無線受信機および無線受信方法
【課題】マルチキャリア方式無線の受信において、相互変調による干渉を防止する。
【解決手段】マルチキャリア変調方式によって伝送される第一の無線信号を受信および復調する無線受信機であって、前記第一の無線信号と、前記第一の無線信号が伝送される周波数帯域の近傍の周波数帯域において伝送される第二の無線信号と、を受信する受信手段と、前記受信手段が受信した第二の無線信号の中から、信号強度が所定値以上の搬送波を検出するセンシング手段と、前記検出した搬送波によって発生する相互変調波の周波数帯域を計算する干渉波検出手段と、前記相互変調波の周波数帯域が、前記第一の無線信号が伝送される周波数帯域に含まれる場合に、前記第一の無線信号に含まれる搬送波のうち、前記相互変調波の周波数帯域を含む搬送波を除外して前記第一の無線信号を復調する復調手段と、を有する。
【解決手段】マルチキャリア変調方式によって伝送される第一の無線信号を受信および復調する無線受信機であって、前記第一の無線信号と、前記第一の無線信号が伝送される周波数帯域の近傍の周波数帯域において伝送される第二の無線信号と、を受信する受信手段と、前記受信手段が受信した第二の無線信号の中から、信号強度が所定値以上の搬送波を検出するセンシング手段と、前記検出した搬送波によって発生する相互変調波の周波数帯域を計算する干渉波検出手段と、前記相互変調波の周波数帯域が、前記第一の無線信号が伝送される周波数帯域に含まれる場合に、前記第一の無線信号に含まれる搬送波のうち、前記相互変調波の周波数帯域を含む搬送波を除外して前記第一の無線信号を復調する復調手段と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線受信機および無線受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両やドライバーへの情報提供や、道路と車両、車両間での情報交換によって交通事故を低減するための路車間・車車間通信システムが提案されている。
【0003】
現在、路車間・車車間通信システムの実現のために使用される予定の周波数に、700MHz帯を用いることが検討されている。この700MHz帯の周波数は、路車間・車車間通信システムのほか、LTE(Long Term Evolution)方式による携帯電話での使用も
予定されている。
【0004】
700MHz帯の電波割り当て再編案を参照すると、LTE方式携帯電話の上り周波数と下り周波数の中間に、路車間・車車間通信システム用の周波数を配置する案が存在している(非特許文献1 案700−3)。
【0005】
一方で、近接した周波数帯に複数の無線通信システムが存在する場合、電波干渉が問題となるケースがある。特許文献1に記載された無線通信装置は、コグニティブ無線に関する発明であり、近傍に複数の無線システムがあった場合、自システムと他システムとの関連度を示すメトリック情報を用い、システム間で電波干渉を起こす度合いを判断している。干渉を起こす可能性がある場合、自システムの送信を停止し、また、出力を下げることで電波干渉の回避を実現している。
【0006】
また、特許文献2に記載された無線通信装置は、自システムと、他の周波数帯を用いる無線通信システムとの電波干渉が発生しやすいと見込まれるエリアを無線機内に記憶しており、当該エリア情報と自機の位置情報によって、電波干渉の起きやすさを判断している。干渉が発生しやすいエリア内では、電波干渉の度合を低減させる通信方式に切り替えることで、電波干渉の回避を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−253450号公報
【特許文献2】特開2011−015115号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】”携帯電話等周波数有効利用方策委員会(第51回)配布資料(参考1)”、[online]、情報通信審議会 情報通信技術分科会、[平成23年6月20日検索]、インターネット<URL:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/keitai_syuuha/39264_1.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の発明では、他無線システムとの距離や、自無線システムの存在を周囲に知らせる信号によって干渉が発生する可能性を判断し、送信の停止や出力の抑制によって干渉を回避している。また、特許文献2に記載の発明では、干渉が発生しやすいエリア内に自装置が位置しているかを判断し、通信方式を変更することによって干渉を回避している。
【0010】
路車間・車車間通信システム(以下、ITSシステム)の利用においても、帯域が近接するLTE携帯電話システム(以下、LTEシステム)との電波干渉が発生することが考えられる。しかし、ITSシステムとLTEシステムのサービスエリアは重複しているうえ、車内に設置されたITS機器の近傍で携帯電話を使用することが考えられるため、システム間の距離や無線サービスのエリアといった情報は、干渉の回避のために利用することができず、特許文献1もしくは2に係る発明ではこの課題を解決することはできない。
【0011】
特に携帯電話端末は、一般的に送信回路のフィルタ性能が高くないため、自システムの送信周波数帯域以外の帯域に、他システムに干渉を及ぼす相互変調波を発生させてしまうことがある。
【0012】
また、ITS機器の近傍でLTE方式の携帯電話を使用した場合、受信機(車載端末)が使用する周波数と、送信機(携帯電話端末)が使用する周波数の双方が近接しており、また、受信機と送信機の物理的な距離も近いため、受信機が相互変調波によって干渉を受けやすいという問題がある。
【0013】
なお、このような電波干渉の問題は、ITSシステムとLTEシステムの間だけでなく、他の規格による無線通信システムにおいても起こり得る。
【0014】
このような問題を解決するため、マルチキャリア無線を使用する受信機の近傍で、隣接する周波数を用いて通信が行われた場合にあっても、干渉の影響を受けることなく受信が行える無線通信装置が求められている。
【0015】
本発明は上記の問題点を考慮してなされたものであり、マルチキャリア無線の受信において、相互変調による干渉を受けても、品質を落とさずに信号を受信できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係る無線受信機では以下の手段により、相互変調による干渉を受けた場合においても品質を落とさずに信号を受信できるようにする。
【0017】
本発明に係る無線受信機は、マルチキャリア変調方式によって伝送される第一の無線信号を受信および復調する無線受信機であって、前記第一の無線信号と、前記第一の無線信号が伝送される周波数帯域の近傍の周波数帯域において伝送される第二の無線信号と、を受信する受信手段と、前記受信手段が受信した第二の無線信号の中から、信号強度が所定の値以上の搬送波を検出するセンシング手段と、前記検出した搬送波によって発生する相互変調波の周波数帯域を計算する干渉波検出手段と、前記相互変調波の周波数帯域が、前記第一の無線信号が伝送される周波数帯域に含まれる場合に、前記第一の無線信号に含まれる搬送波のうち、前記相互変調波の周波数帯域を含む搬送波を除外して前記第一の無線信号を復調する復調手段と、を有することを特徴とする。
【0018】
本発明における無線受信機は、隣接する周波数帯をセンシングする手段を有し、信号が検出された場合、相互変調波が現れる周波数を計算し、相互変調波が、自己が使用する周波数帯域に含まれていた場合、相互変調波により干渉を受ける搬送波(サブキャリア)を除外して復調を行う。このように構成することにより、他システムとの周波数帯が近接している場合でも、品質を落とさずに信号を受信することが可能となる。
【0019】
また、前記復調手段は、前記第二の無線信号に含まれる搬送波の信号強度が所定の条件を満たす場合に、前記相互変調波の周波数帯域を含む搬送波を除外して前記第一の無線信
号を復調するようにしてもよい。
【0020】
所定の条件とは、干渉の原因となる信号の強度が、被干渉波の復調に影響を及ぼすほど強いものであるか、影響を及ぼさない程度に弱いものであるかを判定するための条件であり、たとえば目的とする信号との電力差が一定値以下である場合、などと定義することができる。このように構成することにより、相互変調波は、復調に影響を及ぼすものであるか否かを判定することができるため、復調に問題がないレベルの干渉であるにもかかわらず、サブキャリアを除外してしまうという問題を回避することができる。
【0021】
