説明

無線列車信号システム

【課題】地上局と車上局間の通信が阻害され通信障害が発生した場合であっても、通信異常を検知し、装置の故障を検知する無線列車信号システムを提供する。
【解決手段】監視端末4は、地上無線装置であるアクセスポイント2(AP1〜APn)から収集した列車に搭載された通信機1(STA)との間の通信成功情報を用いて作成される受信パケット数の統計情報と、予め作成される受信パケット数の標準値との比較により、通信障害が発生した地上無線装置であるアクセスポイント2(AP1〜APn)を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局と通信可能な移動体の通信装置、及び基地局と移動体間で通信可能な移動体通信システムに関し、特に、移動体通信システムを適用した無線列車信号システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道信号システムにおいて、地上無線装置と車上無線装置との間で通信が行われる。1つの地上無線装置が車両と通信可能なエリアは限られる。そのため、地上無線装置と通信を実施する車両が定められた軌道上を走行する際、前記定軌道上に設置の地上無線装置を順次切り替えながら通信を継続する。地上無線装置または車上無線装置における装置故障や、地上無線装置と車上無線装置との間で行われる通信において干渉などによる通信障害がある場合には、何らかの対策を行い、通信異常から復帰する必要がある。
【0003】
地上無線装置と車上無線装置間で通信異常を検知する方法には、例えば、特許文献1の方法がある。この方法では、地上無線装置が備える2つの無線系統の内、1つの無線系統で生成した監視用データともう一方の無線系統から入力された監視データとの一致を判定し、地上無線装置の故障箇所を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−61268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地上無線装置と車上無線装置間で通信が阻害された場合には、通信異常を検知する監視データが未到達となるため、比較の基準となる監視用データと比較を行うことができず、また、監視データを取得することができずに故障を検知することが困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、通信が阻害されたことを検知できるように、正常に通信できた場合に生成する受信パケット信号または通信局受信順序のログ情報を、地上無線装置(「アクセスポイント(AP)」と称す。)あるいは複数の地上無線装置を管理する地上装置(「アクセスポイントマスタ(APM)」と称す。)において、取得し、監視する。
【0007】
本発明の無線列車信号システムは、列車に搭載された通信機と、前記通信機と無線通信を行う複数の地上無線装置と、前記複数の地上無線装置を管理する地上装置とを備えた無線列車信号システムにおいて、前記地上装置または前記地上無線装置は、標準値テーブルに記録した前記地上無線装置ごとの受信パケット数の標準値情報、あるいは、前記地上無線装置との通信順序の標準値情報と、前記通信機から送信された通信パケットから得られる前記地上無線装置ごとの受信パケット数の情報、あるいは、前記地上無線装置との通信順序の情報とを比較する比較部を備え、前記比較部は、前記標準値情報と前記通信機からの情報とを比較し、比較の結果、判定基準と異なる実走行情報となる場合には、監視部に異常の検知を通知することを特徴とする。
【0008】
本発明の無線列車信号システムは、更に、前記地上無線装置から収集した前記列車に搭載された通信機との間の通信成功情報を用いて作成される通信相手の地上無線装置のアクセスポイント番号順序と、前記標準値テーブルに記録した通信相手アクセスポイント順序の標準値との比較により、通信障害が発生した地上無線装置を検知することを特徴とする。
【0009】
本発明の無線列車信号システムは、更に、前記列車に搭載された通信機において前記地上無線装置との通信成功情報を用いて作成される受信パケット数の統計情報と、予め作成される受信パケット数の標準値との比較により、通信障害が発生した地上無線装置を検知することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の無線列車信号システムは、前記列車に搭載された通信機において前記地上無線装置との通信成功情報を用いて作成される受信パケット数の統計情報と、予め作成される受信パケット数の標準値との比較により、通信障害が発生した地上無線装置を検知することを特徴とする。
【0011】
