説明

無線タグ探知装置

【課題】 多数の物品の中から特定の物品を1つだけ効率良く迅速に探し出すことができる無線タグ探知装置を提供する。
【解決手段】 無線タグに対する問合せ信号を指向性をもって無線送信し、この問合せ信号に基づいて無線タグから無線送信される応答信号を受信する。受信した応答信号の強度を検出し、検出した応答信号の強度のうち、検索対象の無線タグからの応答信号の強度が、他の無線タグからの応答信号の強度に比べて上位何番目の順位にあるかを判定する。この判定した順位を、検索対象の無線タグが存する方向の判別要素として報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多数の物品に付された無線タグの中から所望の無線タグを探し出す無線タグ探知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナを備え、このアンテナの交信領域内に存在する無線タグと電波を利用して無線通信を行うことにより、無線タグに実装されたメモリからデータを読み出したり同メモリにデータを書き込むことが可能な無線通信装置が開発され、実用化されている。各無線タグのメモリには固有のIDいわゆるタグ識別情報が記憶されており、そのタグ識別情報を読み取ることにより、無線タグを個々に特定することができる。このような無線タグは、RFID(Radio Frequency Identification)などと称されている。また、無線通信装置は、RFIDリーダライタなどと称されている。
【0003】
このような無線通信装置および無線タグからなるいわゆるRFIDシステムを多数の商品を販売する商店や多数の書物が収納された図書館などに導入し、個々の物品に無線タグを付けることにより、各物品の管理が容易となる。
【0004】
なお、RFIDシステムの例として、無線タグから送信された信号をRFIDリーダで受信し、その受信信号の電力値に応じて、無線タグが所定の領域に存在するか否かを判定するものがある(例えば特許文献1)。また、リーダライタから送信されて無線タグで受信された電波の強度を無線タグ側で検出し、その検出データを無線タグからリーダライタに送信するものがある(例えば特許文献2)。
【特許文献1】特開2007−323423号公報
【特許文献2】特開2005−107792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多数の商品を販売する商店では、買物客からの購入希望があったり、本部や問屋への返品が必要になった場合など、店内に陳列された多数の商品の中から、あるいはいくつもの箱に在庫として保管された多数の商品の中から、特定の商品を1つだけ選び出したい場合がある。同様に、多数の書物が収納された図書館では、利用者からの閲覧希望があった場合や、配架整理などに際し、多数の書物の中から特定の書物を1つだけ選び出したい場合がある。
【0006】
このような場合、各物品に無線タグが付いていても、上記のように、所定の領域における無線タグの存在を判定したり、無線タグが受信する電波の強度を検出するRFIDシステムでは、特定の物品を1つだけ効率良く探し出すことは困難である。
【0007】
この発明は、上記の事情を考慮したもので、その目的は、多数の物品の中から特定の物品を1つだけ効率良く迅速に探し出すことができる無線タグ探知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明の無線タグ探知装置は、無線タグに対する問合せ信号を指向性をもって無線送信する送信手段と、この送信手段から無線送信される問合せ信号に基づいて前記無線タグから無線送信される応答信号を受信する受信手段と、この受信手段で受信される応答信号の強度を検出する検出手段と、検索対象の無線タグを設定する設定手段と、前記検出手段で検出される応答信号の強度のうち、検索対象の無線タグからの応答信号の強度が、他の応答信号の強度と比べて上位何番目の順位であるかを判定する判定手段と、この判定手段の判定結果を、検索対象の無線タグが存する方向の判別要素として報知する報知手段と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
この発明の無線タグ探知装置によれば、多数の物品の中から特定の物品を1つだけ効率良く迅速に探し出すことができる。これにより、物品を探し出すのに要する手間と時間を大幅に削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
