説明

無線周波数識別タグを用いてアイテムの照合および認証を行う方法およびシステム

【課題】識別子および秘密鍵を保存するメモリと組み込みハッシュ関数とを有するRFIDを含むアイテムを認証する方法を提供する。
【解決手段】本発明の方法によれば、認証対象のアイテムのRFIDの出力が、真正のアイテムのRFIDの出力と照合される。そのために、乱数が、ゼロと共に、パラメータとして認証対象のアイテムへ送信される。RFID識別子と、乱数と、秘密鍵とを連結して組み込みハッシング関数の入力として用い、その結果をRFID識別子と共に出力する。RFID識別子と乱数とは、次いで真正のアイテムのRFIDへ送信され、真正のアイテムのRFIDが、自体の識別子、および認証対象のアイテムのRFID識別子と乱数と秘密鍵とを用いて計算された組み込みハッシング関数の出力を、返送する。両方の組み込みハッシング関数の結果が同一であれば、アイテムは認証され、そうでなければ、アイテムは偽造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、アイテムの偽造を防ぐ方法およびシステムに関し、特に、RFIDを用いて、認証対象のアイテムと、類似している真正のアイテムとを照合することによってアイテムを認証する、方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
希少なワインおよび香水などの高価な製品、または公文書および金融書類などの文書の偽造を難しくするために、方法および装置が従来から存在する。アイテムが真正であることを保証するという基本コンセプトには、アイテムが真正であることを確認する識別子など、アイテム検証の形式が必要である。例えば、米国特許出願第2004/0000987号では、無線周波数識別(RFID:Radio Frequency Identifier)タグを用いて小切手詐欺を検出するプロセスが開示されている。この発明によれば、システムは、小切手に関連付けられた無線周波数識別(RFID)タグを有する小切手の作成要求を支払人から受信する第1デバイスを含む。小切手に関連付けられたRFIDタグを有する小切手の有効化を求める要求を受取人から受信する、第2デバイスを備える。システムは、さらに、RFIDレポジトリを含む。プロセッサを備え、(i)支払人から小切手情報を受信し、(ii)支払人から受信した小切手情報を用いてRFIDレポジトリを更新し、(iii)受取人から、スキャンされた小切手情報を受信し、(iv)受取人から受信したスキャンされた小切手情報をRFIDレポジトリから検索された特定の情報と照合し、(v)受取人から受信したスキャンされた小切手情報とRFIDレポジトリから検索された特定の情報との照合に基づいて、小切手が有効なものであるかどうかを判断する。RFIDレポジトリが、中央RFIDレポジトリを含むことが好ましい。同様に、米国特許第6226619号では、アイテムの偽造を防ぐ方法およびシステムが開示されており、この開示には、アイテムに取り付けられて、応答信号送付可能なタグが含まれる。アイテムは、タグに保存された秘密かつ複製不可能で真正性を示す情報と照合するための、可視的なしるしを有している。
【0003】
上記の方法およびシステムに従って、特定の文書が適切な人物によって発行されたものであること、またはアイテムが適切な製造者によって製造されたものであること、あるいは特定の公文書が適切な政府機関によって発行されたものであることを、確実にすることができる。上述のように、これらの方法およびシステムは、RFID内部にエンコードされた識別子に基づいているが、かかる識別子はRFIDスキャナおよびライタを用いれば、別のRFID上に複製することも可能である。
【0004】
従って、認証を向上させる方法およびシステムの必要性が存在する。
【特許文献1】米国特許出願第2004/0000987号
【特許文献2】米国特許第6226619号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
故に、本発明の広義の目的は、本明細書において上述したような従来技術の欠点を解決することである。
【0006】
本発明の別の目的は、無線周波数タグ識別を用いて、アイテムが、そのような資格のある政府機関、人物、または製造者によって制作、発行または製造されていることを確かめる、改良型の方法およびシステムを提供することである。
【0007】
