説明

無線受信装置およびその軟判定値生成方法

【課題】LLR演算に送信ビット列の大小関係の影響を維持しつつ、大きなメトリック値による影響を抑制することで、高い精度の軟判定誤り訂正復号を図ることができる無線受信装置およびその軟判定値生成方法を提供する。
【解決手段】無線受信装置は、MIMO通信による受信信号から軟判定値を生成する軟判定出力部22と、軟判定出力部22からの軟判定値により誤り訂正復号する軟判定誤り訂正復号部とを備えている。軟判定出力部22は、全部の送信信号ベクトルの候補の中から、受信信号に基づいて選択された候補による候補リストχに基づいて対数尤度比を演算する際に、ビット0に対する最小メトリック値からビット1に対する最小メトリック値を減算し、その結果をビット0またはビット1のいずれかの大きいメトリック値により除算して軟判定値を生成して軟判定誤り訂正復号部23へ出力するLLR演算部226を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)復号を行う無線受信装置およびその軟判定値生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
利用周波数帯域幅を拡大することなく、伝送容量を増加させる技術として、無線送受信装置が複数のアンテナを備えたMIMO通信方式が、高速無線通信システムの要素技術として注目され、国際標準IEEE802.11nにも採用されている。
【0003】
MIMO通信方式では、無線送信装置の複数の送信アンテナからの電波が、通信路の空間において合成されて無線受信装置に受信されるため、送信電波同士の干渉を除去し、元の独立な送信データを復号する処理が必要となる。その際、できるだけ雑音の影響を抑え、復号データの誤りを低減することが求められる。
【0004】
ZF(Zero Forcing),MMSE(Minimum Mean Square Error)基準の線形復号法は、MIMO復号法として最も基本的な手法であり、低演算量で実現可能であるが、復号誤り率特性は他手法に劣る。最適な復号結果が得られる手法としては、送信信号系列の全候補パターンから最尤候補を探すMLD(Maximum Likelihood Detection)があるが、最尤候補を探すために必要となる演算量が膨大となるため、実際の通信システムに実装することが難しい。
そこで、線形復号法に格子基底縮小(Lattice Reduction)法を組み合わせることで、比較的低演算量でMLDに近い復号結果が得られるLRA検出(LRA(Lattice Reduction Aided)-Detection)法が注目されている。
【0005】
しかし、通信システムでは、データ誤り率を低減させるために、誤り訂正符号が用いられ、MIMO復号後に誤り訂正符号化されたビット列の復号が行われるが、このLRA検出法では復号結果が硬判定値となるため、高い誤り訂正効果が得られない。従って、硬判定値を用いた誤り訂正復号より軟判定値を用いた誤り訂正復号の方がより高い誤り訂正効果を得られるので望ましい。
【0006】
そこで、データ誤り率の更なる改善のため、最近ではLRA検出法にも軟判定誤り訂正復号の適用を可能とする軟判定値出力のLRA検出法が検討され、提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1の無線通信装置では、チャネル推定値に格子基底縮小を適用し、基底縮小基準チャネルに従って受信信号を等化し、基底縮小基準に基づいて1組の候補ベクトルを選択することにより、送信済みビットが特別な値を持つ確率を決定して、それぞれの候補ベクトルに対応する送信済みシンボルベクトルを決定し、受信信号に基づいて、各送信済みビット値が送信される確率を決定することにより、受信信号から、送信済みビット値の軟推定値(軟判定値)を決定することが記載されている。
【0008】
ここで、従来の無線受信装置による軟判定値生成方法の一例を、図5に基づいて説明する。
例えば、図5(A)に示す候補リストは、送信アンテナ数が2本、1送信信号あたりの送信ビット数が2ビットの場合における送信ビット列の全候補とメトリック値との対応を示している。また、送信ビット列の候補はメトリック値を基準に昇順に並べている。但し、雑音電力は各ビットで等しく一定とする。
【0009】
LLR(Log-Likelihood Ratio:対数尤度比)の演算に用いられるのは、候補リストにある各ビットの送信信号候補ベクトル中で、そのビットが0であるときの最小メトリック値と,1であるときの最小メトリック値である。このとき、候補リストの全候補をLLR演算の対象とすると最適な結果が得られる。
例えば、ビットb1,1であれば、ビットが1であるときの最小メトリック値は0.36、ビットが0であるときの最小メトリック値は7.33である。その差がLLRとなるが、説明が容易となるようにLLR(b1,2)を基準に正規化すると、以下の式(1)のようになる。
【数1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−74729号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】A.K.Lenstra,H.W.Lenstra,Jr.,L.Lovasz,"Factoring Polynomials with Rational Coefficents,",Math.Ann.,vol.261,no.4,1982,p.515-534
【非特許文献2】Y.H.Gan,W.H.Mow,"Complex Lattice Reduction Algorithm for Low-Complexity MIMO Detection,",Proc.IEEE GLOBECOM 2005,vol.5,St.Louis,USA,Dec.2005,p.2953-2957
【非特許文献3】V.Ponnampalam,D.McNamara,A.Lillie,M.Sandell,"On Generating Soft Outputs for Lattice-Reduction-Aided Detectors,",Proc.IEEE ICC2007,Glasgow,Scotland,Jun.2007,p,4144-4149
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、LLRの演算量を減らすために、所定の方法により少数の候補を選択して候補リストを作成する場合に、問題が生じることがある。
例えば、図5(A)に示す候補リストの中から網掛けされた候補のみを所定の方法により得て、図5(B)に示す9候補としてLLRを演算した場合では、式(2)に示すようになる。この式(2)も式(1)と同様に、LLR(b1,2)を基準に正規化している。
【数2】

