説明

無線センサモジュール、それによる測定データの処理方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】電源部の出力電圧が動作下限電圧を下回る事態を防止する。
【解決手段】無線センサモジュール2は、加速度センサ11、加速度センサ11による測定データを無線送信し、受信する無線通信部13、MCU12および蓄電デバイス15を備える。MCU12は、測定データを処理する一連の動作の間に、休止期間を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサを備えた無線センサモジュール、それによる測定データの処理方法、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センサによる測定データを、無線信号としてサーバに送信する無線センサモジュールが知られている。このような無線センサモジュールを備えたシステムでは、例えば、複数の測定対象装置毎に無線センサモジュールが配置され、サーバは、各無線センサモジュールから無線送信されてくる測定データにより、各測定対象装置の状態を監視している。
【0003】
上記の無線センサモジュールは、通常、測定対象装置の測定を長期間に渡って行うようになっている。また、小型軽量化されている結果、無線センサモジュールが備える電源部は容量が小さいものとなっている。このため、無線センサモジュールとしては、電源部の容量が小さいなかで、長期間安定に動作できるものが求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、測定対象装置の状態をセンサにて検出し、その検出結果について所定の変化の有無を判定し、所定の変化があった場合に、受信部に対して無線による送信出力を行う構成が開示されている。このような構成では、測定対象装置の状態に所定の変化があった場合にのみ無線センサモジュールから送信出力を行うので、無線センサモジュールの電源部の電力消費を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−340157号公報(2006年12月14日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、無線センサモジュールは、測定データをサーバに無線送信する場合に、サーバと無線センサモジュールとの通信用のネットワークへの参加、センサからの測定データの取得、無線センサモジュールの無線通信部への測定データの提供、無線通信部からサーバへの測定データの無線送信、およびサーバからの受信確認情報の受信といった一連の動作を連続動作にて行っている。
【0007】
一方、無線センサモジュールの電源部の容量が小さい場合、例えば、電源部としてキャパシタや容量の小さい固体電池が用いられているような場合、電源部の出力電圧は、負荷が加わった場合のIRドロップやキャパシタの内部抵抗による電圧降下の影響を大きく受けて低下し易い。この場合、負荷が大きいと、電源部の出力電圧が無線通信部の動作下限電圧を下回り、無線通信部が動作できなくなるといった不具合が生じる。このような問題は、上記の特許文献1の構成であっても回避することができない。
【0008】
なお、従来では、電源部にキャパシタを使用している場合、キャパシタを複数個並列接続することにより、内部抵抗の合成抵抗を下げて、電源部の電圧降下を抑制するようにしている。例えば、キャパシタ1個当たりの直流抵抗から、放電による電圧降下において許容される抵抗を算出し、電圧降下が大きい場合には、キャパシタの並列数を増やして合成抵抗を低下させ、電圧降下量を減らしている。しかしながら、キャパシタの搭載個数が多
くなると、コストの増大や漏れ電流の増加、さらには無線センサモジュールのサイズの大型化などの問題を招来することになる。
【0009】
したがって、本発明は、測定データを送信する際の一連の動作を行った場合であっても、無線センサモジュールの電源部の出力電圧が無線センサモジュールの動作下限電圧を下回る事態を防止することができる無線センサモジュール、それによる測定データの処理方法、プログラムおよび記録媒体の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の無線センサモジュールは、測定対象についての測定動作を行い、測定データを生成するセンサと、前記センサによる測定データを外部装置に無線送信し、かつ外部装置からの無線信号を受信する無線通信部と、前記センサおよび前記無線通信部を制御する制御部と、電源としての蓄電装置とを備えている無線センサモジュールにおいて、前記制御部は、前記センサによる前記測定データの生成、および前記無線通信部による前記測定データの無線送信を含む、前記測定データを処理する一連の動作の間に、前記一連の動作を連続して行わないように休止期間を設けることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の無線センサモジュールによる測定データの処理方法は、測定対象についての測定動作を行い、測定データを生成するセンサと、前記センサによる測定データを外部装置に無線送信し、かつ外部装置からの無線信号を受信する無線通信部と、電源としての蓄電装置とを備えている無線センサモジュールによる測定データの処理方法において、前記センサによる前記測定データの生成、および前記無線通信部による前記測定データの無線送信を含む、前記測定データを処理する一連の動作の間に、前記一連の動作を連続して行わないように休止期間を設けることを特徴としている。
【0012】
また、本発明のプログラムは、測定対象についての測定動作を行い、測定データを生成するセンサと、前記センサによる測定データを外部装置に無線送信し、かつ外部装置からの無線信号を受信する無線通信部と、電源としての蓄電装置とを備えている無線センサモジュールの制御をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記センサによる前記測定データの生成、および前記無線通信部による前記測定データの無線送信を含む、前記測定データを処理する一連の動作の間に、前記一連の動作を連続して行わないように休止期間を設ける制御を前記コンピュータに実行させることを特徴としている。
【0013】
上記の構成によれば、測定データを処理する一連の動作のうち、いずれかの動作が行われると、蓄電装置から電力が供給され、蓄電装置の出力電圧が降下する。この出力電圧の降下には、いわゆるIRドロップによる電圧降下、および電力の消費による電圧降下が含まれる。なお、IRドロップによる電圧降下は、オーミック(ohmic)なIR降下、または抵抗成分に起因する電圧降下と表現することもできる。また、電力の消費による電圧降下は、ファラディック(faradaic)な電圧降下、または静電容量成分に起因する電圧降下と表現することもできる。
【0014】
ここで、測定データを処理する一連の動作を連続して行った場合、蓄電装置の出力電圧は、降下が大きくなり、無線センサモジュールに含まれるいずれかの手段の動作下限電圧(無線センサモジュールの動作下限電圧)を下回る恐れがある。この場合には、測定データを処理する一連の動作の途中に、無線センサモジュールが停止してしまうことになる。あるいは、蓄電装置としては、出力電圧が無線センサモジュールの動作下限電圧を下回る事態を防止するために、容量の大きいものを備える必要があり、無線センサモジュールのコストアップおよび大型化を招来する。
【0015】
これに対し、本発明の構成では、測定データを処理する一連の動作の間に、一連の動作を連続して行わないように休止期間が設定されるので、降下した蓄電装置の出力電圧を休止期間に回復させることができる。これにより、電源として比較的容量の小さい蓄電装置を備えている場合であっても、蓄電装置の出力電圧が無線センサモジュールの動作下限電圧を下回って無線センサモジュールが停止する事態を防止することができる。
【0016】
また、蓄電装置がキャパシタからなるものである場合、蓄電装置の出力電圧における、キャパシタの内部抵抗による電圧降下分は、休止期間によって回復することができる。したがって、無線センサモジュールの蓄電装置としてのキャパシタの搭載個数は、キャパシタの内部抵抗の低下を考慮して多くする必要がなく、減らすことができる。この結果、無線センサモジュールを小型化することができる。
【0017】
さらに、キャパシタは、通常、長期間使用した場合に、電圧印加による抵抗上昇が起こり、負荷を外した後の復帰電圧が低下する。この結果、キャパシタは寿命が短くなる。しかしながら、測定データを処理する一連の動作の期間中に休止期間を設けることにより、上記復帰電圧の低下を緩やかにすることができる。この結果、キャパシタの長寿命化を実現することができる。
【0018】
上記の無線センサモジュールにおいて、前記休止期間は、前記測定データを処理する一連の動作に含まれる、前記蓄電装置に対する負荷が相対的に大きい動作の開始前または終了後に設けられる構成としてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、蓄電装置に対する負荷が相対的に大きい動作の後に休止期間を設けることは、負荷が大きい動作によって大きく低下した蓄電装置の出力電圧を休止期間によって回復できるので、有効である。