本発明のさらなる目的は、無線周波数タグ識別を用いて、認証対象のアイテムを、類似している真正のアイテムと照合することによって、アイテムが、そのような資格のある政府機関、人物、または製造者によって制作、発行または製造されていることを確かめる、改良型の方法およびシステムを提供することである。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、内容の複製がほとんど不可能な無線周波数タグ識別を用いて、アイテムが、そのような資格のある政府機関、人物、または製造者によって制作、発行または製造されていることを確かめる、改良型の方法およびシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記および他の関連する目的の達成は、アイテムを認証するRFIDによって実現され、該アイテムには前記RFIDが関連付けられており、前記RFIDは、識別子および秘密鍵を保存しているメモリと、組み込みハッシュ関数とを有しており、前記RFIDは、以下のことを行うのに適している。
−2つの引数aおよびbを含むチェック・コマンドを受信すること、
−前記パラメータaがゼロで受信される場合、前記パラメータaの値を前記識別子の値に設定すること、
−前記引数aおよびbと、変数Cの中の前記秘密鍵とを、連結すること、
−前記変数Cを入力として、前記組み込みハッシュ関数の結果Hを計算すること、
−前記識別子の値、および前記計算結果Hを送信すること。
さらに、上記および他の関連する目的の達成は、上述のようなRFIDを含む第1アイテムを、第2アイテムの参照およびRFIDを用いて認証する方法によって実現され、前記第2アイテムの前記RFIDは上述したものと同様であり、前記第2アイテムは真正のアイテムであって、前記方法には、以下のステップ群が含まれる。
−乱数を生成するステップ、
−ゼロおよび前記乱数Rを引数として伴った第1要求を、前記第1アイテムへ送信するステップ、
−前記第1要求に応じて、前記第1アイテムから、2つの値を受信するステップ、
−前記2つの値のうちの第1の値および前記乱数を引数として伴った第2要求を、前記第2アイテムのRFIDへ送信するステップ、
−前記第2要求に応じて、前記第2アイテムのRFIDから、2つの値を受信するステップ、
−前記第1アイテムから受信した前記2つの値のうちの第2の値と、前記第2アイテムの前記RFIDから受信した前記2つの値のうちの第2の値とを照合するステップ。
【0010】
本発明のさらなる実施形態は、添付の従属する請求項にて提示される。
【0011】
図面および詳細な説明を考察すると、当業者には、本発明のさらなる利点が明らかになる。あらゆる追加的な利点も、本明細書に組み込まれるものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明によれば、無線周波数識別(RFID)タグは、認証対象のアイテムに内蔵されている。かかるRFIDは、短読み取り距離のRFIDであることが好ましく、例えば13.56MHzで動作するRFIDが挙げられる。各RFIDは、以降MyIDと呼ぶ、EPCなどの固有の識別子を保存するメモリと、以降SKと呼ぶ秘密鍵と、変数xを与えると結果H(x)を返す組み込み関数と、を含み、R.RivestによるRFC1321「The MD5 Message−Digest Algorithm」またはRFC3174「Secure Hash Algorithm 1」などのアルゴリズムよれば、H(x)は、入力変数xのハッシング(ハッシュ法)である。
【0013】
RFIDシステム
あらゆるRFIDシステムの中核は、対象に取り付けるかまたは対象に内蔵することのできる「タグ」すなわち「トランスポンダ」であり、その中にはデータを保存することができる。RFIDリーダは、以下の説明では総称してリーダと呼ぶが、無線周波数信号をRFIDタグへ送出し、RFIDタグは、保存しているデータをリーダへ返送する。本システムは、基本的に2つの別個のアンテナとして機能しており、1つはRFIDタグにあり、もう1つはリーダにある。読み取ったデータは、標準的なインターフェースを介してホスト・コンピュータのような別のシステムへ直接送信することもできるし、または携帯用のリーダ内に保存し、後でコンピュータへアップロードしてデータ処理することもできる。RFIDタグ・システムは、過度の汚れ、埃、湿度を伴う環境、または視界の悪い環境あるいはその両方であっても、効果的に機能する。このシステムは、他の自動識別手法の限界をほぼ克服する。
【0014】
現在、圧電式RFIDおよび電子式RFIDなど数種類のRFIDが利用可能となっている。例えば、受動型RFIDタグは、一般に誘導機構を用いてリーダによって電力供給される(電磁場が、リーダのアンテナによって放射され、RFIDタグ上に配置されたアンテナによって受信される)ので、伝送用に電池を必要としない。この電力は、RFIDタグが、RFIDタグに保存されたデータを搬送する信号をリーダへ返送するのに使用する。能動型RFIDタグは、信号をリーダへ送信するための電池を有する。信号は、所定の間隔で放射されるか、またはリーダによってアドレスされた場合にのみ送信される。