また、前記復調手段は、復調時に発生したエラーを検出する手段をさらに有し、復調が正常に行われていないと判断した場合に、前記相互変調波の周波数帯域を含む搬送波を除外して前記第一の無線信号を復調するようにしてもよい。
【0022】
このように構成することにより、実際にデータが正常に復調できない場合にのみ相互変調波を含むサブキャリアを除外することが可能になり、処理のオーバーヘッドを減らすことができる。
【0023】
また、前記第一の無線信号の変調方式はOFDMであり、前記第二の無線信号の変調方式は、SC−FDMAであることが好ましい。
【0024】
SC−FDMAによる無線信号とは、LTE方式による携帯電話を想定している。自システムが使用する周波数帯域の中に複数の相互変調波が現れた場合、干渉を受けるサブキャリアを順次復調の対象から外していくと、あるレベルを境に、情報量が不足して復調ができなくなるケースが考えられる。しかし、無線受信機の近傍にてLTE携帯電話を使用することを想定した場合、携帯電話一台一台がそれぞれ使用する帯域は広くないため、各々の相互変調波の信号強度は強くても、復調ができなくなるほど多数の相互変調波が出現することはない。つまり、相互変調波を含むサブキャリアを除外することで、電波干渉の問題が解決することが期待できる。
【0025】
また、前記干渉波検出手段は、前記センシング手段が検出した搬送波の周波数をa、前記第二の無線信号の伝送に使用される周波数帯域の中心周波数、すなわちDCサブキャリアの中心周波数をbとして、式(1),式(2)で表される周波数A,Bを相互変調波の周波数として計算することを特徴としてもよい。
A=4b−3a…式(1)
B=3a−2b…式(2)
【0026】
相互変調波は、一定のアルゴリズムによってその出現位置が計算できるため、式(1)と式(2)によって、被干渉側システムの周波数帯域内に現れる全ての相互変調波の周波数を特定することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、マルチキャリア無線の受信において、相互変調による干渉を受けても、品質を落とさずに信号を受信できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】LTEシステムとITSシステムの周波数帯域を表す図である。
【図2】LTEシステムがITSシステムに干渉する様子を表す図である。
【図3】本発明における無線受信機の機能構成を表す図である。
【図4】本実施形態における無線受信機の処理フローチャートである。
【図5】LTE,ITSの各システムの周波数帯域における電波割り当てを表した図である。
【図6】7次相互変調波の周波数計算方法を表す図である。
【図7】5次相互変調波の周波数計算方法を表す図である。
【図8】LTE,ITSシステム間の電波干渉の具体例を示す図である。
【図9】干渉の元となるサブキャリアと被干渉波の信号強度差を示す図である。
【図10】本実施形態の変形例における無線受信機の処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(技術的課題の解決方法)
LTEシステムと、ITSシステムとの電波干渉を例に、技術的課題について説明する。図1は、LTEシステムの上り周波数と下り周波数との間に、ITSシステムの周波数が配置された例である。それぞれの周波数は数MHzの帯域を持っており、システム間には互いの干渉を防止するためにガードバンドと呼ばれる空き周波数が配置されている。
【0030】
LTEシステムとITSシステム間の電波干渉の発生原因を、図2を用いて説明する。複数の互いに直交するサブキャリアを使うマルチキャリア方式の無線においては、特定のサブキャリアで信号を送信する場合、無線送信機の回路構成によって自身のDCサブキャリアとの相互変調波が発生する場合がある。相互変調波とは、サブキャリアと同じ周波数幅を持ち、特定の周波数を軸として対称形に現れる信号のことであり、発生メカニズムによって3次、5次、7次の相互変調波が発生する。送信周波数帯域の中心を軸として現れる相互変調波は、3次相互変調波と呼ばれる。また、サブキャリアを軸として3次相互変調波と対象に現れる相互変調波は5次相互変調波と呼ばれ、3次相互変調波を軸として、サブキャリアと対称形に現れる相互変調波は、7次相互変調波と呼ばれる。
【0031】
システム間には、干渉を防ぐためのガードバンドが配置されているが、例えば、LTEシステムの中心周波数と、サブキャリアとの間隔が5MHzであった場合、3次相互変調波は信号より10MHz高い位置に現れ、7次相互変調波は信号より20MHz高い位置に現れる。このため、相互変調波がガードバンドを超えてITSシステムの割り当て周波数の中に現れ、ITSシステムが使用する信号に干渉する可能性がある。この問題は、LTEシステムとITSシステムとの間以外であっても起こり得る。
【0032】
この問題を解決するためには、受信機側において、相互変調波による干渉の影響を排除できる受信方式をとる必要がある。
【0033】
一方、マルチキャリア方式による無線通信では、各サブキャリアが冗長成分を持っているため、いくつかのサブキャリアを受信することができなくても、他のサブキャリアが持っている冗長分より情報が復元できることがある。ITSシステムもマルチキャリア方式を採用しているため、特定のサブキャリアのレベルが弱く受信ができない場合であっても、残りのサブキャリアから得た受信データの冗長分を利用し、符号化などの演算(エラー訂正)によって正しく受信データを得られる可能性がある。しかし、相互変調波の信号強度が強い場合、被干渉波の信号も強く見えるため、受信機はこれを復調しようと試み、結果として正しいデータが得られなくなってしまう。これは、干渉の原因となるLTE端末がITS端末の近傍にある場合に特に顕著になる。具体的には、ITS端末が搭載された自動車の車内でLTE方式の携帯電話を使用した場合、上りの周波数帯域がITSシステムに干渉し、ITS端末が受信データを正しく復調できなくなるおそれがある。つまり、エラー訂正技術を用いても、前述した課題を解決することはできない。
【0034】
この問題を解決するため、本願発明に係る無線受信機では、自システムが使用する周波数帯域の中に、隣接するシステムによってもたらされる相互変調波が存在するかを判定し、存在する場合、干渉されるサブキャリアを復調の対象から外し、正常なサブキャリアの
みを用いて信号の復調を行う。以下に、具体的な実施形態について述べる。
【0035】
(無線受信機の構成)
本実施形態における無線受信機の概要について説明する。図3は、本実施形態における無線受信機の構成を示した図である。
【0036】
受信部34は、ITSシステムにて使用する周波数帯域と、LTEシステムにて使用する周波数帯域の双方を、アンテナ31を通して受信する手段である。受信部34は、信号を増幅する増幅器、増幅された信号をベースバンド信号に変換するダウンコンバータなどを有する、マルチキャリア方式による無線信号を受信するためのフロントエンド部である。受信した信号のうち、ITSシステムに対応する周波数帯域の信号は復調部35へ、LTEシステムに対応する周波数帯域の信号はセンシング部32へ送信される。
【0037】
センシング部32は、LTEシステムにて使用される周波数帯域の信号を取得し、使用されているリソースブロックを判定する手段である。LTEシステムのアップリンクが使用しているSC−FDMA(単一キャリア周波数分割多重アクセス:Single Carrier Frequency Division Multiple Access)方式では、複数のサブキャリアから成るリソースブ
ロック単位で電波資源の割り当てが行われるため、通信が行われているサブキャリアを検出することで、使用中のリソースブロックを特定することができる。センシング部32の動作の詳細については後述する。
【0038】
干渉波検出部33は、センシング部32が判定した使用中のリソースブロックの周波数を元に、ITSシステムに干渉を及ぼす相互変調波が発生するか推定する手段である。具体的には、センシング部32が検出した周波数と、LTEシステム用として定められた周波数の上限値と下限値を用いて、相互変調波の出現が予想される周波数を計算する。計算式および計算方法については後述する。
【0039】
復調部35は、受信部34が出力したベースバンド信号をビット列に復調する手段である。復調部35は、ベースバンド信号をデジタル信号に変換するA/D変換器、ガードインターバル(GI)を除去するGI除去手段、各サブキャリアを取得するための高速フーリエ変換(FFT)手段など、マルチキャリア方式の無線信号を復調するための手段を含んでいる。また、復調部35は、干渉波検出部33が計算した相互変調波の周波数を取得し、自己が復調する周波数の帯域内に相互変調波の出現が予想される場合、干渉するサブキャリアを除外して復調する機能を有する。詳細な方法については後述する。
