無線タグ通信装置
【課題】 無線タグの存在する方向を精度良く検出し得る無線タグ通信装置を提供する。
【解決手段】 無線タグ14からの返信信号を受信するための複数の受信アンテナ素子28を有する受信アンテナ30と、その受信アンテナ30による受信指向性を制御するPAA処理部54と、前記受信アンテナ30により受信された受信信号に含まれる前記無線タグ14による変調成分をI成分及びQ成分毎に抽出する反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88と、それら反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により抽出される変調成分に基づいて前記無線タグ14が存在する方向を検出する方向検出部62とを、有することから、前記無線タグ14からの反射波成分を参照することでその無線タグ14の存在する方向を詳細に求めることができる。
【解決手段】 無線タグ14からの返信信号を受信するための複数の受信アンテナ素子28を有する受信アンテナ30と、その受信アンテナ30による受信指向性を制御するPAA処理部54と、前記受信アンテナ30により受信された受信信号に含まれる前記無線タグ14による変調成分をI成分及びQ成分毎に抽出する反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88と、それら反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により抽出される変調成分に基づいて前記無線タグ14が存在する方向を検出する方向検出部62とを、有することから、前記無線タグ14からの反射波成分を参照することでその無線タグ14の存在する方向を詳細に求めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線にて情報の書き込みや読み出しができる無線タグとの間で通信を行う無線タグ通信装置に関し、特に、無線タグ方向検知技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の情報が記憶された小型の無線タグ(応答器)から所定の無線タグ通信装置(質問器)により非接触にて情報の読み出しを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムが知られている。このRFIDシステムは、無線タグが汚れている場合や見えない位置に配置されている場合であっても無線タグ通信装置との通信によりその無線タグに記憶された情報を読み出すことが可能であることから、商品管理や検査工程等の様々な分野において実用が期待されている。
【0003】
上記無線タグ通信装置の一態様として、前記無線タグとの間で通信を行うことで、その無線タグの存在する方向を検出する技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載されたRFID検索装置がそれである。この技術によれば、前記無線タグとの通信指向性を切り換えつつ、受信感度が最も良くなる方向を検出することにより、その無線タグの存在する方向を検出できるとされている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−271229号公報
【0005】
しかし、前記従来の技術のように、前記無線タグとの通信指向性を切り換えつつ、受信感度が最も良くなる方向を検出する態様では、その受信感度が最も良くなる方向が必ずしも前記無線タグの存在する方向とは一致しないことから、無線タグ方向検知の精度向上には限界があった。このため、無線タグの存在する方向を精度良く検出し得る無線タグ通信装置の開発が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、無線タグの存在する方向を精度良く検出し得る無線タグ通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、無線タグに向けて送信信号を送信すると共に、その送信信号に応じてその無線タグから返信される返信信号を受信してその無線タグとの間で情報の通信を行う無線タグ通信装置であって、前記無線タグからの返信信号を受信するための複数のアンテナ素子を有する受信アンテナを備えた受信部と、その受信部により受信された、前記送信信号に起因して発生する回り込み信号を含み得る各受信信号の位相を制御することにより受信指向性を制御する受信指向性制御部と、前記受信アンテナにより受信された受信信号に含まれる前記無線タグによる変調成分を抽出する変調成分抽出部と、その変調成分抽出部により抽出される変調成分に基づいて前記無線タグが存在する方向を検出する方向検出部とを、有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明によれば、前記無線タグからの返信信号を受信するための複数のアンテナ素子を有する受信アンテナを備えた受信部と、その受信部により受信された、前記送信信号に起因して発生する回り込み信号を含み得る各受信信号の位相を制御することにより受信指向性を制御する受信指向性制御部と、前記受信アンテナにより受信された受信信号に含まれる前記無線タグによる変調成分を抽出する変調成分抽出部と、その変調成分抽出部により抽出される変調成分に基づいて前記無線タグが存在する方向を検出する方向検出部とを、有することから、前記無線タグからの反射波成分を参照することでその無線タグの存在する方向を詳細に求めることができる。すなわち、無線タグの存在する方向を精度良く検出し得る無線タグ通信装置を提供することができる。
【0009】
ここで、好適には、前記方向検出部は、前記変調成分抽出部により抽出される変調成分が最大となる方向を前記無線タグが存在する方向として検出するものである。このようにすれば、前記受信指向性制御部によりメインローブ方向を制御すること等により、前記無線タグの存在する方向を詳細に求めることができる。
【0010】
また、好適には、前記送信信号に起因して前記受信部に発生する回り込み信号を除去するためのキャンセル信号を発生させ、前記受信信号にそのキャンセル信号を合成するキャンセル部を有するものである。このようにすれば、前記受信信号に含まれる回り込み信号を抑制して信号対雑音比を向上させることができ、通信距離を伸ばすことができる。
【0011】
また、好適には、前記受信部は、増幅率を制御し得る可変増幅部を前記複数のアンテナ素子それぞれに対応して備えたものである。このようにすれば、前記複数のアンテナ素子により受信された受信信号それぞれをディジタル信号に変換するA/D変換部において分解能を可及的に高めることができる。
【0012】
また、好適には、前記受信部は、前記可変増幅部により増幅された受信信号の振幅をその可変増幅部の増幅率の逆数だけ変化させる素子間ゲイン差補正部を前記複数の可変増幅部それぞれに対応して備えたものである。このようにすれば、ノイズの影響を減少させられると共に、信号対雑音比を悪化させることなく精度の良い方向検知が可能とされる。
【0013】
また、好適には、前記方向検出部は、前記複数のアンテナ素子によりそれぞれ受信された受信信号の振幅が略同一となるように前記可変増幅部の増幅率を制御するものである。このようにすれば、振幅の略等しい複数の受信信号に基づいて前記無線タグの存在する方向を検出することができる。
【0014】
また、好適には、前記方向検出部は、前記複数のアンテナ素子によりそれぞれ受信された受信信号の振幅が略同一になるように前記可変増幅部の増幅率を制御する第1のモードと、それら複数のアンテナ素子によりそれぞれ受信された受信信号を同一の増幅率で増幅するように前記可変増幅部を制御する第2のモードとを、切り換え得るものである。このようにすれば、態様に応じて前記可変増幅部のモードを切り換えることで、受信信号を好適に処理することができる。
【0015】
また、好適には、前記受信信号に含まれる前記無線タグによる変調成分の開始位置を検出する変調成分開始位置検出部を有し、前記変調成分抽出部は、その変調成分開始位置検出部により検出される開始位置から所定長の前記変調成分を抽出するものであり、前記方向検出部は、その変調成分抽出部により抽出される変調成分の振幅の平均値に基づいて前記無線タグが存在する方向を検出するものである。このようにすれば、実用的な態様で前記無線タグの存在する方向を検出することができる。
【0016】
また、好適には、前記変調成分抽出部は、前記受信部により受信された受信信号に含まれる前記無線タグによる変調成分のうち予め定められた所定長の変調成分を抽出するものであり、前記方向検出部は、その変調成分抽出部により抽出される変調成分の振幅の平均値に基づいて前記無線タグが存在する方向を検出するものである。このようにすれば、実用的な態様で前記無線タグの存在する方向を検出することができる。
【0017】
また、好適には、前記受信部は、前記受信アンテナにより受信された受信信号を互いに直交するI相信号及びQ相信号に変換して直交復調する復調部を備えたものであり、前記変調成分抽出部は、それらI相信号及びQ相信号それぞれに含まれる前記無線タグによる変調成分を抽出するものであり、前記方向検出部は、前記I相成分及びQ相信号それぞれに含まれる前記無線タグによる変調成分の絶対値の平均を振幅近似値として算出し、各振幅近似値の二乗の平方根が最大値をとる方向を前記無線タグが存在する方向として検出するものである。このようにすれば、実用的な態様で前記無線タグの存在する方向を検出することができる。
【0018】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
図1は、本発明が好適に用いられる無線タグ通信システム10を説明する図である。この無線タグ通信システム10は、本発明の一実施例である無線タグ通信装置12と、その無線タグ通信装置12の通信対象である単数乃至は複数(図1では単数)の無線タグ14とから構成される所謂RFID(Radio Frequency Identification)システムであり、上記無線タグ通信装置12はそのRFIDシステムの質問器として、上記無線タグ14は応答器としてそれぞれ機能する。すなわち、上記無線タグ通信装置12から質問波Fc(送信信号)が上記無線タグ14に向けて送信されると、その質問波Fcを受信した上記無線タグ14において所定の情報信号(データ)によりその質問波Fcが変調され、応答波Fr(返信信号)として上記無線タグ通信装置12に向けて返信されることで、その無線タグ通信装置12と無線タグ14との間で情報の通信が行われる。
【0020】
図2は、本実施例の無線タグ通信装置12の構成を説明する図である。この図2に示すように、上記無線タグ通信装置12は、上記無線タグ14に対する情報の読み書きや、その無線タグ14の方向検知等を実行するためにその無線タグ14との間で情報の通信を行うものであり、送信信号をディジタル信号として出力したり、上記無線タグ14からの返信信号を復調する等のディジタル信号処理を実行するDSP(Digital Signal Processor)16と、そのDSP16により出力された送信信号をアナログ信号に変換する送信信号D/A変換部18と、所定の局部発振信号を出力する局部発振信号出力部20と、上記送信信号D/A変換部18によりアナログ信号に変換された送信信号の周波数をその局部発振信号出力部20から出力される局部発振信号の周波数だけ高くするアップコンバータ22と、そのアップコンバータ22から出力される送信信号を増幅する送信信号増幅部24と、その送信信号増幅部24により増幅された送信信号を質問波Fcとして上記無線タグ14に向けて送信するための送信アンテナ26と、その質問波Fcに応じて無線タグ14から返信される応答波Frを受信するための複数(図2では3つ)の受信アンテナ素子28a、28b、28c(以下、特に区別しない場合には単に受信アンテナ素子28と称する)を有する受信アンテナ30と、前記送信信号に起因して発生する回り込み信号を除去するためのキャンセル信号を発生させ、上記複数の受信アンテナ素子28により受信された受信信号それぞれに合成するキャンセル部32と、そのキャンセル部32においてキャンセル信号が合成された受信信号それぞれの周波数を上記局部発振信号出力部20から出力される局部発振信号の周波数だけ低くする複数(図2では3つ)のダウンコンバータ34a、34b、34c(以下、特に区別しない場合には単にダウンコンバータ34と称する)と、それらダウンコンバータ34からそれぞれ出力されるダウンコンバートされた受信信号を増幅する増幅率G1、G0、G−1が可変である複数(図2では3つ)の可変増幅部36a、36b、36c(以下、特に区別しない場合には単に可変増幅部36と称する)と、それら複数の可変増幅部36により増幅された受信信号をディジタル信号に変換する複数(図2では3つ)の受信信号A/D変換部38a、38b、38c(以下、特に区別しない場合には単に受信信号A/D変換部38と称する)と、それら受信信号A/D変換部38によりディジタル信号に変換された受信信号を記憶すると共に、上記DSP16からの指令に応じてそのDSP16にそれら受信信号を出力させる受信信号記憶部であるメモリ部40とを、備えて構成されている。
【0021】