【0013】
式(1)と(2)とを比較すると、図5(B)に示す小数候補による候補リストを用いて計算を行った式(2)では、送信ビットb1,2のLLRの演算において、図5(A)に示す全送信ビット列の候補の中には、まだ小さいメトリック値が存在するにもかかわらず、図5(A)の全送信ビット列の候補リストの最下位から5番目に位置する大きなメトリック値が使用されていることより、式(1)と比較して,LLR(b1,2)に対する他のビットのLLRが1/2以下となってしまっている。このことより、ビットの尤度情報が失われてしまい、軟判定誤り訂正復号を行う際に悪影響を与える。
【0014】
そこで本発明は、LLR演算に送信ビット列の大小関係の影響を維持しつつ、大きなメトリック値による影響を抑制することで、高い精度の軟判定誤り訂正復号を図ることができる無線受信装置およびその軟判定値生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の無線受信装置は、MIMO通信による受信信号から軟判定値を生成する軟判定出力部と、前記軟判定出力部からの軟判定値によりMIMO復号する軟判定誤り訂正復号部とを備え、前記軟判定出力部は、全部の送信信号ベクトルの候補の中から、受信信号に基づいて選択された候補による候補リストに基づいて対数尤度比を演算する際に、ビット0に対する最小メトリック値からビット1に対する最小メトリック値を減算し、その結果をビット0またはビット1のいずれかの大きいメトリック値に基づいて除算して軟判定値を生成して前記軟判定誤り訂正復号部へ出力するLLR演算部を備えたことを特徴とする。
また、本発明の無線受信装置の軟判定値生成方法は、MIMO通信において全部の送信信号ベクトルの候補の中から、受信信号に基づいて選択された候補による候補リストを生成するステップと、候補リストに基づいて対数尤度比を演算する際に、ビット0に対する最小メトリック値からビット1に対する最小メトリック値を減算し、その結果をビット0またはビット1のいずれかの大きいメトリック値により除算して軟判定値を生成するステップとを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明は、全部の送信信号ベクトルの候補の中から、受信信号をもとに選択された候補による候補リストに基づいて対数尤度比を演算する際に、誤り訂正復号するための軟判定値を、ビット0に対する最小メトリック値からビット1に対する最小メトリック値を減算し、その結果をビット0またはビット1のいずれかの大きいメトリック値により除算することで算出する。そうすることで、各送信ビットの対数尤度比の大小関係を保存しつつ、大きなメトリック値の影響を抑えることができる。
【0017】
前記LLR演算部が対数尤度比を演算する際に使用する候補リストを、送信信号ベクトルの候補の中から固定摂動法により生成する固定摂動部を備えるのが望ましい。
全部の送信信号ベクトルの候補の中から選択された候補による候補リストを生成する際に、固定摂動法により生成することができる。
【0018】
チャネル応答行列が変換行列により変換され、新たなチャネル応答行列としてみなすための準直交行列である縮小基底行列を入力してMMSE検出(MMSE(Minimum Mean Square Error)Detection)を行い、受信信号ベクトルに重み行列を乗算した信号ベクトルを算出するMMSE検出部と、前記MMSE検出部からの信号ベクトルに基づいて、ユークリッド距離が最小の候補点を判定して硬判定信号を得る判定部とを備え、前記固定摂動部は、候補リストを生成する際の送信信号ベクトルの候補を、前記判定部からの硬判定信号に基づいて生成することが望ましい。MMSE検出部と判定部とが硬判定信号を生成する際に、縮小基底行列を新たなチャネル応答行列としてMMSE検出するLRA−MMSE検出法を用いることで、雑音強調を抑え、復号精度を高めることができる。
【0019】
前記MMSE検出部への新たなチャネル応答行列を縮小基底行列として算出し、チャネル応答行列を準直交行列とする変換行列を算出する演算をLLLアルゴリズムにより行う格子基底縮小部を備えるのが望ましい。LLR演算部が生成する軟判定値が各送信ビットの対数尤度比の大小関係を保存しつつ、大きなメトリック値の影響を抑えることができるので、格子基底縮小部がLLLアルゴリズムにより縮小基底行列を算出する際に少ない繰り返し回数で、高い精度を確保することができる。
【0020】
前記軟判定値出力部は、候補リストのLLR演算対象ビットにビット0またはビット1のいずれか一方のビットが含まれていない場合に、対数尤度比の演算において、そのビットに対する最小メトリック値として候補リスト内の最大メトリック値を用いて演算を行い軟判定値を生成することで、候補リストに一方のビットが含まれていなくても、各送信ビットの対数尤度比の大小関係を保存しつつ、大きなメトリック値の影響を抑えることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、従来のLLRの算出値に、ビット0またはビット1のいずれかの大きいメトリック値を除算して軟判定値を生成することで、各送信ビットの対数尤度比の大小関係を保存しつつ、大きなメトリック値の影響を抑えることができるので、LLR演算に送信ビット列の大小関係の影響を維持しつつ、大きなメトリック値による影響を抑制することができる。よって、本発明は、高い精度の軟判定誤り訂正復号を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る無線通信システム(無線送信装置・無線受信装置)を示す図である。
