無線タグ回路素子収容体及び無線タグ情報通信装置
【課題】無線タグ回路素子の製造時のばらつきに対応し、各無線タグ回路素子ごとに最適な通信態様を実現し、エネルギの無駄や通信上の悪影響を防止できる。
【解決手段】タグ情報を記憶するIC回路部151とこのIC回路部151に接続され情報の送受信を行うアンテナ152とを備えた複数の無線タグ回路素子Toを収容するカートリッジ100であって、複数の無線タグ回路素子Toのそれぞれに係わるタグ特性値情報を記録した無線タグ回路素子TAを有する。
【解決手段】タグ情報を記憶するIC回路部151とこのIC回路部151に接続され情報の送受信を行うアンテナ152とを備えた複数の無線タグ回路素子Toを収容するカートリッジ100であって、複数の無線タグ回路素子Toのそれぞれに係わるタグ特性値情報を記録した無線タグ回路素子TAを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部より無線通信を介し無線タグ情報の読み取り又は書き込みを行える無線タグ回路素子を備えた無線タグ回路素子収容体及びこれを用いる無線タグ情報通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小型の無線タグとリーダ(読み取り装置)/ライタ(書き込み装置)との間で非接触で情報の読み取り/書き込みを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムが知られている。例えばラベル状の無線タグに備えられた無線タグ回路素子は、所定の無線タグ情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続されて情報の送受信を行うアンテナとを備えており、無線タグが汚れている場合や見えない位置に配置されている場合であっても、リーダ/ライタ側よりIC回路部の無線タグ情報に対してアクセス(情報の読み取り/書き込み)が可能であり、商品管理や検査工程等の様々な分野において実用が期待されている。
【0003】
例えば、このような無線タグ回路素子に対し情報の書き込みを行うライタ(プリンタ)としては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来技術では、所定間隔で長方形状のラベル片(RFIDラベル)が貼り付けられた帯状のタグテープ(台紙)がタグテープロール(供給軸)から繰り出され、搬送経路を搬送される際に、各ラベル片に内蔵された無線タグ回路素子のアンテナに対し、装置側で生成した所定の無線タグ情報が送信され、アンテナに接続されたIC回路部(ICチップ)に順次書き込まれる。ラベル片はその後搬送方向下流側に搬送され、印字手段(サーマルヘッド)によって、上記書き込まれた無線タグ情報に対応した印字情報がRFIDラベル表面に印字されて、無線タグラベルが完成するようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−159838号公報(段落番号0011〜0039、図1〜図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術には以下の課題が存在する。
【0006】
すなわち、無線タグ回路素子の製造時において、実際には、各無線タグ回路素子ごとの通信感度やIC回路部のメモリ書込電圧、書込時間などのアクセス条件等のタグ特性値データは、本来の設計仕様値の前後にある程度のばらつきが生じる。しかしながら、従来はこのようなばらつきに関係なく、全無線タグ回路素子に対し一律のタグ特性値データにて通信を行っていた。このため、複数の無線タグ回路素子に対し順次連続的に通信を行う際、例えば通信感度については、感度が低い無線タグ回路素子に対しても十分な通信品質を確保できるように、予め装置側アンテナからの送信出力を大きく設定しておかなければならなかった。
【0007】
この結果、感度が低くない、良好な無線タグ回路素子以外に対しては必要以上の大きさの送信出力となってエネルギの無駄が生じたり、さらに無線タグ回路素子の許容出力範囲を超えた場合には、無線タグ回路素子で受信した電波が歪む、他の無線タグ回路素子への通信干渉が出る、搬送波の強度が大きくなり反射波成分の識別が困難となる等、通信上好ましくない影響が生じる畏れがあった。IC回路部のメモリ書込電圧、書込時間などのアクセス条件等等他のタグ特性値データについても同様の問題があった。
【0008】
本発明の目的は、無線タグ回路素子の製造時のばらつきに対応し、各無線タグ回路素子ごとに最適な通信態様を実現し、エネルギの無駄や通信上の悪影響を防止できる無線タグ回路素子収容体及び無線タグ情報通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明は、タグ情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続され情報の送受信を行うタグ側アンテナとを備えた複数の無線タグ回路素子を収容する無線タグ回路素子収容体であって、前記複数の無線タグ回路素子のそれぞれに係わるタグ特性値情報を記録した記録手段を有することを特徴とする。
【0010】
本願第1発明においては、記録手段に、各無線タグ回路素子それぞれのタグ特性値情報を記録している。これにより、各無線タグ回路素子と情報の送受信を行う場合には、上記記録手段のタグ特性値情報を読み出して当該特性値情報に合致した態様で通信を行うことができる。したがって、無線タグ回路素子の製造時において、タグ特性値データにばらつきが生じていたとしても、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。この結果、全無線タグ回路素子にて一律のタグ特性値データにて通信を行っていた従来技術のようなエネルギの無駄や通信上の悪影響の発生を防止できる。
【0011】
第2の発明は、上記第1発明において、前記記録手段は、前記タグ特性値情報として、各無線タグ回路素子の前記タグ側アンテナの感度情報及び前記IC回路部のメモリ容量情報のうち少なくとも一方が記録されていることを特徴とする。
【0012】
記録手段に記録されたタグ側アンテナ感度情報やIC回路部のメモリ容量情報、さらにはIC回路部のメモリ書込電圧、書込時間などのアクセス条件等のタグ特性値情報を用いて各無線タグ回路素子ごとに最適な通信態様を実現し、全無線タグ回路素子にて一律のタグ特性値データにて通信を行っていた従来技術のようなエネルギの無駄や通信上の悪影響の発生を防止できる。
【0013】
第3の発明は、上記第1又は第2発明において、前記無線タグ回路素子をテープ長手方向に連続的に複数個配置したタグテープと、このタグテープをその外周側に巻回するリール部材と、それらタグテープ及びリール部材を内包するカートリッジ側筐体とを備えた、略箱形のカートリッジとして構成されていることを特徴とする。
【0014】
略箱型のカートリッジの筐体内に配置したリール部材に巻回したタグテープの無線タグ回路素子に対し、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。
【0015】
第4の発明は、上記第3発明において、前記記録手段は、前記カートリッジ側筐体又は前記リール部材に設けられたタグ特性値情報記憶用の第1無線タグ回路素子であることを特徴とする。
【0016】
カートリッジ側筐体又はリール部材に設けた第1無線タグ回路素子からタグ特性値情報を読み出し、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。
【0017】
上記目的を達成するために、第5の発明は、上記第3発明において、前記記録手段は、前記カートリッジ側筐体に形成された第1バーコード部であることを特徴とする。
【0018】
カートリッジ側筐体に形成した第1バーコード部からタグ特性値情報を読み出し、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。
【0019】
第6の発明は、上記第1又は第2発明において、前記複数の無線タグ回路素子がそれぞれ設けられた平紙状の複数のラベル素材と、これら複数の平紙状のラベル素材を平積み方向に積層して収納するトレイ部材とを備えた略トレイ型のカートリッジとして構成されていることを特徴とする。
【0020】
略トレイ型のカートリッジのトレイ部材に積層収納された平紙状のラベル素材の無線タグ回路素子に対し、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。
【0021】
第7の発明は、上記第6発明において、前記記録手段は、前記トレイ部材に設けられたタグ特性値情報記憶用の第2無線タグ回路素子であることを特徴とする。
【0022】
トレイ部材に設けた第2無線タグ回路素子からタグ特性値情報を読み出し、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。
【0023】
第8の発明は、上記第6発明において、前記記録手段は、前記トレイ部材に形成された第2バーコード部であることを特徴とする。
【0024】
トレイ部材に形成した第2バーコード部からタグ特性値情報を読み出し、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。
【0025】
第9の発明は、上記第1又は第2発明において、前記無線タグ回路素子をテープ長手方向に連続的に複数個配置したタグテープと、このタグテープをその外周側に巻回するリール部材とを備えたタグテープロールとして構成されていることを特徴とする。
【0026】
リール部材に巻回したタグテープの無線タグ回路素子に対し、順次繰り出される無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。
【0027】
第10の発明は、上記第9発明において、前記記録手段は、前記リール部材に設けられたタグ特性値情報記憶用の第3無線タグ回路素子であることを特徴とする。
【0028】
リール部材に設けた第3無線タグ回路素子からタグ特性値情報を読み出し、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。
【0029】
第11の発明は、上記第3、第6、第9発明のいずれか1つにおいて、前記記録手段は、各無線タグ回路素子ごとに対応付けて設けた複数の第3バーコード部であることを特徴とする。
【0030】
通信対象である無線タグ回路素子ごとに対応つけた第3バーコード部からタグ特性値情報を読み出し、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。
【0031】
第12の発明は、上記第11発明において、前記第3バーコード部は、前記無線タグ回路素子を貼り付け対象に貼り付けるための粘着材層を覆う剥離材層に形成されていることを特徴とする。
【0032】
無線タグ回路素子の剥離材層に形成した第3バーコード部からタグ特性値情報を読み出し、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。
【0033】
上記目的を達成するために、第13の発明は、装置側筐体と、この装置側筐体に設けられ、タグ情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続され情報の送受信を行うタグ側アンテナと前記複数の無線タグ回路素子のそれぞれに係わるタグ特性値情報を記録した記録手段とを有する無線タグ回路素子収容体を装着可能な収容体装着部と、前記複数の無線タグ回路素子のうち、特定の無線タグ回路素子の前記タグ側アンテナとの間で、無線通信により送受信を行う装置側アンテナと、前記IC回路部の無線タグ情報にアクセスするアクセス情報を生成するアクセス情報生成手段と、このアクセス情報生成手段で生成した前記アクセス情報を、前記装置側アンテナを介して非接触で前記タグ側アンテナに送信し、前記IC回路部の前記無線タグ情報へのアクセスを行う情報送信手段と、前記記録手段に記録された、対応する前記無線タグ回路素子に係わる前記タグ特性値情報を読み取る読み取り手段と、この読み取り手段で読み取った前記タグ特性値情報に合致するように、前記情報送信手段からの送信態様を制御する送信制御手段とを有することを特徴とする。
【0034】
本願第13発明においては、アクセス情報生成手段で生成されたアクセス情報は、情報送信手段によって装置側アンテナを介し無線タグ回路素子のタグ側アンテナに送信され、さらにIC回路部の無線タグ情報へのアクセス(読み取り又は書き込み)が行われる。このとき、読み取り手段によって記録手段のタグ特性値情報が読み取られ、送信制御手段によって、情報送信手段からの送信態様がその読み取った特性値情報に合致するように制御される。これにより、無線タグ回路素子の製造時において、タグ特性値データにばらつきが生じていたとしても、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。この結果、全無線タグ回路素子にて一律のタグ特性値データにて通信を行っていた従来技術のようなエネルギの無駄や通信上の悪影響の発生を防止できる。
【0035】
第14の発明は、上記第13発明において、前記送信制御手段は、前記タグ特性値情報に合致するように、前記情報送信手段からの送信出力の大きさを制御することを特徴とする。
【0036】
これにより、各無線タグ回路素子ごとに送信出力の大きさを制御して最適化し、最適な通信態様を実現することができる。
【0037】
第15の発明は、上記第13又は第14発明において、前記送信制御手段は、前記タグ特性値情報に合致するように、前記情報送信手段における送信時間の長さを制御することを特徴とする。
【0038】
これにより、各無線タグ回路素子ごとに送信時間の長さを制御して最適化し、最適な通信態様を実現することができる。
【0039】
第16の発明は、上記第14又は第15発明において、前記タグ特性値情報に対応する前記送信出力の大きさ又は前記送信時間の長さが、予め定められた許容範囲内にあるかどうかを判定する判定手段を有することを特徴とする。
【0040】
これにより、送信出力の大きさや送信時間の長さが許容範囲外にある場合には送信を行わない等の方策が可能となり、装置の健全性や無線タグの信頼性を確保することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、記録手段に各無線タグ回路素子それぞれのタグ特性値情報を記録することにより、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができるので、エネルギの無駄や通信上の悪影響の発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0043】
図1は、本実施形態の無線タグ情報通信装置が適用される無線タグ生成システムを表すシステム構成図である。
【0044】
図1に示すこの無線タグ生成システム1において、本実施形態による無線タグ情報通信装置2は、有線あるいは無線による通信回線3を介してルートサーバ4、端末5、汎用コンピュータ6、及び複数の情報サーバ7に接続されている。
【0045】
図2は、上記無線タグ情報通信装置2の詳細構造を表す概念的構成図である。
【0046】
図2において、無線タグ情報通信装置2の装置本体(装置側筐体)8には、凹所としてのカートリッジホルダ部(図示せず)が設けられ、このホルダ部に、カートリッジ(無線タグ回路素子カートリッジ、無線タグ回路素子収容体)100が着脱可能に取り付けられている。
【0047】
装置本体8は、第2ロール104から繰り出されるカバーフィルム103に所定の印字(印刷)を行う印字ヘッド(サーマルヘッド)10と、カバーフィルム103への印字が終了したインクリボン105を駆動するリボン巻取りローラ駆動軸11と、カバーフィルム103と第1ロール102から繰り出される基材テープ(タグテープ)101とを貼り合わせつつ印字済タグラベル用テープ110としてカートリッジ100から繰り出すための圧着ローラ駆動軸12と、基材テープ101に備えられる無線タグ回路素子To(詳細は後述)との間でUHF帯等の高周波を用いて無線通信により信号の送受を行うアンテナ(装置側アンテナ)14と、カートリッジ100に備えられる無線タグ回路素子(記録手段、第1無線タグ回路素子)TAとの間で上記同様に無線通信により信号の送受を行うカートリッジアンテナ19と、上記印字済タグラベル用テープ110を所定のタイミングで所定の長さに切断しラベル状の無線タグラベルT(詳細は後述)を生成するカッタ15と、無線タグラベルTを搬出口16へと搬送し送出する送出ローラ17と、上記搬出口16における無線タグラベルTの有無を検出するセンサ18と、それらを収納するように外郭を構成し、カートリッジ100を着脱可能に嵌合させる上記カートリッジホルダ部及び上記搬出口16を備える筐体9とを有する。
【0048】
アンテナ14は、一方側(この例では図2の紙面に向かって手前側)に指向性を備えた指向性アンテナ(この例ではいわゆるパッチアンテナ)で構成されるとともに上記第1ロール102の軸方向(図2の紙面に向かって奥側)近傍に配置されており、第1ロール102の基材テープ101の送り出し部分近傍領域Xと通信可能となるように配置されている。
【0049】
一方、装置本体8はまた、上記アンテナ14,カートリッジアンテナ19を介し上記無線タグ回路素子To,TAへアクセス(書き込み又は読み取り)を行うための高周波回路21と、無線タグ回路素子To,TAから読み出された信号を処理するための信号処理回路(アクセス情報生成手段)22と、前述したリボン巻取りローラ駆動軸11、圧着ローラ駆動軸12を駆動するカートリッジ用モータ23と、このカートリッジ用モータ23の駆動を制御するカートリッジ駆動回路24と、上記印字ヘッド10への通電を制御する印刷駆動回路25と、上記カッタ15を駆動して切断動作を行わせるソレノイド26と、そのソレノイド26を制御するソレノイド駆動回路27と、上記送出ローラ17を駆動する送出ローラ用モータ28と、上記高周波回路21、信号処理回路22、カートリッジ駆動回路24、印刷駆動回路25、ソレノイド駆動回路27、送出ローラ駆動回路29等を介し、無線タグ情報通信装置2全体の動作を制御するための制御回路(送信制御手段)30とを有する。
【0050】
制御回路30は、いわゆるマイクロコンピュータであり、詳細な図示を省略するが、中央演算処理装置であるCPU、ROM、及びRAM等から構成され、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うようになっている。またこの制御回路30は、入出力インターフェイス31を介し例えば通信回線に接続され、この通信回線に接続された前述のルートサーバ4、他の端末5、汎用コンピュータ6、及び情報サーバ7等との間で情報のやりとりが可能となっている。
【0051】
図3は、上記カートリッジ100の詳細構造を説明するための説明図である。
【0052】
この図3において、カートリッジ100は、筐体100Aと、この筐体100A内に配置され帯状の上記基材テープ101が巻回された上記第1ロール102と、上記基材テープ101と略同じ幅である透明な上記カバーフィルム103が巻回された上記第2ロール104と、上記インクリボン105(熱転写リボン、但しカバーフィルムが感熱テープで構成される場合は不要)を繰り出すリボン供給側ロール111と、印字後のリボン105を巻取るリボン巻取りローラ106と、上記基材テープ101と上記カバーフィルム103とを押圧し接着させ上記印字済タグラベル用テープとしつつ矢印Aで示す方向にテープ送りをする(=テープ送りローラとしても機能する)圧着ローラ(貼り合わせ手段)107と、上記筐体100Aの外周面における前記装置本体8側のカートリッジアンテナ19とほぼ向かい合う位置に設けられた無線タグ回路素子TAとを有する。
