説明

無線フィールド機器の改善された検出および配置の方法

複数の既設無線フィールド機器(10)の既設ネットワークに対して、無線フィールド機器(32)を追加する見込み位置(30)を評価する方法(60)を提供する。この方法(60)は、見込み位置(30)に携帯型フィールド保守ツール(52)を置くステップ(62)と、見込み位置(30)の通信範囲内にある無線フィールド機器(10)を携帯型フィールド保守ツール(52)に識別させるステップとを含む。見込み位置(30)における無線通信に関する情報が視覚化される。携帯型フィールド保守ツール(52)を用いるプロセス設備において、選択されたフィールド機器を識別するための方法(70、250)もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線フィールド機器の改善された検出および配置の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[関連出願の記述]
工業設備においては、工業および化学プロセスなどをモニタリングし、そしてそれらを制御するための制御システムが利用される。典型的には、このプロセス制御システムは、工業プロセスの主要な箇所に分配されるフィールド機器であって、プロセス制御ループを介して制御室の制御回路に接続されるフィールド機器を使ってこれらの機能を実行する。フィールド機器は、通常、分散した制御システムまたはプロセスモニタリングシステムにおいて、パラメータを検知したり、またはプロセス上で動作したりするような機能を実行する。
【0003】
フィールド機器には変換器を含むものがある。変換器は、物理的な入力に基づいて出力信号を生成するか、または、入力信号に基づいて物理的な出力を生成する装置という意味で理解される。典型的に変換器は、ある入力を別の態様の出力に変換する。変換器の種類には、様々な分析具、圧力センサ、サーミスタ、熱電対、歪ゲージ、流量計、位置決め装置、アクチュエータ、ソレノイド、表示灯その他が含まれる。プロセス設備には、高揮発性で、爆発性すらある環境を伴うものもあり得る。したがって、フィールド機器およびそのようなフィールド機器を用いた携帯型のフィールド保守ツールにとって、本質安全の要求に応えることは有益であるし、むしろ必要なことである。このような要求は、それに応えた電気装置が故障しても発火源を生み出さない安全性の確保に資するものである。工業的安全要求の一例が、1998年10月にファクトリ・ミューチュアル・リサーチよって公表された、APPROVAL STANDARD INTRINSICALLY SAFE APPARATUS AND ASSOCIATED APPARATUS FOR USE IN CLASS I, II and III, DIVISION NUMBER 1 HAZARDOUS (CLASSIFIED) LOCATIONS, CLASS NUMBER 3610に記述される。本質安全の要求に応えた携帯型フィールド保守ツールの例としては、テキサス州オースティンのエマーソン・プロセス・マネジメント社から入手可能であり、商品名称Model375フィールド通信器およびModel475フィールド通信器として販売されるものが含まれる。
【0004】
典型的に各フィールド機器は、プロセス制御室または他の回路とプロセス制御ループを介した通信のために用いられる通信回路をもまた含む。従来のアナログフィールド機器は、2線プロセス制御電流ループを介して制御室に接続されていた。いくつかの設備では、フィールド機器での通信に無線技術が使用され始めている。無線動作によって、フィールド機器の接続および設定が容易化される。
【0005】
無線プロセス通信技術の1つの標準規格として知られているのがWireless HART(登録商標)規格である。このWireless HART(登録商標)規格は、2007年9月にHART通信協会により公表された。Wireless HART(登録商標)仕様の関連する箇所としては、HCF仕様13,レビジョン7.0;HCF仕様65−無線物理層仕様;HCF仕様75−TDMAデータリンク層仕様(TDMAとは時分割多元接続をいう。);HCF仕様85−ネットワーク管理仕様;HCF仕様155−無線コマンド仕様;HCF仕様290−無線機器仕様が含まれる。
【0006】
他の無線ネットワーク通信技術がISA100.11aにおいて記述される。この技術は、IEEE802.15.4−2006準拠の無線回路を用いた2.4GHz周波数における無線通信を提案する。ISA100.11規格は、インターナショナル・ソサエティ・オブ・オートメーション(ISA)により管理される。
【0007】