【図2】図1に示す無線受信装置の軟判定値出力部の構成を示す図である。
【図3】16QAMにおけるコンスタレーションと信号点間の距離αとオフセット値βを示す図である。
【図4】(A)および(B)は同一の格子を張る基底ベクトルの一例を示す図である。
【図5】(A)および(B)は送信ビット列と、送信ビット列に対応するメトリック値とを示す一例の表(リスト)であり、(A)は全候補を示すリスト、(B)は固定摂動法に基づいて生成された候補を示すリストである。
【図6】本発明の実施例1におけるSNRとBERを示すグラフである。
【図7】本発明の実施例2における伝送距離特性を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例2におけるLLLアルゴリズムによる繰り返し処理を行ったときのSNRとBERを示すものであり、硬判定値出力、硬判定誤り訂正復号を用いた例を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例2におけるLLLアルゴリズムによる繰り返し処理を行ったときのSNRとBERを示すものであり、軟判定値出力、軟判定誤り訂正復号を用いた例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態に係る無線通信システムを図面に基づいて説明する。なお、図1においては、変調部・復調部や、送信信号(電気信号)を無線信号(電波)へ変換する送信無線部や無線信号を受信信号へ変換する受信無線部などは図示していない。
【0024】
図1に示すように、無線通信システム1は、無線送信装置10と無線受信装置20とから構成されている。無線送信装置10と無線受信装置20とは、無線送信装置10に設けられた2本の送信アンテナ11a,11bと、無線受信装置20に設けられた2本の受信アンテナ21a,21bとにより無線信号を送受信している。
【0025】
無線送信装置10には、送信データに誤り訂正符号を付加する誤り訂正符号化部12が設けられている。
無線受信装置20には、軟判定値出力部22と、軟判定誤り訂正復号部23とが設けられている。軟判定値出力部22は、受信信号に基づいて軟判定値を出力する。軟判定誤り訂正復号部23は、軟判定値出力部22からの軟判定値に基づいて誤り訂正を行い受信データを出力する。
【0026】
次に、軟判定値出力部22の構成について図2に基づいて説明する。
軟判定値出力部22は、チャネル推定部221と、格子基底縮小部222と、MMSE検出部223と、判定部224と、固定摂動(Fixed Perturbation)部225と、LLR演算部226とを備えている。
チャネル推定部221は、無線送信装置10からの無線信号からチャネル応答行列Hを算出して格子基底縮小部222へ出力する。
格子基底縮小部222は、受信信号ベクトルとチャネル応答行列Hとから縮小基底行列H’を算出してMMSE検出部223へ出力すると共に、チャネル応答行列Hを縮小基底行列H’へ変換する変換行列Tを判定部224および固定摂動部225へ出力する。
MMSE検出部223は、受信信号ベクトルに対して重み行列WH'を乗算した信号ベクトルzを出力する。
判定部224は、MMSE検出部223からの信号ベクトルzをユークリッド距離最小のzの候補点(送信信号候補点)に判定することで、硬判定信号Zrepを求めて固定摂動部225へ出力する。
固定摂動部225は、MMSE検出部223からの硬判定信号Zrep(硬判定値)に基づいて、送信信号ベクトルに対する送信ビット列の候補リストχを作成して出力する。
LLR演算部225は、送信ビット列の候補リストχからLLRを演算して軟判定値として軟判定誤り訂正復号部23へ出力する。
【0027】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る無線通信システムの動作について、図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態ではMIMO通信方式で一般に用いられるQAM(Quadrature Amplitude Modulation:直角位相振幅変調)方式を例に説明する。
QAM方式では、信号の振幅と位相の値を変化させて情報を伝送する。従って、QAM変調された送信シンボルは、図3に示すような複素平面上に表される。実数部が同相成分で、虚数部が直交成分となる。1シンボルあたりQビットの情報を持つ2Q−QAM変調の送信コンスタレーションは、一般的に式(3)で表される。但し、集合Aは送信信号候補点からなる集合、ベクトルsは送信信号ベクトル、複素数R(・)は実部、複素数Jは虚部、α,βは送信コンスタレーションの隣接する信号点間の距離とオフセット値(図3参照)を示す。
【数3】

