説明

無線タグ読取装置および無線タグ読取方法

【課題】適切なQ値を自動的に設定し、迅速で確実なタイムスロット方式の読取処理を行う無線タグ読取装置および無線タグ読取方法を提供する。
【解決手段】複数の無線タグからの情報をタイムスロット方式のアンチコリジョン機能を用いて受信する無線タグ読取装置であって、乱数を生成するための数値をデフォルト値に設定して複数の乱数を生成する生成部と、この複数の乱数に基づいてタイムスロット方式の通信を複数の無線タグに対して行う送受信部と、送受信部が行うタイムスロット方式の通信において無線タグの読取枚数がゼロである場合、数値を増やして生成部で新たな乱数を生成して再びタイムスロット方式の通信を行い、再び無線タグの読取枚数がゼロである場合、再び前記数値を増やして生成部で新たな乱数を生成してタイムスロット方式の通信を行うという処理を反復する制御部をもつ無線タグ読取装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency Identification)タグ等の無線タグからEPC(Electronic Product Code)を読み取る無線タグ読取装置に関し、特に、タイムスロット方式のアンチコリジョン機能を用いた無線タグ読取装置および無線タグ読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、POSシステム(Point Of Sales system)等が利用される物流の分野では、RFID(Radio Frequency Identification)システムの導入が進められている。このRFIDシステムにおいては、取り扱うデータ量が膨大となる上、無数の国をまたぐことがあるため、SGTIN(Serialized Global Trade Item Number)やSSCC(Serial Shipping Container Code)といったグローバルで完全にユニークな物品管理のコード、いわゆるEPC(Electronic Product Code)が活用されている。
【0003】
この種のRFIDシステムを活用する場合、製造業者は、製品に対して1品毎に異なるSGTINコードが書き込まれた無線タグを取り付ける。また、各製品を梱包する梱包体に対しても、個々に異なるSSCCコードが書き込まれた無線タグを取り付ける。そして、梱包体に取り付けられた無線タグのSSCCコードと、その梱包体によって梱包された各製品にそれぞれ取り付けられた無線タグのSGTINコードとが紐付けされたデータベースを作成する。
【0004】
ところで、このRFIDシステムのような無線通信システムの特徴的な仕組みの1つに、無線タグ読取装置が複数の通信媒体(無線タグ)から略同時にデータを受信することを可能とする仕組みがある。この仕組みは、アンチコリジョン(衝突防止)と称される機能を利用することで実現できる。アンチコリジョンは、通信媒体の応答手順を制御する機能であり、国際標準規格に採用されている代表的なアルゴリズムとしてバイナリツリー方式とタイムスロット方式とがある。タイムスロット方式は、無線LAN(Local Area Network)等のパケット通信において広く使われているアクセス制御方式で、アロハ(ALOHA)方式とも呼ばれている。
【0005】
一般的なタイムスロット方式のアンチコリジョン機能について説明する。先ず、無線通信装置は、そのアンテナの交信領域内に存在する通信媒体に対し、読取り開始コマンド(QUERY)を発行する。このコマンドには、通信媒体が選択可能なタイムスロットの数を指定するための数値が含まれる。この数値は、ビット数(2:Qは≧0の固定値)を指定するもので、Q値と称される。
【0006】
読取り開始コマンドを受信した通信媒体は、そのコマンド中のQ値により指定されるタイムスロット数(2)の範囲内で乱数を生成する。例えばQ値が“1”であった場合、2は2なので、通信媒体は2ビットの乱数[00],[01],[10],[11]のいずれかを生成する。そして、生成された乱数に一致したタイミングのタイムスロットを選択して通信装置に応答を返す。
【0007】
