無線ボディエリアネットワーク用の無線リンク品質評価方法、およびメッセージ送信方法、ならびにこれらの方法を実施する装置
【課題】ボディエリアネットワーク用の無線リンクの品質評価方法を提供する。
【解決手段】無線装置N1、N2、N3、N4、N5、N6の中の少なくとも1つの無線装置が受信するメッセージを有効に利用して、対応する無線リンクの瞬間品質を測定し、無線リンクが信頼できる時間および無線リンクが信頼できない時間を推定し、推定時間における信頼性指標を計算し、ボディエリアネットワークの無線装置の移動性を考慮して、この信頼性指標に応じて、無線リンクを、間欠的に信頼できる無線リンクに関連するカテゴリを含む少なくとも2つのカテゴリに分類する。
【解決手段】無線装置N1、N2、N3、N4、N5、N6の中の少なくとも1つの無線装置が受信するメッセージを有効に利用して、対応する無線リンクの瞬間品質を測定し、無線リンクが信頼できる時間および無線リンクが信頼できない時間を推定し、推定時間における信頼性指標を計算し、ボディエリアネットワークの無線装置の移動性を考慮して、この信頼性指標に応じて、無線リンクを、間欠的に信頼できる無線リンクに関連するカテゴリを含む少なくとも2つのカテゴリに分類する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ボディエリアネットワーク用の無線リンク品質評価方法、無線ボディエリアネットワーク用のメッセージ送信方法、およびこれらの方法を実施する装置に関する。
【0002】
本発明は、例えば人間などの、少なくとも一部が動く体の上に装着されている無線装置間で、データの交換を必要とする方法と装置に関する。
【背景技術】
【0003】
現時点において、セキュリティ、ヘルス、スポーツから大衆娯楽までの多様な分野における要件に対応することができ、知的かつ自律的な無線ボディエリアネットワークが出現するのは、必然的であると思われる。
【0004】
これに関連して戦略的に重要なことは、この無線ボディエリアネットワークの、移動性および人体の周りに非常に特有の伝播現象(例えば、無線リンクの支障または遮蔽等)に本質的に結び付いた、固有の特性および制約に適合した、より信頼性の高い通信プロトコルを開発することである。
【0005】
ボディエリアネットワークを構成する種々の無線装置間における通信の適用例として、次のものを挙げることができる。
−屋内環境において移動する団体を道案内して、適切な位置に配置する例、および全地球測位サービス。
−例えば、スポーツにおける動作の追跡、または娯楽、およびゲームなどのための動きの捕捉。
−例えば、リハビリ、虚弱者もしくは高齢者の観察、および危険な環境の中で動き回る人(例えば、燃えている建物の中にいる消防士等)の監視などのための状態検出。
−ペースメーカ、インスリンポンプ、バイタルサインの監視/観察(体温、心拍(心電図(ECG))等)などの医療面の適用。
−「セパレート型端末」タイプのアプリケーション(同一場所に配置されていないスクリーン、キーボード、イヤホン)。
<従来技術>
【0006】
統合化および小型化の分野における最近の技術の進歩と、例えばBLE(Bluetooth(商標) Low Energy)、Zigbee(商標)、およびIR−UWB(Impulse Radio Ultra WideBand)などの低ビットレートで、かつ非常に低電力消費の無線通信技術の開発により、無線ボディエリアネットワーク(BAN)という名の新しいアプリケーション分野が出現した。
【0007】
例えば、特許文献1(WO2010/018517)から、例えば患者が身に付けたセンサ、または患者のある種のバイタルパラメータを観察するために患者に埋め込まれたセンサのネットワークを作成するようになっているボディエリアネットワークが、公知となっている。
【0008】
このタイプのアプリケーションでは、無線装置は、人体の表面、または直ぐ近くに、ネットワークを構成する。象徴的なアプリケーションの例として、「セパレート型端末」(同一場所に配置されていないスクリーン、キーボード、イヤホン)、スポーツ用(心拍計、時計、靴上の歩数計)、または医療用(可動式の心臓、脳、筋肉の観察装置)などが挙げられる。
【0009】
ボディエリアネットワーク(BAN)は、一般に、エネルギー、計算能力、および記憶容量に関して制約があり、自立かつ自律式ネットワークを構成するために人体に取り付けられた(または埋め込まれた)一式の無線装置によって構成されている。各無線装置は、搭載センサ(位置、体温、ECG等)を用いて、ローカル情報を集めることができ、コーディネータとも呼ばれている中央装置に収集したデータを伝達するために、他の装置と通信できる。このコーディネータの主な役割は、ボディエリアネットワークと外部ネットワーク(例えば、インターネット、セルラネットワーク、別のセンサネットワーク等)との間のゲートウェイとしての機能を果たすことである。
【0010】
図1は、患者の医療監視用の無線ボディエリアネットワークの一例を示す。患者またはユーザUは、例えば移植組織、または血圧、心拍、視力、患者の体力、血糖レベル等を監視するために、1つ以上のセンサを備えた種々の無線装置3を身に付けている。
【0011】
これらの無線装置3は、無線リンクを介して、中央ノード(一般に無線ネットワークコーディネータの役をしている)に接続されている。この中央ノードは、例えばアクセスポイントを介してWLAN7、セルラ電話機9等の、外部ネットワーク6と通信するように構成されている。このネットワークに同様に接続されているのは、例えば緊急医療サービスまたは監視サービス11であり、この監視サービスは、例えばセンサの中の1つが異常を検出した場合に、救急車に連絡する。
【0012】
ボディエリアネットワーク固有の特徴を考えると、ボディエリアネットワークには、現在の通信技術および通信プロトコルの中でも、特に無線センサネットワーク(WSN)、または無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)との関連でなされている通信技術および通信プロトコルは適していない。
【0013】
無線ボディエリアネットワークには、無線装置の限られた能力、伝播チャネルの性質、人体の移動性、ネットワークの特殊なトポロジに本質的に結び付いた多くの新しい制約があり、新しいより適切な通信戦略が必要である。
【0014】
これについては、非常に簡単な例をもって詳細に説明することができる。無線装置3は、ボディエリアネットワークBANのノードであり、その動作により自装置の情報を作り出して、ネットワークを通じて送信するとともに、データを伝達するネットワークの他のセンサに対する中継装置としての機能も果たす。
【0015】
エネルギーを節約し、ひいてはネットワークの自律性を高めるためには、例えば、かかとに固定された歩数計から生じるデータを、中継することなく、直接中央ノード5に送信する代わりに、腰の位置に設けられ、中継装置としての機能を果たす無線装置を介して、コーディネータ中央ノード5に送信する方が好ましいと思われる。これに関しては、パーソナルエリアネットワークに関する許容送信電力を決めているIEEE802標準に対応するために、送信電力が低いことも考慮しなければならない。
【0016】
それにもかかわらず、これらの無線装置を身に付けているか、または携行している人物(例えば、患者、人間)の移動性により、別の制約が課せられる。
【0017】
一方において、人の手首の位置にセンサが付けられていて、その人が元気よく歩いていると考えると、その人が動くに連れて、腕が振れ、センサは定期的に水平位置または背後に来る。中央ノード5(またはコーディネータ)が前部の胸の高さにある場合、腕が後の位置にあると、電波の遮蔽および/または無線装置の低い送信電力のために、中央ノード5と十分信頼できるように、無線リンクを確立することができないので、結果として、データは、この中央ノード5に直接送信されないことがある。
【0018】
従って、これらの問題を多少とも解決するためには、一方において、手首に付けられた無線装置と、他方において別の無線装置もしくは直接中央ノード5と、信頼できるリンクを常に確立できる中継装置としての機能を果たす無線ノードまたは無線装置を提供することが好ましい。
【0019】
非特許文献1は、無線センサネットワークに関し、短期間信頼できるリンクの概念およびデータのルーティングにおけるそのリンクの使用可能性を紹介している。
【0020】
この非特許文献1は、低電力無線リンクに関するものであり、短期間信頼性を有する無線リンクの使用を提案しているが、ボディエリアネットワークに固有の性質、特に送信機と受信機との間の移動性については考慮していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第2010/018517号パンフレット
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】A.Becher他著、「短期間無線リンクの品質推定に向けて:HotEmnets2008ワークショップ」(Towards Short-Term Wireless Link Quality Estimation. In Hot Emnets, 2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、前述の欠点の少なくとも一部を、ボディエリアネットワーク用の無線リンクの品質評価方法を提供することによって、多少とも解決することを目的としている。この無線リンクの品質評価方法は、ボディエリアネットワークを通じた情報(パケット)をルーティングおよび中継するため、およびその後、ボディエリアネットワークの利用可能なすべての無線リンクを常により一層利用するために、潜在的に興味深いリンクの新たなカテゴリの識別および要件を可能にしているボディエリアネットワーク用である。
【0024】
より正確には、本発明は、伝播条件の動的な変動、および/または人体の移動性などに対抗して、例えば接続性、エネルギー消費、レイテンシ、信頼性、データ配信率、通信の信頼性、プロトコルのロバストネスに関して、少なくとも部分的に、かつアプリケーションの内容に応じて、ボディエリアネットワークの性能を改善することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
このため、本発明は、ボディエリアネットワークを構成し、相互に通信する必要がある、少なくとも第1の無線装置および第2の無線装置を備え、これら2つの無線装置のうちの少なくとも一方が、他方に対して移動しがちである無線ボディエリアネットワーク用の無線リンクの品質評価方法を提供するものである。この方法は、
−これらの無線装置の中の少なくとも1つが受信したメッセージを利用して、対応する無線リンクの瞬間品質を測定し、無線リンクが信頼できる時間、および無線リンクが信頼できない時間を推定する方法であって、
この方法は、
−推定時間における信頼性指標を計算し、ボディエリアネットワークの無線装置の移動性を考慮して、この信頼性指標に応じて、無線リンクを、間欠的に信頼できる無線リンクに関係するカテゴリを含む少なくとも2つのカテゴリに分類することを特徴としている。
【0026】
従って、無線装置の相互の移動性を考慮して、間欠的に信頼できる無線リンクに関係する新しいリンクカテゴリを導入している。
【0027】
従って、本発明によると、短期間信頼できるリンク(または信頼性が間欠的なリンク)の存在を判定でき、主な特徴、その中でも、特に交信時間(無線リンクを確立でき、かつ信頼できる時間)、および交信間時間(接続が途切れてからリンクを再確立するまでに必要な時間)を推定することができる。
【0028】
これによって、これらの無線リンクの出現/消滅、およびそれぞれの交信時間/交信間時間の予測が可能になり、エネルギー消費、その潜在量、データ配信率等に関して、通信プロトコル(パケットのルーティングおよび中継、通信のスケジューリング等)の性能を向上させることができる。
【0029】
手首に固定された無線装置の例に戻ると、無線装置と中央ノードとの間の直接の無線リンクを、間欠的に確立することができ、無線送信電力のさらなる削減、ひいては最終的に、ボディエリアネットワークのエネルギー消費の削減が可能になる。
【0030】
個別または組み合わせて使用できる方法における1つ以上の特徴として、次のものがある。
−無線装置間で交換されるメッセージは、サービスメッセージ、データメッセージ、またはこれらのメッセージの組み合わせである。
−これらのメッセージは、周期的または疑似周期的に交換される。
−これらのメッセージは、可変の頻度で交換される。
−無線リンクの瞬間品質は、RSSI、LQI、またはSNRなどの少なくとも1つの無線指標を測定して評価される。
−無線リンクの瞬間品質は、接続パラメータを測定して評価される。
−接続パラメータおよび/または無線指標は、任意の時間tに関して、ノードiとノードj(i≠j)との間で、値「1」または値「0」を有するバイナリ方式で決定される。
【数1】
−例えば、
【数2】
リンクが使用可能状態の場合、例えば、メッセージが成功した場合
リンクが使用不能状態の場合、例えば、メッセージが失敗した場合
−あるいは、
【数3】
無線指標が閾値以上の場合。
無線指標が閾値未満の場合。
−少なくとも2つのカテゴリに従って無線リンクを分類するために、2つのそれぞれの無線装置に関する接続パラメータまたは無線指標から、交信時間および交信間時間を判定して、間欠的な交信の反復パターンの存在を判定する。
−交信時間
【数4】
は、バイナリシーケンス
【数5】
の継続時間で、かつ
【数6】
である時間と計算される。ここで、γFは、無線リンクの信頼性閾値である。
−交信間時間
【数7】
は、バイナリシーケンス
【数5】
の継続時間で、かつN≦γUPである時間と計算しうる。ここで、γUPは、交信間期間中に許容される「1」の最大数である。
−最終的な交信時間および交信間時間は、次の式から計算しうる。
【数8】
【数9】
上式において、
【数4】
および
【数7】
は、それぞれ交信時間および交信間時間の瞬間推定値である。
【数10】
および
【数11】
は、時間tにおける、それぞれ交信時間および交信間時間の最終推定値である。
−αCTは、忘却係数である。
−移動変動係数
【数12】
は、サイズWVの移動ウィンドウにわたる推定値の標準偏差と平均との比率であり、サイズWVのウィンドウにわたって計算される。この移動変動係数
【数12】
は閾値γVと比較され、
移動変動係数
【数12】
が閾値γV未満の場合、リンクは間欠的に信頼できるに分類され、閾値以上の場合、信頼できないとまでは言えないが、信頼できないに分類される。
−各無線装置に関して、無線リンクの信頼性は、近隣テーブルの中に格納される。
【0031】
また、本発明は、無線ボディエリアネットワーク用の無線リンクの品質を評価し、上記で規定した方法を実施する装置にも関する。この無線ボディエリアネットワークは、ボディエリアネットワークを構成し、相互に通信する必要がある、少なくとも第1の無線装置および第2の無線装置を備える複数の無線装置を備え、2つの無線装置のうちの少なくとも一方が他方に対して移動しがちである。この装置は、
−無線装置の中の少なくとも1つが受信したメッセージを利用して、対応する無線リンクの瞬間品質を測定し、
−無線リンクが信頼できる時間、および無線リンクが信頼できない時間を算定し、
−推定した時間に関する信頼性指標を計算し、
−ボディエリアネットワークの無線装置の移動性を考慮して、この信頼性指標に応じて、無線リンクを、間欠的に信頼できる無線リンクに関係するカテゴリを含む少なくとも2つのカテゴリに分類する。
【0032】
さらに本発明は、無線ボディエリアネットワークを通じたメッセージ送信方法にも関する。このメッセージ送信方法は、ルーティングまたは中継のために、無線ボディエリアネットワーク用の無線リンクの品質を上記で規定した方法で評価することと、メッセージの送信に関して、メッセージを間欠的に信頼できる無線リンクを介して伝達することとを特徴としている。
【0033】
この方法は、さらに次の特徴の1つ以上を、個別に、または組み合わせて備えているのがよい。
−メッセージは、間欠的に信頼できる無線リンクが信頼できると見なされる期間中に伝達される。
−エネルギー消費、レイテンシ、データ配信等のグループのパラメータの中の少なくとも1つのパラメータを最適化するために、間欠的に信頼できる無線リンクを介するメッセージの送信を優先する。
−無線装置間の距離の測定は、間欠的に信頼できるリンクの出現、および/または消滅の予測を考慮して、スケジュールされる。
【0034】
