説明

無線信号の受信方法及び受信装置

【課題】非同期で到来するパケット信号に対し、干渉信号を抑圧しつつ、希望信号の受信を可能にする。
【解決手段】複数のアンテナを備える受信装置の受信方法であって、アナログフィルタを介して信号を受信するステップと、受信した信号が自受信装置宛であるか否かに基づき、干渉信号であるか希望信号であるかを判定するステップと、干渉信号であった場合に、干渉チャネル情報を用いて、干渉信号用と希望信号用の少なくとも一方のアナログフィルタのアレーウエイトをそれぞれ更新し、希望信号であった場合に、チャネル情報を用いて、希望信号用と干渉信号用の少なくとも一方のアナログフィルタのアレーウエイトをそれぞれ更新するステップとを有し、アレーウエイトの更新は、受信した信号が干渉信号であった場合には直ちにアレーウエイトをそれぞれ更新し、受信した信号が希望信号であった場合には、データの復号完了後に、アレーウエイトをそれぞれ更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非希望端末からの干渉信号が到来する環境において、希望端末からの信号を受信する干渉キャンセラ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から複数のアンテナを有し、アナログフィルタを用いて主信号に指向性を向け、干渉信号を抑圧する方式についての研究が盛んに行われている。予めアナログ回路で信号対雑音電力比を高めるように受信することで、アナログ・デジタル変換器の数を減らしたり、干渉信号の影響を除去した信号を受信するため、信号検出・AGC(Automatic gain control)・AFC(Automatic frequency control)の精度を高めることができる(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
アナログ・デジタル変換器の数がアンテナ素子数より少ない構成では、アナログフィルタの係数を決定するための方法として、ブラインドアルゴリズムを用いる必要がある。主信号および干渉信号が継続的に到来する通信環境では、従来の技術で有効に動作させることができる。しかしながら、パケット送信に基づくシングルキャリア方式およびOFDM方式による通信では、主信号と干渉信号が独立のタイミングで到来するため、従来方式で干渉除去を行うことは難しい。
【0004】
図6に従来の送受信装置の構成を示す。図6において、1−1〜1−Pはアンテナ、3はアナログフィルタ部、3−1−1〜3−1−Pはアナログフィルタ、4は結合器、5は受信装置、6は信号検出回路、7は復号回路、9はフィルタ係数設定回路である。まず、送信されている信号として、サイクリックプリフィックスを用いた送信信号の場合、時刻nにおけるM×1の情報信号ブロックs(n)にKポイントのガードインターバルとしてサイクリックプリフィックスが付与され、(M+K)×1の送信信号ブロックs’(n)が生成される。
【数1】

ここで、Tcpは(M+K)×MのGI付加行列であり、
【数2】

で定義される。
【0005】
ただし、0K×(M−K)はK×(M−K)の零行列を表し、IM×MはM×Mの単位行列を表す。ここで、s(n)は直交周波数分割多重方式(OFDM)の信号であってもよいし、シングルキャリア伝送方式(SC)の信号であってもよい。
【0006】
受信アンテナ素子数をPとし、通信路のインパルス応答長をLとすると、p番目のアンテナ素子における通信路の(M×1)のインパルス応答ベクトルは
【数3】

と表せる。受信ブロックに付加される(M+K)×1の雑音ベクトルをnp(n)とする。ただし、np(n)の各成分は平均0、分散σの白色雑音であるとする。このときアレー出力におけるインパルス応答ベクトル
【数4】

および雑音ベクトルn’(n)は、P×1のアレーウエイトベクトル
【数5】

を用いて、
【数6】

【数7】

【数8】

【数9】

と書ける。ここで、(・)はエルミート転置を表す。
【0007】
以下に、各アンテナにより受信された信号についての処理動作を説明する。まず、p番目のアンテナ1−pにおいて受信される、時刻nに対応する(M+K)×1の受信信号r’p(n)が得られる。アナログフィルタ部3では、p番目のアンテナに対応するアナログフィルタ3−p(1≦p≦P)が、フィルタ係数設定回路9により設定された係数wiを受信信号に乗算し、結合器4において各アナログフィルタ3−1〜3−Pからの出力信号を結合し、受信装置5において周波数変換され、デジタル信号として取得された後、信号検出回路6により時刻nの送信信号に対応する受信信号ブロックが
【数10】

として得られる。
【0008】
GI除去前の受信信号ブロックは、インパルス応答および熱雑音を用いて、
【数11】

で与えられる。ここで、H0およびH1は、アレー出力におけるインパルス応答ベクトルの係数を用いて
【数12】

【数13】

で定義される(M+K)×(M+K)の行列である。
【0009】
復号回路7は、まずサイクリックプリフィックスの除去を行う。GI除去行列は
【数14】

と表せ、これを用いることで、サイクリックプリフィックスが除去され、M×1の受信信
【数15】

を得る。ただし、インパルス応答の次数がサイクリックプリフィックス長以下であること、すなわちK≧L−1を仮定している。
【0010】
さらに、
【数16】

【数17】

とすると、
【数18】

と表せる。Cはその成分を書き下すことで、
【数19】

と書ける。
【0011】
ここで、Cir[a]は、第1列がベクトルaである巡回行列を表す。巡回行列の逆行列は巡回行列であり、また巡回行列は離散フーリエ変換(DFT)行列により対角化される。したがって、行列Cは(k,n)成分が
【数20】

