説明

無線タグ処理装置

【課題】複数の無線タグが特定の通信エリアに存在する場合に、当該通信エリアで処理対象の無線タグを特定できる無線タグ処理装置を提供する。
【解決手段】無線タグ処理装置20は、通信エリア10に存在する複数の無線タグと通信を行い各無線タグIDを取得し、処理対象となるべき無線タグIDを決定する。無線タグ処理装置20は、予め登録された無線タグIDと身体的特徴情報を保存するデータベース71と、各無線タグIDを受信して取得するリーダライタ32と、複数のユーザの外観情報を取得する外観情報取得手段51と、取得された外観情報から各ユーザの身体的特徴情報を抽出する身体的特徴抽出部52Aと、抽出した身体的特徴情報と登録済みの身体的特徴情報を対比処理しユーザの身体的特徴に基づいて処理対象となるべき無線タグIDを決定する処理対象決定手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線タグ処理装置に関し、特に、任意に設定された特定のエリアで複数の無線タグの存在を無線タグIDを受信して検知する場合にそのユーザの外観情報を利用して処理対象である無線タグを推定して限定するのに好適な無線タグ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
相対的に広い通信範囲(数メートル〜数十メートル)を有する無線タグ(RFID)は、それを有するユーザの自然な動作を妨げることなく当該ユーザの個別識別を行うことができるため、様々な分野で使用されている。他方、通信範囲が広いということから、相対的に狭いエリアに複数の無線タグが存在する場合には、各無線タグとの通信で得られる各無線タグの通信情報(ID情報等)と、物理的な存在位置すなわち当該各無線タグを有するユーザが居る位置とを紐付けることが容易ではないという問題があった。
【0003】
上記の問題に類似または関連した問題を解決する従来の技術として、下記の特許文献1に開示される通過管理システム等や、下記の特許文献2に開示されるゲート管理システム等が存在する。
特許文献1に開示される「通過管理方法およびシステム」では、或る特定の通信エリアに複数の無線タグが存在する場合に、各無線タグを特定するために、受信した複数の無線タグIDの中から特定の無線タグIDに係る無線タグに対して発光の指示を行い、当該発光指示で発光する無線タグIDを有するユーザを監視カメラで監視し、ユーザの顔データを利用し、これにより無線タグIDとこれに対応する無線タグの存在位置との間の紐付けを行うようにしている。
特許文献2に開示される「ゲート管理システムおよびそのプログラム」では、無線タグを用いたゲート管理システムにおいて安全性を向上させる技術を提案している。このゲート管理システムによれば、正当な使用者以外に者に対して無線タグが使用できないようにするため、無線タグIDと紐付けられた使用者の顔等の情報を使用して本人認証を行うという構成を有している。具体的には、カメラによる撮像で得られたユーザ(通行者)の顔画像と、受信した無線タグIDであって登録された当該無線タグIDに対応した顔画像とを比較・照合し、本人の確認(本人認証)を行い、これにより正当なユーザ以外の者の通行を拒否するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−269507号公報
【特許文献2】特開2004−324183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される「通過管理方法およびシステム」によれば、無線タグが発光部を有する構造であることが必要であり、また上記の特定の通信エリアにおいて監視カメラは無線タグの当該発光部を監視できるような位置に設置されていなければならない。そのため、システム構成上の制約条件が多く、利用可能な用途が限定されるという問題があった。
【0006】
また特許文献2に開示される「ゲート管理システムおよびそのプログラム」によれば、特定の場所に入るため限定された入口ゲートでそこに設置された端末との間で本人認証を行う技術であるので、限定された特定の極めて狭い通信エリアにおいて1人のユーザのみが存在し、当該1人のユーザが正当な権利を有するか否かを認証するという技術である。特定の通信エリアに複数のユーザが存在する場合には、複数のユーザの各々に対して同時にまたは順次に本人認証を行うことはできないという問題があった。
