説明

無線受信装置

【課題】簡易な構成で複数の周波数帯の信号を同時に受信可能な無線受信装置を提供する。
【解決手段】無線受信装置は、高周波無線信号を受信するアンテナ部と、第1および第2の基準信号を生成する基準信号生成手段と、アンテナ部で受信した信号を、それぞれ前記第1および第2の基準信号を用いてベースバンド信号に周波数変換する第1および第2のダウンコンバータと、前記第1のダウンコンバータの出力から、所定の周波数帯を選択する第1のフィルタと、該第1のフィルタによって選択された信号をAM復調またはFM復調する第1の復調手段と、前記第2のダウンコンバータの出力から、所定の周波数帯を選択する第2のフィルタと、該第2のフィルタによって選択された信号をAM復調またはFM復調する第2の復調手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線受信装置に関し、特に、複数のチャンネルを同時に復調可能な無線受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル放送では、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex: 直交
周波数分割多重)方式が採用されている。OFDM方式は、マルチキャリア変調方式であり、多数の直交した搬送波周波数を持つデジタル変調波を多重した信号を送信する方式である。
【0003】
従来のOFDM受信機の構成を図3を参照して説明する。アンテナ101で受信された受信信号は、増幅回路102で増幅された後に、乗算器105,106にそれぞれ与えられる。乗算器105には、局部発振器103から受信信号とほぼ同じ周波数の基準信号が供給される。乗算器105は、受信信号と基準信号を乗算してベースバンド信号を生成する。一方、乗算器106には位相変換器104によって局部発振器103からの基準信号の位相をずらした信号が供給され、乗算器はこれを用いて受信信号からベースバンド信号を生成する。乗算器105,106からの出力は、増幅回路107,108で増幅され、ローパスフィルタ109,110で低周波成分を取り出す。その後、アナログ・デジタル変換器111,112によってデジタル信号に変換した後、OFDM復調器113によってFFT処理等の復調処理を行う。
【0004】
OFDM受信機の構成を説明したが、AM変調方式やFM変調方式の信号を受信する場合は、復調する変調方式の数だけ周波数変換回路等が必要となる。そこで、特許文献1では、図3の構成において、局部発振器103の周波数帯域を広帯域化するとともに、復調器113の演算処理を変調方式に応じて変更可能とすることで、OFDM以外にAMやFMも受信可能とする受信機が開示されている。
【0005】
ところで、1つの受信機で複数の変調方式を受信したいという要求以外に、複数の無線信号(変調方式は同じ場合も異なる場合もある)を同時に受信したいという要求も存在する。例えば、交通情報を放送するVICSはFM多重放送により情報を送信している。VICSは特定のFMチャンネルに多重化されているので、VICSを受信しているときにその他のFM放送やAM放送を受信するためには、複数のチャンネルを同時に受信できる必要がある。
【特許文献1】特開平9−74366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のような従来技術の場合は、複数の変調方式の信号を復調可能であるものの、複数の信号を同時に復調することはできない。したがって、複数の放送を受信するためには、複数の受信機を利用する必要があり、コスト面で不利となる。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、簡易な構成で複数の周波数帯の信号を同時に受信可能な無線受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明では、以下の手段または処理によって無線信号の復調を行う。
【0009】
本発明は、無線信号を受信するアンテナ部と、2つの基準信号を生成する基準信号生成手段と、アンテナ部で受信した信号に各基準信号を適用してベースバンド信号に周波数変換する2つのダウンコンバータを有する。そして、ダウンコンバータの出力から所定の周波数帯を選択するフィルタと、フィルタによって選択された信号をAM復調またはFM復調する復調手段とを、各ダウンコンバータについて有している。
【0010】
このようにすれば、FM変調方式およびAM変調方式の無線信号のうち、任意の2つ周波数帯の無線信号を同時に復調することが可能となる。
【0011】
本発明において、基準信号生成手段が生成する2つの基準信号を、同一の周波数を有し、位相がπ/2だけ異なる信号とすることが好適である。このような、2つの基準信号によるダウンコンバータは、従来のOFDM方式の受信機と同様の構成であり、従来の部品を流用可能であるため、本発明に係る無線受信装置の製造が容易となる。
