0030】
[4]無線基地局装置(eNB)7−1は、自装置のMACアドレス(MAC_a)と、上述のシーケンス[2]で割り当てられた基地局識別子(eNB−ID)(ID_a)とを基に、図6に示すメッセージMACREGREQを組み立て、OMCサーバ7−3へ送信する。
【0031】
メッセージMACREGREQは、自装置に割り当てられた基地局識別子(eNB−ID)とMACアドレスとを、OMCサーバ7−3に登録することを要求するメッセージである。
【0032】
[5]無線基地局装置(eNB)7−1からメッセージMACREGREQを受信したOMCサーバ7−3は、運用パラメータ管理テーブルを、基地局識別子(eNB−ID)(ID_a)をインデックスとして検索し、基地局識別子(eNB−ID)(ID_a)に対応するMACアドレス(MAC_a)を登録する。
【0033】
図4にOMCサーバ7−3における運用パラメータ管理テーブルの登録の具体例を示す。運用パラメータ管理テーブルは、基地局識別子(eNB−ID)とMACアドレス(MAC adrs)と該基地局識別子の無線基地局装置に対する運用パラメータファイル名とを対応付けて登録する各フィールドを有する。
【0034】
運用パラメータ管理テーブルには、最初、図4の(a)に示すように、MACアドレスは登録されていない。しかし、上述のシーケンス[4]により、無線基地局装置(eNB)7−1から、基地局識別子(eNB−ID)とMACアドレスとの対応の通知を受領すると、図4の(b)に示すように、基地局識別子(eNB−ID)(ID_a)に対応させて、MACアドレス(MAC_a)を登録し、該テーブルを更新する。登録が完了した後、図6に示すメッセージMACREQRSPにより応答する。
【0035】
[6]引き続き、OMCサーバ7−3は、運用パラメータ管理テーブルから、基地局識別子(eNB−ID)がID_aの無線基地局装置(eNB)7−1に対応する運用パラメータファイル名File_aを取得する。なお、この無線基地局装置(eNB)7−1は、MACアドレスがMAC_aの無線基地局装置(eNB)でもある。運用パラメータファイル名は、運用パラメータ管理テーブルに、予め各基地局識別子(eNB−ID)対応に設定されている。
【0036】
OMCサーバ7−3は、図4の(c)に示す運用パラメータデータベースから、File_aの運用パラメータを取り出し、無線基地局装置(eNB)7−1に対してftp(file transfer protocol)セッションを確立し、該運用パラメータを無線基地局装置(eNB)7−1へ転送する。
【0037】
[7]無線基地局装置(eNB)7−1は、上述のシーケンス[6]により、OMCサーバ7−3から受領した運用パラメータを自装置の第1の不揮発記憶領域8−4に収容し、自律動作により再開処理を実行する。再開後は、運用パラメータに従って、サービスを開始し運用状態となる。
【0038】
なお、コミッショニング時と通常再開時との区別なく、無線基地局装置(eNB)7−1は、再開手順中でメッセージMACREGREQをOMCサーバ7−3へ送信する。その基地局識別子(eNB−ID)とMACアドレスとの組が既に運用パラメータ管理テーブルに存在する場合、OMCサーバ7−3は、図6に示すメッセージMACREGRSPのOPEフィールドを“REGD(=registered:登録済み)”として応答し、その後の運用パラメータのftp転送処理は行わない。
【0039】
[運用パラメータ修復シーケンス]
図2を参照して以下にこの修復シーケンス[11]〜[17]を説明する。なお、各シーケンスの番号[11]〜[17]は、図中のシーケンスの番号と対応している。
[11]運用中の無線基地局装置(eNB)7−1で、サービス中に運用パラメータのデータ破壊が発生したとする。
【0040】
[12]運用パラメータの破壊を検出した無線基地局装置(eNB)7−1は、自律動作により再開処理を開始する。なお、自律再開処理の前に、サービス中断の影響を最小限に抑えるための措置(例えば他の無線基地局装置(eNB)への追い出し処理等)を実施する構成とすることもできる。
【0041】