本発明の無線列車信号システムは、更に、監視端末は、前記地上無線装置から収集した前記列車に搭載された通信機との間の通信成功情報を用いて作成される受信パケット数の統計情報と比較する、予め作成される受信パケット数の標準値について、前記列車に搭載された通信機から取得可能な情報を用いて補正を行うことにより、通信障害が発生した地上無線装置を検知することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の無線列車信号システムは、監視端末は、前記地上無線装置から収集した前記列車に搭載された通信機との間の通信成功情報を用いて作成される受信パケット数の統計情報と比較する、予め作成される受信パケット数の標準値について、前記列車に搭載された通信機から取得可能な情報を用いて補正を行うことにより、通信障害が発生した地上無線装置を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通信障害が発生した場合であっても、通信異常を検知し、装置の故障を検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の無線列車信号システムの構成を示す図である。
【図2】図2は本発明の実施例1の地上装置を示す図である。
【図3】図3は本発明の実施例1の統計情報処理フローを示す図である。
【図4】図4は本発明の実施例1の通信異常の判定方法を示す図である。
【図5】図5は本発明の実施例1の判定基準テーブルを示す図である。
【図6】図6は本発明の実施例2の地上装置を示す図である。
【図7】図7は本発明の実施例2の通信順序判定処理を説明する図である。
【図8】図8は本発明の実施例2の通信順序判定処理フローを示す図である。
【図9】図9は本発明の実施例3の車上の通信機を示す図である。
【図10】図10は本発明の実施例4の車上の通信機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0016】
[無線列車信号システムの構成]
まず、無線列車信号システムの構成について図1で説明する。通信機を備えた列車(ステーション、以降「STA」と称す。)と、列車と無線通信を行う地上装置(アクセスポイント、以降「AP」と称す。)と、定軌道上に配置される複数のAPと有線接続され、各APの管理を行うAPマスタ(以降、「APM」と称す。)により構成される。
【0017】
AP2とSTA1との間で行われる通信における異常を検知する場合、異常判定する通信ノードはAP2、APM3、STA1と複数考えられる。ここでは、APM3が異常判定する場合について、以降説明する。
【0018】
[通信システムの地上装置の構成]
通信異常検知装置を備えたAPM3について図2で説明する。(適宜、図3、図4を参照。)APM3は通信異常を検知するための基準となる受信パケット数標準値テーブル301を保持するが、走行前に設定がなされている。受信パケット数標準値テーブル301は、特定の速度で運行した場合のAP2ごとの受信パケット数を示したものである。受信パケット数標準値テーブル301は、事前に算出して格納しておくことができる。たとえばAP2ごとの通信可能エリアの距離および走行速度の設計値から、当該通信可能エリアを通過する時間が求められる。
【0019】
当該通信可能エリアの通過時間および通信パケットの送信周期から、受信パケット数を計算可能である。または、複数の実走行サンプルデータを平均化することで求めた、各AP2の受信パケット数を受信パケット数標準値テーブル301として用いることもできる。
【0020】
APM3は、通信パケット受信応答情報を、通信部302を介して、情報抽出部303が受信する。情報抽出部303において、受信した通信パケットから、実運行データである走行速度情報1012、車両位置情報1013を実運行データデータベース304(以降「DB」と称す。)へ送信する。
【0021】
また、当該通信パケットを受信したAP番号、列車とAP間で伝送に使用された通信周波数チャネル(以降「ch」と称す。)情報、受信AP2で当該通信パケットを受信した時刻であるタイムスタンプの情報を、受信パケット数の統計値を算出する統計処理部305へ送信する。
【0022】
統計処理部305において、計算されたAP2ごとに受信したパケット数を記録した統計情報を、APごと受信パケット数DB306へと送信する。実運行データDB304に格納した運行情報である速度情報から、各AP2が通信可能なエリアにおける通信時間がわかるため、受信パケット数がどの程度受信できるか算出可能である。
【0023】
そのため、判定基準生成部307において、受信パケット数標準値テーブル301の補正を行う。比較部308が、補正を行った受信パケット数標準値テーブル301と実際に受信したパケット数が記載されるAPごと受信パケット数DB306のデータとを比較する(図5の判定基準501と判定対象502を参照。)。
