説明

無線周波数識別システム

【課題】無線周波数識別タグを読み出すために、無線周波数識別装置が使用する無線周波数チャネル上に位置する周囲雑音のレベルを周期的に測定するための方法、装置およびシステムを提供する。
【解決手段】測定した周囲雑音のレベルは、チャネル上の衝突を予測するために使用する閾値を動的に調整するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線周波数識別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線周波数識別(RFID)システムは、対象物の幅の広いアレイを識別し、追跡するために使用される。識別および追跡のためにRFID技術を使用する使用する対象物の例としては、文書(すなわち、パスポートおよび運転免許証)、小売商品、携帯電子機器、家具、部品、医薬品、および出荷用容器等がある。RFIDシステムは、RFIDタグが格納している情報を読み出す1つまたは複数のRFID装置、およびこの情報を処理するためのコンピュータを備える。RFIDタグは、通常、対象物に直接取り付けられるか、または対象物を内蔵しているパッケージング内に置かれる。RFIDタグがRFID装置の範囲内に位置する場合はいつでも、RFID装置はRFIDタグ上の符号化された情報を読み出す。
【0003】
他のタグ、RFID装置からのRF信号を含む周囲または背景雑音のために、RFID装置がRFIDタグからのRF応答信号を検出するのが困難になり、場合によっては検出できなくなる。この問題を緩和するために、プロトコル・パラメータが確立されている。プロトコル・パラメータは、RFIDタグによるRF応答信号の送信を制御する。異なるプロトコル・パラメータに対する値は、RFID装置により判定され、RFIDタグに送信され、次に、RFIDタグはRF応答信号を生成し、送信するためにパラメータを使用する。正しく設定すれば、プロトコル・パラメータは、RFID装置が、周囲雑音があっても範囲内のすべてのRFIDタグを正確に読み出す確率を増大する。プロトコル・パラメータが正しく設定されなかった場合には、RFID装置は、RFID装置の範囲内のRFIDタグのいくつかまたはすべてを読み出すことができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それ故、範囲内のすべてのRFIDタグを読み出すことができるように、RFID装置が、プロトコル・パラメータの正しい値を判定することができることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、「無線周波数チャネル内で信号を受信するステップと、結果を入手するために前記信号に対してスペクトル解析を行うステップと、前記結果を使用する統計的解析に基づいて無線周波数識別装置に対する判定閾値を設定するステップと、を含む無線周波数識別装置の使用方法」と「無線周波数チャネルで信号を受信することができる無線周波数受信機と、前記受信機と通信している処理ユニットと、前記処理ユニットと電気的に結合しているメモリ・ユニットであって、前記メモリ装置が、その内部に、前記処理ユニットにより実行された場合に、前記処理ユニットに(i)前記受信機からの信号の受信と、(ii)結果を入手するために前記信号に対するスペクトル解析の実行と、(iii)前記結果を使用する統計的解析に基づいて無線周波数識別装置に対する判定閾値の設定とを行わせる複数の命令を格納しているメモリ・ユニットとを備える無線周波数識別装置」とを提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下の説明においては、本発明を理解してもらうために多数の詳細な点について説明する。しかし、当業者であれば、本発明は、これらの詳細な点を使用しなくても実行することができること、上記実施形態を種々に変更および修正することができることを理解することができるだろう。
【0007】
図1に示すように、例示としての実施態様のRFIDシステム10は、RFID装置15(RFIDタグ・リーダまたはRFIDリーダとも呼ばれる)と、周囲雑音40と、それぞれがRFIDタグ50、55、60、65を含む複数の対象物20、25、30、35とを備える。各RFIDタグは、RFIDタグを識別し、および関連により対象物を識別する情報を含む。各RFIDタグ上に格納している情報は、すべての他のRFIDタグから各RFIDタグを一意に識別することもできるし、またはこの情報は、あるRFIDタグをあるグループ(例えば、ミルクの1ガロン容器)に属するものとして識別することができる。ある実施形態の場合には、RFIDタグは、タグを一意に識別するまたはグループを識別するために必要な情報の他に追加情報を含んでいる。例えば、RFIDタグは、ミルクのすべての他の容器からミルクの一意の1ガロン容器を識別する情報を含むこともできるし、その他に供給業者、ロット番号およびミルクの賞味期限を指定する追加情報を含むことができる。