[13]無線基地局装置(eNB)7−1は、再開処理開始により、前述のシーケンス[3]と同様に、DHCP、DNS手順を起動し、自装置のIPアドレスを取得し、OMCサーバ7−3のIPアドレスを取得する。
【0042】
[14]無線基地局装置(eNB)7−1は、再開処理の一環で、基地局識別子(eNB−ID)を含む運用パラメータを自装置の第1の不揮発記憶領域8−4から読み出そうとするが、上述のシーケンス[11]によりデータ破壊が発生しているため、読み出しに失敗する。読み出し失敗を検出した無線基地局装置(eNB)7−1は、OMCサーバ7−3に対して、自身のMACアドレス(MAC_a)をパラメータとする図6に示すメッセージSYSPRECVREQを組み立てて送信する。このメッセージSYSPRECVREQは、OMCサーバ7−3に自装置のMACアドレスを通知し、該MACアドレスに対応する基地局識別子(eNB−ID)の通知を要求するメッセージである。
【0043】
[15]メッセージSYSPRECVREQを受信したOMCサーバ7−3は、当該メッセージで通知されるMACアドレス(MAC_a)を用い、MACアドレス(MAC_a)をインデックスとして、図4の(b)の運用パラメータ管理テーブルを検索し、対応する基地局識別子(eNB−ID)(ID_a)を得る。
【0044】
そして、OMCサーバ7−3は、図6に示すメッセージSYSPRECVRSPで無線基地局装置(eNB)7−1へ応答し、基地局識別子(eNB−ID)(ID_a)を通知する。これにより、無線基地局装置(eNB)7−1は、運用パラメータ破壊前に、自装置に割り当てられていた基地局識別子(eNB−ID)(ID_a)を得て、不揮発記憶領域の基地局識別子(eNB−ID)を復旧する。
【0045】
[16]引き続き、OMCサーバ7−3は、図4(b)の運用パラメータ管理テーブルにより、基地局識別子(eNB−ID)がID_a(当然ながら、MACアドレス=MAC_a)の無線基地局装置(eNB)に対応する運用パラメータファイル名File_aを得る。そして、OMCサーバ7−3は、図4(c)に示す運用パラメータデータベースからFile_aのファイルを取り出し、無線基地局装置(eNB)7−1に対してftpセッションを確立し、運用パラメータを転送する。
【0046】
[17]無線基地局装置(eNB)7−1は、上述のシーケンス[16]により、OMCサーバ7−3から受領した運用パラメータを、自装置の第1の不揮発記憶領域8−4に収容し、運用パラメータを復旧し、自律動作により再開処理を実施する。再開後は、運用パラメータに従って、通信サービスを開始し運用状態となる。
【実施例2】
【0047】
第2の実施例として、既に設置されている無線基地局装置(eNB)を、他の無線基地局として移設する実施例について説明する。この実施例では、元々、ID_bの基地局識別子(eNB−ID)が与えられて運用していた無線基地局装置(MACアドレス=MAC_b)を移設し、ID_xの基地局識別子(eNB−ID)として運用する例として説明する。
【0048】
なお、移設対象の無線基地局装置(eNB)7−1は、第1の実施例の[コミッショニング時の基地局識別子/MACアドレス登録シーケンス]により、コミッショニングが完了しているものとする。図3を参照して以下にこの実施例のシーケンス[21]〜[26]を説明する。なお、各シーケンスの番号[21]〜[26]は、図中のシーケンスの番号と対応している。
【0049】
[21]無線基地局装置(eNB)7−1の移設作業を開始する。まず、運用中の無線基地局装置(eNB)7−1を保守手順によりネットワークから切り離し、移設場所へと移動する。移設前の運用パラメータ管理テーブルの状態を図5の(a)に示している。
【0050】
[22]OMCサーバ7−3では、運用パラメータ管理テーブルを次のように更新する。なお、この実施例2では、運用パラメータ管理テーブルに、前述の各フィールドに加え、移設後の無線基地局装置(eNB)に与える新たな基地局識別子を格納するフィールド(New eNB−ID)を有する。
【0051】