【0053】
第1ロール102は、リール部材102aの周りに、長手方向に複数の無線タグ回路素子Toが所定の等間隔で順次配設された上記基材テープ101を巻回している。
【0054】
基材テープ101はこの例では4層構造となっており(図3中部分拡大図参照)、内側に巻かれる側(図3中右側)よりその反対側(図3中左側)へ向かって、適宜の粘着材からなる粘着層101a、PET(ポリエチレンテレフタラート)等から成る色付きのベースフィルム101b、適宜の粘着材からなる粘着層101c、剥離紙101dの順序で積層され構成されている。
【0055】
ベースフィルム101bの裏側(図3中左側)には、情報の送受信を行うアンテナ(タグ側アンテナ)152が一体的に設けられており、これに接続するように情報を更新可能に(書き換え可能rewritableに)記憶するIC回路部151が形成され、これらによって無線タグ回路素子Toが構成されている(無線タグ回路素子TAも同様)。
【0056】
ベースフィルム101bの表側(図3中右側)には、後にカバーフィルム103を接着するための上記粘着層101aが形成され、またベースフィルム101bの裏側(図3中左側)には、無線タグ回路素子Toを内包するように設けた上記粘着層101cによって上記剥離紙101dがベースフィルム101bに接着されている。なお、この剥離紙101dは、最終的にラベル状に完成した無線タグラベルTが所定の商品等に貼り付けられる際に、これを剥がすことで粘着層101cにより当該商品等に接着できるようにしたものである。
【0057】
第2ロール104は、リール部材104aの周りに上記カバーフィルム103を巻回している。第2ロール104より繰り出されるカバーフィルム103は、その裏面側(すなわち上記基材テープ101と接着される側)に配置された上記リボン供給側ロール111及び上記リボン巻取りローラ106で駆動されるリボン105が、上記印字ヘッド10に押圧されることで当該カバーフィルム103の裏面に当接させられるようになっている。
【0058】
リボン巻取りローラ106及び圧着ローラ107は、それぞれカートリッジ100外に設けた例えばパルスモータである上記カートリッジ用モータ23(前述の図2参照)の駆動力が上記リボン巻取りローラ駆動軸11及び上記圧着ローラ駆動軸12に伝達されることによって回転駆動される。
【0059】
無線タグ回路素子TAには、基材テープ101に備えられる複数の無線タグ回路素子Toのそれぞれについて各無線タグ回路素子Toの特性値情報(ここでは最適アクセスパワー(送信出力)値)が記憶されており、制御回路30がこの特性値情報を読み込み前記高周波回路21を制御することにより、各無線タグ回路素子Toごとに最適な通信態様(最適アクセスパワー)でアクセスする(書き込み又は読み取りを行う)ことができるようになっている(詳細は後述)。
【0060】
上記構成のカートリッジ100において、上記第1ロール102より繰り出された基材テープ101は、圧着ローラ107へと供給される。一方、第2ロール104より繰り出されるカバーフィルム103は、その裏面側(すなわち上記基材テープ101と接着される側)に配置されたリボン供給側ロール111及びリボン巻取りローラ106で駆動されるインクリボン105が上記印字ヘッド10に押圧されて当該カバーフィルム103の裏面に当接させられる。
【0061】
そして、カートリッジ100が上記装置本体8のカートリッジホルダ部に装着されロールホルダ(図示せず)が離反位置から当接位置に移動されると、カバーフィルム103及びインクリボン105が印字ヘッド10とプラテンローラ108との間に狭持されるとともに、基材テープ101及びカバーフィルム103が圧着ローラ107とサブローラ109との間に狭持される。そして、カートリッジ用モータ23の駆動力によってリボン巻取りローラ106及び圧着ローラ107が矢印B及び矢印Dで示す方向にそれぞれ同期して回転駆動される。このとき、前述の圧着ローラ駆動軸12と上記サブローラ109及びプラテンローラ108はギヤ(図示せず)にて連結されており、圧着ローラ駆動軸12の駆動に伴い圧着ローラ107、サブローラ109、及びプラテンローラ108が回転し、第1ロール102から基材テープ101が繰り出され、上述のように圧着ローラ107へ供給される。一方、第2ロール104からはカバーフィルム103が繰り出されるとともに、上記印刷駆動回路25により印字ヘッド10の複数の発熱素子が通電される。この結果、カバーフィルム103の裏面に印字R(後述の図7参照)が印刷される。そして、上記基材テープ101と上記印刷が終了したカバーフィルム103とが上記圧着ローラ107及びサブローラ109により接着されて一体化され、印字済タグラベル用テープとして形成され、カートリッジ100外へと搬出される。なお、カバーフィルム103への印字が終了したインクリボン105は、リボン巻取りローラ駆動軸11の駆動によりリボン巻取りローラ106に巻取られる。また、第1ロール102の繰り出し近傍にはガイドローラ120が設けられており、第1ロール102の残量により外径が変化しても装置側のアンテナ14と無線タグラベルTの位置関係が所定の範囲となるように規制して、無線タグ回路素子Toとの通信条件を一定に保つようになっている。
【0062】
図4は、上記高周波回路21の詳細機能を表す機能ブロック図である。この図4において、高周波回路21は、制御回路30により切り替えられるアンテナスイッチ(切替)回路341と、このアンテナスイッチ回路341を経てアンテナ14,19を介し無線タグ回路素子To,TAに対して信号を送信する送信部(情報送信手段)32と、アンテナ14,19により受信された無線タグ回路素子To,TAからの反射波を入力する受信部33と、送受分離器34とから構成される。
【0063】
アンテナスイッチ回路341は、周知の高周波用FETやダイオードを用いたスイッチ回路であり、制御回路30からの選択信号によりアンテナ14,19のいずれかを送受分離器34に接続するものである。
【0064】
送信部32は、無線タグ回路素子To,TAのIC回路部151の無線タグ情報にアクセスする(書き込み又は読み取りを行う)ための搬送波を発生させる水晶振動子35、PLL(Phase
Locked Loop)36、及びVCO(Voltage Controlled Oscillator)37と、上記信号処理回路22から供給される信号に基づいて上記発生させられた搬送波を変調(この例では信号処理回路22からの「TX_ASK」信号に基づく振幅変調)する送信乗算回路38(但し振幅変調の場合は増幅率可変アンプ等を用いてもよい)と、その送信乗算回路38により変調された変調波(無線タグ情報)を、制御回路30からの「TX_PWR」信号によって増幅率を決定し増幅する可変送信アンプ39とを備えている。そして、上記発生される搬送波は、好適にはUHF帯の周波数を用いており、上記送信アンプ39の出力は、送受分離器34を介してアンテナスイッチ回路341を経てアンテナ14,19のいずれかに伝達されて無線タグ回路素子To,TAのIC回路部151に供給される。なお、無線タグ情報は上記のように変調した信号に限られず、単なる搬送波のみの場合もある。
【0065】
受信部33は、アンテナ14,19により受信された無線タグ回路素子To,TAからの反射波と上記発生させられた搬送波とを掛け合わせる受信第1乗算回路40と、その受信第1乗算回路40の出力から必要な帯域の信号のみを取り出すための第1バンドパスフィルタ41と、この第1バンドパスフィルタ41の出力を増幅して第1リミッタ42に供給する受信第1アンプ43と、上記アンテナ14,19により受信された無線タグ回路素子To,TAからの反射波と上記発生された後に位相が90°遅れた搬送波とを掛け合わせる受信第2乗算回路44と、その受信第2乗算回路44の出力から必要な帯域の信号のみを取り出すための第2バンドパスフィルタ45と、この第2バンドパスフィルタ45の出力を入力するとともに増幅して第2リミッタ46に供給する受信第2アンプ47とを備えている。そして、上記第1リミッタ42から出力される信号「RXS−I」及び第2リミッタ46から出力される信号「RXS−Q」は、上記信号処理回路22に入力されて処理される。
【0066】
また、受信第1アンプ43及び受信第2アンプ47の出力は、RSSI(Received Signal Strength Indicator)回路48にも入力され、それらの信号の強度を示す信号「RSSI」が信号処理回路22に入力されるようになっている。このようにして、本実施形態の無線タグ情報通信装置2では、I−Q直交復調によって無線タグ回路素子Toからの反射波の復調が行われる。
【0067】
なお、上記では特に説明しなかったが、本実施形態においては、アンテナスイッチ回路341がカートリッジアンテナ19側に切り替えられたときの通信(カートリッジアンテナ19と無線タグ回路素子TAとの通信)と、アンテナスイッチ回路341がアンテナ14側に切り替えられたときの通信(アンテナ14と無線タグ回路素子Toとの通信)とが相互に混信するのを防ぐために、アンテナスイッチ回路341の切り替え位置に応じて通信プロトコルが変更されるように制御する。これにより、混信することなく所望の無線タグ回路素子にアクセスできるようになっている。なお、プロトコルを変更せずに、アンテナスイッチ回路341の切り替え位置に応じて無線タグ回路素子に対するアクセス周波数を(例えば13MHzと950MHzといったように)変更するようにしてもよい。
【0068】
図5は、上記無線タグ回路素子Toの機能的構成を表す機能ブロック図である。この図5において、無線タグ回路素子Toは、無線タグ情報通信装置2側のアンテナ14とUHF帯等の高周波を用いて非接触で信号の送受信を行う上記アンテナ152と、このアンテナ152に接続された上記IC回路部151とを有している。
【0069】
IC回路部151は、アンテナ152により受信された搬送波を整流する整流部153と、この整流部153により整流された搬送波のエネルギを蓄積し駆動電源とするための電源部154と、上記アンテナ152により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部155に供給するクロック抽出部156と、所定の情報信号を記憶し得るメモリ部157と、上記アンテナ152に接続された変復調部158と、上記整流部153、クロック抽出部156、及び変復調部158等を介して上記無線タグ回路素子Toの作動を制御するための上記制御部155とを備えている。
【0070】
変復調部158は、アンテナ152により受信された上記無線タグ情報通信装置2のアンテナ14からの通信信号の復調を行うと共に、上記制御部155からの応答信号に基づき、アンテナ152より受信された搬送波を変調反射する。
【0071】
制御部155は、上記変復調部158により復調された受信信号を解釈し、上記メモリ部157において記憶された情報信号に基づいて返信信号を生成し、上記変復調部158により返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0072】
なお、詳細な図示を省略するが、カートリッジ100に設けられた無線タグ回路素子TAについても、上記無線タグ回路素子Toと同様の構造であって、IC回路部151(図示せず)及びアンテナ152(図示せず)等が備えられている。
【0073】
図6(a)及び図6(b)は、上述のようにして無線タグ回路素子Toの情報書き込み及び印字済タグラベル用テープ110の切断が完了し形成された無線タグラベルTの外観の一例を表す図であり、図6(a)は上面図、図6(b)は下面図である。また図7は、図6中VII−VII′断面による横断面図である。
【0074】
これら図6(a)、図6(b)、及び図7において、無線タグラベルTは、図3に示した4層構造にカバーフィルム103が加わった5層構造となっており、カバーフィルム103側(図7中上側)よりその反対側(図7中下側)へ向かって、カバーフィルム103、粘着層101a、ベースフィルム101b、粘着層101c、剥離紙101dで5層を構成している。そして、前述のようにベースフィルム101bの裏側に設けられたアンテナ152を含む無線タグ回路素子Toが粘着層101c内に備えられるとともに、カバーフィルム103の裏面に印字R(この例では無線タグラベルTの種類を示す「RF−ID」の文字)が印刷されている。
【0075】
図8は、上述したような無線タグ情報通信装置2による無線タグ回路素子ToのIC回路部151の無線タグ情報へのアクセス(書き込み又は読み取り)に際して、上記した端末5又は汎用コンピュータ6に表示される画面の一例を表す図である。
【0076】
図8において、この例では、無線タグ回路素子Toに対応して印刷された印字文字R、その無線タグ回路素子Toに固有のIDであるアクセス(書き込み又は読み取り)ID、上記情報サーバ7に記憶された物品情報のアドレス、及び上記ルートサーバ4におけるそれらの対応情報の格納先アドレス等が前記端末5又は汎用コンピュータ6に表示可能となっている。そして、その端末5又は汎用コンピュータ6の操作により無線タグ情報通信装置2が作動されて、カバーフィルム103に上記印字文字Rが印刷されると共に、後述するようにIC回路部151に上記書き込みID及び物品情報等の情報が書き込まれる(又はIC回路部151に予め記憶された物品情報等の無線タグ情報が読みとられる)。
【0077】
上記のような書き込み(又は読み取り)の際、生成された無線タグラベルTのIDとその無線タグラベルTのIC回路部151から読みとられた情報(又はIC回路部151に書き込まれた情報)との対応関係は、前述のルートサーバ4に記憶され、必要に応じて参照できるようになっている。
【0078】
ここで、本実施形態の無線タグ情報通信装置2の最も大きな特徴は、制御回路30が無線タグ回路素子TAに記憶された各無線タグ回路素子Toの特性値情報(最適アクセスパワー値)を読み込み高周波回路21を制御することにより、各無線タグ回路素子Toに対して最適な通信態様(最適アクセスパワー)でアクセスできるようにしたことにある。以下、この詳細について図9を用いて説明する。
【0079】
図9は、上述した最適通信態様による各無線タグ回路素子Toへのアクセス、すなわち、無線タグ回路素子TAに記憶された各無線タグ回路素子Toの特性値情報(最適アクセスパワー値)を読み込み、最適な通信態様となるように高周波回路21を制御した上で無線タグ回路素子Toへのアクセスをする際に、制御回路30によって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【0080】
この図9において、無線タグ情報通信装置2の書き込み(又は読み取り)操作が行われるとこのフローが開始される。まずステップS110において、タグアクセスをカートリッジ側に切替える。具体的には、アンテナスイッチ回路341に選択信号を出力し、カートリッジアンテナ19が送受分離器34に接続されるようにアンテナスイッチ回路341を切替える。
【0081】
次のステップS120では、無線タグ回路素子TAのメモリ部157(図示せず)内における0番地のアドレスに記憶された残数Rを読み込み、図示しないメモリに保存する。なお、この0番地のアドレスに記憶された残数Rは、基材テープ101における書き込み(又は読み取り)が終了していない無線タグ回路素子Toの残数を示す値である(詳細は後述)。また、上記メモリは制御回路30が有する内部メモリでもよいし、制御回路30の外部に設けた外部メモリであってもよい。
【0082】
次のステップS130では、無線タグ回路素子TAのメモリ部157(図示せず)内における(100−R+1)番地のアドレスに記憶されたアクセスパワー値Pを読み込み、メモリ(図示せず)に保存する。なお、この(100−R+1)番地のアドレスに記憶されたアクセスパワー値Pは、基材テープ101における各無線タグ回路素子Toのアンテナ152の通信感度に応じて高周波回路21の送信部32が出力すべき最適な出力電力量を示す値である(詳細は後述)。また、上述したアクセスパワー値Pが記憶されている番地は、最初にカートリッジ100に収納されている無線タグ回路素子Toが100個であるので(100−R+1)のように表されるのである。収納される無線タグ回路素子Toの個数に応じて適宜変更されるものである。
【0083】
次のステップS140では、タグアクセスをテープ側に切替える。具体的には、アンテナスイッチ回路341に選択信号を出力し、アンテナ14が送受分離器34に接続されるようにアンテナスイッチ回路341を切替える。
【0084】
次のステップS150では、先のステップS130で読み込んだアクセスパワー値Pが最大許容値Pmax以上であるかどうかを判定する。なお、この最大許容値Pmaxは、通常の書き込み速度で書き込みを行う際における前記送信部32から無線タグ回路素子Toへの出力電力(単位時間当たりの出力エネルギー量)が、装置本体8側(例えば制御回路30、高周波回路21、及びアンテナ14等)の仕様によって定められる最大(定格)出力電力を超えない範囲における最大のアクセスパワー(出力電力量)値であり、例えば前記の図示しないメモリ等に予め記憶された値である。アクセスパワー値Pが最大許容値Pmax未満である場合には、判定が満たされずに次のステップS160に移る。
【0085】
ステップS160では、無線タグ回路素子Toに対する書き込み速度を通常速度に設定する。具体的には、制御回路30と信号処理回路22の動作クロックを通常書き込み速度に対応する周波数に設定する。さらに詳細にはシステムクロックの分周比を設定することにより周波数を設定する。その後、次のステップS180に移る。
【0086】
ステップS180では、高周波回路21の送信部32に備えられる前記可変送信アンプ39に「TX_PWR」信号を出力し、送信部32の無線タグ回路素子Toに対するアクセスパワー(出力電力量)値をステップS130で読み出したアクセスパワー値Pに設定する。その後、ステップS190に移る。
【0087】
一方、先のステップS150において、アクセスパワー値Pが最大許容値Pmax以上である場合には、判定が満たされてステップS170に移る。このステップS170では、無線タグ回路素子Toに対する書き込み速度を低速(上記の通常速度に比べ遅い速度)に設定する。具体的には、上記ステップS160と同様に、制御回路30と信号処理回路22の動作クロックを低速書き込み速度に対応する周波数に設定する。さらに詳細にはシステムクロックの分周比を大きく変更することにより、より低い周波数を設定する。このように書き込み速度を低速にすることにより、高周波回路21の送信部32から無線タグ回路素子Toへ出力されるトータルのエネルギーを増加させることができ、かつ上記した装置本体8側の仕様によって定まる最大出力電力以内に収めることが可能となるので、次のステップS180Aにおいて、高周波回路21の送信部32に備えられる前記可変送信アンプ39に「TX_PWR」信号を出力し、送信部32の無線タグ回路素子Toに対するアクセスパワー(出力電力量)値を上記最大出力パワー値Pmaxに設定する。ステップS180Aが終了したら、ステップS190に移る。
【0088】
ステップS190では、無線タグ情報を無線タグ回路素子Toに書き込むと共にカバーフィルム103に所定の印字を行い、印字済タグラベル用テープ110を無線タグ回路素子Toごとに切断して無線タグラベルTを作成する無線タグラベル作成処理を行う(詳細は後述の図12を参照)。
【0089】