【0008】
引き続き図1を参照すると、RFID装置15は、RFID装置15の範囲45内に位置する各RFIDタグ50、55、60、65から情報を読み出すように設計されている。RFID装置15は、無線周波(RF)信号を送信することによりRFIDタグ上に格納している情報を読み出す。この信号は、質問信号または質問コマンドと呼ばれる。質問信号は、RFID装置15の範囲45内に位置するすべてのRFIDタグ50、55、60、65により受信される。次に、RFIDタグは、RFIDタグ内に格納している情報を含むRF応答信号を送信する。RFID装置15は、各RFIDタグからRF応答信号を受信し、各RF応答信号が含んでいる情報を回収する。この情報は、グローバルに一意のID番号、価格、追跡データ、宛先、部品番号、製造番号、または他の属性、またはタグに関連する対象物を記述する属性の組合せを含む、ほとんどすべてのタイプのデータを含むことができる。あるRFIDシステムは、比較的少量の情報を含むRFIDタグをサポートし、一方、他のシステムは、大量のデータを含むRFIDタグをサポートし、あるRFIDシステムは、両方のタイプのタグをサポートする。
【0009】
コストを低減するために、ある種のタイプのRFIDタグは、タグの電子機器を駆動するための内部電源、すなわちバッテリーを含んでいない。これらのタイプのタグは、パッシブ・タグと呼ばれる。パッシブ・タグは、通常は1つの集積回路(IC)から構成される電子機器に接続しているアンテナを備える。パッシブ・タグは、RFID装置が送信した到来RF信号がタグのアンテナ内に誘起した微細な電流により電力の供給を受ける。誘起された電流は、ICに電力を供給し、RFID装置に応答信号を返すのに十分な電気的エネルギー源を供給する。パッシブRFIDタグは、後方散乱技術によりRF応答信号を生成する。この場合、RFID装置からのRF信号は変調され、RFID装置に反射される。各タグ内に格納している情報はRF応答信号に含まれている。この送信方法を使用すれば、タグを作動するのに必要な電力が少なくてすみ、そのためバッテリーを使用しなくてもすみ、タグのコストが低減する。しかし、パッシブ・タグが送信したRF信号は非常に弱い。
【0010】
大部分の環境には、RFID装置15とRFIDタグとの間の通信と干渉を起こす恐れがあるあるレベルの検出可能な周囲(または背景)RF雑音40が存在する。周囲RF雑音40の1つまたは複数の発生源は、RFID装置15の範囲45の内部または外部に位置する場合がある。RF応答信号は非常に弱いので、RFID装置は、RF応答信号をタグおよび周囲RF雑音40から区別できない場合がある。このような場合には、RFID装置15は、1つまたは複数のRFIDタグを読み出せない。さらに、周囲RF雑音40のレベルが時間の経過とともに変化し、間欠障害および信頼性の問題を引き起こす恐れがある。
【0011】
図2を参照すると、RFID装置15は、バス120によりメモリ115と接続しているプロセッサ110と、通信インタフェース125と、RFインタフェース105とを備える。メモリ115は、揮発性メモリおよび不揮発性メモリの両方を含む。不揮発性メモリは、プロセッサ110が実行した場合、RFID装置15の動作を制御する命令を格納するために使用される。不揮発性メモリは、また、RFID装置15を制御するために命令が使用するパラメータも含む。ある実施形態の場合には、プロセッサ110は、不揮発性メモリの内容を変更することができる。ある実施形態の場合には、プロセッサ110は、専用メモリ・バスを通してメモリにアクセスする。プロセッサ110は、1つまたは複数の外部システム145と通信するために通信インタフェース125を使用する。通信インタフェースは、イーサネット(登録商標)のような有線インタフェースであってもよいし、Wi−Fi(IEEE802.11)のような無線インタフェースであってもよい。ある実施形態の場合には、外部システムのうちの1つは、小売店で使用するPOS端末である。ある実施形態の場合には、外部システムのうちの1つは、対象物を識別および追跡するためにRFIDタグからの情報と一緒に使用されるデータベースを含む。