また、本発明は、上記したメッセージ送信方法を実施する、無線ボディエリアネットワークを通じたメッセージ送信装置をも提供するものである。このメッセージ送信装置は、無線装置間のデータ交換のルーティング、および/またはパケットの中継のために、上記で規定した無線ボディエリアネットワーク用の無線リンクの品質評価方法を使用して、無線ボディエリアネットワーク用の無線リンクの品質を評価するようになっている手段と、間欠的に信頼できる無線リンクが信頼できると見なされる期間中に、間欠的に信頼できる無線リンクを介してメッセージを伝達するように構成されている手段とを備えていることを特徴としている。
【0035】
他の利点および特徴は、以下の本発明に関する説明を読み、かつ図を検討することにより、明らかになると思う
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】無線ボディエリアネットワークの図である。
【図2】本発明の無線ボディエリアネットワークの図である。
【図3】3つの異なる無線リンクについて、時間の関数として3つのグラフを示す図である。
【図4】本発明の方法の様々なステップを示すフロー図である。
【図5】3つの異なる無線リンクに関して、時間の関数として、一方に受信電力の減衰、他方に接続性(すなわち、パケット受信の可能性)の6つのグラフを示す図である。
【図6】決定論的アプローチを使用した、時間の関数としての交信時間および交信間時間に関する無線リンクの接続性の解釈を示す図である。
【図7】確率的アプローチを使用した、時間の関数としての交信時間および交信間時間に関する無線リンクの接続性の解釈を示す図である。
【図8】図4の方法を実施する、本発明の装置のブロック図である。
【図9】本発明の方法を示す、幾つかのリンクが使用可能状態の本発明の無線ボディエリアネットワークの図である。
【図10】リンク品質の評価に関する3つのグラフを示す図である。
【図11】ボディエリアネットワークの通信アーキテクチャの図である。
【図12】ボディエリアネットワークの種々の送信ノード、および異なるルーティング戦略に関して、パケット配信率の比較を示す図である。
【図13】ボディエリアネットワークの種々の送信ノードに関して、エネルギー消費の比較を示す図である。
【図14】ネットワークのコーディネータ装置までパケットを伝達するための平均ホップ数の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
すべての図において、同じ要素には、同じ符号を付してある。以下においては、次の語を使用する。
【0038】
−BAN:ボディエリアネットワーク。移動体、特に人体上にある、複数の無線装置、センサ(またはノード)から構成されていることがある。
−SNR:信号対雑音比。
RSSI:受信信号強度。受信信号の電力に関係するハードウェアタイプのリンク品質指標。
−LQI:リンク品質指標。受信信号の復調、同期に使用する判定レベル、または推定メトリックに関係するハードウェアタイプのリンク品質インジケータ。
−NLOS:見通し外。送信機と受信機が相互に直接見えないときの、無線リンクに支障がある状況。
−LOS:見通し内。送信機と受信機が相互に直接見えるときの電波の伝播。
−「論理リンク」:1対の無線装置間のネットワークの接続性を表す物理無線リンクの抽象概念(すなわち、パケットの送信および受信ができる可能リンク)。
−「間欠的に信頼できるリンクまたは短期間信頼できるリンク」:体の動き、および手足の繰り返しの動きのために、その信頼性/性能は変わるが、間欠的に通信に(例えば、パケットの受信/パケットロスに関して)都合のよい状態になるリンク。
−「長期間信頼できるリンクまたは準永続的に信頼できるリンク」:人体の動きまたは姿勢がどうであれ、その信頼性/性能が長期にわたって準永続的であるリンク。
−「交信時間」:ボディエリアネットワークBANの1対の無線装置間、またはノード間に論理リンクが確立され、一定の規準、または一定のアプリケーション成功率に照らして(例えば、パケットの受信/パケットロスの点から見て)信頼できる状態にある時間。
−「交信間時間」:論理リンクが(1つ以上のパケットロスに続いて)途切れてから、リンクが再確立されるまでに必要な時間に相当する。
−「ネットワークトポロジまたはアーキテクチャ」:情報のルーティング/中継のために、最も信頼できると見なされる無線リンクのサブセットから、ネットワークレイヤのレベルで構築されたノードの論理的構成。
【0039】
図2は、それぞれが、ボディエリアネットワークの1つのノードを表わす6つの無線装置を身に付けているユーザUを示す図である。右手首にノードN1、右大腿部にノードN2、左腰にノードN3、背中にノードN4、左肩にノードN5、および右耳の位置にノードN6がある。
【0040】
これらの無線装置N1〜N6のそれぞれは、例えば、ユーザUの体に関する物理量を測定するためのセンサを備えている。
【0041】
センサの性質および測定する物理量は、想定されるボディエリアネットワークのアプリケーションによって決まる。
【0042】
想定されるのは、例えば、建物内をあちこち移動する団体の道案内、および/または団体を適切に配置するためのアプリケーションと全地球測位タイプのサービスである。
【0043】
別の例では、センサ(例えば、加速度計)は、例えばスポーツの動作を追いかけるために、または娯楽およびゲームアプリケーションのために、動きに関連する量を測定する。
【0044】
別の例では、アプリケーションは、例えばリハビリ、虚弱者または高齢者の見守り、有害な環境で動き回る人(例えば、燃えている建物内の消防士等)の監視などのために、姿勢または体位の検出を備えていてもよい。
【0045】
同様に想定されているのは、ペースメーカ、インスリンポンプ、バイタルサインの監視/観察(体温、ECG等)などの医療アプリケーション用のボディエリアネットワークである。この場合、無線装置は、例えば体温、心拍数、血圧等を測定するセンサを有する。
【0046】
別の態様では、「セパレート型端末」タイプ(同一場所に配置されていないスクリーン、キーボード、イヤホン)のアプリケーションが想定される。
【0047】
従って、本発明は、無線装置が相互に通信する無線ボディエリアネットワークを使用する任意のタイプのアプリケーションに関する。
【0048】
従って、ノードN1〜N6のそれぞれは、図2に破線で示す無線リンクを設定できるなら、ネットワークの別のノードと通信しうる。
【0049】
例えば、送信電力が低すぎて、ユーザUの動作および/または2つのノード間Ni〜Nj(i≠j)の距離に起因する遮蔽効果などの多様な要因のせいで、無線リンクが確立できない、または少なくとも永続的には確立できないことが起こりうる。
【0050】
使用される技術は、例えばZigbee(商標)、BLE(Bluetooth(商標) Low Energy)、またはIR−UWB(Impulse Radio Ultra WideBand)などの短距離無線技術である。
【0051】
これらの無線装置に使われる送信電力は、一般に小さいと見なされている。その理由は、健康上の理由(例えば、放射電波の健康への影響を最小限にするため等)、例えば電話、WiFiネットワーク等の共存するネットワークの性能を最大にするため(ボディエリアネットワークの近くにある他のネットワークへの干渉を最小限にするため)、および/またはボディエリアネットワークに固有の厳しいアプリケーションの制約(例えば、搭載バッテリの保全/置換ができない、ネットワーク電力の持続性、ノード全体の物理的サイズの小ささ等)である。
【0052】
図3は、図2の中のそれぞれ異なる3つの無線リンクについて、時間の関数として、送信信号からの受信信号の減衰を、3つのグラフで示している。すなわち、上のグラフが無線リンクN3〜N5、中のグラフがN2〜N6、下のグラフがN1〜N2についてのものである。
【0053】
図3の上のグラフは、ノードN3とN5との間、すなわち左腰と左肩との間における、送信信号の受信電力の減衰の一例を示している。ここでは、関連する装置3および5は、電波の受信電力の減衰が少ない、ここでは、受信信号レベルが−40dBmを上回り、常に直接見通し(LOS)状態にある。従って、このリンクは、その性能(例えば、データパケット配信率、減衰レベル、信号対雑音比等)が長期間安定していて信頼できるリンクと見なされる。
【0054】
一方、中のグラフでは、(右大腿部の)ノードN2と(右耳の)N6との間の信号レベルは、ひどく劣化していて(例えば、受信電力の減衰レベル(ここでは受信レベル、−60dBm未満)、時間の関数としての受信電力の減衰の幅等)、準永続的および/または長期にわたって不安定である。それらの位置を考えると、これは理解できる。装置N2およびN6は、互いから比較的遠くにあるからである。例えば、直接見通しでない(NLOS)ノードN3とN4との間のリンクに関して、同様のグラフが得られると思われる。
【0055】
例えば(手首の位置の)N1と(右大腿部の位置の)N2との間などの無線リンクがあり、体の動き(あるいは体および/または手足の準繰り返し的または定期的な動き等)のせいで、リンクの性能が変動する。3番目のグラフは、例えば歩行時の胴に対して揺れ動く手の影響などを示している。従って、無線リンクは、性能が信頼できる期間(例えば、装置が直接見通し(LOS)状態で、電波の減衰のレベルが低く、従って受信電力が大きい時期)と、性能が低下している期間(例えば、受信信号の減衰が大きいリンク支障またはNLOSの時期)との間を交互に繰り返している。このリンクは、受信レベルが−45dBmと−70dBmとの間で振れている間欠的に信頼できるリンクであり、従来技術のボディエリアネットワークでは普通使用されそうにないが、メッセージ送信に使用できるように、評価および/または適格にすることを提案するものである。
【0056】
図4は、互いに通信する必要がある複数の無線装置を備える無線ボディエリアネットワークにおけるメッセージ送信方法のフロー図である。
【0057】
ステップ10において、無線装置Ni〜Nj(i≠j、iおよびjは1以上の整数)の少なくとも1つが受信したメッセージが処理され、対応する無線リンク(li,j)の瞬間品質が測定され、無線リンクが信頼できる時間、および信頼できない時間が推定される。推定時間における信頼性指標(Ti,j)が計算され、無線リンクは、信頼性指標に応じて、少なくとも2つのカテゴリに分類される。ボディエリアネットワークの無線装置の動きを考慮して、それらのカテゴリの中の1つは、間欠的に信頼できる無線リンクに関係する。このステップ12は、図に詳細に示されており、サブステップについては後で説明する。
【0058】
最後に、ボディエリアネットワークを通じたメッセージの送信に関するステップ14中に、メッセージは、「間欠的に信頼できる」無線リンクを介して、その同じ無線リンクが信頼できると見なされる期間中に伝達される。すなわち、分類結果は、ボディエリアネットワークにおけるルーティングにおいて考慮される。これによって、例えばエネルギー消費、メッセージ伝達速度、レイテンシ等に関して、ボディエリアネットワークのトラフィックを最適化できる。
【0059】
ステップ10に関して、例えば無線装置N1〜N6の間で交換されるメッセージは、サービスメッセージ(すなわち、ネットワークの構成および良好な管理に役立つメッセージ)、データメッセージ、またはこれらのメッセージの組み合わせである。
【0060】
さらに、これらのメッセージの周期的、疑似周期的、または可変の頻度での交換が想定されている。
【0061】
交換は、無線装置N1〜N6のそれぞれに関して、所定の時間に固有の「ハロー」タイプのメッセージを送信することによって行われる。従って、受信無線装置は、いつメッセージを受信すべきか、およびそのメッセージの送信元(すなわち、どの無線装置が送信装置か)について知っている。受信しないのは、「無線リンクの途切れ、または無線リンクなし」と見なされる。
【0062】
これらの交換を利用するために、種々のシナリオが想定されている。第1の例では、2つの無線装置間の直接通信は、無線リンクの品質推定に使用される。この場合は、「ユニキャスト」タイプのポイント・ツー・ポイント通信の状況であり、装置の中の1つが受信装置である。
【0063】
別の例では、「ブロードキャスト」タイプの直接通信が、送信装置に関する無線リンクの品質を推定するために使用される。この場合、すべての受信無線装置は、この通信を受信する。
【0064】
第3の例では、本発明を実施する無線装置は、他の2つの無線装置間の無線リンクの品質を推定するために、通信チャネル上の平文データのトラフィック、または交換をリッスンする。受信の肯定応答の交換から、メッセージが良好に受信されたことが分かる。
【0065】
第4の例では、1対の無線装置間の無線リンクの品質を推定するために、ボディエリアネットワーク上で、平文データを送信中のトラフィックまたは交換がリッスンされる。
【0066】
第1の実施形態では、RSSI、LQIまたはSNRなどの少なくとも1つの無線メトリックを測定することによって、無線リンクの瞬間品質が測定される。
【0067】
別の実施形態では、無線リンクの瞬間品質は、接続パラメータを測定することによって測定される。すなわち、測定は、送信パケットを受信し、次いで(同期が正しく取れたのを検出後に)復調した場合だけ、その復調の品質とは関係なく、接続パラメータを決定することによって行われる。
【0068】
このため、接続パラメータおよび/または無線指標は、任意の時間tに関して、ノードiとノードj(i≠j)との間で、値「1」または値「0」を有するバイナリ方式で決定してもよい。
【数1】
無線指標は、以下のように定義することができる。
【数3】
無線指標が閾値以上の場合
無線指標が閾値未満の場合
【0069】
接続パラメータは、例えばパケット受信率、すなわち、単位時間当たり受信したパケット数である。
【0070】
この接続パラメータは、次のように定義することができる。
任意の時間tにおける、ノードNiとNj(i≠j)との間の接続状態は、
【数1】
である。ここで、
【数2】
リンクが使用可能状態の場合、例えば、メッセージが成功した場合
リンクが使用不能状態の場合、例えば、メッセージが失敗した場合
である。
【0071】
接続パラメータおよび無線指標のバイナリの特徴を考慮すると、両方のパラメータは、同じボディエリアネットワークで同時に使用しうる。
【0072】
図5は、図2の3つのリンクN3〜N1、N6〜N1およびN2〜N1に関して、時間の関数としての受信電力の信号レベル/減衰のグラフ(左側のグラフ)と、パケットの良好な(良好でない)受信に基づいて決められる接続パラメータのグラフ(右側のグラフ)とを、それぞれ示す。
【0073】
従って、これは、無線装置N1に関する3つの近隣ノードN3、N6およびN2(図2参照)との瞬間リンク品質測定値の一例である。
【0074】
この無線装置N1は、例えば「ハロー」タイプの制御トラフィックを周期的に交換して、周期的かつそのたびに、その近くにあるノード(すなわち、通信範囲内にある装置3、6および2)についての接続状態を判定している。
【0075】
図5のグラフは、(図2の図解に従って)動く体に取り付けられた2.45GHzの無線装置を使用して、種々のノード間で制御トラフィックを周期的に交換(各ノードから60msごとにハローパケットを送信)する実験で得られたものである。これは、実験から得られたSNR値に基づくBLE(Bluetooth Low Emission)タイプの物理レイヤの抽象概念を使用したチャネル調査である。
【0076】
図5から分かるように、種々の「ハロー」パケットの送信頻度を知ることによって、装置N1は、その周辺の接続状態を周期的に測定することができる。
【0077】
装置N3とN1との間の接続のグラフ30は、少しのパケットロスだけでちょっとだけ中断される、準永続的で信頼できる接続を示している。
【0078】
装置N6とN1との間の接続のグラフ32は、パケットロスの多い、行き当たりばったりに近い接続を示している。
【0079】
装置N2とN1との間の接続のグラフ34は、良好な接続が、パケットロスの多い一定の期間にわたって中断されていることを示している。
【0080】
従って、種々の無線リンクに関係する接続性は、時間とともに変わり、主にチャネルの状態に依存し(左側のグラフ)、チャネルの状態については、伝播現象(例えば、信号の減衰、電波の遮蔽等)および人体の動きが、「ハロー」パケットの良好な受信またはロスに関して、ノード間でのデータ交換の性能に直接影響を与えている。
【0081】
次いで、これらの測定値はステップ12で処理され(図4参照)、瞬間および過去の接続性情報に基づいて種々の無線リンクの性能を表すために、この最初のステップ10の後に、種々の無線リンクに分類される。
【0082】
間欠的に信頼できる無線リンクを使用可能にするためには、少なくとも上述の2つのカテゴリに従って無線リンクを分類する必要がある。もちろん、間欠的に信頼できる無線リンクに複数のレベルを有するより細かい分類を採用することもできる。
【0083】
