説明

無線システム

【課題】送信雑音による干渉問題を解決しながら優先無線送信機の通信性を確保することができるようにした無線システムを提供する。
【解決手段】スケルチ機能管理部では、一定周期の毎にスケルチ機能を開いて優先無線受信機3の受信入力があるかどうかを判定する優先機用受信時間6と、この優先機用受信時間6の後にスケルチ機能を閉じるスケルチマスク時間7とによってスケルチ機能を制御するように構成し、データ伝送を行う場合、データ伝送用無線送信機5は、優先機用受信時間6内における優先機受信入力9の有無を監視し、この優先機受信入力9がないと判定したときに、優先機用受信時間6を経過した後、スケルチ機能を閉じてマスク状態としたスケルチマスク時間7をデータ伝送時間8として使用してデータ伝送を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優先順位を付けた優先無線受信機と他のデータ伝送用無線機とを備えた無線システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無線システムでは、大半のシステムにおいて周波数が固定化されているため、無線干渉設計を行い、アンテナ位置、固定高周波フィルタ等の設置により干渉の問題を解決してきた。しかし、今後はソフトウェア無線機に代表されるように、マルチバンド化、多チャンネル化、ブロードバンド化が進み、またモバイル接続等により無線アプリケーションが増えることにより、有限である無線周波数環境が圧迫されるため干渉設計が重要となってくる。例えば、航空無線システムにおいては、同じ帯域内を使用する2つの送受信無線機がある場合、航空機上ではアンテナ間のアイソレーションを十分にとることができないため、アンテナ共用器等で無線機間の周波数アイソレーションを確保しないと、電波干渉により通信不全の状態になってしまう。
【0003】
またアンテナ設置条件が制約されるためにアンテナ間のアイソレーションを確保するのが難しい移動通信システムの屋外用中継増幅装置において、上り回線と下り回線の各アンテナ間のアイソレーション不足等が原因で起こる回り込みに対して、基地局からの受信電力の通信品質を監視して、その劣化状態を検出したとき、回り込みと判定して、上り回線増幅手段および下り回線増幅手段の増幅利得で決まるそれぞれの装置利得を減少させることで回り込みを抑える機能を付加した構成が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−172361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の航空無線システムでは、航空機に航空管制用無線受信機と、この航空管制用無線受信機と同じ周波数帯において気象情報等のデータ伝送を行うデータ伝送用無線機とを搭載したいとの要望がある一方で、航空管制用無線受信機はAM変調の音声データとなっているためスケルチ機能があり、データ伝送用無線機の送信雑音がスケルチレベルより大きい場合はスケルチ機能が開くと、データ伝送用無線機のノイズがパイロット受話音声に入り込んでしまう。従って、航空無線システムのように複数の無線機のうち、優先順位が一番高い優先無線受信機である航空管制用無線受信機がある場合、その優先性を保持しながらデータ送信を行うことができない。しかも、広帯域無線機で周波数チャネルが多くある無線機では固定のフィルタを使用することはできず、また、航空機搭載の無線機のような移動無線機ではアンテナの距離を調整することもできない。
【0006】
本発明の目的は、送信雑音による干渉問題を解決しながら優先無線受信機の通信性を確保することができるようにした無線システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するため、受信レベルに応じて開閉するスケルチ機能を有する優先無線受信機と、データ伝送を行うデータ伝送用無線送信機とを備えた無線システムにおいて、前記スケルチ機能を開いて前記優先無線受信機の受信入力があるかどうかを判定する優先機用受信時間と、この優先機用受信時間後に前記スケルチ機能を閉じるスケルチマスク時間とによって前記スケルチ機能を制御するスケルチ機能管理部を設け、前記データ伝送用無線送信機は、前記スケルチ機能を開いて前記優先無線受信機の受信入力があるかどうかを判定する優先機用受信時間にデータ伝送を行わないようにすると共に、前記優先機用受信時間に前記優先無線受信機の受信入力がないときに前記スケルチ機能を閉じたスケルチマスク時間をデータ伝送時間として使用可能に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明による無線システムによれば、データ伝送を行うデータ伝送用無線送信機と、近接した他の周波数で受信する優先無線受信機とを使用しても、スケルチ機能を開いて受信入力があるかどうかを判定する優先機用受信時間にはデータ伝送を行なわないようにしているため、データ無線送信機の送信雑音が優先無線受信機に入り込む送信雑音干渉を防止しながら、優先無線受信機を優先して使用することができる。