【0040】
情報処理部36は、復調部35によって復調されたデジタルデータを用いて情報処理を行う手段である。本無線受信機から外部の端末にデータを出力する場合、情報処理部36によって希望する形式にデータを変換してもよい。
【0041】
以下に、本発明に係る無線受信機の動作フローチャートである図4を参照しながら、各手段の詳細について述べる。
【0042】
(センシングの方法)
本発明に係る無線受信機が動作を開始すると、センシング部32が、隣接する周波数帯域のセンシングを行う(S10)。図5は、センシング対象のLTEシステムが使用する周波数帯域の電波割り当てを表した図である。周波数の割り当てが検討されているLTEシステムは、5MHzから20MHzの帯域を有しており、それぞれ、180kHzの幅を持つリソースブロックにて構成されている。一つのリソースブロックには、15kHzの幅を持つ12個のサブキャリア(15kHz×12=180kHz)が割り当てられ、リソースブロック単位でLTE端末に対して電波資源の割り当てが行われる。
【0043】
センシング部32は、LTEシステムに割り当てられた上記の周波数帯域において、通信が行われているサブキャリアを検出する(S11)。サブキャリアの検出においては、受信した信号のレベルが所定の値以上であった場合に通信が行われていると判断してもよい。通信が行われているサブキャリアを検出した場合、周囲にLTE通信端末があると判断し、当該サブキャリアの周波数帯域を含んでいるリソースブロックを特定する(S12)。通信が行われているサブキャリアを検出しなかった場合は、周囲にLTE通信端末は無いと判断し、リソースブロックの特定は行わない。
【0044】
図5を参照して具体例を説明する。例えば、LTEシステムに745〜750MHzが割り当てられており、周波数の下限から順にリソースブロックが詰めて配置されている場合において、1番と2番のブロックが使用されていた場合、745.0MHzから745.36MHzまでが使用中であることがわかる。特定されたリソースブロックの周波数は、干渉波検出部33へ送られる。
【0045】
(7次相互変調波の特定)
次に、干渉波検出部33が、ITSシステムに割り当てられた周波数帯域の中に現れると予想される相互変調波の周波数を計算する(S13)。
【0046】
図6は、7次相互変調波が生成される模様を示したものである。ここでは、通信が行われているリソースブロックの周波数をf1とし、LTEシステムで使用する周波数帯域の中心周波数をf0とする。なお、リソースブロックは180kHzの周波数幅を持っているが、ここでは便宜的にリソースブロックの中心周波数をf1として説明する。もちろん、中心以外の周波数を用いて、干渉される周波数帯域を計算してもよい。
【0047】
LTEのアップリンクで採用されているSC−FDMAをはじめ、一般に、サブキャリアを用いて信号を伝送する方式の無線機では、無線機回路内の相互変調によって、目的のサブキャリアとは異なる周波数に、サブキャリアと同じ周波数帯域幅を持つ信号が現れる場合がある。相互変調波は、送信周波数帯域の中心周波数f0を軸として、信号と対称となる位置に現れる。これは3次相互変調波と呼ばれ、その周波数は、f0−(f1−f0)=2f0−f1という式にて表すことができる。
【0048】
また、3次相互変調波を軸として、さらに上の周波数帯に相互変調波が現れる場合がある。これは7次相互変調波と呼ばれ、その周波数はf2+(f2−f1)=2f2−f1=2(2f0−f1)−f1=4f0−3f1という式にて表すことができる。7次相互変調波は、LTEシステムに割り当てられた周波数帯域の外に現れるため、干渉波検出部33は、(4f0−3f1)を中心とする180kHz(上下90kHz)の帯域が自システムで使用する周波数帯域と重なっていた場合、ITSシステムがLTEによる干渉を受けると判断することができる。
【0049】
ITSシステムが使用する周波数帯域は10MHzであり、図5に示したように、53個のサブキャリアに分かれている。前述した相互変調波がサブキャリアと重なっていた場合、該当するサブキャリアは干渉により妨害を受けると予測できるため、干渉波検出部33は該当する周波数の情報を復調部35に送信する。
【0050】
たとえば、LTEシステムの周波数割り当てが740〜750MHz、ITSシステムの周波数割り当てが755MHz以上であり、740MHz〜740.18MHzがLTEによる通信で使用されていた場合、f0=745.0MHz、f1=740.09MHzとなるため、7次相互変調波は、4×745.0−3×740.09=759.73MHzを中心とする±90kHzの範囲(759.64MHz〜759.82MHz)に現
れることがわかる。
【0051】
(5次相互変調波の特定)
図6にて、7次相互変調波を説明したのと同様に、図7は、5次相互変調波が生成される模様を示したものである。7次相互変調波と同様に、通信が行われているリソースブロックの中心周波数をf1とし、LTEシステムが使用する送信周波数帯域の中心周波数をf0とする。
【0052】
通信が行われているリソースブロックが中心周波数より上であった場合、3次相互変調波は、割り当てられた帯域の中心周波数f0を軸として低い周波数側に対称に現れる。その周波数は、同様に2f0−f1という式で表すことができる。
【0053】
このケースの場合、通信が行われているリソースブロックを軸として、3次相互変調波と対称となる位置に相互変調波f3が現れる場合がある。これは5次相互変調波と呼ばれ、その周波数はf1+(f1−f2)=2f1−f2=2f1−(2f0−f1)=3f1−2f0という式で表すことができる。5次相互変調波も、同様にLTEシステムに割り当てられた周波数帯域の外に現れるため、干渉波検出部33は、(3f1−2f0)を中心とする180kHz(上下90kHz)の帯域が自システムで使用する周波数帯域と重なっていた場合、ITSシステムがLTEによる干渉を受けると判断することができる。
【0054】
前述した相互変調波が、サブキャリアと重なっていた場合、該当するサブキャリアは干渉により妨害を受けると予測できるため、干渉波検出部33は該当する周波数の情報を復調部35に送信する。
【0055】
たとえば、LTEシステムの周波数割り当てが740〜750MHz、ITSシステムの周波数割り当てが755MHz以上であり、749.82MHz〜750MHzがLT
Eによる通信で使用されていた場合、f0=745.0MHz、f1=749.91MHzとなるため、5次相互変調波は、3×749.91−2×745.0=759.73MHzを中心とする±90kHzの範囲(759.64MHz〜759.82MHz)に現
れることがわかる。
【0056】
なお、図6と図7では、LTEシステムの割り当て周波数より高い周波数帯に5次および7次相互変調波が現れる例を示したが、通信を行うリソースブロックの位置によっては、低い周波数帯に現れる場合もある。そのため、ITSシステムより高い周波数帯でLTEシステムが運用されていた場合でも、電波干渉が発生しうる。この場合においても、相互変調波の周波数は、前述した数式にて求めることができる。
【0057】
(復調可否の判断)
次に、復調部35の処理について説明する。ステップS11で、通信中のLTE端末が検出されなかった場合、復調部35は、受信部34から受信した全てのサブキャリアを用いて信号の復調を行い(S15)、取得したデータを情報処理部36へ送信する。
【0058】
一方、ステップS13で相互変調波が検出された場合、復調部35は、相互変調波と重なる位置にあるサブキャリアを除外して信号の復調を行う(S14)。相互変調波との重なりは、計算された相互変調波の周波数帯域と、自システムが使用するサブキャリアの周波数帯域を比較することによって行う。例えば、相互変調波が753MHz±90kHzの位置に現れると計算された場合であって、あるサブキャリアの帯域下限が753MHzであった場合、両者は重なるため、当該サブキャリアは復調より除外される。
【0059】
各サブキャリアは、伝送モードやガードインターバル比等の伝送パラメータを用いて、FFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)演算を行うことによって復調される。特定のサブキャリアを復調から除外する場合、当該サブキャリアについてはFFT演算を行わず、他のサブキャリアの復調結果のみを合成して目的のデータを取得する。
【0060】