図1において、1は片手で持つことが可能なメインユニットで、タッチパネル式液晶表示部2およびキーボード3を前面に有する。キーボード3には、電源をオン,オフするための電源キー3aが含まれている。このメインユニット1に付属して、リーダーユニット4が用意されている。リーダーユニット4は、同様に片手で持つことが可能な把手5を背面に有し、内蔵のアンテナにより、物品たとえば店舗内の商品に付けられた無線タグ6との無線通信を行う。これらメインユニット1およびリーダーユニット4は微弱無線電波による相互のデータ通信が可能であり、たとえばメインユニット1を左手で持ち、リーダーユニット4を右手で持ち、リーダーユニット4を検索対象に向ける状態で使用される。
【0011】
メインユニット1およびリーダーユニット4の制御回路を図2に示す。
まず、メインユニット1は、動作用電圧を出力する電源部10、および当該メインユニット1およびリーダーユニット4の動作を制御する制御部11を有し、この制御部11に上記タッチパネル式液晶表示部2、上記キーボード3、通信部12、GUI(Graphical User Interface)13、サウンド生成部14が接続されている。通信部12は、リーダーユニット4との微弱無線電波によるデータ通信を行う。GUI13は、制御部11からの指令に応じた各種画面として例えば無線タグ探知画面をタッチパネル式液晶表示部2で表示する。サウンド生成部14は、制御部11からの指令に応じた音信号たとえば断続的なビープ音信号を生成し、それをスピーカ15に供給する。スピーカ15は、サウンド生成部14で生成されたビープ音信号を実際の音に変換する。
【0012】
また、リーダーユニット4は、動作用電圧を出力する電源部20、および当該リーダーユニット4の動作を制御する制御部21を有し、この制御部21に通信部22、送信部23、AGC(Automatic Gain Control)回路26が接続されている。通信部22は、メインユニット1との微弱無線電波によるデータ通信を行う。送信部23は、制御部21から供給されるアナログの送信データ信号で所定の搬送波を変調し、この変調した信号を増幅してアンテナ24に供給する。アンテナ24は、送信部23から供給される信号を電波として放射するとともに、自身の交信領域内に存する無線タグ6から送信される電波を受信するもので、指向性をもって無線送信および無線受信を行う指行性を有する。この受信信号は受信部25に供給される。受信部25は、アンテナ24からの受信信号を増幅し、その増幅した信号から所定の搬送波成分を除去する復調を行い、この復調した信号のうち所定の低周波数帯の信号をLPF(Low Pass Filter)で抽出する処理を行う。この抽出後の信号が上記AGC回路26に供給される。AGC回路26は、受信部25から供給される信号を増幅するとともに、その増幅後の信号レベルが一定の適正レベルとなるように利得を調整する。このAGC回路26の出力信号が制御部21に供給される。また、無線タグ6からの受信信号の強度を検出するための要素として、AGC回路26における調整利得値、例えば“0(増幅なし)”〜“255(最大増幅)”間のいずれかの調整利得値が制御部21に供給される。
【0013】
ここで、アンテナ24から放射される電波の範囲と、その電波範囲の内や外に存するいくつかの無線タグ6の例を図3および図4に示している。図3の例は、アンテナ24から等距離の位置に存する複数の無線タグ6のうち、アンテナ24の正面方向に存する無線タグ6は強い電波を受けることができて応答レベルも高く、アンテナ24の正面から外れた方向に存する無線タグ6は強い電波を受けることができずに応答レベルも低く、アンテナ24の電波範囲から外れたところに存する無線タグ6は電波を受けることができないことを示している。図4の例は、アンテナ24の正面方向に複数の無線タグ6があって、アンテナ24に近い位置の無線タグ6は強い電波を受けることができて応答レベルも高く、アンテナ24から離れたところの無線タグ6は強い電波を受けることができずに応答レベルも低くなることを示している。
【0014】
また、A位置およびB位置にそれぞれ無線タグ6が存し、これら無線タグ6に対してアンテナ24の向きを変えた場合の電波範囲と各無線タグ6との関係の変化を図5、図6、図7に示している。図5の例は、係員がリーダーユニット4を左方向に向けると、アンテナ24の正面方向にA位置の無線タグ6が存し、アンテナ24の正面から少し外れた右方向にB位置の無線タグ6が存し、A位置の無線タグ6は強い電波を受けることができて応答レベルも高く、B位置の無線タグ6は強い電波を受けることができずに応答レベルも低くなることを示している。図6の例は、係員がリーダーユニット4を正面方向に向けると、アンテナ24の正面の方向にA位置およびB位置の無線タグ6が共に存し、それぞれの無線タグ6が強い電波を受けることができて応答レベルも高くなることを示している。図7の例は、係員がリーダーユニット4を右方向に向けると、アンテナ24の正面の方向にB位置の無線タグ6が存し、アンテナ24の正面から少し外れた左方向にA位置の無線タグ6が存し、B位置の無線タグ6は強い電波を受けることができて応答レベルも高く、A位置の無線タグ6は強い電波を受けることができずに応答レベルも低くなることを示している。
