説明

無線モジュール

【課題】改造による違法な電波の送信を防止することができる無線モジュール20を提供する。
【解決手段】本発明の無線モジュール20は、電波を送信するための電子部品が搭載されているプリント基板が筐体で封止されており、筐体が開封された場合に、開封の痕跡を作成する痕跡作成部206と、電波の送信の可否を示す送信フラグを格納する送信フラグ格納部203と、痕跡作成部206によって作成された開封の痕跡が存在する場合に、送信フラグ格納部203内の送信フラグを、電波の送信を禁止する値に変更する送信フラグ変更部205と、外部から電波の送信を指示された場合に、送信フラグ格納部203内の送信フラグが電波の送信許可を示す値であれば、外部からの指示に従って電子部品を制御して電波を送信し、送信フラグ格納部203内の送信フラグが電波の送信禁止を示す値であれば、電波の送信を行わない送信制御部200とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線装置の違法改造を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電波は目に見えないため、予め決められた周波数および出力で送信しないと、その周波数帯の電波を使用する他の通信を妨害する場合がある。そのため、電波法では、周波数帯毎に送信可能な電波の最大出力を規制している。例えば、電波を用い非接触で情報をやり取りするRFID(Radio Frequency IDentification)システムにおいても、リーダライタによって出力可能な電波の強度が電波法により規制されている。
【0003】
しかし、製造メーカが法律で定められた規格を満たす無線機を製造して販売したとしても、それを購入したユーザが、送信電波の出力を上げるために無線機(特に電波を出力するための回路を含む無線モジュールの部分)を改造する場合がある。そのため、電波法では、無線モジュールを容易に開封できないような構造にすることをメーカ側に義務付けている。
【0004】
例えば、下記の特許文献1には、開封が困難であり、かつ、開封された場合にその痕跡を確実に残す封印構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−73512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された構造を無線モジュールに適用すれば、無線モジュールの開封が困難となると共に、開封の痕跡を後から確認することができるが、無線モジュールの開封がまったく不可能になるわけではない。そのため、ユーザは、無線モジュールを開封して違法な改造を行うことで、無線モジュールの電波の出力を上げることが可能となる。
【0007】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、無線モジュールの改造による違法な電波の送信を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、例えば、電波を送信するための電子部品が搭載されているプリント基板が筐体で封止された無線モジュールであって、
前記筐体が開封された場合に、開封の痕跡を作成する痕跡作成部と、
電波の送信の可否を示す送信フラグであって、初期値が電波の送信許可を示す値である送信フラグを格納する送信フラグ格納部と、
前記痕跡作成部によって作成された開封の痕跡が存在する場合に、前記送信フラグ格納部内の送信フラグを、電波の送信禁止を示す値に変更する送信フラグ変更部と、
外部から電波の送信を指示された場合に、前記送信フラグ格納部内の送信フラグを読み出し、読み出した送信フラグが電波の送信許可を示す値である場合に、外部からの指示に従って前記電子部品を制御して電波を送信し、読み出した送信フラグが電波の送信禁止を示す値である場合に、電波の送信を行わない送信制御部と
を備えることを特徴とする無線モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無線モジュールの改造による違法な電波の送信を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るRFIDシステム10の構成を示すシステム構成図である。
【図2】RFIDシステム10の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図3】無線モジュール20の内部構造の一例を示す分解斜視図である。
【図4】無線モジュール20の外観の一例を示す概念図である。
【図5】開封検出回路25の詳細を説明するための概念図である。
【図6】係止突起37の上面図(a)および断面図(b)である。