従って、優先無線受信機の優先通信性を損なうことなく、データ伝送用無線送信機を優先無線受信機に近い周波数で使用してデータ送信を行うことができるので、周波数帯の有効活用を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態による無線システムを示す概略構成図である。
【図2】図1に示した無線システムにおけるスケルチ機能の管理を示すタイムチャートである。
【図3】図1に示した無線システムにおける制御装置の要部を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態による無線システムとしての航空無線システムを示す概略構成図である。
航空機1には、管制塔2との間で無線通信を行う航空管制用無線受信機などの優先無線受信機3と、地上の移動局4などに対して同じ周波数帯を使用して気象情報等のデータ伝送を行うデータ伝送用無線送信機5とが備えられている。このような複数の無線機を使用する航空無線システムでは、無線通信の優先順位が存在し、航空管制用無線受信機が第一の優先順位の優先無線受信機3となっている。この優先無線受信機3は、従来構成と同様にAM変調の音声プレストーク方式通信で受信レベルによって開閉するスケルチ機能を有している。
【0012】
図2は、上述した優先無線受信機3のスケルチ機能におけるデ−タ送信時の管理を示すタイムチャートである。
航空管制用無線受信機などの優先無線受信機3は、例えば100msecを一定周期としてスケルチ機能を管理し、そのうちの前半の20msecを優先機用受信時間6とし、後半の残りの80msecをスケルチマスク時間7としている。データ伝送用無線送信機5は、20msecの優先機用受信時間6に優先機受信入力9がなかった場合は、優先無線受信機3のスケルチ機能を閉じてマスク状態としたスケルチマスク時間7をデータ伝送時間8として使用可能にし、一方、スケルチ機能を開いた20msecの優先機用受信時間6に優先無線受信機3の優先機受信入力9を検出した場合は、航空管制側を優先して優先機受信入力9を行い、データ伝送用無線送信機5の送信は行なわないようにしている。
【0013】
通常、優先無線受信機3では、音声の頭切れが起きないように100msec程度の優先機用受信時間6を設定して運用されているのに対し、ここでは、この優先機用受信時間6を20msec程度としているが、音声通信上の問題は生じない。尚、100msec程度の周期や、20msec程度の優先機用受信時間6および80msec程度のスケルチマスク時間7は、必ずしもこれらに限定するものではなく適宜設定することができる。
【0014】
図3は、優先無線受信機3などを制御している制御装置を示すブロック構成図である。
制御装置は、受信部10やその他の通常の構成11以外に、上述した優先機用受信時間6とその後に続くスケルチマスク時間7の管理とスケルチ機能12の制御を行うスケルチ機能管理部13と、優先機用受信時間6の中で優先無線受信機3の優先機受信入力9があるかどうかを判定する判定部14と、この判定部14で優先機受信入力9があると判定した場合にそれを受信する優先受信部15と、判定部14によって優先機用受信時間6の中で優先無線受信機3の優先機受信入力9がないことを検出し、かつ、伝送データ検出部16がデータ伝送用無線送信機5でのデータ伝送があることを検出した場合、スケルチ機能管理部13によりスケルチ機能12を制御しながらスケルチ機能を閉じてマスク状態としたスケルチマスク時間7をデータ伝送時間8として使用してデータ伝送用無線送信機5のデータ伝送を行うデータ伝送部17と、これらの各部を制御する制御部18などを備えて構成している。
【0015】
伝送データ検出部16が伝送するデータがあることを検出し、また優先機用受信時間6内における優先機受信入力9の有無を監視している判定部14が優先機受信入力9がないと判定したとき、スケルチ機能管理部13は、優先機用受信時間6を経過した後、優先無線受信機3のスケルチ機能12を閉じてマスク状態とし、データ伝送部17は、このスケルチマスク時間7をデータ伝送時間8として使用してデータ伝送用無線送信機5によるデータ伝送を行うようにする。このとき、スケルチ機能が開いている優先機用受信時間6でデータ伝送用無線送信機5は、データ伝送を行わない。