この際、1つのタイムスロットに対して1つの通信媒体しか応答を返さなかった場合には、その通信媒体のデータは通信装置によって受信される。しかし、1つのタイムスロットに対して複数の通信媒体が同時に応答を返した場合には衝突となるので、それらの通信媒体のデータは受信されない。
【0008】
衝突となった通信媒体では、再度乱数を生成する。そして、生成された乱数に一致したタイミングのタイムスロットを選択して無線通信装置に応答を返す。このような一連の処理を繰り返すことにより、無線通信装置は複数の通信媒体から略同時にデータを受信できるようになる。このとき、Q値をいくつに設定するかによって通信できる通信媒体の数が決まってくるため、Q値を適切な値に設定する必要があり、Q値を適切な値に決定する技術が知られている。
【0009】
特許文献1は、検出しようとする通信媒体の数を取得し、この通信媒体の数に基づいてQ値を設定し、タイムスロット方式のアンチコリジョン機能を実現する無線通信装置を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1は、例えば、ダンボール等の梱包数を事前に入手しなければ、アンチコリジョンを実現することができない。従って、検出しようとする無線タグがどれくらいの数になるかわからない場合は、Q値を設定することができない。すなわち、無線タグを読み取る場合は、オペレータは、通信媒体数に関する情報を確認して必ずこれを入力しなければならないという負担を強いられることになる。
【0011】
また、タイムスロット方式のアンチコリジョン機能を用いる無線タグ読取装置においては、QUERY送信を行って無線タグに乱数を割り当てる。そして、QUERY Repで乱数を減算し、減算後0になった無線タグは無線タグ読取装置に返信を行う。ここで、0になったタグが1枚だけの場合、無線タグ読取装置は無線タグからの返信を正常に受信することができるが、複数の無線タグが同じ乱数を割り当てられた場合、同時に複数のタグが無線タグ読取装置に返信を行うので、コリジョンが発生し無線タグ読取装置は正常に受信できない。
【0012】
無線タグに割り当てる乱数の範囲はQ値によって決定され、Q値を小さく設定すると、割り当てる乱数の範囲が狭いため、同じ乱数が割り当てられる確率が高くコリジョンが発生しやすい。しかし、Q値を大きく設定すると、乱数の範囲が広いため、コリジョンが発生する確率は低くなる反面、QUERY Repで乱数を減算する範囲が増えるため、インベントリ終了までの時間が長くなる。このため、オペレータは、適切なQ値の設定を必要とされる。
【0013】
本発明は、適切なQ値を自動的に設定し、迅速で確実なタイムスロット方式の読取処理を行う無線タグ読取装置および無線タグ読取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
課題を解決する一実施形態は、
アンテナの交信領域内に存在する複数の無線タグからの情報をタイムスロット方式のアンチコリジョン機能を用いて受信する無線タグ読取装置において、
乱数を生成するための数値をデフォルト値に設定して複数の乱数を生成する生成部と、
前記生成部が生成した複数の乱数に基づいて、タイムスロット方式の通信を複数の無線タグに対して行う送受信部と、
前記送受信部が行うタイムスロット方式の通信において、無線タグの読取枚数がゼロである場合、前記数値を増やして前記生成部で新たな乱数を生成して再びタイムスロット方式の通信を行い、再び無線タグの読取枚数がゼロである場合、再び前記数値を増やして前記生成部で新たな乱数を生成してタイムスロット方式の通信を行うという処理を反復する制御部と、を具備することを特徴とする無線タグ読取装置である。
【発明の効果】
【0015】
無線タグの読取枚数に応じてQ値を自動的に増加することにより、オペレータは、特にQ値の設定を行うことなく、迅速に多くの無線タグを安定して読み取ることが可能な無線タグ読取装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線タグ読取システムの構成を示す説明図。
【図2】同じく無線タグ読取装置の外観の一例を示す外観図。
【図3】同じく無線タグ読取装置がRFIDタグを読み出す際の説明図。
【図4】同じく無線タグ読取装置が複数のRFIDタグを読み出す際の説明図。