【0007】
上記のような従来の技術を前提として、本発明では、通信エリアに複数の無線タグが存在する状態であってこれらの無線タグの各々の無線タグIDを受信し得るシステムの構成において、取得した無線タグIDと、対応する無線タグを有するユーザの位置とを紐付けを可能にし、処理対象とする無線タグを推定して限定し、当該無線タグに対して必要な処理を実行するシステムが望まれる。
【0008】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、各々が固有の無線タグを有する複数のユーザが任意の特定の通信エリアに存在する場合に、当該特定の通信エリアで処理対象とすべきユーザを推定して限定することができ、システムの構成上の制約が少なく、自由度および汎用性を高め、幅広い用途に利用でき、任意の通信エリアに複数の無線タグが存在する場合にも処理対象を簡易に特定することができる無線タグ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る無線タグ処理装置は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0010】
第1の無線タグ処理装置(請求項1に対応)は、特定の通信エリアに存在する1つまたは2つ以上の無線タグと通信を行って無線タグの各無線タグIDを取得し、処理対象となるべき無線タグIDを決定する無線タグ処理装置であり、
予め登録された無線タグIDと、予め登録された無線タグIDに対応するユーザに関して予め登録された身体的特徴情報とを保存するデータ保存手段と、
通信エリアに存在する1つまたは2つ以上の無線タグの各無線タグIDを受信して取得する無線タグID取得手段と、
通信エリアに存在する1つまたは2つ以上の無線タグをそれぞれ備える1人または2人以上のユーザの外観情報を取得する外観情報取得手段と、
外観情報取得手段が取得した2人以上のユーザの外観情報から各ユーザの身体的特徴情報を個別に抽出する身体的特徴抽出手段と、
身体的特徴抽手段が抽出した2つ以上の身体的特徴情報の各々と、データ保存手段に保存された登録済みの身体的特徴情報とを対比処理することにより、ユーザの身体的特徴に基づいて、処理対象となるべき無線タグIDを決定する処理対象決定手段と、を備えることによって構成されている。
【0011】
上記の無線タグ処理装置では、特定の通信エリアにおいて各々が固有の無線タグIDを有する複数の無線タグが存在する場合に、当該通信エリアで処理対象とすべき無線タグ(ユーザ)を推定して限定するために、取得した無線タグIDに基づいてユーザの登録済み身体的特徴情報を取得し、このユーザの登録済み身体的特徴情報と通信エリアで取得したユーザの実際の身体的特徴情報とを対比・照合し、その類似度を計算し、求めた類似度に基づいて対応するユーザからその無線タグIDを決定する。これにより対象となる無線タグIDを決定することができ、通信エリアに複数の無線タグが存在する場合にも処理対象を簡易にかつ確実に特定することができる。
【0012】
第2の無線タグ処理装置(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、処理対象決定手段での対比処理は、抽出した身体的特徴情報と登録済みの身体的特徴情報の間の類似度を計算する類似度計算手段により実行され、最も類似度が高いユーザを処理対象と決定し、これにより処理対象となるべき無線タグIDを決定するように構成される。
【0013】
第3の無線タグ処理装置(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、外観情報取得手段の取得動作で得られた外観情報に基づいて2人以上のユーザの各々の位置情報を抽出する位置情報抽出手段を備えるように構成される。
【0014】
第4の無線タグ処理装置(請求項4に対応)は、上記の構成において、好ましくは、ユーザに関する身体的特徴は、顔、虹彩、または身長であることを特徴としている。
【0015】