【0012】
引き続き図2を参照すると、プロセッサ110は、1つまたは複数のRFIDタグと通信するためにRFインタフェース105を使用する。RFインタフェース105は、両方ともRFIDタグと通信するために使用する複数のRFチャネルをサポートしているRF送信機140およびRF受信機135を備える。RF送信機140およびRF受信機135は、アンテナ130に接続していて、RFIDタグとの信号の送受信を行うためにアンテナ130を使用する。ある実施形態の場合には、RFIDタグと通信するための範囲および機能を改善するために複数のアンテナを使用している。パッシブRFIDタグからの信号は弱いので、RFIDタグとアンテナ130との間に位置する対象物は、シールドとしての働きをし、弱いRF応答信号がアンテナ130に到達するのを防止する。2つ以上のアンテナを備えるRFIDシステムは、RFIDタグからのRF応答信号がシステムのアンテナのうちの少なくとも1つにより受信される確率を増大する。それ故、追加のアンテナは、範囲45を増大し、RFID装置15の信頼性を高める。
【0013】
RFID装置15は、1回に1つのRFチャネル毎に1つのRF応答信号しか受信できない。任意の所与の時点に、複数のRFIDタグがRFID装置15の範囲45内に位置するマルチタグ環境においては、2つ以上のRFIDタグが同時に同じRFチャネルにより応答した場合には衝突が起こる。衝突が起こると、すべてのデータが喪失する。何故なら、信号を理解することができないからである。衝突を回避するために、RFID装置15は、RFID装置15の範囲45内の各RFIDタグを一体化しなければならない。RFID装置15が一度に1つのRFIDタグだけを識別し、それだけと通信することができる場合に、RFIDタグの一体化が起こる。一体化プロセスは、RFID装置15の設定および範囲45内のすべてのRFIDタグへのプロトコル・パラメータの供給を含む。次に、RFIDタグは、RFID装置15と通信する場合に使用する適当な時間およびチャネルを判定するためにパラメータを使用する。パラメータを正しく設定した場合には、RFID装置15は、範囲45内のすべてのRFIDタグの一体化に成功する。パラメータが正しく設定されていないと、RFIDタグ間で衝突が起こり、一体化が長くかかるか、または全然起こらない恐れがある。
【0014】
EPCglobal Inc(商標)は、RFIDシステムのある態様を規制する任意の標準を確立した国際的組織である。この組織からの1つの標準は、参照により本明細書に組み込むものとする、860MHz〜960MHzでの通信のための「EPC(商標)無線周波数識別プロトコル・クラス1、第二世代UHF RFIDプロトコル、バージョン1.0.9」であり、RFID装置およびタグの動作に対するガイドラインを含む。この標準の要件を満たす装置は、クラス1、第二世代RFID装置と呼ばれる。RFID装置15は、クラス1、第二世代RFID装置に対する標準に適合するが、他の実施形態の場合には、RFID装置15は、パッシブおよび/またはアクティブRFIDタグに対する他のRFID標準に適合する。
【0015】
クラス1、第二世代のRFIDシステムに対するEPCglobal Inc(商標)標準は、RFIDシステムでRFIDタグを一体化する場合に、RFID装置の性能および精度を左右する一組のプロトコル・パラメータを定義している。プロトコル・パラメータは、下記のものを含む:1)ラウンド内のスロットの数を設定する「Q」;2)T=>Rリンク周波数を設定する「DR」(TRcal分割比);3)質問信号またはコマンドに応答するタグを選択する「SEL」;在庫ラウンドのためのセッションを選択する「SESSION」および5)その在庫フラグがAまたはBであるタグが在庫ラウンドに参加するのかしないのかを選択する「TARGET」。プロトコル・パラメータの目的は、RFID装置15からの質問信号に対する複数の同時タグ応答(すなわち、衝突)を防止することである。プロトコル・パラメータは、質問プロセス中にRFID装置15の範囲内のすべてのタグに同報通信される。
【0016】