【図5】同じく無線タグ読取装置のRFIDタグの読取処理の一例を示すフローチャート。
【図6】同じく無線タグ読取装置のRFIDタグの読取処理の他の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係るタイムスロット方式のアンチコリジョン機能を用いる無線タグ読取装置は、Q値の設定に応じて無線タグの読み取りに要する時間が変化する。読取りエリアに存在する無線タグの枚数に対し、Q値の設定が悪いとインベントリにかかる時間が長くなる。
【0018】
すなわち、無線タグに割り当てた乱数の範囲に比べ、読取エリアに存在する無線タグの枚数が少ない場合は、インベントリ終了までの時間が長くなる。無線タグ読取装置は、Q値の設定に応じた乱数の範囲で無線タグに乱数を割り当てる。そして、無線タグに割り当てたタグを減算していき、0になった無線タグから応答がくる。従って、無線タグの枚数が少ないのに広い範囲で乱数を割り当てると、無駄に減算する回数が多くなり、それによりインベントリ終了までの時間が長くなる。
【0019】
例えば、Q値を5に設定すると、無線タグに0〜31のいずれかの乱数を割り当てる。無線タグ読取装置は、無線タグが乱数0で応答している無線タグがないか確認する。確認後、乱数を1減らし、応答がないかを確認する。確認後、乱数を1減らす。この操作を31回繰り返す。ここで、無線タグが1枚しか存在しないとすると、無線タグ読取装置は無駄に30回、無線タグからの応答がないか確認することになる。しかし、ここで、仮にQ値を2に設定しておけば、乱数の範囲は0〜7までとなり、繰り返し回数が少なくてすみインベントリが早く終了する。
【0020】
一方、無線タグに割り当てた乱数の範囲に比べ、読取エリアに存在する無線タグの枚数が多い場合は、複数の無線タグに同じ乱数を割り当てられることになり、無線タグ読取装置が正常に読めない可能性が高くなる。そのため、全ての無線タグを読むためにインベントリラウンドを繰り返し行うことになり、インベントリ終了時間が長くなり、最悪の場合、まったく無線タグが読めなくなる。
【0021】
すなわち、Q値を大きな値に設定しておけば、無線タグが多数あった場合に1枚も読めないという問題がなくなる反面、少数しか無線タグがないのに大きなQ値を設定すると、インベントリ開始から終了まで無駄な時間ができ、次のインベントリ開始時間が遅くなる。インベントリ中に新たに無線タグ読取装置の読取エリアに無線タグが入ってきても、そのインベントリ中では、新たな無線タグを読むことはできない。そのため、インベントリを開始から終了までの時間はできるだけ短くする必要がある。
【0022】
無線タグ読取装置は、据え置きで使用する場合は、ある程度、読み取りエリアにある無線タグ枚数が予測できるため、オペレータも、無線タグ枚数に応じたQ値を適当な値に決めておくことができる。しかし、ハンディリーダのように移動しながらタグを読み取るタイプの無線タグ読取装置は、場所によって無線タグが多い場合と少ない場合があり、その度に、オペレータが手動でQ値の設定変更をするのは実用的ではない。本発明の一実施形態である無線タグ読取装置は、以下に詳細に説明するように、Q値を自動的に変化させることによって、オペレータは設定を自分で行うことなく、迅速かつ安定して無線タグを読むことができる。
【0023】
次に、図1を用いて、本発明の一実施形態に係る無線タグ読取装置1の具体的な構成の一例を説明する。無線タグ読取装置1は、図1に示すように、ネットワーク等を介して外部装置の一例であるホストコンピュータ2に接続されており、全体の動作を制御する制御部であるCPU11と、CPU11に接続されておりアプリケーションプログラム等を記憶しているFROM12と、過去に使用したEPC情報等や先のインベントリで読み取れた無線タグ枚数等を記憶している記憶領域であるRAM13を有している。ここで、CPU11は、特に、以下に詳細にするように、アンテナの交信領域内に存在する複数の無線タグからの情報をタイムスロット方式のアンチコリジョン機能をもつ無線通信を制御する働きをもっている。
【0024】
さらに、無線タグ読取装置1は、上述したCPU11にそれぞれ接続される、表示制御回路14と、表示制御回路14により表示が制御され操作情報やラベル情報を表示する表示部15と、上述したホストコンピュータ2と通信を行なってEPC情報に応じて文字情報等を取得する通信部16と、RFIDタグTと無線通信を行なってID情報等を読み取るアンテナ17と、RFIDタグTとアンテナ17を介して無線通信を行なってID情報等を読み取るRFID送受信部18と、オペレータにより操作情報等が入力される操作部19と、タイムスロット方式のアンチコリジョン機能に用いるための乱数を生成する乱数生成部20と、各部への電源を供給する電源回路22と、電源回路22に電源を供給するバッテリ23と、スキャナ制御回路24と、スキャナ制御回路24に制御されバーコード等を読み取るための読取部であるスキャナ25を有している。なお、図2に無線タグ読取装置1の外観を示している。また、無線タグ読取装置1は、図3に示すように、単一の無線タグであるRFIDタグTを読み取りの対象とすることができるが、この実施形態では、図4に示すように、数が未知数であるような複数の無線タグを対象とする場合について説明する。
【0025】
・要旨
本発明の一実施形態である無線タグ読取装置は、以下に述べるような要旨に基づくタイムスロット方式のアンチコリジョン機能を用いた読取処理を行う。すなわち、無線タグ読取装置がインベントリを開始し、タグが1枚も読むことができなかった場合、読めない原因として、『読み取りエリア内にタグが存在しない場合』、『タグが複数枚存在し、コリジョンが発生した場合』が考えられる。他に、金属等の影響などの環境的な要因やハード的な要因も考えられるが、この場合は、Q値の設定とは関係ないので考慮しない。無線タグ読取装置は、無線タグが読めない際に、どの理由で読めないかを判断することはできないが、ここでは、『タグが複数枚存在し、コリジョンが発生した場合』であると仮定する。本発明の一実施形態である無線タグ読取装置は、アンテナの交信領域内に存在する複数の無線タグからの情報をタイムスロット方式のアンチコリジョン機能を用いて以下のように読取処理を行う。
【0026】
すなわち、初めは、Q値を小さく設定しておく。そしてタグが1枚も読めずインベントリに失敗すれば、次のインベントリでは、前回のQ値の設定値から1段階大きなQ値を設定する。それでも読み取りに失敗すれば、もう一段階大きなQ値を設定してインベントリを行うというように、段階的にQ値を増やして、無線タグを読める確率を高くしていく。また、あらかじめ読取エリアに存在するタグの上限数を決めておき、その上限枚数の無線タグを安定して読めるQ値の設定でインベントリ実行し、無線タグが読めなければ、ここで無線タグは存在しないものと判断し、Q値の設定値を小さな値に戻す。
【0027】
例えば、Q値が3の場合最大16枚程度、Q値が4なら最大40枚程度、Q値が5なら100枚以上まで無線タグを読むことができる。無線タグ読取装置の読取エリアにある無線タグが最大70枚だったとわかっていれば、Q値が5で1枚も読むことができなければそれは、無線タグが存在しないから読めなかったと判断する。そして、次のインベントリ開始時はインベントリ時間の短縮のためにQ値を小さく設定する。
【0028】
ここで、インベントリラウンドにおいて、読めた無線タグの枚数に従って、Q値を変化させることがよい。すなわち、前のインベントリラウンドにおいて、読めた無線タグ枚数が0枚であれば、次のインベントリラウンドはQ値を1つ(または1段階)増加した後に、タイムスロット方式の無線通信を実行する。ここで、Q値に上限値を設け、Q値が上限値に達すれば小さいQ値にすることも望ましい。
【0029】
また、インベントリを終了する条件を設け、インベントリラウンドで読めた無線タグの枚数が、ある枚数以下であり、この状態が所定回数連続して起きた場合をインベントリ終了条件とすることがよい。一例として、1回のインベントリラウンドで、1枚も読めなかった場合、次のインベントリラウンドも1枚も読めなかったら、インベントリ終了とする。
【0030】
さらに、インベントリ開始時のQ値、または、過去に行ったインベントリの無線タグの読取枚数の平均値を求めて、Q値の設定値を決めることが望ましい。すなわち、一例として、2回前のインベントリで読み取れた無線タグ枚数が10枚、1回前が6枚あったとすると、次のインベントリは前2回のインベントリの無線タグの平均8枚に基づいて、Q値の設定値を決定することが望ましい。