これらの無線通信技術は、プロセス制御およびプロセス通信の技術分野に重要な優位性をもたらす一方で、そのような通信を採用する無線フィールド機器の保守および構築のための従来技術は、多くの場合、非効果的であるとされている。
【発明の概要】
【0008】
複数の既設無線フィールド機器の既設ネットワークに対して、無線フィールド機器を追加する潜在的な可能性のある見込み位置を評価する方法が提供される。この方法は、見込み位置に携帯型フィールド保守ツールを置くステップと、見込み位置の通信範囲内にある無線フィールド機器を携帯型フィールド保守ツールに識別させるステップとを含む。見込み位置における無線通信に関する情報が視覚化される。携帯型フィールド保守ツールを用いるプロセス設備において、選択されたフィールド機器を識別するためのいくつかの方法もまた提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の特に有用な実施形態における、無線プロセス制御環境を表す図である。
【図2】図2は、新たな無線フィールド機器が追加される無線プロセス制御環境を表す図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態による、新たな無線フィールド機器が追加される無線プロセス制御環境を表す図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態による、新たな無線フィールド機器のための見込み位置を評価する方法を示すフロー図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態による、携帯型フィールド保守ツールを表すシステムブロック図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態による、携帯型フィールド保守ツールを用いて、選択されたフィールド機器の位置を検出する方法を表す図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態による、携帯型フィールド保守ツールを用いて、選択されたフィールド機器の位置を検出する方法を示すフロー図である。
【図8】図8は、本発明の他の実施形態による、携帯型フィールド保守ツールを用いて、選択されたフィールド機器の位置を検出する方法を表す図である。
【図9】図9は、本発明の他の実施形態による、携帯型フィールド保守ツールを用いて、選択されたフィールド機器の位置を検出する方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[発明の詳細な説明]
図1は、本発明の特に有用な実施形態における、無線プロセス制御環境を表す図である。図1に示されるように、複数の無線フィールド機器10が無線通信を介して無線ゲートウェイ20に対し直接的または間接的に通信可能な状態で接続される。無線フィールド機器10は、たとえばミネソタ州チャンハッセンのエマーソン・プロセス・マネジメント社による商品名称Model3051Sとして販売される無線圧力変換器のような、概して無線プロセス可変変換器として説明される。しかし当業者であれば、無線フィールド機器10として、他の種類の無線プロセス可変変換器、無線アクチュエータ、無線調整弁その他を含むことができることを理解するであろう。無線ゲートウェイ20は、上述したWireless HART(登録商標)プロトコルのような既知の無線プロセス通信プロトコルを用いて無線フィールド機器10と通信をするように構成される。無線ゲートウェイの一例としては、ミネソタ州チャンハッセンのエマーソン・プロセス・マネジメント社による商品名称Model1420として販売されるものがある。無線ゲートウェイ20は、参照符号22で示されるイーサネット(登録商標)のようなローカルエリアネットワークに接続するように構成される、1つまたは2つ以上の有線ポートを備える。その有線接続により、無線ゲートウェイ20は、ローカルネットワーク22に接続されるワークステーション24および26のような任意の装置に対して情報を送信し、およびそれらの装置から情報を受信することができる。
【0011】
図1に示される無線フィールド機器のネットワークは、いくつかのフィールド機器が他のフィールド機器と通信をし、結局はそれらの通信が無線ゲートウェイ20に伝わるメッシュネットワークであると考えることができる。したがって、あるフィールド機器が無線ゲートウェイ20から大きく離れて設置されまたは直接通信ができなくても、1つまたは2つ以上の他のフィールド機器を介した無線プロセス通信を提供することができるのである。
【0012】