で与えられるM×MのDFT行列Dを用いて、
【数21】

【0012】
従来の方式では、アダプティブアレーのフィルタ係数wを、アレー出力のSNRを最大化したり、MMSEアルゴリズムを用いたりして決定することができる。ここで、相関行列〜Rm(〜はRの頭に付く、以下同様)を以下のように定義する。
【数22】

フィルタ係数wは
【数23】

を最大化するように決定でき、〜Rmのm=1〜Mの総和として得られる行列の最大固有値に対応する固有ベクトルをwとして決定することができる。
【0013】
またはMMSEアルゴリズムの最急降下法を用いて、
【数24】

ここで、w(k)はk回目のイタレーションでのアレーウエイト、μはステップサイズパラメータであり、0<μ<1として設定される。このようにしてアレーウエイトを得ることができる。復号回路7は受信した信号を復号するとともに、(23)式や(24)式において固有ベクトルwを決定するのに必要な係数をフィルタ係数設定回路8へ出力する。フィルタ係数設定回路8は新たなフィルタ係数を計算し、アナログフィルタ3−1〜3−Mのフィルタ係数を更新する。
【0014】
OFDMに対しても上記アルゴリズムは同様に用いることができる。OFDMでは、(1)式の情報信号ブロックs(n)が、周波数領域で生成されたKポイントの送信信号d(n)にIDFTを用いて、
【数25】

と定義され、受信側では、周波数領域で等化した後にIDFTを行うことなく復号することで送信信号が得られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】M. L. Leou and C. C. Yeh, "Novel Hybrid of Adaptive Array and qualizer for Mobile Communications," IEEE Trans. Veh. Technol., vol. 49, pp. 1-10, Jan. 2000.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、従来の方法では、干渉信号と希望信号を定常的に受信し続ける状態であれば、最適なフィルタ係数wを得ることができるが、干渉信号および希望信号が、パケットとして、非同期に到来する環境において、wを決定することができなかった。例えば、(24)式によれば、希望信号が受信されておらず、干渉信号のみが受信されているタイミングで用いれば、干渉を増幅するフィルタ係数が算出され、希望信号が受信された際の信号品質が著しく劣化する。また、相関行列を得るためには、(22)式においてDHを得る必要があり、受信装置5が一つしかないにも拘わらず、全P本分のアンテナにおける受信情報を得るのが困難であるという問題がある。
【0017】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、非同期で到来するパケット信号に対し、干渉信号を抑圧しつつ、希望信号の受信を可能にすることができる無線信号の受信方法及び受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、複数のアンテナを備え、アナログフィルタを介して、希望端末からの無線信号を受信する受信装置における受信方法であって、前記アナログフィルタを介して信号を受信する信号受信ステップと、前記受信した信号が自受信装置宛であるか否かに基づき、前記受信した信号が干渉信号であるか希望信号であるかを判定する受信信号判定ステップと、前記受信した信号が干渉信号であった場合に、干渉チャネル情報を用いて、干渉信号用と希望信号用の少なくとも一方の前記アナログフィルタのアレーウエイトをそれぞれ更新し、前記受信した信号が希望信号であった場合に、チャネル情報を用いて、希望信号用と干渉信号用の少なくとも一方の前記アナログフィルタのアレーウエイトをそれぞれ更新するアレーウエイト更新ステップとを有することを特徴とする。
【0019】
本発明は、前記アレーウエイト更新ステップは、前記アレーウエイトが乗算されて推定された前記チャネル情報または干渉チャネル情報に対し、前記アレーウエイトから構成されるアレーウエイト行列の疑似逆行列を乗算することで、前記アンテナと前記希望端末間または前記アンテナと干渉端末間の干渉チャネル情報を復元し、得られたチャネル情報または干渉チャネル情報を用いて、前記アレーウエイトを決定して更新することを特徴とする。
【0020】
本発明は、前記アレーウエイト更新ステップは、前記受信した信号が干渉信号であった場合に、前記干渉チャネル情報の相関行列を用いて前記干渉用アレーウエイトを更新するとともに、前記干渉チャネル情報の相関行列の逆行列を用いて前記希望信号用アレーウエイトを更新し、前記受信した信号が希望信号であった場合に、前記チャネル情報の相関行列を用いて前記希望信号用アレーウエイトを更新するとともに、前記チャネル情報の相関行列の逆行列を用いて前記干渉信号用アレーウエイトを更新することを特徴とする。
【0021】
本発明は、前記アレーウエイト更新ステップは、前記受信した信号が干渉信号であった場合には直ちに前記アレーウエイトをそれぞれ更新し、前記受信した信号が希望信号であった場合には、データの復号完了後に、前記アレーウエイトをそれぞれ更新することを特徴とする。
【0022】
本発明は、複数のアンテナを備え、アナログフィルタを介して、希望端末からの無線信号を受信する受信装置であって、前記アナログフィルタを介して信号を受信する信号受信手段と、前記受信した信号が自受信装置宛であるか否かに基づき、前記受信した信号が干渉信号であるか希望信号であるかを判定する受信信号判定手段と、前記受信した信号が干渉信号であった場合に、干渉チャネル情報を用いて、干渉信号用と希望信号用の少なくとも一方の前記アナログフィルタのアレーウエイトをそれぞれ更新し、前記受信した信号が希望信号であった場合に、チャネル情報を用いて、希望信号用と干渉信号用の少なくとも一方の前記アナログフィルタのアレーウエイトをそれぞれ更新するアレーウエイト更新手段とを備える、ことを特徴とする。
【0023】
本発明は、前記アレーウエイト更新手段は、前記アレーウエイトが乗算されて推定された前記チャネル情報または干渉チャネル情報に対し、前記アレーウエイトから構成されるアレーウエイト行列の疑似逆行列を乗算することで、前記アンテナと前記希望端末間または前記アンテナと干渉端末間の干渉チャネル情報を復元し、得られたチャネル情報または干渉チャネル情報を用いて、前記アレーウエイトを決定して更新することを特徴とする。
【0024】
本発明は、前記アレーウエイト更新手段は、前記受信した信号が干渉信号であった場合に、前記干渉チャネル情報の相関行列を用いて前記干渉用アレーウエイトを更新するとともに、前記干渉チャネル情報の相関行列の逆行列を用いて前記希望信号用アレーウエイトを更新し、前記受信した信号が希望信号であった場合に、前記チャネル情報の相関行列を用いて前記希望信号用アレーウエイトを更新するとともに、前記チャネル情報の相関行列の逆行列を用いて前記干渉信号用アレーウエイトを更新することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、非同期で到来するパケット信号に対し、干渉信号を抑圧しつつ、希望信号の受信を可能にすることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す受信装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】干渉信号と希望信号が重複して受信された際の受信装置の動作を示す説明図である。
【図5】干渉信号と希望信号が重複して受信された際の受信装置の動作を示す説明図である。
【図6】従来技術による受信装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態による無線信号の受信装置を説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。この図において、図6に示す従来の装置と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。この図に示す装置が図6に示す装置と異なる点は、分配器2−1〜2−Pを設け、複数系統のアナログフィルタ部3−1〜3−Q、アナログフィルタ部3−1〜3−Qと同数の接合器4−1〜4−Q及び受信装置5−1〜5−Qが設けられており、さらに、通信相手判定回路8が設けられている点である。
【0028】
Qは分配器で受信信号を分岐する数であり、2以上が設定される。アナログフィルタ3−i−1〜3−i−PのP個を1つのi番目のアナログフィルタグループとし、このグループで用いられるアナログフィルタのアレーベクトルを
【数26】

