説明

無線基地局装置及び無線基地局装置の機器設定自動修正プログラム

【課題】装置の動作中に、無線通信に使用する機器に誤った設定値が設定されても、シーケンシャルな処理によらずに、機器の動作を中断することなく、誤った設定値を自動修正することができる無線基地局装置、及び無線基地局装置の機器設定自動修正プログラムを提供する。
【解決手段】無線基地局装置は、無線基地局装置の無線通信用の使用機器に対して、該使用機器の動作に必要な設定値を設定する設定値設定部102と、所定の条件で取得され使用機器に設定された設定値を保存設定値として記憶する格納用記憶部13と、使用機器に設定された既設定値に対して異常の有無を判定する異常判定部106と、異常判定部106が異常有りと判定したときに、異常有りと判定された既設定値に対応する保存設定値を修正用の設定値として設定値設定部102に送信する設定値修正部107と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線基地局装置及び無線基地局装置の機器設定自動修正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信用の無線基地局装置では、ソフトウェア処理の増加に伴いマルチタスクシステムが採用されている。マルチタスクシステムでは、処理タスクの競合が生じる可能性が増加するが、タスクに優先順位を付け、優先度に応じてタスクを実行するなど、この競合を回避する手段が講じられる。
【0003】
特許文献1では、マルチタスクシステムにおけるタスクの競合を回避する手段として、タスクの切り替えにおける退避や復帰を行う事例が紹介されている。この例では、タスクの暴走をタスク内でのシーケンシャルな処理により検出してタスク暴走によるタスク切り替え処理の不具合を解消している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−107757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように、タスク競合回避時の不具合に対する対応策をタスク内でのシーケンシャルな処理として組み込むと、そのことで新たなソフトウェアバグを生み出す恐れがあるため、シーケンシャルな処理によらない不具合対応処理を採用することが好ましい。
【0006】
また、タスクの競合を回避する手段に誤りがある場合、誤った処理結果を得ることになり、その誤った処理結果を元に次の処理を行うため、さらに誤った処理結果を得ることがある。その結果、競合タスクが無線通信に係るタスクの場合、無線基地局装置の無線通信処理に使用される各種設定値に誤りが生じて、例えば移動通信の呼設定が出来なくなり、無線基地局装置の動作が停止してしまう、又は電波法に違反する可能性のある電波(例えば送信電力や、送信周波数などで違法となる電波)を送信してしまうなど、無線通信上の不具合が発生する恐れがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、装置の動作中に、無線通信に使用する機器に誤った設定値が設定されても、シーケンシャルな処理によらずに、機器の動作を中断することなく、誤った設定値を自動修正することができる無線基地局装置及び無線基地局装置の機器設定自動修正プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本願発明の第1の観点に係る無線基地局装置は、
無線基地局装置の無線通信用の使用機器に対して、該使用機器の動作に必要な設定値を設定する設定値設定部と、
所定の条件で取得され前記使用機器に設定された設定値を保存設定値として記憶する格納用記憶部と、
前記使用機器に設定された既設定値に対して異常の有無を判定する異常判定部と、
前記異常判定部が異常有りと判定したときに、異常有りと判定された前記既設定値に対応する前記保存設定値を修正用の設定値として前記設定値設定部に送信する設定値修正部と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
本願発明の第2の観点に係る無線基地局装置の機器設定自動修正プログラムは、
無線基地局装置の無線通信用の使用機器に対して、該使用機器の動作に必要な設定値を設定する設定値設定ステップと、
所定の条件で取得され前記使用機器に設定された設定値を保存設定値として格納用記憶部に記憶する記憶ステップと、
前記使用機器に設定された既設定値に対して異常の有無を判定する異常判定ステップと、
該異常判定ステップで異常有りと判定されたときに、異常有りと判定された前記既設定値に対応する前記保存設定値を修正用の設定値として前記設定値設定ステップに送信する設定値修正ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によれば、装置の動作中に、無線通信に使用する機器に誤った設定値が設定されても、シーケンシャルな処理によらずに、機器の動作を中断することなく、誤った設定値を自動修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1に係る無線基地局装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】実施形態1に係る無線基地局装置の無線装置(RE)で使用されるCPUの機能構成例を示す図である。