【0020】
また、蓄電装置に対する負荷が相対的に大きい動作の前に休止期間が設けることは、負荷が大きい動作によって大きく低下することが予想される蓄電装置の出力電圧を予め上昇させておくことができるので、有効である。
【0021】
上記の無線センサモジュールにおいて、前記休止期間は、前記休止期間の前に行われた、前記測定データを処理する一連の動作に含まれる動作によって低下した蓄電装置の出力電圧を上昇させることができる長さ、かつ前記休止期間に待機状態となる前記制御部の前記休止期間での電力消費により、前記蓄電装置の出力電圧が、前記測定データを処理する一連の動作に含まれる動作を行う手段の動作下限電圧を下回らない長さに設定されている構成としてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、休止期間は、休止期間の前に行われた、測定データを処理する一連の動作に含まれる動作によって低下した蓄電装置の出力電圧を上昇させることができる長さに設定されている。さらに、休止期間は、休止期間に待機状態となる制御部の休止期間での電力消費により、蓄電装置の出力電圧が、測定データを処理する一連の動作に含まれる動作を行う手段の動作下限電圧を下回らない長さに設定されている。
【0023】
したがって、測定データを処理する一連の動作に含まれる動作によって低下した蓄電装置の出力電圧を、休止期間により適切に回復させることができる。また、休止期間が長過ぎて、休止期間に待機状態となる制御部の電力消費により、蓄電装置の出力電圧が無線センサモジュールの動作下限電圧を下回る事態を防止することができる。
【0024】
上記の無線センサモジュールにおいて、前記蓄電装置は、キャパシタ、固体電池あるいはリチウムイオン二次電池のいずれか一つからなる構成としてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、蓄電装置は、キャパシタ、固体電池あるいはリチウムイオン二次電池のいずれか一つからなる。特に、キャパシタからなる構成とすれば、蓄電容量は相対的に小さいものの、小型かつ安価な構成とすることができる。
【0026】
上記の無線センサモジュールは、振動によって発電し、発電した電力を前記蓄電装置に供給する振動発電モジュールを備えている構成としてもよい。
【0027】
上記の構成によれば、振動発電モジュールにより発生した電力を蓄電装置に蓄積して使用する、すなわち限られたエネルギーを効率よく使用するいわゆるエネルギーハーベスティングの構成とすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の構成によれば、測定データを処理する一連の動作の間に、一連の動作を連続して行わないように休止期間が設定されるので、降下した蓄電装置の出力電圧を休止期間に回復させることができる。これにより、電源として比較的容量の小さい蓄電装置を備えている場合であっても、蓄電装置の出力電圧が無線センサモジュールの動作下限電圧を下回って無線センサモジュールが停止する事態を防止することができる。
【0029】
また、蓄電装置がキャパシタからなるものである場合、蓄電装置の出力電圧における、キャパシタの内部抵抗による電圧降下分は、休止期間によって回復することができる。したがって、無線センサモジュールの蓄電装置としてのキャパシタの搭載個数は、キャパシタの内部抵抗の低下を考慮して多くする必要がなく、減らすことができる。この結果、無線センサモジュールを小型化することができる。
【0030】
さらに、キャパシタは、通常、長期間使用した場合に、電圧印加による抵抗上昇が起こり、負荷を外した後の復帰電圧が低下する。この結果、キャパシタは寿命が短くなる。しかしながら、測定データを処理する一連の動作の期間中に休止期間を設けることにより、上記復帰電圧の低下を緩やかにすることができる。この結果、キャパシタの長寿命化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態の無線センサモジュールを備えた監視システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した無線センサモジュールの測定対象物に対する配置状態を示す説明図である。
【図3】図1に示した監視システムの動作を示すフローチャートである。
【図4】図1に示した加速度センサにて検出された測定データをサーバに送信する場合の無線センサモジュールにおける一連の動作の各動作における消費電流と動作時間とを示す説明図である。