【0031】
・タイムスロット方式の読取処理(図5)
次に、上述した各条件を用いたタイムスロット方式のアンチコリジョン機能を用いる読取処理を図5のフローチャートを用いて具体的かつ詳細に説明する。本発明の一実施形態である無線タグ読取装置1において、制御部であるCPU11および乱数生成部20は、初めに、操作部19等からの指示信号により無線タグの読み取りを命じられると、このインベントリが1回目のものか2回目以上のものかを判断する(ステップS11)。CPU11および乱数生成部20がこのインベントリを1回目のものと判断すれば、Q値をデフォルトの値、例えば、“2”や“3”等に設定される(ステップS12)。その後、CPU11および乱数生成部20は、インベントリラウンドを実行する(ステップS13)。すなわち、CPU11および乱数生成部20は、複数の無線タグに乱数を割り当てるのであり、先ず、無線タグ読取装置1のアンテナ17およびRFID送受信部18は、そのアンテナの交信領域内に存在する無線タグに対し、読取り開始コマンド(QUERY)を送信する(ステップS14)。
【0032】
このコマンドには、無線タグが選択可能なタイムスロットの数を指定するためのQ値と称される数値が含まれており、ビット数(例えば、2:Qは≧0の固定値)を指定する。そして、全ての無線タグにおいて、割り当てた乱数を−1だけ減算する(ステップS15)。ここで、無線タグ読取装置のアンテナ17およびRFID送受信部18は、乱数の値が“0”となっている無線タグからの信号を読み取ることができる。ただし、乱数の値が“0”となっている無線タグが複数あると、コリジョンが発生しているため、その無線タグからの信号は読み取れない。CPU11および乱数生成部20は、このような処理を2の(Q値−1)乗回、くり返したかどうかを判断し、まだ、終了していなければ、ステップS15に戻って読取処理を反復する(ステップS17)。CPU11および乱数生成部20は、このような処理を2の(Q値−1)乗回、くり返したと判断すれば、インベントリラウンドが終了したと認識する(ステップS18)。
【0033】
その後、CPU11および乱数生成部20は、インベントリ開始から現在までの無線タグの読み取り枚数が“0”であるかどうかを判断し、“0”であると判断すれば(ステップS19)、Q値を1(または1段階)増やす等のQ値の調整を行う(ステップS20)。CPU11および乱数生成部20は、インベントリ開始から現在までの無線タグの読み取り枚数が“0”でないと判断すれば、Q値を増加することなくステップS21に進み、インベントリラウンドで読めた無線タグの枚数が2回連続で0枚かを判断する(ステップS21)。CPU11および乱数生成部20は、無線タグの枚数が2回連続で0枚であると判断すれば、読み取るべき無線タグがなくなったとして読取処理を終了する。まだ、無線タグの枚数が2回連続で0枚であると判断されていなければ(ステップS21)、ステップS13に戻り、再び、インベントリラウンドを実行するものである。
【0034】
また、ステップS11において、CPU11および乱数生成部20は、インベントリが2回目か2回目以降であると判断すると、過去のインベントリの際の情報に基づいてQ値を設定するものである。すなわち、CPU11および乱数生成部20は、前回のインベントリラウンドで読めた無線タグが0枚かどうかを判断して(ステップS22)、前回のインベントリラウンドで読めた無線タグが0枚であると判断すれば、前回のインベントリラウンドでのQ値を設定する(ステップS23)。
【0035】
しかし、CPU11および乱数生成部20は、ステップS22で前回のインベントリラウンドで読めた無線タグが0枚ではないと判断すれば、ここで、前回のインベントリで読めた無線タグの枚数、または、過去のインベントリが複数回であれば、所定回数のインベントリにおける読めた無線タグの枚数の平均値からインベントリ開始時のQ値を設定する(ステップS24)。すなわち、過去5回のインベントリの読み取れた無線タグの枚数の平均値が4枚であれば、この4枚に基づいてQ値を決定する。Q値が決定すれば、CPU11および乱数生成部20は、ステップS13に進んで上述した手順でインベントリラウンドを実行する。