OMCサーバ7−3は、まず、移設対象無線基地局装置(eNB)に割り当てられている基地局識別子(eNB−ID)(ID_b)に対応する新たな基地局識別子(eNB−ID)のフィールド(New eNB−ID)に、移設後に割り当てるべき基地局識別子(eNB−ID)(ID−x)を設定する。更に、基地局識別子(eNB−ID)(ID_b)に対応する運用パラメータファイル名を、移設後の基地局識別子(eNB−ID)(ID−x)に対応するFile_xに書き換える(図5の(b)参照)。
【0052】
[23]上述の運用パラメータ管理テーブルの更新が完了した後、移設先で無線基地局装置(eNB)7−1をネットワークへ接続し、再開処理を実施する。無線基地局装置(eNB)7−1は、前述のシーケンス[3]と同様に、DHCP、DNS手順を実行した後、前述のシーケンス[4]と同様に、図6に示すメッセージMACREGREQをOMCサーバ7−3へ送信する。
【0053】
[24]OMCサーバ7−3は、受信したメッセージMACREGRECの自装置MACアドレス(OWN−MAC)(MAC_b)で、図5の(b)の運用パラメータ管理テーブルを検索し、新たな基地局識別子(eNB−ID)のフィールド(New eNB−ID)にID_xが設定されていることから、当該無線基地局装置(eNB)7−1について、基地局識別子(eNB−ID)の更新処理を開始する。そして、図6に示すメッセージMACREGRSPに、基地局識別子(eNB−ID)の更新要求(OPE=UPDREQ)及び新たな基地局識別子(eNB−ID)としてID_xを設定して、無線基地局装置(eNB)7−1に応答する。
【0054】
同時にOMCサーバ7−3は、当該無線基地局装置(eNB)7−1のテーブルレコードについて、基地局識別子(eNB−ID)を新たな基地局識別子(eNB−ID)(ID_x)で更新し、また、新たな基地局識別子(eNB−ID)のフィールド(New eNB−ID)の内容ID_xを消去する(図5の(c)参照)。一方、メッセージMACREGRSPを受信した無線基地局装置(eNB)7−1は、基地局識別子(eNB−ID)の更新要求を認識し、同時に通知された新たな基地局識別子(eNB−ID)(ID_x)を第1の不揮発記憶領域8−4に収容する。
【0055】
[25]引き続き、OMCサーバ7−3は、図5の(c)の運用パラメータ管理テーブルにより、基地局識別子(eNB−ID)(ID_x)(MACアドレス=MAC_b)の無線基地局装置(eNB)7−1に対応する運用パラメータファイル名File_xを得、図5(d)の運用パラメータデータベースからFile_xを得る。そして、OMCサーバ7−3は、無線基地局装置(eNB)7−1に対してftpセッションを確立し、該運用パラメータを転送する。
【0056】
[26]無線基地局装置(eNB)7−1は、上述のシーケンス[25]により、OMCサーバ7−3から受領した運用パラメータを自装置の第1の不揮発記憶領域8−4に収容し、運用パラメータを復旧し、自律動作により再開する。再開後は、運用パラメータに従って、サービスを開始し運用状態となる。
【0057】
以上、第1及び第2の実施例において、無線基地局装置で運用パラメータのデータ破壊や変更が発生した場合でも、遠隔の保守・運用を行うサーバから適切な運用パラメータの設定を行うことができる。これにより、保守者が無線基地局装置の現地に赴いて運用パラメータを設定する作業がなくなり、保守コストを低減することが可能となる。
【0058】
また、コミッショニング時に無線基地局装置の設置場所で該基地局装置に設定する情報は、基地局識別子のみでよく、コミッショニング手順の簡素化による作業コストの低減、及びコミッショニング時の誤操作による運用パラメータの誤設定に起因するサービス中断を低減することができる。
【符号の説明】
【0059】
7−1 無線基地局装置(eNB)
7−2 IPネットワーク
7−3 OMCサーバ
7−4 DNSサーバ
7−5 DHCPサーバ
8−1 ローカル保守ポート
8−2 対OMCインタフェース部
8−3 CPU
8−4 第1の不揮発記憶領域
8−5 第2の不揮発記憶領域
8−6 信号処理部
8−7 ローカル端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保守・運用を行うサーバとネットワークを介して接続される無線基地局装置を含む無線アクセスネットワークシステムにおいて、
