説明

無線出力機能を備えたレゾルバ

【課題】本発明は、ロータに設けたR/D変換器及び回転角度出力信号無線出力部を介し、回転トランスを用いることなく、かつ、クロストークのない回転角度出力信号を無線で外部に取り出すことができることを目的とする。
【解決手段】本発明による無線出力機能を備えたレゾルバは、ロータ(8)に設けられR/D変換器(12)と回転角度出力信号無線出力部(41)を有する信号処理部(40)を有し、前記ロータ巻線(7)から得られる回転角度出力信号(10)は、前記R/D変換器(12)でR/D変換された後、前記回転角度出力信号無線出力部(41)を介して外部に送信されるため、レゾルバの固定側における励磁信号(12a)と回転角度出力信号(10)とのクロストークを防止して回転角度出力信号(10)を出力することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線出力機能を備えたレゾルバに関し、特に、ロータに設けたR/D変換器及び回転角度出力信号無線出力部を介し、回転トランスを用いることなく、かつ、クロストークのない回転角度出力信号を無線で外部に取り出すことができるようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のレゾルバとしては、例えば、非特許文献1に開示されているブラシ型レゾルバの構成を図4及び図5で挙げることができる。
すなわち、図4及び図5において符号1で示されるものは筒状をなすケースであり、このケース1の内壁1aにはR/D変換器12からの励磁信号12aが入力されるステータ巻線2を有する輪状ステータ3がステータ押え3aを介して設けられている。
【0003】
前記ケース1内には、その両端のベアリング押え4を有する軸受5を介して回転軸6が回転自在に設けられ、この回転軸6にはロータ巻線7を有するロータ8が回転軸6と共に回転するように構成されている。
前記回転軸6の端部には、摺動環9とブラシ(図示せず)が設けられ、前記ロータ巻線7で得られた回転角度出力信号10は、前記摺動環9及びケース1の端子11を介してR/D変換器12に入力され、R/D変換されてデジタル回転角度出力信号13として外部に出力されている。
【0004】
次に、図6で示される構成は、例えば、特許文献1及び2に開示されている回転トランスを用いた回転トランス型レゾルバ20であり、ケース1の内壁1aにはレゾルバステータ巻線2を有する輪状ステータ3が設けられている。
前記ケース1の両端に設けられた一対の軸受5には、前記輪状ステータ3に対応するロータ8を備えた回転軸6が回転自在に設けられ、前記輪状ステータ3及びロータ8によって周知のレゾルバ部21が構成されている。
【0005】
前記輪状ステータ3にはレゾルバステータ巻線2が設けられ、前記ロータ8にはレゾルバロータ巻線7が設けられている。
前記レゾルバ部21の隣接位置には、回転トランス22が設けられており、この回転トランス22は、前記ケース1側に設けられステータトランス巻線30を有するステータトランス31と、前記回転軸6の前記ステータトランス31に対応する位置に設けられロータトランス巻線32を有するロータトランス33とによって構成されている。
【0006】
前述の従来構成の回転トランス型レゾルバ20において、図4と同様のR/D変換器12から供給された励磁信号12aは、回転トランス22のステータトランス31からロータトランス33のロータトランス巻線32から図示しないリード線を介してレゾルバロータ巻線7側へ送られ、この励磁信号12aでレゾルバ部21のレゾルバステータ巻線2を励磁することにより、回転角度θに依存する回転角度出力信号が前記レゾルバステータ巻線2から出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−75197号公報
【特許文献2】特開平8−189805号公報
【0008】
【非特許文献1】1960年発行の「自動制御VoL.7,No.2」の「レゾルバを用いたディジタルーアナログ変換器とその応用」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のレゾルバは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の図4及び図5のブラシ型レゾルバ19の場合、ロータ8に設けられたロータ巻線7に対する給電又は角度信号の取り出しについては、摺動環9とブラシを用いて行うため、摺動環9とブラシの信頼性に課題が存在することもあり、かつ、軸方向長さを短縮することが困難であった。
【0010】
また、前述の図6の回転トランス型レゾルバ20の場合、回転トランス22の形状自体が前述の摺動環9とブラシを用いた構成より大型となり小型化への障害となっていた。
また、回転トランス型レゾルバの固定子側に回転角度出力信号10と励磁信号12aが存在するため、クロストークを生じ易く、回転角度出力信号13の高精度化には不利であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による無線出力機能を備えたレゾルバは、ケースの内壁に設けられ励磁信号を入力するためのステータ巻線を有する輪状ステータと、前記ケースに回転軸を介して回転自在に設けられ回転角度出力信号を出力するためのロータ巻線を有するロータと、よりなるレゾルバにおいて、前記ロータに設けられR/D変換器と回転角度出力信号無線出力部を有する信号処理部を有し、前記ロータ巻線から得られる回転角度出力信号は、前記R/D変換器でR/D変換された後、前記回転角度出力信号無線出力部を介して外部に無線送信されるようにした構成であり、また、前記R/D変換器及び回転角度出力信号無線出力部の電源は、前記回転角度出力信号を整流して得られる構成であり、また、前記信号処理部は、前記ロータの一端面に設けられている構成である。
【発明の効果】
【0012】
本発明による無線出力機能を備えたレゾルバは、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、ケースの内壁に設けられ励磁信号を入力するためのステータ巻線を有する輪状ステータと、前記ケースに回転軸を介して回転自在に設けられ回転角度出力信号を出力するためのロータ巻線を有するロータと、よりなるレゾルバにおいて、前記ロータに設けられR/D変換器と回転角度出力信号無線出力部を有する信号処理部を有し、前記ロータ巻線から得られる回転角度出力信号は、前記R/D変換器でR/D変換された後、前記回転角度出力信号無線出力部を介して外部に無線送信されるように構成したことにより、ステータ側で励磁、ロータ側で回転角度出力信号と云う本来のレゾルバの形態を保った状態で、ロータ側に設けたレゾルバ信号無線出力部から回転角度出力信号を無線で外部に出力することができ、レゾルバの固定側における励磁信号と回転角度出力信号とのクロストークがなくなり、角度検出精度を向上させることができる。