【図3】実施形態1に係る無線基地局装置の機器設定値の設定と自動修正処理Aの内容を示すフローチャートである。
【図4】実施形態1に係る無線基地局装置の無線装置(RE)運用前の機器設定自動修正処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図5】実施形態1に係る無線基地局装置の無線装置(RE)運用後の機器設定自動修正(1)の処理内容を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態2に係る無線基地局装置の無線装置(RE)で使用されるCPUの機能構成例を示す図である。
【図7】実施形態2に係る無線基地局装置の機器設定値の設定と自動修正処理Bの内容を示すフローチャートである。
【図8】実施形態2に係る無線基地局装置の無線装置(RE)運用後の機器設定自動修正(2)の処理内容を示すフローチャートである。
【図9】実施形態2に係る無線基地局装置の無線装置(RE)における非固定設定値の再取得と設定(1)の処理内容を示すフローチャートである。
【図10】実施形態2に係る無線基地局装置の無線装置(RE)における非固定設定値の許容範囲の例を示す図である。
【図11】本発明の実施形態3に係る無線基地局装置の構成例を示すブロック図である。
【図12】実施形態3に係る無線基地局装置の無線装置(RE)で使用されるCPUの機能構成例を示す図である。
【図13】実施形態3に係る無線基地局装置の機器設定値の設定と自動修正処理Cの内容を示すフローチャートである。
【図14】実施形態3に係る無線基地局装置の無線装置(RE)における非固定設定値の取得と設定・保存の処理内容を示すフローチャートである。
【図15】実施形態3に係る無線基地局装置の無線装置(RE)における非固定設定値の再取得と設定(2)の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る無線基地局装置の構成例を図1に示す。図1において無線基地局装置1は携帯電話等の移動用無線端末との間で無線通信を行うRE(Radio Equipment;無線装置)2と、RE2との間で、無線通信に係る送信信号及び受信信号に対応したユーザデータ信号の送受信を行うREC(Radio Equipment Control;無線装置制御部)3と、RE2に設置され、移動用無線端末との無線通信のための電波を送信する送信用アンテナ4及び受信する受信用アンテナ5とを備える。送信用アンテナ4と受信用アンテナ5とは送受信用アンテナとして共用されることが多い。
【0013】
1台のREC3に対して、1台以上のRE2が例えば光ファイバによる通信リンクで接続され、REC3の設置された建物内又はその建物の屋外近傍又は離れた場所に設置される。RE2はREC3からの通信設定メッセージを受信することにより運用が開始される。
【0014】
RE2は、送信部6、受信部7、ベースバンド処理部8、I/F部(I/F;Interface)9、CPU(Central Processing Unit)10、処理用記憶部11、ログ用記憶部12、及び格納用記憶部13を備える。
【0015】
送信部6はベースバンド処理部8からデジタルの電気信号を受けてアナログ変換処理及び周波数変換処理(変調処理)を行うことにより、所望の送信周波数及び送信電力のアナログ送信信号を生成し送信用アンテナ4を介して送信する。受信部7は受信用アンテナ5で受信された信号(アナログ受信信号)を入力し、低雑音増幅及び不要波抑制処理を行い、ベースバンド処理部8での処理が可能な周波数の信号に変換し、その後デジタル信号に変換してベースバンド処理部8に出力する。
【0016】
ベースバンド処理部8は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などで構成され、I/F部9と、送信部6及び受信部7との間で、デジタルの電気信号に対するベースバンド処理を行う。ベースバンドとは物理現象が最初に電気信号に変換されたときの電気信号の帯域、又は変調された電気信号を復調して物理現象に変換する直前の電気信号の帯域を指す。ベースバンド処理とはベースバンドの電気信号(ベースバンド信号)に対する各種処理のことを言い、送信用の電気信号に対する処理及び受信した電気信号に対する処理を行う。送信用の電気信号に対しては、I/F部9から受信したベースバンド信号を、帯域制限によるデジタルフィルタ、ピーク抑制、及び直交変調などのデジタル処理を行った後、送信部6へ出力する。また、受信した電気信号に関しては、受信部7から受信したデジタル信号に対して直交復調、デジタルフィルタによる不要波抑制を行い、I/F部9用にフォーマット変換してI/F部9に出力する。エースバンド処理部8は起動時及び送受信時(運用時)には各種設定値の設定が必要となる。この設定はCPU10の制御により実行される。