【図7】係止孔31の断面図(a)および下面図(b)である。
【図8】係止孔31と係止突起37とが係合する過程を説明するための概念図である。
【図9】係止孔31と係止突起37とが係合する過程を説明するための概念図である。
【図10】無線モジュール20が開封された場合の係止突起37の状態の一例を説明するための概念図である。
【図11】無線モジュール20が開封後に再び封止された場合の係止突起37の状態の一例を説明するための概念図である。
【図12】開封された場合の係止突起37の状態の他の例を説明するための概念図である。
【図13】無線モジュール20が開封後に再び封止された場合の係止突起37の状態の他の例を説明するための概念図である。
【図14】無線モジュール20によって実行されるフラグ制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図15】無線モジュール20によって実行される送信制御処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るRFIDシステム10の構成を示すシステム構成図である。RFIDシステム10は、制御端末11および無線モジュール20を備える。制御端末11と無線モジュール20とはケーブル12で接続されている。
【0013】
無線モジュール20にはアンテナ13が接続され、無線モジュール20およびアンテナ13はリーダライタ16を構成する。無線モジュール20は、制御端末11からの命令に応じて、アンテナ13を介して、物品14に取り付けられたRFタグ15に電波を送信することにより、RFタグ15内のデータを読み取って制御端末11へ送ったり、制御端末11から受け取ったデータをRFタグ15内に書き込む。本実施形態において、無線モジュール20は、違法改造の防止を目的として、容易に開封できないような構造にすることが電波法により義務付けられている。
【0014】
無線モジュール20は、インターフェイス(I/F)21、マイクロコンピュータ22、無線通信回路23、不揮発メモリ24、および開封検出回路25を有する。マイクロコンピュータ22は、インターフェイス21を介して制御端末11から受け取った命令に応じて、無線通信回路23、不揮発メモリ24、および開封検出回路25を制御する。
【0015】
不揮発メモリ24は、例えばEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)やフラッシュROM等であり、電源が供給されていなくてもデータを保持することが可能である。
【0016】
無線モジュール20は、筐体で覆われており、開封検出回路25は、当該筐体が開封された場合に、後述する方法で開封の痕跡を残す。無線通信回路23は、マイクロコンピュータ22の制御に応じてアンテナ13を介して電波を送信したり、アンテナ13を介して電波を受信する。
【0017】
図2は、RFIDシステム10の機能構成の一例を示すブロック図である。無線モジュール20は、送受信制御部200、無線通信部201、管理フラグ格納部202、送信フラグ格納部203、管理フラグ変更部204、送信フラグ変更部205、および痕跡作成部206を有する。
【0018】
無線通信部201は、送受信制御部200からの指示に従って図1に示した無線通信回路23を制御し、アンテナ13を介して電波を送信したり、アンテナ13を介して電波を受信する。
【0019】
送信フラグ格納部203には、無線通信回路23による電波の送信を許可するか否かを示す送信フラグが格納されている。送信フラグには、無線通信回路23による電波の送信を許可する旨を示す値が初期値として予め設定されている。
【0020】
管理フラグ格納部202には、無線モジュール20が管理モードで動作中か否かを示す管理フラグが格納されている。管理フラグには、無線モジュール20が管理モードで動作してない旨を示す値が初期値として予め設定されている。
【0021】
痕跡作成部206は、無線モジュール20を覆っている筐体が開封されたこと検出した場合に、後述する方法でその痕跡を作成する。送信フラグ変更部205は、無線モジュール20に電源が投入された場合に、送信フラグ格納部203内の送信フラグを参照し、送信フラグが無線通信回路23による電波の送信を許可する旨を示す値である場合に、痕跡作成部206によって無線モジュール20が開封されたことを示す痕跡が作成されたか否かを判定する。
【0022】
痕跡作成部206によって無線モジュール20が開封されたことを示す痕跡が作成された場合、送信フラグ変更部205は、送信フラグ格納部203内の送信フラグを、無線通信回路23による電波の送信を禁止する旨を示す値に書き換える。一方、送信フラグが既に無線通信回路23による電波の送信を禁止する旨を示す値である場合、または、無線モジュール20が開封されたことを示す痕跡が痕跡作成部206によって作成されていない場合、送信フラグ変更部205は、送信フラグ格納部203内の送信フラグの値を変更しない。