第5の無線タグ処理装置(請求項5に対応)は、上記の構成において、好ましくは、通信エリアに1つの無線タグが存在する場合には、当該1つの無線タグの無線タグIDが自動的に処理対象となるように決定されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特定の通信エリアにおいて各々が固有の無線タグIDを有する複数の無線タグが存在する場合に、取得した無線タグIDに基づいてユーザの登録済み身体的特徴情報を取得し、このユーザの登録済み身体的特徴情報と通信エリアで取得したユーザの実際の身体的特徴情報とを対比・照合し、その類似度を計算し、求めた類似度に基づいて対応するユーザから対象となるその無線タグIDを決定するようにしたため、通信エリアに複数の無線タグが存在する場合であっても、ユーザに余計な動作を行わせることなく、処理対象を簡易にかつ確実に特定することができ、様々な処理に利用することができる。
さらに本発明によれば、通信エリアに複数の無線タグが存在する場合であっても処理対象を特定することができるため、無線タグの各種のシステムへの利用について、システムの構成上の制約を少なくし、自由度および汎用性を高め、幅広い用途に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】特定の通信エリアに複数(例えば3つ)の無線タグが存在する状態と、当該複数の無線タグの各々と通信を行う本発明に係る無線タグ処理装置の配置状態とを示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る無線タグ処理装置のハードウェア構成を示す図である。
【図3】本実施形態に係る無線タグ処理装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本実施形態に係る無線タグ処理装置の各機能部の構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に本発明に係る無線タグ処理装置が適用される利用状況を示す図である。図1では、特定の通信エリア10において一例として3つの無線タグ11A,11B,11Cが存在する状態と、当該3つの無線タグ11A,11B,11Cの各々と無線(電波A,B,C)によって通信を行う無線タグ処理装置20の配置状態とを示している。通信エリア10は、通信エリア10内に存在する無線タグ11A〜11Cのうち所定の条件を満した無線タグに対して、これを処理対象として提供すべき任意のサービスが予め設定された特定の通信エリアである。通信エリア10は例えば数メートルから数十メートルの広さ範囲のエリアであり、その形状は任意である。また設定される場所も任意である。一例として述べると、例えば駅の構内において設定された特定の範囲である。通信エリア10においては、予め特定な限定された入口および出口が定められていてもよいし、特別に入口と出口を定めず、通信エリア10の任意の境界部分から出入りすることができるようにしてもよい。また、図1の例では3つの無線タグ11A〜11Cが示されているが、通信エリア10に存在する無線タグの個数は1つであってもよいし、3つよりも多くてもよい。本発明に係る無線タグ処理装置20は、複数の、すなわち2以上の無線タグが1つの通信エリア10に存在する場合において、この通信エリア10で設定された上記のサービスを2以上の無線タグのいずれか1つに対して、あるいは2つ以上の無線タグのすべてに対して所定の順序で提供するための構成を有していることから、通信エリア10に3つの無線タグ11A〜11Cが存在する場合の例について説明する。
【0020】
3つの無線タグ11A〜11Cの各々は、通常的には、それぞれ所有者であるユーザ(個人)12A,12B,12Cによって所持され、利用されるものである。従って、無線タグ11A〜11Cに提供されるサービスは、それを所持するユーザ12A〜12Cの各々が無線タグ11A〜11Cを介して受けることになる。無線タグ11A〜11Cの各々は、各ユーザ12A〜12Cに把持されていてもいいし、また各ユーザの身体に装備されたり、各ユーザが所持するバッグ等に中に収容されていてもよい。図1では、各無線タグ11A〜11Cは、ユーザ12A〜12Cの各々に装備されるものとして対応するユーザに接近させて図示している。
【0021】