【0024】
そして、比較結果が監視部309に送信され、監視部309は、実際の受信パケット数が、判定基準501である受信パケット数標準値テーブル301のデータを補正した受信パケット数を下回るAP2が存在する否かの判定を実施する。存在しない場合には、元の処理に復帰する。そして、判定基準501を下回るAP2が存在する場合には、監視部309は、ランプまたはモニタといった表示部310に対して、通信異常の発生または発生箇所APの一方、あるいはその両方を表示する。
【0025】
そして、異常が発生した原因の特定のために、監視部309は、ログ情報として判定に用いられた情報を判定ログDB311に格納しておく。
【0026】
図3は本発明の実施例1の統計情報処理フローを示す図である。図3のステップS301において、特定の速度で運行した場合の受信パケット数を示した受信パケット数標準値テーブル301を作成し、ステップS302において、受信パケットから統計情報および運行情報を抽出する。ステップS303において、実運行データDB304に格納した運行情報から各AP2の通信エリアにおける受信パケット数の補正値を算出して、ステップS304において、判定基準生成部307において受信パケット数標準値テーブル301を補正する。
【0027】
ステップS305において、比較部308においてAP毎の受信パケット数を判定基準501と比較し、ステップS306において、判定基準501を下回る受信パケット数であるAPが有るか否かを判定する。ステップS306において、判定基準501を下回る受信パケット数であるAP2が無い(No)の場合には、ステップS309に移行し、元の処理に復帰する。
【0028】
ステップS306において、判定基準501を下回る受信パケット数であるAPが有った場合(Yes)には、ステップS307において、表示部310に異常が検知されたことを表示し、ステップS308において、判定に用いた判定情報を判定ログDB311に格納した後、ステップS309において、元の処理に復帰する。
【0029】
図4は、本発明の実施例1の通信異常の判定方法を示す図である。図4において、地上無線装置であるアクセスポイントAP2(例、AP1,AP2)は、STA1と無線通信を行い、AP2とSTA1との無線通信が成功するとSTA1は応答信号(Ack)を送信し、アクセスポイントAP2(例、AP1,AP2)は、APM3に受信応答情報を送信する。
【0030】
APM3は、受信応答情報を集計し、APM3に接続された監視端末4は、集計された受信応答情報についての統計処理を行う。受信応答信号の受信件数が、正常通信時の最低受信パケット数よりも減少した場合に、異常が発生したAP2の異常検知を行う。
【0031】
図5は、本発明の実施例1の判定基準テーブルを示す図である。図5において、501は判定基準である正常通信時受信パケット数、502は判定対象である受信パケット数実データ、503は、判定結果である通信異常可能性の有無(有:1)を示している。
【0032】
AP番号の1,2、nの正常通信時受信パケット数が、50,25,50であるのに対し、受信パケット数実データが、60,12,63の場合に、AP番号2のアクセスポイントに通信異常可能性(有:1)との判定がなされている。
【実施例2】
【0033】
[通信異常判定方法2:通信順序]
通信異常の判定方法には、前述のパケット受信数による方法の他に、AP2の通信順序による方法がある。図6は本発明の実施例2の地上通信装置を示す図である。
【0034】
図6に、AP2の通信順序を用いて通信異常の判定を行う場合の、APMの構成を示す。図7は本発明の実施例2の通信順序判定処理を説明する図である。
【0035】
STA1から通信パケットを受信したAP2は、該通信パケットをAPM3の通信部602へ送信する。APM3において受信した通信パケットは、通信部602を介して情報抽出部603へ送られる。情報抽出部603において、当該通信パケットを受信したAP番号およびタイムスタンプ情報を抽出する。
【0036】
これらの情報を用いて、AP番号ごとの受信パケット数を一定時間ごとに記録した表を作成可能である。通信AP順序算出処理部605において、一定時間ごとの受信パケット数が最大となるAP2を通信相手であるとして、通信相手AP番号702を抽出する。
【0037】
図7において、時刻ごとの受信パケット数701が、AP番号ごとに記録されている。AP番号ごとの時刻ごとの受信パケット数701に基づいて、時刻ごとの通信相手AP番号702を特定する。例えば、時刻ごとに受信パケット数が最大であるAP番号を調べると、13→13→13→5と変化し、通信相手AP番号702が、1→2→2→2と変化している。一方、予め定められた通信相手AP標準703は、1→2→2→2と変化している。