図8は、ITSシステムが使用するサブキャリアと、計算された相互変調波の周波数帯域が重なった場合の例である。ITSシステムが使用する53個のサブキャリアのうち、本例では5番と6番の2つのサブキャリアが干渉の影響を受ける。そのため、復調部35は、該当する2つのサブキャリアを除外して復調を行い、取得したデータを情報処理部36へ送信する。
【0061】
なお、相互変調波とサブキャリアとの重なりについては、一部でも周波数が重なっていた場合は除外してもよいし、一定の周波数幅以上が重なっていた場合に除外をしてもよい。
【0062】
なお、図4のフローチャートは、LTEシステムが使用するリソースブロックの割り当て変更に追従できるよう一定の間隔で連続実行されてもよいし、相互変調波の周波数が変化した場合に実行されてもよい。
【0063】
(信号強度により復調可否の判断を行う変形例)
サブキャリアと相互変調波が重なっていた場合、復調部35は該当するサブキャリアを除外して復調を行うが、微弱な相互変調波が複数あった場合、問題なく信号が復調できるにもかかわらず、複数のサブキャリアを除外してしまい、結果として全てのデータが復調できなくなる可能性がある。これを回避するため、信号の強度によって復調可否の判断を行うのが本変形例である。以下に詳細な説明を行う。
【0064】
キャリアの信号強度は、RSSI(Received Signal Strength Indicator)という値によって表すことができ、その単位は[dB]もしくは[dBm]である。図9は、ITSシステムが使用するサブキャリアと、LTEシステムが使用するサブキャリアの信号強度に差がある場合を示した図である。図9の例は、ITSシステムが使用するサブキャリアがd1[dBm]の信号強度を持ち、LTEシステムが使用するサブキャリアがd2[dBm]の信号強度を持っていることを示している。
【0065】
ITSシステムが使用するサブキャリアの信号強度の取得は、受信部34が行い、測定された信号強度は復調部35へ送信される。LTEシステムが使用するサブキャリアの信号強度の測定も同様に受信部34が行い、信号強度はセンシング部32を経由して干渉波検出部33へ送信される。ここで、干渉波検出部33が相互変調波を検出した場合、該当するLTEシステムの信号強度は、相互変調波の周波数に関する情報と共に復調部35へ送信される。
【0066】
復調部35は、信号強度に関する条件を保持している。信号強度に関する条件とは、たとえば、「d1−d2が10dB以下である場合」のように設定することができる。復調部35は、ステップS14の復調処理を実行する前に信号強度を受信し、相互変調波の信号強度が条件を満たしているかの判断を行ったうえで復調の可否を決定する。
【0067】
このようにすることによって、ITSシステムの通信に影響を及ぼさない微弱な相互変調波を無視して処理を行うことができる。自動車の車内でLTE方式の携帯電話を使用した場合、上り帯域の信号強度が強いため、干渉によってデータの復調に障害が発生するが、車外で使用されている場合には障害が発生しないというケースが考えられる。このようなケースにおいては、信号強度による復調の可否判断が有効となる。
【0068】
(エラー検出により復調可否の判断を行う変形例)
信号強度によって復調の可否判断を行う他に、実際にデータの復調を試行し、正常に復調できない場合にのみサブキャリアの除外を行う例が本変形例である。
【0069】
図10は、本変形例に係るフローチャートである。ステップS13〜S14間の処理以外は、図4のフローチャートと同様である。復調部35は、ステップS13にて相互変調波を特定した後、全てのサブキャリアを復調する処理を行う(S13a)。この結果、正しくデータを復調することができた場合は処理を継続し、復調時にエラーが発生した場合は、干渉されたサブキャリアを除外して復調を行う(S13b)。
【0070】
復調の正常/異常判定は、受信電力が高いにもかかわらず、本来であればエラーがあまり発生しない場合において、たとえばハッシュ関数などによるエラー検出の結果で判定してもよいし、ハミング符号や畳み込み符号などの誤り訂正符号によるエラー訂正を試みた結果、エラー訂正が不可能である場合に異常と判定してもよい。
【0071】
また、復調時のエラー率を計算し、所定の値を超過した場合において異常と判定してもよい。この場合、たとえば複数シンボルの復調処理において、所定のエラー率を続けて超過した場合に異常としてもよいし、平均エラー率などを使用してもよい。
【0072】
このように構成することにより、相互変調波が実際に復調に影響する場合にのみサブキャリアを除外する動作をさせることが可能になり、処理のオーバーヘッドが減少する。
【0073】
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本発明はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうるものである。たとえば、上記に示したフローチャートは、動作を例示したものであり、全ての処理が例示した通りの順序で行われなくてもよいし、必要のない処理をスキップしてもよい。例を挙げると、使用中のリソースブロックが変化していない場合は、干渉波の周波数計算を再度行う必要は無いし、全サブキャリアが復調できるかの確認を毎回必ず行う必要もない。
【0074】
また、相互変調波の原因となる無線システムは、実施形態の例で述べたように特定の狭い帯域に相互変調波を発生させるものであれば、LTEシステム以外であっても構わない。その場合、干渉波の発生するアルゴリズムを、本実施形態に適用することで、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
また、本実施形態では、変調方式にOFDMを使用したITSシステムを被干渉無線システムとして例示したが、マルチキャリア変調方式であれば、それ以外の変調方式を用いても構わない。たとえば、OFDMA(直交周波数分割多元接続:Orthogonal Frequency
Division Multiple Access)変調などを使用しても構わない。
【符号の説明】
【0076】
3 無線受信機
31 アンテナ
32 センシング部
33 干渉波検出部
34 受信部
35 復調部
36 情報処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線受信機および無線受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両やドライバーへの情報提供や、道路と車両、車両間での情報交換によって交通事故を低減するための路車間・車車間通信システムが提案されている。
【0003】
現在、路車間・車車間通信システムの実現のために使用される予定の周波数に、700MHz帯を用いることが検討されている。この700MHz帯の周波数は、路車間・車車間通信システムのほか、LTE(Long Term Evolution)方式による携帯電話での使用も
予定されている。
【0004】
700MHz帯の電波割り当て再編案を参照すると、LTE方式携帯電話の上り周波数と下り周波数の中間に、路車間・車車間通信システム用の周波数を配置する案が存在している(非特許文献1 案700−3)。
【0005】
一方で、近接した周波数帯に複数の無線通信システムが存在する場合、電波干渉が問題となるケースがある。特許文献1に記載された無線通信装置は、コグニティブ無線に関する発明であり、近傍に複数の無線システムがあった場合、自システムと他システムとの関連度を示すメトリック情報を用い、システム間で電波干渉を起こす度合いを判断している。干渉を起こす可能性がある場合、自システムの送信を停止し、また、出力を下げることで電波干渉の回避を実現している。
【0006】
また、特許文献2に記載された無線通信装置は、自システムと、他の周波数帯を用いる無線通信システムとの電波干渉が発生しやすいと見込まれるエリアを無線機内に記憶しており、当該エリア情報と自機の位置情報によって、電波干渉の起きやすさを判断している。干渉が発生しやすいエリア内では、電波干渉の度合を低減させる通信方式に切り替えることで、電波干渉の回避を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−253450号公報