「Q」構成可能なプロトコル・パラメータは、質問信号に応答するためにタグに対して使用することができるタイムスロットの数を識別する。各タグは、RFID装置15からの質問信号に応答するために1つのタイムスロットを必要とする。Qが1に設定されている場合には、RFID装置の範囲内のすべてのタグは、同じタイムスロット内の質問信号にその応答を送信する。RFID装置の範囲内に複数のタグが存在する場合には、タグは、すべて同じタイムスロット内でその応答を送信し、衝突が起こる。衝突のすべての可能性を防止するために、Qを32,768(215)の最大値に設定することができる。これにより衝突を防止することができるが、RFIDシステムのスループット性能が非常に低下する。何故なら、タグを一体化するのに32,768のタイムスロットが必要になるからである。それ故、衝突を低減または根絶しながらスループットを最大にするために、タグの数が少ない場合には「Q」の値としてより小さな値を使用することが望ましく、タグの数が多い場合には、「Q」の値としてより大きな値を使用することが望ましい。
【0017】
すでに説明したように、プロトコル・パラメータが正しく設定されないと、RFID装置15がすべてのRFIDタグをうまく一体化できなかった場合には、衝突が起こり、同じRFチャネル上で同時に2つ以上のタグが応答することになる。EPCglobal Inc(商標)標準は、衝突を検出する固有の機能を持っていないので、RFID装置15は、衝突または衝突中複数のタグの存在を直接感知しない。さらに、衝突が、質問信号が送信された場合に、RFID装置15の範囲45内にタグが存在しない状況と取り違えられる恐れがある。それ故、RFID装置15は検出する応答信号を持たない。それ故、クラス1、第二世代標準を実施するRFID装置は、複数のタグが存在することを意味する衝突と、タグが存在しないことを意味する無応答とを本来区別することができない。
【0018】
標準の制定者は、RFID装置が、所定の最小数のタイムスロットをどうしても必要とするプロトコル・パラメータに対してデフォルト設定を使用することを示唆することにより、システム性能の問題、およびタグが存在しない状態と複数のタグが存在する状態との間を区別する問題を解決しようとした。仮定は、タイムスロットの最小数は、マルチタグ環境で一体化を成功させることができるほど十分大きいが、システムの性能に悪影響を与えないほど十分小さいというものである。成功した一体化の回数に基づいてタイムスロットの数を増減するためにフィードバック・ループが使用されるアルゴリズムについて概略説明する。このアルゴリズムは、1)成功した一体化の数が0に等しい場合には、タイムスロットの数が減少するが(最小数より小さくは減少しない)、2)成功した一体化の数が1に等しい場合には、タイムスロットの数を同じに維持する、3)成功した一体化の数が1より大きい場合には、タイムスロットの数を増大する、と述べている。このアルゴリズムは、RFIDシステムが動作中は引き続き適用される。
【0019】
タイムスロットの数を調整するために成功した一体化の数を使用する他に、標準の制定者は、タグ間の衝突の発生を予測しようとした。RFID装置15は、2つ以上のタグ間の衝突を本来検出することはできないが、RFID装置は、受信した信号の大きさと閾値とを比較することができ、次に衝突が起こったか否かを予測することができる。制定者は、また、RFID装置15が使用する各RFチャネルの統計的に計算した静的閾値を定義している。(この閾値は、判定閾値と呼ばれる場合もある。)この方法を使用した場合、受信信号が閾値を超えると、衝突が起きたと仮定する。他の衝突を防止するために、タイムスロットの数を増大する。受信信号が閾値未満である場合には、衝突が起こらなかったと仮定する。システムのスループット性能を改善するために、衝突はないが、最小数以上である場合にはタイムスロットの数を低減する。
【0020】
このスキームは、エラーを起こし易い。何故なら、統計的に定義した静的閾値は、RFID環境内の周囲のRF雑音の動的性質に適合できないからである。周囲のRF雑音40のレベルは、時間の経過および地理的位置により変動する。この問題を解決するために、統計的に定義した統計値(static value)は比較的高く設定される。低い周囲のRF雑音40の周期を有する環境においては、閾値が高すぎると、RFID装置15は、RFID装置15の範囲45の縁部のところのタグからの弱い応答を受信できない。この場合、RFID装置15は、弱い応答を雑音と間違える。高い周囲のRF雑音40の周期を有する環境においては、閾値が低すぎると、RFID装置15は、周囲RF雑音40を衝突と間違える。偽の衝突が起こると、RFIDシステムは、衝突の数を低減しようとしてタイムスロットの数を増大する。これにより、診断するのが難しく、コストの高い間欠問題が起こる。周囲RF雑音40の一定の高いレベルを有する環境においては、衝突の増大はRFIDシステムの性能およびタグを読み出すRFID装置の機能に悪影響を与える。