【0015】
また、メインユニット1のタッチパネル式液晶表示部2で表示される無線タグ探知画面は、図8に示すように、商品指定方法としてEPC(Electronic Product Code)、JAN(Japanese article number)コード、SKU(Stock Keeping Unit)コード、商品名のいずれが指定されているかを表示するための商品指定方法表示エリア31、入力されるコードの表示窓32、特定の無線タグ6の探知開始を指示するための探知開始ボタン33、探知終了を指示するための探知終了ボタン34、実際の探知状況を逐次に表示するためのタグ探知状況表示エリア35を有する。このタグ探知状況表示エリア35には、検索対象である商品の無線タグ6がリーダーユニット4のアンテナ24の交信領域内に存在せず無線タグ6が検出されない場合に現在地▽(黒)マークと共に点灯する未検知インジケータ36、当該リーダーユニット4と検索対象である商品の無線タグ6との距離がどのくらいかを目盛り上の現在地▽(黒)マークでアナログ表示する距離表示インジケータ37、当該リーダーユニット4の現在位置が検索対象である商品の無線タグ6に近づいたときに点灯する“近づきました”インジケータ38、当該リーダーユニット4の現在位置が検索対象である商品の無線タグ6から離れたときに点灯する“離れました”インジケータ39がある。
【0016】
また、無線タグ探知画面の右上領域に、検索対象の無線タグ6が存する方向の判別要素として、方向信頼度(“1”〜“5”および“0”の数値)を表示する方向信頼度表示エリア40が設けられている。
【0017】
そして、メインユニット1の制御部11およびリーダーユニット4の制御部21は、相互のデータ通信に基づき、無線タグ探知に関わる主要な機能として次の(1)〜(8)の手段を有する。
【0018】
(1)メインユニット1におけるキーボード3の操作に応じて、検索対象の商品をコードにより指定するための指定手段(検索対象の無線タグを設定する設定手段)。
【0019】
(2)上記指定されるコードに対応するタグ識別情報を、制御部11内のメモリに格納されている商品データベースから抽出する抽出手段(検索対象の無線タグを設定する設定手段)。
【0020】
(3)複数の無線タグ6に対する問合せ信号をリーダーユニット4のアンテナ24から無線送信する送信手段。
【0021】
(4)上記送信手段から無線送信される問合せ信号に基づいて各無線タグ6から無線送信される応答信号をアンテナ24で受信する受信手段。
【0022】
(5)上記受信手段で受信される応答信号の強度を、AGC回路26から供給される調整利得値に基づく強度検出用テーブルの参照により検出する検出手段。強度検出用テーブルは、制御部11内のメモリに格納されている。
【0023】
(6)上記検出手段で検出される応答信号の強度のうち、上記抽出手段で抽出されたタグ識別情報を有する応答信号の強度およびその変化に応じて、その応答信号の送信元である検索対象の無線タグ6までの距離およびその距離が近づいたか離れたかを、タッチパネル式液晶表示部2における無線タグ探知画面の表示およびスピーカ15からのビープ音の発生により報知する報知手段。
【0024】
(7)上記検出手段で検出される応答信号の強度のうち、上記抽出手段で抽出されたタグ識別情報を有する応答信号の強度が、他の応答信号の強度と比べて上位何番目の順位であるかを判定する判定手段。
【0025】
(8)この判定手段で判定される順位を、上記検索対象の無線タグが存する方向の判別要素として、上記無線タグ探知画面における方向信頼度表示エリア40の表示により報知する報知手段。
【0026】
一方、上記無線タグ6は、電源生成部、復調部、変調部、メモリ部、制御部などが搭載されたICチップ、およびアンテナを有し、アンテナの受信信号を復調して制御部に取り込むとともに、制御部から発せられる信号を変調してアンテナから無線送信するもので、当該無線タグに固有のIDいわゆるタグ識別情報をメモリ部に記憶している。このタグ識別情報として、例えば製品識別用のEPC(Electronic Product Code)が用いられている。このような構成の無線タグ6が、店舗内の多数の商品にそれぞれ貼り付けられている。