【特許文献2】特開2011−015115号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】”携帯電話等周波数有効利用方策委員会(第51回)配布資料(参考1)”、[online]、情報通信審議会 情報通信技術分科会、[平成23年6月20日検索]、インターネット<URL:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/keitai_syuuha/39264_1.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の発明では、他無線システムとの距離や、自無線システムの存在を周囲に知らせる信号によって干渉が発生する可能性を判断し、送信の停止や出力の抑制によって干渉を回避している。また、特許文献2に記載の発明では、干渉が発生しやすいエリア内に自装置が位置しているかを判断し、通信方式を変更することによって干渉を回避している。
【0010】
路車間・車車間通信システム(以下、ITSシステム)の利用においても、帯域が近接するLTE携帯電話システム(以下、LTEシステム)との電波干渉が発生することが考えられる。しかし、ITSシステムとLTEシステムのサービスエリアは重複しているうえ、車内に設置されたITS機器の近傍で携帯電話を使用することが考えられるため、システム間の距離や無線サービスのエリアといった情報は、干渉の回避のために利用することができず、特許文献1もしくは2に係る発明ではこの課題を解決することはできない。
【0011】
特に携帯電話端末は、一般的に送信回路のフィルタ性能が高くないため、自システムの送信周波数帯域以外の帯域に、他システムに干渉を及ぼす相互変調波を発生させてしまうことがある。
【0012】
また、ITS機器の近傍でLTE方式の携帯電話を使用した場合、受信機(車載端末)が使用する周波数と、送信機(携帯電話端末)が使用する周波数の双方が近接しており、また、受信機と送信機の物理的な距離も近いため、受信機が相互変調波によって干渉を受けやすいという問題がある。
【0013】
なお、このような電波干渉の問題は、ITSシステムとLTEシステムの間だけでなく、他の規格による無線通信システムにおいても起こり得る。
【0014】
このような問題を解決するため、マルチキャリア無線を使用する受信機の近傍で、隣接する周波数を用いて通信が行われた場合にあっても、干渉の影響を受けることなく受信が行える無線通信装置が求められている。
【0015】
本発明は上記の問題点を考慮してなされたものであり、マルチキャリア無線の受信において、相互変調による干渉を受けても、品質を落とさずに信号を受信できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係る無線受信機では以下の手段により、相互変調による干渉を受けた場合においても品質を落とさずに信号を受信できるようにする。
【0017】
本発明に係る無線受信機は、マルチキャリア変調方式によって伝送される第一の無線信号を受信および復調する無線受信機であって、前記第一の無線信号と、前記第一の無線信号が伝送される周波数帯域の近傍の周波数帯域において伝送される第二の無線信号と、を受信する受信手段と、前記受信手段が受信した第二の無線信号の中から、信号強度が所定の値以上の搬送波を検出するセンシング手段と、前記検出した搬送波によって発生する相互変調波の周波数帯域を計算する干渉波検出手段と、前記相互変調波の周波数帯域が、前記第一の無線信号が伝送される周波数帯域に含まれる場合に、前記第一の無線信号に含まれる搬送波のうち、前記相互変調波の周波数帯域を含む搬送波を除外して前記第一の無線信号を復調する復調手段と、を有することを特徴とする。
【0018】
本発明における無線受信機は、隣接する周波数帯をセンシングする手段を有し、信号が検出された場合、相互変調波が現れる周波数を計算し、相互変調波が、自己が使用する周波数帯域に含まれていた場合、相互変調波により干渉を受ける搬送波(サブキャリア)を除外して復調を行う。このように構成することにより、他システムとの周波数帯が近接している場合でも、品質を落とさずに信号を受信することが可能となる。
【0019】
また、前記復調手段は、前記第二の無線信号に含まれる搬送波の信号強度が所定の条件を満たす場合に、前記相互変調波の周波数帯域を含む搬送波を除外して前記第一の無線信
号を復調するようにしてもよい。
【0020】
所定の条件とは、干渉の原因となる信号の強度が、被干渉波の復調に影響を及ぼすほど強いものであるか、影響を及ぼさない程度に弱いものであるかを判定するための条件であり、たとえば目的とする信号との電力差が一定値以下である場合、などと定義することができる。このように構成することにより、相互変調波は、復調に影響を及ぼすものであるか否かを判定することができるため、復調に問題がないレベルの干渉であるにもかかわらず、サブキャリアを除外してしまうという問題を回避することができる。
【0021】
また、前記復調手段は、復調時に発生したエラーを検出する手段をさらに有し、復調が正常に行われていないと判断した場合に、前記相互変調波の周波数帯域を含む搬送波を除外して前記第一の無線信号を復調するようにしてもよい。
【0022】
このように構成することにより、実際にデータが正常に復調できない場合にのみ相互変調波を含むサブキャリアを除外することが可能になり、処理のオーバーヘッドを減らすことができる。
【0023】
また、前記第一の無線信号の変調方式はOFDMであり、前記第二の無線信号の変調方式は、SC−FDMAであることが好ましい。
【0024】
SC−FDMAによる無線信号とは、LTE方式による携帯電話を想定している。自システムが使用する周波数帯域の中に複数の相互変調波が現れた場合、干渉を受けるサブキャリアを順次復調の対象から外していくと、あるレベルを境に、情報量が不足して復調ができなくなるケースが考えられる。しかし、無線受信機の近傍にてLTE携帯電話を使用することを想定した場合、携帯電話一台一台がそれぞれ使用する帯域は広くないため、各々の相互変調波の信号強度は強くても、復調ができなくなるほど多数の相互変調波が出現することはない。つまり、相互変調波を含むサブキャリアを除外することで、電波干渉の問題が解決することが期待できる。
【0025】
また、前記干渉波検出手段は、前記センシング手段が検出した搬送波の周波数をa、前記第二の無線信号の伝送に使用される周波数帯域の中心周波数、すなわちDCサブキャリアの中心周波数をbとして、式(1),式(2)で表される周波数A,Bを相互変調波の周波数として計算することを特徴としてもよい。
A=4b−3a…式(1)
B=3a−2b…式(2)
【0026】
相互変調波は、一定のアルゴリズムによってその出現位置が計算できるため、式(1)と式(2)によって、被干渉側システムの周波数帯域内に現れる全ての相互変調波の周波数を特定することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、マルチキャリア無線の受信において、相互変調による干渉を受けても、品質を落とさずに信号を受信できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】LTEシステムとITSシステムの周波数帯域を表す図である。
【図2】LTEシステムがITSシステムに干渉する様子を表す図である。
【図3】本発明における無線受信機の機能構成を表す図である。
【図4】本実施形態における無線受信機の処理フローチャートである。
【図5】LTE,ITSの各システムの周波数帯域における電波割り当てを表した図である。
【図6】7次相互変調波の周波数計算方法を表す図である。
【図7】5次相互変調波の周波数計算方法を表す図である。
【図8】LTE,ITSシステム間の電波干渉の具体例を示す図である。
【図9】干渉の元となるサブキャリアと被干渉波の信号強度差を示す図である。
【図10】本実施形態の変形例における無線受信機の処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(技術的課題の解決方法)
LTEシステムと、ITSシステムとの電波干渉を例に、技術的課題について説明する。図1は、LTEシステムの上り周波数と下り周波数との間に、ITSシステムの周波数が配置された例である。それぞれの周波数は数MHzの帯域を持っており、システム間には互いの干渉を防止するためにガードバンドと呼ばれる空き周波数が配置されている。
【0030】
LTEシステムとITSシステム間の電波干渉の発生原因を、図2を用いて説明する。複数の互いに直交するサブキャリアを使うマルチキャリア方式の無線においては、特定のサブキャリアで信号を送信する場合、無線送信機の回路構成によって自身のDCサブキャリアとの相互変調波が発生する場合がある。相互変調波とは、サブキャリアと同じ周波数幅を持ち、特定の周波数を軸として対称形に現れる信号のことであり、発生メカニズムによって3次、5次、7次の相互変調波が発生する。送信周波数帯域の中心を軸として現れる相互変調波は、3次相互変調波と呼ばれる。また、サブキャリアを軸として3次相互変調波と対象に現れる相互変調波は5次相互変調波と呼ばれ、3次相互変調波を軸として、サブキャリアと対称形に現れる相互変調波は、7次相互変調波と呼ばれる。