【0021】
図3を参照すると、この図は、衝突を予測するために使用するRFID装置15の閾値を動的に調整するための方法を示すブロック図である。RFID装置15は、多数の異なる無線周波またはRFチャネルによりRFIDタグと通信し、閾値が各RFチャネルに対して維持される。ステップ300において、RFID装置15は、RF受信機135によりサポートされているRFチャネルのうちの1つを選択する。ある実施形態の場合には、RF受信機135の帯域幅も調整することができる。その場合、RF受信機135の感度を増大するために帯域幅が狭くなる。ステップ305において、RFID装置15は、RF受信機135に選択したRFチャネル上で受信中の信号のサンプルを捕捉させる。この信号は、選択したRFチャネルの瞬間的な周囲RF雑音を表す。次に、RFID装置15は、サンプリングした信号310のスペクトル解析を行う。この分析は、フーリエ解析により周波数領域内で行われる。しかし、同じ分析を行うために他の方法も使用することができる。スペクトル解析により、選択したRFチャネルに対する瞬間的な周囲RF雑音信号の振幅である結果が得られる。ステップ315において、RFID装置15は、選択したRFチャネルに対する結果を格納するための専用の循環バッファ内に結果を格納する。休止期間中、RFID装置15は、各RFチャネルに対してこのプロセスを引き続き反復する。ある時点で、各RFチャネルに対する循環バッファが満杯になる。この時点で、最も古い結果が除去され、最も新しい結果が追加される。循環バッファのサイズは選択することができる。
【0022】
各RFチャネルに対する瞬間的な周囲RF雑音の大きさの判定と同時に、RFID装置15は、RFチャネルに割り当てられた循環バッファ内に格納している結果を使用して各チャネルに対する動的閾値を計算する。これについては以下に説明する。ステップ350において、RFID装置15は1つのRFチャネルを選択する。ステップ355において、RFID装置15は、選択したRFチャネルに割り当てられた循環バッファからすべての結果を読み出す。このチャネルに対する周囲RF雑音は、平均、変化、および標準偏差を計算するための周知の式を有する統計的ガウス分布を使用してモデル化される。周囲雑音が引き続きガウス分布モデルに追随すると仮定した場合、RFID装置15は、選択したチャネルに対する閾値を循環バッファからの結果の平均に標準偏差360を加えたものに設定する。休止期間中、RFID装置15は、周期的に各チャネルに対してこのプロセスを反復して行う。このようにして、各チャネルに対する閾値は、各RFチャネル上で発見した実際のリアルタイムの周囲RF雑音の統計的解析に基づいて周期的に更新される。
【0023】
ここで図4を参照すると、RFチャネル上の瞬間的な周囲RF雑音およびRFチャネルに対する閾値を判定するための上記方法を使用して、RFID装置15は、衝突が発生したか否かを予測することができる。この方法は、RFID装置15が質問信号に応じて信号を受信したが、受信信号を理解できない場合に開始する(ステップ400)。RFID装置15は、受信信号に対してスペクトル解析を行い、受信信号に対する大きさを判定する(ステップ405)。次に、この大きさは、信号を受信するために使用したRFチャネルに対する閾値と比較される(ステップ410)。RFID装置15は、信号の大きさが閾値より大きい場合には、衝突があったと結論する(ステップ415)。信号の大きさが閾値より小さい場合には、RFID装置15は、衝突が無かったと結論し、範囲内にタグが存在しないと結論する(ステップ420)。
【0024】
衝突が起きたと予測される場合には、RFID装置15は、さらなる衝突を防止する目的でタイムスロットの数を増大するためにプロトコル・パラメータを調整する。次に、RFID装置15は、他の質問信号を送り、応答をチェックする。このプロセスは、衝突がなくなりすべてのタグが読み出されるまで反復して行われる。動的閾値を使用する衝突の予測は、より正確であり、統計的に定義した静的閾値を使用する衝突の予測よりも信頼性が高い。それ故、システムのスループットに悪影響を与える最小数のタイムスロットを使用しなければならない従来のプロトコル・パラメータを使用する必要はもはやない。従来のプロトコル・パラメータは、RFID装置15が統計的に定義した静的閾値を使用する場合に必要な追加の保護手段であった。それ故、動的閾値を使用すれば、予測精度が高くなり、RFID装置15は、依然として衝突を効果的に処理しながら、システムのスループットを最大にするために、1つのタイムスロットのように最初に少数にプロトコル・パラメータを設定することができる。