【0038】
図7における特定の時刻07:04:00〜07:05:00の場合を例にあげて詳細を説明する。本来の通信相手である通信相手AP標準703は、「AP3」のはずであるにも関わらず、実際は、通信相手AP番号702が、「AP2」との結果となっている。この場合、通信順序に異常がみられるため、判定結果704は、0→1に変化し、「AP3」での通信異常を検出することができる。この際、異常判定を行った時刻における通信ログを、判定ログDB611に格納する。また、通信相手AP標準703は、例えば、通信AP順序標準値テーブル601に記録されている。
【0039】
図8は、本発明の実施例2の通信順序判定処理フローを示す図である。図8のステップS801において、当該路線で運行した場合の通信相手AP2の順序を示した通信AP順序標準値テーブル601を作成し、ステップS802において、受信パケットから統計情報を抽出し、ステップS803において、通信AP順序算出処理部605において、通信相手AP番号702を算出し、ステップS804において、算出したAP番号を通信AP順序DB606に格納する。
【0040】
ステップS805において、比較部608において、通信相手AP番号702の情報と通信AP順序標準値テーブル601に記載された通信相手AP標準703の情報とを比較し、ステップS806において、通信相手APが標準値と異なるか否かを判定する。
【0041】
ステップS806において、通信相手APが標準値と異ならない(No)場合には、ステップS809において、元の処理に復帰する。ステップS806において、通信相手APが標準値と異なる(Yes)場合には、ステップS807において、表示部610に異常が検知されたことを表示し、ステップS808において、判定に用いた判定情報を判定ログDB611に格納し、ステップS809において、元の処理に復帰する。
【実施例3】
【0042】
図9は、本発明の実施例3の車上通信装置を示しており、通信機を備えた列車であるSTA1が通信異常検知装置を備えている。
【0043】
[通信システムの構成]
通信異常検知装置を備えたSTA1について図9で説明する。STA1は通信異常を検知するための基準となる標準値テーブル901を保持し、走行前に設定がなされている。標準値テーブル901は、特定の速度で運行した場合のAP2ごとの受信パケット数を示したものである。標準値テーブル901は、事前に算出して格納しておくことができる。たとえばAP2ごとの通信可能エリアの距離および走行速度の設計値から、当該通信可能エリアを通過する時間が求められる。
【0044】
当該通信可能エリアの通過時間および通信パケットの送信周期から、受信パケット数を計算可能である。または、複数の実走行サンプルデータを平均化することで求めた、各AP2の受信パケット数を標準値テーブル901として用いることもできる。
【0045】
STA1は、実運行データである走行速度情報912、車両位置情報913を実運行データデータベース904(以降「DB」と称す。)へ送信する。
【0046】
STA1は、通信パケット受信応答情報を、通信部902を介して、情報抽出部903が受信する。情報抽出部903において、当該通信パケットを受信したAP番号、列車とAP間で伝送に使用された通信周波数チャネル(以降「ch」と称す。)情報、受信AP2で当該通信パケットを受信した時刻であるタイムスタンプの情報を、受信パケット数の統計値を算出する統計処理部905へ送信する。
【0047】
統計処理部905において、計算されたAP2ごとに受信したパケット数を記録した統計情報を、APごと受信パケット数DB906へと送信する。実運行データDB904に格納した運行情報である速度情報から、各AP2が通信可能なエリアにおける通信時間がわかるため、受信パケット数がどの程度受信できるか算出可能である。
【0048】
そのため、判定基準生成部907において、標準値テーブル901の補正を行う。比較部908が、補正を行った標準値テーブル901と実際に受信したパケット数が記載されるAPごと受信パケット数DB906のデータとを比較する。
【0049】
そして、比較結果が監視部909に送信され、監視部909は、実際の受信パケット数が、判定基準501である標準値テーブル901のデータを補正した受信パケット数を下回るAP2が存在する否かの判定を実施する。存在しない場合には、元の処理に復帰する。
【0050】
そして、異常が発生した原因の特定のために、監視部909は、ログ情報として判定に用いられた情報を判定ログDB911に格納しておく。
【実施例4】
【0051】