なお無線タグ11A〜11Cは、無線ICタグあるいはRFIDタグとも呼ばれ、無線通信機能部とメモリを備えたICチップを内蔵した超小型の無線端末である。無線タグ処理装置20内に設けられた専用のリーダ・ライタとの間において、当該リーダ・ライタからの要求に応じて、そのアンテナを介して送受される無線(電波A,B,C)により無線タグ11A〜11Cの内蔵メモリからのデータの読出し、当該内蔵メモリへのデータの書込みが行われる。この実施形態では、通信エリア10としては数メートルから数十メートルを想定しているので、無線タグ11A〜11Cはこの範囲での無線通信を可能にするアクティブ型の無線タグである。無線タグ11A〜11Cを備える媒体の製品形式としては例えば非接触ICカードである。
【0022】
また図1で示された3つの無線タグ11A〜11Cの各々の内蔵メモリには、各無線タグを一義的に特定するための固有の無線タグIDに係るデータが記憶されている。
【0023】
無線タグ処理装置20は、特定な通信エリア10に関して、当該通信エリア10内に存在する複数の無線タグ11A〜11Cの各々をその無線タグIDを受信することにより検知する処理と、各無線タグ11A〜11Cを識別する処理と、所定のサービスを提供する無線タグを対象として決定する処理とを行う機能を有するように構成されている。無線タグ処理装置20は、通信エリア10内に存在する各無線タグ11A〜11Cとの間で情報・データの送受を行う送受信装置30と、受信した情報等に基づいて必要な情報処理を行う処理装置(コンピュータ等)40と、通信エリア10の範囲内に存在するユーザ12A〜12Cの外観情報を取得して当該ユーザの身体的特徴を抽出する外観情報取得・抽出装置50とから構成されている。また無線タグ処理装置20はネットワーク60を介してセンタサーバ70と接続されている。また図1では、無線タグ処理装置20に関して、送受信装置30に装備されるアンテナ31、および外観情報取得・抽出装置50に装備された外観情報取得手段51が示されている。アンテナ31と無線タグ11A〜11Cの各々との間には送受信される無線(電波A,B,C)が示されている。さらに外観情報取得手段51について、破線51Aは通信エリア10の全域の外観情報を取得できる視野を示している。またセンタサーバ70にはデータベース71が装備されている。
【0024】
なお図1では、説明の便宜上、無線タグ処理装置20の外観をボックス状にして示したが、これに限定されない。例えば、通信エリア10の近傍の箇所(例えば天井部や床等)にアンテナ31と外観情報取得手段51を配備し、その他の部分については別の見えない場所に設置することもできる。
【0025】
次に、上記の図1、および図2に示した無線タグ処理装置20のハードウェア構成を参照して、本実施形態に係る無線タグ処理装置20の各部の内部構成を説明する。
【0026】
送受信装置30はアンテナ31とリーダ・ライタ32を備えている。リーダ・ライタ32は、アンテナ31を介して電波を発する送信機能部と、無線タグ11A〜11Cから送信される電波をアンテナ31を介して受信する受信機能部と、読取りおよび書込みを行う機能部とを有している。リーダ・ライタ32は、その起動時において、無線タグ11A〜11Cの各々に対して電波を与え、この電波に感応した各無線タグ11A〜11Cから送られる無線タグIDに係るデータを受信し、無線タグIDの読取り動作を行う。その後に書込みが必要な場合、リーダ・ライタ32は、アンテナ31から発する電波により、決定した所定の無線タグに対して必要なデータを送信して書込み動作を行う。また、送受信装置30は処理装置40に接続されており、リーダ・ライタ32が処理装置40との間でデータのやり取りを行うように構成されている。リーダ・ライタ32は、読み取った無線タグIDに係るデータを処理装置40に送り、書込みが必要な場合は、処理装置40から書込みに必要なサービスに係るデータを受け取る。
【0027】
処理装置40は、コンピュータにより構成されており、CPU41とメモリ42を有している。メモリ42には無線タグID決定プログラム42Aが記憶されている。CPU41が無線タグ決定プログラム42Aを実行することにより、通信エリア10内に2以上の複数の無線タグが存在しているときにサービス提供対象となる1つの無線タグを決定するためのアルゴリズムが実行される。処理装置40は、送受信装置30のリーダ・ライタ32から一定の時間内に受信した少なくとも1つの無線タグIDに係るデータが送られてくることを条件にして、無線タグID決定プログラム42Aの実行に基づいて、無線タグIDに係るデータ等を用いてサービス対象となる無線タグIDを決定する処理が実行され、サービスを提供すべき対象となる無線タグIDを決定するという機能を有している。