【0025】
また、図5に示すように、RFチャネルの周囲RF雑音を動的に測定するための上記方法は、RFIDシステム内でLBT(listen−before−talk)ストラテジを実行するためにも使用することができることを理解されたい。このストラテジの場合、RFチャネルが選択されるが(ステップ500)、RFチャネルを使用する前にRFID装置15は、RFチャネル上の瞬間的な周囲RF雑音のサンプルを採取する(ステップ505)。次に、RFID装置15は、スペクトル解析を使用して瞬間的な周囲RF雑音の大きさを測定する(ステップ510)。瞬間的な周囲RF雑音の大きさが選択したRFチャネルに対する閾値を超えた場合には、RFID装置15は、そのRFチャネルは使用できないと結論し、他のRFチャネルを選択する(ステップ520)。この大きさが閾値より小さい場合には、RFID装置15はこのRFチャネルは使用できると結論する(ステップ525)。
【0026】
瞬間的な周囲RF雑音の発生源は多数あり、これらの発生源は環境毎に異なる。発生源のいくつかの例としては、他のRFID装置、近くで動作している通信システム(すなわち、WiFiまたは携帯電話)、電子装置からの偽の放射、またはこれらの組合せ等がある。雑音源が何であれ、RFID装置15が動的閾値を使用すれば、RFIDシステムは最大のスループットおよび信頼性を維持するために動的に現在の環境に適合することができる。
【0027】
また、アクティブRFIDタグ(電子機器およびRF送信機に電力を供給するためにバッテリーを使用するタグ)またはアクティブおよびパッシブRFIDタグの組合せを使用するRFIDシステムは、上記RFIDシステムと同じ利点を有することを理解することができるだろう。
【0028】
好ましい実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、通常の当業者であれば、上記説明、図面および添付の特許請求の範囲により種々様々な実施形態を使用することができることを理解することができるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】1つのRFID装置および複数のRFIDタグを備えている例示としてのRFIDシステムである。
【図2】例示としてのRFID装置の高レベル機能図である。
【図3】RFチャネルに対する閾値を判定するための例示としての方法を示す高レベル・フローチャートである。
【図4】衝突が発生したことを判定するための例示としての方法を示す高レベル・フローチャートである。
【図5】RFチャネルの利用率を判定するための例示としての方法を示す高レベル・フローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数チャネル内で信号を受信するステップと、
結果を入手するために前記信号に対してスペクトル解析を行うステップと、
前記結果を使用する統計的解析に基づいて無線周波数識別装置に対する判定閾値を設定するステップと、を含む無線周波数識別装置の使用方法。
【請求項2】
前記信号が、前記無線周波数チャネルに周囲雑音を含む、請求項1に記載の無線周波数識別装置の使用方法。
【請求項3】
前記スペクトル解析により得られた結果が、前記信号の大きさである、請求項1に記載の無線周波数識別装置の使用方法。
【請求項4】
前記スペクトル解析が前記信号のフーリエ解析を含む、請求項1に記載の無線周波数識別装置の使用方法。
【請求項5】
前記結果が、前記無線周波数チャネルに割り当てられた循環バッファ内に格納される、請求項1に記載の無線周波数識別装置の使用方法。
【請求項6】
前記統計的解析が、前記循環バッファ内に格納しているデータにガウス分布モデルを使用するステップを含む、請求項5に記載の無線周波数識別装置の使用方法。
【請求項7】
前記判定閾値が、平均に3標準偏差を加えたものに設定される、請求項6に記載の無線周波数識別装置の使用方法。
【請求項8】
前記判定閾値が、前記無線周波数チャネルに関連する、請求項7に記載の無線周波数識別装置の使用方法。
【請求項9】
無線周波数チャネルで信号を受信することができる無線周波数受信機と、
前記受信機と通信している処理ユニットと、
前記処理ユニットと電気的に結合しているメモリ・ユニットであって、前記メモリ装置が、その内部に、前記処理ユニットにより実行された場合に、前記処理ユニットに