[列車における異常判定(通信異常判定方法1・2の判定場所違い)のダイヤ、運行情報への対応(オプション)]
【0052】
図10に、ダイヤ、運行情報の変更があった場合の処理について、説明する。図9には、前述のようにAPM3に積載されていた通信異常検知装置を、列車側に積載した場合について記載している。
【0053】
図10で説明する処理は、図9に示すように通信異常検知装置が列車側に積載された場合を例に説明するが、図2のようにAPM3側に該通信異常検知装置が積載されていてもよい。
【0054】
図10において、STA1は通信異常を検知するための基準となる標準値テーブル1001を保持し、走行前に設定がなされている。標準値テーブル1001は、特定の速度で運行した場合のAP2ごとの受信パケット数を示したものである。標準値テーブル1001は、事前に算出して格納しておくことができる。たとえばAP2ごとの通信可能エリアの距離および走行速度の設計値から、当該通信可能エリアを通過する時間が求められる。
【0055】
当該通信可能エリアの通過時間および通信パケットの送信周期から、受信パケット数を計算可能である。または、複数の実走行サンプルデータを平均化することで求めた、各AP2の受信パケット数を標準値テーブル1001として用いることもできる。
【0056】
STA1は、実運行データである走行速度情報912、車両位置情報913を実運行データDB1004へ送信する。
【0057】
STA1は、通信パケット受信応答情報を、通信部1002を介して、情報抽出部1003が受信する。情報抽出部1003において、当該通信パケットを受信したAP番号、列車とAP間で伝送に使用された通信周波数チャネル(以降「ch」と称す。)情報、受信AP2で当該通信パケットを受信した時刻であるタイムスタンプの情報を処理するデータ処理部1005へ送信する。
【0058】
データ処理部1005において、計算されたAP2ごとに受信したパケット数を記録した統計情報を、APごと受信パケット数DB1006へと送信する。実運行データDB1004に格納した運行情報である速度情報から、各AP2が通信可能なエリアにおける通信時間がわかるため、受信パケット数がどの程度受信できるか算出可能である。
【0059】
そのため、判定基準生成部1007において、標準値テーブル1001の補正を行う。比較部1008が、補正を行った標準値テーブル1001と実際に受信したパケット数が記載されるAPごと受信パケット数DBのデータとを比較する。
【0060】
そして、比較結果が監視部1009に送信され、監視部1009は、実際の受信パケット数が、判定基準501である標準値テーブル1001のデータを補正した受信パケット数を下回るAP2が存在する否かの判定を実施する。存在しない場合には、元の処理に復帰する。そして、判定基準501を下回るAP2が存在する場合には、監視部1009は、ランプまたはモニタといった表示部1010に対して、通信異常の発生または発生箇所APの一方、あるいはその両方を表示する。
【0061】
そして、異常が発生した原因の特定のために、監視部1009は、ログ情報として判定に用いられた情報を判定ログDB1011に格納しておく。
【0062】
実運行データDB1004への入力に、情報抽出部1003から抽出されたダイヤ情報1015、ランカーブ情報1014が入力される場合を考える。例えば、気象条件などの理由で運行情報に遅延が発生し、ダイヤの乱れがあった場合には、特定のAP2のエリア内での通信時間が本来算出していた時間とは異なり、前述の標準値では実際の運行には対応できない場合が考えられる。
【0063】
そのため、標準値テーブル1001のデータに対して、実際のランカーブ情報1014やダイヤ情報1015を反映させる必要がある。よって実運行データDB1004に、運行情報1014やダイヤ情報1015が入力されると、標準値テーブル1001のデータの補正を、判定基準生成部1007において行う。たとえば、車両から取得可能な、位置情報1013と走行速度情報1012を用いて、各AP2と通信を行う時間を算出することが可能である。または、ダイヤ情報や走行区間の走行速度パターンを規定するランカーブ情報から、各車両位置における速度情報が判明するため、各AP2と通信を行う時間を算出することが可能である。
【0064】
そのため、標準値テーブル1001のデータを運行状況に応じたものとするために、判定基準生成部1007において、新たな標準値の補正を行う。また、補正された標準値を更新してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 STA
2 AP
3 APM
4 監視端末
301 受信パケット数標準値テーブル
302 通信部
303 情報抽出部