【0023】
管理フラグ変更部204は、制御端末11内の制御アプリケーション110から管理モードへの移行を指示するコマンドを受信した場合に、管理フラグ格納部202内に格納されている管理フラグを、無線モジュール20が管理モードで動作中である旨を示す値に書き換える。
【0024】
送受信制御部200は、制御端末11内の制御アプリケーション110から電波の送信を指示された場合に、管理フラグ格納部202内の管理フラグおよび送信フラグ格納部203内の送信フラグを読み出す。そして、送受信制御部200は、読み出した管理フラグが管理モードで動作中である旨を示す値であるか、または、読み出した送信フラグが無線通信回路23による電波の送信を許可する旨を示す値である場合に、制御アプリケーション110からの指示に従って無線通信部201に電波の送信を指示する。
【0025】
このように、メーカによる修理やメンテナンス等のために無線モジュール20が開封された場合には、無線モジュール20に接続した制御端末11から管理モードへの移行を指示するコマンドを無線モジュール20へ送信することにより、管理フラグが、無線モジュール20が管理モードで動作中である旨を示す値に書き換えられるため、電波の送信が可能となる。ただし、この場合、一般ユーザに対しては、管理モードへの移行を指示するコマンドを秘密にする必要がある。
【0026】
一方、読み出した管理フラグが管理モードで動作していない旨を示す値であり、かつ、読み出した送信フラグが無線通信回路23による電波の送信を禁止する旨を示す値である場合、送受信制御部200は、電波を送信することができない旨を示すエラー通知を制御アプリケーション110に返す。制御アプリケーション110は、無線モジュール20から受信したエラー通知を、図示しない表示装置に表示する等により、電波を送信することができない旨をユーザに通知する。
【0027】
図3は、無線モジュール20の内部構造の一例を示す分解斜視図である。無線モジュール20は、例えば、上側筐体30および下側筐体34で構成される筐体内に、図1に示したそれぞれの回路が搭載されたプリント基板36が収容されて構成される。本実施形態において、筐体は上側筐体30および下側筐体34の2つで構成されるが、他の形態として、筐体は3つ以上の部分で構成されてもよい。
【0028】
上側筐体30および下側筐体34は導体で形成されている。プリント基板36は、下側筐体34に設けられたガイド溝35に沿って下側筐体34に収容される。プリント基板36のグランドラインは、ガイド溝35を介して下側筐体34と電気的に接続される。
【0029】
プリント基板36が収容された下側筐体34に、上側筐体30が取り付けられる。その際、上側筐体30の爪32aから32dによって、上側筐体30と下側筐体34とが固定される。上側筐体30は導体で形成されており、上側筐体30が下側筐体34に取り付けられることにより、爪32を介して、上側筐体30と下側筐体34とが電気的に接続される。
【0030】
また、上側筐体30が下側筐体34に取り付けられる際に、下側筐体34に収容されたプリント基板36上の係止突起37aが、上側筐体30の係止孔31aに挿入される。同様に、上側筐体30が下側筐体34に取り付けられる際に、下側筐体34に収容されたプリント基板36上の係止突起37bから37dが、それぞれ、上側筐体30の係止孔31bから31dに挿入される。係止孔31および係止突起37の詳細な構造については後述する。
【0031】
プリント基板36が収容された下側筐体34に、上側筐体30が取り付けられた場合、無線モジュール20の外観は、例えば図4のようになる。無線モジュール20の上側筐体30と下側筐体34は、取り外しが難しい爪32により固定されているため、ねじ等の取り外しが可能な結合方法で固定された場合に比べて、無線モジュール20の開封が困難となっている。
【0032】
図5は、図1に示した開封検出回路25の詳細を説明するための概念図である。開封検出回路25は、抵抗250、スイッチ251、および伝送路252を有する。
【0033】
スイッチ251の一端は、抵抗250を介してプリント基板36の電源ラインに接続されると共に、マイクロコンピュータ22のモニタ端子に接続されており、他端は、伝送路252を介してプリント基板36のグランドラインに接続されている。スイッチ251は、マイクロコンピュータ22の出力端子から出力される信号に応じて、抵抗250と伝送路252とを電気的に接続または遮断する。
【0034】