図2は、新たな無線フィールド機器が追加される無線プロセス制御環境を表す図である。新たな無線フィールド機器の設置が必要となると、現状その手順は非常に厄介である。無線フィールド機器にとってその実際の位置は、多くの場合、非常に重要である。その理由は、機器の実際の位置がメッシュネットワークにおける他の機器に対する近接性だけでなく、ゲートウェイに対する近接性へも影響を与えるからである。また、電磁干渉源または物理的障害物との相互の位置によっては、これらがフィールド機器に対しより深刻な影響を与えるかも知れない。したがって、ユーザは、既設の無線フィールド機器のネットワークに新たな無線フィールド機器の設置を計画するときには、通常、その新たな機器の実際の位置に関する数多くの作業と評価を実施することとなる。
【0013】
典型的には、ユーザは、図2の参照符号30で示される提案された設置位置と他の接続ポイント10(自己組織型ネットワークでは任意の構成機器要素)との間の物理的な距離を評価し、そして新たな無線フィールド機器の、期待される有効な通信範囲内の距離かどうかを判定する。
【0014】
位置30の詳細な調査をするために、多くの場合ユーザは、フィールド内の位置30に出向き無線テスト機器を位置30に置く。そしてユーザは、ワークステーション24、26の1つに戻り、無線ゲートウェイ20にアクセスし、そして無線テスト機器が無線ネットワークに接続するまで待つ。無線テスト機器がネットワークに接続するのに10分までの時間が必要とされる。無線テスト機器がネットワークに接続すると、ユーザは無線ゲートウェイによって提供されるユーザインタフェースを介して、テスト機器に関する通信特性の情報を視る。提案された位置30が要求に合うならば、ユーザは位置30に戻り、テスト機器を新たな無線フィールド機器に交換する。しかし、位置30が要求に合わなければ、代わりの位置でこの一連の手順が繰り返される。仮にユーザが少数の見込み位置を実地調査しているならば、この手順を有意な時間で済ませることができる。
【0015】
図3は、本発明の実施形態による、新たな無線フィールド機器が追加される無線プロセス制御環境を表す図である。図3に関連して示される実施形態は、既設の無線ネットワークに新たな無線フィールド機器を追加する手順を改善するための新たな能力を携帯型フィールド保守ツールに与える。提案された位置30にテストフィールド機器を設置する代わりに、携帯型フィールド保守ツール52が用いられる。ツール52は、フィールド機器10から情報を得ること、およびフィールド機器10に対し直接通信できるようにする無線プロセス通信モジュール(図5参照)を有している。これにより、ツール52が位置30にあるときに、ユーザはツール52に備えられる機能を選択して、位置30の通信範囲内にある全ての無線フィールド機器10をツール52に識別させることができる。そして、ツール52は、位置30の範囲内にある無線フィールド機器10を表示する。その表示は、単にツール52が位置30において通信可能なフィールド機器の数を表示するものでよい。しかしながら、機器のタグ情報またはMACアドレスおよび位置30における信号強度の情報を含む、より洗練された内容の表示とすることもできる。さらに、ツール52は、接続性に関し、たとえば電磁干渉、他のプロセス通信ネットワークの存在、通信エラー、または新たな無線フィールド機器を設置することにあたり技術者が関心をよせる他の任意適宜なパラメータを測定しおよび報告することもできる。図3に関連して説明される実施形態は、特にWireless HART(登録商標)の適用が想定されるが、しかし他の任意適宜の無線プロセス通信プロトコルの使用が可能である。さらには、図3に関連して説明される実施形態がある一方で、携帯型フィールド保守ツール52に関しては、無線センサネットワーク上で通信可能であり、そして技術者またはユーザに有用な情報を提供できる任意の装置を採用することができる。しかし、その装置は、少なくとも暫くの間、フィールド内に設置されることから、上述したような本質安全仕様の少なくとも1つに応えたツール52であることが好ましい。
【0016】
それに加えて、またはそれに代わり、位置30における信号品質を常時評価することができる。すなわち、位置30が周期的な電磁干渉を受けやすい場所であるならば、調査は、それにより断続的となり得る通信の困難性を呼び込むような干渉を検出することになるであろう。位置30の調査は、1つまたは2つ以上のフィールド機器10、ゲートウェイ20または好ましくはツール52に組み込まれたソフトウェアアプリケーションを用いて、ネットワーク構成要素の連続的または周期的なモニタ信号強度に対して常時行うことができる。このモニタされた信号強度情報は記録され、そして(ネットワークマップのような)地理的情報と結合されることで、信号強度が無線プロセスネットワークにおける位置の関数としてグラフ化した直観的な表示でユーザに提供されることが好ましい。このマップは、ネットワークヒートマップと名付けられ、位置30の領域における1、2、3、4…云々機器に関する信号強度の過去の履歴をグラフ化して表示するものとして用いることができる。また、いくつかの実施形態において、このアプリケーションは、1、2、3…云々無線フィールド機器に関する最低の信号強度を示す。さらにまた、いくつかの実施形態において、このソフトウェアアプリケーションは、どの無線センサネットワークに新たなフィールド機器を追加すべきか推薦するとともに、新たな無線フィールド機器で予期される通信信頼度を表示することもできる。