【0015】
受動型の高周波(HF:High Frequency)RFIDタグが読み取りされる場合、リーダは、RFIDアンテナに対し、例えば134.2KHz電力パルスといった電力パルスを送出する。生成される磁場は、同じ周波数に変化する、RFIDタグ内のアンテナによって、「収集」される。この受信エネルギーは整流されて、RFIDタグ内部の小型キャパシタに保存される。電力パルスが終了するとすぐに、RFIDタグは、内部に保存されているエネルギーを電源として用いて、自体のデータを返送する。一般に、誤り検出情報を含む128ビットが、20msにわたって伝送される。このデータは受信アンテナによって傍受され、リーダによってデコードされる。全データが伝送されたら、蓄積キャパシタを放電し、RFIDタグをリセットして、次の読み取りサイクルに対する準備を整える。送信パルス間の時間は「同期時間(sync time)」として周知であり、システム・セットアップに応じて20msから50msの間続く。RFIDタグとリーダとの間で使用される伝送技術は、周波数偏位変調(FSK:Frequency Shift Keying)であって、伝送は一般に124.2kHzから134.2kHzより成る。この手法は、ノイズに対して比較的良好な耐性を示すと同時に、実装するのにコスト効率が良い。
【0016】
RFIDタグは、読み取り専用型、ライトワンス型、または読み取り書き込み型とすることができる。読み取り専用型RFIDタグは、製造プロセス中にロードされる読み取り専用メモリを含む。その内容は、変更不可能である。ライトワンス型RFIDタグは、読み取り専用型RFIDタグと違い、例えば部品番号またはシリアル番号といった所要のデータを用いて、エンドユーザがプログラミング可能である。読み取り書き込み型RFIDタグは、完全な読み書き機能に対処しており、ユーザは、メモリ技術の限度内で可能な限り頻繁に、タグに保存された情報を更新できる。一般に、読み取りサイクルの数には制限がないのに対し、書き込みサイクルの数は約500,000に制限されている。RFIDタグの詳細な技術的分析については、例えば、Steven Shepard著、ハードカバー版「RFID(McGraw−Hill Networking Professional)」に開示されている。
【0017】
図1は、受動型HFまたは極超短波(UHF:Ultra High Frequency)RFIDタグ100のアーキテクチャの一例を表す。図示するように、105−1および105−2の2つの部分を含むダイポール・アンテナが、電力生成回路110に接続されており、この回路は、受信信号から得た電流を、論理およびメモリ回路115、復調器120、変調器125へ提供する。復調器120の入力は、アンテナ(105−1および105−2)に接続されていて、信号を受信し、さらに受信信号を復調した後この受信信号を論理およびメモリ回路115へ送信する。変調器125の入力は、論理およびメモリ回路115に接続されていて、伝送対象となる信号を受信する。変調器125の出力は、アンテナ(105−1および105−2)に接続されていて、変調器125にて変調した後、信号を送信する。
【0018】
半受動型RFIDタグのアーキテクチャは、図1に示したものと類似するが、主な相違は、はるかに低い信号電力レベルでもタグが機能できるようにする電源が存在することであり、結果として、読み取り距離が長くなる。電池と能動的なトランスミッタとを備えて高周波エネルギーを生成しそれをアンテナに適用することのできる能動型タグに反して、半受動型タグは、内蔵型のトランスミッタを持たない。
【0019】
ホワイト・ペーパー「A basic introduction to RFID technology and its use in the supply chain」,Laran RFIDにて開示されているように、リーダからの伝搬波が、ダイポール状のタグ・アンテナと衝突すると、エネルギーの一部は吸収されてタグに電力を供給し、小規模な部分が、後方散乱として知られる技術でリーダへ反射し返される。理論上、最適なエネルギー伝達のためには、ダイポールの長さが波長の半分に等しいこと、すなわちλ/2であることが求められる。一般に、ダイポールは、2つのλ/4長で構成される。タグからリーダまでの通信は、伝送されるデータ・ストリームに合わせてアンテナの入力インピーダンスを変えることによって実現される。この結果、リーダへ反射し返される電力は、データに合わせて変更されることになり、言い換えれば変調されることになる。
【0020】