と定義する。
【0029】
送信信号および伝搬環境の条件は、(1)〜(4)式と同様である。分配器2−1〜2−Pのそれぞれにより分岐されるQ個の系列のうち、QS個の系列は、希望信号の信号電力を強め、干渉信号の信号を打ち消すアナログフィルタの係数を用い、QI個の系列は干渉信号の信号電力を強め、希望信号を打ち消すアナログフィルタの係数が用いられる。ここで、Q≧QS+QIである。Q−(QS+QI)の系列は、任意の係数を設定でき、あるアンテナからの受信信号のみ受信されるように、アレーベクトルの要素のうち一つを1とし、それ以外を0にするように設定することもできる。アナログフィルタ出力はQ系列得られる。
【0030】
アンテナ1−1〜1−Pにおいて、信号が受信されると、2−1〜2−PにおいてQ系列に信号が分岐される。分岐された信号は、アナログフィルタ部3−1〜3−Qに入力され、各アナログフィルタで係数が乗算され、結合部4−1〜4−Qにそれぞれ出力する。アナログフィルタのアレーベクトルw1〜wQは初期値として、互いに直交する条件の係数を設定するために、wiwj=0、(i≠j)となるように設定する。すなわち、それぞれのフィルタによる信号処理は、互いに相関の低い指向性ビームを構成し、当該各ビームを介して受信された信号を出力することと等価である。
【0031】
受信装置5−1〜5−Qにおいて、周波数変換され、デジタル信号に変換されると、信号検出回路6により信号位置が検出される。このとき、信号検出回路6は、それぞれの受信装置5−1〜5−Qからの出力に対して個別に信号位置を検出して、これらの信号位置のうち、たとえば最も受信電力の高いものを対象として検出したブランチの信号位置を採用する。当該信号位置に基づいて検出されたGI除去前のi番目の系列の受信信号ブロックは、インパルス応答および熱雑音を用いて
【数27】

で与えられる。
【0032】
ここで、
【数28】

【数29】

であり、H’i,0およびH’i,1は
【数30】

【数31】

で定義される(M+K)×(M+K)の行列である。(28)式のHは(3)式および(7)式で定義される。
【0033】
復号回路7は、GI除去行列Rcpを用いてサイクリックプリフィックスの除去を行う。
【数32】

を得る。ただし、インパルス応答の次数がサイクリックプリフィックス長以下であること、すなわちK≦L−1を仮定している。さらに、
【数33】

【数34】

とすると、
【数35】

と表せる。
Ciはその成分を書き下すことで、
【数36】

と書ける。よって、M×MのDFT行列Dを用いて、
【数37】

【0034】
ここでは、アダプティブアレーのフィルタ係数wiの更新をする際に、受信信号が干渉信号であるか、希望信号であるかでwiの更新方法を選択する。復号回路7において、受信されたパケットの制御信号部分が復号されると、送信している端末が自身宛に送信をしているのかを判定する。そして、自身宛の信号であると判定した場合、復号回路7は、Q系列で受信された信号の既知信号部分を用いて、希望信号を送信している送信端末のCiを推定する(1≦i≦Q)。これはs(n)として既知の系列を送信することで得ることができる。よって、CiにDFTを行うことで、Λi、すなわちDHwiを得る。1〜Q系列の周波数領域でのチャネル行列Gを以下のように定義できる。
【数38】