【0017】
図4は、本発明の実施形態による、新たな無線フィールド機器のための見込み位置を評価する方法を示すフロー図である。方法60は、新たな無線フィールド機器の提案された位置30に、携帯型フィールド保守ツールが置かれるブロック62で始まる。次に、ブロック64で、携帯型フィールド保守ツールは、この携帯型フィールド保守ツールの範囲内の少なくともいくつかの無線フィールド機器を識別する。ブロック64では、携帯型フィールド保守ツールは、範囲内の全ての無線フィールド機器を識別することが好ましい。ブロック66では、携帯型フィールド保守ツールは、携帯型フィールド保守ツールのディスプレイを介して無線通信に関する情報をユーザに提供する。この情報は、検出されたフィールド機器の数;フィールド機器のタグ情報;各フィールド機器に関する信号強度などとすることができる。
【0018】
図5は、本発明の実施形態による、携帯型フィールド保守ツールを表すシステムブロック図である。ツール52は、爆発の可能性のある環境下における安全性の確保に資するべく、上述したような本質安全仕様の少なくとも1つに応えることが好ましい。
【0019】
携帯型フィールド保守ツール52は、少なくとも1つの無線プロセス通信モジュール120を含む。無線プロセス通信モジュール120の好適な例は、上述したWireless HART(登録商標)プロトコルのような既知の無線通信プロトコルに従って適格な信号を生成および/または受信するモジュールを含む。他の好適な無線プロセス通信プロトコルが上述したISA100.11aにおいて記述される。図5は単体の無線プロセス通信モジュール120を示すが、任意適宜の数の無線プロセス通信モジュールを現に存するまたは将来開発される種々の無線プロセス通信プロトコルに従った通信に使用できることは、明らかに考慮される。
【0020】
携帯型フィールド保守ツール52は、また、少なくとも1つの第2の無線通信プロトコルモジュール122をも含む。無線通信プロトコルモジュール122は、図5に仮想線で示される選択的な通信仕様の1つまたは2つ以上に従って通信可能である。具体的には、無線通信プロトコルモジュール122は、Bluetooth(登録商標)仕様124;Wi-Fi(登録商標)仕様126;既知のRFID仕様128;セルラー通信技術130;および/または衛星通信132に従って通信をすることができる。これらの通信技術および通信方法により、携帯型フィールド保守ツール52は、直接無線通信を介して、または無線ゲートウェイが通常接続しているインターネットを利用して、無線ゲートウェイ20と直接的に通信可能となる。1つの無線通信プロトコルモジュール122が図5に示されるが、任意適宜の数のものを使用することができる。無線プロセス通信プロトコルモジュール120および無線通信プロトコルモジュール122のそれぞれは、有線プロセス通信モジュール138にも接続するコントローラ130に接続される。コントローラ130は、好ましくはマイクロプロセッサであり、携帯型フィールド保守の作業を実現する命令シーケンスを実行する。有線プロセス通信モジュール138により、携帯型フィールド保守ツール52を端子142、144の有線接続でフィールド機器に対し物理的に接続することができる。好適な有線プロセス通信の例としては、ハイウェイ・アドレサブル・リモート・トランスデューサ(HART(登録商標))プロトコル、FOUNDATION(登録商標)フィールドバス・プロトコルその他が含まれる。
【0021】
携帯型フィールド保守ツール52は、本発明の実施形態に容易に追加される多くの選択可能な機能を含むことができる。具体的には、ツール52は、GPSモジュール150のような位置検出モジュールを含むことができる。GPSモジュール150は、精度改善のための広域補強システム(WAAS)を追加的に利用するように構成することができ、および/または必要に応じて差動GPS技術を利用して動作するように構成することができる。モジュール150はコントローラ130に接続され、ツール52の地理的位置の指示情報をコントローラ130に提供する。加えて、好ましくはツール52は、コンパスが指す方向を示すことが可能な、コントローラ130に接続されるコンパスモジュール152を備えることもできる。さらにまた、ツール52は、重力に対するツール52の傾斜角度に関する指示値をコントローラ130に提供するための、コントローラ130に接続されるチルトモジュール154を含むこともできる。しかしながら、検出軸の追加も考慮される。