【0036】
このように、本発明の一実施形態にかかる無線タグ読取装置においては、無線タグの読取枚数に応じてQ値を自動的に増加することによって、オペレータの判断によりQ値の設定を行う必要がなく、また、迅速に多くの無線タグを安定して読み取ることが可能となる。
【0037】
・50枚の無線タグの読み取り例
また、次に、読取可能範囲に50枚の無線タグがある場合、Q値の初期値を“1”として、図5に示したタイムスロット方式のアンチコリジョン機能を用いた読取処理で読み取られる場合の具体例について、以下に説明する。
【0038】
インベントリ1回目において(ステップS11)、
インベントリラウンド1回目にて、Q値“1”となり(ステップS12,S13)、
タグ50枚に対して、0〜1の乱数を割り当てるため、高確率で複数の無線タグが同じ乱数を割り当てられるため、無線タグの読み取り枚数が“0”枚となり、
Q値を+1して、次のインベントリラウンドが実行されることとなる(ステップS20)。
【0039】
インベントリラウンド2回目において、Q値“2”となり(ステップS13)、
タグ50枚に対して、0〜3の乱数を割り当てるため、高確率で複数の無線タグが同じ乱数を割り当てられるため、無線タグの読み取り枚数が“0”枚となり、
Q値を+1する。
【0040】
インベントリラウンドで読めた無線タグが2回連続0枚なので、インベントリは終了する(ステップS21)。
【0041】
無線タグ読取装置の、読み取った無線タグ枚数は、0枚となるため、次のインベントリが実行されることとなる。
【0042】
インベントリ2回目において(ステップS11)、
インベントリラウンド1回目にて、Q値“3”となり(ステップS22、S23)、
タグ50枚に対して、0〜7の乱数を割り当てるため、高確率で複数の無線タグが同じ乱数を割り当てられるため、無線タグの読み取り枚数が“0”枚となり、
Q値を+1して、次のインベントリラウンドが実行されることとなる(ステップS20)。
【0043】
インベントリラウンド2回目において、Q値“4”となり(ステップS13)、
タグ50枚に対して、0〜15の乱数を割り当てる。この場合、無線タグを読める可能性は高くなる。同じ乱数が割り当てられない無線タグが数枚ある。現在のQ値で終了条件を満たすまで、インベントリラウンドをくり返す(ステップS13〜S17)。
【0044】
インベントリラウンドをくり返すごとに乱数を割り当てる無線タグ枚数が減るために、同じ乱数が同じになる確率は低くなるため、無線タグ読取装置1が読み取った無線タグ枚数は、50枚となる。
【0045】
インベントリラウンド3回目において、前回のインベントリラウンドで無線タグ50枚を読めたので、その枚数に適したQ値を設定する(ステップS24)。目安として、乱数の最大値が無線タグ枚数の半分程度とする。ここでは、Q値“5”となる。
【0046】
以上のように、読取可能範囲に50枚の無線タグがある場合、Q値の初期値を“1”として、図5に示したタイムスロット方式のアンチコリジョン機能を用いた読取処理で読まれた場合の具体例について説明した。このように、オペレータは、読み取るべき無線タグの枚数が未知数であっても、無線タグ読取装置の制御部であるCPU11および乱数生成部20が自動的に最適なQ値を設定するため、オペレータは、特にQ値の設定を行うことなく、迅速に多くの無線タグを安定して読み取ることが可能となる。
【0047】
・タイムスロット方式の読取処理(図6)
次に、複数のフラグをRAM13等に用意してQ値を設定した実施形態を図6のフローチャートを示して説明する。なお、図6のフローチャートでは、図5のフローチャートのステップS13〜S18に示したような、インベントリラウンドの詳細は省略する。
【0048】
すなわち、本発明の一実施形態にかかる無線タグ読取装置においては、CPU11および乱数生成部20は、過去のインベントリで読めたタグ枚数の平均値からQ値の設定値を決定する(ステップS31)。次に、CPU11および乱数生成部20は、インベントリの対象がRAM13等の記憶領域であるフラグAおよびフラグBであるか、フラグBのみであるかを判断し、フラグA及びフラグBが対象であると判断するとステップS33に進む。
