説明

無線信号送受信装置、受信機、送信機および無線通信システム

【課題】単一の周波数チャネルで周波数選択性フェージング耐性を得ることが可能な無線信号送受信装置を得ること。
【解決手段】送信機10と受信機20とを備えた無線信号送受信装置1であって、前記送信機10は、余弦ロールオフフィルタよりも周波数帯域を拡張した拡張余弦ロールオフフィルタを用いて帯域制限を行い、帯域制限した送信信号を通信相手の無線信号送受信装置へ出力する帯域制限フィルタ部、を備え、前記受信機20は、前記通信相手の無線信号送受信装置1から受信した信号より異なる複数の信号系列を抽出するフィルタバンクと、前記複数の信号系列を用いてダイバーシチ合成を行い、受信系列の信号を生成する受信信号合成処理部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送受信時に帯域制限フィルタを用いる無線信号送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な無線シングルキャリア伝送方式では、周波数選択性フェージング環境で周波数に歪が発生する。その結果、無線通信装置間で行う通信の性能が劣化する。このようなフェージング環境において、ダイバーシチ技術を用いて通信性能を改善する方法がある(例えば、下記非特許文献1)。また、ダイバーシチ技術の具体例として、下記特許文献1では、周波数ダイバーシチによりフェージング対策を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−232793号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】唐沢好男著 「ディジタル移動通信の電波伝搬基礎」コロナ社 2003年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術によれば、フェージング対策のため複数の周波数チャネルが必要となる。そのため、無線リソースを有効利用できない、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、単一の周波数チャネルで周波数選択性フェージング耐性を得ることが可能な無線信号送受信装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、送信機と受信機とを備えた無線信号送受信装置であって、前記送信機は、余弦ロールオフフィルタよりも周波数帯域を拡張した拡張余弦ロールオフフィルタを用いて帯域制限を行い、帯域制限した送信信号を通信相手の無線信号送受信装置へ出力する帯域制限フィルタ手段、を備え、前記受信機は、前記通信相手の無線信号送受信装置から受信した信号より異なる複数の信号系列を抽出するフィルタバンク手段と、前記複数の信号系列を用いてダイバーシチ合成を行い、受信系列の信号を生成する受信信号合成処理手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、単一の周波数チャネルで周波数選択性フェージング耐性を得ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施の形態1の無線信号送受信装置の構成例を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態1の送信機の構成例を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態1の受信機の構成例を示す図である。
【図4】図4は、拡張形余弦ロールオフフィルタのフィルタ特性を示す図である。
【図5】図5は、実施の形態2の受信機の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる無線信号送受信装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係る無線信号送受信装置の構成例を示す図である。無線信号送受信装置1は、送信機10と、受信機20と、を備える。無線信号送受信装置1は、同一の構成を備えた通信相手の無線信号送受信装置1との間で無線信号の送受信を行う。
【0012】
図2は、本実施の形態に係る送信機の構成例を示す図である。送信機10は、変調信号生成部11と、位相回転処理部12と、帯域制限フィルタ部13と、を備える。
【0013】
また、図3は、本実施の形態に係る受信機の構成例を示す図である。受信機20は、周波数オフセット処理部21−1、21−2と、受信フィルタ部22−1、22−2と、周波数補正部23−1、23−2と、受信信号合成処理部24と、を備える。
【0014】
まず、送信機10の送信動作について説明する。変調信号生成部11は、入力した送信ビット系列bk(bk(0)、bk(1)、…、bk(m-1)のmビット)を、1シンボルの信号点にマッピングした系列ukに変換する。