このために、ステップ12中に、2つのワイヤレス無線リンク装置に関するそれぞれの接続パラメータから、交信時間および交信間時間が判定され、間欠的交信の反復パターンの存在が、サブステップ12A中に判定される。
【0084】
交信時間
【数4】
は、例えばバイナリシーケンス
【数5】
の継続時間で、かつ
【数6】
である時間と計算することができる。ここで、γFは、所定の無線リンクの信頼性閾値である。これは、交信時間を、このリンクに関係するパケットの受信率が閾値γF以上であること、すなわち
【数13】
である期間と判定することに相当する。
【0085】
γFは、アプリケーションのメッセージ伝送要件に応じて選択される。
【0086】
この閾値は、主に、アプリケーションの制約および/または要件に依存する。従って、この閾値は、重大なアプリケーション(例えば、医療アプリケーション等)に関しては非常に高く、ゲーム、道案内等のタイプのアプリケーションに関しては緩くてもよい。
【0087】
医療または監視のアプリケーションに関しては、例えば、閾値γFは、95%以上に選択される方がよい。従って、メッセージの送信の成功が優先される。
【0088】
他方、ゲームまたは道案内向けの無線ボディエリアネットワークに関しては、この閾値γFは、80%に下げられてもよい。このタイプのアプリケーションでは、パケットロスはあまり気に掛けなくてもよい。
【0089】
交信間時間は、交信時間と同様に定義される。交信間時間
【数7】
は、バイナリシーケンス
【数5】
の継続時間で、かつN≦γUPである時間と計算され、ここで、γUPは、交信間時間中に許容される「1」の最大数である。
【0090】
図6および図7は、接続性
【数1】
の時間の関数としての変化の例を示す。図では、交信時間および交信間時間は、それぞれ決定論的アプローチおよび確率的アプローチを使用して、接続性情報に基づいて示されている。
【0091】
図6および図7から分かるように、無線リンクの交信時間は、リンクが確立されてから信頼できるままである(または接続されている)時間に相当する。交信間時間は、(1つ以上のパケットのロスに続いて)リンクが途切れた直後から、リンクが再確立されるまでに必要な時間に相当する。
【0092】
無線ボディエリアネットワークに内在する固有の特徴、特に体または手足の準周期的および繰り返しの動きに関連している特徴を考慮すると、これらの交信時間および交信間時間は、特に装着者の体の移動速度または姿勢に応じて、多かれ少なかれ、時間とともに「規則的」または周期的に変わると見なされる。
【0093】
従って、所与の無線リンクに関して、評価した交信時間および交信間時間が時間とともに安定的に変化する場合、(時間が賢明に選択されることを条件として)このリンクは、ほぼ確実に短期間信頼できるタイプ、すなわち間欠的に信頼できるタイプである。
【0094】
逆の状況で、評価した交信時間および交信間時間が評価ごとに非常に変わる場合、このリンクは、確実に信頼することはできない。
【0095】
1対のノード間の接続性測定値の履歴に基づいて、これらの交信時間および交信間時間を推定する他のアルゴリズムを想定してもよい。
【0096】
例えば、加工していない接続性情報(履歴H)からリンクの接続/切断の反復パターンの存在を判定するために、形状(パターン)認識技術、および/または自動学習技術(例えば、隠れマルコフモデル、ニューラルネットワーク等)を使用してもよい。
【0097】
従って、分類に進むためには、すべての無線リンク内の短期間信頼できるか、または間欠的に信頼できる(リンクが信頼できる状態と、リンクが信頼できない他の状態との間を、周期的かつ反復的に交互に代わる接続性を有する)リンクのサブセットを検出するために、一方では、これらの交信時間および交信間時間の評価が必要であり、他方では、長期にわたる評価の安定性の評価が必要である。
【0098】
サイズWの一時的観察ウィンドウを考慮すると、各時間tにおいて、サブステップ12Aの完了時に各無線装置Niは、通信範囲内に存在する各装置Nj(∀j∈n∧j≠i)に関する(過去の期間Wの間に測定した)接続性の状態を表す履歴
【数14】
を有する(サブステップ12B参照)。
【0099】
無線リンクの性能と支障状態との間には高い相関があるので、交信時間
【数4】
(または交信間時間
【数7】
)は、理想的には、バイナリシーケンス
【数15】
の中の連続する「1」(交信間時間の場合は「0」)の連続する数を数えることによって計算されるのがよい(図6の決定論的アプローチ)。
【0100】
しかし、信号の局所的なフェーディングがあると、リンクに支障がなく(LOS状態)、かつ送信電力が十分な場合でさえ、パケットロスは同様に起こりうる。
【0101】
無線チャネルの行き当たりばったりの面を考慮に入れるために、図7に示すように、確率的アプローチを採用して、交信期間中の所定数のパケットロスを許容できるようにしている。
【0102】
(現在および過去の推定時間から)最終的な交信時間および交信間時間を推定するために、サブステップ12C中で、指数平滑法が適用される。
【数8】
【数9】
上式で、
【数4】
(または
【数7】
)は、交信時間(または交信間時間)の瞬間(または現在の)推定値である。
【数10】
(または
【数11】
)は、交信時間(または交信間時間)の時間tにおける最終推定値である。最後に、
−αCTは、過去の推定値に大きいまたは小さい重要性を割り当てる忘却係数である。
【0103】
種々の推定値の安定性を評価するために、移動変動係数(MCV)
【数12】
が、サイズWVのウィンドウにわたって評価される。この係数の役割は、過去WVの交信時間および交信間時間の評価の幅(または逆に安定性)を評価することである。この移動変動係数は、サイズWVの移動ウィンドウにわたる推定値の標準偏差と平均との比率と定義される。
【0104】
従って、この移動変動係数
【数12】
がある閾値γVより小さい場合、推定値は長期的に安定していると見なされ、ひいては、規則的かつ周期的な交信時間および交信間時間を有する間欠的に信頼できるリンクの存在を示す。反対に、移動変動係数γVより大きい場合、推定値は変わり易すぎると見なされ、対応するリンクは、信頼できないに分類される。
【0105】
想定される変形形態に従って、一連の推定値(標準偏差、平均偏差、分散、スライディング平均、変動係数等)の安定性も評価してもよい。
【0106】
長期間または準永続的なリンク品質を評価するために、サブステップ12Dにおいて、例えばWMEWMA(指数加重移動平均を有するウィンドウ平均、Window Mean with Exponentially Weighted Moving Average)推定量が使用されている。
【0107】
各時間tにおいて、近隣ノードNjに関して期間Wにわたって測定された履歴
【数15】
から始めて、WMEWMA推定量は、パケット受信率(PRR)をまず評価する。
【数16】
【0108】
最後に、WMEWMA推定量は、長期間の無線リンクの品質を推定するために、移動指数平均に従って計算してもよい。
【数17】
上式で、
【数18】
は、長期間の無線ノード間または装置間(Ni〜Nj)のリンク(i〜j)の品質の時間tにおける推定値または評価値である。
αLTは、過去の推定値に大きいまたは小さい重要性を割り当てることを可能にする忘却係数である。
最後に、Wは、観察ウィンドウのサイズである。
【0109】
こうして、サブステップ12E中に、各無線リンクのタイプ(
【数19】
)は、3つの主なクラスに従って、正確に判定することができる、すなわち、WMEWMA推定量のおかげで、長期間にわたってまたは準永続的に信頼できるリンクに判定でき、移動変動係数
【数12】
のおかげで、間欠的または短期間信頼できるリンクに判定でき、そして信頼できないリンクに判定できる。
【0110】
上記の情報から、サブステップ12F中に、無線装置の近隣テーブルが更新される。このテーブルは、メモリに格納されており、通信範囲内にある種々の近隣無線装置/ノードのリストを、例えば各無線リンクのタイプの評価(信頼できる、間欠的に信頼できる、または信頼できない)および属性とともに有する。
【0111】
各無線装置に格納されるこの近隣テーブルは、その後、次のことに使用するのがよい。
1)ある種のアプリケーションの制約(例えば、エネルギー、遅延)に応じて、送信先までの最適経路を計算するオポチュニスティック型ルーティングアルゴリズム。
2)送信先ノードまでに、ある種の無線リンクの出現を予測するオポチュニスティック型適応中継アルゴリズム。または、
3)無線リンクの使用可能または使用不能に応じて、ネットワークの種々のノード間の相対的距離の測定に関して最適スケジューリングを行う電波探知アルゴリズム。
【0112】
本発明はまた、ボディエリアネットワークを構成し、かつ互いに通信する必要がある複数の無線装置を備える無線ボディエリアネットワークを通じてメッセージを送信する装置50にも関する。図8は、図4の方法を実施するための、本発明の装置50のブロック図である。
【0113】
この送信装置50は、一方に、無線ボディエリアネットワーク用の無線リンクの品質を評価するように、すなわちステップ10およびステップ12を実行するように構成された装置52を備え、他方に、間欠的に信頼できる無線リンクが信頼できると見なされる期間中に、間欠的に信頼できる無線リンクを介してメッセージを伝達または中継するように構成された手段54を備えている。この手段54は、無線リンクの品質を評価する手段52に接続されており、この手段52が作り出す結果を使用する。
【0114】
無線リンクの品質評価装置52は、上述の方法のステップ10およびステップ12を実行するように構成されている。この品質評価装置52は、例えば、上記の方法の種々のステップを実行し、結果を例えば近隣テーブルに格納するように構成されたプロセッサおよびメモリを有し、ボディエリアネットワークBANの1つ以上の無線装置N1〜N6に組み込まれるユニットである。もちろん、このユニットは、1つのセンサおよび/または無線通信部に特有でもよいし、また既に存在する無線装置のプロセッサおよびメモリから構成してもよい。
【0115】
次に、図9および図10を参照する。
【0116】
図9は、ユーザの体の種々の場所にあるN1〜N12の符号が付いた12の無線装置を有するユーザUを示す。
【0117】
特に興味深いのは無線装置またはノードN1であり、このN1は、この後、例えば外部ネットワーク6(この図には図示せず)と通信するために、すべてのメッセージが伝達されなければならない集約ノードである。
【0118】
図10は、3つのグラフを示し、その中の上のグラフは、長期間品質推定量
【数18】
を示し、中のグラフは、上に定義した交信時間および交信間時間を示し、下のグラフは移動変動係数
【数12】
のグラフを示す。
【0119】
各グラフは、時間の関数としてこれらの値の変化を示すために、ノード間/無線装置間N1〜N8、N1〜N2、N1〜N4およびN1〜N3のリンクにそれぞれ、再分割されている(3つの異なる移動速度(1m/s、2m/sおよび3m/s)に関しては、図9も参照されたい)。
【0120】
この例では、各時間間隔(合計で12間隔ある)は、無線リンクおよび規則的な体の移動速度が関わるシミュレーションに相当する。各間隔は、264秒の継続時間を有し、60msごとの1つのハローパケットの頻度で、無線装置間における4400の「ハロー」パケットの交換に相当することに留意されたい。
【0121】
最初の3つの時間間隔中は、無線リンク(N1〜N8)に対応する品質測定値について、3つの移動速度(1m/s〜3m/s)に関して検討されている(このリンクは、短期間信頼できると見なされている)。
【0122】
図10においては、リンクが長期間信頼できるかどうかを判定するために、90%閾値が定められている。WMEWMA推定量
【数18】
を使用すると、リンク品質は約80%であり、短期間のリンクの品質評価はBANの動きによく合致し、変動係数が非常に小さい(<0.1)交信時間および交信間時間を明示していることに留意されたい。この場合、リンクは、「間欠的に信頼できる」または「短期間信頼できる」に分類される。
【0123】
次の3つの時間間隔中は、無線リンク(N1〜N2)に対応する品質測定値が検討されている(ノードN2は、ノードN1に対して体の裏側の位置にある)。リンクの長期間の品質は平均で50%程度であり、交信時間および交信間時間の推定値は、変動係数が非常に大きく、安定していないことに留意されたい。それ故、リンクは、「信頼できない」に分類される。
【0124】
無線リンク(N1〜N4)(間欠的に信頼できるかまたは短期間信頼できる)および(N1〜N3)(長期間信頼できる)に関連する測定値について、次に検討する。この場合もやはり、本発明の方法は、種々の速度および種々のリンクタイプによく適合し、それらの特徴に応じて、長期間と短期間の両方における種々の無線リンクの性能判定およびその分類が可能になり、その後のより上位のプロトコル(例えば、ルーティング、中継、予測等)での使用を可能にするものである。
【0125】
図4の方法のステップ14は、一方では、間欠的に信頼できる無線リンクの存在についての近隣テーブルに基づく確率的予測を視野に、事前に決定された種々の近隣テーブルを使用するためと、いくらかでもそのような無線リンクが存在すれば、特に、体の動き、および人体の周りおよび直ぐ近くの伝播現象(例えば、無線リンクの遮蔽および支障、マルチパス伝播、人体による電波の吸収等)に直面しているより上位のプロトコルの性能、およびロバストネスの向上を視野に、メッセージ送信のために、それらのリンクを使用するためにある。
【0126】
従って、ボディエリアネットワークの各無線装置Ni(∀i∈n)は、その近隣ノード(または通信範囲内のノード)Nj(∀j∈n∧j≠i)のそれぞれに関して、nタプレット
【数20】
を有する、局所的に入手可能な近隣テーブルを有する。
ここで、
【数18】
は、リンク(Ni〜Nj)の長期間の品質である。
【数19】
は、リンク(Ni〜Nj)のタイプである:長期間信頼できる、短期間信頼できる、信頼できない。
【数10】
は、リンク(Ni〜Nj)に関する推定交信時間である。
【数11】
は、リンク(Ni〜Nj)に関する推定交信間時間である。
【数12】
は、推定値
【数10】
および
【数11】
に関係する幅(または安定性)を表す移動変動係数である。
【0127】
この情報は、より上位のプロトコルによって、主に次のことに使用される。
−エネルギー消費、レイテンシ、データ配信率等に関して、ルーティングおよび中継プロトコルの性能を最大にすることを目的に、短期間信頼できるリンクの存在を特定する。
−(情報
【数19】
、
【数10】
、
【数11】
および
【数12】
から)短期間信頼できるリンクの出現、および/または消滅を予測できるおかげで、ノード間の距離測定のスケジューリングを最適化できることによって、協調位置アルゴリズムの性能を最大にする。
【0128】
メッセージの送信に関して、ボディエリアネットワークの無線リンクの信頼性が分かったので、メッセージは、今度は、間欠的に信頼できる無線リンクが信頼できると見なされる期間中、間欠的に信頼できる無線リンクを介して伝達した方がよい。
【0129】
想定されるアプリケーションに応じて、エネルギー消費、レイテンシ、データ配信率のグループの中のパラメータの少なくとも1つを最適化するために、間欠的に信頼できる無線リンクを介したメッセージの送信が優先される。
【0130】
さらに、アプリケーションによっては、無線装置間の距離の測定は、間欠的に信頼できるリンクの出現および/または消滅の予測を考慮してスケジュールされる方がよい。
【0131】
次に説明例を挙げる。アプリケーションおよびメッセージの送信に割り当てられた優先規準/パラメータに応じて、ノード/無線装置レベルにおける種々の近隣テーブルは、様々なやり方で使用してもよい。
【0132】
データパケットの受信または非受信に関する情報から、各ノードは、その近隣テーブルの中に通信範囲内の無線ノードのリストを保持し、対応する無線リンクのそれぞれに関してコストメトリックを計算する。このコストメトリックは、例えばデータ配信率、データ伝達遅延またはエネルギー消費などのより重要なアプリケーションの制約により、主として決まり、各無線リンクまたは一連のリンク(または経路)の信頼度を示す。
【0133】
n台の無線装置から構成されているボディエリアネットワークを考慮する。(伝送方向を考慮した)リンクの最大数はn(n−1)であり、1対のノードNiとNj(i≠j)の間の各既存の論理リンクIi,jには、
【数21】
で表されるコストメトリックが割り当てられる。
【0134】
アプリケーションの制約に応じて、このコストメトリックについて、2つの主な式を想定しうる。
1)パケットロスを許容できない重要なアプリケーション向けの推定配信率(PDR)メトリック。または、