【0049】
CPU11および乱数生成部20は、インベントリの対象がフラグAおよびフラグBであるとすると、まず初めに、フラグAでインベントリラウンドを実行する(ステップS33)。そして、CPU11および乱数生成部20は、インベントリラウンドで読めたタグ枚数が0枚となれば(ステップS34)、Q値を+1(または1段階)だけ増加してステップS36に進む(ステップS35)。CPU11および乱数生成部20は、インベントリラウンドで読めたタグ枚数が0枚でなければ、Q値を変えることなくステップS36に進む。そして、インベントリラウンドで2回連続(ここは3回または3回以上連続であってもよい)で読み取れた無線タグが0でなければ、ステップS33に戻り、再びインベントリラウンドが実行される。CPU11および乱数生成部20は、インベントリラウンドで2回連続(ここは3回または3回以上連続であってもよい)して読み取れた無線タグが0であれば、フラグAのインベントリで読めた無線タグの枚数に基づいて、Q値の設定値を決定する(ステップS37)。すなわち、フラグAの無線タグをインベントリし、その後フラグBの無線タグをインベントリするという場合、フラグAで読めた無線タグはフラグBに移る。そのため、フラグBの無線タグ枚数は、少なくとも、フラグAで読めた無線タグ枚数以上であると考えられる。そこで、フラグBのインベントリは開始時、Q値の設定をフラグAで読めた無線タグ枚数から決定する。
【0050】
CPU11および乱数生成部20は、ステップS37で設定したQ値に応じて、次に、フラグBでインベントリラウンドを実行する(ステップS38)。そして、CPU11および乱数生成部20は、インベントリラウンドで読めたタグ枚数が0であると判断すれば(ステップS39)、Q値を+1(または1段階)だけ増加してステップS36に進む(ステップS40)。CPU11および乱数生成部20は、インベントリラウンドで読めたタグ枚数が0枚でないと判断すれば、Q値を変えることなくステップS41に進む。そして、インベントリラウンドで2回連続(ここは3回または3回以上連続であってもよい)で読み取れた無線タグが0でなければ、ステップS38に戻り、再びインベントリラウンドが実行される。CPU11および乱数生成部20は、インベントリラウンドで2回連続(ここは3回または3回以上連続であってもよい)して読み取れた無線タグが0であると判断すれば、フラグBでのインベントリラウンドを終了し、インベントリを終了する。
【0051】
このように、フラグAおよびフラグBの両方を用いてインベントリを実行することで、少なくとも、フラグBにおいては、フラグAで読めたタグ枚数を参照できるので、実際の無線タグの読取状況に反映して適切なQ値の設定が可能となる。
【0052】
また、ステップS32において、対象フラグがフラグBのみである場合は、ステップS42以降の処理が行われる。すなわち、CPU11および乱数生成部20は、インベントリの対象がフラグBのみであるとすると、フラグBでインベントリラウンドを実行する(ステップS42)。そして、CPU11および乱数生成部20は、インベントリラウンドで読めたタグ枚数が0枚であると判断すれば(ステップS43)、Q値を+1(または1段階)だけ増加してステップS45に進む(ステップS44)。CPU11および乱数生成部20は、インベントリラウンドで読めたタグ枚数が0枚でないと判断すれば、Q値を変えることなくステップS45に進む。そして、インベントリラウンドで2回連続(ここは3回または3回以上連続であってもよい)で読み取れた無線タグが0であるかどうかを判断し、2回連続(ここは3回または3回以上連続であってもよい)で読み取れた無線タグが0である場合は、インベントリをここで終了する。
【0053】
以上のように、複数のフラグA,Bを用いた場合でも、制御部であるCPU11および乱数生成部20で、Q値を変化させることにより、オペレータがQ値の設定値を気にすることなく、安定して無線タグを読めるようにする。
【0054】