【0035】
よって、DHはGを用いて、以下のように推定できる。
【数39】

ここで†は疑似逆行列を表す。(39)式で表せる行列をGwと定義すると、Q<Pの場合には、Gwは[w1w2...wQ]の逆行列の精度が低いため、本来のDHと完全には一致しない。これは、Q≧Pの場合には、十分な自由度が得られるため、逆行列の精度は高くなるが、アナログフィルタ、結合器、受信装置の数を増やす必要がありコストが増大する。また、Q≧Pの場合でも、熱雑音に対応する誤差は存在するため、得られたGwを忘却係数μgを用いて逐次的に更新することで精度を高めることもできる。
【数40】

kはk番目のステップを表す。Gwの精度を高めるために、パケットの受信が終了するたびに、wj(QS+QI+1≦j≦Q)のアレーベクトルを変更することもできる。Gw、またはこのように得られたGw(k)をGwとして、相関行列〜R’m(〜はRの頭に付く、以下同様)は以下のように定義される。
【数41】

【0036】
このようにして得られた〜R’mを従来方法における〜R’mとして用いることで、アレーベクトルを更新できる。例えば、(24)式と同様に
【数42】

としてwiとしてwi(k+1)を用いることで更新できる。また、このとき、w1〜wQsがそれぞれ異なるベクトルに収束するように、異なる送信アンテナに対応するHをそれぞれのアレーベクトルの計算に用いることができる。
【0037】
すなわち、希望端末がZ本の送信アンテナを有する場合に、各送信アンテナに対し、H(1)〜H(Z)を推定する。p番目の受信アンテナ素子におけるq番目の送信アンテナに対する通信路の(M×1)のインパルス応答ベクトルは
【数43】

【数44】

と定義される。
【0038】
このH(q)をHとして、
【数45】

【数46】

【数47】

【0039】
Gw,q、またはこのように得られたGw,q(k)をGwとして、相関行列〜R’m、qは以下のように定義される。
【数48】

のようにして、Z本の送信アンテナに対しそれぞれ相関行列を演算でき、q番目の送信アンテナに対し、
【数49】

として、送信アンテナに対し、それぞれアレーベクトルを演算できる。ここで、Qs<Zの場合には、送信アンテナのうちQs個を選択し、フィルタ係数を演算し、Qs=Zの場合は、各送信アンテナに対し最適化したフィルタ係数を用いて受信装置5−1〜5−Qに出力し、Qs>Zの場合には、受信装置5−1〜5−Qsのうち複数の受信装置が同一の送信アンテナに対応し、フィルタ係数を演算する。このようにすると、いくつかの受信ウエイトが同一のフィルタ係数に収束するが、以下の方法を用いることにより解決できる。
【0040】
また、このときw1〜wQsが同じベクトルに収束しないように、w1〜wQsをノルムが1になるように規格化したうえで、
【数50】

として、グラムシュミットの直交化法や、QR分解を用いて、互いに直交条件を満たすように制御することもできる。ここでμwを1とすれば、完全に直交する条件となり、0<μw<1とすれば、直交条件を緩めることができ、完全な直交性は得られないが、信号電力が著しく低下することを防ぐことができる。
【0041】
また、干渉信号に対するウエイトwi(QS+1≦i≦QS+QI)に対しては、相関行列〜R’mの代わりに、相関行列の逆行列〜R’m−1を用いることで、
【数51】

の最大固有値に対応する固有ベクトル、すなわち
【数52】

の最小固有値に対応する固有ベクトルに対応するアレーウエイトを得ることができる。
【0042】
(24)式の方式の例では、
【数53】

としてwiとしてwi(k+1)を用いることで更新できる。また、このときwQs+1〜wQs+QIが同じベクトルに収束しないように、それぞれ異なる送信アンテナについてのチャネル情報を用いてアレーベクトルを演算したり、wQs+1〜wQs+QIをノルムが1になるように規格化したうえで、QS+1≦i≦QS+QIとなるiに対して
【数54】

と互いに直交条件を満たすように制御することもできる。ここでμwを1と完全に直交する条件となり、0<μw<1とすれば、直交条件を緩めることができる。
【0043】
次に、自身宛の信号ではないと判定した場合の制御動作を説明する。この場合受信している信号は干渉信号である。復号回路7は、Q系列で受信された信号の既知信号部分を用いて、干渉信号を送信している送信端末のCI,iを推定する(1≦i≦Q)。受信信号は以下のように表せる。
【数55】

【0044】
ここで、CI,iは干渉源となる通信相手との間で定義できる干渉チャネルHIを用いて
【数56】

と表せる。CI,iは干渉源から送信される既知信号s(n)を送信することで得ることができる。よって、CI,iにDFTを行うことで、ΛI,i、すなわちDHIwiを得る。
【0045】
1〜Q系列の周波数領域での干渉チャネル行列GIを以下のように定義できる。
【数57】

