説明

無線センサ装置

【課題】複数のアンテナ間で互いの無線波が干渉することなくアンテナ間のアイソレーションを確保することができ、装置の小型化が図れると共に、発振器に要求されるピークパワーを半減できること。
【解決手段】無線センサ装置10は、アンテナA11,A12に信号発生回路11で生成されるパルス信号を給電して無線波を放射する場合、先のパルス信号がアンテナA11に給電されると同時にミキサ回路15aへ供給された後、当該アンテナA11及びミキサ回路15aに与えた先のパルス信号のパルス幅と重複しない近接タイミングで次のパルス信号がアンテナA12に給電されると同時にミキサ回路15bへ供給されるように、信号発生回路11の動作タイミング及び当該信号発生回路11からアンテナA11,A12までの経路を制御するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線波を用いて対象物の反射波から対象物の動き等を検出する無線センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の無線センサ装置として、発振器からの出力信号をアンテナに給電して無線波を放射し、この無線波が対象物で反射した反射波を受信し、受信した反射波から対象物の方位や動きを検出するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、発振器から出力されるパルス信号を用いて、対象物の動き等を検出する無線センサ装置を示す図である。図4に示す無線センサ装置1には、2つの送受信アンテナA1及びA2が設けられている。RF発振回路2から同一のタイミングで2つのパルス信号を出力し、送受信アンテナA1及びA2に給電すると共にミキサ回路3a及び3bにローカル信号として送られる。パルス信号が供給された送受信アンテナA1及びA2から無線波が放射され、対象物Oで反射した反射波が送受信アンテナA1及びA2でそれぞれ受信される。受信した反射波は電気的な受信信号としてミキサ回路3a及び3bに入力され、RF発振回路2から入力されたパルス信号の一部と混合される。ミキサ回路3a及び3bから出力された信号は積分差動増幅回路4へ入力されて積分差動増幅され、ローパスフィルタ(LPF)5において低周波成分(DC信号を含む)が取り出される。LPF5を通過した信号は、図示しないA/D変換器でデジタル信号に変換され信号処理回路6に取り込まれる。信号処理回路6では、ローパスフィルタ(LPF)5から出力された低周波成分の信号から、対象物Oの動きの有無が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−245602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図4に示す無線センサ装置1では、RF発振回路2から送受信アンテナA1及びA2に対して同時にパルス信号が供給されるため、各アンテナA1及びA2から同時に放射される無線波が互いの妨害波となって干渉する問題があった。上記無線センサ装置1のように、アンテナ受信感度を向上させるべく2つの送信アンテナA1及びA2から同時に無線波を放射する場合には、アンテナ受信感度及びダイナミックレンジに大きく影響するアンテナ間のアイソレーションを確保する必要がある。しかしながら、妨害波の干渉を解消するためにアンテナ間の距離を離した場合、装置が大型化するため、アンテナ受信感度と装置の小型化とを両立させることが難しい問題がある。
また、上記無線センサ装置1では、RF発振回路2から2つのアンテナA1及びA2に同時にパルス信号を供給するため、ピークパワーの大きいRF発振回路2が要求される。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、複数のアンテナ間で互いの無線波が干渉することなくアンテナ間のアイソレーションを確保することができ、装置の小型化が図れると共に、発振器に要求されるピークパワーを半減できる無線センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無線センサ装置は、第1及び第2のアンテナと、前記第1のアンテナに接続され当該第1のアンテナで受信した第1の受信信号が入力する第1のミキサ回路と、前記第2のアンテナに接続され当該第2のアンテナで受信した第2の受信信号が入力する第2のミキサ回路と、前記第1及び第2のアンテナに給電されると共に前記第1及び第2のミキサ回路へ供給されるパルス信号を生成する信号発生回路と、前記第1のミキサ回路が前記第1の受信