説明

無線データ通信方法

【課題】送信側手段から送信される信号をリングバッファメモリに順次保存してパケット送信し、受信側手段にて復元することにより、到達したデータから、未到達のデータも復元できる無線データ通信方法を提供することである。
【解決手段】計測器30から送信側手段20へデータを送出するステップと、送信側制御手段21は、計測器から入力されたデータをリングバッファメモリ26の書込みポイントへ保存すると共に制御情報を更新し、所定数のデータが更新される毎に、リングバッファメモリのデータ及び制御情報をパケット送信するステップと、受信側手段40は、送信側手段から送信されたパケットを受信し、受信側制御手段41にて、受信したパケットに含まれる制御情報に基づいて、パケット中の更新されたデータを読み出してリングバッファメモリ46に上書きし、展開してリングバッファメモリに保存するステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信側手段から受信側手段へデータを無線送信する無線データ通信方法に関するものであり、より具体的には、リングバッファメモリを利用した無線データ通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
締付機等の回転軸に取り付けられる締付トルク測定ユニットに送信側手段を内蔵し、無線によりトルク値や回転角度等の締付情報を受信側手段に送信することのできる送受信システムを出願人は提案している。
【0003】
デジタル信号を用いる送受信システムでは、一般的に、通信情報をパケット変換し、送信側手段から順次受信側手段に送信している。
従って、通信状態が悪い場合には、送信側手段から送信された一部の通信パケットが、受信側手段へ到達しない可能性がある。
【0004】
また、送信側手段から通信パケットを送信した後、所定のタイムアウト時間を設けて、その間に受信側手段から返信がなかった場合にのみ通信パケットを再送するようなデータ通信方式が考えられるが、測定値をリアルタイム性が要求される制御に用いるような場合には、通信パケットを再送するために必要な時間が、制御への負荷となる等の影響を及ぼすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、パケットが受信側手段に到達しないことがあることを前提として、現在送信しようとしているパケットに、複数回分の過去の測定値を加えて、冗長なデータとして毎回パケット送信する方式も考えられる。しかしながら、このような冗長なデータを送信するためには、送信側手段にて、パケット送信毎に過去の測定値を参照しながらデータを組み立てる必要があり、送信側手段のCPU処理負荷が上昇することが懸念される。
特に、送信側手段が電池駆動によるものである場合、CPUの処理負荷の上昇は、電池の持ちを著しく低下させる。
【0006】
本発明の目的は、送信側手段で送信したい内容をリングバッファメモリに順次保存し、実際に送信するタイミングでリングバッファメモリの内容を全てパケット送信し、受信側手段にてデータを時系列的に復元することにより、受信側手段へ送信すべきデータが未到達のパケットがあった場合でも、その後に到達したパケットに含まれるデータから、未到達のデータも補償することができる無線データ通信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の無線データ通信方法は、
送信すべきデータを測定する計測器と、
該計測器に電気的に接続され、計測器から送信すべきデータの入力を受ける送信側制御手段と、
送信側制御手段により制御されて信号を送受信する送信側回路と、
信号送信用の送信側アンテナと、を有し、
送信側制御手段は、送信すべき複数のデータが記憶可能なリングバッファメモリを有し、
該リングバッファメモリは、リングバッファへの書込みポイント、測定値の追番、及び、有効データ数を含む制御情報を有する、送信側手段と、
該送信側手段と信号の受信を行なう受信側回路と、
該受信側回路に接続された受信側アンテナと、
受信側回路を制御する受信側制御手段とを有し、
受信側制御手段は、受信したデータを書き込み可能なリングバッファメモリ及び該リングバッファメモリの記憶内容を展開して記憶するリニアバッファメモリを有する受信側手段と、を有する無線データ通信方法において、
計測器から送信側手段へデータを送出するステップと、
送信側制御手段は、計測器から入力されたデータをリングバッファメモリの書込みポイントへ保存すると共に制御情報を更新し、所定数のデータが更新される毎に、リングバッファメモリのデータ及び制御情報を送信側回路から送信側アンテナを介してパケット送信するステップと、
受信側手段は、送信側手段から送信されたパケットを受信側アンテナを介して受信側回路にて受信し、受信側制御手段にて、受信したパケットに含まれる制御情報に基づいて、パケット中の更新されたデータを読み出してリングバッファメモリに上書き保存し、該リングバッファメモリの内容を展開して、リニアバッファメモリに保存するステップと、
を有する。
【発明の効果】
【0008】
送信側手段は、計測器から受信したデータをリングバッファメモリに順次蓄積すると共に、制御情報を更新し、これらデータを所定タイミング毎に送信側手段へ送信し、受信側手段は、受信したパケットを復元して、更新されたデータを順次蓄積する。