前記無線基地局装置は、自装置に割り当てられた基地局識別子と、前記ネットワークとのインタフェース部に予め割り当てられたアドレスとを対応付けて前記サーバへ通知する通知手段を備え、
前記サーバは、前記通知手段から通知される基地局識別子とアドレスと該基地局識別子の無線基地局装置に対する運用パラメータとを、対応付けて格納する記憶手段と、
前記アドレスに基づいて前記記憶手段から取得した該基地局識別子及び運用パラメータを、前記無線基地局装置に転送する転送手段と、
を備えたことを特徴とする無線アクセスネットワークシステム。
【請求項2】
前記無線基地局装置は、前記基地局識別子を含む運用パラメータが失われたことを検出したとき、前記アドレスを前記サーバに通知し、該アドレスに対応した基地局識別子の通知を要求する手段を備え、
前記転送手段は、前記無線基地局装置から通知されたアドレスに基づいて前記記憶手段から取得した該基地局識別子及び運用パラメータを、前記無線基地局装置に転送することを特徴とする請求項1に記載の無線アクセスネットワークシステム。
【請求項3】
前記記憶手段は、移設後の無線基地局に与える第2の基地局識別子と共に該第2の基地局識別子の無線基地局装置に対する運用パラメータを格納し、
前記転送手段は、前記無線基地局装置から移設前の第1の基地局識別子及びアドレスが通知されたとき、該第1の基地局識別子又はアドレスに基づいて、前記第2の基地局識別子が格納されていたことを検出したとき、該第1の基地局識別子を該第2の基地局識別子により更新し、前記第2の基地局識別子、及び該第2の基地局識別子の無線基地局装置に対する運用パラメータを、前記無線基地局装置に転送することを特徴とする請求項1に記載の無線アクセスネットワークシステム。
【請求項4】
保守・運用を行うサーバとネットワークを介して接続される無線基地局装置の運用パラメータ設定方法において、
前記無線基地局装置は、自装置に割り当てられた基地局識別子と、前記ネットワークとのインタフェース部に予め割り当てられたアドレスとを対応付けて前記サーバへ通知するステップと、
前記サーバは、前記第1のステップで通知される基地局識別子とアドレスと該基地局識別子の無線基地局装置に対する運用パラメータとを対応付けて記憶部に格納するステップと、
前記アドレスに基づいて前記記憶部から取得した該基地局識別子及び運用パラメータを、前記無線基地局装置に転送するステップと、
を含むこと特徴とする運用パラメータ設定方法。
【請求項5】
前記無線基地局装置は、前記基地局識別子を含む運用パラメータが失われたことを検出したとき、前記アドレスを前記サーバに通知し、該アドレスに対応した基地局識別子の通知を要求するステップと、
前記サーバは、前記無線基地局装置から通知されたアドレスに基づいて前記記憶部から取得した該基地局識別子及び運用パラメータを、前記無線基地局装置に転送するステップと、
を含むことを特徴とする請求項4に記載の運用パラメータ設定方法。
【請求項6】
前記サーバは、移設後の無線基地局に与える第2の基地局識別子と共に該第2の基地局識別子の無線基地局装置に対する運用パラメータを前記記憶部に格納するステップと、
前記無線基地局装置から移設前の第1の基地局識別子及びアドレスが通知されたとき、該第1の基地局識別子又はアドレスに基づいて、前記第2の基地局識別子が前記記憶部に格納されていたことを検出したとき、該第1の基地局識別子を該第2の基地局識別子により更新し、前記第2の基地局識別子、及び該第2の基地局識別子の無線基地局装置に対する運用パラメータを、前記無線基地局装置に転送するステップと、
を含むことを特徴とする請求項4に記載の運用パラメータ設定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−199540(P2011−199540A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63442(P2010−63442)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】