【0027】
つぎに、図9および図10のフローチャートを参照しながら、作用について説明する。図9のフローチャートは、タッチパネル式液晶表示部2における無線タグ探知画面の探知開始ボタン33がタッチ操作された場合にメインユニット1の制御部11で実行される制御を示している。図10のフローチャートは、タッチパネル式液晶表示部2における無線タグ探知画面の探知終了ボタン34がタッチ操作された場合にメインユニット1の制御部11で実行される制御を示している。
【0028】
店舗の係員は、店舗内の多数の商品の中から特定の1つの商品を見つけ出したい場合、商品の指定方法としてEPC、JANコード、SKUコード、商品名のいずれをキーボード3で指定し、同キーボード3で実際にコードを入力する。例えばJANコードが指定されると、図8に示すように、商品指定方法表示エリア31におけるJANコードのインジケータ部が点灯するとともに、実際に入力されるJANコードが指定コードとして表示窓32で表示される。
【0029】
この状態で、タッチパネル式液晶表示部2における無線タグ探知画面の探知開始ボタン33が係員によりタッチ操作されると、上記入力された指定コードが取り込まれ(ステップ101)、その指定コードがEPCであるか否かが判定される(ステップ102)。
【0030】
この場合、指定コードはJANコードなので、指定コードはEPCでないとの判定の下に(ステップ102のNO)、JANコードに基づいて制御部11内の図11に示す商品データベースが参照され、そのJANコードに対応するEPCが検索される(ステップ103)。
【0031】
この検索において、JANコードに対応するEPCが存在しなければ(ステップ104のNO)、“該当商品なし”というメッセージが、無線タグ探知画面に代わってタッチパネル式液晶表示部2で表示される(ステップ105)。この表示をもって探知作業の終了となる。
【0032】
上記検索において、JANコードに対応するEPCが存在すれば(ステップ104のYES)、そのEPCが検索対象のタグ識別情報として抽出される(ステップ106)。なお、指定コードがEPCであった場合は(ステップ102のYES)、そのEPCがそのまま検索対象のタグ識別情報として抽出される(ステップ106)。この抽出に伴い、探知終了ボタン34がタッチ操作されているか否かの指標となる終了フラグ、および探知作業が終了したか否かの指標となる終了処理完了フラグが共にオフされるとともに(ステップ107)、検索対象の無線タグ6の検出が完了しているか否かの指標となる目的タグ検出フラグがオフされる(ステップ108)。そして、リードコマンドがリーダーユニット4に送られる(ステップ109)。
【0033】
こうして、リードコマンドがリーダーユニット4に送られることにより、各無線タグ6に対する問合せ信号がリーダーユニット4のアンテナ24から無線送信される。このとき、アンテナ24から放射される電波の範囲内に無線タグ6が存在していれば、その無線タグ6から応答信号が無線送信される。
【0034】
リーダーユニット4において応答信号の受信がなければ、タグ応答なしとの判定の下に(ステップ110のNO)、無線タグ探知画面の未検知インジケータ36が現在地▽(黒)マークと共に点灯する(ステップ111)。そして、再びリードコマンドがリーダーユニット4に送られる(ステップ109)。
【0035】
リーダーユニット4で少なくとも1つの応答信号が受信されると、タグ応答ありとの判定の下に(ステップ110のYES)、受信された応答信号の強度が、AGC回路26から供給される調整利得値に基づく図12の強度検出用テーブルの参照により、検出される(ステップ112)。検出された強度は、例えば受信順に番号が付けられた形で制御部11の内部メモリに記憶される。
【0036】
上記強度検出用テーブルは、“0(増幅なし)”〜“255(最大増幅)”の調整利得値に、10段階の強度“10(最強)”〜“1(最小)”を割り当てたものである。これら10段階の強度“10(最強)”〜“1(最小)”に対し、“近い距離”〜“遠い距離”までの10段階の距離が割り当てられている。最強の強度“10”には“近い距離”が対応し、最小の強度“1”には“遠い距離”が対応する。例えば、“近い距離”を“1”、“遠い距離”を“10”とし、“1”から“10”までの10段階の距離が割り当てられる。
【0037】
強度の検出後、受信された複数たとえばN個の応答信号の1つを指定するための値Xが初期値“1”にセットされる(ステップ113)。そして、受信されたN個の応答信号のうち、受信順がX番(=1番)の応答信号が指定され(ステップ114)、この指定された応答信号に含まれているタグ識別情報が上記ステップ106の処理で抽出された検索対象のタグ識別情報と一致するかどうか判定される(ステップ115)。