2)エネルギーおよび遅延に関しての制約が厳しいアプリケーション向けの平均再送回数(ANR)メトリック。
【0135】
以下に挙げる非限定的な例は、PDRメトリックを想定している。ANRメトリックも同様に適用しうる。
【0136】
PDR(確率的配信率)メトリックは、データ配信率(または長期間リンク品質)と定義され、無線リンク品質推定量によって判定されてもよい。WMEWMA推定量を考慮すると、各リンクli,j(i≠j)に関係するコストメトリックは、次のように定められる。
【数22】
ここで、
【数18】
は、リンクli,jの(WMEWMAを使用する)長期間の推定品質である。
【0137】
この場合、各時間tと、所与の送信元ノードiおよび送信先ノードjとを考慮すると、これらの2つのノードを接続する最適経路Ri,jは、データパケット配信に関して通信の終端間信頼性を最大にする経路であると定められる。すなわち、
【数23】
である。このように計算され、たぶんネットワークの1組のリンクから構成される経路Ri,jは、通信の信頼性に関して全体(または終端間)価値を最大にする経路である。
【0138】
この経路は、当業者に公知のダイクストラ最短経路計算アルゴリズムの修正版を使用して計算されてもよい。
【0139】
図11は、間欠的に信頼できるリンクを使用するオポチュニスティック型ルーティングで得られる、このルーティングメトリックの性能への影響を示すアプリケーション例を示す。
【0140】
図11は、図9のBANに関する接続性のグラフを表し、ノードN1は、ネットワークのコーディネータ/集約ノードと見なされ、各リンクは、データ配信率(または長期間の通信の信頼性を表すリンクの品質
【数18】
)に関係するコストメトリックを割り当てられている。N5がコーディネータN1へのデータパケットの送信を望んでいると仮定する。
【0141】
このグラフでは、実線の接続Ii,jは、長期間信頼できる無線リンクを表し、破線の接続は、間欠的に信頼できるリンクを表す。線のそばの数字は、無線リンクのコスト、すなわち
【数21】
を表わしている。
【0142】
長期間信頼できるリンクだけを使用する昔ながらのPDRルーティングメトリックを考慮すると、最適経路は、データ配信確率を最大にする経路である。
【0143】
その結果、選択される最適経路は、長さ3の
【数24】
であり、トータルコスト(または全体の経路に関する終端間信頼性)は、
【数25】
に等しくなる。
【0144】
その結果、たぶん分かるように、このメトリックは、データ配信確率を最大にする傾向にあるが、伝達経路の長さを大幅に増加し、最終的に、伝達遅延およびエネルギー消費を犠牲にしている。
【0145】
長期間信頼できる無線リンクおよび間欠的に(すなわち短期間)信頼できる無線リンクを考慮する場合も、ルーティングプロセスを、やはり最適化しうる。
【0146】
本発明の方法を使用することにより、ノード5は、コーディネータ1の方向に一時的に信頼できる経路が存在する(例えば、図11におけるノードN5とN1との間の破線の接続)と判定できる。
【0147】
その結果、オポチュニスティック型または適応ルーティングアルゴリズムが、次のように動作する。
所与の時間にこの一時的リンクが存在し、それをノードN5が検出した場合、データは、コーディネータN1に直接送られる。
検出しない場合、経路が(PDRメトリックを使用して)計算され、データは、コーディネータの方向にノードからノードへ中継される。従って、可能な場合、すなわち幾らかでもそれらの出現を予測しうる場合、間欠的に信頼できるリンクを介したメッセージの送信が優先される。
【0148】
それ故、ルーティング経路の長さを最短にして、最終的にエネルギー消費およびデータ伝達遅延を最小限にするために、短期間信頼でき安定している種類の無線リンクの存在をオポチュニスティックに使用する。
【0149】
あるいは、間欠的に信頼できる直接リンクが、送信元ノードと送信先ノードとの間に検出された場合、そのリンクが出現または存在するときだけ、データを送信するようにしてもよい。
【0150】
そのリンクが一時的に消滅すると、送信元ノードは、(代替の信頼できる経路が存在する場合でさえ)間欠的に信頼できるリンクが再び現れるまで、その送信を遅らせるように決定してもよい。
【0151】
従来のルーティングアーキテクチャに対する本発明の方法の有利さを評価するために、シミュレーションを行った。
【0152】
BANの各ノード/無線装置がコーディネータ(ノードN1)の方向にデータパケットを周期的に送信する(図9のシナリオ参照)、マルチポイント・ツー・ポイント(MP2P)トラフィックについて検討する。このデータパケットは、例えば、距離測定値(例えば、電波探知アプリケーション)または人体に関する情報(例えば、医療監視アプリケーション)を有してもよい。
【0153】
次に、2つの通信アーキテクチャについて、評価および比較を行う。
−ルーティングメトリックとしてPDRを使用する複数ホップのアーキテクチャ(以下「メッシュPDR」アーキテクチャと称する)。このアーキテクチャでは、各ノードは、コーディネータへの終端間データ配信確率を最大にする経路を決定する。これは、長期間信頼できる無線リンク(図11の実線のリンク)だけを使用する標準の方式である。
−ルーティングメトリックとしてPDRを使用するオポチュニスティック型、または適応複数ホップのアーキテクチャ(以下『メッシュDPR+「短期間」リンク』アーキテクチャと称する)。このアーキテクチャでは、各ノードは次のように決定する。
1)間欠的に信頼できるリンクを考慮して、コーディネータN1への一時的な信頼できる直接経路。または適用できる場合、
2)コーディネータN1へのデータの配信確率を最大にする経路。
【0154】
さらに、これらのアーキテクチャはすべて、再送メカニズムを使用しない通信モードと、ダイクストラアルゴリズムを使用する経路計算とを利用すると仮定する。
【0155】
次の3つの性能メトリックが、特に重要である。
1)全体のエネルギー消費。
2)コーディネータが受信したパケット数と総送信パケット数の比率として計算されるデータ配信率。
3)データ伝達遅延。
【0156】
全体のエネルギー消費は、無線装置が送受信したパケット数と、これらのノードが使用可能状態である期間とに比例して計算される。
【0157】
図12、図13および図14に、得られたシミュレーションの結果をそれぞれ示す(BANの速度は1m/s、「ハロー」パケット送信期間は60ms、および送信電力は−20dBmである)。
【0158】
図12は、ノード当たりのデータ配信率を示す。まず、「メッシュPDR」アーキテクチャ(標準の複数ホップの通信アーキテクチャ)に関して、(ノードN2〜N13からコーディネータN1への)データ配信率は、平均で94.89%である。
【0159】
間欠的に信頼できる無線リンクを考慮し、それらが現れる時に、それらの無線リンクを介するメッセージの送信を優先する本発明の方法(「メッシュPDR+短期間」アーキテクチャ)を使用しても、平均データ配信率が94.28%で、従来のルーティングアーキテクチャに対して性能の大幅な損失を生じない。
【0160】
他方、エネルギー消費の観点から、これらのアーキテクチャを分析すると、違いが見られる。
【0161】
図13は、ノード当たりのエネルギー消費を示す。まず、この消費が均一でないことに留意されたい。複数ホップのアーキテクチャでは、幾つかのノードは、自ノードからのパケットの送信と同様に、近隣のノードのパケットを中継する必要があり、ひいては、全体のエネルギー消費およびデータ伝達遅延を増加する。
【0162】
図13の従来の「メッシュPDR」アーキテクチャに関しては、3つの大幅なエネルギー消費のピークが存在することが分かる。それらのピークは、動く手足かつ体の下側に位置しているノードに対する主な中継ノードであるノードN3およびノードN1と、(体の後かつ頭の高さに位置しているノードに対する主な中継ノードである)ノード7に対応している。
【0163】
他方、新しい「メッシュPDR+短期間リンク」アーキテクチャは、標準「メッシュPDR」アーキテクチャに比べて全体のエネルギー消費の約30%の節約を可能にするとともに、同じデータ配信率を保証している(図12参照)。
【0164】
最後に、図14は、コーディネータN1までのノード当たりの平均ホップ数を示す。このメトリックは、ルーティング経路の長さを反映し、得られるデータ伝達遅延に直接影響を与える。
【0165】
本発明の方法を実施すると、間欠的に信頼できるリンクを機敏に使用するおかげで、「メッシュPDR」アーキテクチャに比べて、ルーティング経路の長さを全体で約24%減少できることが分かる。この改善は、場合(例えば、リンクN1〜N8)によっては50%に達することがあり、ひいては、データ伝達遅延を大幅に減少する。
【0166】
従って、本発明の方法が、伝播状態の動的変動、および/または人体の動きにもかかわらず、高い追加のコストを生じることなく、接続性、エネルギー消費、レイテンシ、信頼性、データ配信率、通信の信頼性、およびプロトコルのロバストネスに関して、無線装置を有するボディエリアネットワークの性能を改善できることは明らかである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ボディエリアネットワーク用の無線リンク品質評価方法、無線ボディエリアネットワーク用のメッセージ送信方法、およびこれらの方法を実施する装置に関する。
【0002】
本発明は、例えば人間などの、少なくとも一部が動く体の上に装着されている無線装置間で、データの交換を必要とする方法と装置に関する。
【背景技術】
【0003】
現時点において、セキュリティ、ヘルス、スポーツから大衆娯楽までの多様な分野における要件に対応することができ、知的かつ自律的な無線ボディエリアネットワークが出現するのは、必然的であると思われる。
【0004】
これに関連して戦略的に重要なことは、この無線ボディエリアネットワークの、移動性および人体の周りに非常に特有の伝播現象(例えば、無線リンクの支障または遮蔽等)に本質的に結び付いた、固有の特性および制約に適合した、より信頼性の高い通信プロトコルを開発することである。
【0005】
ボディエリアネットワークを構成する種々の無線装置間における通信の適用例として、次のものを挙げることができる。
−屋内環境において移動する団体を道案内して、適切な位置に配置する例、および全地球測位サービス。
−例えば、スポーツにおける動作の追跡、または娯楽、およびゲームなどのための動きの捕捉。
−例えば、リハビリ、虚弱者もしくは高齢者の観察、および危険な環境の中で動き回る人(例えば、燃えている建物の中にいる消防士等)の監視などのための状態検出。
−ペースメーカ、インスリンポンプ、バイタルサインの監視/観察(体温、心拍(心電図(ECG))等)などの医療面の適用。
−「セパレート型端末」タイプのアプリケーション(同一場所に配置されていないスクリーン、キーボード、イヤホン)。
<従来技術>
【0006】
統合化および小型化の分野における最近の技術の進歩と、例えばBLE(Bluetooth(商標) Low Energy)、Zigbee(商標)、およびIR−UWB(Impulse Radio Ultra WideBand)などの低ビットレートで、かつ非常に低電力消費の無線通信技術の開発により、無線ボディエリアネットワーク(BAN)という名の新しいアプリケーション分野が出現した。
【0007】
例えば、特許文献1(WO2010/018517)から、例えば患者が身に付けたセンサ、または患者のある種のバイタルパラメータを観察するために患者に埋め込まれたセンサのネットワークを作成するようになっているボディエリアネットワークが、公知となっている。
【0008】
このタイプのアプリケーションでは、無線装置は、人体の表面、または直ぐ近くに、ネットワークを構成する。象徴的なアプリケーションの例として、「セパレート型端末」(同一場所に配置されていないスクリーン、キーボード、イヤホン)、スポーツ用(心拍計、時計、靴上の歩数計)、または医療用(可動式の心臓、脳、筋肉の観察装置)などが挙げられる。
【0009】
ボディエリアネットワーク(BAN)は、一般に、エネルギー、計算能力、および記憶容量に関して制約があり、自立かつ自律式ネットワークを構成するために人体に取り付けられた(または埋め込まれた)一式の無線装置によって構成されている。各無線装置は、搭載センサ(位置、体温、ECG等)を用いて、ローカル情報を集めることができ、コーディネータとも呼ばれている中央装置に収集したデータを伝達するために、他の装置と通信できる。このコーディネータの主な役割は、ボディエリアネットワークと外部ネットワーク(例えば、インターネット、セルラネットワーク、別のセンサネットワーク等)との間のゲートウェイとしての機能を果たすことである。
【0010】
図1は、患者の医療監視用の無線ボディエリアネットワークの一例を示す。患者またはユーザUは、例えば移植組織、または血圧、心拍、視力、患者の体力、血糖レベル等を監視するために、1つ以上のセンサを備えた種々の無線装置3を身に付けている。
【0011】
これらの無線装置3は、無線リンクを介して、中央ノード(一般に無線ネットワークコーディネータの役をしている)に接続されている。この中央ノードは、例えばアクセスポイントを介してWLAN7、セルラ電話機9等の、外部ネットワーク6と通信するように構成されている。このネットワークに同様に接続されているのは、例えば緊急医療サービスまたは監視サービス11であり、この監視サービスは、例えばセンサの中の1つが異常を検出した場合に、救急車に連絡する。
【0012】
ボディエリアネットワーク固有の特徴を考えると、ボディエリアネットワークには、現在の通信技術および通信プロトコルの中でも、特に無線センサネットワーク(WSN)、または無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)との関連でなされている通信技術および通信プロトコルは適していない。
【0013】
無線ボディエリアネットワークには、無線装置の限られた能力、伝播チャネルの性質、人体の移動性、ネットワークの特殊なトポロジに本質的に結び付いた多くの新しい制約があり、新しいより適切な通信戦略が必要である。
【0014】
これについては、非常に簡単な例をもって詳細に説明することができる。無線装置3は、ボディエリアネットワークBANのノードであり、その動作により自装置の情報を作り出して、ネットワークを通じて送信するとともに、データを伝達するネットワークの他のセンサに対する中継装置としての機能も果たす。
【0015】
エネルギーを節約し、ひいてはネットワークの自律性を高めるためには、例えば、かかとに固定された歩数計から生じるデータを、中継することなく、直接中央ノード5に送信する代わりに、腰の位置に設けられ、中継装置としての機能を果たす無線装置を介して、コーディネータ中央ノード5に送信する方が好ましいと思われる。これに関しては、パーソナルエリアネットワークに関する許容送信電力を決めているIEEE802標準に対応するために、送信電力が低いことも考慮しなければならない。
【0016】
それにもかかわらず、これらの無線装置を身に付けているか、または携行している人物(例えば、患者、人間)の移動性により、別の制約が課せられる。
【0017】
一方において、人の手首の位置にセンサが付けられていて、その人が元気よく歩いていると考えると、その人が動くに連れて、腕が振れ、センサは定期的に水平位置または背後に来る。中央ノード5(またはコーディネータ)が前部の胸の高さにある場合、腕が後の位置にあると、電波の遮蔽および/または無線装置の低い送信電力のために、中央ノード5と十分信頼できるように、無線リンクを確立することができないので、結果として、データは、この中央ノード5に直接送信されないことがある。
【0018】
従って、これらの問題を多少とも解決するためには、一方において、手首に付けられた無線装置と、他方において別の無線装置もしくは直接中央ノード5と、信頼できるリンクを常に確立できる中継装置としての機能を果たす無線ノードまたは無線装置を提供することが好ましい。
【0019】
非特許文献1は、無線センサネットワークに関し、短期間信頼できるリンクの概念およびデータのルーティングにおけるそのリンクの使用可能性を紹介している。
【0020】
この非特許文献1は、低電力無線リンクに関するものであり、短期間信頼性を有する無線リンクの使用を提案しているが、ボディエリアネットワークに固有の性質、特に送信機と受信機との間の移動性については考慮していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第2010/018517号パンフレット