【0022】
ツール52のこれらの選択可能な機能部は、作業員または技術者に対してフィールドにおける無線フィールド機器の実際の位置を見出すことを助ける本発明の実施形態において特に有用である。製油所は、多くの場合、様々な場所に多くのフィールド機器が設置される非常に大規模なプロセス設備であり、フィールド機器のいくつかは容易には視認できないであろう。作業員または技術者が施工、設定および保守作業を実施するため、フィールド機器の実際の位置を必要とするときには、作業員または技術者は以下の1つを事前に実施する必要があろう。作業員または技術者は、記憶または口頭で伝えられた方向を頼りとして、フィールド機器の捜索を強いられるであろう。または、作業員または技術者は、機器の実際の位置について多くの場合詳細な情報が記載されていない施工図面でフィールド機器を調べるであろう。そして、その限られた情報に基づいて、作業員または技術者は、身を呈してプラントまたはプロセス設備内の機器の捜索を試みるであろう。
【0023】
図6は、本発明の実施形態により、選択された無線フィールド機器の位置を検出するために、携帯型フィールド保守ツールを用いて無線フィールド機器を探す工程を表す図である。携帯型フィールド保守ツール100は、図5に関連して上述されたツール52と同一のものとすることができる。しかし、同一である必要はないため、異なる参照符号が用いられる。ツール100は、作業員または技術者が位置を探そうとする特定のフィールド機器の選択を可能とするためのユーザインタフェース(キーパッド、案内ボタンおよびディスプレイの形態)を含む。そのような選択は、通常、機器のタグ情報または識別情報を選択する態様であろうが任意適宜の態様でもよい。図6に示される例では、作業員は機器200、202、204および206の中から無線フィールド機器206を選択した。4台のフィールド機器が記述される一方で、現実にフィールド機器は、工場またはプロセス設備の一帯に分散する数百ものフィールド機器の場合もあろう。携帯型フィールド保守ツール100は、事前にロードされるかまたは任意適宜の手段を介してツール100に対し無線送信される、プロセス設備のマップを有することが好ましい。加えて、携帯型フィールド保守ツール100が、選択されたフィールド機器に対し(当該フィールド機器を設置したときのように)既に相互に通信をしたことがある場合には、携帯型フィールド保守ツール100は、その機器の(前回の通信時にGPSモジュールにより示された)位置に関連する情報を収集したものでもよい。この位置情報を、当該フィールド機器、携帯型フィールド保守ツール100またはこれらの双方に書き込むことができる。携帯型フィールド保守ツール100または別の異なる携帯型フィールド保守ツールは、任意適宜の無線通信を用いてこの無線フィールド機器にアクセスすることができ、そして、この無線フィールド機器の位置を示す位置情報を当該無線フィールド機器から受信してよいことも考慮される。携帯型フィールド保守ツールは、機器のタグ情報を同定すると、好ましくはGPSモジュール150からツール100の位置に関する位置情報を取得する。ツール100は、自己の位置を認識すると、作業員または技術者がフィールド機器206の実際の位置に辿り着くのを助ける方向、ベクトル、ルートまたは他の適宜の指示を生成する。好ましくは、マップがそのマップ上でツール100を示すことにより、ユーザは目的地(フィールド機器206)への進み具合を測ることができる。加えて、GPSの進行方向情報は、通常、作業員が歩く移動に基づくものであるため、ツール100は、作業員または技術者が立ち止まっているときでも、作業員または技術者に選択されたフィールド機器206を指し示し、または導くための方向指示208をユーザに提供するコンパスを随意的に使用してもよい。さらにまた、地表から数十または数百フィート高い位置にフィールド機器を有する製油所のようなプロセス設備も少なからず存在するため、ツール100は、作業員または技術者にフィールド機器206に直接向かう角度にツール100を傾かせるチルトモジュール154を使用することができる。それにより、フィールド機器206があるはずの場所にユーザが到着したが、実際には遥か頭上にフィールド機器206が設置される場合でも、ツール100は、フィールド機器位置の的確な高さをユーザに喚起する傾斜角度を指示することができる。
【0024】