次のステップS200では、先のステップS120で読み出した残数Rから1を減じ、その減じた値を再び0番地のアドレスに保存する。これにより、残数Rは基材テープ101における書き込み(又は読み取り)が終了していない無線タグ回路素子Toの残数を正確に示すことができるようになっている。以上で本フローチャートを終了する。
【0090】
図10は、無線タグ回路素子TAのメモリ部157(図示せず)の記憶内容を表す図であり、先に述べたように、基材テープ101に無線タグ回路素子Toが100個備えられている場合を示している。
【0091】
この図10において、0番地のアドレスに格納された数値は前記の図9のステップS120で読み出した残数Rに相当し、前述したように基材テープ101における書き込み(又は読み取り)が終了していない無線タグ回路素子Toの残数を示す値である。この0番地のアドレスに格納された残数Rは、前記の図9のステップS200で説明したように、無線タグラベルTの作成が1つ終了するごとに1ずつ減じられ更新して保存されるようになっており、これにより書き込み(又は読み取り)が終了していない無線タグ回路素子Toの残数を正確に示すことができるようになっている。なお、この図10では残数Rが100となっており、まだ無線タグラベルTが作成されていない状態が示されている。
【0092】
1番地から100番地のアドレスにそれぞれ格納された数値は前記の図9のステップS130で読み出したアクセスパワー値Pに相当し、前述したように基材テープ101における各無線タグ回路素子Toのアンテナ152の通信感度に応じ、高周波回路21の送信部32が出力すべき最適な出力電力量を示す値である。上記ステップS130で説明したように、制御回路30は(100−R+1)番地のアドレスに記憶されたアクセスパワー値Pを読み込むようになっており、例えば残数Rが100の場合には1番地に格納された50、その次は残数Rが99となっているので2番地に格納された65、というように1番地から順に読み込まれるようになっている。すなわち、1番地から100番地のアドレスには番地に該当する順番の無線タグ回路素子Toに関する最適アクセスパワー値が格納されている。なお、この図10ではアクセスパワー値Pの単位は例えばmW(ミリワット)である。たとえば最初に作成される無線タグ回路素子ToのアクセスパワーPはアドレス1より50であるので出力電力は50mWに設定され、2つ目に作成されるタグに対しては65mWに設定されるのである。
【0093】
図11(a)及び図11(b)は、それぞれ、送信部32から無線タグ回路素子Toへの出力信号の違いを表す説明図である。図中、縦軸は出力電力、横軸は時間を示しており、これらの積に相当する斜線部の面積は出力エネルギーに対応する。
【0094】
図11(a)は、上記ステップS150における判定が満たされずステップS160を経てステップS180でアクセスパワーをステップS130で読み出したアクセスパワー値Pに設定するときの例であり、上段は出力電力が50mWに設定された場合、下段は65mWに設定された場合を示している。
【0095】
図11(b)は、上記ステップS150における判定が満たされずステップS160を経てステップS180でアクセスパワーをステップS130で読み出したアクセスパワー値Pに設定するとき(上段、書き込み速度が通常速度)と、上記ステップS150における判定が満たされてステップS170を経てステップS180AでアクセスパワーをステップS130の読み出し結果に関係なく最大値Pmaxに設定するとき(下段、書き込み速度が低速)とを示している。
【0096】
図11(b)に示すように、書き込み速度を低速にすることにより、アクセスパワーPが同じである条件では通常速度に比べて(斜線面積が大きくなるので)出力エネルギーを増加させることができる。したがって、前記の図9のステップS150においてアクセスパワー値Pが最大許容値Pmaxを上回った場合に、通常書き込み速度であれば装置本体8側の仕様による制限により書き込み(又は読み取り)が不可能となるところを、書き込み速度を低速にすることで送信部32から無線タグ回路素子Toへの出力電力を装置本体8側の仕様によって定まる最大出力電力Pmax以内に収め、無線タグ回路素子Toへの書き込み(又は読み取り)を可能とすることができる。
【0097】
本実施形態の例でいえば、例えば最大許容値Pmaxが75であれば図10に示したように3つめに作成されるタグのアクセスパワーは85であり最大許容値Pmaxを超えているので、図11(b)に示すように出力電力はPmaxに設定され低速でのタグアクセスとなる。
【0098】
なお、以上においては、書き込み速度を低速にすることでアクセスパワー値Pが最大許容値Pmaxを上回った場合でも書き込み(又は読み取り)を可能とするようにしたが、これに限られず、プリチャージ時間を増大するようにしてもよい。このプリチャージ時間とは、無線タグ回路素子Toがエネルギを蓄積して駆動電源とできるように、無線タグ回路素子Toに対して無線タグアクセス情報の信号を出力する際において最初に出力される変調されていない搬送波の出力時間のことである(図11参照)。このプリチャージ時間を増大することにより、書き込み速度を低速にするときと同様の出力電力の低減効果を得ることができ、その結果、無線タグ回路素子Toへの書き込み(又は読み取り)をすることが可能となる。
【0099】
図12は、前記の図9のステップS190の無線タグラベル作成処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【0100】
まずステップS10において、上記端末5又は汎用コンピュータ6を介して入力操作された、アンテナ14より無線タグ回路素子ToのIC回路部151へ書き込むべき無線タグ情報と、印字ヘッド10により無線タグラベルTへ印字すべき印字情報とが、通信回線3及び入出力インターフェイス31を介し読み込まれる。
【0101】
その後、ステップS15に移り、無線タグ回路素子Toからの応答がなく、リトライ(再試行)を行った回数をカウントする変数N、及び通信良好か不良かを表すフラグFを0に初期化する。
【0102】
次に、ステップS20において、カートリッジ駆動回路24に制御信号を出力し、カートリッジ用モータ23の駆動力によってリボン巻取りローラ106及び圧着ローラ107を回転駆動させる。これにより、第1ロール102から基材テープ101が繰り出され圧着ローラ107へ供給されるとともに、第2ロール104からはカバーフィルム103が繰り出される。さらに送出ローラ駆動回路29を介して送出ローラ用モータ28に制御信号を出力し、送出ローラ17を回転駆動させる。以上の結果、前述したように基材テープ101と(後述のように印刷が終了した)カバーフィルム103とが上記圧着ローラ107及びサブローラ109により接着されて一体化され、印字済タグラベル用テープ110としてカートリッジ体100外方向へと搬送されていくように、各テープ101,103,110が駆動開始される。
【0103】
その後、ステップS30において、無線タグ情報を無線タグ回路素子Toに送信し書き込む書き込み処理を行う(詳細は後述の図13を参照)。
【0104】
そして、ステップS35Aに移り、印刷駆動回路25に制御信号を出力し、印字ヘッド10を通電して、カバーフィルム103のうち所定の領域(例えば基材テープ101に所定ピッチで等間隔で配置された無線タグ回路素子Toの裏面に貼り合わせることとなる領域)に、ステップS10で読み込んだ文字、記号、バーコード等の印字Rを印刷させる。ステップS35Aが終了すると、ステップS39に移る。
【0105】
ステップS39では、フラグF=0であるかどうかが判定される。書き込み処理が正常に完了していればF=0のまま(後述の図13に示すフローのステップS38参照)であるので、この判定が満たされ、ステップS40に移る。一方、何らかの理由で書き込み処理が正常に完了していない場合はF=1とされている(後述の図13に示すフローのステップS38参照)のでこの判定が満たされず、ステップS45に移り、印刷駆動回路25に制御信号を出力して印字ヘッド10を通電を中止し印字を停止させる。このように印字中途停止によって当該無線タグ回路素子Toが正常品でないことを明らかに表示するようにした後、後述のステップS60へ移る。
【0106】
ステップS40では、上記ステップS30で無線タグ回路素子Toへ書き込んだ無線タグ情報と、これに対応して印字ヘッド10により印字された印字情報との組み合わせが、入出力インターフェイス31及び通信回線3を介し端末5又は汎用コンピュータ6を介して出力され、情報サーバ7やルートサーバ4に記憶される。なお、この記憶データは必要に応じて端末5又は汎用コンピュータ6より参照可能に例えばデータベース内に格納保持される。
【0107】
その後、ステップS50で、カバーフィルム103のうちこの時点で処理対象としている無線タグ回路素子Toに対応する領域への印字がすべて完了しているかどうかを確認した後、ステップS60へ移る。
【0108】
ステップS60では、印字済タグラベル用テープ110がカッタ15で切断されるべき所定位置にまで搬送されたかどうかを判定する。具体的には、例えば、対象とする無線タグ回路素子To及びこれに対応するカバーフィルム103の印字領域のすべてがカッタ15を所定の長さ(余白量)分だけ越えたかどうかを、基材テープ101(詳細には例えば剥離紙101d、あるいはカバーフィルム103等でもよい)に対し各無線タグ回路素子Toに対応して設けた適宜の識別用マークをカートリッジ100外(例えばカッタ15のさらに搬送方向下流側)に設けた公知のテープセンサで検出することにより行えば足りる。またこのような検出を行わず、印字Rの印字文字長に所定の余白領域分を加えた長さが無線タグ回路素子Toの全長を超えているかどうかを印字情報に基づき判定する(超えていれば、少なくともカバーフィルム103の印字が完了した段階でその余白領域外をカッタ15で切断するようにすれば、貼り合わせられる無線タグ回路素子Toを切断することは回避できるため)ことで代用してもよい。
【0109】
上記ステップS60の判定が満たされたら、ステップS70に移る。ステップS70では、カートリッジ駆動回路24及び送出ローラ駆動回路29に制御信号を出力し、カートリッジ用モータ23及び送出ローラ用モータ28の駆動を停止して、リボン巻取りローラ106、圧着ローラ107、送出ローラ17の回転を停止する。これにより、第1ロール102からの基材テープ101の繰り出し、第2ロール104からのカバーフィルム103の繰り出し、及び送出ローラ17による印字済タグラベル用テープ110の搬送が停止する。
【0110】
次のステップS80では、ソレノイド駆動回路27に制御信号を出力してソレノイド26を駆動し、カッタ15によって印字済タグラベル用テープ110の切断を行う。前述したように、この時点で、例えば処理対象の無線タグ回路素子To及びこれに対応するカバーフィルム103の印字領域のすべてがカッタ15を十分に越えており、このカッタ15の切断によって、無線タグ回路素子Toの無線タグ情報が読み取られかつこれに対応する所定の印字が行われたラベル状の無線タグラベルTが生成される。
【0111】
その後、ステップS90に移り、送出ローラ用駆動回路29に制御信号を出力し、送出ローラ用モータ28の駆動を再開して、送出ローラ17を回転させる。これにより、送出ローラ17による搬送が再開されて上記ステップS150でラベル状に生成された無線タグラベルTが搬出口16へ向かって搬送され、搬出口16から装置2外へと排出される。
【0112】
そして最後に、ステップS100で、カートリッジ100内の通信範囲(前述の領域X)に残存する無線タグラベル回路素子Toに備えられたIC回路部151の全無線タグ情報を消去(初期化)する。詳細には、無線タグ回路素子Toのメモリ部157に記憶された情報を初期化する「Erase」コマンドを信号処理回路22に出力する。これに基づき信号処理回路22で無線タグ情報としての「Erase」信号が生成されて高周波回路21の送信部32及びアンテナ14を介し通信範囲(上記領域X)内の全無線タグ回路素子Toに送信され、そのメモリ部157を初期化する。
【0113】
図13は、上記ステップS30の詳細手順を表すフローチャートである。
【0114】
図13において、図12における前述のステップS20が終了すると、まずステップS31に移り、所望のデータをメモリ部157に書き込む「Program」コマンドを信号処理回路22に出力する。これに基づき信号処理回路22で本来書き込みたいID情報を含む無線タグ情報としての「Program」信号が生成されて高周波回路21の送信部32及びアンテナ14を介して通信可能エリア内(前述の領域X内)にあるすべての無線タグ回路素子Toに送信され、そのメモリ部157に情報が書き込まれる。
【0115】
その後、ステップS32において、メモリ部157の内容を確認する「Verify」コマンドを信号処理回路22に出力する。これに基づき信号処理回路22で無線タグ情報としての「Verify」信号が生成されて高周波回路21の送信部32及びアンテナ14を介して上記通信可能エリア内の全無線タグ回路素子Toに送信され、返信を促す。
【0116】
そして、ステップS33に移り、上記「Verify」信号に対応して上記通信可能エリア内の全無線タグ回路素子Toから送信(返信)されたリプライ(応答)信号をアンテナ14を介して受信し、高周波回路21の受信部33及び信号処理回路22を介し取り込む。
【0117】
次に、ステップS34において、上記ステップS33の受信結果に基づき、上記通信エリア内の全無線タグ回路素子Toのうち、少なくとも1つから何らかの有効なリプライ信号(メモリ部157に正常に記憶されたことを表す信号)が受信されたかどうかを判定する。
【0118】
判定が満たされたら、上記領域X内の少なくとも1つの無線タグ回路素子Toには正しく書き込まれており、領域X内の全無線タグ回路素子Toへの書き込み失敗は回避されていることから、このルーチンを終了する。判定が満たされない場合はステップS35に移ってNに1を加え、さらにステップS36においてN=5かどうかが判定される。N≦4の場合は判定が満たされずステップS31に戻り同様の手順を繰り返す。N=5の場合は前述したステップS37に移る。ステップS37では、エラー表示信号を入出力インターフェイス31及び通信回線3を介し上記端末5又は汎用コンピュータ6へ出力し、対応する書き込み失敗(エラー)表示を行わせた後、ステップS38でフラグF=1としてこのルーチンを終了する。このように、情報書き込みが不調でも5回までは再試行が行われることにより、書き込み信頼性の確保上、万全を期すことができる。
【0119】
なお、以上は、最適アクセスパワーを設定した後に無線タグ回路素子Toに対し無線タグ情報を送信しIC回路部151に書き込みを行う場合を説明したが、これに限られず、最適アクセスパワーを設定した後に予め所定の無線タグ情報(タグ識別情報等)が書き換え不可に記憶保持されている読み取り専用の無線タグ回路素子Toから無線タグ情報を読み取りながら、これに対応する印字を行って無線タグラベルTを作成する場合がある。
【0120】
この場合には、図12におけるステップS10において印字情報のみを読み込み、ステップS30で無線タグ情報の読み込み処理を行うようにすればよい(詳細は後述の図14参照)。その後ステップS40では印字情報とその読み込んだ無線タグ情報との組み合わせを保存する。
【0121】
図14は、上記無線タグ読み取り処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【0122】
この図14において、情報読み取り対象とする無線タグ回路素子Toがアンテナ14近傍に搬送されてきたら、ステップS101において、無線タグ回路素子Toに記憶された情報を読み出す「Scroll
All ID」コマンドを信号処理回路22に出力する。これに基づき信号処理回路22で無線タグ情報としての「Scroll All ID」信号が生成されて高周波回路21を介して読み取り対象の無線タグ回路素子Toに送信され、返信を促す。
【0123】
次に、ステップS102において、上記「Scroll All ID」信号に対応して読み取り対象の無線タグ回路素子Toから送信されたリプライ信号(タグID情報等を含む無線タグ情報)をアンテナ14を介して受信し、高周波回路21及び信号処理回路22を介し取り込む。
【0124】
次に、ステップS103において、上記ステップS102で受信したリプライ信号に誤りがないか否かを公知の誤り検出符号(CRC符号;Cyclic Redundancy Check等)を用いて判定する。
【0125】
判定が満たされない場合はステップS104に移ってNに1を加え、さらにステップS105においてN=5かどうかが判定される。N≦4の場合は判定が満たされずステップS101に戻り同様の手順を繰り返す。N=5の場合はステップS106に移り、エラー表示信号を入出力インターフェイス31及び通信回線3を介し上記端末5又は汎用コンピュータ6へ出力し、対応する読み取り失敗(エラー)表示を行わせた後、ステップS107でフラグF=1としてこのルーチンを終了する。このように、情報読み取りが不調でも5回までは再試行が行われることにより、読み取り信頼性の確保上、万全を期すことができる。
【0126】
ステップS103の判定が満たされた場合、読み取り対象とする無線タグ回路素子Toからの無線タグ情報の読み取りが完了し、このルーチンを終了する。
【0127】
以上において、図9中ステップS150は、請求項16記載のタグ特性値情報に合致する送信出力の大きさが予め定められた許容範囲内にあるかどうかを判定する判定手段を構成する。
【0128】
以上説明した本実施形態の無線タグ情報通信装置2において、無線タグ回路素子Toに対し無線タグ情報を書き込む際には、信号処理回路22及び高周波回路送信部32でその無線タグ回路素子Toに対応した無線タグ情報が生成された後、この無線タグ情報が、アンテナ14から基材テープ101上の当該無線タグ回路素子Toのアンテナ152に対し無線通信によって伝達され、さらにアンテナ152に接続されたIC回路部151へと書き込まれる。一方、無線タグ回路素子Toから無線タグ情報を読み込む際には、予め無線タグ回路素子Toに記憶された無線タグ情報をアンテナ14を介して受信し、高周波回路21及び信号処理回路22を介し制御回路30に取り込む。
【0129】
ここで、一般に無線タグ回路素子Toの製造時において、実際には、各無線タグ回路素子Toごとのアンテナ152の通信感度等のタグ特性値データは、本来の設計仕様値の前後にある程度のばらつきが生じる。ここで、このようなばらつきに関係なく全無線タグ回路素子Toに対し一律のタグ特性値データにてアクセス(書き込み又は読み取り)を行おうとすると、複数の無線タグ回路素子Toに対し順次連続的にアクセスを行う際、例えばアンテナ通信感度については、感度が低い無線タグ回路素子Toに対しても十分な通信を確保できるように、予めアンテナ14からのアクセスパワーを大きく設定しておかなければならなくなる。
【0130】
この結果、感度が低くない(良好な)それ以外の無線タグ回路素子Toに対しては必要以上の大きさのアクセスパワーとなってエネルギの無駄が生じたり、さらに無線タグ回路素子Toの許容出力範囲を超えた場合には、無線タグ回路素子Toで受信した電波が歪む、他の無線タグ回路素子Toへの通信干渉が出る、搬送波の強度が大きくなり反射波成分の識別が困難となる等、通信上好ましくない影響が生じる可能性があった。IC回路部のメモリ157のメモリ書込電圧、書込時間などのアクセス条件等他のタグ特性値データについても同様の問題が生じることとなる。
【0131】