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】A.Becher他著、「短期間無線リンクの品質推定に向けて:HotEmnets2008ワークショップ」(Towards Short-Term Wireless Link Quality Estimation. In Hot Emnets, 2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、前述の欠点の少なくとも一部を、ボディエリアネットワーク用の無線リンクの品質評価方法を提供することによって、多少とも解決することを目的としている。この無線リンクの品質評価方法は、ボディエリアネットワークを通じた情報(パケット)をルーティングおよび中継するため、およびその後、ボディエリアネットワークの利用可能なすべての無線リンクを常により一層利用するために、潜在的に興味深いリンクの新たなカテゴリの識別および要件を可能にしているボディエリアネットワーク用である。
【0024】
より正確には、本発明は、伝播条件の動的な変動、および/または人体の移動性などに対抗して、例えば接続性、エネルギー消費、レイテンシ、信頼性、データ配信率、通信の信頼性、プロトコルのロバストネスに関して、少なくとも部分的に、かつアプリケーションの内容に応じて、ボディエリアネットワークの性能を改善することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
このため、本発明は、ボディエリアネットワークを構成し、相互に通信する必要がある、少なくとも第1の無線装置および第2の無線装置を備え、これら2つの無線装置のうちの少なくとも一方が、他方に対して移動しがちである無線ボディエリアネットワーク用の無線リンクの品質評価方法を提供するものである。この方法は、
−これらの無線装置の中の少なくとも1つが受信したメッセージを利用して、対応する無線リンクの瞬間品質を測定し、無線リンクが信頼できる時間、および無線リンクが信頼できない時間を推定する方法であって、
この方法は、
−推定時間における信頼性指標を計算し、ボディエリアネットワークの無線装置の移動性を考慮して、この信頼性指標に応じて、無線リンクを、間欠的に信頼できる無線リンクに関係するカテゴリを含む少なくとも2つのカテゴリに分類することを特徴としている。
【0026】
従って、無線装置の相互の移動性を考慮して、間欠的に信頼できる無線リンクに関係する新しいリンクカテゴリを導入している。
【0027】
従って、本発明によると、短期間信頼できるリンク(または信頼性が間欠的なリンク)の存在を判定でき、主な特徴、その中でも、特に交信時間(無線リンクを確立でき、かつ信頼できる時間)、および交信間時間(接続が途切れてからリンクを再確立するまでに必要な時間)を推定することができる。
【0028】
これによって、これらの無線リンクの出現/消滅、およびそれぞれの交信時間/交信間時間の予測が可能になり、エネルギー消費、その潜在量、データ配信率等に関して、通信プロトコル(パケットのルーティングおよび中継、通信のスケジューリング等)の性能を向上させることができる。
【0029】
手首に固定された無線装置の例に戻ると、無線装置と中央ノードとの間の直接の無線リンクを、間欠的に確立することができ、無線送信電力のさらなる削減、ひいては最終的に、ボディエリアネットワークのエネルギー消費の削減が可能になる。
【0030】
個別または組み合わせて使用できる方法における1つ以上の特徴として、次のものがある。
−無線装置間で交換されるメッセージは、サービスメッセージ、データメッセージ、またはこれらのメッセージの組み合わせである。
−これらのメッセージは、周期的または疑似周期的に交換される。
−これらのメッセージは、可変の頻度で交換される。
−無線リンクの瞬間品質は、RSSI、LQI、またはSNRなどの少なくとも1つの無線指標を測定して評価される。
−無線リンクの瞬間品質は、接続パラメータを測定して評価される。
−接続パラメータおよび/または無線指標は、任意の時間tに関して、ノードiとノードj(i≠j)との間で、値「1」または値「0」を有するバイナリ方式で決定される。
【数1】
−例えば、
【数2】
リンクが使用可能状態の場合、例えば、メッセージが成功した場合
リンクが使用不能状態の場合、例えば、メッセージが失敗した場合
−あるいは、
【数3】
無線指標が閾値以上の場合。
無線指標が閾値未満の場合。
−少なくとも2つのカテゴリに従って無線リンクを分類するために、2つのそれぞれの無線装置に関する接続パラメータまたは無線指標から、交信時間および交信間時間を判定して、間欠的な交信の反復パターンの存在を判定する。
−交信時間
【数4】
は、バイナリシーケンス
【数5】
の継続時間で、かつ
【数6】
である時間と計算される。ここで、γFは、無線リンクの信頼性閾値である。
−交信間時間
【数7】
は、バイナリシーケンス
【数5】
の継続時間で、かつN≦γUPである時間と計算しうる。ここで、γUPは、交信間期間中に許容される「1」の最大数である。
−最終的な交信時間および交信間時間は、次の式から計算しうる。
【数8】
【数9】
上式において、
【数4】
および
【数7】
は、それぞれ交信時間および交信間時間の瞬間推定値である。
【数10】
および
【数11】
は、時間tにおける、それぞれ交信時間および交信間時間の最終推定値である。
−αCTは、忘却係数である。
−移動変動係数
【数12】
は、サイズWVの移動ウィンドウにわたる推定値の標準偏差と平均との比率であり、サイズWVのウィンドウにわたって計算される。この移動変動係数
【数12】
は閾値γVと比較され、
移動変動係数
【数12】
が閾値γV未満の場合、リンクは間欠的に信頼できるに分類され、閾値以上の場合、信頼できないとまでは言えないが、信頼できないに分類される。
−各無線装置に関して、無線リンクの信頼性は、近隣テーブルの中に格納される。
【0031】
また、本発明は、無線ボディエリアネットワーク用の無線リンクの品質を評価し、上記で規定した方法を実施する装置にも関する。この無線ボディエリアネットワークは、ボディエリアネットワークを構成し、相互に通信する必要がある、少なくとも第1の無線装置および第2の無線装置を備える複数の無線装置を備え、2つの無線装置のうちの少なくとも一方が他方に対して移動しがちである。この装置は、
−無線装置の中の少なくとも1つが受信したメッセージを利用して、対応する無線リンクの瞬間品質を測定し、
−無線リンクが信頼できる時間、および無線リンクが信頼できない時間を算定し、
−推定した時間に関する信頼性指標を計算し、
−ボディエリアネットワークの無線装置の移動性を考慮して、この信頼性指標に応じて、無線リンクを、間欠的に信頼できる無線リンクに関係するカテゴリを含む少なくとも2つのカテゴリに分類する。
【0032】
さらに本発明は、無線ボディエリアネットワークを通じたメッセージ送信方法にも関する。このメッセージ送信方法は、ルーティングまたは中継のために、無線ボディエリアネットワーク用の無線リンクの品質を上記で規定した方法で評価することと、メッセージの送信に関して、メッセージを間欠的に信頼できる無線リンクを介して伝達することとを特徴としている。
【0033】
この方法は、さらに次の特徴の1つ以上を、個別に、または組み合わせて備えているのがよい。
−メッセージは、間欠的に信頼できる無線リンクが信頼できると見なされる期間中に伝達される。
−エネルギー消費、レイテンシ、データ配信等のグループのパラメータの中の少なくとも1つのパラメータを最適化するために、間欠的に信頼できる無線リンクを介するメッセージの送信を優先する。
−無線装置間の距離の測定は、間欠的に信頼できるリンクの出現、および/または消滅の予測を考慮して、スケジュールされる。
【0034】
また、本発明は、上記したメッセージ送信方法を実施する、無線ボディエリアネットワークを通じたメッセージ送信装置をも提供するものである。このメッセージ送信装置は、無線装置間のデータ交換のルーティング、および/またはパケットの中継のために、上記で規定した無線ボディエリアネットワーク用の無線リンクの品質評価方法を使用して、無線ボディエリアネットワーク用の無線リンクの品質を評価するようになっている手段と、間欠的に信頼できる無線リンクが信頼できると見なされる期間中に、間欠的に信頼できる無線リンクを介してメッセージを伝達するように構成されている手段とを備えていることを特徴としている。
【0035】
他の利点および特徴は、以下の本発明に関する説明を読み、かつ図を検討することにより、明らかになると思う
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】無線ボディエリアネットワークの図である。
【図2】本発明の無線ボディエリアネットワークの図である。
【図3】3つの異なる無線リンクについて、時間の関数として3つのグラフを示す図である。
【図4】本発明の方法の様々なステップを示すフロー図である。
【図5】3つの異なる無線リンクに関して、時間の関数として、一方に受信電力の減衰、他方に接続性(すなわち、パケット受信の可能性)の6つのグラフを示す図である。
【図6】決定論的アプローチを使用した、時間の関数としての交信時間および交信間時間に関する無線リンクの接続性の解釈を示す図である。
【図7】確率的アプローチを使用した、時間の関数としての交信時間および交信間時間に関する無線リンクの接続性の解釈を示す図である。
【図8】図4の方法を実施する、本発明の装置のブロック図である。
【図9】本発明の方法を示す、幾つかのリンクが使用可能状態の本発明の無線ボディエリアネットワークの図である。
【図10】リンク品質の評価に関する3つのグラフを示す図である。
【図11】ボディエリアネットワークの通信アーキテクチャの図である。
【図12】ボディエリアネットワークの種々の送信ノード、および異なるルーティング戦略に関して、パケット配信率の比較を示す図である。
【図13】ボディエリアネットワークの種々の送信ノードに関して、エネルギー消費の比較を示す図である。
【図14】ネットワークのコーディネータ装置までパケットを伝達するための平均ホップ数の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
すべての図において、同じ要素には、同じ符号を付してある。以下においては、次の語を使用する。
【0038】
−BAN:ボディエリアネットワーク。移動体、特に人体上にある、複数の無線装置、センサ(またはノード)から構成されていることがある。
−SNR:信号対雑音比。
RSSI:受信信号強度。受信信号の電力に関係するハードウェアタイプのリンク品質指標。
−LQI:リンク品質指標。受信信号の復調、同期に使用する判定レベル、または推定メトリックに関係するハードウェアタイプのリンク品質インジケータ。
−NLOS:見通し外。送信機と受信機が相互に直接見えないときの、無線リンクに支障がある状況。
−LOS:見通し内。送信機と受信機が相互に直接見えるときの電波の伝播。
−「論理リンク」:1対の無線装置間のネットワークの接続性を表す物理無線リンクの抽象概念(すなわち、パケットの送信および受信ができる可能リンク)。
−「間欠的に信頼できるリンクまたは短期間信頼できるリンク」:体の動き、および手足の繰り返しの動きのために、その信頼性/性能は変わるが、間欠的に通信に(例えば、パケットの受信/パケットロスに関して)都合のよい状態になるリンク。
−「長期間信頼できるリンクまたは準永続的に信頼できるリンク」:人体の動きまたは姿勢がどうであれ、その信頼性/性能が長期にわたって準永続的であるリンク。
−「交信時間」:ボディエリアネットワークBANの1対の無線装置間、またはノード間に論理リンクが確立され、一定の規準、または一定のアプリケーション成功率に照らして(例えば、パケットの受信/パケットロスの点から見て)信頼できる状態にある時間。
−「交信間時間」:論理リンクが(1つ以上のパケットロスに続いて)途切れてから、リンクが再確立されるまでに必要な時間に相当する。
−「ネットワークトポロジまたはアーキテクチャ」:情報のルーティング/中継のために、最も信頼できると見なされる無線リンクのサブセットから、ネットワークレイヤのレベルで構築されたノードの論理的構成。
【0039】
図2は、それぞれが、ボディエリアネットワークの1つのノードを表わす6つの無線装置を身に付けているユーザUを示す図である。右手首にノードN1、右大腿部にノードN2、左腰にノードN3、背中にノードN4、左肩にノードN5、および右耳の位置にノードN6がある。
【0040】
これらの無線装置N1〜N6のそれぞれは、例えば、ユーザUの体に関する物理量を測定するためのセンサを備えている。
【0041】
センサの性質および測定する物理量は、想定されるボディエリアネットワークのアプリケーションによって決まる。
【0042】
想定されるのは、例えば、建物内をあちこち移動する団体の道案内、および/または団体を適切に配置するためのアプリケーションと全地球測位タイプのサービスである。
【0043】
別の例では、センサ(例えば、加速度計)は、例えばスポーツの動作を追いかけるために、または娯楽およびゲームアプリケーションのために、動きに関連する量を測定する。
【0044】
別の例では、アプリケーションは、例えばリハビリ、虚弱者または高齢者の見守り、有害な環境で動き回る人(例えば、燃えている建物内の消防士等)の監視などのために、姿勢または体位の検出を備えていてもよい。
【0045】
同様に想定されているのは、ペースメーカ、インスリンポンプ、バイタルサインの監視/観察(体温、ECG等)などの医療アプリケーション用のボディエリアネットワークである。この場合、無線装置は、例えば体温、心拍数、血圧等を測定するセンサを有する。
【0046】
別の態様では、「セパレート型端末」タイプ(同一場所に配置されていないスクリーン、キーボード、イヤホン)のアプリケーションが想定される。
【0047】
従って、本発明は、無線装置が相互に通信する無線ボディエリアネットワークを使用する任意のタイプのアプリケーションに関する。
【0048】
従って、ノードN1〜N6のそれぞれは、図2に破線で示す無線リンクを設定できるなら、ネットワークの別のノードと通信しうる。
【0049】
例えば、送信電力が低すぎて、ユーザUの動作および/または2つのノード間Ni〜Nj(i≠j)の距離に起因する遮蔽効果などの多様な要因のせいで、無線リンクが確立できない、または少なくとも永続的には確立できないことが起こりうる。
【0050】
使用される技術は、例えばZigbee(商標)、BLE(Bluetooth(商標) Low Energy)、またはIR−UWB(Impulse Radio Ultra WideBand)などの短距離無線技術である。
【0051】
これらの無線装置に使われる送信電力は、一般に小さいと見なされている。その理由は、健康上の理由(例えば、放射電波の健康への影響を最小限にするため等)、例えば電話、WiFiネットワーク等の共存するネットワークの性能を最大にするため(ボディエリアネットワークの近くにある他のネットワークへの干渉を最小限にするため)、および/またはボディエリアネットワークに固有の厳しいアプリケーションの制約(例えば、搭載バッテリの保全/置換ができない、ネットワーク電力の持続性、ノード全体の物理的サイズの小ささ等)である。
【0052】
図3は、図2の中のそれぞれ異なる3つの無線リンクについて、時間の関数として、送信信号からの受信信号の減衰を、3つのグラフで示している。すなわち、上のグラフが無線リンクN3〜N5、中のグラフがN2〜N6、下のグラフがN1〜N2についてのものである。
【0053】
図3の上のグラフは、ノードN3とN5との間、すなわち左腰と左肩との間における、送信信号の受信電力の減衰の一例を示している。ここでは、関連する装置3および5は、電波の受信電力の減衰が少ない、ここでは、受信信号レベルが−40dBmを上回り、常に直接見通し(LOS)状態にある。従って、このリンクは、その性能(例えば、データパケット配信率、減衰レベル、信号対雑音比等)が長期間安定していて信頼できるリンクと見なされる。
【0054】
一方、中のグラフでは、(右大腿部の)ノードN2と(右耳の)N6との間の信号レベルは、ひどく劣化していて(例えば、受信電力の減衰レベル(ここでは受信レベル、−60dBm未満)、時間の関数としての受信電力の減衰の幅等)、準永続的および/または長期にわたって不安定である。それらの位置を考えると、これは理解できる。装置N2およびN6は、互いから比較的遠くにあるからである。例えば、直接見通しでない(NLOS)ノードN3とN4との間のリンクに関して、同様のグラフが得られると思われる。
【0055】