【図5】図1に示した無線センサモジュールでの一連の動作における休止期間の有無による蓄電デバイスの出力電圧の変化示すグラフである。
【図6】図1に示した蓄電デバイスの放電による電圧低下、および放電終了後の電圧上昇の様子を示すグラフである。
【図7】図6に示した蓄電デバイスの放電による電圧低下の様子を拡大して示すグラフである。
【図8】図1に示した加速度センサにて検出された測定データをサーバに送信する場合の無線センサモジュールにおける一連の動作を示すフローチャートである。
【図9】図1に示した無線センサモジュールとは異なる構成の無線センサモジュールを備えた監視システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施の形態を図面に基づいて以下に説明する。
図1は、本実施の形態の無線センサモジュール2を備えた監視システム1の構成を示すブロック図である。なお、図1において実線は信号線を示し、破線は電力線を示している。
【0033】
図1に示すように、監視システム1は、無線センサモジュール2およびサーバ(外部装置)3を備えている。無線センサモジュール2は、測定対象物の状態をセンサにて測定し、測定結果を示す測定データをサーバ3に無線送信するものである。サーバ3は、無線センサモジュール2から受信した測定データに基づいて、測定対象物の状態を監視するものである。
【0034】
本実施の形態において、無線センサモジュール2は、図2に示すように、測定対象物としてのモータ(測定対象)4、詳細にはモータ4を囲む筐体5に取り付けられている。図2は測定対象物に対する無線センサモジュール2の配置状態を示す説明図である。すなわち、無線センサモジュール2は、モータ4の振動を測定し、その測定データをサーバ3に送信する。サーバ3は、無線センサモジュール2から受信した測定データに基づいて、モータ4の状態を判断する。例えば、サーバ3は、測定データが示すモータ4の振動周波数における変化の有無を判定し、モータ4の劣化の有無、すなわちモータ4の交換の要否を判定する。
【0035】
無線センサモジュール2は、図1に示すように、加速度センサ11、制御部としてのマイクロコントローラユニット(以下、単にMCU(Micro Controller Unit)と称する)12、無線通信部13、振動発電モジュール14、蓄電デバイス(蓄電装置)15およびリセットIC16を備えている。
【0036】
加速度センサ11は、モータ4の振動を検出し、測定データを出力する。MCU12は、無線センサモジュール2の各部の動作を制御する。また、加速度センサ11から測定データを取得し、取得した測定データを無線通信部13によりサーバ3へ送信させる。
【0037】
振動発電モジュール14は、モータ4の振動により発電を行い、発電した電力を蓄電デバイス15に供給する。蓄電デバイス15は、振動発電モジュール14から供給された電力を蓄積する。また、リセットIC16の制御に従って、蓄積した電力を放電する。蓄電デバイス15の電力は、加速度センサ11、MCU12、無線通信部13およびリセットIC16に適宜供給される。
【0038】
本実施の形態において、蓄電デバイス15は、キャパシタ、例えば直並列接続された複数個のキャパシタによって構成されている。また、キャパシタは、例えば電気二重層コンデンサを使用している。なお、蓄電デバイス15は、キャパシタの他、固体電池あるいはリチウムイオン二次電池であってもよい。
【0039】
リセットIC16は、蓄電デバイス15の電圧を監視しており、蓄電デバイス15の電圧が閾値以上となったときに、蓄電デバイス15からMCU12への電力供給、すなわち蓄電デバイス15からの放電を行わせる。
【0040】
サーバ3は、無線通信部21と表示部としての例えばLEDパネル22とを備えている。無線通信部21は、無線センサモジュール2の無線通信部13と無線により通信し、無線通信部13から送信されてきた測定データを受信する。LEDパネル22は、各種情報を適宜表示する。
【0041】
上記の構成において、監視システム1の動作について説明する。図3は、図1に示した監視システム1の動作を示すフローチャートである。また、監視システム1では、次の順序にて動作を行う。
(A1)無線センサモジュール2において、リセットIC16は、蓄電デバイス15の電圧が閾値以上になったことを検知すると(S11)、蓄電デバイス15からMCU12への電力供給を開始させる(S12)。
(A2)蓄電デバイス15からの電力供給を受けて、MCU12が起動する(S12)。(A3)MCU12は、加速度センサ11対して、加速度を所定回数(例えば128回)測定して、MCU12に出力することを要求する(S13)。