【0031】
システム間には、干渉を防ぐためのガードバンドが配置されているが、例えば、LTEシステムの中心周波数と、サブキャリアとの間隔が5MHzであった場合、3次相互変調波は信号より10MHz高い位置に現れ、7次相互変調波は信号より20MHz高い位置に現れる。このため、相互変調波がガードバンドを超えてITSシステムの割り当て周波数の中に現れ、ITSシステムが使用する信号に干渉する可能性がある。この問題は、LTEシステムとITSシステムとの間以外であっても起こり得る。
【0032】
この問題を解決するためには、受信機側において、相互変調波による干渉の影響を排除できる受信方式をとる必要がある。
【0033】
一方、マルチキャリア方式による無線通信では、各サブキャリアが冗長成分を持っているため、いくつかのサブキャリアを受信することができなくても、他のサブキャリアが持っている冗長分より情報が復元できることがある。ITSシステムもマルチキャリア方式を採用しているため、特定のサブキャリアのレベルが弱く受信ができない場合であっても、残りのサブキャリアから得た受信データの冗長分を利用し、符号化などの演算(エラー訂正)によって正しく受信データを得られる可能性がある。しかし、相互変調波の信号強度が強い場合、被干渉波の信号も強く見えるため、受信機はこれを復調しようと試み、結果として正しいデータが得られなくなってしまう。これは、干渉の原因となるLTE端末がITS端末の近傍にある場合に特に顕著になる。具体的には、ITS端末が搭載された自動車の車内でLTE方式の携帯電話を使用した場合、上りの周波数帯域がITSシステムに干渉し、ITS端末が受信データを正しく復調できなくなるおそれがある。つまり、エラー訂正技術を用いても、前述した課題を解決することはできない。
【0034】
この問題を解決するため、本願発明に係る無線受信機では、自システムが使用する周波数帯域の中に、隣接するシステムによってもたらされる相互変調波が存在するかを判定し、存在する場合、干渉されるサブキャリアを復調の対象から外し、正常なサブキャリアの
みを用いて信号の復調を行う。以下に、具体的な実施形態について述べる。
【0035】
(無線受信機の構成)
本実施形態における無線受信機の概要について説明する。図3は、本実施形態における無線受信機の構成を示した図である。
【0036】
受信部34は、ITSシステムにて使用する周波数帯域と、LTEシステムにて使用する周波数帯域の双方を、アンテナ31を通して受信する手段である。受信部34は、信号を増幅する増幅器、増幅された信号をベースバンド信号に変換するダウンコンバータなどを有する、マルチキャリア方式による無線信号を受信するためのフロントエンド部である。受信した信号のうち、ITSシステムに対応する周波数帯域の信号は復調部35へ、LTEシステムに対応する周波数帯域の信号はセンシング部32へ送信される。
【0037】
センシング部32は、LTEシステムにて使用される周波数帯域の信号を取得し、使用されているリソースブロックを判定する手段である。LTEシステムのアップリンクが使用しているSC−FDMA(単一キャリア周波数分割多重アクセス:Single Carrier Frequency Division Multiple Access)方式では、複数のサブキャリアから成るリソースブ
ロック単位で電波資源の割り当てが行われるため、通信が行われているサブキャリアを検出することで、使用中のリソースブロックを特定することができる。センシング部32の動作の詳細については後述する。
【0038】
干渉波検出部33は、センシング部32が判定した使用中のリソースブロックの周波数を元に、ITSシステムに干渉を及ぼす相互変調波が発生するか推定する手段である。具体的には、センシング部32が検出した周波数と、LTEシステム用として定められた周波数の上限値と下限値を用いて、相互変調波の出現が予想される周波数を計算する。計算式および計算方法については後述する。
【0039】
復調部35は、受信部34が出力したベースバンド信号をビット列に復調する手段である。復調部35は、ベースバンド信号をデジタル信号に変換するA/D変換器、ガードインターバル(GI)を除去するGI除去手段、各サブキャリアを取得するための高速フーリエ変換(FFT)手段など、マルチキャリア方式の無線信号を復調するための手段を含んでいる。また、復調部35は、干渉波検出部33が計算した相互変調波の周波数を取得し、自己が復調する周波数の帯域内に相互変調波の出現が予想される場合、干渉するサブキャリアを除外して復調する機能を有する。詳細な方法については後述する。
【0040】
情報処理部36は、復調部35によって復調されたデジタルデータを用いて情報処理を行う手段である。本無線受信機から外部の端末にデータを出力する場合、情報処理部36によって希望する形式にデータを変換してもよい。
【0041】
以下に、本発明に係る無線受信機の動作フローチャートである図4を参照しながら、各手段の詳細について述べる。
【0042】
(センシングの方法)
本発明に係る無線受信機が動作を開始すると、センシング部32が、隣接する周波数帯域のセンシングを行う(S10)。図5は、センシング対象のLTEシステムが使用する周波数帯域の電波割り当てを表した図である。周波数の割り当てが検討されているLTEシステムは、5MHzから20MHzの帯域を有しており、それぞれ、180kHzの幅を持つリソースブロックにて構成されている。一つのリソースブロックには、15kHzの幅を持つ12個のサブキャリア(15kHz×12=180kHz)が割り当てられ、リソースブロック単位でLTE端末に対して電波資源の割り当てが行われる。
【0043】
センシング部32は、LTEシステムに割り当てられた上記の周波数帯域において、通信が行われているサブキャリアを検出する(S11)。サブキャリアの検出においては、受信した信号のレベルが所定の値以上であった場合に通信が行われていると判断してもよい。通信が行われているサブキャリアを検出した場合、周囲にLTE通信端末があると判断し、当該サブキャリアの周波数帯域を含んでいるリソースブロックを特定する(S12)。通信が行われているサブキャリアを検出しなかった場合は、周囲にLTE通信端末は無いと判断し、リソースブロックの特定は行わない。
【0044】
図5を参照して具体例を説明する。例えば、LTEシステムに745〜750MHzが割り当てられており、周波数の下限から順にリソースブロックが詰めて配置されている場合において、1番と2番のブロックが使用されていた場合、745.0MHzから745.36MHzまでが使用中であることがわかる。特定されたリソースブロックの周波数は、干渉波検出部33へ送られる。
【0045】
(7次相互変調波の特定)
次に、干渉波検出部33が、ITSシステムに割り当てられた周波数帯域の中に現れると予想される相互変調波の周波数を計算する(S13)。
【0046】
図6は、7次相互変調波が生成される模様を示したものである。ここでは、通信が行われているリソースブロックの周波数をf1とし、LTEシステムで使用する周波数帯域の中心周波数をf0とする。なお、リソースブロックは180kHzの周波数幅を持っているが、ここでは便宜的にリソースブロックの中心周波数をf1として説明する。もちろん、中心以外の周波数を用いて、干渉される周波数帯域を計算してもよい。
【0047】
LTEのアップリンクで採用されているSC−FDMAをはじめ、一般に、サブキャリアを用いて信号を伝送する方式の無線機では、無線機回路内の相互変調によって、目的のサブキャリアとは異なる周波数に、サブキャリアと同じ周波数帯域幅を持つ信号が現れる場合がある。相互変調波は、送信周波数帯域の中心周波数f0を軸として、信号と対称となる位置に現れる。これは3次相互変調波と呼ばれ、その周波数は、f0−(f1−f0)=2f0−f1という式にて表すことができる。
【0048】
また、3次相互変調波を軸として、さらに上の周波数帯に相互変調波が現れる場合がある。これは7次相互変調波と呼ばれ、その周波数はf2+(f2−f1)=2f2−f1=2(2f0−f1)−f1=4f0−3f1という式にて表すことができる。7次相互変調波は、LTEシステムに割り当てられた周波数帯域の外に現れるため、干渉波検出部33は、(4f0−3f1)を中心とする180kHz(上下90kHz)の帯域が自システムで使用する周波数帯域と重なっていた場合、ITSシステムがLTEによる干渉を受けると判断することができる。
【0049】