例えば(手首の位置の)N1と(右大腿部の位置の)N2との間などの無線リンクがあり、体の動き(あるいは体および/または手足の準繰り返し的または定期的な動き等)のせいで、リンクの性能が変動する。3番目のグラフは、例えば歩行時の胴に対して揺れ動く手の影響などを示している。従って、無線リンクは、性能が信頼できる期間(例えば、装置が直接見通し(LOS)状態で、電波の減衰のレベルが低く、従って受信電力が大きい時期)と、性能が低下している期間(例えば、受信信号の減衰が大きいリンク支障またはNLOSの時期)との間を交互に繰り返している。このリンクは、受信レベルが−45dBmと−70dBmとの間で振れている間欠的に信頼できるリンクであり、従来技術のボディエリアネットワークでは普通使用されそうにないが、メッセージ送信に使用できるように、評価および/または適格にすることを提案するものである。
【0056】
図4は、互いに通信する必要がある複数の無線装置を備える無線ボディエリアネットワークにおけるメッセージ送信方法のフロー図である。
【0057】
ステップ10において、無線装置Ni〜Nj(i≠j、iおよびjは1以上の整数)の少なくとも1つが受信したメッセージが処理され、対応する無線リンク(li,j)の瞬間品質が測定され、無線リンクが信頼できる時間、および信頼できない時間が推定される。推定時間における信頼性指標(Ti,j)が計算され、無線リンクは、信頼性指標に応じて、少なくとも2つのカテゴリに分類される。ボディエリアネットワークの無線装置の動きを考慮して、それらのカテゴリの中の1つは、間欠的に信頼できる無線リンクに関係する。このステップ12は、図に詳細に示されており、サブステップについては後で説明する。
【0058】
最後に、ボディエリアネットワークを通じたメッセージの送信に関するステップ14中に、メッセージは、「間欠的に信頼できる」無線リンクを介して、その同じ無線リンクが信頼できると見なされる期間中に伝達される。すなわち、分類結果は、ボディエリアネットワークにおけるルーティングにおいて考慮される。これによって、例えばエネルギー消費、メッセージ伝達速度、レイテンシ等に関して、ボディエリアネットワークのトラフィックを最適化できる。
【0059】
ステップ10に関して、例えば無線装置N1〜N6の間で交換されるメッセージは、サービスメッセージ(すなわち、ネットワークの構成および良好な管理に役立つメッセージ)、データメッセージ、またはこれらのメッセージの組み合わせである。
【0060】
さらに、これらのメッセージの周期的、疑似周期的、または可変の頻度での交換が想定されている。
【0061】
交換は、無線装置N1〜N6のそれぞれに関して、所定の時間に固有の「ハロー」タイプのメッセージを送信することによって行われる。従って、受信無線装置は、いつメッセージを受信すべきか、およびそのメッセージの送信元(すなわち、どの無線装置が送信装置か)について知っている。受信しないのは、「無線リンクの途切れ、または無線リンクなし」と見なされる。
【0062】
これらの交換を利用するために、種々のシナリオが想定されている。第1の例では、2つの無線装置間の直接通信は、無線リンクの品質推定に使用される。この場合は、「ユニキャスト」タイプのポイント・ツー・ポイント通信の状況であり、装置の中の1つが受信装置である。
【0063】
別の例では、「ブロードキャスト」タイプの直接通信が、送信装置に関する無線リンクの品質を推定するために使用される。この場合、すべての受信無線装置は、この通信を受信する。
【0064】
第3の例では、本発明を実施する無線装置は、他の2つの無線装置間の無線リンクの品質を推定するために、通信チャネル上の平文データのトラフィック、または交換をリッスンする。受信の肯定応答の交換から、メッセージが良好に受信されたことが分かる。
【0065】
第4の例では、1対の無線装置間の無線リンクの品質を推定するために、ボディエリアネットワーク上で、平文データを送信中のトラフィックまたは交換がリッスンされる。
【0066】
第1の実施形態では、RSSI、LQIまたはSNRなどの少なくとも1つの無線メトリックを測定することによって、無線リンクの瞬間品質が測定される。
【0067】
別の実施形態では、無線リンクの瞬間品質は、接続パラメータを測定することによって測定される。すなわち、測定は、送信パケットを受信し、次いで(同期が正しく取れたのを検出後に)復調した場合だけ、その復調の品質とは関係なく、接続パラメータを決定することによって行われる。
【0068】
このため、接続パラメータおよび/または無線指標は、任意の時間tに関して、ノードiとノードj(i≠j)との間で、値「1」または値「0」を有するバイナリ方式で決定してもよい。
【数1】
無線指標は、以下のように定義することができる。
【数3】
無線指標が閾値以上の場合
無線指標が閾値未満の場合
【0069】
接続パラメータは、例えばパケット受信率、すなわち、単位時間当たり受信したパケット数である。
【0070】
この接続パラメータは、次のように定義することができる。
任意の時間tにおける、ノードNiとNj(i≠j)との間の接続状態は、
【数1】
である。ここで、
【数2】
リンクが使用可能状態の場合、例えば、メッセージが成功した場合
リンクが使用不能状態の場合、例えば、メッセージが失敗した場合
である。
【0071】
接続パラメータおよび無線指標のバイナリの特徴を考慮すると、両方のパラメータは、同じボディエリアネットワークで同時に使用しうる。
【0072】
図5は、図2の3つのリンクN3〜N1、N6〜N1およびN2〜N1に関して、時間の関数としての受信電力の信号レベル/減衰のグラフ(左側のグラフ)と、パケットの良好な(良好でない)受信に基づいて決められる接続パラメータのグラフ(右側のグラフ)とを、それぞれ示す。
【0073】
従って、これは、無線装置N1に関する3つの近隣ノードN3、N6およびN2(図2参照)との瞬間リンク品質測定値の一例である。
【0074】
この無線装置N1は、例えば「ハロー」タイプの制御トラフィックを周期的に交換して、周期的かつそのたびに、その近くにあるノード(すなわち、通信範囲内にある装置3、6および2)についての接続状態を判定している。
【0075】
図5のグラフは、(図2の図解に従って)動く体に取り付けられた2.45GHzの無線装置を使用して、種々のノード間で制御トラフィックを周期的に交換(各ノードから60msごとにハローパケットを送信)する実験で得られたものである。これは、実験から得られたSNR値に基づくBLE(Bluetooth Low Emission)タイプの物理レイヤの抽象概念を使用したチャネル調査である。
【0076】
図5から分かるように、種々の「ハロー」パケットの送信頻度を知ることによって、装置N1は、その周辺の接続状態を周期的に測定することができる。
【0077】
装置N3とN1との間の接続のグラフ30は、少しのパケットロスだけでちょっとだけ中断される、準永続的で信頼できる接続を示している。
【0078】
装置N6とN1との間の接続のグラフ32は、パケットロスの多い、行き当たりばったりに近い接続を示している。
【0079】
装置N2とN1との間の接続のグラフ34は、良好な接続が、パケットロスの多い一定の期間にわたって中断されていることを示している。
【0080】
従って、種々の無線リンクに関係する接続性は、時間とともに変わり、主にチャネルの状態に依存し(左側のグラフ)、チャネルの状態については、伝播現象(例えば、信号の減衰、電波の遮蔽等)および人体の動きが、「ハロー」パケットの良好な受信またはロスに関して、ノード間でのデータ交換の性能に直接影響を与えている。
【0081】
次いで、これらの測定値はステップ12で処理され(図4参照)、瞬間および過去の接続性情報に基づいて種々の無線リンクの性能を表すために、この最初のステップ10の後に、種々の無線リンクに分類される。
【0082】
間欠的に信頼できる無線リンクを使用可能にするためには、少なくとも上述の2つのカテゴリに従って無線リンクを分類する必要がある。もちろん、間欠的に信頼できる無線リンクに複数のレベルを有するより細かい分類を採用することもできる。
【0083】
このために、ステップ12中に、2つのワイヤレス無線リンク装置に関するそれぞれの接続パラメータから、交信時間および交信間時間が判定され、間欠的交信の反復パターンの存在が、サブステップ12A中に判定される。
【0084】
交信時間
【数4】
は、例えばバイナリシーケンス
【数5】
の継続時間で、かつ
【数6】
である時間と計算することができる。ここで、γFは、所定の無線リンクの信頼性閾値である。これは、交信時間を、このリンクに関係するパケットの受信率が閾値γF以上であること、すなわち
【数13】
である期間と判定することに相当する。
【0085】
γFは、アプリケーションのメッセージ伝送要件に応じて選択される。
【0086】
この閾値は、主に、アプリケーションの制約および/または要件に依存する。従って、この閾値は、重大なアプリケーション(例えば、医療アプリケーション等)に関しては非常に高く、ゲーム、道案内等のタイプのアプリケーションに関しては緩くてもよい。
【0087】
医療または監視のアプリケーションに関しては、例えば、閾値γFは、95%以上に選択される方がよい。従って、メッセージの送信の成功が優先される。
【0088】
他方、ゲームまたは道案内向けの無線ボディエリアネットワークに関しては、この閾値γFは、80%に下げられてもよい。このタイプのアプリケーションでは、パケットロスはあまり気に掛けなくてもよい。
【0089】
交信間時間は、交信時間と同様に定義される。交信間時間
【数7】
は、バイナリシーケンス
【数5】
の継続時間で、かつN≦γUPである時間と計算され、ここで、γUPは、交信間時間中に許容される「1」の最大数である。
【0090】
図6および図7は、接続性
【数1】
の時間の関数としての変化の例を示す。図では、交信時間および交信間時間は、それぞれ決定論的アプローチおよび確率的アプローチを使用して、接続性情報に基づいて示されている。
【0091】
図6および図7から分かるように、無線リンクの交信時間は、リンクが確立されてから信頼できるままである(または接続されている)時間に相当する。交信間時間は、(1つ以上のパケットのロスに続いて)リンクが途切れた直後から、リンクが再確立されるまでに必要な時間に相当する。
【0092】
無線ボディエリアネットワークに内在する固有の特徴、特に体または手足の準周期的および繰り返しの動きに関連している特徴を考慮すると、これらの交信時間および交信間時間は、特に装着者の体の移動速度または姿勢に応じて、多かれ少なかれ、時間とともに「規則的」または周期的に変わると見なされる。
【0093】
従って、所与の無線リンクに関して、評価した交信時間および交信間時間が時間とともに安定的に変化する場合、(時間が賢明に選択されることを条件として)このリンクは、ほぼ確実に短期間信頼できるタイプ、すなわち間欠的に信頼できるタイプである。
【0094】
逆の状況で、評価した交信時間および交信間時間が評価ごとに非常に変わる場合、このリンクは、確実に信頼することはできない。
【0095】
1対のノード間の接続性測定値の履歴に基づいて、これらの交信時間および交信間時間を推定する他のアルゴリズムを想定してもよい。
【0096】
例えば、加工していない接続性情報(履歴H)からリンクの接続/切断の反復パターンの存在を判定するために、形状(パターン)認識技術、および/または自動学習技術(例えば、隠れマルコフモデル、ニューラルネットワーク等)を使用してもよい。
【0097】
従って、分類に進むためには、すべての無線リンク内の短期間信頼できるか、または間欠的に信頼できる(リンクが信頼できる状態と、リンクが信頼できない他の状態との間を、周期的かつ反復的に交互に代わる接続性を有する)リンクのサブセットを検出するために、一方では、これらの交信時間および交信間時間の評価が必要であり、他方では、長期にわたる評価の安定性の評価が必要である。
【0098】
サイズWの一時的観察ウィンドウを考慮すると、各時間tにおいて、サブステップ12Aの完了時に各無線装置Niは、通信範囲内に存在する各装置Nj(∀j∈n∧j≠i)に関する(過去の期間Wの間に測定した)接続性の状態を表す履歴
【数14】
を有する(サブステップ12B参照)。
【0099】
無線リンクの性能と支障状態との間には高い相関があるので、交信時間
【数4】
(または交信間時間
【数7】
)は、理想的には、バイナリシーケンス
【数15】
の中の連続する「1」(交信間時間の場合は「0」)の連続する数を数えることによって計算されるのがよい(図6の決定論的アプローチ)。
【0100】
しかし、信号の局所的なフェーディングがあると、リンクに支障がなく(LOS状態)、かつ送信電力が十分な場合でさえ、パケットロスは同様に起こりうる。
【0101】
無線チャネルの行き当たりばったりの面を考慮に入れるために、図7に示すように、確率的アプローチを採用して、交信期間中の所定数のパケットロスを許容できるようにしている。
【0102】
(現在および過去の推定時間から)最終的な交信時間および交信間時間を推定するために、サブステップ12C中で、指数平滑法が適用される。
【数8】
【数9】
上式で、
【数4】
(または
【数7】
)は、交信時間(または交信間時間)の瞬間(または現在の)推定値である。
【数10】
(または
【数11】
)は、交信時間(または交信間時間)の時間tにおける最終推定値である。最後に、
−αCTは、過去の推定値に大きいまたは小さい重要性を割り当てる忘却係数である。
【0103】
種々の推定値の安定性を評価するために、移動変動係数(MCV)
【数12】
が、サイズWVのウィンドウにわたって評価される。この係数の役割は、過去WVの交信時間および交信間時間の評価の幅(または逆に安定性)を評価することである。この移動変動係数は、サイズWVの移動ウィンドウにわたる推定値の標準偏差と平均との比率と定義される。
【0104】
従って、この移動変動係数
【数12】
がある閾値γVより小さい場合、推定値は長期的に安定していると見なされ、ひいては、規則的かつ周期的な交信時間および交信間時間を有する間欠的に信頼できるリンクの存在を示す。反対に、移動変動係数γVより大きい場合、推定値は変わり易すぎると見なされ、対応するリンクは、信頼できないに分類される。
【0105】
想定される変形形態に従って、一連の推定値(標準偏差、平均偏差、分散、スライディング平均、変動係数等)の安定性も評価してもよい。
【0106】
長期間または準永続的なリンク品質を評価するために、サブステップ12Dにおいて、例えばWMEWMA(指数加重移動平均を有するウィンドウ平均、Window Mean with Exponentially Weighted Moving Average)推定量が使用されている。
【0107】
各時間tにおいて、近隣ノードNjに関して期間Wにわたって測定された履歴
【数15】
から始めて、WMEWMA推定量は、パケット受信率(PRR)をまず評価する。
【数16】
【0108】
最後に、WMEWMA推定量は、長期間の無線リンクの品質を推定するために、移動指数平均に従って計算してもよい。
【数17】
上式で、
【数18】
は、長期間の無線ノード間または装置間(Ni〜Nj)のリンク(i〜j)の品質の時間tにおける推定値または評価値である。
αLTは、過去の推定値に大きいまたは小さい重要性を割り当てることを可能にする忘却係数である。
最後に、Wは、観察ウィンドウのサイズである。
【0109】
こうして、サブステップ12E中に、各無線リンクのタイプ(
【数19】
)は、3つの主なクラスに従って、正確に判定することができる、すなわち、WMEWMA推定量のおかげで、長期間にわたってまたは準永続的に信頼できるリンクに判定でき、移動変動係数
【数12】
のおかげで、間欠的または短期間信頼できるリンクに判定でき、そして信頼できないリンクに判定できる。
【0110】
上記の情報から、サブステップ12F中に、無線装置の近隣テーブルが更新される。このテーブルは、メモリに格納されており、通信範囲内にある種々の近隣無線装置/ノードのリストを、例えば各無線リンクのタイプの評価(信頼できる、間欠的に信頼できる、または信頼できない)および属性とともに有する。
【0111】
各無線装置に格納されるこの近隣テーブルは、その後、次のことに使用するのがよい。
1)ある種のアプリケーションの制約(例えば、エネルギー、遅延)に応じて、送信先までの最適経路を計算するオポチュニスティック型ルーティングアルゴリズム。
2)送信先ノードまでに、ある種の無線リンクの出現を予測するオポチュニスティック型適応中継アルゴリズム。または、
3)無線リンクの使用可能または使用不能に応じて、ネットワークの種々のノード間の相対的距離の測定に関して最適スケジューリングを行う電波探知アルゴリズム。
【0112】
本発明はまた、ボディエリアネットワークを構成し、かつ互いに通信する必要がある複数の無線装置を備える無線ボディエリアネットワークを通じてメッセージを送信する装置50にも関する。図8は、図4の方法を実施するための、本発明の装置50のブロック図である。