【0016】
一方、データ伝送用無線送信機5によるデータ伝送がある場合でも、判定部14で優先機用受信時間6に優先機受信入力9を検出したときは、判定部14は伝送データ検出部16へ伝送開始信号を送らず、またスケルチ機能管理部13へマスク状態とする信号を送らない。従って、スケルチ機能管理部13は、上述した場合のように優先機用受信時間6を経過した後、優先無線受信機3のスケルチ機能12を強制的に閉じてマスク状態とする処理を行わない。しかし、判定部14は優先受信部15を通して優先機受信入力9の受信処理などを行う。この受信処理を完了した後、判定部14は優先機用受信時間6内における同様の優先機受信入力9の検出処理を再度行い、優先機受信入力9がないことを検出したとき、先ず、スケルチ機能管理部13へ信号を送り、これを受けたスケルチ機能管理部13は優先機用受信時間6を経過した後、優先無線受信機3のスケルチ機能を閉じてマスク状態とする。その後、判定部14は伝送データ検出部16に伝送開始信号を送信し、これを受けた伝送データ検出部16はデータ伝送部17を通してスケルチマスク時間7をデータ伝送時間8として使用してデータ伝送用無線送信機5によるデータ伝送を行う。
【0017】
このような航空無線システムによれば、データ伝送用無線送信機5は、20msecの優先機用受信時間6で優先無線受信機3のスケルチ機能を開いて優先機受信入力9があった場合は、航空管制側を優先してデータ伝送用無線送信機5の送信は行なわないようにし、一方、優先無線受信機3のスケルチ機能を閉じてマスク状態としている場合は、80msecのスケルチマスク時間7をデータ伝送時間8として使用可能にしているため、周波数fTXbでデータ送信を行うデータ伝送用無線送信機5と、近接した他の周波数fRXaで受信する優先無線受信機3とを使用しても、従来のように両者の周波数fTXb,fRXaを離れた周波数帯域としたり、固定のフィルタを設けたりすることなく、データ伝送用無線送信機5の送信雑音が優先無線受信機3に入り込むような送信雑音干渉を防止しながら、優先無線受信機3を優先して使用することができる。
【0018】
従って、航空管制無線の通信優先性を損ったり航空保安上の問題を生じさせるすることもない。また、データ伝送用無線送信機5は優先無線受信機3に近い周波数fRXaを使用してデータ送信を行うことができるので、周波数帯の有効活用を図ることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明による無線システムは、航空管制無線システムに限らず、受信レベルに応じて開閉するスケルチ機能を有する優先無線受信機と、データ伝送を行うデータ伝送用無線送信機とを備えた他の無線システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 航空機
2 管制塔
3 優先無線受信機
4 移動局
5 データ伝送用無線送信機
6 優先機用受信時間
7 スケルチマスク時間
8 データ伝送時間
9 優先機受信入力
10 受信部
11 通常構成
12 スケルチ機能
13 スケルチ機能管理部
14 判定部
15 優先受信部
16 伝送データ検出部
17 データ伝送部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信レベルに応じて開閉するスケルチ機能を有する優先無線受信機と、データ伝送を行うデータ伝送用無線送信機とを備えた無線システムにおいて、前記スケルチ機能を開いて前記優先無線受信機の受信入力があるかどうかを判定する優先機用受信時間と、この優先機用受信時間後に前記スケルチ機能を閉じるスケルチマスク時間とによって前記スケルチ機能を制御するスケルチ機能管理部を設け、前記データ伝送用無線送信機は、前記スケルチ機能を開いて前記優先無線受信機の受信入力があるかどうかを判定する優先機用受信時間にデータ伝送を行わないようにすると共に、前記優先機用受信時間に前記優先無線受信機の受信入力がないときに前記スケルチ機能を閉じたスケルチマスク時間をデータ伝送時間として使用可能に構成したことを特徴とする無線システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−34274(P2012−34274A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173604(P2010−173604)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】