304 実運行データDB
305 統計処理部
306 APごと受信パケット数DB
307 判定基準生成部
308 比較部
309 監視部
310 表示部
311 判定ログDB
501 判定基準
502 判定対象
503 判定結果
601 通信AP順序標準値テーブル
602 通信部
603 情報抽出部
605 通信AP順序算出処理部
606 通信AP順序DB
608 比較部
609 監視部
610 表示部
611 判定ログDB
701 時刻ごとの受信パケット数
702 通信相手AP番号
703 通信相手AP標準
704 判定結果
901 標準値テーブル
902 通信部
903 情報抽出部
904 実運行データDB
905 統計処理部
906 APごと受信パケット数DB
907 判定基準生成部
908 比較部
909 監視部
911 判定ログDB
912 走行速度情報
913 車両位置情報
1001 標準値テーブル
1002 通信部
1003 情報抽出部
1004 実運行データDB
1005 データ処理部
1006 APごと受信パケット数DB
1007 判定基準生成部
1008 比較部
1009 監視部
1010 表示部
1011 判定ログDB
1012 走行速度情報
1013 車両位置情報
1014 ランカーブ情報
1015 ダイヤ情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車に搭載された通信機と、前記通信機と無線通信を行う複数の地上無線装置と、前記複数の地上無線装置を管理する地上装置とを備えた無線列車信号システムにおいて、
前記地上装置または前記地上無線装置は、標準値テーブルに記録した前記地上無線装置ごとの受信パケット数の標準値情報、あるいは、前記地上無線装置との通信順序の標準値情報と、前記通信機から送信された通信パケットから得られる前記地上無線装置ごとの受信パケット数の情報、あるいは、前記地上無線装置との通信順序の情報とを比較する比較部を備え、
前記比較部は、前記標準値情報と前記通信機からの情報とを比較し、比較の結果、判定基準と異なる実走行情報となる場合には、監視部に異常の検知を通知することを特徴とする無線列車信号システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線列車信号システムにおいて、前記地上無線装置から収集した前記列車に搭載された通信機との間の通信成功情報を用いて作成される通信相手の地上無線装置のアクセスポイント番号順序と、前記標準値テーブルに記録した通信相手アクセスポイント順序の標準値との比較により、通信障害が発生した地上無線装置を検知することを特徴とする無線列車信号システム。
【請求項3】
請求項2に記載の無線列車信号システムにおいて、前記列車に搭載された通信機において前記地上無線装置との通信成功情報を用いて作成される受信パケット数の統計情報と、予め作成される受信パケット数の標準値との比較により、通信障害が発生した地上無線装置を検知することを特徴とする無線列車信号システム。
【請求項4】
請求項1に記載の無線列車信号システムにおいて、前記列車に搭載された通信機において前記地上無線装置との通信成功情報を用いて作成される受信パケット数の統計情報と、予め作成される受信パケット数の標準値との比較により、通信障害が発生した地上無線装置を検知することを特徴とする無線列車信号システム。
【請求項5】
請求項1に記載の無線列車信号システムにおいて、監視端末は、前記地上無線装置から収集した前記列車に搭載された通信機との間の通信成功情報を用いて作成される受信パケット数の統計情報と比較する、予め作成される受信パケット数の標準値について、前記列車に搭載された通信機から取得可能な情報を用いて補正を行うことにより、通信障害が発生した地上無線装置を検知することを特徴とする無線列車信号システム。
【請求項6】
請求項2に記載の無線列車信号システムにおいて、監視端末は、前記地上無線装置から収集した前記列車に搭載された通信機との間の通信成功情報を用いて作成される受信パケット数の統計情報と比較する、予め作成される受信パケット数の標準値について、前記列車に搭載された通信機から取得可能な情報を用いて補正を行うことにより、通信障害が発生した地上無線装置を検知することを特徴とする無線列車信号システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−91409(P2013−91409A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234514(P2011−234514)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】