(A4)MCU12は、加速度センサ11から測定データを受信し、所定回数分の測定データを受信したことを確認する(S14)。
(A5)MCU12は、加速度センサ11から受信した所定回数分の測定データを、サーバ3に対して無線通信部13から無線送信させる(S15)。
(A6)サーバ3は、無線通信部21にて所定回数分の測定データを受信すると、その旨を示すACK信号を無線センサモジュール2に送信する(S16)。その後、ACK信号は無線通信部13にて受信される。
(A7)リセットIC16は、蓄電デバイス15の電圧が閾値未満になったことを検知すると、蓄電デバイス15からMCU12への電力供給を停止させる(S17)。これにより、MCU12は動作を終了する(S18)。
【0042】
なお、上記(A2)〜(A6)の動作、すなわちS12〜S16の動作はMCU12が起動している状態にて行われ、その間、蓄電デバイス15の電力はMCU12によって消費されている。したがって、MCU12の稼動時間が長くなると、蓄電デバイス15の電圧は低下して閾値未満となる。
【0043】
また、MCU12、すなわち無線センサモジュール2の稼動の終了は、蓄電デバイス15の電圧が閾値未満になった場合に限らず、サーバ3からのACK信号の受信後に、すなわち加速度センサ11にて検出された測定データをサーバ3に送信する場合の一連の動作の終了後に行ってもよい。
【0044】
次に、加速度センサ11にて検出された測定データをサーバ3に送信する場合の無線センサモジュール2の動作について詳細に説明する。
【0045】
無線センサモジュール2では、加速度センサ11にて検出された測定データをサーバ3に送信する際に、次の(B1)〜(B4)の一連の動作を行う。これは、無線センサモジュール2において、加速度センサ11にて検出された測定データを処理する場合の一連の動作であり、この一連の動作はMCU12の制御により行われる。なお、動作の順序は、(B1)→(B2)→(B3)→(B4)の順序である。
(B1)ネットワーク参加
無線センサモジュール2とサーバ3とが通信するたの無線ネットワークに、参加する動作。
(B2)加速度センサ通信
加速度センサ11により所定回数の測定を行う動作、加速度センサ11からの所定回数分の測定データを取得する動作。
(B3)データ無線送信
加速度センサ11から取得した所定回数分の測定データを無線通信部13に供給する動作、および無線通信部13からサーバ3に対して、所定回数分の測定データを無線送信する動作。
(B4)ACK受信
サーバ3から所定回数分の測定データを受信した旨の確認信号を受信する動作。
【0046】
上記(B1)〜(B4)の各動作における消費電流および動作時間は、図4に示すとおりである。図4は、加速度センサ11にて検出された測定データをサーバ3に送信する場合の無線センサモジュール2における一連の動作の各動作における消費電流と動作時間とを示す説明図である。なお、無線センサモジュール2は、例えばオムロン(株)製のGazellモジュール(製品番号:RFS24N1D−10)を使用しており、電流(消費電流)はカタログ値、時間(動作時間)は理論値である。
【0047】
ここで、無線センサモジュール2では、上記(B1)〜(B4)の一連の動作を連続して行うのではなく、(B1)〜(B4)の各動作の間に、休止期間(インターバル)を設定している。すなわち、本実施の形態において、各休止期間は、0.1(秒)としている。なお、この休止期間においても少なくともMCU12に対しては、待機用の電力が蓄電デバイス15から供給されている。
【0048】
次に、加速度センサ11にて検出された測定データをサーバ3に送信する場合の無線センサモジュール2における一連の動作において、休止期間を設けることによる蓄電デバイス15の出力電圧の復帰動作について説明する。図5は、無線センサモジュール2での上記一連の動作における休止期間の有無による蓄電デバイス15の出力電圧の変化示すグラフである。
【0049】
図5において、実線は、上記一連の動作の各動作の間に休止期間を設けた場合の蓄電デバイス15の出力電圧の変化を示している。破線は、上記一連の動作を連続して行った場合の蓄電デバイス15の出力電圧の変化を示している。
【0050】
図5の例では、上記一連の動作を連続して行った場合、蓄電デバイス15の出力電圧は、当初3.6 Vであったものが、2.28Vまで低下している。この場合、無線センサモジュール2に含まれるいずれかの装置(手段)の動作下限電圧(以下、単に無線センサモジュール2の動作下限電圧と称する)が2.28Vよりも大きければ(例えば2.5Vであれば)、無線センサモジュール2は、上記一連の動作の途中で動作を停止してしまうことになる。