【0046】
よって、DHIはGIを用いて、以下のように推定できる。
【数58】

ここで†は疑似逆行列を表す。(58)式で表せる行列をGIwと定義すると、Q<Pの場合、GIwは[w1w2...wQ]の逆行列の精度が低いため、本来のDHIと完全には一致しない。Q≧Pの場合は高い精度でGIwを得ることができるが、熱雑音に対応する誤差は有する。このため、得られたGIwを忘却係数μgを用いて逐次的に更新することでGIwの精度を高めることもできる。
【数59】

kはk番目のステップを表す。GIwの精度を高めるために、パケットの受信が終了する度に、wj(QS+QI+1≦j≦Q)のアレーベクトルを変更することもできる。
【0047】
GIw、またはこのように得られたGIw(k)をGIwとして、相関行列〜R”mは以下のように定義される。
【数60】

このようにして得られた〜R”mを用いることで、アレーベクトルを更新できる。例えば、(24)式と同様に
【数61】

としてwiとしてwi(k+1)を用いることで更新できる。また、このときwQs+1〜wQs+QIが同じベクトルに収束しないように、複数の送信アンテナに対する相関行列〜R”m,I〜〜R”m,zを演算し、
【数62】

として、それぞれ異なる送信アンテナに対して、アレーウエイトを演算することもできる。
【0048】
または、wQs+1〜wQs+QIをノルムが1になるように規格化したうえで、
【数63】

と互いに直交条件を満たすように制御することもできる。ここでμwを1とすれば、完全に直交する条件となり、0<μw<1とすれば、直交条件を緩めることができ、完全な直交性は得られないが、信号電力が著しく低下することを防ぐことができる。
【0049】
また、希望信号に対するウエイトwi(1≦i≦QS)に対しては、相関行列〜R”mの代わりに、相関行列の逆行列〜R”m−1を用いることで、
【数64】

の最大固有値に対応する固有ベクトル、すなわち
【数65】

の最小固有値に対応する固有ベクトルに対応するアレーウエイトを得ることができる。(24)式の方式の例では、
【数66】

としてwiとしてwi(k+1)を用いることで更新できる。
【0050】
また、このときw1〜wQsが同じベクトルに収束しないように、w1〜wQsをノルムが1になるように規格化したうえで、1≦i≦QSとなるiに対して
【数67】

と互いに直交条件を満たすように制御することもできる。ここでμwを1と完全に直交する条件となり、0<μw<1とすれば、直交条件を緩めることができる。
【0051】
<第2の実施形態>
前述した第1の実施形態では、アナログフィルタ3−i−jとして、一つの係数wi,jを乗算することでアナログフィルタを実現する構成を示したが、 ̄wi,j,1〜 ̄wi,j,N( ̄はwの頭に付く、以下、同様)のN個の係数を畳み込み演算することで広帯域アダプティブアレーとして利用することができる。ブロードバンドフィルタは、図6に示すアナログフィルタ部3の各アナログフィルタに複数の係数を指定し、畳み込み演算を行うことが特徴である。広帯域アナログフィルタの構成を図2に示す。結合器4−iに出力するj番目のアンテナにフィルタ係数wi,jを用いていたところを、 ̄wi,j,1〜 ̄wi,j,Nを畳み込み演算することで得られる信号を出力している。結合器4−i、受信装置5−iに出力する広帯域アナログフィルタのフィルタ係数wiは,
【数68】

と定義でき、(NP)×1ベクトルとなる。
【0052】
広帯域アダプティブアレーにおける受信装置5−iにおける受信信号ベクトルは
【数69】

で与えられる。ここで、Wi,p,0とWi,p,1は
【数70】

【数71】

で定義される(M+K)×(M+K)の行列である。
【0053】
サイクリックプリフィックス除去後のM×1の受信信号ブロックは、
【数72】

と与えられる。ここで、N−1≦Kを満たすとすると、RcpWi,p,1=0であり、L+N−2≦Kのもとで、RcpWp,0Hp,1=0である。
【0054】
よって、受信信号r(n)は
【数73】

と表せる。周波数領域等化(FDE)を行った際の出力となる時間領域の信号は
【数74】

と推定でき、周波数領域の送信信号d(n)は、
【数75】

と推定される。
【0055】
ここで、
【数76】

と定義すると、RcpHw,iTcpは巡回行列であることから、
【数77】

と対角化できる。(75)式におけるΓはΛW,i−1で与えられる。OFDMにおけるFDE後の受信ブロックは、
【数78】

となる。ただし、
【数79】

【数80】

である。
【0056】
結合器4−i、受信装置5−iに出力するi番目のフィルタ係数ベクトルwiは,ここでは、雑音電力を最小化するタップ重みを使用することができる。(78)式の右辺第2項の雑音電力に係る項ΛW,i−1DRcpW,i(n)をタップ重みで微分する際に取り扱いやすい形にする。フィルタ係数ベクトルwiに対応する雑音電力P
【数81】

と表せる。
【0057】
NW(n)の相関行列は、付加雑音の白色性から
【数82】

となる。(75)式は
【数83】

と書き直せる。
【0058】
ここで、Wi,pは、
【数84】

であり、
【数85】

である。
【0059】
DFT行列のk行m列の要素{D}kmをdk,mと定義すると、ΛW,i−1DWi,pのk行目の非ゼロ成分は、テプリッツ行列の性質を利用することにより、下記のように計算できる。
【数86】

【0060】
また、
【数87】

と定義することで、雑音電力は
【数88】

と表せる。
【0061】
ここで、wiはアンテナ1〜Pの受信信号にかかるアレーウエイト全てを結合させたPN×1の集合アレーウエイトであり、ΦkはDkDkをP個対角に並べたブロック対角行列であり、以下のPN×PN行列で表せる。wiは広帯域アナログフィルタの構成では、PN×1であることに注意する。
【数89】