図5に示した回路において、スイッチ251が抵抗250と伝送路252とを電気的に接続した場合、伝送路252が断線していなければ、マイクロコンピュータ22のモニタ端子にはLowの電圧が出力される。一方、伝送路252が断線していれば、マイクロコンピュータ22のモニタ端子にはHighの電圧が出力される。
【0035】
図6は、係止突起37の上面図(a)および断面図(b)である。係止突起37は、樹脂等の絶縁部材でプリント基板36上に形成されている。当該絶縁部材は、所定の強度未満の圧力が加えられた場合には、加えられた圧力に応じて変形し、その圧力が無くなった場合には元の形状に戻る弾性を有すると共に、所定強度以上の圧力が加えられた場合には、加えられた圧力に応じて変形し、その圧力が無くなった場合でも変形状態を維持する可塑性を有する素材が好ましい。
【0036】
係止突起37の頭部371には、複数の爪370が設けられる。また、複数の爪370の中の1つには、内部に配線373が埋め込まれており、端部に導体のコンタクト374が設けられている。爪370内を通る配線373は、図5に示した伝送路252を構成し、係止突起37の軸部372を通り、プリント基板36上に設けられたスイッチ251の他端と上側筐体30とを接続する(上側筐体30は下側筐体34を介してプリント基板36のグランドラインに接続されている)。
【0037】
図7は、係止孔31の断面図(a)および下面図(b)である。係止孔31は、下面に開口を有する筒状の形状である。係止孔31の入口311の開口は、内部310の開口よりも狭く、入口311の開口は、爪370を含めた頭部371の幅よりも広く、内部310の開口は、爪370を含めた頭部371の幅よりも狭い。また、係止孔31の入口311の深さは、軸部372の長さとほぼ同じであるが、内部310の深さは、頭部371の長さよりも長い。
【0038】
プリント基板36が収容された下側筐体34に、上側筐体30が取り付けられる場合、例えば図8に示すように、プリント基板36上の係止突起37が対応する係止孔31に挿入され、例えば図9に示すような状態で固定される(係止突起37の先端は係止孔31の入口311の開口よりも細くなっており、係止突起37のそれぞれの爪370は、弾性変形するため、係止突起37は係止孔31内に容易に挿入することができる)。これにより、係止突起37の内部を通る配線373がコンタクト374を介して係止孔31に接続され、配線373を介してスイッチ251とグランドラインとが接続される(図5参照)。
【0039】
次に、上側筐体30と下側筐体34とが引き離されることにより、無線モジュール20が開封される場合の係止孔31および係止突起37の様子について説明する。係止突起37は、複数の爪370により係止孔31に固定されているため、上側筐体30と下側筐体34とが引き離される場合、係止突起37に無理な力が加わり、例えば図10に示すように、係止突起37が係止突起37aと係止突起37bとに分離してしまう。
【0040】
この場合、係止突起37には所定の強度以上の圧力が加わり、係止突起37は、変形を伴って引きちぎれる。係止突起37内部の配線373も同様に引きちぎれるが、配線373は金属で形成されているため、係止突起37の絶縁部材ほどの変形を伴わずに引きちぎれる。
【0041】
その後、プリント基板36が収容された下側筐体34に、上側筐体30が再び取り付けられる場合、例えば図11に示すように、変形した係止突起37bの絶縁部分が、内部の配線373bよりも先に係止孔31内に残った係止突起37aの絶縁部分に接し、配線373aと配線373bとが電気的に接続しない。また、変形した係止突起37bの絶縁部分が、係止孔31内に残った係止突起37aを押し上げ、係止突起37aのコンタクト374が係止孔31の内壁から離れ、コンタクト374と係止孔31とが電気的に接続しない。
【0042】
このように、上側筐体30と下側筐体34とが引き離されることにより、一旦、無線モジュール20の筐体が開封されると、係止突起37内の配線373が断線し、再び上側筐体30と下側筐体34とを嵌合させたとしても、配線373の断線状態が維持され、無線モジュール20の筐体が開封された痕跡が、配線373の断線という形で残されることになる。
【0043】
また、係止孔31の開口は円筒状であり、係止突起37の軸部372は円柱状の形状であることが好ましい。これにより、上側筐体30と下側筐体34とが引き離されて無線モジュール20の筐体が開封された場合に、上側筐体30の姿勢が変化することにより、係止孔31内の係止突起37aが回転する可能性が高まり、上側筐体30と下側筐体34とを再び嵌合させたとしても、係止突起37aの切断部分と係止突起37bの切断部分の形状が一致しない可能性が高まり、より確実に配線373と係止孔31の内壁とを絶縁することができる。