上記キャンセル部32は、上記アップコンバータ22から出力される送信信号をキャンセル信号として、その位相を制御する複数(図2では3つ)のキャンセル信号位相制御部42a、42b、42c(以下、特に区別しない場合には単にキャンセル信号位相制御部42と称する)と、それら複数のキャンセル信号位相制御部42によりそれぞれ位相が制御されたキャンセル信号の振幅を制御する複数(図2では3つ)のキャンセル信号振幅制御部44a、44b、44c(以下、特に区別しない場合には単にキャンセル信号振幅制御部44と称する)と、それら複数のキャンセル信号振幅制御部44によりそれぞれ振幅が制御されたキャンセル信号を上記複数の受信アンテナ素子28によりそれぞれ受信される受信信号に合成(加算)して上記複数のダウンコンバータ34に供給する複数(図2では3つ)のキャンセル信号合成部46a、46b、46c(以下、特に区別しない場合には単にキャンセル信号合成部46と称する)とを、備えて構成されている。上記キャンセル信号位相制御部42及びキャンセル信号振幅制御部44は、好適には、上記DSP16から出力される制御信号に応じてその移相量及び増幅率を変更し得るものである。
【0022】
前記DSP16は、CPU、ROM、及びRAM等から成り、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う所謂マイクロコンピュータシステムであり、前記無線タグ14への送信信号に対応する送信ビット列(コマンドビット列)を生成する送信ビット列生成部48と、その送信ビット列生成部48から出力されたディジタル信号をFSK方式で符号化するFSK符号化部50と、そのFSK符号化部50により符号化された信号をAM方式で変調して上記送信信号D/A変換部18に供給するAM変調部52と、前記メモリ部40から読み出される複数の受信信号それぞれに所定のウェイトを乗算することによりフェイズドアレイ処理を行うPAA(Phased Array Antenna)処理部54と、そのPAA処理部54によりフェイズドアレイ処理された受信信号をAM方式で復調してAM復調波を検出するAM復調部56と、そのAM復調部56により復調されたAM復調波をFSK方式で復号化するFSK復号部58と、そのFSK復号部58により復号化された復号信号を解釈して前記無線タグ14の変調に関する情報信号を読み出す返答ビット列解釈部60と、前記無線タグ14が存在する方向を検出する方向検出部62とを、機能的に備えて構成されている。ここで、上記受信アンテナ30、キャンセル部32、ダウンコンバータ34、可変増幅部36、メモリ部40、及びDSP16に機能的に備えられたPAA処理部54、AM復調部56、FSK復号部58、返答ビット列解釈部60、及び方向検出部62等から前記無線タグ通信装置12の受信部が構成されている。
【0023】
上記FSK復号部58は、前記受信信号に含まれる前記無線タグ14による変調成分(反射波成分)の開始位置を検出する変調成分開始位置検出部としても機能するものであり、そのFSK復号部58により検出された変調成分の開始位置を示す情報(タイミング情報)が上記方向検出部62に供給されるようになっている。また、後述するAM変調部56におけるI相BPF76及びQ相BPF82のうち何れか一方の出力を上記FSK復号部58に入力させるためのI,Q切替指令をそのAM変調部56に供給する。
【0024】
前記PAA処理部54は、前記受信アンテナ30により受信される受信信号強度等に基づいて前記複数の受信アンテナ素子28により受信された受信信号それぞれに与えるPAAウェイトを算出するPAAウェイト制御部64と、そのPAAウェイト制御部64により算出されるPAAウェイトを前記メモリ部40から読み出される受信信号それぞれに乗算して上記AM復調部56に供給する複数(図2では3つ)の受信PAAウェイト乗算部66a、66b、66c(以下、特に区別しない場合には単に受信PAAウェイト乗算部66と称する)とを、備えて構成されており、前記無線タグ14との間の通信における受信指向性を制御する。すなわち、前記PAA処理部54は、前記受信アンテナ30による受信指向性を制御する受信指向性制御部である。ここで、図2に示すように、前記送信アンテナ26及び受信アンテナ30が比較的近くに配設されている場合には、送信信号及び受信信号を分離するための送受分離手段(サーキュレータや方向性結合器/送信アンテナとは別体である受信アンテナ)が設けられるが、その送受信分離手段を介して送信側からの回り込み信号が混入する可能性がある。前記キャンセル部32は、この送信側からの回り込み信号を抑制するためのものであるが、そのキャンセル部32による抑制が十分でないうちは送信側からの回り込み信号を含む受信信号が前記DSP16に入力されることになり、前記PAA処理部54は、斯かる送信側からの回り込み信号を含んだ各受信信号に所定のウェイトを乗算して(或いは、少なくとも位相を所定量ずらして)受信指向性を制御するものである。
【0025】
図3は、前記AM復調部56の構成を詳しく説明する図である。この図3に示すように、前記AM復調部56は、前記PAA処理部54から供給される受信信号それぞれのゲイン差すなわち前記複数の受信アンテナ素子28相互間のゲイン差を補正する複数(図3では3つ)の素子間ゲイン差補正部68a、68b、68c(以下、特に区別しない場合には単に素子間ゲイン差補正部68と称する)と、それら複数の素子間ゲイン差補正部68から出力される受信信号を合成する受信信号合成部70と、その受信信号合成部70により合成された合成信号に余弦波テーブル74から読み出される余弦波を掛け合わせることによりI相信号に変換するI相変換部72と、そのI相変換部72から出力されるI相信号のうち所定の周波数帯域の信号のみを通過させるI相BPF(Band Pass Filter)76と、上記受信信号合成部70により合成された合成信号に正弦波テーブル80から読み出される余弦波を掛け合わせることによりQ相信号に変換するQ相変換部78と、そのQ相変換部78から出力されるQ相信号のうち所定の周波数帯域の信号のみを通過させるQ相BPF82と、前記FSK復号部58から供給されるI,Q切替指令に応じて上記I相BPF76及びQ相BPF82のうち何れか一方の出力を前記FSK復号部58に供給するIQ選択部84とを、備えて構成されている。なお、上記I相BPF76から出力されるI相信号及びQ相BPF82から出力されるQ相信号が前記方向検出部62に供給されるようになっている。
【0026】
上記複数の素子間ゲイン差補正部68は、それぞれ減衰率1/G1′、1/G0′、1/G−1′にて各受信信号を減衰させる第2の可変増幅部(可変減衰部)として機能するものであり、その増幅率(減衰率)は、前記方向検出部62から供給される制御指令に従って適宜設定される。例えば、減衰率を定める値G0′、G1′、G−1′が対応する前記可変増幅部36の増幅率G0、G1、G−1と等しい値とされること、すなわちG0′=G0、G1′=G1、G−1′=G−1とされることで、各素子間ゲイン差補正部68からの出力レベルが対応する受信アンテナ素子28により受信された受信信号のレベルと同等とされる。この設定にて出力される受信信号は、対象となる無線タグ14の方向を検出するための制御に好適に用いられる。また、G0′=G1′=G−1′=1とされることで、上記複数の素子間ゲイン差補正部68の動作が無効とされる。この設定にて出力される受信信号は、対象となる無線タグ14との間で情報の通信を行うための制御に好適に用いられる。このように、上記複数の素子間ゲイン差補正部68は、前記方向検出部62から供給される制御指令に従って、前記複数の受信アンテナ素子28によりそれぞれ受信された受信信号の振幅が略同一になるように増幅率を制御する第1のモードと、それら複数の受信アンテナ素子28によりそれぞれ受信された受信信号を同一の増幅率で増幅するように制御する第2のモードとを、切り換え得るものである。
【0027】
図4は、前記方向検出部62の構成を詳しく説明する図である。この図4に示すように、前記方向検出部62は、前記AM復調部56のI相BPF76から供給されるI相信号(I成分)に含まれる前記無線タグ14による変調成分の振幅(近似計算により求められる値を含む、以下の説明において同じ)I′を検出する反射波I成分振幅検出部86と、前記AM復調部56のQ相BPF82から供給されるQ相信号(Q成分)に含まれる前記無線タグ14による変調成分の振幅Q′を検出する反射波Q成分振幅検出部88と、上記反射波I成分振幅検出部86により検出される反射波I成分の振幅I′及び反射波Q成分振幅検出部88により検出される反射波Q成分の振幅Q′から前記無線タグ14による変調成分の振幅を検出する反射波振幅検出部90と、前記PAA処理部54から供給される各受信信号に応じて前記複数の可変増幅部36における増幅率G1、G0、G−1及び前記AM復調部の素子間ゲイン差補正部68における増幅率(減衰率)1/G1′、1/G0′、1/G−1′を制御する増幅率制御部92とを、備えて構成されている。すなわち、上記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88は、前記受信アンテナ30により受信された受信信号に含まれる前記無線タグ14による変調成分を抽出する変調成分抽出部として機能する。また、上記反射波振幅検出部90が、上記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により抽出される変調成分に基づいて前記無線タグ14が存在する方向を検出する実質的な方向検出部として機能する。
【0028】
上記反射波I成分振幅検出部86は、好適には、前記無線タグ14からの応答データの応答期間(応答データビット区間)におけるI相信号の絶対値の平均を上記振幅I′として検出する。また、上記反射波Q成分振幅検出部88は、好適には、前記無線タグ14からの応答データの応答期間におけるQ相信号の絶対値の平均を上記振幅Q′として検出する。また、上記増幅率制御部92は、好適には、前記第1のモードにおいて、前記複数の受信アンテナ素子28によりそれぞれ受信された受信信号の振幅が略同一となるように前記素子間ゲイン差補正部68それぞれの増幅率を定める値G0′、G1′、G−1′を対応する前記可変増幅部36の増幅率G0、G1、G−1と等しい値とし、前記第2のモードにおいて、前記複数の受信アンテナ素子28によりそれぞれ受信された受信信号を同一の増幅率で増幅するように前記素子間ゲイン差補正部68それぞれの増幅率を定める値G1′、G0′、G−1′を全て1とする。
【0029】
図5は、前記無線タグ14の構成を説明する図である。この図5に示すように、前記無線タグ14は、前記無線タグ通信装置12との間で信号の送受信を行うためのアンテナ部94と、そのアンテナ部94により受信された信号を処理するためのIC回路部96とを、備えて構成されている。そのIC回路部96は、上記アンテナ部94により受信された前記無線タグ通信装置12からの質問波(送信信号)Fcを整流する整流部98と、その整流部98により整流された質問波Fcのエネルギを蓄積するための電源部100と、上記アンテナ部94により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部108に供給するクロック抽出部102と、所定の情報信号を記憶し得る情報記憶部として機能するメモリ部104と、上記アンテナ部94に接続されて信号の変調及び復調を行う変復調部106と、上記整流部98、クロック抽出部102、及び変復調部106等を介して上記無線タグ14の作動を制御するための制御部108とを、機能的に含んでいる。この制御部108は、前記無線タグ通信装置12と通信を行うことにより上記メモリ部104に上記所定の情報を記憶する制御や、上記アンテナ部94により受信された質問波Fcを上記変復調部106において上記メモリ部104に記憶された情報信号に基づいて変調したうえで応答波(返信信号)Frとして上記アンテナ部94から反射返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0030】
図6は、前記無線タグ14からの返信信号に含まれる変調成分について説明する図であり、前記AM変調部56にて変換されたI成分出力又はQ成分出力の一例を示している。図5を用いて前述したように、前記無線タグ14は、前記無線タグ通信装置12から送信された質問波(搬送波)Fcを前記メモリ部104に記憶された情報信号に基づいて変調した上で返信するものであることから、その無線タグ14からの応答波Frは、その変調に関する変調成分を搬送波に乗せた信号になる。このため、前記I相BPF76から出力されるI相成分(或いは、Q相BPF82から出力されるQ相成分)は、受信信号の先頭位置から前記無線タグ14による変調成分が始まるわけでは必ずしもなく、例えば図6に示すように、先頭位置から所定時間進んだ位置より前記無線タグ14による変調成分が開始され、タグ応答期間分だけ継続して終了する信号になる。前記FSK復号部58は、前記受信信号に含まれる前記無線タグ14による変調成分の開始位置を検出する変調成分開始位置検出部として機能するものであり、そのFSK復号部58により検出された前記無線タグ14による変調成分の開始位置を示すタイミング情報は、前記方向検出部62の反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88に供給される。そして、それら反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88は、好適には、前記FSK復号部58により検出される開始位置から所定長の前記変調成分をそれぞれ抽出し、前記方向検出部62は、それら反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により抽出される変調成分の振幅I′及びQ′の平均値に基づいて前記無線タグ14が存在する方向を検出する。これに関して以下に詳述する。
【0031】