【0015】
つぎに、位相回転処理部12は、マッピング系列ukに対して1シンボル毎にφの位相回転を与えて変調系列xkを生成する。例えば、π/4QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)の場合は、φ=π/4となる。
【0016】
そして、帯域制限フィルタ部13は、変調系列xkに対して波形整形を行って変調信号を作成し、変調信号を通信相手の無線信号送受信装置1へ送信信号として出力する。
【0017】
ここで、帯域制限フィルタ部13が使用するフィルタは、余弦ロールオフフィルタに対して信号周波数帯域幅をβだけ拡張した、拡張形余弦ロールオフフィルタを用いる。拡張形余弦ロールオフフィルタの周波数特性をH0(f)とすると、周波数特性H0(f)は次式(1)で表すことができる。
【0018】
【数1】

【0019】
式(1)において、α(0≦α≦1)はフィルタのロールオフ率、βは信号周波数帯域の拡張幅とする。
【0020】
図4は、拡張形余弦ロールオフフィルタのフィルタ特性を示す図である。横軸は周波数fを、縦軸は周波数特性H0(f)を示す。通常の余弦ロールオフフィルタと比較すると、片側においてβ/2(両側あわせてβ)だけ帯域幅が拡張されていることを表している。
【0021】
つづいて、受信機20の受信動作について説明する。周波数オフセット処理部21−1は、通信相手の無線信号送受信装置1から受信した受信信号1に対して、−β/2の周波数オフセットを与える。受信フィルタ部22−1は、周波数オフセット処理部21−1から出力された信号に対して、ナイキスト条件を満たす余弦ロールオフフィルタ(ナイキスト波形整形フィルタ)を用いて波形整形を行う。周波数補正部23−1は、受信フィルタ部22−1からの出力信号に対して、β/2の周波数オフセットと送信側で与えた位相回転φを用いてφ+β/2の周波数補正を行う。
【0022】
同様に、周波数オフセット処理部21−2は、通信相手の無線信号送受信装置1から受信した受信信号2に対して、β/2の周波数オフセットを与える。受信フィルタ部22−2は、周波数オフセット処理部21−2から出力された信号に対して、ナイキスト条件を満たす余弦ロールオフフィルタ(ナイキスト波形整形フィルタ)を用いて波形整形を行う。周波数補正部23−2は、受信フィルタ部22−2からの出力信号に対して、−β/2の周波数オフセットと送信側で与えた位相回転φを用いてφ−β/2の周波数補正を行う。
【0023】
ここで、周波数オフセット処理部21−1から周波数補正部23−1までの構成、および周波数オフセット処理部21−2から周波数補正部23−2までの構成で、通信相手の無線信号送受信装置1から受信した受信信号の特定の周波数帯域を抽出するフィルタバンクを構成しているとみなすことができる。受信機20では、このフィルタバンクを用いて、受信した信号の帯域を全てカバーして、複数(ここでは2つ)の受信信号系列を得ることができる。なお、受信フィルタ部22−1、22−2が用いる余弦ロールオフフィルタ(ナイキスト波形整形フィルタ)は、それぞれ中心周波数が異なっているものとする。
【0024】
そして、受信信号合成処理部24は、周波数補正部23−1、23−2から出力された2系統の信号(受信信号系列)についてダイバーシチ合成を行い、1つの受信系列の信号を出力する。
【0025】
このように、無線信号を送受信する無線信号送受信装置1間において、単一の周波数チャネルを用いて周波数ダイバーシチ効果を得ることができる。なお、無線信号送受信装置1同士で無線信号を送受信する場合について説明したが、これに限定するものではない。例えば、送信機能のみを持つ送信機10と無線信号送受信装置1、無線信号送受信装置1と受信機能のみを持つ受信機20、および、送信機能のみを持つ送信機10と受信機能のみを持つ受信機20、の組み合わせにおいて行われる無線通信にも適用可能である。
【0026】
以上説明したように、本実施の形態では、単一の周波数チャネルで無線信号を送受信する場合に、無線信号送受信装置の送信機において、一般的なシングルキャリア伝送の送信波形整形に用いられる余弦ロールオフフィルタを拡張した拡張形余弦ロールオフフィルタを用いて帯域幅を拡張した信号を送信し、通信相手の無線信号送受信装置の受信機において、中心周波数の異なった複数のナイキスト波形整形フィルタを用いて、送信信号帯域を全てカバーしつつ、複数の受信信号系列を得て、この複数の受信信号系列に対してダイバーシチ受信を実施することとした。これにより、単一の周波数チャネルにおいて、送信信号全体を全て有効に活用してダイバーシチ効果を得ることができ、周波数選択性フェージング耐性を得ることが可能となる。
【0027】
実施の形態2.