【0044】
また、上側筐体30と下側筐体34とが引き離されることにより、例えば図12に示すように、係止突起37が係止突起37cと係止突起37dと係止突起37eとに分離してしまう場合もある。このような場合も、係止孔31の内部310を円筒状の形状にしておくと、上側筐体30と下側筐体34とが引き離されて無線モジュール20の筐体が開封された場合に、上側筐体30の姿勢が変化することにより、係止孔31内の係止突起37dの位置および姿勢が変化する可能性が高まる。
【0045】
これにより、上側筐体30と下側筐体34とを再び嵌合させたとしても、例えば図13に示すように、係止突起37e内の配線373と係止突起37d内の配線373とが接する可能性が低くなり、より確実に配線373と係止孔31の内壁とを絶縁することができる。
【0046】
また、本実施形態では、例えば図3に示したように、プリント基板36上には複数の係止突起37が設けられ、上側筐体30には複数の係止孔31が設けられる。そして、送信フラグ変更部205は、いずれかの係止突起37内の配線373が断線している場合に、無線モジュール20の筐体が開封されたと判定する。
【0047】
これにより、上側筐体30と下側筐体34とを再び嵌合させた場合に、いずれかの係止突起37内の配線373が、偶然にもスイッチ251とグランドラインとを電気的に接続した場合であっても、送信フラグ変更部205は、確実に無線モジュール20の筐体が開封された痕跡を検出することができる。
【0048】
なお、筐体が3つ以上の部分で構成される場合には、それぞれの部分に係止孔31を少なくとも1つずつ設けるようにすることが好ましい。これにより、筐体の一部が開封された場合であっても、送信フラグ変更部205は、確実に開封された痕跡を検出することができる。
【0049】
図14は、無線モジュール20によって実行されるフラグ制御処理の一例を示すフローチャートである。例えば、無線モジュール20に電源が投入された場合に、無線モジュール20は、本フローチャートに示す動作を開始し、無線モジュール20への電源供給が遮断された場合に、無線モジュール20は、本フローチャートに示す動作を終了する。
【0050】
まず、送信フラグ変更部205は、送信フラグを送信フラグ格納部203から読み出し(S100)、読み出した送信フラグが無線通信回路23による電波の送信を許可する旨を示す値であるか否かを判定する(S101)。
【0051】
送信フラグが無線通信回路23による電波の送信を許可する旨を示す値である場合(S101:Yes)、送信フラグ変更部205は、マイクロコンピュータ22の出力端子を介して、図5に示したスイッチ251をオンにし(S102)、マイクロコンピュータ22のモニタ端子に現れる、抵抗250とスイッチ251との間の電圧が、Lowか否かを判定する(S103)。
【0052】
抵抗250とスイッチ251との間の電圧がHighである場合(S103:No)、送信フラグ変更部205は、送信フラグ格納部203内の送信フラグを、無線通信回路23による電波の送信を禁止する旨を示す値に書き換え(S104)、管理フラグ変更部204は、ステップS105に示す処理を実行する。
【0053】
一方、送信フラグが無線通信回路23による電波の送信を禁止する旨を示す値である場合(S101:No)、または、抵抗250とスイッチ251との間の電圧がLowである場合(S103:Yes)、管理フラグ変更部204は、制御端末11内の制御アプリケーション110から管理モードへの移行を指示するコマンドを受信したか否かを判定する(S105)。
【0054】
管理モードへの移行を指示するコマンドを受信した場合(S105:Yes)、管理フラグ変更部204は、管理フラグ格納部202内の管理フラグを、無線モジュール20が管理モードで動作中である旨を示す値に書き換え(S106)、再びステップS105に示した処理を実行する。
【0055】
図15は、無線モジュール20によって実行される送信制御処理の一例を示すフローチャートである。例えば、制御端末11内の制御アプリケーション110から電波の送信を指示された場合に、無線モジュール20は、本フローチャートに示す動作を開始する。
【0056】
まず、送受信制御部200は、送信フラグを送信フラグ格納部203から読み出し(S200)、読み出した送信フラグが無線通信回路23による電波の送信を許可する旨を示す値であるか否かを判定する(S201)。
【0057】
送信フラグが無線通信回路23による電波の送信を許可する旨を示す値である場合(S201:Yes)、送受信制御部200は、制御アプリケーション110からの指示に従って無線通信部201に電波の送信を指示する。無線通信部201は、送受信制御部200からの指示に従って無線通信回路23を制御し、アンテナ13を介して電波を送信し(S204)、無線モジュール20は、本フローチャートに示す動作を終了する。