【0012】
また、本発明は、2つのダウンコンバータの出力からOFDM復調を行う復調手段をさらに有することが好適である。ここで、ダウンコンバータからの出力を、上記AMおよびFM復調を行う2つの復調手段に出力するか、OFDM復調を行う復調手段に出力するかを切り替えるスイッチ手段を、さらに有しても良い。また、スイッチ手段を備えずに、ダウンコンバータからの出力を複数の復調手段で受ける構成としても構わない。
【0013】
このようにすれば、1つの無線受信装置で、AMおよび/またはFM放送の2チャンネル同時受信と、OFDM放送の受信とを行えるようになる。
【0014】
また、本発明における基準信号生成手段は、周波数を独立して調整可能な2つの局部発振器として構成することも好適である。2つの周波数帯を同時に受信する場合に、その周波数に合わせて受信信号を周波数変換した方が、以降のフィルタリング処理等が容易になるためである。
【0015】
なお、本発明は、上記手段の少なくとも一部を有する無線受信装置として捉えることができる。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む無線受信方法として捉えることもできる。上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡易な構成で複数の周波数帯の信号を同時に受信することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る無線受信機の構成を図1に示す。本受信機は、AM放送、FM放送、地上デジタル放送(OFDM放送)の3つの放送を受信可能であり、AM放送とFM放送については2チャンネル同時に受信可能である。本受信機は、OFDM復調ではI信号、Q信号の2つの信号が必要となるのに対し、AM復調やFM復調ではI信号、Q信号のいずれか一方だけを用いても復調可能である点に着目したものであり、I信号、Q信号を個別に復調することで2チャンネルを同時に受信するものである。なお、2チャンネル同時受信には、AMとFM以外にも、AMとAM、FMとFMの同時受信も含まれる。
【0019】
図1に示すように、アンテナ1で受信された受信信号は、増幅回路2で増幅された後に、乗算器5,6にそれぞれ与えられる。乗算器5,6には局部発振器3から同一周波数の基準信号が供給されるが、これらの基準信号の位相は位相変換器4によって位相がπ/2だけずれている。乗算器5,6が基準信号を用いて受信信号を周波数変換し、増幅回路7,8で増幅した後に、ローパスフィルタ9,10により低周波成分を取り出すことで、受信信号がベースバンド信号にダウンコンバートされる。
【0020】
ダウンコンバートされたベースバンド信号は、スイッチ回路18によって、その出力先が切り替えられる。一方は、2つのベースバンド信号を、それぞれ異なるAM/FM復調器13,14に出力するものである。他方は、2つのベースバンド信号を1つのOFDM復調器17に出力するものである。
【0021】
AM/FM復調する場合は、まずバンドパスフィルタ11,12により復調する周波数帯のみ透過し、AM/FM復調器13,14によって復調する。なお、AM復調とFM復調は、復調器で行う処理(プログラム)を切り替えることによって切り替えればよい。
【0022】
一方、OFDM復調する場合は、ベースバンド信号をアナログ・デジタル変換器15,16によってデジタル信号に変換した後、OFDM復調器17によってFFT処理等の復調処理を行う。
【0023】
なお、局部発振器3は、受信する放送に合わせて生成する基準信号の周波数を切り替える。例えば、地上デジタル放送を受信する場合は、受信するチャンネルに合わせた周波数の基準信号を生成すればよい。また、AM/FMを2チャンネル同時に受信する場合には、基準信号の周波数として約530kHzを用い、ローパスフィルタ9,10によりAM〜FM(531kHz〜90または108MHz)に対応する信号を透過させ、バンドパスフィルタ11,12により受信したい放送信号のみを復調器に出力する。ただし、広帯域を同時に受信する場合は、アンプやフィルタ等の設計が複雑になりうるので、同時受信可能な周波数帯域をAM〜FMのうちの一部としてもよい。
【0024】
本実施形態に係る無線受信機によれば、従来のOFDM受信機の構成に対して、ほとんどコストアップすることなくAMおよびFM放送を同時に2チャンネル受信可能となる。