信号と前記パルス信号とを混合して出力する信号と、前記第2のミキサ回路が前記第2の受信信号と前記パルス信号とを混合して出力する信号とが入力される積分差動増幅回路と、前記第1及び第2のアンテナに前記パルス信号を給電して無線波を放射する場合、先のパルス信号が前記第1のアンテナに給電されると同時に前記第1のミキサ回路へ供給された後、当該第1のアンテナ及び第1のミキサ回路に与えた前記先のパルス信号のパルス幅と重複しない近接タイミングで次のパルス信号が前記第2のアンテナに給電されると同時に前記第2のミキサ回路へ供給されるように、前記信号発生回路の動作タイミング及び当該信号発生回路から前記第1及び第2のアンテナまでの経路を制御する制御手段と、を具備したことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、先のパルス信号が第1のアンテナに給電されると同時に第1のミキサ回路へ供給された後、当該第1のアンテナ及び第1のミキサ回路に与えた先のパルス信号のパルス幅と重複しない近接タイミングで次のパルス信号が第2のアンテナに給電されると同時に第2のミキサ回路へ供給されるので、第1のアンテナへのパルス信号の供給タイミングと第2の送信アンテナへのパルス信号の供給タイミングとが重ならない。従って、複数のアンテナを間で互いの無線波が干渉することなくアンテナ間のアイソレーションを確保することができると共に、アンテナ間の距離を離す必要もないので無線センサ装置の小型化を図ることができる。また、信号発生回路から第1及び第2のアンテナに異なるタイミングでパルス信号が給電されるので、従来の無線センサ装置と比べて、発振器に要求されるピークパワーを半減できる。
【0009】
上記無線センサ装置において、前記制御手段は、前記パルス信号の生成タイミングを設定するタイミング回路と、前記信号発生回路から出力された前記パルス信号の給電先となるアンテナを前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間で切り替えるスイッチング素子と、を有し、前記タイミング回路に設定された生成タイミングに同期して前記スイッチング素子を制御することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、タイミング回路に設定されたパルス信号の生成タイミングに同期して給電先となる第1又は第2のアンテナが切り替えられるので、各アンテナへのパルス信号の供給タイミングが切り替えられる。そのため、各アンテナからの無線波の放射タイミングが重ならくなり、各アンテナから放射される無線波の干渉を防止することができる。
【0011】
上記無線センサ装置において、前記制御手段は、前記先のパルス信号のパルス幅と重複しない近接タイミングが、前記先のパルス信号の立ち上がりからパルス幅の2倍の時間経過したタイミングであることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、近接タイミングが先のパルス信号の立ち上がりからパルス幅の2倍の時間経過したタイミングであるので、両パルス信号を繰り返し生成すれば、各アンテナから連続的に無線波を放射することができる。従って、連続的に反射される反射波を解析することにより、高速に移動する対象物の動きを検出することができる。
【0013】
上記無線センサ装置において、前記第1及び第2のアンテナは、送信アンテナと受信アンテナを兼用することも可能である。また、前記第1及び第2のアンテナは、前記パルス信号が給電され無線波を放射するアンテナと、対象物から反射した反射波を受信して前記第1又は第2の受信信号を出力するアンテナとが、それぞれ別々に設けられている構成も可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数のアンテナ間で互いの無線波が干渉することなくアンテナ間のアイソレーションを確保することができ、装置の小型化が図れると共に、発振器に要求されるピークパワーを半減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る無線センサ装置の機能ブロック図である。
【図2】本実施の形態に係る無線センサ装置の送受信アンテナで送受信される送信信号及び受信信号の関係を示す図である。
【図3】本実施の形態に係るタイミング回路のパルス信号の生成タイミング制御を説明するための図である。