【0028】
MIMO通信では,複数の送信アンテナ(図1においては送信アンテナ11a,11b)から並列に伝送が行われる。このときの送信信号ベクトルはベクトルs=[s1,s2,・・・,sMTで表すことができる。但し、Mは送信アンテナ本数であり、要素sk∈集合A(1≦K≦M)である。また、送信信号ベクトルに対応する送信ビット列は、[b1,1,b1,2,・・・,b1,Q,b2,1,b2,2,・・・,bM,Q]で表される。
【0029】
MIMO通信では、複数の送信アンテナからの電波が通信路の空間において合成されるため、フラットフェージング環境の送受信信号の関係は、送信信号ベクトルs(M×1)、受信信号ベクトルy(N×1)、チャネル応答行列H(N×M)、雑音信号ベクトルn(N×1)とすると、式(4)で表される。但し、Nは受信アンテナ本数である。
【数4】

【0030】
この式(4)では、MIMOの受信信号ベクトルyの各要素が、送信信号ベクトルsの各要素の合成信号であることを示している。また、チャネル応答行列Hの非対角要素が干渉信号となる成分を表している。無線受信装置20(MIMO受信機)では、この干渉信号成分を除去し、元の送信データを復号する処理を行う。
【0031】
まず、チャネル推定部221では、まず無線送信装置10からの無線信号に含まれるパイロット信号からチャネル推定してチャネル応答行列Hを出力する。
次に、格子基底縮小部222とMMSE検出部223とによりLRA−MMSE検出(Lattice Reduction Aided MMSE Detection)を行う。
格子基底縮小部222は、格子基底縮小によりチャネル応答行列Hを以下の式(5)から縮小基底行列(準直交行列)H’に変換してMMSE検出部223へ出力すると共に、チャネル応答行列Hを縮小基底行列H’に変換する変換行列Tを算出して固定摂動部225と判定部224とへ出力する。
【数5】

【0032】
ここで、格子基底縮小部222が演算する縮小基底行列H’と変換行列Tとについて詳細に説明する。
格子基底縮小とは、例えば、あるベクトルの組{h1,h2,・・・hM}から、これと同一の格子を張り、かつよりノルム(norm)が小さく直交性の高い縮小基底ベクトル{h'1,h'2,・・・h'M}を演算して縮小基底を得ることを示す。
なお、ここで格子とは、線形独立なベクトルh1,h2・・・hM∈集合RN,(N≦M)に対して、式(6)で定義される。但し、集合RNは要素が実数であるN次元ベクトル全体からなる集合、集合Zは整数全体からなる集合、L(・)は(・)内の要素を基底とする格子を示す。
【数6】

【0033】
1つの格子に対する基底ベクトルは無数に存在することが知られている。同一の格子を張る基底ベクトルの例を図4に示す。図4(A)および同図(B)に示す矢印が基底ベクトルであり、直線の交点が格子点である。図4(A)および同図(B)では格子点の配置は同じであるが、基底ベクトルが異なっている。この基底ベクトルの直交性は式(7)による直交性欠損d(行列H)で評価される。但し、行列Hは{h1,h2,・・・hM}、det(・)は行列(・)の行列式、HHは行列Hのエルミート転置である。
【数7】

【0034】
式(7)にて示される直交性欠損d(行列H)について、非特許文献1に、式(8)を満足する縮小基底を多項式時間で演算するLLL(Lenstra-Lenstra-Lovasz)アルゴリズムとして記載されている。但し、Mは送信アンテナの本数である。
【数8】

【0035】
なお、定数δ∈(1/4,1)は、得られる縮小基底の縮小度とLLLアルゴリズムの演算量とのトレードオフを与え、1に近い値に設定するほど、より縮小度の高い基底ベクトルが得られる反面、演算量は増加する。このLLLアルゴリズムについては、複素ベクトルの基底ベクトルへ拡張されることが非特許文献2に記載されている。
【0036】
チャネル応答行列Hに対しては、LLLアルゴリズムによりチャネル応答行列Hの縮小基底行列H’と、H’=HTを満たすHからH’へ変換行列Tを求めることができる。
同一の格子を張る基底同士はユニモジュラ変換で結ばれることが知られているため、式(9)に示される関係が成立する。
【数9】

従って、格子基底縮小部222がLLLアルゴリズムによって算出する変換行列Tは、その要素がすべて整数であり,かつ行列式の値が±1であるユニモジュラ行列となる。
【0037】
ここで、非特許文献2に基づくLLLアルゴリズムの格子基底縮小の繰り返しについて説明する。
LLLアルゴリズムを適用するN×Mのチャネル応答行列HのQR分解を式(10)とする。
【数10】