【0038】
この判定結果が一致であれば(ステップ115のYES)、受信順1番の応答信号は検索対象の無線タグ6から送信されたものであるとの判断の下に、目的タグ検出フラグがオンされる(ステップ116)。そして、制御部11の内部メモリに記憶されている各応答信号の強度のうち、受信順1番の応答信号の強度が選定され、その強度に対応する距離が距離表示インジケータ37でアナログ表示される(ステップ117)。距離表示インジケータ37の目盛りは、左側位置が“10(遠い距離)”、右端位置が“1(近い距離)”を表しており、10段階の距離に応じた目盛りの位置に現在地▽(黒)マークが表示される。従って、この目盛り上のどの位置を現在地▽(黒)マークが指しているかにより、検索対象の無線タグ6までの距離を視覚的に察知することができる。
【0039】
続いて、受信順1番の応答信号の強度(“今回の強度”という)が、前回の受信分における検索対象の無線タグ6からの応答信号の強度(“前回の強度”という)と比較される(ステップ118)。ここで、“前回の強度”は、前回の受信分から検索対象の無線タグ6が検出された際に、制御部11の内部メモリに保存されていたものである。このステップ118の比較が終了した後、“今回の強度”が“前回の強度”としてその内部メモリに更新記憶される。
【0040】
“今回の強度”が“前回の強度”以上であれば(ステップ118のYES)、リーダーユニット4が検索対象の無線タグ6に近づいているとの判断の下に、タッチパネル式液晶表示部2の無線タグ探知画面における“近づきました”インジケータ38が点灯して“離れました”インジケータ39が消灯する(ステップ119)。未検知インジケータ36は消灯する。同時に、スピーカ15から発せられる断続的なビープ音の発生タイミングがこれまでよりも短縮される(ステップ120)。なお、応答信号の受信が1回目で、“前回の強度”が保存されていない場合は、“今回の強度”が“前回の強度”以上という判定結果になる。
【0041】
この“近づきました”インジケータ38の点灯およびビープ音の発生タイミングの短縮により、係員はリーダーユニット4が検索対象の無線タグ6に近づいていることを察知することができる。
【0042】
“今回の強度”が“前回の強度”よりも小さければ(ステップ118のNO)、リーダーユニット4が検索対象の無線タグ6から離れたとの判断の下に、タッチパネル式液晶表示部2の無線タグ探知画面における“近づきました”インジケータ38が消灯して“離れました”インジケータ39が点灯する(ステップ121)。同時に、スピーカ15から発せられる断続的なビープ音の発生タイミングがこれまでよりも延長される(ステップ122)。なお、応答信号の受信が1回目で、“前回の強度”が無い場合は、“今回の強度”が“前回の強度”よりも小さいという判定結果にはならず、よってステップ121,122の処理は実行されない。
【0043】
この“離れました”インジケータ39の点灯およびビープ音の発生タイミングの延長により、係員はリーダーユニット4が検索対象の無線タグ6から離れたことを察知することができる。
【0044】
続いて、受信されたN個の応答信号の1つを指定するための値Xが“1”アップされて“2”となり(ステップ123)、それが応答信号の個数Nと比較される(ステップ124)。このX(=“2”)がN以下であれば(ステップ124のNO)、ステップ114の処理に戻り、受信順2番の応答信号が指定される。そして、この指定された応答信号に含まれているタグ識別情報が上記ステップ106で抽出された検索対象のタグ識別情報と同じかどうか判定される(ステップ115)。
【0045】
この場合、受信順1番の応答信号が検索対象の無線タグ6から送信されたものであるとの判定結果がすでに得られているので、ステップ115の判定結果は不一致となり(ステップ115のNO)上記ステップ116〜122の距離判定処理は実行されずに上記ステップ123の処理が実行され、X(=2)が“1”アップされて“3”となる。このX(=3)がN以下であれば(ステップ124のNO)、ステップ114に戻り、受信順3番の応答信号が指定される。そして、この指定された応答信号に含まれているタグ識別情報が上記ステップ106の処理で抽出された検索対象のタグ識別情報と同じかどうか判定される(ステップ115)。
【0046】