本実施の形態では、受信機においてダイバーシチ合成後に適応等化処理を行う。実施の形態1と異なる部分について説明する。
【0028】
本実施の形態に係る無線信号送受信装置1a(図示せず)は、送信機10と、受信機20aと、を備える。送信機10の構成は実施の形態1と同等である。図5は、本実施の形態に係る受信機の構成例を示す図である。受信機20aは、受信機20の構成(図3参照)に加えて、適応等化処理部25を備える。なお、受信信号処理部24までの動作は実施の形態1と同等である。
【0029】
適応等化処理部25は、受信信号処理部24から出力された受信系列に対して、高速周波数選択性フェージング耐性を向上させるため、適応等化処理を行い周波数選択性フェージングの補正を行う。適応等化処理については、例えば、PSP(Per−survivor processing)により等化処理を行う方法があるが、これに限定するものではない。他の方法を用いることも可能である。
【0030】
以上説明したように、本実施の形態では、無線信号送受信装置において、受信ダイバーシチ後に適応等化処理を行うこととした。これにより、実施の形態1の効果に加えて、遅延広がりの小さい、高速周波数選択性フェージング耐性を向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明にかかる無線信号送受信装置は、無線信号の送受信に有用であり、特に、無線シングルキャリア伝送方式に適している。
【符号の説明】
【0032】
1 無線信号送受信装置
10 送信機
11 変調信号生成部
12 位相回転処理部
13 帯域制限フィルタ部
20、20a 受信機
21−1、21−2 周波数オフセット処理部
22−1、22−2 受信フィルタ部
23−1、23−2 周波数補正部
24 受信信号合成処理部
25 適応等化処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機と受信機とを備えた無線信号送受信装置であって、
前記送信機は、
余弦ロールオフフィルタよりも周波数帯域を拡張した拡張余弦ロールオフフィルタを用いて帯域制限を行い、帯域制限した送信信号を通信相手の無線信号送受信装置へ出力する帯域制限フィルタ手段、
を備え、
前記受信機は、
前記通信相手の無線信号送受信装置から受信した信号より異なる複数の信号系列を抽出するフィルタバンク手段と、
前記複数の信号系列を用いてダイバーシチ合成を行い、受信系列の信号を生成する受信信号合成処理手段と、
を備えることを特徴とする無線信号送受信装置。
【請求項2】
前記受信機において、
前記フィルタバンク手段は、受信した信号に対して拡張された周波数帯域幅分を周波数オフセット補正後、複数の信号系列を抽出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線信号送受信装置。
【請求項3】
前記受信機は、さらに、
ダイバーシチ合成後の信号に対して適応等価処理を行い、適応等価処理後の信号を受信系列の信号として出力する適応等価処理手段、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の無線信号送受信装置。
【請求項4】
送信機から出力された信号を受信する受信機であって、
前記送信機が、余弦ロールオフフィルタよりも周波数帯域を拡張した拡張余弦ロールオフフィルタを用いて帯域制限を行い、帯域制限した送信信号を出力する場合に、
前記送信機から受信した信号より異なる複数の信号系列を抽出するフィルタバンク手段と、
前記複数の信号系列を用いてダイバーシチ合成を行い、受信系列の信号を生成する受信信号合成処理手段と、
を備えることを特徴とする受信機。
【請求項5】
前記フィルタバンク手段は、受信した信号に対して拡張された周波数帯域幅分を周波数オフセット補正後、複数の信号系列を抽出する、
ことを特徴とする請求項4に記載の受信機。
【請求項6】
さらに、
ダイバーシチ合成後の信号に対して適応等価処理を行い、適応等価処理後の信号を受信系列の信号として出力する適応等価処理手段、
を備えることを特徴とする請求項4または5に記載の受信機。
【請求項7】
受信機へ信号を出力する送信機であって、
余弦ロールオフフィルタよりも周波数帯域を拡張した拡張余弦ロールオフフィルタを用いて帯域制限を行い、帯域制限した送信信号を前記受信機へ出力する帯域制限フィルタ手段、
を備えることを特徴とする送信機。
【請求項8】
請求項7に記載の送信機と、
請求項4〜6のいずれか1つに記載の受信機と、
から構成されることを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−115707(P2013−115707A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261819(P2011−261819)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】