【0051】
これに対し、動作(B1)と動作(B2)との間、動作(B2)と動作(B3)との間、および動作(B3)と動作(B4)との間に休止期間を設けた場合、蓄電デバイス15の出力電圧は、各休止期間において復帰し、各動作終了後の最低電圧から上昇する。したがって、一連の動作の期間中において、蓄電デバイス15は無線センサモジュール2の動作下限電圧(例えば2.5V)を下回らず、無線センサモジュール2が一例の動作の期間中に停止してしまう事態を防止することができる。
【0052】
次に、上記の一連の動作の期間中に休止期間を設けることにより、蓄電デバイス15の出力電圧を復帰させることができる原理について説明する。図6は、蓄電デバイス15の放電による電圧低下、および放電終了後の電圧上昇の様子を示すグラフである。図7は、図6に示した蓄電デバイス15の放電による電圧低下の様子を拡大して示すグラフである。
【0053】
蓄電デバイス15の放電開始直後には、図6に示すように、いわゆるIRドロップによる電圧降下が発生する。なお、このIRドロップは、図7に示すように、放電の瞬間に電圧降下する成分(電子電導成分)と時間に対して遅れて電圧降下する成分(イオン電導成分)とを有する。
【0054】
一方、放電を停止すると、蓄電デバイス15の出力電圧は、IRドロップにて低下した
分が徐々に回復する。したがって、上記の一連の動作の期間中に休止期間を設けることにより、蓄電デバイス15の出力電圧を回復させることができる。
【0055】
次に、加速度センサ11にて検出された測定データをサーバ3に送信する場合の無線センサモジュール2における一連の動作について、フローチャートにより説明する。図8は、加速度センサ11にて検出された測定データをサーバ3に送信する場合の無線センサモジュール2における一連の動作を示すフローチャートである。なお、図8の動作は、MCU12の制御によって行われ、図3に示した監視システム1の動作におけるS13〜S16の動作に対応する。
【0056】
加速度センサ11にて検出された測定データをサーバ3に送信する場合には、無線通信部13により、無線センサモジュール2とサーバ3とが通信するたの無線ネットワークに参加する動作が行われる(S31)。S31の動作が終了すると、0.1(秒)の休止期間(1)となる(S32)。
【0057】
次に、休止期間(1)の終了後、加速度センサ11により所定回数(例えば128回)の測定を行う動作、加速度センサ11からの所定回数分の測定データをMCU12が取得する動作が行われる(S33)。S33の動作が終了すると、0.1(秒)の休止期間(2)となる(S34)。
【0058】
次に、休止期間(2)の終了後、加速度センサ11から取得した所定回数分の測定データをMCU12が無線通信部13に供給する動作、および無線通信部13からサーバ3に対して、所定回数分の測定データを無線送信する動作が行われる(S35)。S35の動作が終了すると、0.1(秒)の休止期間(3)となる(S36)。
【0059】
次に、休止期間(3)の終了後、サーバ3から所定回数分の測定データを受信した旨の確認信号を受信する動作が行われる。これにより、上記一連の動作が終了する。
【0060】
以上のように、本実施の形態の無線センサモジュール2では、加速度センサ11にて検出された測定データを処理する場合の一連の動作において、一連の動作の期間中に、休止期間を設けている。これにより、蓄電デバイス15の出力電圧が無線センサモジュール2の動作下限電圧を下回って無線センサモジュール2が停止する事態を防止することができる。この結果、電源部としての蓄電デバイス15の容量が小さいものであっても、無線センサモジュール2は、長期間安定に動作することができる。
【0061】
また、蓄電デバイス15がキャパシタからなるものである場合、蓄電デバイス15の出力電圧における、キャパシタの内部抵抗による電圧降下分は、一連の動作の期間中に休止期間を設けることによって回復することができる。したがって、無線センサモジュール2における蓄電デバイス15としてのキャパシタの搭載個数は、キャパシタの内部抵抗の低下を考慮して多くする必要がなく、減らすことができる。この結果、無線センサモジュール2のサイズを小型化することができる。
【0062】
さらに、キャパシタは、通常、長期間使用した場合に、電圧印加による抵抗上昇が起こり、負荷を外した後の復帰電圧が低下する。この結果、キャパシタは寿命が短くなる。しかしながら、一連の動作の期間中に休止期間を設けることにより、上記復帰電圧の低下を緩やかにすることができる。この結果、キャパシタの長寿命化を実現することができる。