【図4】従来の無線センサ装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の実施の形態に係る無線センサ装置は、複数の送受信用アンテナを備え、RF発振回路で生成したパルス信号を各アンテナに給電して無線波を放射し、この無線波が対象物に反射した反射波から対象物の動き等を検出するものである。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る無線センサ装置の機能ブロック図である。図1に示すように、無線センサ装置10は、2本の送受信アンテナA11,A12と、送受信アンテナA11,A12に供給するパルス信号を生成するRF発振回路11と、RF発振回路11のパルス信号の生成タイミングを制御する制御手段12と、を備える。本実施の形態に係る無線センサ装置10では、各送受信アンテナA11,A12へ供給するパルス信号のパルス幅(放射タイミング)が重ならないように生成タイミングが制御され、生成タイミングの異なるパルス信号を受けた各送受信アンテナA11,A12が無線波を放射するように構成されている。なお、以下の説明では、送受信アンテナA11に対して供給されるパルス信号を第1のパルス信号とし、送受信アンテナA12に対して供給されるパルス信号を第2のパルス信号として説明するが、説明を簡単にするために特別に区別しない場合は単にパルス信号という。
【0018】
RF発振回路11は、制御手段12によるパルス信号の生成タイミング制御に従って、所定のパルス幅Pwを有する第1及び第2のパルス信号を生成する。生成した各パルス信号は、スイッチング素子14に送られる。ここで、パルス信号は、対象物Oからの反射波(遅延波)と重なり合う幅を持つ信号であれば、例えば、矩形波状や三角波状の信号を適用することが可能である。以下では、矩形波状のパルス信号を例に説明する。
【0019】
制御手段12は、送受信アンテナA11,A12へ給電する第1及び第2のパルス信号のパルス幅が重ならないように、RF発振回路11のパルス信号の生成タイミング及びRF発振回路11から送受信アンテナA11,A12までの経路を制御する。この制御手段12は、タイミング回路13及びスイッチング素子14で構成される。タイミング回路13には、第1のパルス信号の立ち上がりから2パルス幅だけ時間経過した時点で第2のパルス信号の立ち上がりがくるようにパルス信号の生成タイミングが設定されている。なお、第1及び第2のパルス信号のパルス幅が重ならない近接タイミングであれば、第1のパルス信号と第2のパルス信号との間隔を、第1のパルス信号の立ち上がりから2パルス幅だけ時間経過した時点で第2のパルス信号の立ち上がる場合に限定されない。すなわち、このパルス信号の生成タイミングの設定は、第1及び第2のパルス信号のパルス幅が重ならないタイミングであれば、対象物Oの動き等に応じて変えることが可能である。タイミング回路13は、このパルス信号の生成タイミングを指示する制御信号をRF発振回路11に送ると共に、この制御信号に同期した切替信号をスイッチング素子14に送る。スイッチング素子14は、タイミング回路13から受けた切替信号に従って、RF発振回路11から供給されるパルス信号の供給先を、送受信アンテナA11側又はA12側に切り替える。このように、タイミング回路13からの制御信号によりRF発振回路11でパルス信号が生成され、これに同期してスイッチング素子14でパルス信号の供給先が送受信アンテナA11側又はA12側に切り替えられる。これにより、タイミング回路13に設定されたパルス信号の生成タイミングに同期して、パルス信号を放射するアンテナが第1又は第2の送信アンテナA11,A12に切り替えられる。各送信アンテナA11,A12へのパルス信号の供給タイミングが切り替えられることにより、各送信アンテナA11,A12からの無線波の放射タイミングが重ならなくなり、各送信アンテナA11,A12から放射される無線波の干渉を防止することができる。
【0020】
ここで、図2を用いて、送受信アンテナA11(A12)で送受信される送信信号及び受信信号について説明する。図2は、送受信アンテナA11(A12)で送受信される送信信号及び受信信号の関係を示す図である。図2において、縦軸は信号強度を示し、横軸は時刻tを示している。
【0021】