図7は、本発明の実施形態による、携帯型フィールド保守ツールを用いて、選択されたフィールド機器の位置を検出する方法を示すフロー図である。方法70は、携帯型フィールド保守ツールにより選択されたフィールド機器の実際の位置の指示情報を得るブロック72で始まる。このブロックは、携帯型フィールド保守ツール内に事前にロードされ、プロセス設備における全ての機器のタグ情報と実際の位置とを相互に関連付ける内部のデータベースにアクセスすることでなされてもよい。それに代わり、携帯型フィールド保守ツールは、選択された機器に関する位置情報を受信するために、選択された機器の識別情報に基づいて、資産管理システムの適宜のサーバまたはコンピューティング機器に対し検索要求を生成することができる。上述したように携帯型フィールド保守ツールは、多くの無線通信機能を有しているため、ユーザがフィールド内にいるときでも検索要求を送信することができる。次にブロック74で、携帯型フィールド保守ツールは、自己の現在位置を判定する。これは任意適宜の方法ですることができるが、モジュール150のような内部のGPSモジュールにアクセスする方法を含むことが好ましい。そして、携帯型フィールド保守ツールのコントローラは、選択されたフィールド機器の実際の位置および携帯型フィールド保守ツールの現在位置を演算処理して、選択された無線フィールド機器の実際の位置に向けてユーザを導く指示情報をユーザに提供する。
【0025】
無線フィールド機器を作業者または技術者が捜索するのを助ける他の手段が図8に関連して示される。詳細には、ユーザが位置を探そうとするフィールド機器を選択すると、携帯型フィールド保守ツール100は、フィールド機器が配置される無線センサネットワークに接続し、ユーザの注目を呼び込むような個別(ローカル)の案内をフィールド機器に生成させる。この個別の案内210は、音声の警告もしくはサイレン、または、点滅光もしくは点滅表示の態様とすることができる。よって、作業者または技術者がフィールド機器に歩み寄るときに、そのフィールド機器の音および光が、作業者または技術者がその所望のフィールド機器に集中するのを助けるであろう。
【0026】
図9は、本発明の他の実施形態による携帯型フィールド保守ツールを用いて、選択されたフィールド機器の位置を検出する方法を示すフロー図である。方法250は、ユーザが携帯型フィールド保守ツールで無線フィールド機器を選択するブロック252で始まる。次に、ブロック254で、携帯型フィールド保守ツールは、好ましくは無線プロセス通信である適当な無線通信を確立し、選択されたフィールド機器に個別の案内を生成させる。
【0027】
図6および図8に関連して説明される各実施形態を別々に実施することができる一方で、これらの実施形態の組み合わせもまた有用である。たとえば、ユーザは、選択したフィールド機器の大まかなエリアに着くためのマップを取得し辿ることができる。そして、携帯型フィールド保守ツールがフィールド機器に対してある閾値以上近接したことを検知すると、携帯型フィールド保守ツールは、無線センサネットワークを介してフィールド機器と自動的に相互通信をし、フィールド機器に個別の案内を生成させ、フィールド機器の位置を確認させることができる。さらに、選択したフィールド機器の位置にユーザが到着したがフィールド機器を見つけることができなくても、ユーザは、携帯型フィールド保守ツールを用いて付加的な位置案内の情報を取得することもできる。たとえば、ユーザは、その位置に設置されるフィールド機器の画像をダウンロードしてもよい。ユーザはその画像を視て、現況と比較することによりフィールド機器を発見することができる。
【0028】
詳細な実施形態によって本発明が説明されたが、この分野における当業者であれば、形態および詳細な点において発明の精神および範囲から乖離することなく変更がされ得ることを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の既設無線フィールド機器の既設ネットワークに対して、無線フィールド機器を追加する見込み位置を評価する方法であって、
見込み位置に携帯型フィールド保守ツールを置くステップと、
見込み位置の通信範囲内にある無線フィールド機器を携帯型フィールド保守ツールに識別させるステップと、
見込み位置における無線通信に関する情報を視覚化するステップと、を含む方法。
【請求項2】
携帯型フィールド保守ツールが、プロセス工業規格プロトコルに従って各無線フィールド機器と通信をする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プロセス工業規格プロトコルは、Wireless HART(登録商標) プロトコルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
携帯型フィールド保守ツールは、本質的に安全である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