【0038】
非特許文献2では、式(11)と式(12)を共に満たすような行列のユニモジュラ変換を行うアルゴリズムである。但し、集合Rは実数全体の集合である。
【数11】

【数12】

【0039】
アルゴリズムは次の(ア)〜(ウ)の3ステップから構成されている。
(ア)行列HのQR分解を行う。
(イ)式(11)を満たすように行列Rの列ベクトルを変換する。
(ウ)行列Rの連続する列ベクトル間で式(12)が満たされていない場合に、それらの列の入れ替えを行いステップ(ウ)の操作へ戻る。
このように式(12)の条件が満たされるまで、(イ)と(ウ)とを繰り返す。LLLアルゴリズムは繰り返し型のアルゴリズムであり、停止条件を満たすまで繰り返し処理が行われるため、式(12)の定数δの値や、入力行列であるチャネル応答行列Hの値によって繰り返し回数が変化する。
【0040】
例えば、格子基底縮小部222では、Fixed−LLLアルゴリズムを採用することも可能である。Fixed−LLLアルゴリズムについては、非特許文献3に記載されている。
このFixed−LLLアルゴリズムは、ハードウェア実装に適する形に、LLLアルゴリズムを修正したものであり、アルゴリズムの繰り返し処理回数を少ない回数に制限する場合において、LLLアルゴリズムよりも縮小度の高い基底が得られる。
【0041】
格子基底縮小部222は、この繰り返し処理により縮小度を上げた縮小基底行列H’と、式(5)を満足するチャネル応答行列Hから縮小基底行列H’への変換行列Tを求めている。
【0042】
次に、MMSE検出部223によるMMSE検出について説明する。
MMSE検出は、線形演算による比較的低演算量で行うことができるMIMO復号法である。この手法では、信号対干渉雑音電力比を最大とする重み行列、言い換えると、式(13)を最小とする式(14)に示す重み行列を受信信号ベクトルyに乗算することで干渉除去を行う。但し、σは雑音の平均電力、WHはチャネル応答行列Hに対するMMSE重み行列である。
【数13】

【数14】

【0043】
信号がσ≒0である場合には、重み行列WHはチャネル応答行列Hの疑似逆行列H+=(HHH)-1Hと見なせる。以下では、WH=H+として扱う。このとき、干渉除去後の信号sは式(15)で表される。
【数15】

【0044】
理想的な復号信号はsであるため、できるだけ雑音nの影響を抑えることが望ましい。従って、この雑音nの大きさはチャネル応答行列Hの直交性に依存するため、単にMMSE検出を行っただけでは、チャネル応答行列Hの直交性が低いほど雑音が強調され、復号精度が低下する原因となる。
そこで、MMSE検出部223では、チャネル応答行列を準直交行列に変換し、これを新たなチャネル応答行列とみなして、MMSE検出することで、雑音強調を抑え、復号精度を高めている。
【0045】
ここで、MMSE検出部223が行うMMSE検出について詳細に説明する。
式(4)は、z=T-1sとすると、格子基底縮小部222によって行われた格子基底縮小により式(16)に書き換えられる。
【数16】

【0046】
H’を新たなチャネル応答行列とみなして、MMSE検出を行うと、式(17)となり、受信信号ベクトルに対し重み行列WH'を乗算した信号ベクトルzを求めることができる。この信号ベクトルzを判定部224へ出力する。
【数17】

【0047】
判定部224では、このzを、ユークリッド距離最小のzの候補点として判定することで、zrep(信号ベクトルzの硬判定により得られるz=T-1sの推定値、以下、硬判定信号と称す。)を算出する。H’は準直交行列であるので、信頼性の高いzrepが求められ、これに格子基底縮小部222からの変換行列Tを乗算することで式(18)から、復号信号srepを算出する。
【数18】

【0048】
ここで、格子基底縮小による変換行列Tはユニモジュラ行列であり、その逆行列T-1もまたユニモジュラ行列である。式(4)に示す送信コンスタレーションから、オフセット値β(図3参照)の影響を除くと、送信信号ベクトルsとz=T-1sの候補点は同一格子状に配置される。
送信信号ベクトル信号sのコンスタレーションは既知であるため、判定部224では、送信信号ベクトルsのコンスタレーション上でzの硬判定信号zrepを求めればよい。その計算式を式(19)に示す。但し、「・」はベクトルの各要素に対するユークリッド距離最小のガウス整数(実部,虚部共に整数の値)への丸めを示し、1Mは要素が全て1+jのM×1列ベクトルである(j=√−1)。
【数19】