図2(a)に示すように、スイッチング素子14を経由したRF発振回路11からのパルス信号は、送受信アンテナA11(A12)に給電されて無線波(送信信号S1)として放射される。図2(a)では、例えば、DUTY比約1/100のパルス信号が供給された場合の送信信号S1を示している。このとき、ミキサ回路15a(15b)には、送受信アンテナA11(A12)に給電されたパルス信号の一部がローカル信号L1として送られる(図2(b))。ここでは、RF発振回路11から所定のパルス幅tn(例えば、90nS)のローカル信号L1が所定の間隔Tp(例えば、8.8μS)で供給される状態を示している。一方、送受信アンテナA11(A12)で受信した対象物Oからの反射波は、信号検波(包絡線検波)されて受信信号S2としてミキサ回路15a(15b)に送られる。この受信信号S2は、ローカル信号L1から所定時間tsだけ遅延してミキサ回路15a(15b)に入力される。図2(c)は、ミキサ回路15a(15b)に入力されたローカル信号L1及び受信信号S2を示している。
【0022】
次に、図3を用いて、タイミング回路13のパルス信号の生成タイミング制御について説明する。図3は、本実施の形態に係るタイミング回路13のパルス信号の生成タイミング制御を説明するための図である。図3において、縦軸は信号強度を示し、横軸は時刻tを示している。なお、図3では、左CHを送受信アンテナA11(ミキサ回路15a)に供給される第1のパルス信号(ローカル信号LO)、右CHを送受信アンテナA12(ミキサ回路15b)に供給される第2のパルス信号(ローカル信号LO)として説明する。なお、図3において、一点鎖線で示す信号DSは、各送受信アンテナA11及びA12で受信した対象物Oからの反射波(第1及び第2の受信信号)を示している。
【0023】
図3(a)に示すように、タイミング回路13には、時刻t1において第1のパルス信号が立ち上がるように生成タイミングが設定されている。この生成タイミングt1を指示する制御信号がRF発振回路11に送られると、RF発振回路11でパルス幅Pwの第1のパルス信号が生成される。また、タイミング回路13には、この第1のパルス信号の立ち上がり時刻t1から、2パルス幅分の時間経過後の時刻t3において第2のパルス信号が立ち上がるように生成タイミングが設定されている。この生成タイミングt3を指示する制御信号がRF発振回路11に送られると、RF発振回路11でパルス幅Pwの第2のパルス信号が生成される。すなわち、タイミング回路13では、2つの送受信アンテナA11,A12に対するパルス信号の生成開始タイミングの間隔が、少なくとも2パルス幅以上の時間(δT(≧2Pw))空くように設定されている。
【0024】
また、対象物Oが高速移動するような場合には、対象物の動き等に応じてタイミング回路13のパルス信号の生成タイミングを設定することが好ましい。図3(b)では、第1のパルス信号の立ち上がる時刻t1から2パルス幅分の時間経過した時(t3)に第2のパルス信号が立ち上がるように、パルス信号の生成タイミングが設定されている。すなわち、タイミング回路13では、2つの送受信アンテナA11,A12に対するパルス信号の生成開始タイミングの間隔が、2パルス幅分の時間(δT(=2Pw))空くように設定されている。これにより、第1のパルス信号と第2のパルス信号とがより短い間隔で生成されるので、両パルス信号を繰り返し生成して各送受信アンテナA11,A12に供給すれば、各送受信アンテナA11,A12から連続的に無線波を放射することができる。そして、連続的に反射される反射波を解析すれば、高速に移動する対象物Oの動きを検出することができる。
【0025】
本実施の形態に係る無線センサ装置10は、受信側の構成要素として2つのミキサ回路15a,15bと、積分差動増幅回路16と、ローパスフィルタ(LPF)17と、信号処理回路18と、を備える。第1のミキサ回路となるミキサ回路15aには、スイッチング素子14を介して、送受信アンテナA1に供給される第1のパルス信号(図3に示すローカル信号LO)の一部がローカル信号として入力される。また、ミキサ回路15aには、受信側となる送受信アンテナA11から対象物Oからの反射波を受信した第1の受信信号(図3に示す遅延信号DS)が入力される。同様に、第2のミキサ回路となるミキサ回路15bには、スイッチング素子14を介して、送受信アンテナA12から第2のパルス信号(図3に示すローカル信号LO)の一部が入力される。また、ミキサ回路15bには、受信側となる送受信アンテナA12から対象物Oからの反射波を受信した第2の受信信号(図3に示す遅延信号DS)が入力される。このとき、2つのミキサ回路15a,15bでは、対象物Oの動きがあれば、ローカル信号と受信信号との位相差が相異することとなり、互いに異なる低周波信号が出力される。一方、対象物Oの動きがなければ、2つのミキサ回路15a,15bからは同じ信号が出力される。ミキサ回路15a,15bのそれぞれから出力された信号は、積分差動増幅回路16に入力される。
【0026】