【0062】
次に、λi,kを集合アレーウエイトwiを用いて表現することを考える。チャネルインパルス応答に注目すると、
【数90】

と表記できる。ここで、テプリッツ行列の性質から、
【数91】

【0063】
ここで、Hpは(N+L−1)×Nの巡回行列、 ̄H( ̄はHの頭に付く、以下、同様)はH1〜HPを用いて表せ、
【数92】

と定義される。[λW,i,1…λW,i,M]は伝搬環境および図2におけるアナログフィルタ部を含めた通信路の周波数応答であり、
【数93】

【0064】
よって、
【数94】

となる。ただし、dk=[dk,1,...dk,N+L−1]である。これより、雑音電力Pn,iは
【数95】

と表せる。
【0065】
よって、このPn,iを最小化するwiを決定することで、雑音電力を低減できる。ここで決定できるwiは希望端末からの受信信号を強めるものであり、第1の実施形態におけるwi(1≦i≦Qs)に対応する。ここで得られるwiもw1〜wQsが同一のベクトルに収束しないように、複数の送信アンテナに対し、それぞれアレーベクトルを演算できる。この場合、チャネル ̄Hを希望端末の送信アンテナに対し、得られる ̄H1〜 ̄HZを用いることができる。また、QS<Zの場合には、送信アンテナのうちQs個を選択し、アレーベクトルを演算し、Qs=Zの場合は、各送信アンテナに対し最適化したフィルタ係数を用いて受信装置5−1〜5−Qsに出力し、Qs>Zの場合には、受信装置5−1〜5−Qsのうち複数の受信装置が同一の送信アンテナに対応し、アレーベクトルを演算する。このようにすると、いくつかのアレーベクトルが同一のフィルタ係数に収束するが、以下の方法を用いることにより解決できる。
【0066】
w1〜wQsが同じベクトルに収束しないように、w1〜wQsをノルムが1になるように規格化したうえで、
【数96】

と互いに直交条件を満たすように制御することもできる。ここでμwを1とすれば、完全に直交する条件となり、0<μw<1とすれば、直交条件を緩めることができ、完全な直交性は得られないが、信号電力が著しく低下することを防ぐことができる。
【0067】
また、チャネル ̄H1〜 ̄HZが干渉信号に対応するチャネルだとすると、干渉信号に対するアレーベクトルwQs+1〜wQs+Qnのウエイトを(96)式から決定できる。
【0068】
次に、干渉信号の受信信号を考える。干渉波のインパルス応答長をR、p番目の受信アンテナ素子における通信路のインパルス応答ベクトルを[hI,p,1,hI,p,2,...,hI,p,R]とし、希望信号に対し定義されたHp,0とHp,1に対応するものとして、干渉信号に対しHI,p,0とHI,p,1をそれぞれ
【数97】

【数98】

で定義される(M+K)×(M+K)の行列とする。(76)式における干渉信号に対応する受信信号 ̄ri,P(n)( ̄はrの頭に付く、以下、同様)はHI,p,0とHI,p,1、および干渉ブロック信号 ̄i(n)( ̄はiの頭に付く、以下、同様)を用いて、
【数99】

と書ける。
【0069】
ただし、 ̄i(n)は希望信号に対するDFTのタイミングと同期していない。R+N−2≦Kを仮定するとWp,0HI,p,1=0となることから、広帯域アレー出力で干渉信号成分をゼロにするための条件は
【数100】

と与えられる。
【0070】
ここで、
【数101】

と定義すると、
【数102】

となるようにフィルタ係数を設定すればよい。
【0071】
雑音電力の低減と干渉除去を同時に満たすフィルタ係数を得るためには、例えば
【数103】

を満たすwiを用いることもできる。ここで、γは雑音電力と干渉電力の重みを決定するパラメータである。この問題に対し、最急降下法を適用することにより局所最適解を導出し、これをウエイトとする。具体的なタップの更新式は、μをステップサイズパラメータとして、j回目のイタレーション後のタップ重みをwi(j)と定義すると
【数104】

で与えられる。ここで、
【数105】

であり、第1の実施形態におけるwi(1≦i≦QS)に対応する。
【0072】
ここで得られるw1〜wQnが同一のベクトルに収束しないように、w1〜wQnをノルムが1になるように規格化し、
【数106】