また、回転トランスを使用しなくて済むため、軸方向長さを短縮させた薄形のブラシレスレゾルバを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による無線出力機能を備えたレゾルバを示す概略構成図である。
【図2】図1の要部を示す斜視図である。
【図3】本発明による無線出力機能を備えたレゾルバを適用して構成した実機を示す一部切欠き状の斜視図である。
【図4】従来のブラシ型レゾルバを示す一部切欠き状の斜視図である。
【図5】図4の要部の断面図である。
【図6】従来の回転トランス型レゾルバを示す要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、ロータに設けたR/D変換器及びレゾルバ信号無線出力部を介し、回転トランスを用いることなく回転角度出力信号を外部に取り出すことができるようにした無線出力機能を備えたレゾルバを提供することを目的とする。
【実施例】
【0015】
以下、図面と共に本発明による無線出力機能を備えたレゾルバの好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分については、同一符号を用いて説明する。
図1において、符号1で示されるものは、筒状をなすケースであり、このケース1の内壁1aには、ステータ巻線2を有する輪状ステータ3が設けられている。
【0016】
図3に示されるように、前記ケース1の両端にベアリング押え4を介して設けられた一対の軸受5には、ロータ巻線7を有するロータ8を備えた回転軸6が回転自在に設けられ、前記輪状ステータ3とロータ8とは互いに径方向に沿って対応して配設されている。
前記ロータ8の一端面8aには、全体形状が円板状をなす信号処理部40が設けられ、この信号処理部40内には、R/D変換器12及び回転角度出力信号無線出力部41が内設されている。
【0017】
前記信号処理部40内の前記R/D変換器12には、前記ロータ巻線7から得られたアナログ信号からなる二相の回転角度出力信号10は、図2で示されるように、前記R/D変換器12に入力され、このR/D変換器12からR/D変換後に出力されたデジタル回転角度出力信号13は、回転角度出力信号無線出力部41を経て無線デジタル回転角度出力信号10Aとして外部機器に送信することができる。
【0018】
尚、前述の信号処理部40におけるR/D変換器12及び回転角度出力信号無線出力部41の各電源は、前記信号処理部40に設けられた整流回路(図示せず)を用いて前記回転角度出力信号10を整流して所定の電圧を取り出し、前述の各電源として用いることができる。
【0019】
従って、前述の本発明による無線出力機能を備えたレゾルバは、図1と図2に示される概略構成の構造を実機のレゾルバとして構成すると、図3で示されるレゾルバの構造となる。
すなわち、図3で示される本発明の無線出力機能を備えたレゾルバ50においては、前記ロータ8の一端面8aに信号処理部40が設けられているため、従来のブラシ及び回転トランス22を用いた図4及び図6の構成に比較すると、レゾルバ自体の軸方向長さを従来よりも大幅に短縮することができる。
【0020】
また、前述の無線出力機能を備えたレゾルバ50においては、前記輪状ステータ3のステータ巻線2に励磁信号12aである(sin ωt)が供給された状態で前記ロータ8が回転すると、前記ロータ巻線7からは、回転角度(θ)に依存した二相の回転角度出力信号10である(sinθ・sinωt,cosθ・sinωt)が出力され、この回転角度出力信号10が前述のR/D変換器12及び回転角度出力信号無線出力部41を経て無線デジタル回転角度出力信号10Aとして前記デジタル回転角度出力信号13を外部機器に無線で送信することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明による無線出力機能を備えたレゾルバは、ロータに設けたR/D変換器及びレゾルバ信号無線出力部を介し、従来の回転トランスを用いないで、かつ、クロストークの発生のない回転角度出力信号を外部に取り出すことを目的とする。
【符号の説明】
【0022】
1 ケース
1a 内壁
2 ステータ巻線
3 輪状ステータ
4 ベアリング押え
5 軸受
6 回転軸
7 ロータ巻線
8 ロータ
8a 一端面
10 回転角度出力信号
10A 無線デジタル回転角度出力信号
11 端子
12 R/D変換器
13 デジタル回転角度出力信号
40 信号処理部
41 回転角度出力信号無線出力部
42 アンテナ
50 無線出力機能を備えたレゾルバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース(1)の内壁(1a)に設けられ励磁信号(12a)を入力するためのステータ巻線(2)を有する輪状ステータ(3)と、前記ケース(1)に回転軸(6)を介して回転自在に設けられ回転角度出力信号(10)を出力するためのロータ巻線(7)を有するロータ(8)と、よりなるレゾルバにおいて、
前記ロータ(8)に設けられR/D変換器(12)と回転角度出力信号無線出力部(41)を有する信号処理部(40)を有し、前記ロータ巻線(7)から得られる回転角度出力信号(10)は、前記R/D変換器(12)でR/D変換された後、前記回転角度出力信号無線出力部(41)を介して外部に無線送信されるように構成したことを特徴とする無線出力機能を備えたレゾルバ。
【請求項2】
前記R/D変換器(12)及び回転角度出力信号無線出力部(41)の電源は、前記回転角度出力信号(10)を整流して得られることを特徴とする請求項1記載の無線出力機能を備えたレゾルバ。
【請求項3】
前記信号処理部(40)は、前記ロータ(8)の一端面(8a)に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の無線出力機能を備えたレゾルバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−113835(P2013−113835A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263471(P2011−263471)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】