従って、送信側手段において、データの並べ替え等の複雑な処理は不要であり、リングバッファメモリのデータと制御情報を送信するのみでよいから、送信側制御手段の負荷を小さくすることができる。
また、送信側手段から送信されたパケットが、受信側手段へ未到達の場合でも、パケットには、過去の複数回のデータが含まれるから、その後に送受信されたパケットに含まれるデータに基づいて、未到達のデータも復元することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の送受信システムのブロック図である。
【図2】送信側手段のリングバッファメモリのデータ更新を示している。
【図3】送信側のリングバッファメモリ及び受信側におけるリングバッファメモリとリニアバッファメモリのデータ更新とデータの送受信を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の送受信システム(10)のブロック図である。本発明の送受信システム(10)は、データを送出する計測器(30)と、該計測器(30)のデータを送信する送信側手段(20)と、該送信側手段(20)からの信号を受信する受信側手段(40)を有する。
【0011】
計測器(30)として、締付トルク測定ユニットを例示することができ、この場合、計測器(30)及び送信側手段(20)は、締付機の出力軸と一体に回転可能に配備することができる。
計測器(30)及び送信側手段(20)への電源供給は、図示省略する電池により行なうことができる。
【0012】
<送信側手段(20)>
送信側手段(20)は、図1に示すように、信号を送受信する送信側回路(22)(RF回路)と、送信用の送信側アンテナ(24)とを具える。送信側制御手段(21)により制御される。
送信側制御手段(21)は、CPU、リングバッファメモリ(26)等を具え、計測器(30)から送出されたデータを処理して、送信側回路(22)から送信する。
【0013】
図2は、送信側制御手段(21)に配備されたリングバッファメモリ(26)のデータを示す図である。
リングバッファメモリ(26)は、図2(a)に示すように、測定値追番、有効データ数及び書込みポイントを制御情報として有しており、リングバッファには、複数(実施例では100)のデータが記憶可能となっている。
【0014】
計測器(30)からデータが入力されると、図2(b)に示すように、送信側制御手段(21)は、リングバッファの書込みポイントが示すリングバッファ[0]にデータを保存すると共に、制御情報である測定値追番、有効データ数を1加算すると共に、書込みポイントを1進める。
【0015】
次に、計測器(30)からデータが入力されると、図2(c)に示すように、送信側制御手段(21)は、書込みポイントを参照して、リングバッファの該当する書込みポイント[1]にデータを書き込むと共に、制御情報である測定値追番、有効データ数を1加算し、書込みポイントを1進める。
【0016】
以降、計測器(30)からデータが入力される毎に、リングバッファメモリ(26)へデータを所定の書込みポイントに保存し、制御情報を更新する。
【0017】
送信側制御手段(21)は、所定数のデータがリングバッファメモリ(26)へ書き込まれると、送信側回路(22)から送信側アンテナ(24)を介して、リングバッファメモリ(26)の記録内容を送信する。
例えば、図3(a)〜図3(f)に示すように、データが10ヶ保存されると、送信側回路(22)からリングバッファメモリ(26)の保存内容をパケット通信するようにすることができる。
【0018】
送信側手段(20)は、後述する受信側手段(40)がパケットの受信の可否に関わらず、順次、所定数のデータが蓄積される毎に、パケットを送信する。これにより、送信側手段(20)における処理数を大幅に削減することができる。
【0019】
リングバッファメモリ(26)へデータが入力され、リングバッファメモリ(26)が満杯になると(実施例ではデータ数が100ヶに達する)、次に入力されるデータは、図3(f)に示すように、リングバッファメモリ(26)の書込みポイント[0]に上書きする。以降に入力されるデータも順次、次の書込みポイントに上書きされる。
【0020】
<受信側手段(40)>
送信側手段(20)から送信された信号の受信は、図1に示す受信側手段(40)により行なうことができる。
受信側手段(40)は、受信側アンテナ(43)、受信側回路(42)(RF回路)及び受信側制御手段(41)を有する。送信側手段(20)から送信された信号は、受信側アンテナ(43)及び受信側回路(42)を介して受信側制御手段(41)にて受信される。
受信側制御手段(41)は、送信側制御手段(21)のリングバッファメモリ(26)と同一構成を有するリングバッファメモリ(46)と、該リングバッファメモリ(46)の保存内容を展開して保存するリニアバッファメモリ(48)を有する。
【0021】
受信側制御手段(41)は、受信したパケットをリングバッファに含まれる制御情報を基にリングバッファメモリ(46)に一旦上書き保存し、展開して、リニアバッファメモリ(48)に時系列的に復元する。具体的には、図3(g)、(h)、(i)に示すように、送信側手段(20)から送信されたパケットを、リングバッファメモリ(46)で一旦保存し、図3(j)に示すように、パケットに含まれる制御情報の測定値追番、有効データ数及び書込みポイントを参照し、前回受信したパケットに含まれたこれら制御情報と、新たに受信したパケットに含まれる制御情報とを比較し、測定値追番の差分から新たに含まれる計測器(30)のデータのみを取り出して、受信側制御手段(41)のリニアバッファメモリ(48)へ順次保存する。