と互いに直交条件を満たすように制御することもできる。ここでμwを1とすれば、完全に直交する条件となり、0<μw<1とすれば、直交条件を緩めることができ、完全な直交性は得られないが、信号電力が著しく低下することを防ぐことができる。
【0073】
また、チャネル ̄HI,1〜 ̄HI,Zを希望端末の信号に対応するチャネルだと考え、非希望端末の信号に対するアレーベクトルwQs+1〜wQs+Qnのウエイトを(104)式や(106)式から決定できる。
【0074】
次に、図3を参照して、通信動作を説明する。図1に示す受信装置において、パケット信号が受信されると(ステップS1)、受信された信号の制御信号部から、パケット信号が自身宛であるかを判定し、自身宛であれば、希望信号として、自身宛でなければ干渉信号として判断する(ステップS2)。干渉信号であると判断された場合には、受信したパケットに含まれる既知信号から、干渉チャネル情報を取得し、(61)式や(62)式に基づき干渉信号に対するアレーウエイトを計算し(ステップS6)、干渉信号に対するアレーウエイトを更新する(ステップS7)。この干渉信号に対するアレーウエイトの更新はデータの受信中であっても行うことができる。また、さらに、(66)式により、希望信号に対するアレーウエイトを計算し(ステップS6)、干渉信号に対するアレーウエイトを更新する(ステップS7)こともできる。
【0075】
一方、希望信号であると判断された場合には、受信したパケットに含まれる既知信号から、チャネル情報を取得し、(42)式や(49)式を用いて希望信号に対するアレーウエイトを計算する(ステップS3)。または、(53)式により、希望信号に対する受信電力を低減するように干渉信号に対するアレーウエイトを計算することもできる。チャネル情報を用いて、受信されたデータを復号し(ステップS4)、このデータの復号が完了した後(ステップS5)、希望信号に対する、または、干渉信号に対する、またはその両方のアレーウエイトの更新を行い(ステップS8)、パケット信号の受信を待つ。このように制御することで、アレーウエイトw1〜wQsから常に干渉パケットの影響が少なく、希望信号電力を高める受信信号が得られるため、干渉信号が到来している環境においても安定して希望信号を復号できる。また、アレーウエイトwQs+1〜wQs+QIは常に干渉をとらえているため、干渉パケットの受信を検出でき、干渉チャネル推定結果からアレーウエイトw1〜wQs+QIの更新を円滑に行うことができる。
【0076】
干渉信号と希望信号が重複して受信された際の受信装置の動作を図4と図5を参照して説明する。図4は、干渉信号のパケットが先に到来し、希望信号のパケットが重複して受信された例を示している。まず受信装置は、干渉信号の先頭の制御信号部(P)を受信し、この信号に含まれる既知信号からチャネル情報を推定し、宛先情報から自身が当該パケットの宛先でないことを判断し、干渉チャネル情報を得たことを判定する(図4(1))。このとき、wQs+1〜wQs+QIの受信電力が、w1〜wQsの受信電力より大きいことから、干渉信号であると判定することもできる。干渉チャネルと分かった場合にはただちに干渉チャネルを用いてアレーウエイトの更新を行う(図4(2))。アレーウエイトの更新により、w1〜wQsは干渉信号を大きく抑圧するアレーウエイトになっており、w1〜wQsのアレーウエイトで受信された受信信号により希望信号を検出できる。データの復号が終了した後、希望信号パケットと干渉信号パケットから得られたチャネル情報を用い、アレーウエイトの更新を行う(図4(4))。ただし、希望信号パケットの既知信号は干渉信号により劣化していることが考えられるため、干渉信号パケットの既知信号から推定されるチャネル情報のみを用いて、(61)式、(62)式により干渉信号に対し受信電力が高くなるように干渉信号に対するアレーウエイトwQs+1〜wQs+QIの更新をしたり、(66)式により干渉信号に対する受信電力を低下させるように希望信号に対するアレーウエイトw1〜wQsを更新し、希望信号パケットの既知信号から推定されるチャネル情報を用いないこともできる。
【0077】
また、図5は、希望信号のパケットが先に到来し、干渉信号のパケットが重複して受信された例を示している。まず受信装置は、希望信号の先頭の制御信号部(P)を受信し、この信号に含まれる既知信号からチャネル情報を推定し、宛先情報から自身が当該パケットの宛先であることを判断し、チャネル情報を得たことを判定する(図5(1))。このとき、w1〜wQsの受信電力が、wQs+1〜wQs+QIの受信電力より大きいことから、希望信号であると判定することもできる。希望信号のチャネルと分かった場合には、まずデータ信号の復号を行う。データの復号中にも、wQs+1〜wQs+QIの受信信号に対し、信号位置検出をかけることもできる(図5(2))。データの復号が終了した後、希望信号パケットと干渉信号パケット希望信号から得られたチャネル情報を用い、アレーウエイトの更新を行う(図5(3))。ただし、干渉信号パケットの既知信号から推定されるチャネル情報の精度は希望信号により劣化していることが考えられるため、希望信号パケットの既知信号から推定されるチャネル情報のみを用い、希望信号に対するアレーウエイトと干渉信号に対するアレーウエイトを更新することができる。
【0078】
以上説明したように、複数の受信アンテナのそれぞれに接続された複数のアナログフィルタのフィルタ係数を制御することにより、希望波の信号品質を改善するためのアンテナ指向性制御において、従来の技術では、干渉信号と希望信号とが異なるタイミングで受信される場合に、適切なフィルタ係数を算出できないという問題があった。本発明では、受信信号をQ個の系列にコピーしてそれぞれの系列に対してフィルタ係数の集合であるアレーベクトルを互いに直交するように設定する。また、Q個のうち、Qs個は希望信号の電力を高めるように、Qi個は干渉信号の電力を高めるようにフィルタ係数を設定する。そして、信号を受信した場合に、当該信号が希望信号か否かを判定し、希望信号である場合には、当該希望信号に含まれる既知信号を用いて相関行列を算出し、当該相関行列からQs個のアレーベクトルを決定して更新する。また、当該相関行列の逆行列からQi個のアレーベクトルを決定して更新する。一方、受信した信号が、干渉信号である場合には、当該干渉信号に含まれる既知信号を用いて相関行列を算出し、当該相関行列からQi個のアレーベクトルを決定して更新する。また、当該相関行列の逆行列からQs個のアレーベクトルを決定して算出する。このように構成することにより、干渉信号と希望信号とが同時に受信されない場合にも、それぞれの信号を検出した上で、適切なフィルタ係数(アレーベクトル)を設定することが可能となる。