【0028】
また処理装置40は、例えば、通信部43およびネットワーク60を経由して、例えば遠隔の地に存する外部のセンタサーバ70に接続されている。センタサーバ70はデータベース71を有している。このデータベース71には、事前に登録されたサービスの提供を受ける権利を有するユーザ(個人)に係るデータ71Aが保存されている。保存されるデータ71Aは、各ユーザの個人情報に係るデータ(ユーザ個人情報データ)72、各ユーザの所持する無線タグの無線タグIDに係るデータ(無線タグIDデータ)73、および各ユーザの身体的特徴に係るデータ(身体的特徴データ)74を含んでいる。ここで「身体的特徴」とは、例えば顔、目の虹彩、身長、体型等である。この身体的特徴に係るデータ74は、登録時の外観情報取得手段51で得られた外観情報から取得されたものであり、データやそのデータから作成される特徴量として登録されている。センタサーバ70は、処理装置40からのリクエストに応じて、提供された無線タグIDに対応したユーザの身体的特徴に係るデータを処理装置40に送信する機能を有している。処理装置40は、こうして、取得した各無線タグIDに対応する登録済みのユーザの身体的特徴の情報を迅速に取得することができる。処理装置40は、取得した登録済みのユーザの身体的特徴の情報を、無線タグID決定のための判断に利用する。
【0029】
登録済みのユーザ個人情報データ72、無線タグIDデータ73、身体的特徴データ74は、上記の説明では、外部のセンタサーバ70のデータベース71に保存するようにしたが、処理装置40のメモリ42に保存することもできる。登録済みのユーザ個人情報データ72、無線タグIDデータ73、身体的特徴データ74を保存するためのデータ保存手段は、処理装置40による無線タグID決定の機能に必要な要素である。
【0030】
上記の外観情報取得・抽出装置50は外観情報取得手段51と処理部52とから構成される。外観情報取得手段51は、1つまたは複数のセンサを組み合わせて構成され、その取得領域を通信エリア10を含むように設定しており、所定の時間間隔で通信エリア51内に存在するすべての人物(ユーザ)の外観情報を取得する。取得した人物に係る外観情報データは処理部52に送られる。処理部52は、外観情報に係るデータに基づいて、通信エリア10内に存在するすべての人物(ユーザ)の各々の身体的特徴を抽出する機能(身体的特徴抽出部52A)を有すると共に、通信エリア10の範囲における各人物の位置データを算出する機能(位置情報抽出部52B)を有している。処理部52での抽出処理で得られた各ユーザの身体的特徴の情報(データ)とその位置データは、内蔵メモリに一定時間保存される。ここで「身体的特徴」は前述した内容と同じである。抽出された身体的特徴に係るデータと算出された位置データは、処理装置40に送られ、上記した無線タグの決定に係る判断に利用される。
【0031】
処理装置40において、サービス提供対象となる無線タグが決定されると、決定された無線タグに対して必要な情報を提供する。
【0032】
次に、図3に示したフローチャート、および図4に示した機能ブロック図に従って無線タグ処理装置20で実行される無線タグID決定の処理の内容を説明する。無線タグID決定の処理は、前述した無線タグID決定プログラム42Aを実行することに基づいて行われる。
【0033】
最初の判断ステップS11では、所定の時間範囲内に無線タグIDを取得したか否かが判断される。処理装置40では、図2で説明した通り、送受信装置30のリーダ・ライタ32が無線タグIDを読み取ったとき、当該リーダ・ライタ32から送られる無線タグIDに係るデータを受信する。処理装置40のCPU41(無線タグID決定プログラム42A)で無線タグIDを取得すると、判断ステップS11でYESと判断され、次の判断ステップS12で移行する。判断ステップS11でNOと判断されるときには、一定の時間間隔で判断ステップS11を繰り返す。
【0034】
次の判断ステップS12では、取得した無線タグIDの個数が2個以上(複数)であるか否かを判断する。判断ステップS12において、取得した無線タグIDの個数が2個以上(複数)であると判断されたときには次の処理ステップS13に移行し、取得した無線タグIDの個数が1個であると判断されたときには処理ステップS18に移行する。取得した無線タグIDの個数が2個以上である場合には、2個以上の無線タグIDの中から対象となる1個の無線タグIDを決定するプロセスに移行する。また取得した無線タグIDの個数が1個である場合には、この実施形態の例では、取得した1個の無線タグIDを対象の無線タグIDとして自動的に決定する。