【0025】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る無線受信機の構成を図2に示す。本実施形態では、個別に周波数を設定可能な2つの局部発振器21,22から乗算器5,6に基準信号を供給する。AM/FMを2チャンネル同時に受信する場合には、2つのAM/FM復調器13,14で復調するチャンネルに合わせた周波数の基準信号を各局部発振器21,22が生成する。このようにすれば、ローパスフィルタ9,10によって受信したいチャンネルのベースバンド信号のみ取り出し可能であるため、バンドパスフィルタが不要となる。また、第1の実施形態では広い帯域の受信信号をダウンコンバートしていたためアンプやフィルタ等の構成が複雑となりうるが、本実施形態では単一の周波数を取り出せばよいのでアンプやフィルタの構成が簡単なものとなる。
【0026】
なお、地上デジタル放送を受信する場合には、局部発振器21,22が生成する基準信号を同一周波数で位相がπ/2だけずれたものとするか、第1の実施形態と同様に乗算器6へ供給される基準信号を局部発振器21が生成する基準信号を位相変換器でπ/2だけずらしたものとすればよい。
【0027】
本実施形態によれば、2チャンネル同時に受信する場合に、AM放送とFM放送のように周波数帯が大きく異なる場合であっても、簡単に受信することができる。
【0028】
(その他)
上記の実施形態では、地上デジタル放送の受信と、AM/FMの2チャンネル同時受信とを切替可能な無線受信機を説明しているが、地上デジタル放送の受信機能を省略して、AM/FMの2チャンネル同時受信機能のみを備えるようにしてもよい。
【0029】
また、上記の説明では、スイッチ回路18を設けて、ベースバンド信号の出力先を、AM/FM復調器13,14とOFDM復調器17のいずれにするかの切替を行っているが、スイッチ回路18を設けずにベースバンド信号を常に全ての復調器に入力するようにしても良い。信号のSN比はRF段で決まるため、ベースバンド信号を複数の復調器に入力しても問題ないためである。
【0030】
また、上記の説明ではダイレクトコンバージョン方式を例に説明しているが、スーパーへテロダイン方式など中間周波数を利用する方式を採用しても構わない。
【0031】
また、上記の説明では受信信号をアナログ信号のまま処理する構成を説明しているが、受信信号をデジタル信号化し、デジタル信号に対して周波数変換等の処理を施しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る無線受信機の構成を示す図である。
【図2】図2は、第2の実施形態に係る無線受信機の構成を示す図である。
【図3】図3は、従来のOFDM受信機の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 アンテナ
3 局部発振器
4 位相変換器
5,6 乗算器
13,14 AM/FM復調器
17 OFDM復調器
18 スイッチ回路
21,22 局部発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を受信するアンテナ部と、
第1および第2の基準信号を生成する基準信号生成手段と、
アンテナ部で受信した信号を、それぞれ前記第1および第2の基準信号を用いてベースバンド信号に周波数変換する第1および第2のダウンコンバータと、
前記第1のダウンコンバータの出力から、所定の周波数帯を選択する第1のフィルタと、該第1のフィルタによって選択された信号をAM復調またはFM復調する第1の復調手段と、
前記第2のダウンコンバータの出力から、所定の周波数帯を選択する第2のフィルタと、該第2のフィルタによって選択された信号をAM復調またはFM復調する第2の復調手段と、
を備える無線受信装置。
【請求項2】
前記第1および第2の基準信号は、同一の周波数を有し、位相がπ/2だけ異なる信号である
ことを特徴とする請求項1に記載の無線受信装置。
【請求項3】
前記第1および第2のダウンコンバータの出力から、OFDM復調を行う第3の復調手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項2に記載の無線受信装置。
【請求項4】
前記第1および第2のダウンコンバータの出力を、前記第1および第2の復調手段と第3の復調手段との間で切り替えるスイッチ手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項3に記載の無線受信装置。
【請求項5】
前記基準信号生成手段は、周波数を調整可能な2つの局部発振器から構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の無線受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−4145(P2010−4145A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159463(P2008−159463)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】