そこで、本実施形態の無線タグ情報通信装置2においては、前述したようにカートリッジ100の筐体100Aに設けた無線タグ回路素子TAに、各無線タグ回路素子Toに最適なアクセスパワー値がそれぞれ記憶されている。そして、各無線タグ回路素子Toと無線タグ情報の送受信を行う際には、上記無線タグ回路素子TAに記憶されたアクセスパワー値を読み出し、そのアクセスパワーとなるように高周波回路21の送信部32を設定し、当該無線タグ回路素子Toに合致した通信態様(アクセスパワー)でアクセスを行う。これにより、無線タグ回路素子Toの製造時において、タグ特性値データにばらつきが生じていたとしても、各無線タグ回路素子Toごとにアクセスパワーを制御して最適な通信態様を実現することができる。この結果、上述したように全無線タグ回路素子Toにて一律のタグ特性値データにて通信を行う場合のようなエネルギの無駄や通信上の悪影響の発生を防止できる。
【0132】
なお、以上においては、無線タグ回路素子Toの特性値情報としてアクセスパワー値を用いて各無線タグ回路素子Toに最適な通信態様を実現するようにしたが、これに限られず、特性値情報として例えばプリチャージ時間を用いてもよい。この場合、予め無線タグ回路素子TAに各無線タグ回路素子Toに最適なプリチャージ時間を記憶させておき、読み出したプリチャージ時間となるように高周波回路21の送信部32を設定することで、上記アクセスパワー値を用いた場合と同様に各無線タグ回路素子Toに合致した通信態様でアクセスを行うことができる。
【0133】
また、上記実施形態は、上記以外にも、その趣旨と技術思想の範囲を逸脱しない範囲でさらに種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順次説明する。
【0134】
(1)カートリッジを用いない場合
図15は、カートリッジを用いない変形例による無線タグ情報通信装置2′の詳細構造を表す概念的構成図であり、上記実施形態の図2に相当する図である。図2と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。図15において、この変形例では、装置本体8に、上記搬出口16を備えた筐体9が設けられており、この筐体9に上記実施形態と同様のアンテナ14、19′が設けられている。
【0135】
アンテナ14は、上記実施形態と同様、一方側(この例では図15の紙面に向かって手前側)に指向性を備えた指向性アンテナ(パッチアンテナ)で構成されるとともに上記第1ロール102の軸方向(図15の紙面に向かって奥側)近傍に配置されており、第1ロール102の基材テープ101の送り出し部分近傍領域Xと通信可能となるように配置されている。結果として、アンテナ14は、搬出口16を介し筐体9の外部へ排出された無線タグ回路素子Toがその通信可能範囲外となるように構成されている。これにより、一旦搬出口16から筐体9外部へ出た無線タグ回路素子Toの無線タグ情報が初期化されたり、アンテナ14から別の情報がさらに書き込まれたりするのを確実に防止するようになっている。なお、この目的のために、搬出口16の周りは適宜のシールド手段が設けられている。
【0136】
カートリッジアンテナ19′は、カートリッジ100の筐体100Aに設けた無線タグ回路素子TAと向かい合うように配置された上記実施形態とは異なり、一方側(この例では図15の紙面に向かって手前側)に指向性を備えた指向性アンテナ(パッチアンテナ)で構成されるとともに、上記第1ロール102のリール部材102aの軸方向(図15の紙面に向かって奥側)近傍に配置されており、リール部材102a(例えばリール部材102aの一方側(この例では図15の紙面に向かって手前側))に設けられた無線タグ回路素子TAと通信可能となるように配置されている。
【0137】
また、上記のようにカートリッジ100が省略されカートリッジ100に設けられていた各部材が直接筐体9に設けられているのに対応し、この例では、圧着ローラ駆動軸12及びリボン巻取りローラ駆動軸11は、上記実施形態のカートリッジ駆動回路24により駆動制御されるカートリッジ用モータ23に相当する圧着ローラ駆動回路24′により駆動制御される圧着ローラ用モータ23′によって駆動されるようになっている。
【0138】
本変形例においても、無線タグ回路素子TAに記憶されたアクセスパワー値(又はプリチャージ時間)をカートリッジアンテナ19′を介して読み出し、そのアクセスパワー(又はプリチャージ時間)となるように高周波回路21の送信部32を設定し、当該無線タグ回路素子Toに合致した通信態様でアクセスを行うことができるという上記実施形態と同様の効果を得る。
【0139】
なお、カートリッジ100を用いる構成の上記実施形態では無線タグ回路素子TAをカートリッジ100の筐体100Aに設けるようにしたが、これに限られず、本変形例のように無線タグ回路素子TAをカートリッジ100内におけるリール部材102aに設けるようにしてもよい。この場合、前記カートリッジアンテナ19を本変形例におけるカートリッジアンテナ19′と同様に一方側(図2の紙面に向かって手前側)に指向性を備えた指向性アンテナ(パッチアンテナ)で構成すれば足りる。
【0140】
(2)トレイ型カートリッジを用いる場合
上記実施形態においては、カートリッジとして、長手方向に複数の無線タグ回路素子Toが順次形成された帯状の基材テープ101を巻き回す第1ロール102を備えたカートリッジ100を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、他のカートリッジの態様でもよい。
【0141】
図16は、そのような変形例を表す概念的斜視図である。
【0142】
この図16において、この変形例では、カートリッジとして略平箱状のトレイ部材91が設けられている。このトレイ部材91の中に、それぞれに1つの無線タグ回路素子Toが形成された平紙状の複数のラベル素材92を、平積み方向に積層して収納する。トレイ部材91の一側面(この例では図中奥側)に設けた取り出し口91Aより平紙状のラベル素材92を1枚ずつ引き出すことで、複数の無線タグ回路素子Toを順次取り出せるようになっている。トレイ部材91より取り出した無線タグ回路素子Toは、無線タグ情報通信装置2に備えられたアンテナ14の対向位置に設定され、読み出しが行われる。
【0143】
トレイ部材91の一側面(この例では図中左側)には無線タグ回路素子(第2無線タグ回路素子)TAが設けられている。この無線タグ回路素子TAは、トレイ部材91を無線タグ情報通信装置2の前記装置本体8に取り付けた際に、装置本体8に設けられたカートリッジアンテナ19とほぼ向かい合う位置となるように配設されている。
【0144】
本変形例においても、無線タグ回路素子TAに記憶されたアクセスパワー値(又はプリチャージ時間)をカートリッジアンテナ19を介して読み出し、そのアクセスパワー(又はプリチャージ時間)となるように高周波回路21の送信部32を設定し、当該無線タグ回路素子Toに合致した通信態様でアクセスを行うことができるという上記実施形態と同様の効果を得る。
【0145】
(3)貼り合わせを行わない場合
すなわち、特に図面を用いて説明はしないが、上記実施形態のように無線タグ回路素子Toを備えた基材テープ101とは別のカバーフィルム103に印字を行ってこれらを貼り合わせるのではなく、タグテープに備えられたカバーフィルムに印字を行ういわゆるノンラミネートタイプのカートリッジに本発明を適用してもよい。この場合、複数の無線タグ回路素子Toを感熱テープに設け、複数の発熱素子を有する印字ヘッドにより感熱テープの表面に印字を印刷するようにしてもよいし、上記実施形態のようなインクリボンを用いた印字としてもよい。
【0146】
本変形例においても、当該無線タグ回路素子Toに合致した通信態様でアクセスを行うことができるという上記実施形態と同様の効果を得る。
【0147】
なお、以上においては、各無線タグ回路素子Toの特性値情報を記録する記録手段として無線タグ回路素子を用いたが、例えばバーコード(図示せず)を用いるようにしてもよい。すなわち、バーコードに記録された前記ルートサーバ4における全無線タグ回路素子Toの特性値情報の格納先アドレス等を図示しないバーコードスキャナ(読み取り手段)で読み取り、制御回路30がその格納先アドレスから通信回線3及び入出力インターフェイス31を介し無線タグ回路素子Toの特性値情報(アクセスパワー値又はプリチャージ時間)を読み込んで、その通信態様となるように高周波回路21の送信部32を設定する。これにより、当該無線タグ回路素子Toに合致した通信態様でアクセスを行うことができる。なお、バーコードは、上記一実施形態においてはカートリッジ100の筐体100Aの外周面に、上記(2)の変形例においてはトレイ部材91の一側面に設けるようにすれば足りるが、例えば各無線タグ回路素子Toごとに対応づけて設けるようにしてもよい。この場合、例えば基材テープ101において、無線タグラベルTを所定の商品等に貼り付けるための粘着層101cを覆う剥離紙101dに各無線タグ回路素子Toごとにバーコードを形成すれば足りる。
【0148】
また、以上においては、無線タグ回路素子Toの特性値情報(アクセスパワー値又はプリチャージ時間)を無線タグ回路素子TAに記憶するようにしたが、これに限られず、特性値情報として、前述したIC回路部151のメモリ部157のメモリ書込電圧、書込時間などのアクセス条件等を記憶するようにしてもよい。この場合にも、この無線タグ回路素子TAに記憶されたそれらアクセス条件情報を読み出し、そのメモリ書込電圧、書込時間などのアクセス条件に対応するように高周波回路21の送信部32を設定することにより、当該無線タグ回路素子Toに合致した通信態様でアクセスを行うことができる。
【0149】
さらに、メモリ部157のメモリ容量の大小で所要エネルギが変化するため、メモリ容量に応じて書き込み時に必要な書き込み電力が変わる。この意味で、最適な所要電力となるように制御するためには「メモリ容量」も特性値情報に含まれ、これを無線タグ回路素子TAに記憶するようにしてもよい。
【0150】
さらに、以上においては、印刷動作に伴いカートリッジ100等の内部を移動中の基材テープ101(又は感熱テープ)に対して通信(書き込み又は読み取り)を行う例を示したが、これに限られず、基材テープ101等を所定位置で停止させて(さらに所定の搬送ガイドにて保持した状態で)上記通信を行うようにしてもよい。
【0151】
またさらに、以上で用いた「Scroll All ID」信号、「Erase」信号、「Verify」信号、「Program」信号とは、EPC globalが策定したAuto−ID仕様に準拠しているものとする。EPC globalは、流通コードの国際機関である国際EAN協会と、米国の流通コード機関であるUniformed Code Council(UCC)が共同で設立した非営利法人である。なお、他の規格に準拠した信号でも、同様の機能を果たすものであればよい。
【0152】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明の一実施形態の無線タグ情報通信装置が適用される無線タグ生成システムを表すシステム構成図である。
【図2】図1に示した無線タグ情報通信装置の詳細構造を表す概念的構成図である。
【図3】図2に示したカートリッジの詳細構造を説明するための説明図である。
【図4】図3に示した高周波回路の詳細機能を表す機能ブロック図である。
【図5】無線タグ回路素子Toの機能的構成を表す機能ブロック図である。
【図6】無線タグラベルTの外観の一例を表す上面図及び下面図である。
【図7】図6中VII−VII′断面による横断面図である。
【図8】無線タグ情報へのアクセスに際し、端末又は汎用コンピュータに表示される画面の一例を表す図である。
【図9】制御回路によって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【図10】無線タグ回路素子のメモリ部の記憶内容を表す図である
【図11】書き込みパワーを変化させた場合、あるいは、書き込み速度を変化させた場合における無線タグ回路素子に対する出力信号の違いを表す図である。
【図12】図9のステップS190の詳細手順を表すフローチャートである。
【図13】図12のステップS30の詳細手順を表すフローチャートである。
【図14】制御回路によって実行される無線タグ情報読み取り手順を表すフローチャートである。
【図15】カートリッジを用いない変形例による無線タグ情報通信装置の詳細構造を表す概念的構成図である。
【図16】カートリッジとして略平箱状のトレイ部材を用いた変形例によるそのトレイ部材の全体構造を表す概念的構成図である。
【符号の説明】
【0154】
2 無線タグ情報通信装置
2′ 無線タグ情報通信装置
8 装置本体(装置側筐体)
14 アンテナ(装置側アンテナ)
22 信号処理回路(アクセス情報生成手段)
30 制御回路(送信制御手段)
32 送信部(情報送信手段)
91 トレイ部材
100 カートリッジ(無線タグ回路素子収容体)
100A 筐体(カートリッジ側筐体)
101 基材テープ(タグテープ)
102a リール部材
151 IC回路部
152 アンテナ(タグ側アンテナ)
T 無線タグラベル
TA 無線タグ回路素子(記録手段、第1無線タグ回路素子、第2無線タグ回路素子)
To 無線タグ回路素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部より無線通信を介し無線タグ情報の読み取り又は書き込みを行える無線タグ回路素子を備えた無線タグ回路素子収容体及びこれを用いる無線タグ情報通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小型の無線タグとリーダ(読み取り装置)/ライタ(書き込み装置)との間で非接触で情報の読み取り/書き込みを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムが知られている。例えばラベル状の無線タグに備えられた無線タグ回路素子は、所定の無線タグ情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続されて情報の送受信を行うアンテナとを備えており、無線タグが汚れている場合や見えない位置に配置されている場合であっても、リーダ/ライタ側よりIC回路部の無線タグ情報に対してアクセス(情報の読み取り/書き込み)が可能であり、商品管理や検査工程等の様々な分野において実用が期待されている。
【0003】
例えば、このような無線タグ回路素子に対し情報の書き込みを行うライタ(プリンタ)としては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来技術では、所定間隔で長方形状のラベル片(RFIDラベル)が貼り付けられた帯状のタグテープ(台紙)がタグテープロール(供給軸)から繰り出され、搬送経路を搬送される際に、各ラベル片に内蔵された無線タグ回路素子のアンテナに対し、装置側で生成した所定の無線タグ情報が送信され、アンテナに接続されたIC回路部(ICチップ)に順次書き込まれる。ラベル片はその後搬送方向下流側に搬送され、印字手段(サーマルヘッド)によって、上記書き込まれた無線タグ情報に対応した印字情報がRFIDラベル表面に印字されて、無線タグラベルが完成するようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−159838号公報(段落番号0011〜0039、図1〜図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術には以下の課題が存在する。
【0006】
すなわち、無線タグ回路素子の製造時において、実際には、各無線タグ回路素子ごとの通信感度やIC回路部のメモリ書込電圧、書込時間などのアクセス条件等のタグ特性値データは、本来の設計仕様値の前後にある程度のばらつきが生じる。しかしながら、従来はこのようなばらつきに関係なく、全無線タグ回路素子に対し一律のタグ特性値データにて通信を行っていた。このため、複数の無線タグ回路素子に対し順次連続的に通信を行う際、例えば通信感度については、感度が低い無線タグ回路素子に対しても十分な通信品質を確保できるように、予め装置側アンテナからの送信出力を大きく設定しておかなければならなかった。
【0007】
この結果、感度が低くない、良好な無線タグ回路素子以外に対しては必要以上の大きさの送信出力となってエネルギの無駄が生じたり、さらに無線タグ回路素子の許容出力範囲を超えた場合には、無線タグ回路素子で受信した電波が歪む、他の無線タグ回路素子への通信干渉が出る、搬送波の強度が大きくなり反射波成分の識別が困難となる等、通信上好ましくない影響が生じる畏れがあった。IC回路部のメモリ書込電圧、書込時間などのアクセス条件等等他のタグ特性値データについても同様の問題があった。
【0008】
本発明の目的は、無線タグ回路素子の製造時のばらつきに対応し、各無線タグ回路素子ごとに最適な通信態様を実現し、エネルギの無駄や通信上の悪影響を防止できる無線タグ回路素子収容体及び無線タグ情報通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明は、タグ情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続され情報の送受信を行うタグ側アンテナとを備えた複数の無線タグ回路素子を収容する無線タグ回路素子収容体であって、前記複数の無線タグ回路素子のそれぞれに係わるタグ特性値情報を記録した記録手段を有することを特徴とする。
【0010】
本願第1発明においては、記録手段に、各無線タグ回路素子それぞれのタグ特性値情報を記録している。これにより、各無線タグ回路素子と情報の送受信を行う場合には、上記記録手段のタグ特性値情報を読み出して当該特性値情報に合致した態様で通信を行うことができる。したがって、無線タグ回路素子の製造時において、タグ特性値データにばらつきが生じていたとしても、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。この結果、全無線タグ回路素子にて一律のタグ特性値データにて通信を行っていた従来技術のようなエネルギの無駄や通信上の悪影響の発生を防止できる。
【0011】
第2の発明は、上記第1発明において、前記記録手段は、前記タグ特性値情報として、各無線タグ回路素子の前記タグ側アンテナの感度情報及び前記IC回路部のメモリ容量情報のうち少なくとも一方が記録されていることを特徴とする。
【0012】
記録手段に記録されたタグ側アンテナ感度情報やIC回路部のメモリ容量情報、さらにはIC回路部のメモリ書込電圧、書込時間などのアクセス条件等のタグ特性値情報を用いて各無線タグ回路素子ごとに最適な通信態様を実現し、全無線タグ回路素子にて一律のタグ特性値データにて通信を行っていた従来技術のようなエネルギの無駄や通信上の悪影響の発生を防止できる。
【0013】
第3の発明は、上記第1又は第2発明において、前記無線タグ回路素子をテープ長手方向に連続的に複数個配置したタグテープと、このタグテープをその外周側に巻回するリール部材と、それらタグテープ及びリール部材を内包するカートリッジ側筐体とを備えた、略箱形のカートリッジとして構成されていることを特徴とする。
【0014】
略箱型のカートリッジの筐体内に配置したリール部材に巻回したタグテープの無線タグ回路素子に対し、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。
【0015】
第4の発明は、上記第3発明において、前記記録手段は、前記カートリッジ側筐体又は前記リール部材に設けられたタグ特性値情報記憶用の第1無線タグ回路素子であることを特徴とする。
【0016】
カートリッジ側筐体又はリール部材に設けた第1無線タグ回路素子からタグ特性値情報を読み出し、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。