ITSシステムが使用する周波数帯域は10MHzであり、図5に示したように、53個のサブキャリアに分かれている。前述した相互変調波がサブキャリアと重なっていた場合、該当するサブキャリアは干渉により妨害を受けると予測できるため、干渉波検出部33は該当する周波数の情報を復調部35に送信する。
【0050】
たとえば、LTEシステムの周波数割り当てが740〜750MHz、ITSシステムの周波数割り当てが755MHz以上であり、740MHz〜740.18MHzがLTEによる通信で使用されていた場合、f0=745.0MHz、f1=740.09MHzとなるため、7次相互変調波は、4×745.0−3×740.09=759.73MHzを中心とする±90kHzの範囲(759.64MHz〜759.82MHz)に現
れることがわかる。
【0051】
(5次相互変調波の特定)
図6にて、7次相互変調波を説明したのと同様に、図7は、5次相互変調波が生成される模様を示したものである。7次相互変調波と同様に、通信が行われているリソースブロックの中心周波数をf1とし、LTEシステムが使用する送信周波数帯域の中心周波数をf0とする。
【0052】
通信が行われているリソースブロックが中心周波数より上であった場合、3次相互変調波は、割り当てられた帯域の中心周波数f0を軸として低い周波数側に対称に現れる。その周波数は、同様に2f0−f1という式で表すことができる。
【0053】
このケースの場合、通信が行われているリソースブロックを軸として、3次相互変調波と対称となる位置に相互変調波f3が現れる場合がある。これは5次相互変調波と呼ばれ、その周波数はf1+(f1−f2)=2f1−f2=2f1−(2f0−f1)=3f1−2f0という式で表すことができる。5次相互変調波も、同様にLTEシステムに割り当てられた周波数帯域の外に現れるため、干渉波検出部33は、(3f1−2f0)を中心とする180kHz(上下90kHz)の帯域が自システムで使用する周波数帯域と重なっていた場合、ITSシステムがLTEによる干渉を受けると判断することができる。
【0054】
前述した相互変調波が、サブキャリアと重なっていた場合、該当するサブキャリアは干渉により妨害を受けると予測できるため、干渉波検出部33は該当する周波数の情報を復調部35に送信する。
【0055】
たとえば、LTEシステムの周波数割り当てが740〜750MHz、ITSシステムの周波数割り当てが755MHz以上であり、749.82MHz〜750MHzがLT
Eによる通信で使用されていた場合、f0=745.0MHz、f1=749.91MHzとなるため、5次相互変調波は、3×749.91−2×745.0=759.73MHzを中心とする±90kHzの範囲(759.64MHz〜759.82MHz)に現
れることがわかる。
【0056】
なお、図6と図7では、LTEシステムの割り当て周波数より高い周波数帯に5次および7次相互変調波が現れる例を示したが、通信を行うリソースブロックの位置によっては、低い周波数帯に現れる場合もある。そのため、ITSシステムより高い周波数帯でLTEシステムが運用されていた場合でも、電波干渉が発生しうる。この場合においても、相互変調波の周波数は、前述した数式にて求めることができる。
【0057】
(復調可否の判断)
次に、復調部35の処理について説明する。ステップS11で、通信中のLTE端末が検出されなかった場合、復調部35は、受信部34から受信した全てのサブキャリアを用いて信号の復調を行い(S15)、取得したデータを情報処理部36へ送信する。
【0058】
一方、ステップS13で相互変調波が検出された場合、復調部35は、相互変調波と重なる位置にあるサブキャリアを除外して信号の復調を行う(S14)。相互変調波との重なりは、計算された相互変調波の周波数帯域と、自システムが使用するサブキャリアの周波数帯域を比較することによって行う。例えば、相互変調波が753MHz±90kHzの位置に現れると計算された場合であって、あるサブキャリアの帯域下限が753MHzであった場合、両者は重なるため、当該サブキャリアは復調より除外される。
【0059】
各サブキャリアは、伝送モードやガードインターバル比等の伝送パラメータを用いて、FFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)演算を行うことによって復調される。特定のサブキャリアを復調から除外する場合、当該サブキャリアについてはFFT演算を行わず、他のサブキャリアの復調結果のみを合成して目的のデータを取得する。
【0060】
図8は、ITSシステムが使用するサブキャリアと、計算された相互変調波の周波数帯域が重なった場合の例である。ITSシステムが使用する53個のサブキャリアのうち、本例では5番と6番の2つのサブキャリアが干渉の影響を受ける。そのため、復調部35は、該当する2つのサブキャリアを除外して復調を行い、取得したデータを情報処理部36へ送信する。
【0061】
なお、相互変調波とサブキャリアとの重なりについては、一部でも周波数が重なっていた場合は除外してもよいし、一定の周波数幅以上が重なっていた場合に除外をしてもよい。
【0062】
なお、図4のフローチャートは、LTEシステムが使用するリソースブロックの割り当て変更に追従できるよう一定の間隔で連続実行されてもよいし、相互変調波の周波数が変化した場合に実行されてもよい。
【0063】
(信号強度により復調可否の判断を行う変形例)
サブキャリアと相互変調波が重なっていた場合、復調部35は該当するサブキャリアを除外して復調を行うが、微弱な相互変調波が複数あった場合、問題なく信号が復調できるにもかかわらず、複数のサブキャリアを除外してしまい、結果として全てのデータが復調できなくなる可能性がある。これを回避するため、信号の強度によって復調可否の判断を行うのが本変形例である。以下に詳細な説明を行う。
【0064】
キャリアの信号強度は、RSSI(Received Signal Strength Indicator)という値によって表すことができ、その単位は[dB]もしくは[dBm]である。図9は、ITSシステムが使用するサブキャリアと、LTEシステムが使用するサブキャリアの信号強度に差がある場合を示した図である。図9の例は、ITSシステムが使用するサブキャリアがd1[dBm]の信号強度を持ち、LTEシステムが使用するサブキャリアがd2[dBm]の信号強度を持っていることを示している。
【0065】
ITSシステムが使用するサブキャリアの信号強度の取得は、受信部34が行い、測定された信号強度は復調部35へ送信される。LTEシステムが使用するサブキャリアの信号強度の測定も同様に受信部34が行い、信号強度はセンシング部32を経由して干渉波検出部33へ送信される。ここで、干渉波検出部33が相互変調波を検出した場合、該当するLTEシステムの信号強度は、相互変調波の周波数に関する情報と共に復調部35へ送信される。
【0066】
復調部35は、信号強度に関する条件を保持している。信号強度に関する条件とは、たとえば、「d1−d2が10dB以下である場合」のように設定することができる。復調部35は、ステップS14の復調処理を実行する前に信号強度を受信し、相互変調波の信号強度が条件を満たしているかの判断を行ったうえで復調の可否を決定する。
【0067】
このようにすることによって、ITSシステムの通信に影響を及ぼさない微弱な相互変調波を無視して処理を行うことができる。自動車の車内でLTE方式の携帯電話を使用した場合、上り帯域の信号強度が強いため、干渉によってデータの復調に障害が発生するが、車外で使用されている場合には障害が発生しないというケースが考えられる。このようなケースにおいては、信号強度による復調の可否判断が有効となる。
【0068】
(エラー検出により復調可否の判断を行う変形例)
信号強度によって復調の可否判断を行う他に、実際にデータの復調を試行し、正常に復調できない場合にのみサブキャリアの除外を行う例が本変形例である。
【0069】
図10は、本変形例に係るフローチャートである。ステップS13〜S14間の処理以外は、図4のフローチャートと同様である。復調部35は、ステップS13にて相互変調波を特定した後、全てのサブキャリアを復調する処理を行う(S13a)。この結果、正しくデータを復調することができた場合は処理を継続し、復調時にエラーが発生した場合は、干渉されたサブキャリアを除外して復調を行う(S13b)。
【0070】
復調の正常/異常判定は、受信電力が高いにもかかわらず、本来であればエラーがあまり発生しない場合において、たとえばハッシュ関数などによるエラー検出の結果で判定してもよいし、ハミング符号や畳み込み符号などの誤り訂正符号によるエラー訂正を試みた結果、エラー訂正が不可能である場合に異常と判定してもよい。
【0071】