図7は、前記無線タグ14と、前記無線タグ通信装置12の送信アンテナ26及び受信アンテナ30との相対位置関係を例示する図である。また、図8は、図7に示す受信アンテナ30により受信された受信信号に含まれる前記無線タグ14による変調成分からその無線タグ14の方向を検知する方法について詳しく説明する図であり、送信1素子(送信アンテナ26)、受信3素子(受信アンテナ素子28a、28b、28c)である場合の受信信号を複素平面にベクトル表示したものである。以下、n=0は受信アンテナ素子28b、n=1は受信アンテナ素子28a、n=−1は受信アンテナ素子28cに対応する信号を表す。この図8に示すように、各受信アンテナ素子28により受信される受信信号OAnには、前記送信アンテナ26からの直接波成分OBnと前記無線タグ14からの反射波成分BnAnとが含まれており、その受信信号OAnは、直接波成分OBn及び反射波成分BnAnを用いて次の(1)式で表される。前記PAA処理部54により各受信信号の位相を制御した上で合成した合成信号OAPAは、次の(2)式で表されるOBPAと(3)式で表されるBPAAPAとを用いて次の(4)式で表される。前記方向検出部62は、この(3)式で表されるBPAAPAの絶対値すなわち次の(5)式で表される|BPAAPA|に基づいて前記無線タグ14が存在する方向として検出するものである。具体的には、前記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により前記I相成分及びQ相信号それぞれに含まれる前記無線タグ14による変調成分の絶対値の平均を振幅近似値I′、Q′として算出し、前記反射波振幅検出部90により各振幅近似値I′、Q′の二乗の平方根(=|BPAAPA|)が最大値をとる方向を前記無線タグ14が存在する方向として検出する。
【0032】
OAn=OBn+BnAn ・・・(1)
【0033】
OBPA=OB0+OB1′+OB−1′ ・・・(2)
【0034】
BPAAPA=B0A0+B1′A1′+B−1′+A−1′ ・・・(3)
【0035】
OAPA=OBPA+BPAAPA ・・・(4)
【0036】
|BPAAPA|=(I′2+Q′2)1/2 ・・・(5)
【0037】
図9は、前記無線タグ通信装置12のDSP16による前記無線タグ14を対象とするRFID(Radio Frequency Identification)制御について説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
【0038】
先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、前記送信ビット列生成部48により前記無線タグ14への送信信号に対応するコマンドビット列が生成され、前記FSK符号化部50によりFSK方式にて符号化される。次に、S2において、S1にて符号化された信号が前記AM変調部52によりAM方式にて変調される。次に、S3において、S2にて変調された送信信号が前記送信信号D/A変換部18によりアナログ信号に変換され、前記アップコンバータ22及び送信信号増幅部24を介して前記送信アンテナ26から前記無線タグ14に向け質問波Fcとして送信される。次に、前記キャンセル部32の動作に対応するS4において、S3にて送信された質問波Fcに応じて前記無線タグ14から返信された返信信号が前記複数の受信アンテナ素子28により受信され、それら受信信号にキャンセル信号が加算される。次に、S5において、前記複数の可変増幅部36それぞれにおける増幅率G1、G0、G−1が調整される。次に、S6において、前記キャンセル部32によりキャンセル信号が加算された受信信号が前記複数のダウンコンバータ34及び可変増幅部36を介して前記複数の受信信号A/D変換部38にそれぞれ入力され、それら受信信号A/D変換部38によりディジタル信号に変換された後、前記メモリ部40に記憶される。次に、SAにおいて、図10に示すタグ検出制御が実行される。次に、SBにおいて、図11に示すタグ方向検出制御が実行される。そして、S7において、図示しない表示部にタグ検出結果が表示された後、本ルーチンが終了させられる。
【0039】
図10は、図9に示すRFID制御の一部であるタグ検出制御について説明するフローチャートである。この制御では、先ず、SA1において、前記AM復調部56の素子間ゲイン差補正部68における増幅率を定める値(減衰量の分母)G1′、G0′、G−1′が全て1とされる。すなわち、素子間ゲイン差補正部68の動作が無効とされる。次に、SA2において、メインローブ方向θMAIN=−45°として前記PAA処理部54の受信PAAウェイトレジスタの初期値が設定される。次に、SA3において、前記メモリ部40から受信信号が読み出される。次に、SA4において、前記PAA処理部54によりSA3にて読み出された受信信号に受信PAAウェイトレジスタから読み出された値が掛け合わされ、前記AM復調部56の素子間ゲイン補正部68を介して受信信号合成部70から合成信号が出力されて、その合成出力Yが算出される。次に、SA5において、前記I相変換部72及びQ相変換部78によりSA4にて合成された合成信号がI成分(I相信号)及びQ成分(Q相信号)に変換される。次に、SA6において、前記IQ選択部84がI成分を通過させる設定とされ、前記FSK復号部58においてI成分がFSK方式で復号される。次に、SA7において、SA6にて復号された復号データが正常であるか否かが判断される。このSA7の判断が肯定される場合には、SA8において、応答データすなわち前記無線タグ14による変調成分の先頭位置が保存された後、図9に示すRFID制御に復帰させられるが、SA7の判断が否定される場合には、SA9において、前記IQ選択部84がQ成分を通過させる設定とされ、前記FSK復号部58においてQ成分がFSK方式で復号された後、SA10において、SA9にて復号された復号データが正常であるか否かが判断される。このSA10の判断が肯定される場合には、SA8以下の処理が実行されるが、SA10の判断が否定される場合には、SA11において、前記PAA処理部54における受信PAAウェイトレジスタの値が、メインローブ方向θMAINに15°加算した値に更新された後、SA12において、θMAINが45°より大きいか否かが判断される。このSA12の判断が否定される場合には、SA3以下の処理が再び実行されるが、SA12の判断が肯定される場合には、前記無線タグ14は検出されなかったとしてエラー終了させられる。
【0040】
図11は、図9に示すRFID制御の一部であるタグ方向検出制御について説明するフローチャートである。この制御では、先ず、SB1において、前記AM復調部56の素子間ゲイン差補正部68における増幅率を定める値G1′、G0′、G−1′が対応する前記可変増幅部36の増幅率G1、G0、G−1と等しい値とされる。次に、SB2において、メインローブ方向θMAIN=−45°として前記PAA処理部54のウェイトレジスタに初期値が設定される。次に、SB3において、所定値AMAXが0とされる。次に、SB4において、前記メモリ部40から受信信号が読み出され、前記PAA処理部54を介して前記AM復調部56に入力されて、前記素子間ゲイン差補正部68においてそれぞれ減衰させられる。ここで、SB1にて前記AM復調部56の素子間ゲイン差補正部68における増幅率を定める値G1′、G0′、G−1′が対応する前記可変増幅部36の増幅率G1、G0、G−1と等しい値に設定されていることで、各素子間ゲイン差補正部68から出力される受信信号は、各可変増幅部36に入力される前の受信信号のレベルに戻される。次に、前記反射波I成分振幅検出部86の動作に対応するSB5において、前記受信信号合成部70及びI相変換部72等を経て前記方向検出部62に入力されるI成分に含まれる前記無線タグ14による変調成分(反射波成分)の振幅I′が検出される。次に、前記反射波Q成分振幅検出部88の動作に対応するSB6において、前記受信信号合成部70及びQ相変換部78等を経て前記方向検出部62に入力されるQ成分に含まれる前記無線タグ14による変調成分の振幅Q′が検出される。次に、前記反射波振幅検出部90の動作に対応するSB7において、SB5にて算出されたI成分の反射波の振幅I′及びSB6にて算出されたQ成分の反射波の振幅Q′からそれらの二乗の平方根として反射波の振幅A=(I′2+Q′2)1/2が算出される。次に、SB8において、SB7にて算出された反射波の振幅Aが所定値AMAXより大きいか否かが判断される。このSB8の判断が肯定される場合には、SB9において、所定値AMAXがAとされ、前記無線タグ14の存在する方向を示すθTAGがθMAINとされた後、SB10以下の処理が実行されるが、SB8の判断が否定される場合には、SB10において、前記PAA処理部54における受信PAAウェイトレジスタの値が、メインローブ方向θMAINに15°加算した値に更新された後、SB11において、θMAINが45°より大きいか否かが判断される。このSB11の判断が否定される場合には、SB4以下の処理が再び実行されるが、SB11の判断が肯定される場合には、SB12において、その時点におけるθTAGが前記無線タグ14の存在する方向を示す値として決定された後、図9に示すRFID制御に復帰させられる。以上の制御において、SA2、SA4、SA11、SB2、及びSB10が前記PAA処理部54の動作に、SA6、SA8、及びSA9が前記FSK復号部58の動作に、SA4、SA5、及びSB4が前記AM復調部56の動作に、SA1及びSBが前記方向検出部62の動作にそれぞれ対応する。
【0041】
このように、本実施例によれば、前記無線タグ14からの返信信号を受信するための複数の受信アンテナ素子28を有する受信アンテナ30と、その受信アンテナ30により受信された送信側からの回り込み信号を含み得る各受信信号の位相を制御することにより受信指向性を制御する受信指向性制御部として機能するPAA処理部54(SA2、SA4、SA11、SB2、及びSB10)と、前記受信アンテナ30により受信された受信信号に含まれる前記無線タグ14による変調成分を抽出する変調成分抽出部として機能する反射波I成分振幅検出部86(SB6)及び反射波Q成分振幅検出部88(SB7)と、それら反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により抽出される変調成分に基づいて前記無線タグ14が存在する方向を検出する方向検出部62(SB)とを、有することから、前記無線タグ14からの反射波成分を参照することでその無線タグ14の存在する方向を詳細に求めることができる。すなわち、無線タグ14の存在する方向を精度良く検出し得る無線タグ通信装置12を提供することができる。
【0042】
また、前記方向検出部62は、前記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により抽出される変調成分が最大となる方向を前記無線タグ14が存在する方向として検出するものであるため、前記PAA処理部54によりメインローブ方向を制御すること等により、前記無線タグ14の存在する方向を詳細に求めることができる。
【0043】
また、前記送信信号に起因して前記受信部に発生する回り込み信号を除去するためのキャンセル信号を発生させ、前記受信信号にそのキャンセル信号を合成するキャンセル部32(S4)を有するものであるため、前記受信信号に含まれる回り込み信号を抑制して信号対雑音比を向上させることができ、通信距離を伸ばすことができる。
【0044】
また、各受信信号の増幅率を制御し得る可変増幅部36を前記複数の受信アンテナ素子28それぞれに対応して備えたものであるため、それら複数の受信アンテナ素子28により受信された受信信号それぞれをディジタル信号に変換する受信信号A/D変換部38において分解能を可及的に高めることができる。
【0045】
また、前記可変増幅部36により増幅された受信信号の振幅をその可変増幅部36の増幅率の逆数だけ変化させる素子間ゲイン差補正部68を前記複数の可変増幅部36それぞれに対応して備えたものであるため、ノイズの影響を減少させられると共に、信号対雑音比を悪化させることなく精度の良い方向検知が可能とされる。
【0046】
また、前記方向検出部62は、前記複数の受信アンテナ素子28によりそれぞれ受信された受信信号の振幅が略同一となるように前記複数の素子間ゲイン差補正部68それぞれの増幅率を制御するものであるため、振幅の略等しい複数の受信信号に基づいて前記無線タグ14の存在する方向を検出することができる。
【0047】
また、前記方向検出部62は、前記複数の受信アンテナ素子28によりそれぞれ受信された受信信号の振幅が略同一になるように前記複数の素子間ゲイン差補正部68それぞれの増幅率を制御する第1のモードと、それら複数の受信アンテナ素子28によりそれぞれ受信された受信信号を同一の増幅率で増幅するように前記複数の素子間ゲイン差補正部68を制御する第2のモードとを、切り換え得るものであるため、態様に応じて前記複数の素子間ゲイン差補正部68のモードを切り換えることで、受信信号を好適に処理することができる。
【0048】
また、前記受信信号に含まれる前記無線タグ14による変調成分の開始位置を検出する変調成分開始位置検出部として前記FSK復号部58(SA6、SA8、及びSA9)を有し、前記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88は、そのFSK復号部58により検出される開始位置から所定長の前記変調成分を抽出するものであり、前記方向検出部62は、前記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により抽出される変調成分の振幅の平均値に基づいて前記無線タグ14が存在する方向を検出するものであるため、実用的な態様でその無線タグ14の存在する方向を検出することができる。