【0058】
送信フラグが無線通信回路23による電波の送信を禁止する旨を示す値である場合(S201:No)、送受信制御部200は、管理フラグを管理フラグ格納部202から読み出し(S202)、読み出した管理フラグが、無線モジュール20が管理モードで動作中である旨を示す値であるか否かを判定する(S203)。
【0059】
管理フラグが、無線モジュール20が管理モードで動作中である旨を示す値である場合(S203:Yes)、送受信制御部200は、ステップS204に示した処理を実行する。一方、無線モジュール20が管理モードで動作していない旨を示す値である場合(S203:No)、送受信制御部200は、電波を送信することができない旨を示すエラー通知を制御アプリケーション110に返す。
【0060】
制御アプリケーション110は、無線モジュール20から受信したエラー通知を図示しない表示装置に表示する等により、電波を送信することができない旨をユーザに通知し(S205)、無線モジュール20は、本フローチャートに示す動作を終了する。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について説明した。
【0062】
上記説明から明らかなように、本実施形態の無線モジュール20によれば、改造による違法な電波の送信を防止することができる。
【0063】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0064】
例えば、上記した実施形態では、無線モジュール20全体が筐体で封止されている構成を例に説明したが、本発明はこれに限られない。出力される電波の周波数または強度を違法に変更されることを防止することが目的であるため、図1において、少なくとも、電波を出力するための回路部品である無線通信回路23が改造されないように、開封が困難な筐体で封止されていればよい。
【0065】
この場合、開封の有無を検出する開封検出回路25は、無線通信回路23を封止している筐体について開封の有無を検出する。このような構成にしても、無線モジュール20は、改造による違法な電波の送信を防止することができる。
【0066】
また、上記した実施形態では、制御端末11から電波の送信指示を受信する都度、送信フラグが、無線通信回路23による電波の送信を許可する旨を示す値であるか、または、管理フラグが、無線モジュール20が管理モードで動作中であることを示す値であるかを判定するが、本発明はこれに限られない。
【0067】
例えば、送信フラグ変更部205は、痕跡作成部206によって無線モジュール20が開封されたことを示す痕跡が作成された場合に、マイクロコンピュータ22の動作プログラムを消去するようにしてもよい。これにより、痕跡作成部206によって無線モジュール20が開封されたことを示す痕跡が作成された後は、制御端末11から電波の送信指示を受信しても、マイクロコンピュータ22が何の動作も行わないため、より確実に違法電波の送信を防止することができる。
【0068】
また、上記した実施形態では、電波を用い非接触で情報をやり取りするRFIDシステムに用いられるリーダライタを例に説明したが、本発明はこれに限られず、違法な改造が禁止されている無線機または無線モジュール全般についても、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
10・・・RFタグリーダライタシステム、11・・・制御端末、110・・・制御アプリケーション、12・・・ケーブル、13・・・アンテナ、14・・・物品、15・・・RFタグ、20・・・リーダライタ、200・・・送受信制御部、201・・・無線通信部、202・・・管理フラグ格納部、203・・・送信フラグ格納部、204・・・管理フラグ変更部、205・・・送信フラグ変更部、206・・・痕跡作成部、21・・・インターフェイス、22・・・マイクロコンピュータ、23・・・無線通信回路、24・・・不揮発メモリ、25・・・開封検出回路、30・・・上側筐体、31・・・係止孔、32・・・爪、34・・・下側筐体、35・・・ガイド溝、36・・・基板、37・・・係止突起、38・・・コネクタ、39・・・コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送信するための電子部品が搭載されているプリント基板が筐体で封止された無線モジュールであって、
前記筐体が開封された場合に、開封の痕跡を作成する痕跡作成部と、
電波の送信の可否を示す送信フラグであって、初期値が電波の送信許可を示す値である送信フラグを格納する送信フラグ格納部と、