【0017】
上記目的を達成するために、第5の発明は、上記第3発明において、前記記録手段は、前記カートリッジ側筐体に形成された第1バーコード部であることを特徴とする。
【0018】
カートリッジ側筐体に形成した第1バーコード部からタグ特性値情報を読み出し、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。
【0019】
第6の発明は、上記第1又は第2発明において、前記複数の無線タグ回路素子がそれぞれ設けられた平紙状の複数のラベル素材と、これら複数の平紙状のラベル素材を平積み方向に積層して収納するトレイ部材とを備えた略トレイ型のカートリッジとして構成されていることを特徴とする。
【0020】
略トレイ型のカートリッジのトレイ部材に積層収納された平紙状のラベル素材の無線タグ回路素子に対し、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。
【0021】
第7の発明は、上記第6発明において、前記記録手段は、前記トレイ部材に設けられたタグ特性値情報記憶用の第2無線タグ回路素子であることを特徴とする。
【0022】
トレイ部材に設けた第2無線タグ回路素子からタグ特性値情報を読み出し、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。
【0023】
第8の発明は、上記第6発明において、前記記録手段は、前記トレイ部材に形成された第2バーコード部であることを特徴とする。
【0024】
トレイ部材に形成した第2バーコード部からタグ特性値情報を読み出し、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。
【0025】
第9の発明は、上記第1又は第2発明において、前記無線タグ回路素子をテープ長手方向に連続的に複数個配置したタグテープと、このタグテープをその外周側に巻回するリール部材とを備えたタグテープロールとして構成されていることを特徴とする。
【0026】
リール部材に巻回したタグテープの無線タグ回路素子に対し、順次繰り出される無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。
【0027】
第10の発明は、上記第9発明において、前記記録手段は、前記リール部材に設けられたタグ特性値情報記憶用の第3無線タグ回路素子であることを特徴とする。
【0028】
リール部材に設けた第3無線タグ回路素子からタグ特性値情報を読み出し、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。
【0029】
第11の発明は、上記第3、第6、第9発明のいずれか1つにおいて、前記記録手段は、各無線タグ回路素子ごとに対応付けて設けた複数の第3バーコード部であることを特徴とする。
【0030】
通信対象である無線タグ回路素子ごとに対応つけた第3バーコード部からタグ特性値情報を読み出し、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。
【0031】
第12の発明は、上記第11発明において、前記第3バーコード部は、前記無線タグ回路素子を貼り付け対象に貼り付けるための粘着材層を覆う剥離材層に形成されていることを特徴とする。
【0032】
無線タグ回路素子の剥離材層に形成した第3バーコード部からタグ特性値情報を読み出し、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。
【0033】
上記目的を達成するために、第13の発明は、装置側筐体と、この装置側筐体に設けられ、タグ情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続され情報の送受信を行うタグ側アンテナと前記複数の無線タグ回路素子のそれぞれに係わるタグ特性値情報を記録した記録手段とを有する無線タグ回路素子収容体を装着可能な収容体装着部と、前記複数の無線タグ回路素子のうち、特定の無線タグ回路素子の前記タグ側アンテナとの間で、無線通信により送受信を行う装置側アンテナと、前記IC回路部の無線タグ情報にアクセスするアクセス情報を生成するアクセス情報生成手段と、このアクセス情報生成手段で生成した前記アクセス情報を、前記装置側アンテナを介して非接触で前記タグ側アンテナに送信し、前記IC回路部の前記無線タグ情報へのアクセスを行う情報送信手段と、前記記録手段に記録された、対応する前記無線タグ回路素子に係わる前記タグ特性値情報を読み取る読み取り手段と、この読み取り手段で読み取った前記タグ特性値情報に合致するように、前記情報送信手段からの送信態様を制御する送信制御手段とを有することを特徴とする。
【0034】
本願第13発明においては、アクセス情報生成手段で生成されたアクセス情報は、情報送信手段によって装置側アンテナを介し無線タグ回路素子のタグ側アンテナに送信され、さらにIC回路部の無線タグ情報へのアクセス(読み取り又は書き込み)が行われる。このとき、読み取り手段によって記録手段のタグ特性値情報が読み取られ、送信制御手段によって、情報送信手段からの送信態様がその読み取った特性値情報に合致するように制御される。これにより、無線タグ回路素子の製造時において、タグ特性値データにばらつきが生じていたとしても、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができる。この結果、全無線タグ回路素子にて一律のタグ特性値データにて通信を行っていた従来技術のようなエネルギの無駄や通信上の悪影響の発生を防止できる。
【0035】
第14の発明は、上記第13発明において、前記送信制御手段は、前記タグ特性値情報に合致するように、前記情報送信手段からの送信出力の大きさを制御することを特徴とする。
【0036】
これにより、各無線タグ回路素子ごとに送信出力の大きさを制御して最適化し、最適な通信態様を実現することができる。
【0037】
第15の発明は、上記第13又は第14発明において、前記送信制御手段は、前記タグ特性値情報に合致するように、前記情報送信手段における送信時間の長さを制御することを特徴とする。
【0038】
これにより、各無線タグ回路素子ごとに送信時間の長さを制御して最適化し、最適な通信態様を実現することができる。
【0039】
第16の発明は、上記第14又は第15発明において、前記タグ特性値情報に対応する前記送信出力の大きさ又は前記送信時間の長さが、予め定められた許容範囲内にあるかどうかを判定する判定手段を有することを特徴とする。
【0040】
これにより、送信出力の大きさや送信時間の長さが許容範囲外にある場合には送信を行わない等の方策が可能となり、装置の健全性や無線タグの信頼性を確保することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、記録手段に各無線タグ回路素子それぞれのタグ特性値情報を記録することにより、各無線タグ回路素子ごとに通信態様を制御して最適な通信態様を実現することができるので、エネルギの無駄や通信上の悪影響の発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0043】
図1は、本実施形態の無線タグ情報通信装置が適用される無線タグ生成システムを表すシステム構成図である。
【0044】
図1に示すこの無線タグ生成システム1において、本実施形態による無線タグ情報通信装置2は、有線あるいは無線による通信回線3を介してルートサーバ4、端末5、汎用コンピュータ6、及び複数の情報サーバ7に接続されている。
【0045】
図2は、上記無線タグ情報通信装置2の詳細構造を表す概念的構成図である。
【0046】
図2において、無線タグ情報通信装置2の装置本体(装置側筐体)8には、凹所としてのカートリッジホルダ部(図示せず)が設けられ、このホルダ部に、カートリッジ(無線タグ回路素子カートリッジ、無線タグ回路素子収容体)100が着脱可能に取り付けられている。
【0047】
装置本体8は、第2ロール104から繰り出されるカバーフィルム103に所定の印字(印刷)を行う印字ヘッド(サーマルヘッド)10と、カバーフィルム103への印字が終了したインクリボン105を駆動するリボン巻取りローラ駆動軸11と、カバーフィルム103と第1ロール102から繰り出される基材テープ(タグテープ)101とを貼り合わせつつ印字済タグラベル用テープ110としてカートリッジ100から繰り出すための圧着ローラ駆動軸12と、基材テープ101に備えられる無線タグ回路素子To(詳細は後述)との間でUHF帯等の高周波を用いて無線通信により信号の送受を行うアンテナ(装置側アンテナ)14と、カートリッジ100に備えられる無線タグ回路素子(記録手段、第1無線タグ回路素子)TAとの間で上記同様に無線通信により信号の送受を行うカートリッジアンテナ19と、上記印字済タグラベル用テープ110を所定のタイミングで所定の長さに切断しラベル状の無線タグラベルT(詳細は後述)を生成するカッタ15と、無線タグラベルTを搬出口16へと搬送し送出する送出ローラ17と、上記搬出口16における無線タグラベルTの有無を検出するセンサ18と、それらを収納するように外郭を構成し、カートリッジ100を着脱可能に嵌合させる上記カートリッジホルダ部及び上記搬出口16を備える筐体9とを有する。
【0048】
アンテナ14は、一方側(この例では図2の紙面に向かって手前側)に指向性を備えた指向性アンテナ(この例ではいわゆるパッチアンテナ)で構成されるとともに上記第1ロール102の軸方向(図2の紙面に向かって奥側)近傍に配置されており、第1ロール102の基材テープ101の送り出し部分近傍領域Xと通信可能となるように配置されている。
【0049】
一方、装置本体8はまた、上記アンテナ14,カートリッジアンテナ19を介し上記無線タグ回路素子To,TAへアクセス(書き込み又は読み取り)を行うための高周波回路21と、無線タグ回路素子To,TAから読み出された信号を処理するための信号処理回路(アクセス情報生成手段)22と、前述したリボン巻取りローラ駆動軸11、圧着ローラ駆動軸12を駆動するカートリッジ用モータ23と、このカートリッジ用モータ23の駆動を制御するカートリッジ駆動回路24と、上記印字ヘッド10への通電を制御する印刷駆動回路25と、上記カッタ15を駆動して切断動作を行わせるソレノイド26と、そのソレノイド26を制御するソレノイド駆動回路27と、上記送出ローラ17を駆動する送出ローラ用モータ28と、上記高周波回路21、信号処理回路22、カートリッジ駆動回路24、印刷駆動回路25、ソレノイド駆動回路27、送出ローラ駆動回路29等を介し、無線タグ情報通信装置2全体の動作を制御するための制御回路(送信制御手段)30とを有する。
【0050】
制御回路30は、いわゆるマイクロコンピュータであり、詳細な図示を省略するが、中央演算処理装置であるCPU、ROM、及びRAM等から構成され、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うようになっている。またこの制御回路30は、入出力インターフェイス31を介し例えば通信回線に接続され、この通信回線に接続された前述のルートサーバ4、他の端末5、汎用コンピュータ6、及び情報サーバ7等との間で情報のやりとりが可能となっている。
【0051】
図3は、上記カートリッジ100の詳細構造を説明するための説明図である。
【0052】
この図3において、カートリッジ100は、筐体100Aと、この筐体100A内に配置され帯状の上記基材テープ101が巻回された上記第1ロール102と、上記基材テープ101と略同じ幅である透明な上記カバーフィルム103が巻回された上記第2ロール104と、上記インクリボン105(熱転写リボン、但しカバーフィルムが感熱テープで構成される場合は不要)を繰り出すリボン供給側ロール111と、印字後のリボン105を巻取るリボン巻取りローラ106と、上記基材テープ101と上記カバーフィルム103とを押圧し接着させ上記印字済タグラベル用テープとしつつ矢印Aで示す方向にテープ送りをする(=テープ送りローラとしても機能する)圧着ローラ(貼り合わせ手段)107と、上記筐体100Aの外周面における前記装置本体8側のカートリッジアンテナ19とほぼ向かい合う位置に設けられた無線タグ回路素子TAとを有する。
【0053】
第1ロール102は、リール部材102aの周りに、長手方向に複数の無線タグ回路素子Toが所定の等間隔で順次配設された上記基材テープ101を巻回している。
【0054】
基材テープ101はこの例では4層構造となっており(図3中部分拡大図参照)、内側に巻かれる側(図3中右側)よりその反対側(図3中左側)へ向かって、適宜の粘着材からなる粘着層101a、PET(ポリエチレンテレフタラート)等から成る色付きのベースフィルム101b、適宜の粘着材からなる粘着層101c、剥離紙101dの順序で積層され構成されている。
【0055】
ベースフィルム101bの裏側(図3中左側)には、情報の送受信を行うアンテナ(タグ側アンテナ)152が一体的に設けられており、これに接続するように情報を更新可能に(書き換え可能rewritableに)記憶するIC回路部151が形成され、これらによって無線タグ回路素子Toが構成されている(無線タグ回路素子TAも同様)。
【0056】
ベースフィルム101bの表側(図3中右側)には、後にカバーフィルム103を接着するための上記粘着層101aが形成され、またベースフィルム101bの裏側(図3中左側)には、無線タグ回路素子Toを内包するように設けた上記粘着層101cによって上記剥離紙101dがベースフィルム101bに接着されている。なお、この剥離紙101dは、最終的にラベル状に完成した無線タグラベルTが所定の商品等に貼り付けられる際に、これを剥がすことで粘着層101cにより当該商品等に接着できるようにしたものである。
【0057】
第2ロール104は、リール部材104aの周りに上記カバーフィルム103を巻回している。第2ロール104より繰り出されるカバーフィルム103は、その裏面側(すなわち上記基材テープ101と接着される側)に配置された上記リボン供給側ロール111及び上記リボン巻取りローラ106で駆動されるリボン105が、上記印字ヘッド10に押圧されることで当該カバーフィルム103の裏面に当接させられるようになっている。
【0058】
リボン巻取りローラ106及び圧着ローラ107は、それぞれカートリッジ100外に設けた例えばパルスモータである上記カートリッジ用モータ23(前述の図2参照)の駆動力が上記リボン巻取りローラ駆動軸11及び上記圧着ローラ駆動軸12に伝達されることによって回転駆動される。
【0059】
無線タグ回路素子TAには、基材テープ101に備えられる複数の無線タグ回路素子Toのそれぞれについて各無線タグ回路素子Toの特性値情報(ここでは最適アクセスパワー(送信出力)値)が記憶されており、制御回路30がこの特性値情報を読み込み前記高周波回路21を制御することにより、各無線タグ回路素子Toごとに最適な通信態様(最適アクセスパワー)でアクセスする(書き込み又は読み取りを行う)ことができるようになっている(詳細は後述)。
【0060】
上記構成のカートリッジ100において、上記第1ロール102より繰り出された基材テープ101は、圧着ローラ107へと供給される。一方、第2ロール104より繰り出されるカバーフィルム103は、その裏面側(すなわち上記基材テープ101と接着される側)に配置されたリボン供給側ロール111及びリボン巻取りローラ106で駆動されるインクリボン105が上記印字ヘッド10に押圧されて当該カバーフィルム103の裏面に当接させられる。
【0061】
そして、カートリッジ100が上記装置本体8のカートリッジホルダ部に装着されロールホルダ(図示せず)が離反位置から当接位置に移動されると、カバーフィルム103及びインクリボン105が印字ヘッド10とプラテンローラ108との間に狭持されるとともに、基材テープ101及びカバーフィルム103が圧着ローラ107とサブローラ109との間に狭持される。そして、カートリッジ用モータ23の駆動力によってリボン巻取りローラ106及び圧着ローラ107が矢印B及び矢印Dで示す方向にそれぞれ同期して回転駆動される。このとき、前述の圧着ローラ駆動軸12と上記サブローラ109及びプラテンローラ108はギヤ(図示せず)にて連結されており、圧着ローラ駆動軸12の駆動に伴い圧着ローラ107、サブローラ109、及びプラテンローラ108が回転し、第1ロール102から基材テープ101が繰り出され、上述のように圧着ローラ107へ供給される。一方、第2ロール104からはカバーフィルム103が繰り出されるとともに、上記印刷駆動回路25により印字ヘッド10の複数の発熱素子が通電される。この結果、カバーフィルム103の裏面に印字R(後述の図7参照)が印刷される。そして、上記基材テープ101と上記印刷が終了したカバーフィルム103とが上記圧着ローラ107及びサブローラ109により接着されて一体化され、印字済タグラベル用テープとして形成され、カートリッジ100外へと搬出される。なお、カバーフィルム103への印字が終了したインクリボン105は、リボン巻取りローラ駆動軸11の駆動によりリボン巻取りローラ106に巻取られる。また、第1ロール102の繰り出し近傍にはガイドローラ120が設けられており、第1ロール102の残量により外径が変化しても装置側のアンテナ14と無線タグラベルTの位置関係が所定の範囲となるように規制して、無線タグ回路素子Toとの通信条件を一定に保つようになっている。
【0062】
図4は、上記高周波回路21の詳細機能を表す機能ブロック図である。この図4において、高周波回路21は、制御回路30により切り替えられるアンテナスイッチ(切替)回路341と、このアンテナスイッチ回路341を経てアンテナ14,19を介し無線タグ回路素子To,TAに対して信号を送信する送信部(情報送信手段)32と、アンテナ14,19により受信された無線タグ回路素子To,TAからの反射波を入力する受信部33と、送受分離器34とから構成される。
【0063】
アンテナスイッチ回路341は、周知の高周波用FETやダイオードを用いたスイッチ回路であり、制御回路30からの選択信号によりアンテナ14,19のいずれかを送受分離器34に接続するものである。
【0064】
送信部32は、無線タグ回路素子To,TAのIC回路部151の無線タグ情報にアクセスする(書き込み又は読み取りを行う)ための搬送波を発生させる水晶振動子35、PLL(Phase
Locked Loop)36、及びVCO(Voltage Controlled Oscillator)37と、上記信号処理回路22から供給される信号に基づいて上記発生させられた搬送波を変調(この例では信号処理回路22からの「TX_ASK」信号に基づく振幅変調)する送信乗算回路38(但し振幅変調の場合は増幅率可変アンプ等を用いてもよい)と、その送信乗算回路38により変調された変調波(無線タグ情報)を、制御回路30からの「TX_PWR」信号によって増幅率を決定し増幅する可変送信アンプ39とを備えている。そして、上記発生される搬送波は、好適にはUHF帯の周波数を用いており、上記送信アンプ39の出力は、送受分離器34を介してアンテナスイッチ回路341を経てアンテナ14,19のいずれかに伝達されて無線タグ回路素子To,TAのIC回路部151に供給される。なお、無線タグ情報は上記のように変調した信号に限られず、単なる搬送波のみの場合もある。
【0065】