【0035】
図1および図2で示した構成では、通信エリア10には3つの無線タグ11A〜11Cが存在しているため、3個の無線タグIDが取得されることになる。従って、処理の流れとしては、判断ステップS12によって処理ステップS13に移行する。
【0036】
処理ステップS13では、取得した2個以上すなわち3個の無線タグIDの各々を用いて、各無線タグIDに対応する登録済みの身体的特徴情報を取得する。この処理ステップS13によれば、図2に示した構成で説明したように、処理装置40からネットワーク60を介してセンタサーバ70にアクセスし、各無線タグIDが、データベース71におけるデータ71Aの登録済みの無線タグIDデータ74において存在するか否かが判断され、存在する場合には、当該登録済みの無線タグIDに対応する登録済みのユーザの身体的特徴データすなわち身体的特徴情報を得て、センタサーバ70から処理装置40へ送信する。こうして、取得した3個の無線タグIDの各々について、データベース71の無線タグIDデータ74で登録済みか否かを調べ、登録済みの無線タグIDについて対応する登録済みの身体的特徴情報を取得する。
【0037】
なお、本実施形態の例の場合には、説明の便宜上、3個の無線タグIDのうち1個の無線タグIDが登録済みのものであるとする。具体的には無線タグ11Aの無線タグIDが「登録済み無線タグID」であるとする。その結果、無線タグ11Aの「登録済み無線タグID」に対応する「登録済み身体的特徴」が身体的特徴データ74から取り出され、処理装置40に送られる。こうして「登録済み身体的特徴情報」が取得される(ステップS13)。
【0038】
その後、今回の無線タグIDを取得した時に外観情報取得・抽出装置50における処理部52の身体的特徴抽出部52Aで抽出された「身体的特徴情報」を取得する(処理ステップS14)。取得した身体的特徴情報は、この例の場合には、ユーザ12A〜12Cの各々の身体的特徴である。身体的特徴の例は前述した通りである。
【0039】
次の処理ステップS15では、処理ステップS13で取得した1つの「登録済み身体的特徴情報」と、処理ステップS14で取得した3人のユーザ12A〜12Cの「身体的特徴情報」の各々との間に関して、「類似度」を計算する。「類似度」の計算では、通常的に、対比される2つの身体的特徴情報の間の相違量を数値的に計算し、当該相違量の大小に基づいて類似の程度のレベルを求める。「登録済み身体的特徴情報」と3人のユーザ12A〜12Cの「身体的特徴情報」の各々との対比における「類似度」の計算では、「登録済み身体的特徴情報」がユーザ12Aに対応するものであるから、ユーザ12Aの「身体的特徴情報」との間の類似度が最も大きくなる。他方、「登録済み身体的特徴情報」と残りのユーザ12B,12Cの「身体的特徴情報」の各々との対比における「類似度」の計算では類似度は相当に小さい値になる。
【0040】
次の判断ステップS16では、判断ステップS11,S12で取得した3個の無線タグIDに関して、処理ステップS15で計算された類似度に基づいて最も確からしい無線タグIDがあるか否かが判断される。「最も確からしい」という基準については類似度の値として与えられている。従って、この例では、最も大きな類似度の値を有するユーザ12Aの「身体的特徴情報」との間の類似度が基準値を超えているので、ユーザ12Aの無線タグ11Aの無線タグIDが最も確からしい無線タグIDと判断され、判断ステップS16においてYESと判断される。その結果、次の処理ステップS17に移行する。判断ステップS16において、何らかの理由に基づきNOと判断される場合には、処理は終了する。
【0041】
処理ステップS17では、最も確からしい無線タグ11Aの無線タグIDを処理対象とする処理を行う。ここで、「処理対象する」とは、通信エリア10において設定されたサービス提供等の処理を受ける対象とすることを意味する。
【0042】
こうして、次の処理ステップS18においては、無線タグ11Aの無線タグIDを処理対象として決定する。これにより、無線タグ11Aを所持するユーザ12Aは、処理対象となった無線タグ11Aの無線タグIDが通信エリア10内に存在するユーザ12Aに紐付けられることにより、通信エリア10内において無線タグ11Aを介して所定のサービスの提供を受けることができる(処理ステップS19)。