【0113】
この送信装置50は、一方に、無線ボディエリアネットワーク用の無線リンクの品質を評価するように、すなわちステップ10およびステップ12を実行するように構成された装置52を備え、他方に、間欠的に信頼できる無線リンクが信頼できると見なされる期間中に、間欠的に信頼できる無線リンクを介してメッセージを伝達または中継するように構成された手段54を備えている。この手段54は、無線リンクの品質を評価する手段52に接続されており、この手段52が作り出す結果を使用する。
【0114】
無線リンクの品質評価装置52は、上述の方法のステップ10およびステップ12を実行するように構成されている。この品質評価装置52は、例えば、上記の方法の種々のステップを実行し、結果を例えば近隣テーブルに格納するように構成されたプロセッサおよびメモリを有し、ボディエリアネットワークBANの1つ以上の無線装置N1〜N6に組み込まれるユニットである。もちろん、このユニットは、1つのセンサおよび/または無線通信部に特有でもよいし、また既に存在する無線装置のプロセッサおよびメモリから構成してもよい。
【0115】
次に、図9および図10を参照する。
【0116】
図9は、ユーザの体の種々の場所にあるN1〜N12の符号が付いた12の無線装置を有するユーザUを示す。
【0117】
特に興味深いのは無線装置またはノードN1であり、このN1は、この後、例えば外部ネットワーク6(この図には図示せず)と通信するために、すべてのメッセージが伝達されなければならない集約ノードである。
【0118】
図10は、3つのグラフを示し、その中の上のグラフは、長期間品質推定量
【数18】
を示し、中のグラフは、上に定義した交信時間および交信間時間を示し、下のグラフは移動変動係数
【数12】
のグラフを示す。
【0119】
各グラフは、時間の関数としてこれらの値の変化を示すために、ノード間/無線装置間N1〜N8、N1〜N2、N1〜N4およびN1〜N3のリンクにそれぞれ、再分割されている(3つの異なる移動速度(1m/s、2m/sおよび3m/s)に関しては、図9も参照されたい)。
【0120】
この例では、各時間間隔(合計で12間隔ある)は、無線リンクおよび規則的な体の移動速度が関わるシミュレーションに相当する。各間隔は、264秒の継続時間を有し、60msごとの1つのハローパケットの頻度で、無線装置間における4400の「ハロー」パケットの交換に相当することに留意されたい。
【0121】
最初の3つの時間間隔中は、無線リンク(N1〜N8)に対応する品質測定値について、3つの移動速度(1m/s〜3m/s)に関して検討されている(このリンクは、短期間信頼できると見なされている)。
【0122】
図10においては、リンクが長期間信頼できるかどうかを判定するために、90%閾値が定められている。WMEWMA推定量
【数18】
を使用すると、リンク品質は約80%であり、短期間のリンクの品質評価はBANの動きによく合致し、変動係数が非常に小さい(<0.1)交信時間および交信間時間を明示していることに留意されたい。この場合、リンクは、「間欠的に信頼できる」または「短期間信頼できる」に分類される。
【0123】
次の3つの時間間隔中は、無線リンク(N1〜N2)に対応する品質測定値が検討されている(ノードN2は、ノードN1に対して体の裏側の位置にある)。リンクの長期間の品質は平均で50%程度であり、交信時間および交信間時間の推定値は、変動係数が非常に大きく、安定していないことに留意されたい。それ故、リンクは、「信頼できない」に分類される。
【0124】
無線リンク(N1〜N4)(間欠的に信頼できるかまたは短期間信頼できる)および(N1〜N3)(長期間信頼できる)に関連する測定値について、次に検討する。この場合もやはり、本発明の方法は、種々の速度および種々のリンクタイプによく適合し、それらの特徴に応じて、長期間と短期間の両方における種々の無線リンクの性能判定およびその分類が可能になり、その後のより上位のプロトコル(例えば、ルーティング、中継、予測等)での使用を可能にするものである。
【0125】
図4の方法のステップ14は、一方では、間欠的に信頼できる無線リンクの存在についての近隣テーブルに基づく確率的予測を視野に、事前に決定された種々の近隣テーブルを使用するためと、いくらかでもそのような無線リンクが存在すれば、特に、体の動き、および人体の周りおよび直ぐ近くの伝播現象(例えば、無線リンクの遮蔽および支障、マルチパス伝播、人体による電波の吸収等)に直面しているより上位のプロトコルの性能、およびロバストネスの向上を視野に、メッセージ送信のために、それらのリンクを使用するためにある。
【0126】
従って、ボディエリアネットワークの各無線装置Ni(∀i∈n)は、その近隣ノード(または通信範囲内のノード)Nj(∀j∈n∧j≠i)のそれぞれに関して、nタプレット
【数20】
を有する、局所的に入手可能な近隣テーブルを有する。
ここで、
【数18】
は、リンク(Ni〜Nj)の長期間の品質である。
【数19】
は、リンク(Ni〜Nj)のタイプである:長期間信頼できる、短期間信頼できる、信頼できない。
【数10】
は、リンク(Ni〜Nj)に関する推定交信時間である。
【数11】
は、リンク(Ni〜Nj)に関する推定交信間時間である。
【数12】
は、推定値
【数10】
および
【数11】
に関係する幅(または安定性)を表す移動変動係数である。
【0127】
この情報は、より上位のプロトコルによって、主に次のことに使用される。
−エネルギー消費、レイテンシ、データ配信率等に関して、ルーティングおよび中継プロトコルの性能を最大にすることを目的に、短期間信頼できるリンクの存在を特定する。
−(情報
【数19】
、
【数10】
、
【数11】
および
【数12】
から)短期間信頼できるリンクの出現、および/または消滅を予測できるおかげで、ノード間の距離測定のスケジューリングを最適化できることによって、協調位置アルゴリズムの性能を最大にする。
【0128】
メッセージの送信に関して、ボディエリアネットワークの無線リンクの信頼性が分かったので、メッセージは、今度は、間欠的に信頼できる無線リンクが信頼できると見なされる期間中、間欠的に信頼できる無線リンクを介して伝達した方がよい。
【0129】
想定されるアプリケーションに応じて、エネルギー消費、レイテンシ、データ配信率のグループの中のパラメータの少なくとも1つを最適化するために、間欠的に信頼できる無線リンクを介したメッセージの送信が優先される。
【0130】
さらに、アプリケーションによっては、無線装置間の距離の測定は、間欠的に信頼できるリンクの出現および/または消滅の予測を考慮してスケジュールされる方がよい。
【0131】
次に説明例を挙げる。アプリケーションおよびメッセージの送信に割り当てられた優先規準/パラメータに応じて、ノード/無線装置レベルにおける種々の近隣テーブルは、様々なやり方で使用してもよい。
【0132】
データパケットの受信または非受信に関する情報から、各ノードは、その近隣テーブルの中に通信範囲内の無線ノードのリストを保持し、対応する無線リンクのそれぞれに関してコストメトリックを計算する。このコストメトリックは、例えばデータ配信率、データ伝達遅延またはエネルギー消費などのより重要なアプリケーションの制約により、主として決まり、各無線リンクまたは一連のリンク(または経路)の信頼度を示す。
【0133】
n台の無線装置から構成されているボディエリアネットワークを考慮する。(伝送方向を考慮した)リンクの最大数はn(n−1)であり、1対のノードNiとNj(i≠j)の間の各既存の論理リンクIi,jには、
【数21】
で表されるコストメトリックが割り当てられる。
【0134】
アプリケーションの制約に応じて、このコストメトリックについて、2つの主な式を想定しうる。
1)パケットロスを許容できない重要なアプリケーション向けの推定配信率(PDR)メトリック。または、
2)エネルギーおよび遅延に関しての制約が厳しいアプリケーション向けの平均再送回数(ANR)メトリック。
【0135】
以下に挙げる非限定的な例は、PDRメトリックを想定している。ANRメトリックも同様に適用しうる。
【0136】
PDR(確率的配信率)メトリックは、データ配信率(または長期間リンク品質)と定義され、無線リンク品質推定量によって判定されてもよい。WMEWMA推定量を考慮すると、各リンクli,j(i≠j)に関係するコストメトリックは、次のように定められる。
【数22】
ここで、
【数18】
は、リンクli,jの(WMEWMAを使用する)長期間の推定品質である。
【0137】
この場合、各時間tと、所与の送信元ノードiおよび送信先ノードjとを考慮すると、これらの2つのノードを接続する最適経路Ri,jは、データパケット配信に関して通信の終端間信頼性を最大にする経路であると定められる。すなわち、
【数23】
である。このように計算され、たぶんネットワークの1組のリンクから構成される経路Ri,jは、通信の信頼性に関して全体(または終端間)価値を最大にする経路である。
【0138】
この経路は、当業者に公知のダイクストラ最短経路計算アルゴリズムの修正版を使用して計算されてもよい。
【0139】
図11は、間欠的に信頼できるリンクを使用するオポチュニスティック型ルーティングで得られる、このルーティングメトリックの性能への影響を示すアプリケーション例を示す。
【0140】
図11は、図9のBANに関する接続性のグラフを表し、ノードN1は、ネットワークのコーディネータ/集約ノードと見なされ、各リンクは、データ配信率(または長期間の通信の信頼性を表すリンクの品質
【数18】
)に関係するコストメトリックを割り当てられている。N5がコーディネータN1へのデータパケットの送信を望んでいると仮定する。
【0141】
このグラフでは、実線の接続Ii,jは、長期間信頼できる無線リンクを表し、破線の接続は、間欠的に信頼できるリンクを表す。線のそばの数字は、無線リンクのコスト、すなわち
【数21】
を表わしている。
【0142】
長期間信頼できるリンクだけを使用する昔ながらのPDRルーティングメトリックを考慮すると、最適経路は、データ配信確率を最大にする経路である。
【0143】
その結果、選択される最適経路は、長さ3の
【数24】
であり、トータルコスト(または全体の経路に関する終端間信頼性)は、
【数25】
に等しくなる。
【0144】
その結果、たぶん分かるように、このメトリックは、データ配信確率を最大にする傾向にあるが、伝達経路の長さを大幅に増加し、最終的に、伝達遅延およびエネルギー消費を犠牲にしている。
【0145】
長期間信頼できる無線リンクおよび間欠的に(すなわち短期間)信頼できる無線リンクを考慮する場合も、ルーティングプロセスを、やはり最適化しうる。
【0146】
本発明の方法を使用することにより、ノード5は、コーディネータ1の方向に一時的に信頼できる経路が存在する(例えば、図11におけるノードN5とN1との間の破線の接続)と判定できる。
【0147】
その結果、オポチュニスティック型または適応ルーティングアルゴリズムが、次のように動作する。
所与の時間にこの一時的リンクが存在し、それをノードN5が検出した場合、データは、コーディネータN1に直接送られる。
検出しない場合、経路が(PDRメトリックを使用して)計算され、データは、コーディネータの方向にノードからノードへ中継される。従って、可能な場合、すなわち幾らかでもそれらの出現を予測しうる場合、間欠的に信頼できるリンクを介したメッセージの送信が優先される。
【0148】
それ故、ルーティング経路の長さを最短にして、最終的にエネルギー消費およびデータ伝達遅延を最小限にするために、短期間信頼でき安定している種類の無線リンクの存在をオポチュニスティックに使用する。
【0149】
あるいは、間欠的に信頼できる直接リンクが、送信元ノードと送信先ノードとの間に検出された場合、そのリンクが出現または存在するときだけ、データを送信するようにしてもよい。
【0150】
そのリンクが一時的に消滅すると、送信元ノードは、(代替の信頼できる経路が存在する場合でさえ)間欠的に信頼できるリンクが再び現れるまで、その送信を遅らせるように決定してもよい。
【0151】
従来のルーティングアーキテクチャに対する本発明の方法の有利さを評価するために、シミュレーションを行った。
【0152】
BANの各ノード/無線装置がコーディネータ(ノードN1)の方向にデータパケットを周期的に送信する(図9のシナリオ参照)、マルチポイント・ツー・ポイント(MP2P)トラフィックについて検討する。このデータパケットは、例えば、距離測定値(例えば、電波探知アプリケーション)または人体に関する情報(例えば、医療監視アプリケーション)を有してもよい。
【0153】
次に、2つの通信アーキテクチャについて、評価および比較を行う。
−ルーティングメトリックとしてPDRを使用する複数ホップのアーキテクチャ(以下「メッシュPDR」アーキテクチャと称する)。このアーキテクチャでは、各ノードは、コーディネータへの終端間データ配信確率を最大にする経路を決定する。これは、長期間信頼できる無線リンク(図11の実線のリンク)だけを使用する標準の方式である。
−ルーティングメトリックとしてPDRを使用するオポチュニスティック型、または適応複数ホップのアーキテクチャ(以下『メッシュDPR+「短期間」リンク』アーキテクチャと称する)。このアーキテクチャでは、各ノードは次のように決定する。
1)間欠的に信頼できるリンクを考慮して、コーディネータN1への一時的な信頼できる直接経路。または適用できる場合、
2)コーディネータN1へのデータの配信確率を最大にする経路。
【0154】
さらに、これらのアーキテクチャはすべて、再送メカニズムを使用しない通信モードと、ダイクストラアルゴリズムを使用する経路計算とを利用すると仮定する。
【0155】
次の3つの性能メトリックが、特に重要である。
1)全体のエネルギー消費。
2)コーディネータが受信したパケット数と総送信パケット数の比率として計算されるデータ配信率。
3)データ伝達遅延。
【0156】
全体のエネルギー消費は、無線装置が送受信したパケット数と、これらのノードが使用可能状態である期間とに比例して計算される。
【0157】
図12、図13および図14に、得られたシミュレーションの結果をそれぞれ示す(BANの速度は1m/s、「ハロー」パケット送信期間は60ms、および送信電力は−20dBmである)。
【0158】
図12は、ノード当たりのデータ配信率を示す。まず、「メッシュPDR」アーキテクチャ(標準の複数ホップの通信アーキテクチャ)に関して、(ノードN2〜N13からコーディネータN1への)データ配信率は、平均で94.89%である。
【0159】
間欠的に信頼できる無線リンクを考慮し、それらが現れる時に、それらの無線リンクを介するメッセージの送信を優先する本発明の方法(「メッシュPDR+短期間」アーキテクチャ)を使用しても、平均データ配信率が94.28%で、従来のルーティングアーキテクチャに対して性能の大幅な損失を生じない。
【0160】
他方、エネルギー消費の観点から、これらのアーキテクチャを分析すると、違いが見られる。
【0161】
図13は、ノード当たりのエネルギー消費を示す。まず、この消費が均一でないことに留意されたい。複数ホップのアーキテクチャでは、幾つかのノードは、自ノードからのパケットの送信と同様に、近隣のノードのパケットを中継する必要があり、ひいては、全体のエネルギー消費およびデータ伝達遅延を増加する。
【0162】
図13の従来の「メッシュPDR」アーキテクチャに関しては、3つの大幅なエネルギー消費のピークが存在することが分かる。それらのピークは、動く手足かつ体の下側に位置しているノードに対する主な中継ノードであるノードN3およびノードN1と、(体の後かつ頭の高さに位置しているノードに対する主な中継ノードである)ノード7に対応している。
【0163】
他方、新しい「メッシュPDR+短期間リンク」アーキテクチャは、標準「メッシュPDR」アーキテクチャに比べて全体のエネルギー消費の約30%の節約を可能にするとともに、同じデータ配信率を保証している(図12参照)。
【0164】
最後に、図14は、コーディネータN1までのノード当たりの平均ホップ数を示す。このメトリックは、ルーティング経路の長さを反映し、得られるデータ伝達遅延に直接影響を与える。
【0165】
本発明の方法を実施すると、間欠的に信頼できるリンクを機敏に使用するおかげで、「メッシュPDR」アーキテクチャに比べて、ルーティング経路の長さを全体で約24%減少できることが分かる。この改善は、場合(例えば、リンクN1〜N8)によっては50%に達することがあり、ひいては、データ伝達遅延を大幅に減少する。
【0166】