【0049】
このように、送信信号候補点の判定が容易であることが格子基底縮小を用いることの利点である。但し、この判定方法ではzをユークリッド距離最小の格子点に丸める際に、その点が硬判定信号zrepの候補点外の点である可能性がある。従って、srep=Tzrepのうち、送信コンスタレーションに含まれない要素がある場合、判定部224では、この要素を送信信号ベクトルsのコンスタレーション上でのユークリッド距離最小の候補点に判定する。
【0050】
次に、固定摂動部225による候補リストの生成について説明する。
軟判定誤り訂正復号部22の入力として、一般的にはビット毎のLLRが用いられる。bm,qをm番目の送信アンテナからの送信信号に対応する送信ビット列のq番目のビットとすると、bm,qに対するLLRは式(20)で定義される。
【数20】

LLRの値は、bm,qが1のときの尤度が高いほど、正の方向に絶対値の大きな値を取り、0のときの尤度が高いほど、負の方向に絶対値の大きな値を取る。送信コンスタレーションから考えられる全ての送信信号ベクトル候補のうち、bm,q=i(i∈{0,1})であるものからなる集合をUim,qとすると、bm,q=iの尤度は式(21)で求められる。
【数21】

演算量削減のため、式(21)の近似として、本実施の形態では式(22)にて示されるMax−Log APP(Maximum-Logarithm A Posteriori Probability:最大対数事後確率)を採用する。
【数22】

【0051】
雑音が平均電力σ2のAWGN(Additive White Gaussian Noise:白色雑音)の場合、Max−Log APPを用いて、LLRは式(23)となる。
【数23】

【0052】
軟判定誤り訂正復号部23の入力としての各ビットのLLRは、それぞれの相対的な大小関係が必要であるだけで、絶対的な値は問題とならない。従って、雑音電力一定のもとでは式(23)を式(24)と変形することができる。
【数24】

式(21)を直接演算する場合も、Max−Log APPを用いる式(23),式(24)を演算する場合も、演算に全ての送信信号ベクトル候補の尤度を用いるため、これらは軟判定値出力のMLDと解釈できる。従って、送信信号ベクトルの候補数が多い場合、演算量が膨大であり、実システムへの実装が困難である。
【0053】
固定摂動法に関して先行技術文献である非特許文献3によれば、LRA−MMSE検出の硬判定値出力に基づいて式(25)にて示されるある一定のK個の送信信号ベクトルの候補リストχを作成し、その候補リストχ内の候補のみから、Max−Log APPを用いてLLRを計算する方法が記載されている。
【数25】

【0054】
それには、まず,判定部224からのzの硬判定信号zrepに対して、式(26)の4M+1個の固定摂動ベクトルを、式(27)によりそれぞれと足し合わせ、ベクトルz(k)を生成する。
【数26】

【数27】

【0055】
そして、これを用いて送信信号候補点s(k)からなる候補リストχを式(28)により生成する。
【数28】

但し、得られたs(k)には送信信号候補点外の点が含まれる場合があるので、そのようなs(k)はユークリッド距離最小の送信信号候補点を代わりに候補リストχへ加える。
このようにして固定摂動部225により候補リストχが生成され、LLR演算部226へ出力される。
【0056】
次に、LLR演算部226により軟判定値の生成について説明する。
生成した候補リストχに対して,Max−Log APPを用いて求められるLLRは、式(29)となる。
【数29】

但し、Em,q(i)は、以下の式(30)である。
【数30】

なお、雑音電力を一定とすれば、式(29)は式(31)とすることができる。
【数31】

【0057】
LLR演算に用いられるのは、各ビットに対して送信信号候補ベクトルs(k)中で、そのビットが0であるときの最小メトリック値と,1であるときの最小メトリック値である。メトリック値とは、LLRを演算するときの式(32)で示される尺度となる値を示す。
【数32】

【0058】
従って、LLR演算における候補リストχは,送信信号ベクトルsの全候補のうち、できるだけ小さなメトリック値を持つ集合であることが望ましい。
しかしながら,固定摂動法ではメトリック値が最小の4M+1個の送信信号候補点s(k)が得られるとは限らず、メトリック値の大きな送信信号候補点s(k)が候補リストχに加わってしまう場合が生じる。
このとき、式(33)により示される場合や、このような大きな値を持つメトリック値以外に、式(34)で示される候補が無い場合に、LLR演算にこの大きな値を持つメトリック値が使用されてしまうことで、一部のLLRの絶対値が極端に大きくなる。
【数33】

【数34】

【0059】
従って、軟判定誤り訂正復号部23による復号時に、大きな値を持つLLRの影響が支配的になり、他のビットのLLRが誤り訂正復号結果に反映されにくくなる。即ち、各ビットの尤度情報が失われ、誤り訂正効果を低減させる要因となる。その例が、図5の候補リストに基づいて式(1)および式(2)により算出されたLLRからも判る。
式(1)では、図5(A)に示す全候補に対してMax−Log APPを用いてLLRの演算を行っている。すなわち式式(29)に準じているため最適な結果が得られる。
本実施の形態に係る無線受信装置の固定摂動部225では、図5(A)に示す候補リストのうち、固定摂動法により9つの候補からなるリストχを生成している(図5(B)参照)。そうすることで演算量を減少させることができる。
式(2)は、9つの候補からなるリストχから演算された各ビットのLLRである。
このように、図5(A)に示す全候補をLLRの演算の対象とした式(1)と異なり、固定摂動法を用いて9つの候補を対象とした式(2)では、ビットの尤度情報が失われてしまう。
【0060】
LLR演算部226では、このような尤度情報の消失を抑制するために、式(23)によるLLRの演算に用いられるメトリック値のうち、大きい方の値で除算する。これを式(35)に示す。
【数35】