前記痕跡作成部によって作成された開封の痕跡が存在する場合に、前記送信フラグ格納部内の送信フラグを、電波の送信禁止を示す値に変更する送信フラグ変更部と、
外部から電波の送信を指示された場合に、前記送信フラグ格納部内の送信フラグを読み出し、読み出した送信フラグが電波の送信許可を示す値である場合に、外部からの指示に従って前記電子部品を制御して電波を送信し、読み出した送信フラグが電波の送信禁止を示す値である場合に、電波の送信を行わない送信制御部と
を備えることを特徴とする無線モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の無線モジュールであって、
前記プリント基板には、マイクロコンピュータおよび不揮発性メモリが搭載されており、
前記送信フラグ格納部は、前記不揮発性メモリにより実現され、
前記送信フラグは、前記不揮発性メモリに格納されことを特徴とする無線モジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の無線モジュールであって、
前記痕跡作成部は複数設けられており、
前記フラグ変更部は、
少なくともいずれかの前記痕跡作成部によって作成された開封の痕跡が存在する場合に、前記送信フラグ格納部内の送信フラグを、電波の送信禁止を示す値に変更することを特徴とする無線モジュール。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の無線モジュールであって、
前記痕跡作成部は、
前記筐体が開封された後に当該筐体が再び封止された場合であっても、当該筐体が開封された場合に作成した開封の痕跡を維持することを特徴とする無線モジュール。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の無線モジュールであって、
前記送信フラグ変更部は、
当該無線モジュールに電源が投入された場合に前記送信フラグ格納部内の送信フラグを参照し、
当該送信フラグが電波の送信許可を示す値である場合に前記痕跡作成部によって作成された開封の痕跡が存在するか否かを判定し、
当該送信フラグが電波の送信禁止を示す値である場合に前記痕跡作成部によって作成された開封の痕跡が存在するか否かの判定を行わないことを特徴とする無線モジュール。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の無線モジュールであって、
管理モードで動作中であるか否かを示す管理フラグであって、初期値が管理モードで動作していない旨を示す値である管理フラグを格納する管理フラグ格納部と、
外部から予め定められたコマンドを受け付けた場合に、前記管理フラグ格納部内の管理フラグを、管理モードで動作中である旨を示す値に変更する管理フラグ変更部と
をさらに備え、
前記送信制御部は、
外部から電波の送信を指示された場合に、前記送信フラグ格納部内の送信フラグおよび前記管理フラグ格納部内の管理フラグを読み出し、読み出した送信フラグが電波の送信許可を示す値であるか、または、読み出した管理フラグが管理モードで動作中である旨を示す値である場合に、外部からの指示に従って前記電子部品を制御して電波を送信し、読み出した送信フラグが電波の送信禁止を示す値であり、かつ、読み出した管理フラグが管理モードで動作中である旨を示す値である場合に、電波の送信を行わないことを特徴とする無線モジュール。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の無線モジュールであって、
前記筐体は、複数の部分筐体で構成され、
前記プリント基板が取り付けられた1つの部分筐体が、他の部分筐体に取り付けられることにより、複数の部分筐体が前記プリント基板を封止しており、
前記痕跡作成部は、
前記プリント基板と前記他の部分筐体とを電気的に接続する導電線であり、
当該導電線は、
前記1つの部分筐体と前記他の部分筐体とが引き離されることにより切断され、
前記送信フラグ変更部は、
前記導電線が切断されて当該導電線に電流が流れない場合に、前記筐体が開封された痕跡が存在すると判定することを特徴とする無線モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−164926(P2011−164926A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26858(P2010−26858)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000233295)日立情報通信エンジニアリング株式会社 (195)
【Fターム(参考)】