図2は、図2の(a)および図2の(b)を含み、RFIDシステム200を示す。図2の(a)に示すように、RFIDシステム200は、アンテナ210を有するリーダ205を含む。アンテナ210は、RFIDタグ220によって受信される信号215を放射する。信号215は、RFIDタグ220にて反射され、225とされた点線で示すように再放射される。図2の(b)は、リーダ205のアンテナ210によって放射される信号215と、RFIDタグ220によって反射される信号225とを示している。図2の(b)に示すように、反射信号225は、変調されている。
【0021】
アイテムに内蔵されたRFIDの動作
上述のように、アイテムを認証するのに用いるRFIDは各々集積回路を含み、この集積回路が、MyIDと呼ぶ固有の識別子と、SKと呼ぶ秘密鍵と、変数xを与えられるとH(x)を返す組み込み関数Hと、を保存するメモリを実装し、R.RivestによるRFC1321「The MD5 Message−Digest Algorithm」またはRFC3174「Secure Hash Algorithm 1」などのアルゴリズムによれば、H(x)は、入力変数xのハッシングである。
【0022】
各RFIDは、RFID自体の動作する周波数範囲内での動作要求を受信し次第、図3のフロー・チャートに示す論理に従って動作する。起動すると、RFIDは初期化され、メモリから、自体の識別子MyIDと、保存されている秘密鍵SKとを入手する(ステップ300)。次に、RFIDは、aおよびbをパラメータとして有するチェック(確認)要求を受け取るまで待つ(ステップ305)。パラメータaがゼロに等しければ(ステップ310)、パラメータaをMyID、すなわちRFID識別子の値に設定する(ステップ315)。次いで、パラメータaおよびbの値と、変数Cの中の秘密鍵SKとを連結する(ステップ320)。連結されたら、結果Cは、組み込みハッシュ関数の入力として使用され、この関数の出力はhと称される(ステップ325)。次いで、RFIDの識別子MyIDと組み込みハッシュ関数の結果hとが、チェック済みコマンドでRFIDによって返送される(ステップ330)。
【0023】
認証対象のアイテムにタグ付けする方法
本発明の方法に従って或るアイテムを認証しなくてはならない場合、アイテムが、図3を参照して説明したようなRFIDを備えている必要がある。照合できるように、アイテムを認証しようとしている機関または組織体に真正のアイテムを提供する必要がある。
【0024】
図4は、認証対象のアイテムを準備する主要なステップ群を示す。これには以下の4者の関係者、すなわち、RFID製造者(400)、認証対象のアイテムを流通させる組織(405)、アイテム製造者(410)、およびアイテムを認証しようとしている機関または組織体(415)が関与する。アイテムによっては、アイテム製造者が、認証対象のアイテムを流通させる組織であること、またはRFID製造者がアイテム製造者もしくは認証対象のアイテムを流通させる組織またはその両方であること、あるいは上記の両方の可能性がある。認証対象のアイテムを販売または提供する前に、参照番号1の付いた矢印で示すように、アイテムを流通させる組織405が、図3を参照して説明したようなRFIDを求める要求をRFID製造者400へ送る。この組織405用の秘密鍵がまだ存在していなければ、秘密鍵が生成される。かかる秘密鍵は、専門の会社で生成することができる。次いで、組織405に関連する秘密鍵を用いて、RFID製造者が、上述した明細に従ってRFIDを製造する。RFIDの識別子は、例えば連続的な番号付与など標準的な方法に従って決定される。その後RFIDは、参照番号2の付いた矢印で示すように、アイテムの中へRFIDを組み込むアイテム製造者410へ発送される。次いでRFIDを含んだアイテムは、参照番号3の付いた矢印で示すように、組織405へ送られる。組織405は、参照番号4の付いた矢印で示すように、真正のアイテムを1つ、機関または組織体415へ提供し、機関または組織体が、受け取った真正のアイテムと照合することによってアイテムを認証する。
【0025】
アイテムを認証する方法