【0079】
なお、図1における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより無線信号の受信処理(フィルタ係数の算出処理)を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0080】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
到来する信号が通信相手からのものか、非通信相手のものかを判断し、希望信号用のアレーウエイトと、干渉信号用のアレーウエイトを更新することで、非希望端末からの干渉信号をキャンセルしつつ、希望端末からの信号を受信する通信システムを実現することが不可欠な用途に適用できる。
【符号の説明】
【0082】
1−1〜1−P・・・アンテナ、2−1〜2−P・・・分配器、3−1、3−2、3−Q・・・アナログフィルタ部、3−1−1〜P、3−2−1〜P、3−Q−1〜P・・・アナログフィルタ、4−1、4−2、4−Q・・・結合器、5−1、5−2、5−Q・・・受信装置、6・・・信号検出回路、7・・・復号回路、8・・・通信相手判定回路、9・・・フィルタ係数設定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを備え、アナログフィルタを介して、希望端末からの無線信号を受信する受信装置における受信方法であって、
前記アナログフィルタを介して信号を受信する信号受信ステップと、
前記受信した信号が自受信装置宛であるか否かに基づき、前記受信した信号が干渉信号であるか希望信号であるかを判定する受信信号判定ステップと、
前記受信した信号が干渉信号であった場合に、干渉チャネル情報を用いて、干渉信号用と希望信号用の少なくとも一方の前記アナログフィルタのアレーウエイトをそれぞれ更新し、前記受信した信号が希望信号であった場合に、チャネル情報を用いて、希望信号用と干渉信号用の少なくとも一方の前記アナログフィルタのアレーウエイトをそれぞれ更新するアレーウエイト更新ステップとを有する、
ことを特徴とする受信方法。
【請求項2】
前記アレーウエイト更新ステップは、
前記アレーウエイトが乗算されて推定された前記チャネル情報または干渉チャネル情報に対し、前記アレーウエイトから構成されるアレーウエイト行列の疑似逆行列を乗算することで、前記アンテナと前記希望端末間または前記アンテナと干渉端末間の干渉チャネル情報を復元し、得られたチャネル情報または干渉チャネル情報を用いて、前記アレーウエイトを決定して更新することを特徴とする請求項1に記載の受信方法。
【請求項3】
前記アレーウエイト更新ステップは、
前記受信した信号が干渉信号であった場合に、前記干渉チャネル情報の相関行列を用いて前記干渉用アレーウエイトを更新するとともに、前記干渉チャネル情報の相関行列の逆行列を用いて前記希望信号用アレーウエイトを更新し、
前記受信した信号が希望信号であった場合に、前記チャネル情報の相関行列を用いて前記希望信号用アレーウエイトを更新するとともに、前記チャネル情報の相関行列の逆行列を用いて前記干渉信号用アレーウエイトを更新することを特徴とする請求項1に記載の受信方法。
【請求項4】
前記アレーウエイト更新ステップは、前記受信した信号が干渉信号であった場合には直ちに前記アレーウエイトをそれぞれ更新し、前記受信した信号が希望信号であった場合には、データの復号完了後に、前記アレーウエイトをそれぞれ更新することを
特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の受信方法。
【請求項5】
複数のアンテナを備え、アナログフィルタを介して、希望端末からの無線信号を受信する受信装置であって、
前記アナログフィルタを介して信号を受信する信号受信手段と、
前記受信した信号が自受信装置宛であるか否かに基づき、前記受信した信号が干渉信号であるか希望信号であるかを判定する受信信号判定手段と、
前記受信した信号が干渉信号であった場合に、干渉チャネル情報を用いて、干渉信号用と希望信号用の少なくとも一方の前記アナログフィルタのアレーウエイトをそれぞれ更新し、前記受信した信号が希望信号であった場合に、チャネル情報を用いて、希望信号用と干渉信号用の少なくとも一方の前記アナログフィルタのアレーウエイトをそれぞれ更新するアレーウエイト更新手段とを備える、
ことを特徴とする受信装置。
【請求項6】
前記アレーウエイト更新手段は、
前記アレーウエイトが乗算されて推定された前記チャネル情報または干渉チャネル情報に対し、前記アレーウエイトから構成されるアレーウエイト行列の疑似逆行列を乗算することで、前記アンテナと前記希望端末間または前記アンテナと干渉端末間の干渉チャネル情報を復元し、得られたチャネル情報または干渉チャネル情報を用いて、前記アレーウエイトを決定して更新することを特徴とする請求項5に記載の受信装置。
【請求項7】
前記アレーウエイト更新手段は、
前記受信した信号が干渉信号であった場合に、前記干渉チャネル情報の相関行列を用いて前記干渉用アレーウエイトを更新するとともに、前記干渉チャネル情報の相関行列の逆行列を用いて前記希望信号用アレーウエイトを更新し、
前記受信した信号が希望信号であった場合に、前記チャネル情報の相関行列を用いて前記希望信号用アレーウエイトを更新するとともに、前記チャネル情報の相関行列の逆行列を用いて前記干渉信号用アレーウエイトを更新することを特徴とする請求項5に記載の受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−106161(P2013−106161A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248039(P2011−248039)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)