積分差動増幅回路16でミキサ回路15a,15bから同一タイミングで入力された各信号が積分差動増幅され、LPF17で低周波成分が取り出される。LPF17を通過した低周波信号は、図示しないA/D変換器でデジタル信号として信号処理回路18に入力される。対象物Oが移動している場合、この低周波信号に含まれる送信信号と受信信号との位相差及び振幅差を解析することで、対象物Oの動き等が検出される。
【0027】
次に、無線センサ装置10の動作について説明する。ここでは、図3(a)に示すタイミングでパルス信号が生成される場合を例に説明する。
タイミング回路13から第1のパルス信号を生成する制御信号を受けると、時刻t1において、RF発振回路11は送受信アンテナA11に供給する第1のパルス信号を生成する。タイミング回路13からRF発振回路11に制御信号が送られるタイミングに同期して、パルス信号の供給先が送受信アンテナA11側に切り替えられる。生成された第1のパルス信号は、スイッチング素子14を介して送受信アンテナA11と同時にミキサ回路15aに送られる。第1のパルス信号が給電された送受信アンテナA11は、無線波を放射すると共に、放射した無線波が対象物Oに反射した反射波を電気的な受信信号DSとして受信する。このとき、もう一方の送受信アンテナA12からは無線波は放射されていないので、送受信アンテナA12からの妨害波は存在しない。この受信信号DSはミキサ回路15aに入力される。
【0028】
一方、時刻t3において、タイミング回路13から第2のパルス信号を生成する制御信号を受けたRF発振回路11は、送受信アンテナA12に供給する第2のパルス信号を生成する。この制御信号の送信タイミングに同期して、パルス信号の供給先が送受信アンテナA12側に切り替えられる。生成された第2のパルス信号は、スイッチング素子14を介して送受信アンテナA12と同時にミキサ回路15bに送られる。第2のパルス信号が給電された送受信アンテナA12は、無線波を放射すると共に、放射した無線波が対象物Oに反射した反射波を電気的な受信信号DSとして受信する。このとき、もう一方の送受信アンテナA11からは無線波は放射されていないので、送受信アンテナA11からの妨害波は存在しない。この受信信号DSはミキサ回路15bに入力される。
【0029】
ミキサ回路15aでは、RF発振回路から入力されたパルス信号LOの一部と受信信号DSとが混合され、ミキサ回路15bでは、RF発振回路から入力されたパルス信号LOの一部と受信信号DSとが混合される。ミキサ回路15aから出力された信号は、ミキサ回路15bからの出力される信号と共に、略同一タイミングとみなせるタイミングで積分差動増幅回路16に入力される。対象物Oが移動していれば、ミキサ回路15aの出力信号とミキサ回路15bの出力信号とが相異するので、その差が積分差動増幅回路16で積分差動増幅される。また、対象物Oが停止していれば、ミキサ回路15a及びミキサ回路15bの出力はほぼ0となるので、積分差動増幅回路16の出力も0となる。積分差動増幅回路16の出力信号はLPF17で低周波信号が取り出され信号処理回路18に入力される。LPF17で取り出される低周波信号に対象物Oの動き又は位置に関する情報が含まれるので、これを解析することで対象物Oの動き等が検出される。
【0030】
このように、本実施の形態によれば、先のパルス信号が第1のアンテナA11に給電されると同時に第1のミキサ回路15aへ供給された後、当該第1のアンテナA11及び第1のミキサ回路15aに与えた先のパルス信号のパルス幅と重複しない近接タイミングで次のパルス信号が第2のアンテナA12に給電されると同時に第2のミキサ回路15bへ供給されるので、第1のアンテナA11へのパルス信号の供給タイミングと第2の送信アンテA12へのパルス信号の供給タイミングとが重ならない。従って、複数のアンテナA11,A12間で互いの無線波が干渉することなくアンテナ間のアイソレーションを確保することができると共に、アンテナ間の距離を離す必要もないので無線センサ装置の小型化を図ることができる。また、RF発振回路11から第1及び第2のアンテナA11,A12に異なるタイミングでパルス信号が給電されるので、従来の無線センサ装置と比べて、RF発振回路11に要求されるピークパワーを半減できる。
【0031】
なお、上記実施の形態では、送信アンテナ及び受信アンテナを1つのアンテナで兼用(共用)する構成を例に説明したが、送信アンテナ及び受信アンテナを別々のアンテナで構成してもよい。また、送受信アンテナA11,A12を直交偏波アンテナ(例えば、送受信アンテナA11を垂直偏波アンテナ、送受信アンテナA12を水平偏波アンテナ)で構成することで、アンテナ間干渉をさらに抑えることも可能である。