この場合も、受信順1番の応答信号が検索対象の無線タグ6から送信されたものであるとの判定結果がすでに得られていることから、ステップ115の判定結果は不一致となり(ステップ115のNO)上記ステップ116〜122の距離判定処理は実行されずに上記ステップ123の処理が実行され、X(=3)が“1”アップされて“4”となる。そして、このX(=4)とNとが比較される(ステップ124)。
【0047】
XがNを超えた場合(ステップ124のYES)、目的タグ検出フラグがオンかどうか判定される(ステップ125)。
目的タグ検出フラグがオンならば(ステップ125のYES)、検索対象の無線タグ6の検出が完了しているとの判断の下に、受信されたN個の応答信号の1つを指定するための値Xが初期値“1”にセットされるとともに(ステップ126)、方向信頼度Yが初期値“1”にセットされる(ステップ127)。方向信頼度Yは、検出された各応答信号の強度のうち、検索対象の無線タグ6からの応答信号の強度が、他の応答信号の強度と比べて上位何番目かの順位を数値で表したものである。順位が1位の場合は最高の方向信頼度であるY=“1”、順位が2位の場合は最高から2番目の方向信頼度であるY=“2”、順位が3位の場合は最高から3番目の方向信頼度であるY=“3”、順位が4位の場合は最高から4番目の方向信頼度であるY=“4”、順位が5位の場合は最高から5番目の方向信頼度であるY=“5”となる。ほかに、最低の方向信頼度として、検索対象の無線タグ6が検出できていないことを表すY=“0”が用意されている。
【0048】
そして、受信順がX番(=1番)の応答信号が検索対象の無線タグ6から送信されたものかどうかが判定される(ステップ128)。上記したように、受信順1番の応答信号は検索対象の無線タグ6から送信されたものであるから(ステップ128のYES)、Xは“1”アップされて“2”となる(ステップ131)。このX(=2)とNとが比較され(ステップ132)、X(=2)がN以下であれば(ステップ132のNO)、ステップ128に戻り、受信順2番の応答信号が検索対象の無線タグ6から送信されたものかどうかが判定される(ステップ128)。
【0049】
受信順2番の応答信号は検索対象の無線タグ6から送信されたものではないので(ステップ128のNO)、制御部11の内部メモリに記憶されている各応答信号の強度のうち、受信順2番の応答信号の強度と、検索対象である受信順1番の応答信号の強度とが比較される(ステップ129)。受信順2番の応答信号の強度が受信順1番の応答信号の強度よりも大きければ(ステップ129のYES)、検索対象の無線タグ6から無線送信された応答信号の強度の順位は他の応答信号の強度よりも少なくとも1つ分低いとの判断の下に、方向信頼度Yが初期値“1”(=最高の方向信頼度)から“1”アップされて“2”(=上位2番目の方向信頼度)となる(ステップ130)。そして、Xが“1”アップされて“3”となり(ステップ131)、このX(=3)とNとが比較される(ステップ132)。X(=3)がN以下であれば(ステップ132のNO)、ステップ128に戻り、受信順3番の応答信号が検索対象の無線タグ6から送信されたものかどうかが判定される(ステップ128)。
【0050】
受信順3番の応答信号は検索対象の無線タグ6から送信されたものではないので(ステップ128のNO)、制御部11の内部メモリに記憶されている各応答信号の強度のうち、受信順3番の応答信号の強度と、受信順1番の応答信号の強度とが比較される(ステップ129)。受信順3番の応答信号の強度が受信順1番の応答信号の強度よりも大きければ(ステップ129のYES)、検索対象の無線タグ6から無線送信された応答信号の強度の順位は他の応答信号の強度よりもさらにもう1つ分低いとの判断の下に、方向信頼度Yが“2”から“1”アップされて“3”(=上位3番目の方向信頼度)となる(ステップ130)。そして、Xが“1”アップされて“4”となり(ステップ131)、このX(=4)とNとが比較される(ステップ132)。X(=4)がN以下であれば(ステップ132のNO)、ステップ128に戻り、受信順4番の応答信号が検索対象の無線タグ6から送信されたものかどうかが判定される(ステップ128)。
【0051】
XがNを超えると(ステップ132のYES)、その時点の方向信頼度Yが無線タグ探知画面の方向信頼度表示エリア40で表示される(ステップ133)。
【0052】
このように、検出されたN個の応答信号の強度のうち、検索対象の無線タグ6から送信される応答信号の強度が、他の応答信号の強度に比べて上位何番目の順位であるかが判定される。そして、判定された順位が、検索対象の無線タグ6が存する方向の判別要素である方向信頼度Yとして表示される。係員は、この方向信頼度Yの表示を見ることにより、検索対象の無線タグ6が存する方向を的確に把握することができる。