従って、本発明の方法が、伝播状態の動的変動、および/または人体の動きにもかかわらず、高い追加のコストを生じることなく、接続性、エネルギー消費、レイテンシ、信頼性、データ配信率、通信の信頼性、およびプロトコルのロバストネスに関して、無線装置を有するボディエリアネットワークの性能を改善できることは明らかである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディエリアネットワークを構成し、相互に通信する必要がある、少なくとも第1の無線装置および第2の無線装置(N1、N2、N3、N4、N5、N6)を備え、前記2つの無線装置のうちの少なくとも一方は他方に対して移動しがちである無線ボディエリアネットワークに関する、無線リンクの品質評価方法であって、
−前記無線装置(N1、N2、N3、N4、N5、N6)の中の少なくとも1つの無線装置が受信するメッセージを有効に利用して、対応する無線リンク(Ii,j)の瞬間品質を測定し、無線リンクが信頼できる時間、および無線リンクが信頼できない時間を推定し、
−推定時間における信頼性指標を計算し、
−前記ボディエリアネットワークの前記無線装置の移動性を考慮して、前記信頼性指標に応じて、前記無線リンクが、間欠的に信頼できる無線リンクに関連するカテゴリを含む少なくとも2つのカテゴリ(Ti,j)に分類することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記無線装置間で交換される前記メッセージは、サービスメッセージ、データメッセージ、またはこれらのメッセージの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メッセージは、周期的または疑似周期的に交換されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記メッセージは、可変の頻度で交換されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記無線リンクの瞬間品質は、RSSI、LQIまたはSNRなどの少なくとも1つの無線指標を測定することによって評価されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記無線リンクの瞬間品質は、接続パラメータを測定することによって評価されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記接続パラメータおよび/または前記無線指標は、任意の時間tに関して、ノードiとノードj(i≠j)との間で、値「1」または値「0」を有するバイナリ方式で決定され、
【数1】
であることを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
【数2】
リンクが使用可能状態の場合、例えば、メッセージが成功した場合
リンクが使用不能状態の場合、例えば、メッセージが失敗した場合
であることを特徴とする請求項6と組み合わせた請求項7に記載の方法。
【請求項9】
【数3】
無線指標が閾値以上の場合
無線指標が閾値未満の場合
であることを特徴とする請求項5または6と組み合わせた請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2つのカテゴリに従って前記無線リンクを分類するために、2つの個別の無線装置(Ni、Nj)に関する前記接続パラメータまたは前記無線指標から、交信時間および交信間時間が判定され、かつ間欠的交信の反復パターンの存在が判定されることを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記交信時間
【数4】
は、バイナリシーケンス
【数5】
の継続時間で、かつ
【数6】
である時間と計算され、ここで、γFは、前記無線リンクの信頼性閾値であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記交信間時間
【数7】
は、バイナリシーケンス
【数5】
の継続時間で、かつN≦γUPである時間と計算され、ここで、γUPは、前記交信間期間中に許容される「1」の最大数であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
最終的な交信時間および交信間時間は、次の式から計算され、
【数8】
【数9】
上式で、
−
【数4】
または
【数7】
は、それぞれ交信時間または交信間時間の瞬間推定値である。
−
【数10】
または
【数11】
は、それぞれ交信時間または交信間時間の、時間tにおける最終推定値であり、
−αCTは、忘却係数であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
移動変動係数
【数12】
は、サイズWVの移動ウィンドウにわたる前記推定値の標準偏差と平均との比率と定義され、サイズWVのウィンドウにわたって計算され、閾値γVと比較され、前記移動変動係数
【数12】
が、前記閾値γV未満の場合、間欠的に信頼できるに分類され、前記閾値以上である場合、信頼できないとまではいかなくても、信頼できないに分類されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
各無線装置に関して、前記無線リンクの信頼性は、近隣テーブル(12F)に格納されることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
ボディエリアネットワークを構成し、相互に通信する必要がある、少なくとも第1の無線装置および第2の無線装置(N1、N2、N3、N4、N5、N6)を備え、前記2つの無線装置のうちの少なくとも一方は他方に対して移動しがちである無線ボディエリアネットワークに関する、無線リンクの品質評価装置であって、請求項1〜15のいずれかに記載の方法を実施し、前記装置は、
−前記無線装置(N1、N2、N3、N4、N5、N6)の中の少なくとも1つの無線装置が受信するメッセージを有効に利用して、対応する無線リンク(Ii,j)の瞬間品質を測定し、
−無線リンクが信頼できる時間および無線リンクが信頼できない時間を推定し、
−前記推定時間における信頼性指標を計算し、
−前記ボディエリアネットワークの前記無線装置の移動性を考慮して、前記信頼性指標に応じて、前記無線リンクを、間欠的に信頼できる無線リンクに関連するカテゴリを含む少なくとも2つのカテゴリ(Ti,j)に分類するように構成された手段を備えることを特徴とする装置。
【請求項17】
無線ボディエリアネットワークを通じたメッセージ送信方法であって、無線ボディエリアネットワークの無線リンクの品質は、ルーティングまたは中継のために請求項1〜15の方法によって評価され、メッセージの送信に関して、前記メッセージが間欠的に信頼できる無線リンクを介して伝達されることを特徴とするメッセージ送信方法。
【請求項18】
前記メッセージは、前記間欠的に信頼できる無線リンクが信頼できると見なされる期間中に伝達されることを特徴とする請求項17に記載のメッセージ送信方法。
【請求項19】
エネルギー消費、レイテンシ、データ配信率のグループの中のパラメータの少なくとも1つを最適化するために、間欠的に信頼できる無線リンクを介したメッセージの送信が優先されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記無線装置間の距離の測定は、前記間欠的に信頼できるリンクの出現および/または消滅の予測を考慮してスケジュールされることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法を実施する無線ボディエリアネットワークを通じたメッセージ送信装置であって、請求項1〜15のいずれか1項の方法を使用する前記無線装置間のパケットのルーティング、データ交換、および/または中継のために、無線ボディエリアネットワークの無線リンクの品質を評価するように構成された手段と、間欠的に信頼できる無線リンクが信頼できると見なされる期間中に、前記間欠的に信頼できる無線リンク介してメッセージを伝達するように構成されている手段とを備えることを特徴とする装置。
【請求項1】
ボディエリアネットワークを構成し、相互に通信する必要がある、少なくとも第1の無線装置および第2の無線装置(N1、N2、N3、N4、N5、N6)を備え、前記2つの無線装置のうちの少なくとも一方は他方に対して移動しがちである無線ボディエリアネットワークに関する、無線リンクの品質評価方法であって、
−前記無線装置(N1、N2、N3、N4、N5、N6)の中の少なくとも1つの無線装置が受信するメッセージを有効に利用して、対応する無線リンク(Ii,j)の瞬間品質を測定し、無線リンクが信頼できる時間、および無線リンクが信頼できない時間を推定し、
−推定時間における信頼性指標を計算し、
−前記ボディエリアネットワークの前記無線装置の移動性を考慮して、前記信頼性指標に応じて、前記無線リンクが、間欠的に信頼できる無線リンクに関連するカテゴリを含む少なくとも2つのカテゴリ(Ti,j)に分類することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記無線装置間で交換される前記メッセージは、サービスメッセージ、データメッセージ、またはこれらのメッセージの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メッセージは、周期的または疑似周期的に交換されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記メッセージは、可変の頻度で交換されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記無線リンクの瞬間品質は、RSSI、LQIまたはSNRなどの少なくとも1つの無線指標を測定することによって評価されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記無線リンクの瞬間品質は、接続パラメータを測定することによって評価されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記接続パラメータおよび/または前記無線指標は、任意の時間tに関して、ノードiとノードj(i≠j)との間で、値「1」または値「0」を有するバイナリ方式で決定され、
【数1】
であることを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
【数2】
リンクが使用可能状態の場合、例えば、メッセージが成功した場合
リンクが使用不能状態の場合、例えば、メッセージが失敗した場合
であることを特徴とする請求項6と組み合わせた請求項7に記載の方法。
【請求項9】
【数3】
無線指標が閾値以上の場合
無線指標が閾値未満の場合
であることを特徴とする請求項5または6と組み合わせた請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2つのカテゴリに従って前記無線リンクを分類するために、2つの個別の無線装置(Ni、Nj)に関する前記接続パラメータまたは前記無線指標から、交信時間および交信間時間が判定され、かつ間欠的交信の反復パターンの存在が判定されることを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記交信時間
【数4】
は、バイナリシーケンス
【数5】
の継続時間で、かつ
【数6】
である時間と計算され、ここで、γFは、前記無線リンクの信頼性閾値であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記交信間時間
【数7】
は、バイナリシーケンス
【数5】
の継続時間で、かつN≦γUPである時間と計算され、ここで、γUPは、前記交信間期間中に許容される「1」の最大数であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
最終的な交信時間および交信間時間は、次の式から計算され、
【数8】
【数9】
上式で、
−
【数4】
または
【数7】
は、それぞれ交信時間または交信間時間の瞬間推定値である。
−
【数10】
または
【数11】
は、それぞれ交信時間または交信間時間の、時間tにおける最終推定値であり、
−αCTは、忘却係数であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
移動変動係数
【数12】
は、サイズWVの移動ウィンドウにわたる前記推定値の標準偏差と平均との比率と定義され、サイズWVのウィンドウにわたって計算され、閾値γVと比較され、前記移動変動係数
【数12】
が、前記閾値γV未満の場合、間欠的に信頼できるに分類され、前記閾値以上である場合、信頼できないとまではいかなくても、信頼できないに分類されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
各無線装置に関して、前記無線リンクの信頼性は、近隣テーブル(12F)に格納されることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
ボディエリアネットワークを構成し、相互に通信する必要がある、少なくとも第1の無線装置および第2の無線装置(N1、N2、N3、N4、N5、N6)を備え、前記2つの無線装置のうちの少なくとも一方は他方に対して移動しがちである無線ボディエリアネットワークに関する、無線リンクの品質評価装置であって、請求項1〜15のいずれかに記載の方法を実施し、前記装置は、
−前記無線装置(N1、N2、N3、N4、N5、N6)の中の少なくとも1つの無線装置が受信するメッセージを有効に利用して、対応する無線リンク(Ii,j)の瞬間品質を測定し、
−無線リンクが信頼できる時間および無線リンクが信頼できない時間を推定し、
−前記推定時間における信頼性指標を計算し、
−前記ボディエリアネットワークの前記無線装置の移動性を考慮して、前記信頼性指標に応じて、前記無線リンクを、間欠的に信頼できる無線リンクに関連するカテゴリを含む少なくとも2つのカテゴリ(Ti,j)に分類するように構成された手段を備えることを特徴とする装置。
【請求項17】
無線ボディエリアネットワークを通じたメッセージ送信方法であって、無線ボディエリアネットワークの無線リンクの品質は、ルーティングまたは中継のために請求項1〜15の方法によって評価され、メッセージの送信に関して、前記メッセージが間欠的に信頼できる無線リンクを介して伝達されることを特徴とするメッセージ送信方法。
【請求項18】
前記メッセージは、前記間欠的に信頼できる無線リンクが信頼できると見なされる期間中に伝達されることを特徴とする請求項17に記載のメッセージ送信方法。
【請求項19】
エネルギー消費、レイテンシ、データ配信率のグループの中のパラメータの少なくとも1つを最適化するために、間欠的に信頼できる無線リンクを介したメッセージの送信が優先されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記無線装置間の距離の測定は、前記間欠的に信頼できるリンクの出現および/または消滅の予測を考慮してスケジュールされることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法を実施する無線ボディエリアネットワークを通じたメッセージ送信装置であって、請求項1〜15のいずれか1項の方法を使用する前記無線装置間のパケットのルーティング、データ交換、および/または中継のために、無線ボディエリアネットワークの無線リンクの品質を評価するように構成された手段と、間欠的に信頼できる無線リンクが信頼できると見なされる期間中に、前記間欠的に信頼できる無線リンク介してメッセージを伝達するように構成されている手段とを備えることを特徴とする装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−222812(P2012−222812A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−76323(P2012−76323)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(510132347)コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ (51)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(510132347)コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ (51)
【Fターム(参考)】
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