【0022】
これにより、受信側制御手段(41)のリニアバッファメモリ(48)のデータが更新される。
【0023】
ノイズ等の影響による通信不良によって、送信側手段(20)から送信されたパケットが受信側手段(40)に到達しないことがある(例えば、図3(c)のパケット)。この場合、受信側手段(40)は、パケットが未到達であることを送信側手段(20)へ送信するのではなく、次のパケットの到達を待つ。
【0024】
次のパケット(図3(d)(h))が受信側手段(40)へ到達すると、受信側制御手段(41)は、パケットに含まれるデータの内、前回受信したパケット(図3(g))と今回受信したパケット(図3(h))を比較し、測定値追番から、新たに含まれるデータ(図3(c)及び(d)にて更新されたデータ)を取得し、受信側制御手段(41)のリングバッファメモリ(46)へ一旦保存し、測定値追番の差分から新たに含まれる計測器(30)のデータのみを取り出して、受信側制御手段(41)のリニアバッファメモリ(48)へ順次保存する。
【0025】
これにより、送信側手段(20)の信号処理を削減し、パケット未到達の場合の処理を不要とすることができるから、送信側制御手段(21)の負荷を小さくすることができ、電池消費を低減することができる。
【0026】
また、あるパケットが未到達であっても、後のパケットが受信側手段(40)へ到達することで、未到達であったパケットにて更新されたデータも、受信側手段(40)にて復元することができるから、データが途切れる可能性が減少し、得られたデータの確実性及び信頼性を可及的に高めることができる。
【0027】
受信側手段(40)のリニアバッファメモリ(48)に蓄積されたデータは、図示省略する表示手段に数値又はグラフ化等して表示したり、他の外部メモリ(パソコン等)に取り出して、必要な処理を施すことができる。
【0028】
上記実施例では、本発明の無線データ通信方法を、締付トルク測定ユニットに適用して説明したが、本発明の適用は、本実施例に限定されるものでないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、送信側手段の処理負荷を低減しつつ、送受信されるデータの確実性及び信頼性を可及的に高めることのできる無線データ通信方法として有用である。
【符号の説明】
【0030】
(10) 送受信システム
(20) 送信側手段
(21) 送信側制御手段
(22) 送信側回路
(24) 送信側アンテナ
(26) リングバッファメモリ
(30) 計測器
(40) 受信側手段
(41) 受信側制御手段
(42) 受信側回路
(43) 受信側アンテナ
(46) リングバッファメモリ
(48) リニアバッファメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信すべきデータを測定する計測器と、
該計測器に電気的に接続され、計測器から送信すべきデータの入力を受ける送信側制御手段と、送信側制御手段により制御されて信号を送受信する送信側回路と、信号送信用の送信側アンテナと、を有し、送信側制御手段は、送信すべき複数のデータが記憶可能なリングバッファメモリを有し、該リングバッファメモリは、リングバッファへの書込みポイント、測定値の追番、有効データ数を含む制御情報を有する、送信側手段と、
該送信側手段と信号の受信を行なう受信側回路と、該受信側回路に接続された受信側アンテナと、受信側回路を制御する受信側制御手段とを有し、受信側制御手段は、受信したデータを書き込み可能なリングバッファメモリ及び該リングバッファメモリの記憶内容を展開して保存するリニアバッファメモリを有する受信側手段と、を有する無線データ通信方法において、
計測器から送信側手段へデータを送出するステップと、
送信側制御手段は、計測器から入力されたデータをリングバッファメモリの書込みポイントへ保存すると共に制御情報を更新し、所定数のデータが更新される毎に、リングバッファメモリのデータ及び制御情報を送信側回路から送信側アンテナを介してパケット送信するステップと、
受信側手段は、送信側手段から送信されたパケットを受信側アンテナを介して受信側回路にて受信し、受信側制御手段にて、受信したパケットに含まれる制御情報に基づいて、パケット中の更新されたデータを読み出してリングバッファメモリに上書き保存し、該リングバッファメモリの内容を展開して、リニアバッファメモリに保存するステップと、
を有することを特徴とする無線データ通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−101154(P2011−101154A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253795(P2009−253795)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000201467)前田金属工業株式会社 (22)
【Fターム(参考)】