【0053】
例えば、方向信頼度Yの表示が“3”であれば、リーダーユニット4の向きが検索対象の無線タグ6が存する方向から外れていると判断し、リーダーユニット4を任意の方向に動かしながら、方向信頼度Yの表示を確認する。方向信頼度Yの表示が“4”または“5”に変わると、リーダーユニット4の向きが検索対象の無線タグ6が存する方向から遠去かってしまったと判断し、リーダーユニット4をそれまでと反対の方向に動かしながら、再び、方向信頼度Yの表示を確認する。方向信頼度Yの表示が“2”に変われば、リーダーユニット4の向きが検索対象の無線タグ6が存する方向に近づいていると判断し、リーダーユニット4をそれまでと同じ方向に動かしながら、方向信頼度Yの表示を確認する。方向信頼度Yの表示が最高の“1”に変わると、リーダーユニット4の向きが検索対象の無線タグ6が存する方向に合致したと判断する。このとき、リーダーユニット4が向いている方向にそのまま進めば、検索対象の無線タグ6に到達することになる。
【0054】
こうして、方向信頼度Yが表示されるとともに、上記した距離表示インジケータ37による距離表示、“近づきました”インジケータ38の点灯/消灯表示、“離れました”インジケータ39の点灯/消灯表示が行われ、さらに、ビープ音が発生してその発生タイミングが適宜に変化することにより、検索対象の無線タグ6が存する方向、およびその無線タグ6までの距離を、視覚と聴覚の両方で体感的に察知しながら、検索対象の無線タグ6に近づくことができる。したがって、多数の物品の中から特定の物品を1つだけ効率良く迅速に探し出すことができる。
【0055】
リーダーユニット4が検索対象の無線タグ6に到達すると、ビープ音が最短の時間間隔で発せられるとともに、距離表示インジケータ37の現在地▽(黒)マークが目盛りの一番右側にある“目的のタグ”表示の位置を指す。
【0056】
ただし、上記ステップ125の判定において、目的タグ検出フラグがオフの場合は(ステップ125のNO)、検索対象の無線タグ6の検出が完了していない場合であり、方向信頼度Yが“0”にセットされる(ステップ136)。そして、方向信頼度Y=“0”が方向信頼度表示エリア40で表示される(ステップ133)。方向信頼度Y=“0”は、最低の方向信頼度であり、検索対象の無線タグ6が検出できていないことを表す。この場合、係員は、検索対象の無線タグ6をまだ捕捉できていないことを察知し、別の場所に移動するなどの処置をとることになる。
【0057】
一方、探知の途中または完了後、タッチパネル式液晶表示部2における無線タグ探知画面の探知終了ボタン34が係員によりタッチ操作されると、終了フラグがオンされる(ステップ201)。そして、終了処理完了フラグがオンかどうか判定される(ステップ202のYES)。
【0058】
上記ステップ133で方向信頼度Yが表示された後、上記終了フラグがオンかどうか判定されており(ステップ134)、オフならば(ステップ134のNO)、上記ステップ108,109に戻り、目的タグ検出フラグがオフされるとともに、再びリードコマンドがリーダーユニット4に送られる。終了フラグがオンになると(ステップ134のYES)、探知終了ボタン34がタッチ操作されたとの判断の下に、終了処理完了フラグがオンされて(ステップ135)、探知作業の終了なる。
【0059】
なお、上記実施形態では、リーダーユニット4からの問合せ信号を受けた全ての無線タグ6から応答信号が無線送信され、これら応答信号の中から検索対象のタグ識別情報を有する応答信号を抽出する場合を例に説明したが、全ての無線タグについて各タグ識別情報を指定した問合せ信号をそれぞれ無線送信し、その指定されたタグ識別情報を有する無線タグ6からの応答信号が送信され、これら応答信号の中から検索対象のタグ識別情報を有する応答信号を抽出する場合についても、同様に実施可能である。
【0060】
また、上記実施形態では、ビープ音をメインユニット1から発する構成としたが、サウンド生成部14およびスピーカ15をリーダーユニット4に設け、リーダーユニット4からビープ音を発するようにしてもよい。
【0061】
さらに、上記実施形態では、方向信頼度Yを数値表示によって報知する構成としたが、数値表示に代えて、例えば無線タグ6の形状を模した複数の画像パターンを用意しておき、これら画像パターンの表示数の変化によって方向信頼度Yを報知する構成としてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、メインユニット1およびリーダーユニット4からなる分離型の無線タグ探知装置を例に説明したが、図13に示すように、リーダーユニット4の機能をメインユニット1に納めた一体型の無線タグ探知装置でも同様に実施可能である。この場合、メインユニット1の上面部にアンテナ24が突出状に設けられている。