【0049】
また、前記受信アンテナ30により受信された受信信号を互いに直交するI相信号及びQ相信号に変換して直交復調するAM復調部56(SA4、SA5、及びSB4)を備えたものであり、前記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88は、それらI相信号及びQ相信号それぞれに含まれる前記無線タグ14による変調成分を抽出するものであり、前記方向検出部62は、前記I相成分及びQ相信号それぞれに含まれる前記無線タグ14による変調成分の絶対値の平均を振幅近似値として算出し、各振幅近似値の二乗の平方根が最大値をとる方向を前記無線タグ14が存在する方向として検出するものであるため、実用的な態様でその無線タグ14の存在する方向を検出することができる。
【0050】
続いて、前記無線タグ通信装置12の他の動作を図12乃至図15に基づいて詳細に説明する。前述の実施例において、前記FSK復号部58は、前記受信信号に含まれる前記無線タグ14による変調成分の開始位置を検出する変調成分開始位置検出部として機能するものであり、前記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88は、前記FSK復号部58により検出される開始位置から所定長の前記変調成分を抽出するものであり、前記方向検出部62は、前記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により抽出される変調成分の振幅の平均値に基づいて前記無線タグ14が存在する方向を検出するものであったが、前記無線タグ通信装置12は、図12に示すように、前記受信信号に含まれる前記無線タグ14による変調成分のうち予め定められた所定の範囲(所定長)の変調成分を前記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により抽出し、その変調成分の振幅の平均値に基づいて前記無線タグ14が存在する方向を検出するものであってもよい。すなわち、必ずしも前記無線タグ14による変調成分の開始位置から抽出するものでなくとも構わない。ここで、応答データの先頭位置は多少ばらつくことが考えられるため、上記所定長の範囲は、前記無線タグ14による応答期間よりも短い期間とすることが好ましい。また、この態様において、好適には、前記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により抽出される変調成分に基づいて前記無線タグ14が存在する方向が推測された後、前記FSK復号部58により受信信号の復号が行われる。また、斯かる復号時における前記PAA処理部54の受信PAAウェイトの値は、推測される前記無線タグ14の方向に基づいて設定される。このようにしても、前記無線タグ14の存在する方向を精度良く検出することができる。
【0051】
図13は、前記無線タグ通信装置12のDSP16による前記無線タグ14を対象とするRFID制御の他の一例について説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。この制御は、前述した図9の制御に対応するものであり、共通する処理に関しては同一の符号を付してその説明を省略する。この図13に示す制御では、前述したS6の制御に続いて、SB′において、図14に示すタグ方向推測制御が実行される。次に、SA′において、図15に示すタグ検出制御が実行された後、前述したS7以下の処理が実行される。
【0052】
図14は、図13に示すRFID制御の一部であるタグ方向推測制御について説明するフローチャートである。この制御は、前述した図11の制御に対応するものであり、共通する処理に関しては同一の符号を付してその説明を省略する。この図14に示す制御では、前述したSB4の処理に続いて、前記反射波I成分振幅検出部86の動作に対応するSB5′において、前記受信信号合成部70及びI相変換部72等を経て前記方向検出部62に入力されるI成分に含まれる前記無線タグ14による変調成分(反射波成分)のうち所定の範囲(所定長)における絶対値の平均が振幅I′として検出される。次に、前記反射波Q成分振幅検出部88の動作に対応するSB6′において、前記受信信号合成部70及びQ相変換部78等を経て前記方向検出部62に入力されるQ成分に含まれる前記無線タグ14による変調成分のうち所定の範囲における絶対値の平均が振幅Q′として検出された後、SB7以下の処理が実行される。そして、前述したSB11の処理に続いて、SB12′において、その時点におけるθTAGが前記無線タグ14の存在する推測方向として決定された後、図13に示すRFID制御に復帰させられる。
【0053】
図15は、図13に示すRFID制御の一部であるタグ検出制御について説明するフローチャートである。この制御は、前述した図10の制御に対応するものであり、共通する処理に関しては同一の符号を付してその説明を省略する。この図15に示す制御では、前述したSA1の制御に続いて、SA2′において、メインローブ方向θMAINを上述したSB12′にて決定された前記無線タグ14の存在する推測方向θTAGとして前記PAA処理部54の受信PAAウェイトレジスタの値が設定された後、前述したSA3以下の処理が実行される。また、前述したSA7及びSA10の判断が肯定される場合は、何れもそれをもって図15に示すRFID制御に復帰させられる。また、SA10の判断が否定される場合には、前記無線タグ14は検出されなかったとしてエラー終了させられる。
【0054】
このように、本変形例によれば、前記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88は、前記受信部により受信された受信信号に含まれる前記無線タグ14による変調成分のうち予め定められた所定長の変調成分を抽出するものであり、前記方向検出部62は、それら反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により抽出される変調成分の振幅の平均値に基づいて前記無線タグ14が存在する方向を検出するものであるため、実用的な態様でその無線タグ14の存在する方向を検出することができる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0056】
例えば、前述の実施例において、前記PAA処理部54、AM復調部56、FSK復号部58、及び方向検出部62等は、何れも前記無線タグ通信装置12のDSP16に機能的に備えられたものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、それらと等価な制御機能を有する制御装置をそれぞれ個別に備えたものであっても構わない。また、それら制御機能による処理は、ディジタル信号処理であるとアナログ信号処理であるとを問わない。
【0057】
また、前述の実施例において、前記無線タグ通信装置12は、送信1素子、受信3素子の構成すなわち受信のみをアレイアンテナで行う構成であったが、複数の送信アンテナ素子を有する送信アンテナを備え、送受信共にアレイアンテナで行うものであってもよい。また、送受信に共用される複数の送受信アンテナ素子を有する送受信アレイアンテナを備え、その送受信アレイアンテナにより前記送信信号の送信及び無線タグ14からの返信信号の受信を行うものであっても構わない。
【0058】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明が好適に用いられる無線タグ通信システムを説明する図である。
【図2】本実施例の一実施例である無線タグ通信装置の構成を説明する図である。
【図3】図2の無線タグ通信装置に備えられたAM復調部の構成を詳しく説明する図である。
【図4】図2の無線タグ通信装置に備えられた方向検出部の構成を詳しく説明する図である。
【図5】図2の無線タグ通信装置の通信対象である無線タグの構成を説明する図である。
【図6】図5の無線タグからの返信信号に含まれる変調成分について説明する図であり、その先頭位置から変調成分を抽出する態様を例示している。
【図7】図2の無線タグ通信装置の送信アンテナ及び受信アンテナと図5の無線タグとの相対位置関係を例示する図である。
【図8】図7に示すような相対位置関係において受信アンテナにより受信された受信信号に含まれる図5の無線タグによる変調成分からその無線タグの方向を検知する方法について詳しく説明する図であり、その受信信号を複素平面にベクトル表示したものである。
【図9】図2の無線タグ通信装置のDSPによる図5の無線タグを対象とするRFID制御について説明するフローチャートである。
【図10】図9に示すRFID制御の一部であるタグ検出制御について説明するフローチャートである。
【図11】図9に示すRFID制御の一部であるタグ方向検出制御について説明するフローチャートである。
【図12】図5の無線タグからの返信信号に含まれる変調成分について説明する図であり、そのうちの一部である所定長の期間を抽出する態様を例示している。
【図13】図2の無線タグ通信装置のDSPによる図5の無線タグを対象とするRFID制御の他の一例について説明するフローチャートである。
【図14】図13に示すRFID制御の一部であるタグ方向推測制御について説明するフローチャートである。
【図15】図13に示すRFID制御の一部であるタグ検出制御について説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
12:無線タグ通信装置
14:無線タグ
28:受信アンテナ素子
30:受信アンテナ
32:キャンセル部
36:可変増幅部
52:AM変調部
54:PAA処理部(受信指向性制御部)
56:AM復調部
58:FSK復号部(開始位置検出部)
62:方向検出部
68:素子間ゲイン差補正部
86:反射波I成分振幅検出部(変調成分抽出部)
88:反射波Q成分振幅検出部(変調成分抽出部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線にて情報の書き込みや読み出しができる無線タグとの間で通信を行う無線タグ通信装置に関し、特に、無線タグ方向検知技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の情報が記憶された小型の無線タグ(応答器)から所定の無線タグ通信装置(質問器)により非接触にて情報の読み出しを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムが知られている。このRFIDシステムは、無線タグが汚れている場合や見えない位置に配置されている場合であっても無線タグ通信装置との通信によりその無線タグに記憶された情報を読み出すことが可能であることから、商品管理や検査工程等の様々な分野において実用が期待されている。
【0003】
上記無線タグ通信装置の一態様として、前記無線タグとの間で通信を行うことで、その無線タグの存在する方向を検出する技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載されたRFID検索装置がそれである。この技術によれば、前記無線タグとの通信指向性を切り換えつつ、受信感度が最も良くなる方向を検出することにより、その無線タグの存在する方向を検出できるとされている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−271229号公報
【0005】
しかし、前記従来の技術のように、前記無線タグとの通信指向性を切り換えつつ、受信感度が最も良くなる方向を検出する態様では、その受信感度が最も良くなる方向が必ずしも前記無線タグの存在する方向とは一致しないことから、無線タグ方向検知の精度向上には限界があった。このため、無線タグの存在する方向を精度良く検出し得る無線タグ通信装置の開発が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、無線タグの存在する方向を精度良く検出し得る無線タグ通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、無線タグに向けて送信信号を送信すると共に、その送信信号に応じてその無線タグから返信される返信信号を受信してその無線タグとの間で情報の通信を行う無線タグ通信装置であって、前記無線タグからの返信信号を受信するための複数のアンテナ素子を有する受信アンテナを備えた受信部と、その受信部により受信された、前記送信信号に起因して発生する回り込み信号を含み得る各受信信号の位相を制御することにより受信指向性を制御する受信指向性制御部と、前記受信アンテナにより受信された受信信号に含まれる前記無線タグによる変調成分を抽出する変調成分抽出部と、その変調成分抽出部により抽出される変調成分に基づいて前記無線タグが存在する方向を検出する方向検出部とを、有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明によれば、前記無線タグからの返信信号を受信するための複数のアンテナ素子を有する受信アンテナを備えた受信部と、その受信部により受信された、前記送信信号に起因して発生する回り込み信号を含み得る各受信信号の位相を制御することにより受信指向性を制御する受信指向性制御部と、前記受信アンテナにより受信された受信信号に含まれる前記無線タグによる変調成分を抽出する変調成分抽出部と、その変調成分抽出部により抽出される変調成分に基づいて前記無線タグが存在する方向を検出する方向検出部とを、有することから、前記無線タグからの反射波成分を参照することでその無線タグの存在する方向を詳細に求めることができる。すなわち、無線タグの存在する方向を精度良く検出し得る無線タグ通信装置を提供することができる。