受信部33は、アンテナ14,19により受信された無線タグ回路素子To,TAからの反射波と上記発生させられた搬送波とを掛け合わせる受信第1乗算回路40と、その受信第1乗算回路40の出力から必要な帯域の信号のみを取り出すための第1バンドパスフィルタ41と、この第1バンドパスフィルタ41の出力を増幅して第1リミッタ42に供給する受信第1アンプ43と、上記アンテナ14,19により受信された無線タグ回路素子To,TAからの反射波と上記発生された後に位相が90°遅れた搬送波とを掛け合わせる受信第2乗算回路44と、その受信第2乗算回路44の出力から必要な帯域の信号のみを取り出すための第2バンドパスフィルタ45と、この第2バンドパスフィルタ45の出力を入力するとともに増幅して第2リミッタ46に供給する受信第2アンプ47とを備えている。そして、上記第1リミッタ42から出力される信号「RXS−I」及び第2リミッタ46から出力される信号「RXS−Q」は、上記信号処理回路22に入力されて処理される。
【0066】
また、受信第1アンプ43及び受信第2アンプ47の出力は、RSSI(Received Signal Strength Indicator)回路48にも入力され、それらの信号の強度を示す信号「RSSI」が信号処理回路22に入力されるようになっている。このようにして、本実施形態の無線タグ情報通信装置2では、I−Q直交復調によって無線タグ回路素子Toからの反射波の復調が行われる。
【0067】
なお、上記では特に説明しなかったが、本実施形態においては、アンテナスイッチ回路341がカートリッジアンテナ19側に切り替えられたときの通信(カートリッジアンテナ19と無線タグ回路素子TAとの通信)と、アンテナスイッチ回路341がアンテナ14側に切り替えられたときの通信(アンテナ14と無線タグ回路素子Toとの通信)とが相互に混信するのを防ぐために、アンテナスイッチ回路341の切り替え位置に応じて通信プロトコルが変更されるように制御する。これにより、混信することなく所望の無線タグ回路素子にアクセスできるようになっている。なお、プロトコルを変更せずに、アンテナスイッチ回路341の切り替え位置に応じて無線タグ回路素子に対するアクセス周波数を(例えば13MHzと950MHzといったように)変更するようにしてもよい。
【0068】
図5は、上記無線タグ回路素子Toの機能的構成を表す機能ブロック図である。この図5において、無線タグ回路素子Toは、無線タグ情報通信装置2側のアンテナ14とUHF帯等の高周波を用いて非接触で信号の送受信を行う上記アンテナ152と、このアンテナ152に接続された上記IC回路部151とを有している。
【0069】
IC回路部151は、アンテナ152により受信された搬送波を整流する整流部153と、この整流部153により整流された搬送波のエネルギを蓄積し駆動電源とするための電源部154と、上記アンテナ152により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部155に供給するクロック抽出部156と、所定の情報信号を記憶し得るメモリ部157と、上記アンテナ152に接続された変復調部158と、上記整流部153、クロック抽出部156、及び変復調部158等を介して上記無線タグ回路素子Toの作動を制御するための上記制御部155とを備えている。
【0070】
変復調部158は、アンテナ152により受信された上記無線タグ情報通信装置2のアンテナ14からの通信信号の復調を行うと共に、上記制御部155からの応答信号に基づき、アンテナ152より受信された搬送波を変調反射する。
【0071】
制御部155は、上記変復調部158により復調された受信信号を解釈し、上記メモリ部157において記憶された情報信号に基づいて返信信号を生成し、上記変復調部158により返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0072】
なお、詳細な図示を省略するが、カートリッジ100に設けられた無線タグ回路素子TAについても、上記無線タグ回路素子Toと同様の構造であって、IC回路部151(図示せず)及びアンテナ152(図示せず)等が備えられている。
【0073】
図6(a)及び図6(b)は、上述のようにして無線タグ回路素子Toの情報書き込み及び印字済タグラベル用テープ110の切断が完了し形成された無線タグラベルTの外観の一例を表す図であり、図6(a)は上面図、図6(b)は下面図である。また図7は、図6中VII−VII′断面による横断面図である。
【0074】
これら図6(a)、図6(b)、及び図7において、無線タグラベルTは、図3に示した4層構造にカバーフィルム103が加わった5層構造となっており、カバーフィルム103側(図7中上側)よりその反対側(図7中下側)へ向かって、カバーフィルム103、粘着層101a、ベースフィルム101b、粘着層101c、剥離紙101dで5層を構成している。そして、前述のようにベースフィルム101bの裏側に設けられたアンテナ152を含む無線タグ回路素子Toが粘着層101c内に備えられるとともに、カバーフィルム103の裏面に印字R(この例では無線タグラベルTの種類を示す「RF−ID」の文字)が印刷されている。
【0075】
図8は、上述したような無線タグ情報通信装置2による無線タグ回路素子ToのIC回路部151の無線タグ情報へのアクセス(書き込み又は読み取り)に際して、上記した端末5又は汎用コンピュータ6に表示される画面の一例を表す図である。
【0076】
図8において、この例では、無線タグ回路素子Toに対応して印刷された印字文字R、その無線タグ回路素子Toに固有のIDであるアクセス(書き込み又は読み取り)ID、上記情報サーバ7に記憶された物品情報のアドレス、及び上記ルートサーバ4におけるそれらの対応情報の格納先アドレス等が前記端末5又は汎用コンピュータ6に表示可能となっている。そして、その端末5又は汎用コンピュータ6の操作により無線タグ情報通信装置2が作動されて、カバーフィルム103に上記印字文字Rが印刷されると共に、後述するようにIC回路部151に上記書き込みID及び物品情報等の情報が書き込まれる(又はIC回路部151に予め記憶された物品情報等の無線タグ情報が読みとられる)。
【0077】
上記のような書き込み(又は読み取り)の際、生成された無線タグラベルTのIDとその無線タグラベルTのIC回路部151から読みとられた情報(又はIC回路部151に書き込まれた情報)との対応関係は、前述のルートサーバ4に記憶され、必要に応じて参照できるようになっている。
【0078】
ここで、本実施形態の無線タグ情報通信装置2の最も大きな特徴は、制御回路30が無線タグ回路素子TAに記憶された各無線タグ回路素子Toの特性値情報(最適アクセスパワー値)を読み込み高周波回路21を制御することにより、各無線タグ回路素子Toに対して最適な通信態様(最適アクセスパワー)でアクセスできるようにしたことにある。以下、この詳細について図9を用いて説明する。
【0079】
図9は、上述した最適通信態様による各無線タグ回路素子Toへのアクセス、すなわち、無線タグ回路素子TAに記憶された各無線タグ回路素子Toの特性値情報(最適アクセスパワー値)を読み込み、最適な通信態様となるように高周波回路21を制御した上で無線タグ回路素子Toへのアクセスをする際に、制御回路30によって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【0080】
この図9において、無線タグ情報通信装置2の書き込み(又は読み取り)操作が行われるとこのフローが開始される。まずステップS110において、タグアクセスをカートリッジ側に切替える。具体的には、アンテナスイッチ回路341に選択信号を出力し、カートリッジアンテナ19が送受分離器34に接続されるようにアンテナスイッチ回路341を切替える。
【0081】
次のステップS120では、無線タグ回路素子TAのメモリ部157(図示せず)内における0番地のアドレスに記憶された残数Rを読み込み、図示しないメモリに保存する。なお、この0番地のアドレスに記憶された残数Rは、基材テープ101における書き込み(又は読み取り)が終了していない無線タグ回路素子Toの残数を示す値である(詳細は後述)。また、上記メモリは制御回路30が有する内部メモリでもよいし、制御回路30の外部に設けた外部メモリであってもよい。
【0082】
次のステップS130では、無線タグ回路素子TAのメモリ部157(図示せず)内における(100−R+1)番地のアドレスに記憶されたアクセスパワー値Pを読み込み、メモリ(図示せず)に保存する。なお、この(100−R+1)番地のアドレスに記憶されたアクセスパワー値Pは、基材テープ101における各無線タグ回路素子Toのアンテナ152の通信感度に応じて高周波回路21の送信部32が出力すべき最適な出力電力量を示す値である(詳細は後述)。また、上述したアクセスパワー値Pが記憶されている番地は、最初にカートリッジ100に収納されている無線タグ回路素子Toが100個であるので(100−R+1)のように表されるのである。収納される無線タグ回路素子Toの個数に応じて適宜変更されるものである。
【0083】
次のステップS140では、タグアクセスをテープ側に切替える。具体的には、アンテナスイッチ回路341に選択信号を出力し、アンテナ14が送受分離器34に接続されるようにアンテナスイッチ回路341を切替える。
【0084】
次のステップS150では、先のステップS130で読み込んだアクセスパワー値Pが最大許容値Pmax以上であるかどうかを判定する。なお、この最大許容値Pmaxは、通常の書き込み速度で書き込みを行う際における前記送信部32から無線タグ回路素子Toへの出力電力(単位時間当たりの出力エネルギー量)が、装置本体8側(例えば制御回路30、高周波回路21、及びアンテナ14等)の仕様によって定められる最大(定格)出力電力を超えない範囲における最大のアクセスパワー(出力電力量)値であり、例えば前記の図示しないメモリ等に予め記憶された値である。アクセスパワー値Pが最大許容値Pmax未満である場合には、判定が満たされずに次のステップS160に移る。
【0085】
ステップS160では、無線タグ回路素子Toに対する書き込み速度を通常速度に設定する。具体的には、制御回路30と信号処理回路22の動作クロックを通常書き込み速度に対応する周波数に設定する。さらに詳細にはシステムクロックの分周比を設定することにより周波数を設定する。その後、次のステップS180に移る。
【0086】
ステップS180では、高周波回路21の送信部32に備えられる前記可変送信アンプ39に「TX_PWR」信号を出力し、送信部32の無線タグ回路素子Toに対するアクセスパワー(出力電力量)値をステップS130で読み出したアクセスパワー値Pに設定する。その後、ステップS190に移る。
【0087】
一方、先のステップS150において、アクセスパワー値Pが最大許容値Pmax以上である場合には、判定が満たされてステップS170に移る。このステップS170では、無線タグ回路素子Toに対する書き込み速度を低速(上記の通常速度に比べ遅い速度)に設定する。具体的には、上記ステップS160と同様に、制御回路30と信号処理回路22の動作クロックを低速書き込み速度に対応する周波数に設定する。さらに詳細にはシステムクロックの分周比を大きく変更することにより、より低い周波数を設定する。このように書き込み速度を低速にすることにより、高周波回路21の送信部32から無線タグ回路素子Toへ出力されるトータルのエネルギーを増加させることができ、かつ上記した装置本体8側の仕様によって定まる最大出力電力以内に収めることが可能となるので、次のステップS180Aにおいて、高周波回路21の送信部32に備えられる前記可変送信アンプ39に「TX_PWR」信号を出力し、送信部32の無線タグ回路素子Toに対するアクセスパワー(出力電力量)値を上記最大出力パワー値Pmaxに設定する。ステップS180Aが終了したら、ステップS190に移る。
【0088】
ステップS190では、無線タグ情報を無線タグ回路素子Toに書き込むと共にカバーフィルム103に所定の印字を行い、印字済タグラベル用テープ110を無線タグ回路素子Toごとに切断して無線タグラベルTを作成する無線タグラベル作成処理を行う(詳細は後述の図12を参照)。
【0089】
次のステップS200では、先のステップS120で読み出した残数Rから1を減じ、その減じた値を再び0番地のアドレスに保存する。これにより、残数Rは基材テープ101における書き込み(又は読み取り)が終了していない無線タグ回路素子Toの残数を正確に示すことができるようになっている。以上で本フローチャートを終了する。
【0090】
図10は、無線タグ回路素子TAのメモリ部157(図示せず)の記憶内容を表す図であり、先に述べたように、基材テープ101に無線タグ回路素子Toが100個備えられている場合を示している。
【0091】
この図10において、0番地のアドレスに格納された数値は前記の図9のステップS120で読み出した残数Rに相当し、前述したように基材テープ101における書き込み(又は読み取り)が終了していない無線タグ回路素子Toの残数を示す値である。この0番地のアドレスに格納された残数Rは、前記の図9のステップS200で説明したように、無線タグラベルTの作成が1つ終了するごとに1ずつ減じられ更新して保存されるようになっており、これにより書き込み(又は読み取り)が終了していない無線タグ回路素子Toの残数を正確に示すことができるようになっている。なお、この図10では残数Rが100となっており、まだ無線タグラベルTが作成されていない状態が示されている。
【0092】
1番地から100番地のアドレスにそれぞれ格納された数値は前記の図9のステップS130で読み出したアクセスパワー値Pに相当し、前述したように基材テープ101における各無線タグ回路素子Toのアンテナ152の通信感度に応じ、高周波回路21の送信部32が出力すべき最適な出力電力量を示す値である。上記ステップS130で説明したように、制御回路30は(100−R+1)番地のアドレスに記憶されたアクセスパワー値Pを読み込むようになっており、例えば残数Rが100の場合には1番地に格納された50、その次は残数Rが99となっているので2番地に格納された65、というように1番地から順に読み込まれるようになっている。すなわち、1番地から100番地のアドレスには番地に該当する順番の無線タグ回路素子Toに関する最適アクセスパワー値が格納されている。なお、この図10ではアクセスパワー値Pの単位は例えばmW(ミリワット)である。たとえば最初に作成される無線タグ回路素子ToのアクセスパワーPはアドレス1より50であるので出力電力は50mWに設定され、2つ目に作成されるタグに対しては65mWに設定されるのである。
【0093】
図11(a)及び図11(b)は、それぞれ、送信部32から無線タグ回路素子Toへの出力信号の違いを表す説明図である。図中、縦軸は出力電力、横軸は時間を示しており、これらの積に相当する斜線部の面積は出力エネルギーに対応する。
【0094】
図11(a)は、上記ステップS150における判定が満たされずステップS160を経てステップS180でアクセスパワーをステップS130で読み出したアクセスパワー値Pに設定するときの例であり、上段は出力電力が50mWに設定された場合、下段は65mWに設定された場合を示している。
【0095】
図11(b)は、上記ステップS150における判定が満たされずステップS160を経てステップS180でアクセスパワーをステップS130で読み出したアクセスパワー値Pに設定するとき(上段、書き込み速度が通常速度)と、上記ステップS150における判定が満たされてステップS170を経てステップS180AでアクセスパワーをステップS130の読み出し結果に関係なく最大値Pmaxに設定するとき(下段、書き込み速度が低速)とを示している。
【0096】
図11(b)に示すように、書き込み速度を低速にすることにより、アクセスパワーPが同じである条件では通常速度に比べて(斜線面積が大きくなるので)出力エネルギーを増加させることができる。したがって、前記の図9のステップS150においてアクセスパワー値Pが最大許容値Pmaxを上回った場合に、通常書き込み速度であれば装置本体8側の仕様による制限により書き込み(又は読み取り)が不可能となるところを、書き込み速度を低速にすることで送信部32から無線タグ回路素子Toへの出力電力を装置本体8側の仕様によって定まる最大出力電力Pmax以内に収め、無線タグ回路素子Toへの書き込み(又は読み取り)を可能とすることができる。
【0097】
本実施形態の例でいえば、例えば最大許容値Pmaxが75であれば図10に示したように3つめに作成されるタグのアクセスパワーは85であり最大許容値Pmaxを超えているので、図11(b)に示すように出力電力はPmaxに設定され低速でのタグアクセスとなる。
【0098】
なお、以上においては、書き込み速度を低速にすることでアクセスパワー値Pが最大許容値Pmaxを上回った場合でも書き込み(又は読み取り)を可能とするようにしたが、これに限られず、プリチャージ時間を増大するようにしてもよい。このプリチャージ時間とは、無線タグ回路素子Toがエネルギを蓄積して駆動電源とできるように、無線タグ回路素子Toに対して無線タグアクセス情報の信号を出力する際において最初に出力される変調されていない搬送波の出力時間のことである(図11参照)。このプリチャージ時間を増大することにより、書き込み速度を低速にするときと同様の出力電力の低減効果を得ることができ、その結果、無線タグ回路素子Toへの書き込み(又は読み取り)をすることが可能となる。
【0099】
図12は、前記の図9のステップS190の無線タグラベル作成処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【0100】
まずステップS10において、上記端末5又は汎用コンピュータ6を介して入力操作された、アンテナ14より無線タグ回路素子ToのIC回路部151へ書き込むべき無線タグ情報と、印字ヘッド10により無線タグラベルTへ印字すべき印字情報とが、通信回線3及び入出力インターフェイス31を介し読み込まれる。
【0101】
その後、ステップS15に移り、無線タグ回路素子Toからの応答がなく、リトライ(再試行)を行った回数をカウントする変数N、及び通信良好か不良かを表すフラグFを0に初期化する。
【0102】
次に、ステップS20において、カートリッジ駆動回路24に制御信号を出力し、カートリッジ用モータ23の駆動力によってリボン巻取りローラ106及び圧着ローラ107を回転駆動させる。これにより、第1ロール102から基材テープ101が繰り出され圧着ローラ107へ供給されるとともに、第2ロール104からはカバーフィルム103が繰り出される。さらに送出ローラ駆動回路29を介して送出ローラ用モータ28に制御信号を出力し、送出ローラ17を回転駆動させる。以上の結果、前述したように基材テープ101と(後述のように印刷が終了した)カバーフィルム103とが上記圧着ローラ107及びサブローラ109により接着されて一体化され、印字済タグラベル用テープ110としてカートリッジ体100外方向へと搬送されていくように、各テープ101,103,110が駆動開始される。
【0103】
その後、ステップS30において、無線タグ情報を無線タグ回路素子Toに送信し書き込む書き込み処理を行う(詳細は後述の図13を参照)。
【0104】
そして、ステップS35Aに移り、印刷駆動回路25に制御信号を出力し、印字ヘッド10を通電して、カバーフィルム103のうち所定の領域(例えば基材テープ101に所定ピッチで等間隔で配置された無線タグ回路素子Toの裏面に貼り合わせることとなる領域)に、ステップS10で読み込んだ文字、記号、バーコード等の印字Rを印刷させる。ステップS35Aが終了すると、ステップS39に移る。
【0105】