【0032】
また、上記実施の形態では、タイミング回路13が、RF発振回路11のパルス信号の生成タイミングを直接的に制御する構成としたが、この構成に限定されるものではない。例えば、タイミング回路13をRF発振回路11の後段に設け、RF発振回路11から出力されるパルス信号の各アンテナへの供給タイミング(出力タイミング)を制御するように構成してもよい。
【0033】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、無線波を利用して対象物からの反射波から対象物の動き等を検出する無線センサ装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
10 無線センサ装置
11 RF発振回路(信号発生回路)
12 制御手段
13 タイミング回路
14 スイッチング素子
15a ミキサ回路(第1のミキサ回路)
15b ミキサ回路(第2のミキサ回路)
16 積分差動増幅回路
17 LPF
18 信号処理回路
A11 送受信アンテナ
A12 送受信アンテナ
O 対象物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2のアンテナと、
前記第1のアンテナに接続され当該第1のアンテナで受信した第1の受信信号が入力する第1のミキサ回路と、
前記第2のアンテナに接続され当該第2のアンテナで受信した第2の受信信号が入力する第2のミキサ回路と、
前記第1及び第2のアンテナに給電されると共に前記第1及び第2のミキサ回路へ供給されるパルス信号を生成する信号発生回路と、
前記第1のミキサ回路が前記第1の受信信号と前記パルス信号とを混合して出力する信号と、前記第2のミキサ回路が前記第2の受信信号と前記パルス信号とを混合して出力する信号とが入力される積分差動増幅回路と、
前記第1及び第2のアンテナに前記パルス信号を給電して無線波を放射する場合、先のパルス信号が前記第1のアンテナに給電されると同時に前記第1のミキサ回路へ供給された後、当該第1のアンテナ及び第1のミキサ回路に与えた前記先のパルス信号のパルス幅と重複しない近接タイミングで次のパルス信号が前記第2のアンテナに給電されると同時に前記第2のミキサ回路へ供給されるように、前記信号発生回路の動作タイミング及び当該信号発生回路から前記第1及び第2のアンテナまでの経路を制御する制御手段と、
を具備したことを特徴とする無線センサ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記パルス信号の生成タイミングを設定するタイミング回路と、
前記信号発生回路から出力された前記パルス信号の給電先となるアンテナを前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間で切り替えるスイッチング素子と、を有し、
前記タイミング回路に設定された生成タイミングに同期して前記スイッチング素子を制御することを特徴とする請求項1記載の無線センサ装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記先のパルス信号のパルス幅と重複しない近接タイミングが、前記先のパルス信号の立ち上がりからパルス幅の2倍の時間経過したタイミングであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の無線センサ装置。
【請求項4】
前記第1及び第2のアンテナは、送信アンテナと受信アンテナを兼用していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の無線センサ装置。
【請求項5】
前記第1及び第2のアンテナは、前記パルス信号が給電され無線波を放射するアンテナと、対象物から反射した反射波を受信して前記第1又は第2の受信信号を出力するアンテナとが、それぞれ別々に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の無線センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−94997(P2011−94997A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246584(P2009−246584)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】