【0009】
ここで、好適には、前記方向検出部は、前記変調成分抽出部により抽出される変調成分が最大となる方向を前記無線タグが存在する方向として検出するものである。このようにすれば、前記受信指向性制御部によりメインローブ方向を制御すること等により、前記無線タグの存在する方向を詳細に求めることができる。
【0010】
また、好適には、前記送信信号に起因して前記受信部に発生する回り込み信号を除去するためのキャンセル信号を発生させ、前記受信信号にそのキャンセル信号を合成するキャンセル部を有するものである。このようにすれば、前記受信信号に含まれる回り込み信号を抑制して信号対雑音比を向上させることができ、通信距離を伸ばすことができる。
【0011】
また、好適には、前記受信部は、増幅率を制御し得る可変増幅部を前記複数のアンテナ素子それぞれに対応して備えたものである。このようにすれば、前記複数のアンテナ素子により受信された受信信号それぞれをディジタル信号に変換するA/D変換部において分解能を可及的に高めることができる。
【0012】
また、好適には、前記受信部は、前記可変増幅部により増幅された受信信号の振幅をその可変増幅部の増幅率の逆数だけ変化させる素子間ゲイン差補正部を前記複数の可変増幅部それぞれに対応して備えたものである。このようにすれば、ノイズの影響を減少させられると共に、信号対雑音比を悪化させることなく精度の良い方向検知が可能とされる。
【0013】
また、好適には、前記方向検出部は、前記複数のアンテナ素子によりそれぞれ受信された受信信号の振幅が略同一となるように前記可変増幅部の増幅率を制御するものである。このようにすれば、振幅の略等しい複数の受信信号に基づいて前記無線タグの存在する方向を検出することができる。
【0014】
また、好適には、前記方向検出部は、前記複数のアンテナ素子によりそれぞれ受信された受信信号の振幅が略同一になるように前記可変増幅部の増幅率を制御する第1のモードと、それら複数のアンテナ素子によりそれぞれ受信された受信信号を同一の増幅率で増幅するように前記可変増幅部を制御する第2のモードとを、切り換え得るものである。このようにすれば、態様に応じて前記可変増幅部のモードを切り換えることで、受信信号を好適に処理することができる。
【0015】
また、好適には、前記受信信号に含まれる前記無線タグによる変調成分の開始位置を検出する変調成分開始位置検出部を有し、前記変調成分抽出部は、その変調成分開始位置検出部により検出される開始位置から所定長の前記変調成分を抽出するものであり、前記方向検出部は、その変調成分抽出部により抽出される変調成分の振幅の平均値に基づいて前記無線タグが存在する方向を検出するものである。このようにすれば、実用的な態様で前記無線タグの存在する方向を検出することができる。
【0016】
また、好適には、前記変調成分抽出部は、前記受信部により受信された受信信号に含まれる前記無線タグによる変調成分のうち予め定められた所定長の変調成分を抽出するものであり、前記方向検出部は、その変調成分抽出部により抽出される変調成分の振幅の平均値に基づいて前記無線タグが存在する方向を検出するものである。このようにすれば、実用的な態様で前記無線タグの存在する方向を検出することができる。
【0017】
また、好適には、前記受信部は、前記受信アンテナにより受信された受信信号を互いに直交するI相信号及びQ相信号に変換して直交復調する復調部を備えたものであり、前記変調成分抽出部は、それらI相信号及びQ相信号それぞれに含まれる前記無線タグによる変調成分を抽出するものであり、前記方向検出部は、前記I相成分及びQ相信号それぞれに含まれる前記無線タグによる変調成分の絶対値の平均を振幅近似値として算出し、各振幅近似値の二乗の平方根が最大値をとる方向を前記無線タグが存在する方向として検出するものである。このようにすれば、実用的な態様で前記無線タグの存在する方向を検出することができる。
【0018】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
図1は、本発明が好適に用いられる無線タグ通信システム10を説明する図である。この無線タグ通信システム10は、本発明の一実施例である無線タグ通信装置12と、その無線タグ通信装置12の通信対象である単数乃至は複数(図1では単数)の無線タグ14とから構成される所謂RFID(Radio Frequency Identification)システムであり、上記無線タグ通信装置12はそのRFIDシステムの質問器として、上記無線タグ14は応答器としてそれぞれ機能する。すなわち、上記無線タグ通信装置12から質問波Fc(送信信号)が上記無線タグ14に向けて送信されると、その質問波Fcを受信した上記無線タグ14において所定の情報信号(データ)によりその質問波Fcが変調され、応答波Fr(返信信号)として上記無線タグ通信装置12に向けて返信されることで、その無線タグ通信装置12と無線タグ14との間で情報の通信が行われる。
【0020】
図2は、本実施例の無線タグ通信装置12の構成を説明する図である。この図2に示すように、上記無線タグ通信装置12は、上記無線タグ14に対する情報の読み書きや、その無線タグ14の方向検知等を実行するためにその無線タグ14との間で情報の通信を行うものであり、送信信号をディジタル信号として出力したり、上記無線タグ14からの返信信号を復調する等のディジタル信号処理を実行するDSP(Digital Signal Processor)16と、そのDSP16により出力された送信信号をアナログ信号に変換する送信信号D/A変換部18と、所定の局部発振信号を出力する局部発振信号出力部20と、上記送信信号D/A変換部18によりアナログ信号に変換された送信信号の周波数をその局部発振信号出力部20から出力される局部発振信号の周波数だけ高くするアップコンバータ22と、そのアップコンバータ22から出力される送信信号を増幅する送信信号増幅部24と、その送信信号増幅部24により増幅された送信信号を質問波Fcとして上記無線タグ14に向けて送信するための送信アンテナ26と、その質問波Fcに応じて無線タグ14から返信される応答波Frを受信するための複数(図2では3つ)の受信アンテナ素子28a、28b、28c(以下、特に区別しない場合には単に受信アンテナ素子28と称する)を有する受信アンテナ30と、前記送信信号に起因して発生する回り込み信号を除去するためのキャンセル信号を発生させ、上記複数の受信アンテナ素子28により受信された受信信号それぞれに合成するキャンセル部32と、そのキャンセル部32においてキャンセル信号が合成された受信信号それぞれの周波数を上記局部発振信号出力部20から出力される局部発振信号の周波数だけ低くする複数(図2では3つ)のダウンコンバータ34a、34b、34c(以下、特に区別しない場合には単にダウンコンバータ34と称する)と、それらダウンコンバータ34からそれぞれ出力されるダウンコンバートされた受信信号を増幅する増幅率G1、G0、G−1が可変である複数(図2では3つ)の可変増幅部36a、36b、36c(以下、特に区別しない場合には単に可変増幅部36と称する)と、それら複数の可変増幅部36により増幅された受信信号をディジタル信号に変換する複数(図2では3つ)の受信信号A/D変換部38a、38b、38c(以下、特に区別しない場合には単に受信信号A/D変換部38と称する)と、それら受信信号A/D変換部38によりディジタル信号に変換された受信信号を記憶すると共に、上記DSP16からの指令に応じてそのDSP16にそれら受信信号を出力させる受信信号記憶部であるメモリ部40とを、備えて構成されている。
【0021】
上記キャンセル部32は、上記アップコンバータ22から出力される送信信号をキャンセル信号として、その位相を制御する複数(図2では3つ)のキャンセル信号位相制御部42a、42b、42c(以下、特に区別しない場合には単にキャンセル信号位相制御部42と称する)と、それら複数のキャンセル信号位相制御部42によりそれぞれ位相が制御されたキャンセル信号の振幅を制御する複数(図2では3つ)のキャンセル信号振幅制御部44a、44b、44c(以下、特に区別しない場合には単にキャンセル信号振幅制御部44と称する)と、それら複数のキャンセル信号振幅制御部44によりそれぞれ振幅が制御されたキャンセル信号を上記複数の受信アンテナ素子28によりそれぞれ受信される受信信号に合成(加算)して上記複数のダウンコンバータ34に供給する複数(図2では3つ)のキャンセル信号合成部46a、46b、46c(以下、特に区別しない場合には単にキャンセル信号合成部46と称する)とを、備えて構成されている。上記キャンセル信号位相制御部42及びキャンセル信号振幅制御部44は、好適には、上記DSP16から出力される制御信号に応じてその移相量及び増幅率を変更し得るものである。
【0022】
前記DSP16は、CPU、ROM、及びRAM等から成り、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う所謂マイクロコンピュータシステムであり、前記無線タグ14への送信信号に対応する送信ビット列(コマンドビット列)を生成する送信ビット列生成部48と、その送信ビット列生成部48から出力されたディジタル信号をFSK方式で符号化するFSK符号化部50と、そのFSK符号化部50により符号化された信号をAM方式で変調して上記送信信号D/A変換部18に供給するAM変調部52と、前記メモリ部40から読み出される複数の受信信号それぞれに所定のウェイトを乗算することによりフェイズドアレイ処理を行うPAA(Phased Array Antenna)処理部54と、そのPAA処理部54によりフェイズドアレイ処理された受信信号をAM方式で復調してAM復調波を検出するAM復調部56と、そのAM復調部56により復調されたAM復調波をFSK方式で復号化するFSK復号部58と、そのFSK復号部58により復号化された復号信号を解釈して前記無線タグ14の変調に関する情報信号を読み出す返答ビット列解釈部60と、前記無線タグ14が存在する方向を検出する方向検出部62とを、機能的に備えて構成されている。ここで、上記受信アンテナ30、キャンセル部32、ダウンコンバータ34、可変増幅部36、メモリ部40、及びDSP16に機能的に備えられたPAA処理部54、AM復調部56、FSK復号部58、返答ビット列解釈部60、及び方向検出部62等から前記無線タグ通信装置12の受信部が構成されている。
【0023】
上記FSK復号部58は、前記受信信号に含まれる前記無線タグ14による変調成分(反射波成分)の開始位置を検出する変調成分開始位置検出部としても機能するものであり、そのFSK復号部58により検出された変調成分の開始位置を示す情報(タイミング情報)が上記方向検出部62に供給されるようになっている。また、後述するAM変調部56におけるI相BPF76及びQ相BPF82のうち何れか一方の出力を上記FSK復号部58に入力させるためのI,Q切替指令をそのAM変調部56に供給する。
【0024】
前記PAA処理部54は、前記受信アンテナ30により受信される受信信号強度等に基づいて前記複数の受信アンテナ素子28により受信された受信信号それぞれに与えるPAAウェイトを算出するPAAウェイト制御部64と、そのPAAウェイト制御部64により算出されるPAAウェイトを前記メモリ部40から読み出される受信信号それぞれに乗算して上記AM復調部56に供給する複数(図2では3つ)の受信PAAウェイト乗算部66a、66b、66c(以下、特に区別しない場合には単に受信PAAウェイト乗算部66と称する)とを、備えて構成されており、前記無線タグ14との間の通信における受信指向性を制御する。すなわち、前記PAA処理部54は、前記受信アンテナ30による受信指向性を制御する受信指向性制御部である。ここで、図2に示すように、前記送信アンテナ26及び受信アンテナ30が比較的近くに配設されている場合には、送信信号及び受信信号を分離するための送受分離手段(サーキュレータや方向性結合器/送信アンテナとは別体である受信アンテナ)が設けられるが、その送受信分離手段を介して送信側からの回り込み信号が混入する可能性がある。前記キャンセル部32は、この送信側からの回り込み信号を抑制するためのものであるが、そのキャンセル部32による抑制が十分でないうちは送信側からの回り込み信号を含む受信信号が前記DSP16に入力されることになり、前記PAA処理部54は、斯かる送信側からの回り込み信号を含んだ各受信信号に所定のウェイトを乗算して(或いは、少なくとも位相を所定量ずらして)受信指向性を制御するものである。
【0025】