見込み位置における無線通信に関する情報は、携帯型フィールド保守ツールが通信をする各無線フィールド機器の識別情報および信号強度の情報を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
見込み位置における無線通信に関する情報は、電磁干渉の指示情報を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
複数の無線フィールド機器を含む無線センサネットワークを調査する方法であって、
選択された継続期間、各無線フィールド機器の信号強度を監視するステップと、
各ネットワークフィールド機器の実際の位置と相互に関係する監視された信号強度を提供するステップと、を含む方法。
【請求項8】
実際の位置と監視された信号強度との相互の関連付けが、ネットワークヒートマップの態様でなされる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
携帯型フィールド保守ツールへの入力操作により選択されたフィールド機器の位置を検出する方法であって、
選択されたフィールド機器の実際の位置の指示情報を得るステップと、
携帯型フィールド保守ツールの現在位置の指示情報を得るステップと、
携帯型フィールド保守ツールのユーザに対し、現在位置から選択されたフィールド機器の実際の位置へユーザを導く指示情報を生成するステップと、を含む方法。
【請求項10】
選択されたフィールド機器の実際の位置の指示情報を得るステップは、携帯型フィールド保守ツールの無線通信モジュールを介してなされる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
選択されたフィールド機器の実際の位置の指示情報は、選択されたフィールド機器により提供される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ユーザに対し指示情報を生成するステップは、現在位置および選択されたフィールド機器の実際の位置を指し示すマップの提供を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
選択されたフィールド機器にて個別の案内を自動的に生成するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
個別の案内は、選択されたフィールド機器の実際の位置の閾値以内に現在位置が近接したときに自動的に生成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
携帯型フィールド保守ツールは、少なくとも1つの本質安全仕様に応える、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
指示情報は、進行方向の指示を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
指示情報は、高さ角度の指示を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
携帯型フィールド保守ツールへの入力操作により選択されたフィールド機器の位置を検出する方法であって、
選択されたフィールド機器と携帯型フィールド保守ツールを用いて通信をし、この無線フィールド機器に個別の案内を生じさせる、方法。
【請求項19】
携帯型フィールド保守ツールと選択されたフィールド機器との間の無線通信が、プロセス工業規格通信プロトコルに従う、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
案内は、聴覚で認識される案内である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
案内は、視覚で認識される案内である、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−527059(P2012−527059A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511048(P2012−511048)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/034949
【国際公開番号】WO2010/132799
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(506266023)フィッシャー−ローズマウント・システムズ・インコーポレーテッド (37)
【氏名又は名称原語表記】Fisher−Rosemount Systems, Inc.
【Fターム(参考)】