【0017】
I/F部9はREC3とRE2のベースバンド処理部8との間の信号授受のインタフェース回路である。REC3からはI/F部9を介して、RE2に対して通信設定のメッセージが送られ、RE2はこのメッセージにより運用開始状態となる。また、REC3からは送信に係るデジタル信号(ベースバンド信号)がI/F部9を介してベースバンド処理部8に送られ、ベースバンド処理部8からは、受信に係るデジタル信号(ベースバンド信号)がI/F部9を介してREC3に送られる。
【0018】
CPU10は、起動時にRE2の構成機器の起動時設定を行い、またI/F部9を介してREC3からの通信設定のメッセージを受けたとき、RE2を構成する各部の制御と、その制御に際して必要な処理を行う。例えば、無線通信に係るタスクの競合回避処理は、CPU10で実行され、その際、CPU10は通信設定のメッセージから無線通信を行う際に使用される例えば送信周波数などのベースバンド処理部8の設定に必要な各種設定値を取得する。
【0019】
処理用記憶部11はCPU10が無線通信用のプログラム処理を行う際のワークエリアとして用いられる記憶部領域で、主にRAM(Random Access Memory)が用いられる。ログ用記憶部12はCPU10の処理内容をログとして保存する記憶部領域で、RAMまたはROM(Read Only Memory)が用いられる。格納用記憶部13はCPU10が実行するプログラム、及び各種設定値を格納するための記憶部領域で、RAMまたはROMが用いられる。処理用記憶部11、ログ用記憶部12、格納用記憶部13は物理的又は論理的に独立した記憶部を用いる。
【0020】
CPU10について更に詳しく説明する。図2はCPU10の機能構成例を示す。図2に示すように、CPU10は起動処理部100、設定値取得部101、設定値設定部102、記録・読出部103、通信設定メッセージ受信部104、既設定値取得部105、異常判定部106、設定値修正部107、タイマ108及びこれら各部を制御する制御部110を備える。図2では制御部110により制御されていることを示す線は原則として省略している。
【0021】
起動処理部100は、RE2の起動時に格納用記憶部13に保存されているプログラムを記録・読出部103を介して読み出し、RE2の起動処理を実行する。
【0022】
設定値取得部101はこの起動処理によりベースバンド処理部8に設定する設定値を取得する。以下ではこのとき取得される設定値を設定値D(D、i=1、2、3・・・imax)とする。
【0023】
設定値取得部101はまた、REC3から送信される通信設定メッセージに基づき、ベースバンド処理部8に設定する設定値を、必要に応じて演算処理等を実行して取得する。本実施形態1ではこの設定値を設定値E(E、j=1、2、3・・・jmax)とする。実施形態1では設定値Eは固定値とする。実施形態1で言う固定値とは通信設定メッセージがあるまではその設定が一定値に固定される設定値のことである。設定値が固定値であることを明示する場合は固定設定値と呼ぶ。一方、通信設定メッセージを受信するまでにその設定値が再設定により変更されることがある場合、その設定値を非固定値と言う。設定値が非固定値であることを明示する場合は非固定設定値と呼ぶ。なお設定値Dは通信設定メッセージの有無とは無関係に一定値に固定される設定値である。以下では設定値Dも固定値であることを明示する場合は固定設定値Dと呼ぶ。
【0024】
設定値設定部102は、設定値取得部101で取得された設定値D及びEをベースバンド処理部8に設定し、設定完了信号を制御部110に送信する。また、設定値設定部102は、異常判定部106でベースバンド処理部8に設定された設定値D、Eに異常があると判定されたとき、設定値修正部107から修正用の設定値を受信しベースバンド処理部8に設定し、設定完了信号を制御部110に送信する。
【0025】
記録・読出部103は、制御部110の指示により、所定のタイミングでベースバンド処理部8に設定される設定値D、Eを保存設定値D、Eとして格納用記憶部13に記録・保存する。記録・読出部103は、制御部110の指示により処理用記憶部11、ログ用記憶部12及び格納用記憶部13との間でプログラム、各種データの記録、読み出しも行う。
【0026】
通信設定メッセージ受信部104はI/F部9を介してREC3からの通信設定メッセージを受信する。受信した場合、通信設定メッセージ受信部104は、受信した旨を制御部110に、通信設定メッセージの内容を設定値取得部101に送信する。制御部110は通信設定メッセージを受信した旨の信号を受けて、RE2を運用開始状態と判定し、設定値取得部101はこの通信設定メッセージから設定値Eを取得する。
【0027】
既設定値取得部105はベースバンド処理部8に設定されている既設定値を取得する。
【0028】