図3は、前記AM復調部56の構成を詳しく説明する図である。この図3に示すように、前記AM復調部56は、前記PAA処理部54から供給される受信信号それぞれのゲイン差すなわち前記複数の受信アンテナ素子28相互間のゲイン差を補正する複数(図3では3つ)の素子間ゲイン差補正部68a、68b、68c(以下、特に区別しない場合には単に素子間ゲイン差補正部68と称する)と、それら複数の素子間ゲイン差補正部68から出力される受信信号を合成する受信信号合成部70と、その受信信号合成部70により合成された合成信号に余弦波テーブル74から読み出される余弦波を掛け合わせることによりI相信号に変換するI相変換部72と、そのI相変換部72から出力されるI相信号のうち所定の周波数帯域の信号のみを通過させるI相BPF(Band Pass Filter)76と、上記受信信号合成部70により合成された合成信号に正弦波テーブル80から読み出される余弦波を掛け合わせることによりQ相信号に変換するQ相変換部78と、そのQ相変換部78から出力されるQ相信号のうち所定の周波数帯域の信号のみを通過させるQ相BPF82と、前記FSK復号部58から供給されるI,Q切替指令に応じて上記I相BPF76及びQ相BPF82のうち何れか一方の出力を前記FSK復号部58に供給するIQ選択部84とを、備えて構成されている。なお、上記I相BPF76から出力されるI相信号及びQ相BPF82から出力されるQ相信号が前記方向検出部62に供給されるようになっている。
【0026】
上記複数の素子間ゲイン差補正部68は、それぞれ減衰率1/G1′、1/G0′、1/G−1′にて各受信信号を減衰させる第2の可変増幅部(可変減衰部)として機能するものであり、その増幅率(減衰率)は、前記方向検出部62から供給される制御指令に従って適宜設定される。例えば、減衰率を定める値G0′、G1′、G−1′が対応する前記可変増幅部36の増幅率G0、G1、G−1と等しい値とされること、すなわちG0′=G0、G1′=G1、G−1′=G−1とされることで、各素子間ゲイン差補正部68からの出力レベルが対応する受信アンテナ素子28により受信された受信信号のレベルと同等とされる。この設定にて出力される受信信号は、対象となる無線タグ14の方向を検出するための制御に好適に用いられる。また、G0′=G1′=G−1′=1とされることで、上記複数の素子間ゲイン差補正部68の動作が無効とされる。この設定にて出力される受信信号は、対象となる無線タグ14との間で情報の通信を行うための制御に好適に用いられる。このように、上記複数の素子間ゲイン差補正部68は、前記方向検出部62から供給される制御指令に従って、前記複数の受信アンテナ素子28によりそれぞれ受信された受信信号の振幅が略同一になるように増幅率を制御する第1のモードと、それら複数の受信アンテナ素子28によりそれぞれ受信された受信信号を同一の増幅率で増幅するように制御する第2のモードとを、切り換え得るものである。
【0027】
図4は、前記方向検出部62の構成を詳しく説明する図である。この図4に示すように、前記方向検出部62は、前記AM復調部56のI相BPF76から供給されるI相信号(I成分)に含まれる前記無線タグ14による変調成分の振幅(近似計算により求められる値を含む、以下の説明において同じ)I′を検出する反射波I成分振幅検出部86と、前記AM復調部56のQ相BPF82から供給されるQ相信号(Q成分)に含まれる前記無線タグ14による変調成分の振幅Q′を検出する反射波Q成分振幅検出部88と、上記反射波I成分振幅検出部86により検出される反射波I成分の振幅I′及び反射波Q成分振幅検出部88により検出される反射波Q成分の振幅Q′から前記無線タグ14による変調成分の振幅を検出する反射波振幅検出部90と、前記PAA処理部54から供給される各受信信号に応じて前記複数の可変増幅部36における増幅率G1、G0、G−1及び前記AM復調部の素子間ゲイン差補正部68における増幅率(減衰率)1/G1′、1/G0′、1/G−1′を制御する増幅率制御部92とを、備えて構成されている。すなわち、上記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88は、前記受信アンテナ30により受信された受信信号に含まれる前記無線タグ14による変調成分を抽出する変調成分抽出部として機能する。また、上記反射波振幅検出部90が、上記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により抽出される変調成分に基づいて前記無線タグ14が存在する方向を検出する実質的な方向検出部として機能する。
【0028】
上記反射波I成分振幅検出部86は、好適には、前記無線タグ14からの応答データの応答期間(応答データビット区間)におけるI相信号の絶対値の平均を上記振幅I′として検出する。また、上記反射波Q成分振幅検出部88は、好適には、前記無線タグ14からの応答データの応答期間におけるQ相信号の絶対値の平均を上記振幅Q′として検出する。また、上記増幅率制御部92は、好適には、前記第1のモードにおいて、前記複数の受信アンテナ素子28によりそれぞれ受信された受信信号の振幅が略同一となるように前記素子間ゲイン差補正部68それぞれの増幅率を定める値G0′、G1′、G−1′を対応する前記可変増幅部36の増幅率G0、G1、G−1と等しい値とし、前記第2のモードにおいて、前記複数の受信アンテナ素子28によりそれぞれ受信された受信信号を同一の増幅率で増幅するように前記素子間ゲイン差補正部68それぞれの増幅率を定める値G1′、G0′、G−1′を全て1とする。
【0029】
図5は、前記無線タグ14の構成を説明する図である。この図5に示すように、前記無線タグ14は、前記無線タグ通信装置12との間で信号の送受信を行うためのアンテナ部94と、そのアンテナ部94により受信された信号を処理するためのIC回路部96とを、備えて構成されている。そのIC回路部96は、上記アンテナ部94により受信された前記無線タグ通信装置12からの質問波(送信信号)Fcを整流する整流部98と、その整流部98により整流された質問波Fcのエネルギを蓄積するための電源部100と、上記アンテナ部94により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部108に供給するクロック抽出部102と、所定の情報信号を記憶し得る情報記憶部として機能するメモリ部104と、上記アンテナ部94に接続されて信号の変調及び復調を行う変復調部106と、上記整流部98、クロック抽出部102、及び変復調部106等を介して上記無線タグ14の作動を制御するための制御部108とを、機能的に含んでいる。この制御部108は、前記無線タグ通信装置12と通信を行うことにより上記メモリ部104に上記所定の情報を記憶する制御や、上記アンテナ部94により受信された質問波Fcを上記変復調部106において上記メモリ部104に記憶された情報信号に基づいて変調したうえで応答波(返信信号)Frとして上記アンテナ部94から反射返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0030】
図6は、前記無線タグ14からの返信信号に含まれる変調成分について説明する図であり、前記AM変調部56にて変換されたI成分出力又はQ成分出力の一例を示している。図5を用いて前述したように、前記無線タグ14は、前記無線タグ通信装置12から送信された質問波(搬送波)Fcを前記メモリ部104に記憶された情報信号に基づいて変調した上で返信するものであることから、その無線タグ14からの応答波Frは、その変調に関する変調成分を搬送波に乗せた信号になる。このため、前記I相BPF76から出力されるI相成分(或いは、Q相BPF82から出力されるQ相成分)は、受信信号の先頭位置から前記無線タグ14による変調成分が始まるわけでは必ずしもなく、例えば図6に示すように、先頭位置から所定時間進んだ位置より前記無線タグ14による変調成分が開始され、タグ応答期間分だけ継続して終了する信号になる。前記FSK復号部58は、前記受信信号に含まれる前記無線タグ14による変調成分の開始位置を検出する変調成分開始位置検出部として機能するものであり、そのFSK復号部58により検出された前記無線タグ14による変調成分の開始位置を示すタイミング情報は、前記方向検出部62の反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88に供給される。そして、それら反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88は、好適には、前記FSK復号部58により検出される開始位置から所定長の前記変調成分をそれぞれ抽出し、前記方向検出部62は、それら反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により抽出される変調成分の振幅I′及びQ′の平均値に基づいて前記無線タグ14が存在する方向を検出する。これに関して以下に詳述する。
【0031】
図7は、前記無線タグ14と、前記無線タグ通信装置12の送信アンテナ26及び受信アンテナ30との相対位置関係を例示する図である。また、図8は、図7に示す受信アンテナ30により受信された受信信号に含まれる前記無線タグ14による変調成分からその無線タグ14の方向を検知する方法について詳しく説明する図であり、送信1素子(送信アンテナ26)、受信3素子(受信アンテナ素子28a、28b、28c)である場合の受信信号を複素平面にベクトル表示したものである。以下、n=0は受信アンテナ素子28b、n=1は受信アンテナ素子28a、n=−1は受信アンテナ素子28cに対応する信号を表す。この図8に示すように、各受信アンテナ素子28により受信される受信信号OAnには、前記送信アンテナ26からの直接波成分OBnと前記無線タグ14からの反射波成分BnAnとが含まれており、その受信信号OAnは、直接波成分OBn及び反射波成分BnAnを用いて次の(1)式で表される。前記PAA処理部54により各受信信号の位相を制御した上で合成した合成信号OAPAは、次の(2)式で表されるOBPAと(3)式で表されるBPAAPAとを用いて次の(4)式で表される。前記方向検出部62は、この(3)式で表されるBPAAPAの絶対値すなわち次の(5)式で表される|BPAAPA|に基づいて前記無線タグ14が存在する方向として検出するものである。具体的には、前記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により前記I相成分及びQ相信号それぞれに含まれる前記無線タグ14による変調成分の絶対値の平均を振幅近似値I′、Q′として算出し、前記反射波振幅検出部90により各振幅近似値I′、Q′の二乗の平方根(=|BPAAPA|)が最大値をとる方向を前記無線タグ14が存在する方向として検出する。
【0032】
OAn=OBn+BnAn ・・・(1)
【0033】
OBPA=OB0+OB1′+OB−1′ ・・・(2)
【0034】
BPAAPA=B0A0+B1′A1′+B−1′+A−1′ ・・・(3)
【0035】
OAPA=OBPA+BPAAPA ・・・(4)
【0036】
|BPAAPA|=(I′2+Q′2)1/2 ・・・(5)
【0037】
図9は、前記無線タグ通信装置12のDSP16による前記無線タグ14を対象とするRFID(Radio Frequency Identification)制御について説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
【0038】
先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、前記送信ビット列生成部48により前記無線タグ14への送信信号に対応するコマンドビット列が生成され、前記FSK符号化部50によりFSK方式にて符号化される。次に、S2において、S1にて符号化された信号が前記AM変調部52によりAM方式にて変調される。次に、S3において、S2にて変調された送信信号が前記送信信号D/A変換部18によりアナログ信号に変換され、前記アップコンバータ22及び送信信号増幅部24を介して前記送信アンテナ26から前記無線タグ14に向け質問波Fcとして送信される。次に、前記キャンセル部32の動作に対応するS4において、S3にて送信された質問波Fcに応じて前記無線タグ14から返信された返信信号が前記複数の受信アンテナ素子28により受信され、それら受信信号にキャンセル信号が加算される。次に、S5において、前記複数の可変増幅部36それぞれにおける増幅率G1、G0、G−1が調整される。次に、S6において、前記キャンセル部32によりキャンセル信号が加算された受信信号が前記複数のダウンコンバータ34及び可変増幅部36を介して前記複数の受信信号A/D変換部38にそれぞれ入力され、それら受信信号A/D変換部38によりディジタル信号に変換された後、前記メモリ部40に記憶される。次に、SAにおいて、図10に示すタグ検出制御が実行される。次に、SBにおいて、図11に示すタグ方向検出制御が実行される。そして、S7において、図示しない表示部にタグ検出結果が表示された後、本ルーチンが終了させられる。
【0039】
図10は、図9に示すRFID制御の一部であるタグ検出制御について説明するフローチャートである。この制御では、先ず、SA1において、前記AM復調部56の素子間ゲイン差補正部68における増幅率を定める値(減衰量の分母)G1′、G0′、G−1′が全て1とされる。すなわち、素子間ゲイン差補正部68の動作が無効とされる。次に、SA2において、メインローブ方向θMAIN=−45°として前記PAA処理部54の受信PAAウェイトレジスタの初期値が設定される。次に、SA3において、前記メモリ部40から受信信号が読み出される。次に、SA4において、前記PAA処理部54によりSA3にて読み出された受信信号に受信PAAウェイトレジスタから読み出された値が掛け合わされ、前記AM復調部56の素子間ゲイン補正部68を介して受信信号合成部70から合成信号が出力されて、その合成出力Yが算出される。次に、SA5において、前記I相変換部72及びQ相変換部78によりSA4にて合成された合成信号がI成分(I相信号)及びQ成分(Q相信号)に変換される。次に、SA6において、前記IQ選択部84がI成分を通過させる設定とされ、前記FSK復号部58においてI成分がFSK方式で復号される。次に、SA7において、SA6にて復号された復号データが正常であるか否かが判断される。このSA7の判断が肯定される場合には、SA8において、応答データすなわち前記無線タグ14による変調成分の先頭位置が保存された後、図9に示すRFID制御に復帰させられるが、SA7の判断が否定される場合には、SA9において、前記IQ選択部84がQ成分を通過させる設定とされ、前記FSK復号部58においてQ成分がFSK方式で復号された後、SA10において、SA9にて復号された復号データが正常であるか否かが判断される。このSA10の判断が肯定される場合には、SA8以下の処理が実行されるが、SA10の判断が否定される場合には、SA11において、前記PAA処理部54における受信PAAウェイトレジスタの値が、メインローブ方向θMAINに15°加算した値に更新された後、SA12において、θMAINが45°より大きいか否かが判断される。このSA12の判断が否定される場合には、SA3以下の処理が再び実行されるが、SA12の判断が肯定される場合には、前記無線タグ14は検出されなかったとしてエラー終了させられる。