ステップS39では、フラグF=0であるかどうかが判定される。書き込み処理が正常に完了していればF=0のまま(後述の図13に示すフローのステップS38参照)であるので、この判定が満たされ、ステップS40に移る。一方、何らかの理由で書き込み処理が正常に完了していない場合はF=1とされている(後述の図13に示すフローのステップS38参照)のでこの判定が満たされず、ステップS45に移り、印刷駆動回路25に制御信号を出力して印字ヘッド10を通電を中止し印字を停止させる。このように印字中途停止によって当該無線タグ回路素子Toが正常品でないことを明らかに表示するようにした後、後述のステップS60へ移る。
【0106】
ステップS40では、上記ステップS30で無線タグ回路素子Toへ書き込んだ無線タグ情報と、これに対応して印字ヘッド10により印字された印字情報との組み合わせが、入出力インターフェイス31及び通信回線3を介し端末5又は汎用コンピュータ6を介して出力され、情報サーバ7やルートサーバ4に記憶される。なお、この記憶データは必要に応じて端末5又は汎用コンピュータ6より参照可能に例えばデータベース内に格納保持される。
【0107】
その後、ステップS50で、カバーフィルム103のうちこの時点で処理対象としている無線タグ回路素子Toに対応する領域への印字がすべて完了しているかどうかを確認した後、ステップS60へ移る。
【0108】
ステップS60では、印字済タグラベル用テープ110がカッタ15で切断されるべき所定位置にまで搬送されたかどうかを判定する。具体的には、例えば、対象とする無線タグ回路素子To及びこれに対応するカバーフィルム103の印字領域のすべてがカッタ15を所定の長さ(余白量)分だけ越えたかどうかを、基材テープ101(詳細には例えば剥離紙101d、あるいはカバーフィルム103等でもよい)に対し各無線タグ回路素子Toに対応して設けた適宜の識別用マークをカートリッジ100外(例えばカッタ15のさらに搬送方向下流側)に設けた公知のテープセンサで検出することにより行えば足りる。またこのような検出を行わず、印字Rの印字文字長に所定の余白領域分を加えた長さが無線タグ回路素子Toの全長を超えているかどうかを印字情報に基づき判定する(超えていれば、少なくともカバーフィルム103の印字が完了した段階でその余白領域外をカッタ15で切断するようにすれば、貼り合わせられる無線タグ回路素子Toを切断することは回避できるため)ことで代用してもよい。
【0109】
上記ステップS60の判定が満たされたら、ステップS70に移る。ステップS70では、カートリッジ駆動回路24及び送出ローラ駆動回路29に制御信号を出力し、カートリッジ用モータ23及び送出ローラ用モータ28の駆動を停止して、リボン巻取りローラ106、圧着ローラ107、送出ローラ17の回転を停止する。これにより、第1ロール102からの基材テープ101の繰り出し、第2ロール104からのカバーフィルム103の繰り出し、及び送出ローラ17による印字済タグラベル用テープ110の搬送が停止する。
【0110】
次のステップS80では、ソレノイド駆動回路27に制御信号を出力してソレノイド26を駆動し、カッタ15によって印字済タグラベル用テープ110の切断を行う。前述したように、この時点で、例えば処理対象の無線タグ回路素子To及びこれに対応するカバーフィルム103の印字領域のすべてがカッタ15を十分に越えており、このカッタ15の切断によって、無線タグ回路素子Toの無線タグ情報が読み取られかつこれに対応する所定の印字が行われたラベル状の無線タグラベルTが生成される。
【0111】
その後、ステップS90に移り、送出ローラ用駆動回路29に制御信号を出力し、送出ローラ用モータ28の駆動を再開して、送出ローラ17を回転させる。これにより、送出ローラ17による搬送が再開されて上記ステップS150でラベル状に生成された無線タグラベルTが搬出口16へ向かって搬送され、搬出口16から装置2外へと排出される。
【0112】
そして最後に、ステップS100で、カートリッジ100内の通信範囲(前述の領域X)に残存する無線タグラベル回路素子Toに備えられたIC回路部151の全無線タグ情報を消去(初期化)する。詳細には、無線タグ回路素子Toのメモリ部157に記憶された情報を初期化する「Erase」コマンドを信号処理回路22に出力する。これに基づき信号処理回路22で無線タグ情報としての「Erase」信号が生成されて高周波回路21の送信部32及びアンテナ14を介し通信範囲(上記領域X)内の全無線タグ回路素子Toに送信され、そのメモリ部157を初期化する。
【0113】
図13は、上記ステップS30の詳細手順を表すフローチャートである。
【0114】
図13において、図12における前述のステップS20が終了すると、まずステップS31に移り、所望のデータをメモリ部157に書き込む「Program」コマンドを信号処理回路22に出力する。これに基づき信号処理回路22で本来書き込みたいID情報を含む無線タグ情報としての「Program」信号が生成されて高周波回路21の送信部32及びアンテナ14を介して通信可能エリア内(前述の領域X内)にあるすべての無線タグ回路素子Toに送信され、そのメモリ部157に情報が書き込まれる。
【0115】
その後、ステップS32において、メモリ部157の内容を確認する「Verify」コマンドを信号処理回路22に出力する。これに基づき信号処理回路22で無線タグ情報としての「Verify」信号が生成されて高周波回路21の送信部32及びアンテナ14を介して上記通信可能エリア内の全無線タグ回路素子Toに送信され、返信を促す。
【0116】
そして、ステップS33に移り、上記「Verify」信号に対応して上記通信可能エリア内の全無線タグ回路素子Toから送信(返信)されたリプライ(応答)信号をアンテナ14を介して受信し、高周波回路21の受信部33及び信号処理回路22を介し取り込む。
【0117】
次に、ステップS34において、上記ステップS33の受信結果に基づき、上記通信エリア内の全無線タグ回路素子Toのうち、少なくとも1つから何らかの有効なリプライ信号(メモリ部157に正常に記憶されたことを表す信号)が受信されたかどうかを判定する。
【0118】
判定が満たされたら、上記領域X内の少なくとも1つの無線タグ回路素子Toには正しく書き込まれており、領域X内の全無線タグ回路素子Toへの書き込み失敗は回避されていることから、このルーチンを終了する。判定が満たされない場合はステップS35に移ってNに1を加え、さらにステップS36においてN=5かどうかが判定される。N≦4の場合は判定が満たされずステップS31に戻り同様の手順を繰り返す。N=5の場合は前述したステップS37に移る。ステップS37では、エラー表示信号を入出力インターフェイス31及び通信回線3を介し上記端末5又は汎用コンピュータ6へ出力し、対応する書き込み失敗(エラー)表示を行わせた後、ステップS38でフラグF=1としてこのルーチンを終了する。このように、情報書き込みが不調でも5回までは再試行が行われることにより、書き込み信頼性の確保上、万全を期すことができる。
【0119】
なお、以上は、最適アクセスパワーを設定した後に無線タグ回路素子Toに対し無線タグ情報を送信しIC回路部151に書き込みを行う場合を説明したが、これに限られず、最適アクセスパワーを設定した後に予め所定の無線タグ情報(タグ識別情報等)が書き換え不可に記憶保持されている読み取り専用の無線タグ回路素子Toから無線タグ情報を読み取りながら、これに対応する印字を行って無線タグラベルTを作成する場合がある。
【0120】
この場合には、図12におけるステップS10において印字情報のみを読み込み、ステップS30で無線タグ情報の読み込み処理を行うようにすればよい(詳細は後述の図14参照)。その後ステップS40では印字情報とその読み込んだ無線タグ情報との組み合わせを保存する。
【0121】
図14は、上記無線タグ読み取り処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【0122】
この図14において、情報読み取り対象とする無線タグ回路素子Toがアンテナ14近傍に搬送されてきたら、ステップS101において、無線タグ回路素子Toに記憶された情報を読み出す「Scroll
All ID」コマンドを信号処理回路22に出力する。これに基づき信号処理回路22で無線タグ情報としての「Scroll All ID」信号が生成されて高周波回路21を介して読み取り対象の無線タグ回路素子Toに送信され、返信を促す。
【0123】
次に、ステップS102において、上記「Scroll All ID」信号に対応して読み取り対象の無線タグ回路素子Toから送信されたリプライ信号(タグID情報等を含む無線タグ情報)をアンテナ14を介して受信し、高周波回路21及び信号処理回路22を介し取り込む。
【0124】
次に、ステップS103において、上記ステップS102で受信したリプライ信号に誤りがないか否かを公知の誤り検出符号(CRC符号;Cyclic Redundancy Check等)を用いて判定する。
【0125】
判定が満たされない場合はステップS104に移ってNに1を加え、さらにステップS105においてN=5かどうかが判定される。N≦4の場合は判定が満たされずステップS101に戻り同様の手順を繰り返す。N=5の場合はステップS106に移り、エラー表示信号を入出力インターフェイス31及び通信回線3を介し上記端末5又は汎用コンピュータ6へ出力し、対応する読み取り失敗(エラー)表示を行わせた後、ステップS107でフラグF=1としてこのルーチンを終了する。このように、情報読み取りが不調でも5回までは再試行が行われることにより、読み取り信頼性の確保上、万全を期すことができる。
【0126】
ステップS103の判定が満たされた場合、読み取り対象とする無線タグ回路素子Toからの無線タグ情報の読み取りが完了し、このルーチンを終了する。
【0127】
以上において、図9中ステップS150は、請求項16記載のタグ特性値情報に合致する送信出力の大きさが予め定められた許容範囲内にあるかどうかを判定する判定手段を構成する。
【0128】
以上説明した本実施形態の無線タグ情報通信装置2において、無線タグ回路素子Toに対し無線タグ情報を書き込む際には、信号処理回路22及び高周波回路送信部32でその無線タグ回路素子Toに対応した無線タグ情報が生成された後、この無線タグ情報が、アンテナ14から基材テープ101上の当該無線タグ回路素子Toのアンテナ152に対し無線通信によって伝達され、さらにアンテナ152に接続されたIC回路部151へと書き込まれる。一方、無線タグ回路素子Toから無線タグ情報を読み込む際には、予め無線タグ回路素子Toに記憶された無線タグ情報をアンテナ14を介して受信し、高周波回路21及び信号処理回路22を介し制御回路30に取り込む。
【0129】
ここで、一般に無線タグ回路素子Toの製造時において、実際には、各無線タグ回路素子Toごとのアンテナ152の通信感度等のタグ特性値データは、本来の設計仕様値の前後にある程度のばらつきが生じる。ここで、このようなばらつきに関係なく全無線タグ回路素子Toに対し一律のタグ特性値データにてアクセス(書き込み又は読み取り)を行おうとすると、複数の無線タグ回路素子Toに対し順次連続的にアクセスを行う際、例えばアンテナ通信感度については、感度が低い無線タグ回路素子Toに対しても十分な通信を確保できるように、予めアンテナ14からのアクセスパワーを大きく設定しておかなければならなくなる。
【0130】
この結果、感度が低くない(良好な)それ以外の無線タグ回路素子Toに対しては必要以上の大きさのアクセスパワーとなってエネルギの無駄が生じたり、さらに無線タグ回路素子Toの許容出力範囲を超えた場合には、無線タグ回路素子Toで受信した電波が歪む、他の無線タグ回路素子Toへの通信干渉が出る、搬送波の強度が大きくなり反射波成分の識別が困難となる等、通信上好ましくない影響が生じる可能性があった。IC回路部のメモリ157のメモリ書込電圧、書込時間などのアクセス条件等他のタグ特性値データについても同様の問題が生じることとなる。
【0131】
そこで、本実施形態の無線タグ情報通信装置2においては、前述したようにカートリッジ100の筐体100Aに設けた無線タグ回路素子TAに、各無線タグ回路素子Toに最適なアクセスパワー値がそれぞれ記憶されている。そして、各無線タグ回路素子Toと無線タグ情報の送受信を行う際には、上記無線タグ回路素子TAに記憶されたアクセスパワー値を読み出し、そのアクセスパワーとなるように高周波回路21の送信部32を設定し、当該無線タグ回路素子Toに合致した通信態様(アクセスパワー)でアクセスを行う。これにより、無線タグ回路素子Toの製造時において、タグ特性値データにばらつきが生じていたとしても、各無線タグ回路素子Toごとにアクセスパワーを制御して最適な通信態様を実現することができる。この結果、上述したように全無線タグ回路素子Toにて一律のタグ特性値データにて通信を行う場合のようなエネルギの無駄や通信上の悪影響の発生を防止できる。
【0132】
なお、以上においては、無線タグ回路素子Toの特性値情報としてアクセスパワー値を用いて各無線タグ回路素子Toに最適な通信態様を実現するようにしたが、これに限られず、特性値情報として例えばプリチャージ時間を用いてもよい。この場合、予め無線タグ回路素子TAに各無線タグ回路素子Toに最適なプリチャージ時間を記憶させておき、読み出したプリチャージ時間となるように高周波回路21の送信部32を設定することで、上記アクセスパワー値を用いた場合と同様に各無線タグ回路素子Toに合致した通信態様でアクセスを行うことができる。
【0133】
また、上記実施形態は、上記以外にも、その趣旨と技術思想の範囲を逸脱しない範囲でさらに種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順次説明する。
【0134】
(1)カートリッジを用いない場合
図15は、カートリッジを用いない変形例による無線タグ情報通信装置2′の詳細構造を表す概念的構成図であり、上記実施形態の図2に相当する図である。図2と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。図15において、この変形例では、装置本体8に、上記搬出口16を備えた筐体9が設けられており、この筐体9に上記実施形態と同様のアンテナ14、19′が設けられている。
【0135】
アンテナ14は、上記実施形態と同様、一方側(この例では図15の紙面に向かって手前側)に指向性を備えた指向性アンテナ(パッチアンテナ)で構成されるとともに上記第1ロール102の軸方向(図15の紙面に向かって奥側)近傍に配置されており、第1ロール102の基材テープ101の送り出し部分近傍領域Xと通信可能となるように配置されている。結果として、アンテナ14は、搬出口16を介し筐体9の外部へ排出された無線タグ回路素子Toがその通信可能範囲外となるように構成されている。これにより、一旦搬出口16から筐体9外部へ出た無線タグ回路素子Toの無線タグ情報が初期化されたり、アンテナ14から別の情報がさらに書き込まれたりするのを確実に防止するようになっている。なお、この目的のために、搬出口16の周りは適宜のシールド手段が設けられている。
【0136】
カートリッジアンテナ19′は、カートリッジ100の筐体100Aに設けた無線タグ回路素子TAと向かい合うように配置された上記実施形態とは異なり、一方側(この例では図15の紙面に向かって手前側)に指向性を備えた指向性アンテナ(パッチアンテナ)で構成されるとともに、上記第1ロール102のリール部材102aの軸方向(図15の紙面に向かって奥側)近傍に配置されており、リール部材102a(例えばリール部材102aの一方側(この例では図15の紙面に向かって手前側))に設けられた無線タグ回路素子TAと通信可能となるように配置されている。
【0137】
また、上記のようにカートリッジ100が省略されカートリッジ100に設けられていた各部材が直接筐体9に設けられているのに対応し、この例では、圧着ローラ駆動軸12及びリボン巻取りローラ駆動軸11は、上記実施形態のカートリッジ駆動回路24により駆動制御されるカートリッジ用モータ23に相当する圧着ローラ駆動回路24′により駆動制御される圧着ローラ用モータ23′によって駆動されるようになっている。
【0138】
本変形例においても、無線タグ回路素子TAに記憶されたアクセスパワー値(又はプリチャージ時間)をカートリッジアンテナ19′を介して読み出し、そのアクセスパワー(又はプリチャージ時間)となるように高周波回路21の送信部32を設定し、当該無線タグ回路素子Toに合致した通信態様でアクセスを行うことができるという上記実施形態と同様の効果を得る。
【0139】
なお、カートリッジ100を用いる構成の上記実施形態では無線タグ回路素子TAをカートリッジ100の筐体100Aに設けるようにしたが、これに限られず、本変形例のように無線タグ回路素子TAをカートリッジ100内におけるリール部材102aに設けるようにしてもよい。この場合、前記カートリッジアンテナ19を本変形例におけるカートリッジアンテナ19′と同様に一方側(図2の紙面に向かって手前側)に指向性を備えた指向性アンテナ(パッチアンテナ)で構成すれば足りる。
【0140】
(2)トレイ型カートリッジを用いる場合
上記実施形態においては、カートリッジとして、長手方向に複数の無線タグ回路素子Toが順次形成された帯状の基材テープ101を巻き回す第1ロール102を備えたカートリッジ100を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、他のカートリッジの態様でもよい。
【0141】
図16は、そのような変形例を表す概念的斜視図である。
【0142】
この図16において、この変形例では、カートリッジとして略平箱状のトレイ部材91が設けられている。このトレイ部材91の中に、それぞれに1つの無線タグ回路素子Toが形成された平紙状の複数のラベル素材92を、平積み方向に積層して収納する。トレイ部材91の一側面(この例では図中奥側)に設けた取り出し口91Aより平紙状のラベル素材92を1枚ずつ引き出すことで、複数の無線タグ回路素子Toを順次取り出せるようになっている。トレイ部材91より取り出した無線タグ回路素子Toは、無線タグ情報通信装置2に備えられたアンテナ14の対向位置に設定され、読み出しが行われる。
【0143】
トレイ部材91の一側面(この例では図中左側)には無線タグ回路素子(第2無線タグ回路素子)TAが設けられている。この無線タグ回路素子TAは、トレイ部材91を無線タグ情報通信装置2の前記装置本体8に取り付けた際に、装置本体8に設けられたカートリッジアンテナ19とほぼ向かい合う位置となるように配設されている。
【0144】
本変形例においても、無線タグ回路素子TAに記憶されたアクセスパワー値(又はプリチャージ時間)をカートリッジアンテナ19を介して読み出し、そのアクセスパワー(又はプリチャージ時間)となるように高周波回路21の送信部32を設定し、当該無線タグ回路素子Toに合致した通信態様でアクセスを行うことができるという上記実施形態と同様の効果を得る。
【0145】
(3)貼り合わせを行わない場合
すなわち、特に図面を用いて説明はしないが、上記実施形態のように無線タグ回路素子Toを備えた基材テープ101とは別のカバーフィルム103に印字を行ってこれらを貼り合わせるのではなく、タグテープに備えられたカバーフィルムに印字を行ういわゆるノンラミネートタイプのカートリッジに本発明を適用してもよい。この場合、複数の無線タグ回路素子Toを感熱テープに設け、複数の発熱素子を有する印字ヘッドにより感熱テープの表面に印字を印刷するようにしてもよいし、上記実施形態のようなインクリボンを用いた印字としてもよい。
【0146】