【0043】
なお、前述した判断ステップS12で「1個」と判断された場合にも、自動的に、処理ステップS18に移行して当該1個の無線タグIDを処理対象して決定する。
【0044】
上記の通り、通信エリア10内に複数の無線タグ11A〜11C(ユーザ12A〜12C)が存在することにより、無線タグ処理装置20がこれらの無線タグ11A〜11Cからの複数の無線タグIDを受信する結果、どの無線タグIDを処理の対象とするかを決定することができない場合において、受信したすべての無線タグIDに対して予め登録された身体的特徴情報の有無を調べ、それにより取得されたユーザの「登録済み身体的特徴情報」と、外観情報取得・抽出装置50で取得された複数のユーザの各々の身体的特徴情報とを対比して一致程度または不一致程度(類似度)を判定し、一致性の観点で最も確からしいユーザに係る無線タグIDを処理の対象として決定する。このような手法またはシステム構成によって複数の無線タグIDから処理対象を決定することにより、各ユーザには不要な余分の動作行為を行わせることなく、通信エリア10内で設定された様々な処理(サービス提供、本人認証等)を行うことができる。
【0045】
前述のフローチャートによる処理の流れでは、ユーザ12Aの無線タグ11Aの無線タグIDのみを登録済みとして説明したが、処理の内容はこれに限定されない。例えば、ユーザ12B,12Cの無線タグ11B,11Cのそれぞれが登録済みの場合にも、本発明に係る無線タグ処理の手法を適用することが可能である。この場合には、上記の処理ステップS13において、ユーザ12B,12Cの各々の登録済み身体的特徴も取得されることになる。そうすると、処理ステップS15の「類似度」の計算では3人のユーザ12A〜12Cの各々に関してユーザごとに計算が行われ、次の判断ステップS16では、ユーザ12A〜12Cの各々の無線タグ11A〜11Cの各無線タグIDが最も確からしい無線タグIDであると判断される。これにより、処理対象となった無線タグ11A,11B,11Cの無線タグIDが通信エリア10内に存在するユーザ12A,12B,12Cにそれぞれ紐付けられることになる。この場合には、3個の無線タグ11A〜11Cのすべてが処理対象になるので、外観情報取得・抽出装置50の処理部52の位置情報抽出部52Bで取得された各ユーザ12A〜12Cの各々の位置情報(絶対的な位置、相対的な位置関係等)を利用して、処理実行順序を決め、必要な処理を実行する。
【0046】
図3に示した処理内容を実行する無線タグ処理装置20の機能ブロック図を示すと、図4に示すごとくなる。
無線タグ処理装置20は、基本的な構成として、特定の通信エリア10に存在する1つまたは2つ以上の無線タグ(11A〜11C)と送受信装置30を経由して通信を行って無線タグの各無線タグIDをそのリーダ・ライタ32(無線タグID取得手段)で取得し、その後に処理対象となるべき無線タグIDを決定する機能を有している。また、その前提の構成として、予め登録された無線タグIDと、予め登録された無線タグIDに対応するユーザに関して予め登録された身体的特徴情報とを保存するデータ保存手段81を備えている。
また通信エリアに存在する1つまたは2つ以上の無線タグをそれぞれ備える1人または2人以上のユーザ(12A〜12C)の外観情報を取得する外観情報取得・抽出装置50の外観情報取得手段51と、外観情報取得手段51が取得した2人以上のユーザの外観情報から各ユーザの身体的特徴情報を個別に抽出する身体的情報抽出部52A(身体的特徴抽出手段)とを備える。
そして身体的情報抽出部52Aが抽出した2つ以上の身体的特徴情報の各々と、データ保存手段81に保存された登録済みの身体的特徴情報とを対比処理することにより、ユーザの身体的特徴に基づいて、処理対象となるべき無線タグIDを決定する処理対象決定手段82を備えている。
なお処理対象決定手段82での対比処理は、抽出した身体的特徴情報と登録済みの身体的特徴情報の間の類似度を計算する類似度計算手段83により実行され、最も類似度が高いユーザを処理対象と決定し、これにより処理対象となるべき無線タグIDを決定する。