アイテムを認証する本発明の方法は、図5に示すように、アイテムのRFIDの応答と、真正のアイテムのRFIDの応答とを照合することに基づいている。アイテム500を認証する場合、機関505が、認証方法のアルゴリズムを実行しているコンピュータ、携帯用コンピュータ、手持ち式デバイス、または同様のものに接続しているRFIDリーダを使用する。アイテム500は、真正のアイテム510と照合される。標準アルゴリズムに従って乱数Rを生成(ステップ515)した後、リーダが、参照番号1の付いた矢印で示すように、認証対象のアイテムへ、引数ゼロおよびRを伴ったチェック要求を送信する(ステップ520)。図3を参照して上述したように、認証対象のアイテムのRFIDが、Id1と呼ぶRFID識別子と、乱数Rと、RFID内部に保存された秘密鍵とを連結し、この連結した値を入力として、組み込みハッシュ関数の結果h1を計算する。結果h1とRFIDの識別子とは、チェック済みコマンドに入って、参照番号2の付いた矢印で示すように、RFIDによって返送される。Id1およびh1の値を伴ったチェック済みコマンドを受信(ステップ525)した後、リーダは、返送されたRFID識別子Id1を用いて、第1の認証を実施する(ステップ530)。かかる認証は、例えばこのRFID識別子Id1と、データベースに保存できる組織のRFID識別子とを照合することによって行うことができる。アイテムが認証されなかったら、ユーザにアラートが送られ(ステップ535)、認証プロセスは停止される。提示された例では、ユーザに偽造を通知している。かかるアラートは、例えばディスプレイまたはスピーカを介して行うことができる。ディスプレイでは、アラートは、「偽造アイテム」などのテキスト表示、または赤色LEDなど所定の色、あるいはその両方を用いて行うことができる。スピーカを使う場合、アラートは、「偽造アイテム」と発音するなどの音声合成、または所定の音、あるいはその両方を用いて行うことができる。アイテムが認証されたら、リーダは、参照番号3の付いた矢印で示すように、引数Id1およびRを伴ったチェック要求を真正のアイテムへ送信する(ステップ540)。図3を参照して上述したように、真正のアイテムのRFIDが、アイテムのRFID識別子Id1と、乱数Rと、RFID内部に保存された秘密鍵とを連結し、この連結した値を入力として組み込みハッシュ関数の結果h2を計算する。結果h2およびRFID識別子Id2が、参照番号4の付いた矢印で示すように、チェック済みコマンドに入って、RFIDによって返送される。Id2およびh2の値を伴ったチェック済みコマンドを受信(ステップ545)した後、リーダは、値h1とh2とを照合する(ステップ550)。h1がh2と等しければ、アイテムは認証され、そうでなければ、すなわちh1とh2が相違するならば、アイテムは偽造である。この認証の状況を、ユーザへ示す(ステップ535または555)。アイテムが認証されなければ、ユーザは、上述のように予め警告される(ステップ535)。アイテムが認証されれば、ユーザへアラートが送信される(ステップ555)。この場合もやはり、かかるアラートは、例えばディスプレイまたはスピーカを介して行うことができる。ディスプレイでは、アラートは、「認証されたアイテム」などのテキスト表示、または緑色LEDなどの所定の色、あるいはその両方を用いて行うことができる。スピーカを使う場合、アラートは、「認証されたアイテム」と発音するなどの音声合成、または偽造アイテムを特徴付ける所定の音とは別の所定の音、あるいはその両方を用いて行うことができる。
【0026】
本発明を考慮すると当業者には当然明らかなことであるが、照合のために、完全な真正のアイテムは必要ではなく、そのRFIDだけを使用すればよい。簡略化するために、機関は、図6に示すように、認証される真正のアイテムのRFIDを全て含む一種の冊子(ブック)を作成することができる。冊子600は、複数のページを含み、各ページには、1つまたはいくつかのエリア605がある。各エリア605は、特定の真正のアイテムを特徴付ける、真正のアイテムの参照610および真正のアイテムのRFID615を少なくとも含む。
【0027】
開示された発明の主たる利点および特徴は、ランダムに生成された数値を用いて、疑わしい対象が、秘密鍵SKのホストとして機能するRFIDタグを含むことを検証することによって、認証を行うという事実に関係している。何らかの悪意ある人物が、任意の入力値に対して予想される結果を返答するRFIDを製造できるようになるには、ランダムに生成された数値に丸ごと全部アクセスする必要があると考えられる。これにより、十分に広い乱数範囲を備えようとすれば、RFIDタグがホストとして機能できるものには適合しないメモリ・サイズが必要になるであろう。
【0028】
当然のことながら、局所的および特定的な要件を満たすために、当業者が上述のソリューションに対して多数の修正および変更を適用することもあるが、それらの修正および変更の全ても、添付の請求項によって明確にされるような本発明の保護範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】受動型RFIDタグのアーキテクチャの一例を示す図である。