本変形例においても、当該無線タグ回路素子Toに合致した通信態様でアクセスを行うことができるという上記実施形態と同様の効果を得る。
【0147】
なお、以上においては、各無線タグ回路素子Toの特性値情報を記録する記録手段として無線タグ回路素子を用いたが、例えばバーコード(図示せず)を用いるようにしてもよい。すなわち、バーコードに記録された前記ルートサーバ4における全無線タグ回路素子Toの特性値情報の格納先アドレス等を図示しないバーコードスキャナ(読み取り手段)で読み取り、制御回路30がその格納先アドレスから通信回線3及び入出力インターフェイス31を介し無線タグ回路素子Toの特性値情報(アクセスパワー値又はプリチャージ時間)を読み込んで、その通信態様となるように高周波回路21の送信部32を設定する。これにより、当該無線タグ回路素子Toに合致した通信態様でアクセスを行うことができる。なお、バーコードは、上記一実施形態においてはカートリッジ100の筐体100Aの外周面に、上記(2)の変形例においてはトレイ部材91の一側面に設けるようにすれば足りるが、例えば各無線タグ回路素子Toごとに対応づけて設けるようにしてもよい。この場合、例えば基材テープ101において、無線タグラベルTを所定の商品等に貼り付けるための粘着層101cを覆う剥離紙101dに各無線タグ回路素子Toごとにバーコードを形成すれば足りる。
【0148】
また、以上においては、無線タグ回路素子Toの特性値情報(アクセスパワー値又はプリチャージ時間)を無線タグ回路素子TAに記憶するようにしたが、これに限られず、特性値情報として、前述したIC回路部151のメモリ部157のメモリ書込電圧、書込時間などのアクセス条件等を記憶するようにしてもよい。この場合にも、この無線タグ回路素子TAに記憶されたそれらアクセス条件情報を読み出し、そのメモリ書込電圧、書込時間などのアクセス条件に対応するように高周波回路21の送信部32を設定することにより、当該無線タグ回路素子Toに合致した通信態様でアクセスを行うことができる。
【0149】
さらに、メモリ部157のメモリ容量の大小で所要エネルギが変化するため、メモリ容量に応じて書き込み時に必要な書き込み電力が変わる。この意味で、最適な所要電力となるように制御するためには「メモリ容量」も特性値情報に含まれ、これを無線タグ回路素子TAに記憶するようにしてもよい。
【0150】
さらに、以上においては、印刷動作に伴いカートリッジ100等の内部を移動中の基材テープ101(又は感熱テープ)に対して通信(書き込み又は読み取り)を行う例を示したが、これに限られず、基材テープ101等を所定位置で停止させて(さらに所定の搬送ガイドにて保持した状態で)上記通信を行うようにしてもよい。
【0151】
またさらに、以上で用いた「Scroll All ID」信号、「Erase」信号、「Verify」信号、「Program」信号とは、EPC globalが策定したAuto−ID仕様に準拠しているものとする。EPC globalは、流通コードの国際機関である国際EAN協会と、米国の流通コード機関であるUniformed Code Council(UCC)が共同で設立した非営利法人である。なお、他の規格に準拠した信号でも、同様の機能を果たすものであればよい。
【0152】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明の一実施形態の無線タグ情報通信装置が適用される無線タグ生成システムを表すシステム構成図である。
【図2】図1に示した無線タグ情報通信装置の詳細構造を表す概念的構成図である。
【図3】図2に示したカートリッジの詳細構造を説明するための説明図である。
【図4】図3に示した高周波回路の詳細機能を表す機能ブロック図である。
【図5】無線タグ回路素子Toの機能的構成を表す機能ブロック図である。
【図6】無線タグラベルTの外観の一例を表す上面図及び下面図である。
【図7】図6中VII−VII′断面による横断面図である。
【図8】無線タグ情報へのアクセスに際し、端末又は汎用コンピュータに表示される画面の一例を表す図である。
【図9】制御回路によって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【図10】無線タグ回路素子のメモリ部の記憶内容を表す図である
【図11】書き込みパワーを変化させた場合、あるいは、書き込み速度を変化させた場合における無線タグ回路素子に対する出力信号の違いを表す図である。
【図12】図9のステップS190の詳細手順を表すフローチャートである。
【図13】図12のステップS30の詳細手順を表すフローチャートである。
【図14】制御回路によって実行される無線タグ情報読み取り手順を表すフローチャートである。
【図15】カートリッジを用いない変形例による無線タグ情報通信装置の詳細構造を表す概念的構成図である。
【図16】カートリッジとして略平箱状のトレイ部材を用いた変形例によるそのトレイ部材の全体構造を表す概念的構成図である。
【符号の説明】
【0154】
2 無線タグ情報通信装置
2′ 無線タグ情報通信装置
8 装置本体(装置側筐体)
14 アンテナ(装置側アンテナ)
22 信号処理回路(アクセス情報生成手段)
30 制御回路(送信制御手段)
32 送信部(情報送信手段)
91 トレイ部材
100 カートリッジ(無線タグ回路素子収容体)
100A 筐体(カートリッジ側筐体)
101 基材テープ(タグテープ)
102a リール部材
151 IC回路部
152 アンテナ(タグ側アンテナ)
T 無線タグラベル
TA 無線タグ回路素子(記録手段、第1無線タグ回路素子、第2無線タグ回路素子)
To 無線タグ回路素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タグ情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続され情報の送受信を行うタグ側アンテナとを備えた複数の無線タグ回路素子を収容する無線タグ回路素子収容体であって、
前記複数の無線タグ回路素子のそれぞれに係わるタグ特性値情報を記録した記録手段を有することを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項2】
請求項1記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記記録手段は、前記タグ特性値情報として、各無線タグ回路素子の前記タグ側アンテナの感度情報及び前記IC回路部のメモリ容量情報のうち少なくとも一方が記録されていることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記無線タグ回路素子をテープ長手方向に連続的に複数個配置したタグテープと、このタグテープをその外周側に巻回するリール部材と、それらタグテープ及びリール部材を内包するカートリッジ側筐体とを備えた、略箱形のカートリッジとして構成されていることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項4】
請求項3記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記記録手段は、前記カートリッジ側筐体又は前記リール部材に設けられたタグ特性値情報記憶用の第1無線タグ回路素子であることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項5】
請求項3記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記記録手段は、前記カートリッジ側筐体に形成された第1バーコード部であることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項6】
請求項1又は2記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記複数の無線タグ回路素子がそれぞれ設けられた平紙状の複数のラベル素材と、これら複数の平紙状のラベル素材を平積み方向に積層して収納するトレイ部材とを備えた略トレイ型のカートリッジとして構成されていることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項7】
請求項6記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記記録手段は、前記トレイ部材に設けられたタグ特性値情報記憶用の第2無線タグ回路素子であることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項8】
請求項6記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記記録手段は、前記トレイ部材に形成された第2バーコード部であることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項9】
請求項1又は2記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記無線タグ回路素子をテープ長手方向に連続的に複数個配置したタグテープと、このタグテープをその外周側に巻回するリール部材とを備えたタグテープロールとして構成されていることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項10】
請求項9記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記記録手段は、前記リール部材に設けられたタグ特性値情報記憶用の第3無線タグ回路素子であることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項11】
請求項3,6,9のいずれか1項記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記記録手段は、各無線タグ回路素子ごとに対応付けて設けた複数の第3バーコード部であることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項12】
請求項11記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記第3バーコード部は、前記無線タグ回路素子を貼り付け対象に貼り付けるための粘着材層を覆う剥離材層に形成されていることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項13】
装置側筐体と、
この装置側筐体に設けられ、タグ情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続され情報の送受信を行うタグ側アンテナと前記複数の無線タグ回路素子のそれぞれに係わるタグ特性値情報を記録した記録手段とを有する無線タグ回路素子収容体を装着可能な収容体装着部と、
前記複数の無線タグ回路素子のうち、特定の無線タグ回路素子の前記タグ側アンテナとの間で、無線通信により送受信を行う装置側アンテナと、
前記IC回路部の無線タグ情報にアクセスするアクセス情報を生成するアクセス情報生成手段と、
このアクセス情報生成手段で生成した前記アクセス情報を、前記装置側アンテナを介して非接触で前記タグ側アンテナに送信し、前記IC回路部の前記無線タグ情報へのアクセスを行う情報送信手段と、
前記記録手段に記録された、対応する前記無線タグ回路素子に係わる前記タグ特性値情報を読み取る読み取り手段と、
この読み取り手段で読み取った前記タグ特性値情報に合致するように、前記情報送信手段からの送信態様を制御する送信制御手段とを有することを特徴とする無線タグ情報通信装置。
【請求項14】
請求項13記載の無線タグ情報通信装置において、
前記送信制御手段は、前記タグ特性値情報に合致するように、前記情報送信手段からの送信出力の大きさを制御することを特徴とする無線タグ情報通信装置。
【請求項15】
請求項13又は14記載の無線タグ情報通信装置において、
前記送信制御手段は、前記タグ特性値情報に合致するように、前記情報送信手段における送信時間の長さを制御することを特徴とする無線タグ情報通信装置。
【請求項16】
請求項14又は15記載の無線タグ情報通信装置において、
前記タグ特性値情報に対応する前記送信出力の大きさ又は前記送信時間の長さが、予め定められた許容範囲内にあるかどうかを判定する判定手段を有することを特徴とする無線タグ情報通信装置。
【請求項1】
タグ情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続され情報の送受信を行うタグ側アンテナとを備えた複数の無線タグ回路素子を収容する無線タグ回路素子収容体であって、
前記複数の無線タグ回路素子のそれぞれに係わるタグ特性値情報を記録した記録手段を有することを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項2】
請求項1記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記記録手段は、前記タグ特性値情報として、各無線タグ回路素子の前記タグ側アンテナの感度情報及び前記IC回路部のメモリ容量情報のうち少なくとも一方が記録されていることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記無線タグ回路素子をテープ長手方向に連続的に複数個配置したタグテープと、このタグテープをその外周側に巻回するリール部材と、それらタグテープ及びリール部材を内包するカートリッジ側筐体とを備えた、略箱形のカートリッジとして構成されていることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項4】
請求項3記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記記録手段は、前記カートリッジ側筐体又は前記リール部材に設けられたタグ特性値情報記憶用の第1無線タグ回路素子であることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項5】
請求項3記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記記録手段は、前記カートリッジ側筐体に形成された第1バーコード部であることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項6】
請求項1又は2記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記複数の無線タグ回路素子がそれぞれ設けられた平紙状の複数のラベル素材と、これら複数の平紙状のラベル素材を平積み方向に積層して収納するトレイ部材とを備えた略トレイ型のカートリッジとして構成されていることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項7】
請求項6記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記記録手段は、前記トレイ部材に設けられたタグ特性値情報記憶用の第2無線タグ回路素子であることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項8】
請求項6記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記記録手段は、前記トレイ部材に形成された第2バーコード部であることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項9】
請求項1又は2記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記無線タグ回路素子をテープ長手方向に連続的に複数個配置したタグテープと、このタグテープをその外周側に巻回するリール部材とを備えたタグテープロールとして構成されていることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項10】
請求項9記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記記録手段は、前記リール部材に設けられたタグ特性値情報記憶用の第3無線タグ回路素子であることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項11】
請求項3,6,9のいずれか1項記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記記録手段は、各無線タグ回路素子ごとに対応付けて設けた複数の第3バーコード部であることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項12】
請求項11記載の無線タグ回路素子収容体において、
前記第3バーコード部は、前記無線タグ回路素子を貼り付け対象に貼り付けるための粘着材層を覆う剥離材層に形成されていることを特徴とする無線タグ回路素子収容体。
【請求項13】
装置側筐体と、
この装置側筐体に設けられ、タグ情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続され情報の送受信を行うタグ側アンテナと前記複数の無線タグ回路素子のそれぞれに係わるタグ特性値情報を記録した記録手段とを有する無線タグ回路素子収容体を装着可能な収容体装着部と、
前記複数の無線タグ回路素子のうち、特定の無線タグ回路素子の前記タグ側アンテナとの間で、無線通信により送受信を行う装置側アンテナと、
前記IC回路部の無線タグ情報にアクセスするアクセス情報を生成するアクセス情報生成手段と、
このアクセス情報生成手段で生成した前記アクセス情報を、前記装置側アンテナを介して非接触で前記タグ側アンテナに送信し、前記IC回路部の前記無線タグ情報へのアクセスを行う情報送信手段と、
前記記録手段に記録された、対応する前記無線タグ回路素子に係わる前記タグ特性値情報を読み取る読み取り手段と、
この読み取り手段で読み取った前記タグ特性値情報に合致するように、前記情報送信手段からの送信態様を制御する送信制御手段とを有することを特徴とする無線タグ情報通信装置。
【請求項14】
請求項13記載の無線タグ情報通信装置において、
前記送信制御手段は、前記タグ特性値情報に合致するように、前記情報送信手段からの送信出力の大きさを制御することを特徴とする無線タグ情報通信装置。
【請求項15】
請求項13又は14記載の無線タグ情報通信装置において、
前記送信制御手段は、前記タグ特性値情報に合致するように、前記情報送信手段における送信時間の長さを制御することを特徴とする無線タグ情報通信装置。
【請求項16】
請求項14又は15記載の無線タグ情報通信装置において、
前記タグ特性値情報に対応する前記送信出力の大きさ又は前記送信時間の長さが、予め定められた許容範囲内にあるかどうかを判定する判定手段を有することを特徴とする無線タグ情報通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−99202(P2006−99202A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281571(P2004−281571)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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