また外観情報取得手段51の取得動作で得られた外観情報に基づいて2人以上のユーザの各々の位置情報を抽出する位置情報抽出部52Bを備えている。
【0047】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ、および配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値等については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る無線タグ処理装置は、相対的に広いエリアに2個以上の無線タグが存在する場合であってこれらの無線タグから無線タグIDを取得するように構成されたものにおいて、取得した無線タグIDから処理対象となる無線タグIDを容易にかつ確実に決定することができ、これにより無線タグの各種のシステムへの利用について、システムの構成上の制約を少なくし、自由度および汎用性を高め、幅広い用途に利用することが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
10 通信エリア
11A〜11C 無線タグ
12A〜12C ユーザ(個人)
20 無線タグ処理装置
30 送受信装置
31 アンテナ
32 リーダ・ライタ
40 処理装置
41 CPU
42 メモリ
42A 無線タグID決定プログラム
43 通信部
50 外観情報取得・抽出装置
51 外観情報取得手段
52 処理部
52A 身体的特徴抽出部
52B 位置情報抽出部
60 ネットワーク
70 センタサーバ
71 データベース
71A データ
72 ユーザ個人情報データ
73 無線タグIDデータ
74 身体的特徴データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の通信エリアに存在する1つまたは2つ以上の無線タグと通信を行って前記無線タグの各無線タグIDを取得し、処理対象となるべき前記無線タグIDを決定する無線タグ処理装置において、
予め登録された無線タグIDと、予め登録された前記無線タグIDに対応するユーザに関して予め登録された身体的特徴情報とを保存するデータ保存手段と、
前記通信エリアに存在する前記1つまたは前記2つ以上の無線タグの前記各無線タグIDを受信して取得する無線タグID取得手段と、
前記通信エリアに存在する前記1つまたは前記2つ以上の無線タグをそれぞれ備える1人または2人以上のユーザの外観情報を取得する外観情報取得手段と、
前記外観情報取得手段が取得した前記2人以上のユーザの外観情報から各ユーザの身体的特徴情報を個別に抽出する身体的特徴抽出手段と、
前記身体的特徴抽手段が抽出した2つ以上の前記身体的特徴情報の各々と、前記データ保存手段に保存された登録済みの前記身体的特徴情報とを対比処理することにより、ユーザの身体的特徴に基づいて、処理対象となるべき前記無線タグIDを決定する処理対象決定手段と、
を備えることを特徴とする無線タグ処理装置。
【請求項2】
前記処理対象決定手段での前記対比処理は、抽出した前記身体的特徴情報と登録済みの前記身体的特徴情報の間の類似度を計算する類似度計算手段により実行され、最も類似度が高いユーザを処理対象と決定し、これにより処理対象となるべき前記無線タグIDを決定することを特徴とする請求項1記載の無線タグ処理装置。
【請求項3】
前記外観情報取得手段の取得動作で得られた外観情報に基づいて前記2人以上のユーザの各々の位置情報を抽出する位置情報抽出手段を備えることを特徴とする請求項1記載の無線タグ処理装置。
【請求項4】
前記ユーザに関する前記身体的特徴は、顔、虹彩、または身長であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無線タグ処理装置。
【請求項5】
前記通信エリアに前記1つの無線タグが存在する場合には、当該1つの無線タグの前記無線タグIDが自動的に処理対象となるように決定されることを特徴とする請求項1記載の無線タグ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−221214(P2012−221214A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86270(P2011−86270)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】