【図2】図2の(a)は、アンテナを有するリーダとダイポール・アンテナを有するRFIDタグとを備えたRFIDシステムを示す図である。図2の(b)は、リーダのアンテナによって放射される信号と、RFIDタグによって反射される変調信号とを示す図である。
【図3】本発明の方法による、認証対象のアイテムに取り付けられたRFIDにおける動作の論理を図示するフロー・チャートである。
【図4】認証対象のアイテムを準備する主要なステップ群を示す図である。
【図5】認証対象のアイテムのRFIDの応答と真正のアイテムのRFIDの応答との照合に基づいてアイテムを認証する、本発明の方法を示す図である。
【図6】完全な真正のアイテムを必要としないアイテム認証に使用される、真正のアイテムの参照およびRFIDを含む冊子を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイテムを認証するためのRFIDであって、該アイテムに前記RFIDが関連付けられており、前記RFIDは、識別子および秘密鍵を保存するメモリと、組み込みハッシュ関数とを有し、前記RFIDが、
−aおよびbの2つのパラメータを含むチェック・コマンドを受信することと、
−前記パラメータaがゼロで受信された場合、前記パラメータaの値を前記識別子の値に設定することと、
−前記パラメータaおよびbと、変数Cの中の前記秘密鍵とを、連結することと、
−前記変数Cを入力として、前記組み込みハッシュ関数の結果Hを計算することと、
−前記識別子の前記値および前記結果Hを送信することと、
を行うのに適している、RFID。
【請求項2】
前記RFIDが、受動型短読み取り距離のRFIDである、請求項1に記載のRFID。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のRFIDを含む第1アイテムを、第2アイテムの参照およびRFIDを用いて認証する方法であって、前記第2アイテムの前記RFIDは請求項1または請求項2に記載され、前記第2アイテムは真正のアイテムであって、前記方法が、
−乱数を生成するステップと、
−ゼロおよび前記乱数Rをパラメータとして伴った第1要求を、前記第1アイテムへ送信するステップと、
−前記第1要求に応じて、前記第1アイテムから、2つの値を受信するステップと、
−前記2つの値のうちの前記第1の値および前記乱数をパラメータとして伴った第2要求を、前記第2アイテムの前記RFIDへ送信するステップと、
−前記第2要求に応じて、前記第2アイテムの前記RFIDから、2つの値を受信するステップと、
−前記第1アイテムから受信した前記2つの値のうちの第2の値と、前記第2アイテムの前記RFIDから受信した前記2つの値のうちの第2の値とを照合するステップと、
を含む、方法。
【請求項4】
前記第1アイテムから受信した前記2つの値のうちの前記第2の値と、前記第2アイテムの前記RFIDから受信した前記2つの値のうちの前記第2の値とが同一の場合は、前記第1アイテムが認証される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1アイテムから受信した前記2つの値のうちの前記第1の値の有効性を確認するステップをさらに含む、請求項3または請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記認証の状況を示すステップをさらに含む、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記認証の状況を示す前記ステップが、前記認証の状況を表示するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記認証の状況を示す前記ステップが、前記認証の状況を特徴付けるノイズを放射するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
請求項3乃至8のいずれか1項に記載の方法の各ステップを実行するのに適合する手段を含む装置。
【請求項10】
請求項3乃至8のいずれか1項に記載の方法の各ステップを実行するための命令を含む、コンピュータ可読媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−519641(P2009−519641A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544908(P2008−544908)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067458
【国際公開番号】WO2007/068519
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】