【0063】
その他、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を換えない範囲で種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明の一実施形態の外観を示す図。
【図2】一実施形態の制御回路を示すブロック図。
【図3】一実施形態のアンテナから等距離の位置に存する複数の無線タグと電波範囲との関係を示す図。
【図4】一実施形態のアンテナの正面の方向に存する複数の無線タグと電波範囲との関係を示す図。
【図5】一実施形態のアンテナを左方向に向けた場合の電波範囲と各無線タグとの関係を示す図。
【図6】一実施形態のアンテナを正面の方向に向けた場合の電波範囲と各無線タグとの関係を示す図。
【図7】一実施形態のアンテナを右方向に向けた場合の電波範囲と各無線タグとの関係を示す図。
【図8】一実施形態の無線タグ探知画面を示す図。
【図9】一実施形態の探知開始ボタンがタッチ操作された場合のメインユニットの制御を説明するためのフローチャート。
【図10】一実施形態の無線タグ探知画面がタッチ操作された場合のメインユニットの制御を説明するためのフローチャート。
【図11】一実施形態における商品データベースを示す図。
【図12】一実施形態における強度検出テーブルを示す図。
【図13】一実施形態の外観の変形例を示す図。
【符号の説明】
【0065】
1…メインユニット、2…タッチパネル式液晶表示部、3…キーボード、4…リモートコントロールユニット、6…無線タグ、11…制御部、12…通信部、14…サウンド生成部、21…制御部、22…通信部、23…送信部、24…アンテナ、25…受信部、26…AGC回路、31…商品指定方法表示エリア、32…入力されるコードの表示窓、33…探知開始ボタン、34…探知終了ボタン、35…タグ探知状況表示エリア、36…未検知インジケータ、37…距離表示インジケータ、38…“近づきました”インジケータ、39…“離れました”インジケータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検索対象の無線タグを設定する設定手段と、
無線タグに対する問合せ信号を指向性をもって無線送信する送信手段と、
この送信手段から無線送信される問合せ信号に基づいて前記無線タグから無線送信される応答信号を受信する受信手段と、
この受信手段で受信される応答信号の強度を検出する検出手段と、
検索対象の無線タグを設定する設定手段と、
前記検出手段で検出される応答信号の強度のうち、検索対象の無線タグからの応答信号の強度が、他の応答信号の強度と比べて上位何番目の順位であるかを判定する判定手段と、
この判定手段で判定される順位を、検索対象の無線タグが存する方向の判別要素として報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする無線タグ探知装置。
【請求項2】
前記検出手段で検出される応答信号の強度のうち、前記検索対象の無線タグからの応答信号の強度およびその変化に応じて、その検索対象の無線タグまでの距離およびその距離が近づいたか離れたかを報知する報知手段、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の無線タグ探知装置。
【請求項3】
前記設定手段は、検索対象を指定するための指定手段と、この指定手段で指定される検索対象に対応するタグ識別情報を抽出する抽出手段とから成ることを特徴とする請求項1に記載の無線タグ探知装置。
【請求項4】
前記検出手段で検出される応答信号の強度のうち、前記抽出手段で抽出されたタグ識別情報を有する応答信号の強度およびその変化に応じて、その応答信号を送信した検索対象の無線タグまでの距離およびその距離が近づいたか離れたかを報知する報知手段、
をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の無線タグ探知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−193253(P2009−193253A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32265(P2008−32265)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】