【0040】
図11は、図9に示すRFID制御の一部であるタグ方向検出制御について説明するフローチャートである。この制御では、先ず、SB1において、前記AM復調部56の素子間ゲイン差補正部68における増幅率を定める値G1′、G0′、G−1′が対応する前記可変増幅部36の増幅率G1、G0、G−1と等しい値とされる。次に、SB2において、メインローブ方向θMAIN=−45°として前記PAA処理部54のウェイトレジスタに初期値が設定される。次に、SB3において、所定値AMAXが0とされる。次に、SB4において、前記メモリ部40から受信信号が読み出され、前記PAA処理部54を介して前記AM復調部56に入力されて、前記素子間ゲイン差補正部68においてそれぞれ減衰させられる。ここで、SB1にて前記AM復調部56の素子間ゲイン差補正部68における増幅率を定める値G1′、G0′、G−1′が対応する前記可変増幅部36の増幅率G1、G0、G−1と等しい値に設定されていることで、各素子間ゲイン差補正部68から出力される受信信号は、各可変増幅部36に入力される前の受信信号のレベルに戻される。次に、前記反射波I成分振幅検出部86の動作に対応するSB5において、前記受信信号合成部70及びI相変換部72等を経て前記方向検出部62に入力されるI成分に含まれる前記無線タグ14による変調成分(反射波成分)の振幅I′が検出される。次に、前記反射波Q成分振幅検出部88の動作に対応するSB6において、前記受信信号合成部70及びQ相変換部78等を経て前記方向検出部62に入力されるQ成分に含まれる前記無線タグ14による変調成分の振幅Q′が検出される。次に、前記反射波振幅検出部90の動作に対応するSB7において、SB5にて算出されたI成分の反射波の振幅I′及びSB6にて算出されたQ成分の反射波の振幅Q′からそれらの二乗の平方根として反射波の振幅A=(I′2+Q′2)1/2が算出される。次に、SB8において、SB7にて算出された反射波の振幅Aが所定値AMAXより大きいか否かが判断される。このSB8の判断が肯定される場合には、SB9において、所定値AMAXがAとされ、前記無線タグ14の存在する方向を示すθTAGがθMAINとされた後、SB10以下の処理が実行されるが、SB8の判断が否定される場合には、SB10において、前記PAA処理部54における受信PAAウェイトレジスタの値が、メインローブ方向θMAINに15°加算した値に更新された後、SB11において、θMAINが45°より大きいか否かが判断される。このSB11の判断が否定される場合には、SB4以下の処理が再び実行されるが、SB11の判断が肯定される場合には、SB12において、その時点におけるθTAGが前記無線タグ14の存在する方向を示す値として決定された後、図9に示すRFID制御に復帰させられる。以上の制御において、SA2、SA4、SA11、SB2、及びSB10が前記PAA処理部54の動作に、SA6、SA8、及びSA9が前記FSK復号部58の動作に、SA4、SA5、及びSB4が前記AM復調部56の動作に、SA1及びSBが前記方向検出部62の動作にそれぞれ対応する。
【0041】
このように、本実施例によれば、前記無線タグ14からの返信信号を受信するための複数の受信アンテナ素子28を有する受信アンテナ30と、その受信アンテナ30により受信された送信側からの回り込み信号を含み得る各受信信号の位相を制御することにより受信指向性を制御する受信指向性制御部として機能するPAA処理部54(SA2、SA4、SA11、SB2、及びSB10)と、前記受信アンテナ30により受信された受信信号に含まれる前記無線タグ14による変調成分を抽出する変調成分抽出部として機能する反射波I成分振幅検出部86(SB6)及び反射波Q成分振幅検出部88(SB7)と、それら反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により抽出される変調成分に基づいて前記無線タグ14が存在する方向を検出する方向検出部62(SB)とを、有することから、前記無線タグ14からの反射波成分を参照することでその無線タグ14の存在する方向を詳細に求めることができる。すなわち、無線タグ14の存在する方向を精度良く検出し得る無線タグ通信装置12を提供することができる。
【0042】
また、前記方向検出部62は、前記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により抽出される変調成分が最大となる方向を前記無線タグ14が存在する方向として検出するものであるため、前記PAA処理部54によりメインローブ方向を制御すること等により、前記無線タグ14の存在する方向を詳細に求めることができる。
【0043】
また、前記送信信号に起因して前記受信部に発生する回り込み信号を除去するためのキャンセル信号を発生させ、前記受信信号にそのキャンセル信号を合成するキャンセル部32(S4)を有するものであるため、前記受信信号に含まれる回り込み信号を抑制して信号対雑音比を向上させることができ、通信距離を伸ばすことができる。
【0044】
また、各受信信号の増幅率を制御し得る可変増幅部36を前記複数の受信アンテナ素子28それぞれに対応して備えたものであるため、それら複数の受信アンテナ素子28により受信された受信信号それぞれをディジタル信号に変換する受信信号A/D変換部38において分解能を可及的に高めることができる。
【0045】
また、前記可変増幅部36により増幅された受信信号の振幅をその可変増幅部36の増幅率の逆数だけ変化させる素子間ゲイン差補正部68を前記複数の可変増幅部36それぞれに対応して備えたものであるため、ノイズの影響を減少させられると共に、信号対雑音比を悪化させることなく精度の良い方向検知が可能とされる。
【0046】
また、前記方向検出部62は、前記複数の受信アンテナ素子28によりそれぞれ受信された受信信号の振幅が略同一となるように前記複数の素子間ゲイン差補正部68それぞれの増幅率を制御するものであるため、振幅の略等しい複数の受信信号に基づいて前記無線タグ14の存在する方向を検出することができる。
【0047】
また、前記方向検出部62は、前記複数の受信アンテナ素子28によりそれぞれ受信された受信信号の振幅が略同一になるように前記複数の素子間ゲイン差補正部68それぞれの増幅率を制御する第1のモードと、それら複数の受信アンテナ素子28によりそれぞれ受信された受信信号を同一の増幅率で増幅するように前記複数の素子間ゲイン差補正部68を制御する第2のモードとを、切り換え得るものであるため、態様に応じて前記複数の素子間ゲイン差補正部68のモードを切り換えることで、受信信号を好適に処理することができる。
【0048】
また、前記受信信号に含まれる前記無線タグ14による変調成分の開始位置を検出する変調成分開始位置検出部として前記FSK復号部58(SA6、SA8、及びSA9)を有し、前記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88は、そのFSK復号部58により検出される開始位置から所定長の前記変調成分を抽出するものであり、前記方向検出部62は、前記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により抽出される変調成分の振幅の平均値に基づいて前記無線タグ14が存在する方向を検出するものであるため、実用的な態様でその無線タグ14の存在する方向を検出することができる。
【0049】
また、前記受信アンテナ30により受信された受信信号を互いに直交するI相信号及びQ相信号に変換して直交復調するAM復調部56(SA4、SA5、及びSB4)を備えたものであり、前記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88は、それらI相信号及びQ相信号それぞれに含まれる前記無線タグ14による変調成分を抽出するものであり、前記方向検出部62は、前記I相成分及びQ相信号それぞれに含まれる前記無線タグ14による変調成分の絶対値の平均を振幅近似値として算出し、各振幅近似値の二乗の平方根が最大値をとる方向を前記無線タグ14が存在する方向として検出するものであるため、実用的な態様でその無線タグ14の存在する方向を検出することができる。
【0050】
続いて、前記無線タグ通信装置12の他の動作を図12乃至図15に基づいて詳細に説明する。前述の実施例において、前記FSK復号部58は、前記受信信号に含まれる前記無線タグ14による変調成分の開始位置を検出する変調成分開始位置検出部として機能するものであり、前記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88は、前記FSK復号部58により検出される開始位置から所定長の前記変調成分を抽出するものであり、前記方向検出部62は、前記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により抽出される変調成分の振幅の平均値に基づいて前記無線タグ14が存在する方向を検出するものであったが、前記無線タグ通信装置12は、図12に示すように、前記受信信号に含まれる前記無線タグ14による変調成分のうち予め定められた所定の範囲(所定長)の変調成分を前記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により抽出し、その変調成分の振幅の平均値に基づいて前記無線タグ14が存在する方向を検出するものであってもよい。すなわち、必ずしも前記無線タグ14による変調成分の開始位置から抽出するものでなくとも構わない。ここで、応答データの先頭位置は多少ばらつくことが考えられるため、上記所定長の範囲は、前記無線タグ14による応答期間よりも短い期間とすることが好ましい。また、この態様において、好適には、前記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により抽出される変調成分に基づいて前記無線タグ14が存在する方向が推測された後、前記FSK復号部58により受信信号の復号が行われる。また、斯かる復号時における前記PAA処理部54の受信PAAウェイトの値は、推測される前記無線タグ14の方向に基づいて設定される。このようにしても、前記無線タグ14の存在する方向を精度良く検出することができる。
【0051】
図13は、前記無線タグ通信装置12のDSP16による前記無線タグ14を対象とするRFID制御の他の一例について説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。この制御は、前述した図9の制御に対応するものであり、共通する処理に関しては同一の符号を付してその説明を省略する。この図13に示す制御では、前述したS6の制御に続いて、SB′において、図14に示すタグ方向推測制御が実行される。次に、SA′において、図15に示すタグ検出制御が実行された後、前述したS7以下の処理が実行される。
【0052】
図14は、図13に示すRFID制御の一部であるタグ方向推測制御について説明するフローチャートである。この制御は、前述した図11の制御に対応するものであり、共通する処理に関しては同一の符号を付してその説明を省略する。この図14に示す制御では、前述したSB4の処理に続いて、前記反射波I成分振幅検出部86の動作に対応するSB5′において、前記受信信号合成部70及びI相変換部72等を経て前記方向検出部62に入力されるI成分に含まれる前記無線タグ14による変調成分(反射波成分)のうち所定の範囲(所定長)における絶対値の平均が振幅I′として検出される。次に、前記反射波Q成分振幅検出部88の動作に対応するSB6′において、前記受信信号合成部70及びQ相変換部78等を経て前記方向検出部62に入力されるQ成分に含まれる前記無線タグ14による変調成分のうち所定の範囲における絶対値の平均が振幅Q′として検出された後、SB7以下の処理が実行される。そして、前述したSB11の処理に続いて、SB12′において、その時点におけるθTAGが前記無線タグ14の存在する推測方向として決定された後、図13に示すRFID制御に復帰させられる。
【0053】