【0063】
なお、休止期間は、蓄電デバイス15の電圧を復帰させることができる点から、休止時間を設けることに支障がなければ、本実施の形態において示したように、無線センサモジュール2の一連の動作の各動作間に設けることが好ましい。
【0064】
また、休止期間を、特に、消費電流(消費電力)が相対的に大きい動作の終了後に設けることは、その動作により大きく低下した蓄電デバイス15の出力電圧を復帰させることができるので、有効である。なお、消費電流が大きい動作は、消費電流(放電電流)×放電時間=電荷(負荷)から、蓄電デバイス15に対する負荷が大きい動作である。
【0065】
さらに、休止期間を、相対的に消費電流(消費電力)が大きい動作の開始前に設けることは、その動作によって大きく低下することが予想される蓄電デバイス15の出力電圧を予め高めておくことができるので、有効である。
【0066】
また、一連の動作の各動作間に休止期間を設けることは必須ではなく、例えば第1の動作後に連続して第2の動作を行った場合であっても、蓄電デバイス15の出力電圧が無線センサモジュール2の動作下限電圧を下回らない場合には、第1の動作後に連続して第2の動作を行う構成であってもよい。すなわち、複数の動作からなる一連の動作において、少なくとも、順次行われる二つの動作の間に、休止期間が設けられていればよい。
【0067】
また、休止期間の長さは、蓄電デバイス15の休止期間による電圧復帰特性、蓄電デバイス15の容量、および休止期間における待機中のMCU12の消費電力を考慮して、適宜設定すればよい。具体的には、休止期間の長さは、負荷が加わることによって低下した蓄電デバイス15の出力電圧を上昇させることができる時間であればよい。一方、休止期間は、長すぎると、待機中のMCU12の電力消費により、蓄電デバイス15の出力電圧が無線センサモジュール2の動作下限電圧を下回る事態を生じることがある。したがって、休止期間は、待機中のMCU12の電力消費により、蓄電デバイス15の出力電圧が無線センサモジュール2の動作下限電圧を下回らない長さにする必要がある。
【0068】
また、以上の実施の形態において、無線センサモジュール2は、図1に示したように、発電モジュール、例えば振動発電モジュール14を備えた構成としている。しかしながら、無線センサモジュール2は、これに限定されることなく、例えば図9に示すように、発電モジュール(例えば振動発電モジュール14)を備えていない構成であってもよい。図9は、図1に示した無線センサモジュール2とは異なる構成の無線センサモジュール2を備えた監視システム1を示すブロック図である。
【0069】
本発明は、振動発電により発生した電力を蓄電デバイス15に蓄積して使用するような、限られたエネルギーを効率よく使う、いわゆるエネルギーハーベスティングにおいて有効である。
【0070】
すなわち、エネルギーハーベスティング以外の一般的な家電やモバイル機器では、無線送信などの消費電力の大きい動作をした場合、同様に、キャパシタからなる蓄電デバイスの電圧降下が大きくなる。しかしながら、このような装置では、商用電源や、リチウムイオン二次電池などの容量の大きい電源から潤沢なエネルギーを受けて、瞬時に電圧が復帰する。したがって、このような装置に対しては、一連の動作の期間中に休止期間を設けて蓄電デバイス15の電圧を復帰させることの有効性は相対的に低くなる。これに対し、限られたエネルギーを効率よく使うエネルギーハーベスティングでは、この技術の有効性が相対的に高くなる。
【0071】
なお、環境エネルギー源としては、振動エネルギー以外にも、熱、電磁波、あるいは光(太陽光)などがある。
【0072】
また、センサによる測定対象としては、振動の他、温度、湿度、照度、フロー、圧力、地温、パーティクル等の物理系、またはCO、pH、EC、土壌水分等の化学系がある

【0073】
最後に、無線センサモジュール2のMCU(制御部)12は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0074】
すなわち、MCU12は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるMCU12の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記MCU12に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0075】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0076】