また、復調時のエラー率を計算し、所定の値を超過した場合において異常と判定してもよい。この場合、たとえば複数シンボルの復調処理において、所定のエラー率を続けて超過した場合に異常としてもよいし、平均エラー率などを使用してもよい。
【0072】
このように構成することにより、相互変調波が実際に復調に影響する場合にのみサブキャリアを除外する動作をさせることが可能になり、処理のオーバーヘッドが減少する。
【0073】
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本発明はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうるものである。たとえば、上記に示したフローチャートは、動作を例示したものであり、全ての処理が例示した通りの順序で行われなくてもよいし、必要のない処理をスキップしてもよい。例を挙げると、使用中のリソースブロックが変化していない場合は、干渉波の周波数計算を再度行う必要は無いし、全サブキャリアが復調できるかの確認を毎回必ず行う必要もない。
【0074】
また、相互変調波の原因となる無線システムは、実施形態の例で述べたように特定の狭い帯域に相互変調波を発生させるものであれば、LTEシステム以外であっても構わない。その場合、干渉波の発生するアルゴリズムを、本実施形態に適用することで、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
また、本実施形態では、変調方式にOFDMを使用したITSシステムを被干渉無線システムとして例示したが、マルチキャリア変調方式であれば、それ以外の変調方式を用いても構わない。たとえば、OFDMA(直交周波数分割多元接続:Orthogonal Frequency
Division Multiple Access)変調などを使用しても構わない。
【符号の説明】
【0076】
3 無線受信機
31 アンテナ
32 センシング部
33 干渉波検出部
34 受信部
35 復調部
36 情報処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチキャリア変調方式によって伝送される第一の無線信号を受信および復調する無線受信機であって、
前記第一の無線信号と、前記第一の無線信号が伝送される周波数帯域の近傍の周波数帯域において伝送される第二の無線信号と、を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した第二の無線信号の中から、信号強度が所定の値以上の搬送波を検出するセンシング手段と、
前記検出した搬送波によって発生する相互変調波の周波数帯域を計算する干渉波検出手段と、
前記相互変調波の周波数帯域が、前記第一の無線信号が伝送される周波数帯域に含まれる場合に、前記第一の無線信号に含まれる搬送波のうち、前記相互変調波の周波数帯域を含む搬送波を除外して前記第一の無線信号を復調する復調手段と、
を有することを特徴とする無線受信機。
【請求項2】
前記復調手段は、前記第二の無線信号に含まれる搬送波の信号強度が所定の条件を満たす場合に、前記相互変調波の周波数帯域を含む搬送波を除外して前記第一の無線信号を復調する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線受信機。
【請求項3】
前記復調手段は、復調時に発生したエラーを検出する手段をさらに有し、復調が正常に行われていないと判断した場合に、前記相互変調波の周波数帯域を含む搬送波を除外して前記第一の無線信号を復調する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線受信機。
【請求項4】
前記第一の無線信号の変調方式はOFDMであり、前記第二の無線信号の変調方式は、SC−FDMAである
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の無線受信機。
【請求項5】
前記干渉波検出手段は、前記センシング手段が検出した搬送波の周波数をa、前記第二の無線信号の伝送に使用される周波数帯域の中心周波数をbとして、式(1),式(2)で表される周波数A,Bを相互変調波の周波数として計算する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の無線受信機。
A=4b−3a…式(1)
B=3a−2b…式(2)
【請求項6】
マルチキャリア変調方式によって伝送される第一の無線信号を受信および復調する無線受信方法であって、
前記第一の無線信号と、前記第一の無線信号が伝送される周波数帯域の近傍の周波数帯域において伝送される第二の無線信号と、を受信し、
前記受信した第二の無線信号の中から、信号強度が所定の値以上の搬送波を検出し、
前記検出した搬送波によって発生する相互変調波の周波数帯域を計算し、
前記相互変調波の周波数帯域が、前記第一の無線信号が伝送される周波数帯域に含まれる場合に、前記第一の無線信号に含まれる搬送波のうち、前記相互変調波の周波数帯域を含む搬送波を除外して前記第一の無線信号を復調する
ことを特徴とする無線受信方法。
【請求項1】
マルチキャリア変調方式によって伝送される第一の無線信号を受信および復調する無線受信機であって、
前記第一の無線信号と、前記第一の無線信号が伝送される周波数帯域の近傍の周波数帯域において伝送される第二の無線信号と、を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した第二の無線信号の中から、信号強度が所定の値以上の搬送波を検出するセンシング手段と、
前記検出した搬送波によって発生する相互変調波の周波数帯域を計算する干渉波検出手段と、
前記相互変調波の周波数帯域が、前記第一の無線信号が伝送される周波数帯域に含まれる場合に、前記第一の無線信号に含まれる搬送波のうち、前記相互変調波の周波数帯域を含む搬送波を除外して前記第一の無線信号を復調する復調手段と、
を有することを特徴とする無線受信機。
【請求項2】
前記復調手段は、前記第二の無線信号に含まれる搬送波の信号強度が所定の条件を満たす場合に、前記相互変調波の周波数帯域を含む搬送波を除外して前記第一の無線信号を復調する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線受信機。
【請求項3】
前記復調手段は、復調時に発生したエラーを検出する手段をさらに有し、復調が正常に行われていないと判断した場合に、前記相互変調波の周波数帯域を含む搬送波を除外して前記第一の無線信号を復調する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線受信機。
【請求項4】
前記第一の無線信号の変調方式はOFDMであり、前記第二の無線信号の変調方式は、SC−FDMAである
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の無線受信機。
【請求項5】
前記干渉波検出手段は、前記センシング手段が検出した搬送波の周波数をa、前記第二の無線信号の伝送に使用される周波数帯域の中心周波数をbとして、式(1),式(2)で表される周波数A,Bを相互変調波の周波数として計算する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の無線受信機。
A=4b−3a…式(1)
B=3a−2b…式(2)
【請求項6】
マルチキャリア変調方式によって伝送される第一の無線信号を受信および復調する無線受信方法であって、
前記第一の無線信号と、前記第一の無線信号が伝送される周波数帯域の近傍の周波数帯域において伝送される第二の無線信号と、を受信し、
前記受信した第二の無線信号の中から、信号強度が所定の値以上の搬送波を検出し、
前記検出した搬送波によって発生する相互変調波の周波数帯域を計算し、
前記相互変調波の周波数帯域が、前記第一の無線信号が伝送される周波数帯域に含まれる場合に、前記第一の無線信号に含まれる搬送波のうち、前記相互変調波の周波数帯域を含む搬送波を除外して前記第一の無線信号を復調する
ことを特徴とする無線受信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−26970(P2013−26970A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162167(P2011−162167)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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