図15は、図13に示すRFID制御の一部であるタグ検出制御について説明するフローチャートである。この制御は、前述した図10の制御に対応するものであり、共通する処理に関しては同一の符号を付してその説明を省略する。この図15に示す制御では、前述したSA1の制御に続いて、SA2′において、メインローブ方向θMAINを上述したSB12′にて決定された前記無線タグ14の存在する推測方向θTAGとして前記PAA処理部54の受信PAAウェイトレジスタの値が設定された後、前述したSA3以下の処理が実行される。また、前述したSA7及びSA10の判断が肯定される場合は、何れもそれをもって図15に示すRFID制御に復帰させられる。また、SA10の判断が否定される場合には、前記無線タグ14は検出されなかったとしてエラー終了させられる。
【0054】
このように、本変形例によれば、前記反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88は、前記受信部により受信された受信信号に含まれる前記無線タグ14による変調成分のうち予め定められた所定長の変調成分を抽出するものであり、前記方向検出部62は、それら反射波I成分振幅検出部86及び反射波Q成分振幅検出部88により抽出される変調成分の振幅の平均値に基づいて前記無線タグ14が存在する方向を検出するものであるため、実用的な態様でその無線タグ14の存在する方向を検出することができる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0056】
例えば、前述の実施例において、前記PAA処理部54、AM復調部56、FSK復号部58、及び方向検出部62等は、何れも前記無線タグ通信装置12のDSP16に機能的に備えられたものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、それらと等価な制御機能を有する制御装置をそれぞれ個別に備えたものであっても構わない。また、それら制御機能による処理は、ディジタル信号処理であるとアナログ信号処理であるとを問わない。
【0057】
また、前述の実施例において、前記無線タグ通信装置12は、送信1素子、受信3素子の構成すなわち受信のみをアレイアンテナで行う構成であったが、複数の送信アンテナ素子を有する送信アンテナを備え、送受信共にアレイアンテナで行うものであってもよい。また、送受信に共用される複数の送受信アンテナ素子を有する送受信アレイアンテナを備え、その送受信アレイアンテナにより前記送信信号の送信及び無線タグ14からの返信信号の受信を行うものであっても構わない。
【0058】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明が好適に用いられる無線タグ通信システムを説明する図である。
【図2】本実施例の一実施例である無線タグ通信装置の構成を説明する図である。
【図3】図2の無線タグ通信装置に備えられたAM復調部の構成を詳しく説明する図である。
【図4】図2の無線タグ通信装置に備えられた方向検出部の構成を詳しく説明する図である。
【図5】図2の無線タグ通信装置の通信対象である無線タグの構成を説明する図である。
【図6】図5の無線タグからの返信信号に含まれる変調成分について説明する図であり、その先頭位置から変調成分を抽出する態様を例示している。
【図7】図2の無線タグ通信装置の送信アンテナ及び受信アンテナと図5の無線タグとの相対位置関係を例示する図である。
【図8】図7に示すような相対位置関係において受信アンテナにより受信された受信信号に含まれる図5の無線タグによる変調成分からその無線タグの方向を検知する方法について詳しく説明する図であり、その受信信号を複素平面にベクトル表示したものである。
【図9】図2の無線タグ通信装置のDSPによる図5の無線タグを対象とするRFID制御について説明するフローチャートである。
【図10】図9に示すRFID制御の一部であるタグ検出制御について説明するフローチャートである。
【図11】図9に示すRFID制御の一部であるタグ方向検出制御について説明するフローチャートである。
【図12】図5の無線タグからの返信信号に含まれる変調成分について説明する図であり、そのうちの一部である所定長の期間を抽出する態様を例示している。
【図13】図2の無線タグ通信装置のDSPによる図5の無線タグを対象とするRFID制御の他の一例について説明するフローチャートである。
【図14】図13に示すRFID制御の一部であるタグ方向推測制御について説明するフローチャートである。
【図15】図13に示すRFID制御の一部であるタグ検出制御について説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
12:無線タグ通信装置
14:無線タグ
28:受信アンテナ素子
30:受信アンテナ
32:キャンセル部
36:可変増幅部
52:AM変調部
54:PAA処理部(受信指向性制御部)
56:AM復調部
58:FSK復号部(開始位置検出部)
62:方向検出部
68:素子間ゲイン差補正部
86:反射波I成分振幅検出部(変調成分抽出部)
88:反射波Q成分振幅検出部(変調成分抽出部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグに向けて送信信号を送信すると共に、該送信信号に応じて該無線タグから返信される返信信号を受信して該無線タグとの間で情報の通信を行う無線タグ通信装置であって、
前記無線タグからの返信信号を受信するための複数のアンテナ素子を有する受信アンテナを備えた受信部と、
該受信部により受信された、前記送信信号に起因して発生する回り込み信号を含み得る各受信信号の位相を制御することにより受信指向性を制御する受信指向性制御部と、
前記受信アンテナにより受信された受信信号に含まれる前記無線タグによる変調成分を抽出する変調成分抽出部と、
該変調成分抽出部により抽出される変調成分に基づいて前記無線タグが存在する方向を検出する方向検出部と
を、有することを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項2】
前記方向検出部は、前記変調成分抽出部により抽出される変調成分が最大となる方向を前記無線タグが存在する方向として検出するものである請求項1の無線タグ通信装置。
【請求項3】
前記送信信号に起因して前記受信部に発生する回り込み信号を除去するためのキャンセル信号を発生させ、前記受信信号に該キャンセル信号を合成するキャンセル部を有するものである請求項1又は2の無線タグ通信装置。
【請求項4】
前記受信部は、増幅率を制御し得る可変増幅部を前記複数のアンテナ素子それぞれに対応して備えたものである請求項1から3の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項5】
前記受信部は、前記可変増幅部により増幅された受信信号の振幅を該可変増幅部の増幅率の逆数だけ変化させる素子間ゲイン差補正部を前記複数の可変増幅部それぞれに対応して備えたものである請求項4の無線タグ通信装置。
【請求項6】
前記方向検出部は、前記複数のアンテナ素子によりそれぞれ受信された受信信号の振幅が略同一となるように前記可変増幅部の増幅率を制御するものである請求項4又は5の無線タグ通信装置。
【請求項7】
前記方向検出部は、前記複数のアンテナ素子によりそれぞれ受信された受信信号の振幅が略同一になるように前記可変増幅部の増幅率を制御する第1のモードと、それら複数のアンテナ素子によりそれぞれ受信された受信信号を同一の増幅率で増幅するように前記可変増幅部を制御する第2のモードとを、切り換え得るものである請求項6の無線タグ通信装置。
【請求項8】
前記受信信号に含まれる前記無線タグによる変調成分の開始位置を検出する変調成分開始位置検出部を有し、
前記変調成分抽出部は、該変調成分開始位置検出部により検出される開始位置から所定長の前記変調成分を抽出するものであり、
前記方向検出部は、該変調成分抽出部により抽出される変調成分の振幅の平均値に基づいて前記無線タグが存在する方向を検出するものである請求項1から7の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項9】
前記変調成分抽出部は、前記受信部により受信された受信信号に含まれる前記無線タグによる変調成分のうち予め定められた所定長の変調成分を抽出するものであり、
前記方向検出部は、該変調成分抽出部により抽出される変調成分の振幅の平均値に基づいて前記無線タグが存在する方向を検出するものである請求項1から7の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項10】
前記受信部は、前記受信アンテナにより受信された受信信号を互いに直交するI相信号及びQ相信号に変換して直交復調する復調部を備えたものであり、
前記変調成分抽出部は、それらI相信号及びQ相信号それぞれに含まれる前記無線タグによる変調成分を抽出するものであり、
前記方向検出部は、前記I相成分及びQ相信号それぞれに含まれる前記無線タグによる変調成分の絶対値の平均を振幅近似値として算出し、各振幅近似値の二乗の平方根が最大値をとる方向を前記無線タグが存在する方向として検出するものである請求項1から9の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項1】
無線タグに向けて送信信号を送信すると共に、該送信信号に応じて該無線タグから返信される返信信号を受信して該無線タグとの間で情報の通信を行う無線タグ通信装置であって、
前記無線タグからの返信信号を受信するための複数のアンテナ素子を有する受信アンテナを備えた受信部と、
該受信部により受信された、前記送信信号に起因して発生する回り込み信号を含み得る各受信信号の位相を制御することにより受信指向性を制御する受信指向性制御部と、
前記受信アンテナにより受信された受信信号に含まれる前記無線タグによる変調成分を抽出する変調成分抽出部と、
該変調成分抽出部により抽出される変調成分に基づいて前記無線タグが存在する方向を検出する方向検出部と
を、有することを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項2】
前記方向検出部は、前記変調成分抽出部により抽出される変調成分が最大となる方向を前記無線タグが存在する方向として検出するものである請求項1の無線タグ通信装置。
【請求項3】
前記送信信号に起因して前記受信部に発生する回り込み信号を除去するためのキャンセル信号を発生させ、前記受信信号に該キャンセル信号を合成するキャンセル部を有するものである請求項1又は2の無線タグ通信装置。
【請求項4】
前記受信部は、増幅率を制御し得る可変増幅部を前記複数のアンテナ素子それぞれに対応して備えたものである請求項1から3の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項5】
前記受信部は、前記可変増幅部により増幅された受信信号の振幅を該可変増幅部の増幅率の逆数だけ変化させる素子間ゲイン差補正部を前記複数の可変増幅部それぞれに対応して備えたものである請求項4の無線タグ通信装置。
【請求項6】
前記方向検出部は、前記複数のアンテナ素子によりそれぞれ受信された受信信号の振幅が略同一となるように前記可変増幅部の増幅率を制御するものである請求項4又は5の無線タグ通信装置。
【請求項7】
前記方向検出部は、前記複数のアンテナ素子によりそれぞれ受信された受信信号の振幅が略同一になるように前記可変増幅部の増幅率を制御する第1のモードと、それら複数のアンテナ素子によりそれぞれ受信された受信信号を同一の増幅率で増幅するように前記可変増幅部を制御する第2のモードとを、切り換え得るものである請求項6の無線タグ通信装置。
【請求項8】
前記受信信号に含まれる前記無線タグによる変調成分の開始位置を検出する変調成分開始位置検出部を有し、
前記変調成分抽出部は、該変調成分開始位置検出部により検出される開始位置から所定長の前記変調成分を抽出するものであり、
前記方向検出部は、該変調成分抽出部により抽出される変調成分の振幅の平均値に基づいて前記無線タグが存在する方向を検出するものである請求項1から7の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項9】
前記変調成分抽出部は、前記受信部により受信された受信信号に含まれる前記無線タグによる変調成分のうち予め定められた所定長の変調成分を抽出するものであり、
前記方向検出部は、該変調成分抽出部により抽出される変調成分の振幅の平均値に基づいて前記無線タグが存在する方向を検出するものである請求項1から7の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項10】
前記受信部は、前記受信アンテナにより受信された受信信号を互いに直交するI相信号及びQ相信号に変換して直交復調する復調部を備えたものであり、
前記変調成分抽出部は、それらI相信号及びQ相信号それぞれに含まれる前記無線タグによる変調成分を抽出するものであり、
前記方向検出部は、前記I相成分及びQ相信号それぞれに含まれる前記無線タグによる変調成分の絶対値の平均を振幅近似値として算出し、各振幅近似値の二乗の平方根が最大値をとる方向を前記無線タグが存在する方向として検出するものである請求項1から9の何れかの無線タグ通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図8】
【公開番号】特開2006−284510(P2006−284510A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108064(P2005−108064)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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