また、MCU12を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0077】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、限られたエネルギーを有効に使用するエネルギーハーベスティング技術を電源に使用した装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 監視システム
2 無線センサモジュール
3 サーバ(外部装置)
4 モータ(測定対象)
5 筐体
11 加速度センサ
12 マイクロコントローラユニット(制御部)
13 無線通信部
14 振動発電モジュール
15 蓄電デバイス(蓄電装置)
16 リセットIC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象についての測定動作を行い、測定データを生成するセンサと、
前記センサによる測定データを外部装置に無線送信し、かつ外部装置からの無線信号を受信する無線通信部と、
前記センサおよび前記無線通信部を制御する制御部と、
電源としての蓄電装置とを備えている無線センサモジュールにおいて、
前記制御部は、前記センサによる前記測定データの生成、および前記無線通信部による前記測定データの無線送信を含む、前記測定データを処理する一連の動作の間に、前記一連の動作を連続して行わないように休止期間を設けることを特徴とする無線センサモジュール。
【請求項2】
前記休止期間は、前記測定データを処理する一連の動作に含まれる、前記蓄電装置に対する負荷が相対的に大きい動作の開始前または終了後に設けられることを特徴とする請求項1に記載の無線センサモジュール。
【請求項3】
前記休止期間は、前記休止期間の前に行われた、前記測定データを処理する一連の動作に含まれる動作によって低下した蓄電装置の出力電圧を上昇させることができる長さ、かつ前記休止期間に待機状態となる前記制御部の前記休止期間での電力消費により、前記蓄電装置の出力電圧が、前記測定データを処理する一連の動作に含まれる動作を行う手段の動作下限電圧を下回らない長さに設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の無線センサモジュール。
【請求項4】
前記蓄電装置は、キャパシタ、固体電池あるいはリチウムイオン二次電池のいずれか一つからなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の無線センサモジュール。
【請求項5】
振動によって発電し、発電した電力を前記蓄電装置に供給する振動発電モジュールを備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の無線センサモジュール。
【請求項6】
測定対象についての測定動作を行い、測定データを生成するセンサと、
前記センサによる測定データを外部装置に無線送信し、かつ外部装置からの無線信号を受信する無線通信部と、
電源としての蓄電装置とを備えている無線センサモジュールによる測定データの処理方法において、
前記センサによる前記測定データの生成、および前記無線通信部による前記測定データの無線送信を含む、前記測定データを処理する一連の動作の間に、前記一連の動作を連続して行わないように休止期間を設けることを特徴とする無線センサモジュールによる測定データの処理方法。
【請求項7】
測定対象についての測定動作を行い、測定データを生成するセンサと、前記センサによる測定データを外部装置に無線送信し、かつ外部装置からの無線信号を受信する無線通信部と、電源としての蓄電装置とを備えている無線センサモジュールの制御をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記センサによる前記測定データの生成、および前記無線通信部による前記測定データの無線送信を含む、前記測定データを処理する一連の動作の間に、前記一連の動作を連続して行わないように休止期間を設ける制御を前記コンピュータに実行させるプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−42223(P2013−42223A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176147(P2011−176147)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】