この式(35)においても同様に、雑音電力が一定の条件下では、式(36)とすることができる。
【数36】

【0061】
式(36)に基づいて、図5(B)に示される候補リストχからLLRを演算し、正規化すると、式(37)のようになる。
【数37】

【0062】
この結果からも判るように、各送信ビットのLLRの大小関係を保存しつつ、大きなメトリック値の影響が抑えられるため、b1,2以外の送信ビットのLLRも尤度情報を失うことが抑制される。
このようにしてLLR演算部226が演算したLLRに基づいて軟判定誤り訂正復号部23は、軟判定誤り訂正復号する。軟判定誤り訂正復号部23では、尤度情報の消失が抑制されたLLRに基づいて復号されるので、高い誤り訂正効果を得ることができる。
【0063】
図5(B)による候補リストχでは、送信ビットb1,2においてはビット1の最小値が0.36であり、ビット0の最小値が34.13である。この場合、ビット0が含まれているため、ビット0の最小値が34.13となり、式(36)における分母も34.13となる。しかし、候補リストによっては、ビット0の候補が含まれない場合もある。そのときは、式(30)の下式に従い、候補リストχ内の最大メトリック値からビット1の最小メトリック値を減算し、ビット1の最大メトリック値で除算することで、LLR値を算出することができる。そうすることで、候補リストにビット0のビットが含まれていなくても、各送信ビットの対数尤度比の大小関係を保存しつつ、大きなメトリック値の影響を抑えることができる。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
本発明の実施の形態に係る無線受信装置のシミュレーションを行い、BER(Bit Error Rate)特性を測定した。シミュレーションは、固定摂動法を用いてLLRを演算する際に、式(29)を用いる従来の方法と、本発明の式(35)を用いる方法とを比較した。
シミュレーション条件を表(1)に示すと共に、シミュレーション結果を図6に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
図6においては、軟判定出力である本発明を(A1)LRA−MMSE SDD Propsedと示している。
また、比較例として、硬判定値出力LRA−MMSEを(B1)LRA−MMSE HDD,従来の軟判定値出力LRA−MMSEを(C1)LRA−MMSE SDD Conventional、軟判定値出力MLD(Max−lOg APP利用)を(D1)MLD SDDと示している。
図6に示すように、(C1)に示す従来法ではSNR(signal to noise ratio)が高くなるにつれて(B1)に示す硬判定値出力の場合とのBER特性差が縮小し,さらには逆転していることが判る。(A1)に示す本発明では全域のSNRで、(B1)に示す硬判定値出力より良好な特性が得られていることが判る。特に、BERが10-4の場合では5dBの利得が得られている。また、(D1)示す軟判定値出力MLDと比較しても、BERが10-4の場合で、2dBほどの差があり、(A1)に示す本発明は同程度のBER特性が得られていることが確認できる。
【0067】
(実施例2)
次に、伝播損失モデルを用いて、見通し外環境における伝送距離特性と、格子基底縮小を行うLLLアルゴリズムの繰り返し処理回数を制限した場合の性能とを評価した。評価に際してのシミュレーションパラメータを表2に示す。
まず、見通し外環境における伝送距離特性をシミュレーションした。また、シミュレーション結果である結果伝送距離特性を図7に示す。なお、図7においても、軟判定出力である本発明を(A1)LRA−MMSE SDD Propsedと、また、比較例として、硬判定値出力LRA−MMSEをL(B1)RA−MMSE HDD,従来の軟判定値出力LRA−MMSEを(C1)LRA−MMSE SDD Conventionalと示している。更に、軟判定値出力MMSEを(E1)MMSE SDDと示している。
【0068】
【表2】