以上記載した様々な実施形態は複数同時に実施することが可能であり、これらの記載により、当業者は本発明を実現することができるが、更にこれらの実施形態の様々な変形例を思いつくことが当業者によって容易であり、発明的な能力をもたなくとも様々な実施形態へと適用することが可能である。従って、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0055】
1…RFID読取装置、2…ホストコンピュータ、11…CPU(Q値設定部)、12…FROM、13…RAM、14…表示制御回路、15…表示部、16…通信部、17…アンテナ、18…RFID送受信部、19…操作部、20…乱数生成部、22…電源回路、23…バッテリ、24…スキャナ制御回路、25…スキャナ、D…ダンボール、T…無線タグ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0056】
【特許文献1】特開2009−105661号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナの交信領域内に存在する複数の無線タグからの情報をタイムスロット方式のアンチコリジョン機能を用いて受信する無線タグ読取装置であって、
乱数を生成するための数値をデフォルト値に設定して複数の乱数を生成する生成部と、
前記生成部が生成した複数の乱数に基づいて、タイムスロット方式の通信を複数の無線タグに対して行う送受信部と、
前記送受信部が行うタイムスロット方式の通信において、無線タグの読取枚数がゼロである場合、前記数値を増やして前記生成部で新たな乱数を生成して再びタイムスロット方式の通信を行い、再び無線タグの読取枚数がゼロである場合、再び前記数値を増やして前記生成部で新たな乱数を生成してタイムスロット方式の通信を行うという処理を反復する制御部と、を具備することを特徴とする無線タグ読取装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記送受信部によるタイムスロット方式の通信において、所定回数、読取り枚数0個が繰り返されれば、前記生成部および送受信部による通信処理を終了することを特徴とする請求項1記載の無線タグ読取装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記送受信部によるタイムスロット方式の通信において、読取枚数0個が繰り返されても、所定値以上には前記数値を増加しないことを特徴とする請求項1記載の無線タグ読取装置。
【請求項4】
前記生成部は、既に前記タイムスロット方式の通信を行った後は、過去に読めた無線タグの枚数に基づいて、前記数値を設定することを特徴とする請求項1記載の無線タグ読取装置。
【請求項5】
アンテナの交信領域内に存在する複数の無線タグからの情報をタイムスロット方式のアンチコリジョン機能を用いて受信する無線タグ読取装置の無線タグ読取方法であって、
乱数を生成するための数値をデフォルト値に設定して複数の乱数を生成し、
前記生成した複数の乱数に基づいて、タイムスロット方式の通信を前記複数の無線タグに対して行い、
前記タイムスロット方式の通信において、前記無線タグの読取枚数がゼロである場合、前記数値を増やして新たな乱数を生成して前記新たな乱数に基づいてタイムスロット方式の通信を行うことを特徴とする無線タグ読取方法。
【請求項6】
前記タイムスロット方式の通信において、所定回数、読取り枚数0個が繰り返されれば、前記タイムスロット方式の通信を終了することを特徴とする請求項5記載の無線タグ読取方法。
【請求項7】
前記タイムスロット方式の通信において、読取枚数0個が繰り返されても、所定値以上には前記数値を増加しないことを特徴とする請求項5記載の無線タグ読取方法。
【請求項8】
既に前記タイムスロット方式の通信を行った後は、過去に読めた無線タグの枚数に基づいて、前記数値を設定することを特徴とする請求項5記載の無線タグ読取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−188151(P2011−188151A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49919(P2010−49919)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】