(i)前記受信機からの信号の受信と、
(ii)結果を入手するために前記信号に対するスペクトル解析の実行と、
(iii)前記結果を使用する統計的解析に基づいて無線周波数識別装置に対する判定閾値の設定と
を行わせる複数の命令を格納しているメモリ・ユニットと
を備える無線周波数識別装置。
【請求項10】
前記信号が、前記無線周波数チャネルに周囲雑音を含む、請求項9に記載の無線周波数識別装置。
【請求項11】
前記スペクトル解析により得られた結果が、前記信号の大きさである、請求項9に記載の無線周波数識別装置。
【請求項12】
前記スペクトル解析が前記信号のフーリエ解析を含む、請求項9に記載の無線周波数識別装置。
【請求項13】
前記結果が、前記無線周波数チャネルに割り当てられた循環バッファ内に格納される、請求項9に記載の無線周波数識別装置。
【請求項14】
前記統計的解析が、前記循環バッファ内に格納しているデータにガウス分布モデルを使用するステップを含む、請求項13に記載の無線周波数識別装置。
【請求項15】
前記判定閾値が、平均に3標準偏差を加えたものに設定される、請求項14に記載の無線周波数識別装置。
【請求項16】
前記判定閾値が、前記無線周波数チャネルに関連する、請求項15に記載の無線周波数識別装置。
【請求項17】
コンピュータと、
前記コンピュータと通信している無線周波数識別装置であって、前記装置が、
無線周波数チャネルで信号を受信することができる無線周波数受信機と、
前記受信機と通信している処理ユニットと、
前記処理ユニットと電気的に結合しているメモリ・ユニットであって、前記メモリ装置が、その内部に、前記処理ユニットにより実行された場合に、前記処理ユニットに
(i)前記受信機からの信号の受信と、
(ii)結果を入手するために前記信号に対するスペクトル解析の実行と、
(iii)前記結果を使用する統計的解析に基づいて前記装置に対する判定閾値の設定と
を行わせる複数の命令を格納しているメモリ・ユニットと
を備える無線周波数識別装置と
を備える無線周波数識別システム。
【請求項18】
前記信号が、前記無線周波数チャネルに周囲雑音を含む、請求項17に記載の無線周波数識別システム。
【請求項19】
前記スペクトル解析により得られた結果が、前記信号の大きさである、請求項17に記載の無線周波数識別システム。
【請求項20】
前記スペクトル解析が前記信号のフーリエ解析を含む、請求項17に記載の無線周波数識別システム。
【請求項21】
前記結果が、前記無線周波数チャネルに割り当てられた循環バッファ内に格納される、請求項17に記載の無線周波数識別システム。
【請求項22】
前記統計的解析が、前記循環バッファ内に格納しているデータにガウス分布モデルを使用するステップを含む、請求項21に記載の無線周波数識別システム。
【請求項23】
前記判定閾値が、平均に3標準偏差を加えたものに設定される、請求項22に記載の無線周波数識別システム。
【請求項24】
前記判定閾値が、前記無線周波数チャネルに関連する、請求項23に記載の無線周波数識別システム。
【請求項25】
無線周波数チャネルを選択するステップと、
前記無線周波数チャネル内で信号を受信するステップと、
結果を入手するために前記信号に対してスペクトル解析を行うステップと、
前記結果が判定閾値より大きい場合に、異なる無線周波数チャネルを選択するステップと、を含むLBT(listen−before−talk)ストラテジを使用する無線周波数識別装置の使用方法。
【請求項26】
前記信号が、前記無線周波数チャネルに周囲雑音を含む、請求項25に記載の無線周波数識別装置の使用方法。
【請求項27】
前記スペクトル解析により得られた前記結果が、前記信号の大きさである、請求項25に記載の無線周波数識別装置の使用方法。
【請求項28】
前記スペクトル解析が前記信号のフーリエ解析を含む、請求項25に記載の無線周波数識別装置の使用方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−125076(P2008−125076A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289524(P2007−289524)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(391007161)エヌ・シー・アール・コーポレイション (85)
【氏名又は名称原語表記】NCR CORPORATION
【Fターム(参考)】