【0069】
図7より、スループット500Mbps時では、(B1)に示す硬判定値出力LRA−MMSEや、(C1)に示す従来法の軟判定値出力LRA−MMSE、(A1)に示す本発明の軟判定値出力LRA−MMSEの伝送距離は、それぞれ10.5m、12.0m、14.0mであった。
本発明の軟判定値出力LRA−MMSE(A1)は、硬判定値出力LRA−MMSE(B1)に対して約33%、従来法の軟判定値出力LRA−MMSE(C1)に対して約17%の伝送距離の改善が見られた。
【0070】
次に、格子基底縮小を行うLLLアルゴリズムの繰り返し処理回数を制限した場合の性能比較を示す。
格子基底縮小は本発明と比較例とでFiX-LLLアルゴリズムを採用した。MMSE検出は、比較例が硬判定値出力LRA−MMSE検出に硬判定誤り訂正復号を行った場合であり、本発明が軟判定値出力LRA−MMSE検出に軟判定誤り訂正復号を行った場合である。結果をそれぞれ図8,図9に示す。図8,図9中で3回(3 loop)から9回(9 loop)の繰り返し、制限なし(No Limit)はそれぞれLRA−MMSE検出を行う際のLLLアルゴリズムの繰り返し処理回数を表している。
【0071】
まず、図8にて(B1)と示す硬判定値出力LRA−MMSE検出を用いる場合では、繰り返し処理回数の制限が9回のとき(9 loop)、制限なし(No Limit)の場合と同等のBER特性が得られ、(E1)と示す軟判定値出力MMSE検出(MMSE SDD)と比較し、BER 10-4で約7dBの利得が確認できる。しかし、繰り返し処理回数の制限がこれより少なくなると、BER特性が劣化し、制限回数が3回のときでは軟判定値出力MMSE検出に劣る特性となっている。
【0072】
一方、図9にて(A1)と示す本発明を用いた軟判定誤り訂正を行う場合では、繰り返し処理回数の制限が6回(6 loop)のときにおいて、(E1)と示す軟判定値出力MMSE検出と比較し、BER10-4で約10dBの利得が確認でき、制限が9回(9 loop)のときでは約13dBの利得が確認できる。
LLLアルゴリズムのハードウェア実装を考慮した場合、必要な繰り返し処理回数がハードウェアコストに大きく影響する。本発明では、その繰り返し処理回数を6回に制限する場合でも、硬判定値出力LRA−MMSE検出の繰り返し処理回数制限9回以上の良好なBER特性を得ることができ、従来法と比較して、LLLアルゴリズムを実施する格子基底縮小部222のハードウェアコスト削減にも寄与する。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、MIMO検出を行う無線受信装置およびその軟判定値生成方法に好適である。
【符号の説明】
【0074】
1 無線通信システム
10 無線送信装置
11a,11b 送信アンテナ
20 無線受信装置
21a,21b 送信アンテナ
22 軟判定値出力部
221 チャネル推定部
222 格子基底縮小部
223 MMSE検出部
224 判定部
225 固定摂動部
226 LLR演算部
23 軟判定誤り訂正復号部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)通信による受信信号から軟判定値を生成する軟判定値出力部と、
前記軟判定出力部からの軟判定値により誤り訂正復号する軟判定誤り訂正復号部とを備え、
前記軟判定値出力部は、
全部の送信信号ベクトルの候補の中から、受信信号に基づいて選択された候補による候補リストに基づいて対数尤度比を演算する際に、ビット0に対する最小メトリック値からビット1に対する最小メトリック値を減算し、その結果をビット0またはビット1のいずれかの大きいメトリック値により除算して軟判定値を生成して前記軟判定誤り訂正復号部へ出力するLLR演算部を備えたことを特徴とする無線受信装置。
【請求項2】
前記LLR演算部が対数尤度比を演算する際に使用する候補リストを、送信信号ベクトルの候補の中から固定摂動法(Fixed Perturbation)により生成する固定摂動部を備えた請求項1記載の無線受信装置。
【請求項3】
チャネル応答行列が変換行列により変換され、新たなチャネル応答行列としてみなすための準直交行列である縮小基底行列を入力してMMSE検出(MMSE(Minimum Mean Square Error)Detection)を行い、受信信号ベクトルに重み行列を乗算した信号ベクトルを算出するMMSE検出部と、
前記MMSE検出部からの信号ベクトルに基づいて、ユークリッド距離が最小の候補点を判定して硬判定信号を得る判定部とを備え、
前記固定摂動部は、候補リストを生成する際の送信信号ベクトルの候補を、前記判定部からの硬判定信号に基づいて生成する請求項2記載の無線受信装置。
【請求項4】
前記MMSE検出部への縮小基底行列をLLLアルゴリズムにより算出する格子基底縮小部を備えた請求項3記載の無線受信装置。
【請求項5】
前記軟判定値出力部は、候補リストのLLR演算対象ビットにビット0またはビット1のいずれか一方のビットが含まれていない場合に、対数尤度比の演算において、そのビットに対する最小メトリック値として候補リスト内の最大メトリック値を用いて演算を行い軟判定値を生成する請求項1から4のいずれかの項に記載の無線受信装置。
【請求項6】
MIMO通信において全部の送信信号ベクトルの候補の中から、受信信号に基づいて選択された候補による候補リストを生成するステップと、
候補リストに基づいて対数尤度比を演算する際に、ビット0に対する最小メトリック値からビット1に対する最小メトリック値を減算し、その結果をビット0またはビット1のいずれかの大きいメトリック値に基づいて除算して軟判定値を生成するステップとを含むことを特徴とする無線受信装置の軟判定値生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−175280(P2012−175280A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33799(P2011−33799)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【Fターム(参考)】