異常判定部106は、ベースバンド処理部8の既設定値D’及び/又はE’の異常の有無を判定する。具体的には既設定値取得部105を介して取得した既設定値D’及び/又はE’と記録・読出部103を介して格納用記憶部13から読み出した保存設定値D及び/又はEについて、対応する両者を比較し、差異がないと判断したときは異常なし、差異があると判断したときは異常有りと判定する。異常有りの場合はその結果を設定値修正部に送信する。異常なしの場合はその旨の信号を制御部110に送信する。
【0029】
設定値修正部107は、判定結果が異常有りの場合は、異常有りと判定した既設定値に対応した保存設定値を修正用の設定値として設定値設定部102に送信する。判定結果が異常なしの場合は、設定値修正部107は何もしない。
【0030】
タイマ108は、時間計測を行い、所定の時間tを経過したとき、経過したことを示す信号を制御部110に出力する。制御部110は、この経過信号を受けて異常判定部106に動作開始信号を送出する。タイマ108のリセットと時間計測開始信号は、制御部110から送出される。送出タイミングは、例えば、ベースバンド処理部8に設定値が設定され、設定された設定値を記録・読出部103を介して格納用記憶部13に記録、保存するときとする。
【0031】
次に、実施形態1に係る無線基地局装置1の動作について、図3に示す「機器設定値の設定と自動修正処理A」のフローチャートを用いて説明する。
【0032】
図3のフローチャートは大別して無線基地局装置1のRE2の「A−1:運用前設定と修正処理」、及び「A−2:運用時設定と修正処理」で構成される。A−1はステップS1からS6までの処理で構成されており、RE2の起動時の機器への設定値の設定とRE2運用前の機器設定値の自動修正処理の内容を示している。A−2はステップS7からS12までの処理で構成されており、RE2運用時、すなわちRE2がREC3から通信設定メッセージを受信したときの機器への設定値の設定とその後の機器設定値の自動修正処理の内容を示している。
【0033】
まず、A−1(ステップS1〜S6)について説明する。電源投入によりRE2が起動する。これによりRE2は起動手順を実行し、制御部110は「機器設定値の設定と自動修正処理A」の処理を開始する。設定値設定部101はベースバンド処理部8に対して、その動作時に必要な、起動時に設定する設定値の設定(起動時の設定)を行う(ステップS1)。具体的にはこの起動手順はCPU10の起動処理部100が実行する。RE2の電源投入により、起動処理部100は格納用記憶部13に保存されている起動プログラムを読み出し、処理用記憶部11をワークエリアとして読み出した起動プログラムを実行する。設定値取得部101は、このプログラムの実行により、設定値D(D、i=1、2、3・・・imax)を取得する。設定値設定部102は、取得した設定値をベースバンド処理部8に設定する。
【0034】
起動時の設定が完了すると制御部110の指示により記録・読出部103は設定値Dを保存設定値Dとして格納用記憶部13に保存する(ステップS2)。ベースバンド処理部8に設定値Dを設定し、設定値Dを格納用記憶部13に保存するとRE2の起動が完了する。起動完了時点、例えば記録・読出部103が設定値Dを格納用記憶部13に保存し終わったとき、制御部110はタイマ108による時間計測を開始する。
【0035】
起動が完了すると、制御部110は、REC3から送信周波数情報などベースバンド処理部8の動作に必要な設定情報が含まれた通信設定メッセージを受信していないかどうか(通信設定メッセージの有無)を判定する(ステップS3)。具体的には通信設定メッセージ受信部104は、I/F部9を介して通信設定メッセージを受信すると、その旨の信号を制御部110に送信する。制御部110はこの信号を受信したかどうかで通信メッセージの有無を判定する。通信設定メッセージがあると判定した場合(ステップS3;YES)、制御部110はRE2を運用状態と判断する。通信設定メッセージがないと判定した場合(ステップS3;NO)は制御部110はRE2を待機状態と判断する。
【0036】
REC3からの通信設定メッセージがない場合(ステップS3;NO)、制御部110は、タイマ108からの信号の有無により、所定時間tが経過したかどうかを判定する(ステップS4)。
【0037】
タイマ108からの信号がなければ、すなわち所定時間tが経過していなければ(ステップS4;NO)、制御部110はRE2の停止信号の有無を判定する(ステップS6)。制御部110は停止信号があれば(ステップS6;YES)、「機器設定値の設定と自動修正処理A」を終了する。停止信号がなければ(ステップS6;NO)、制御部110は、ステップS3に戻り、再度、通信設定メッセージの有無を確認する。
【0038】
依然として通信設定メッセージがなければ(ステップS3;NO)、制御部110は、時間計測を継続しているタイマ108からの信号の有無により、時間tが経過したかどうかを判定する(ステップS4)。制御部110は、この動作を所定時間tが経過するまで継続する。
【0039】
所定時間tが経過すれば(ステップS4;YES)、すなわちタイマ108からの信号を受信すれば、制御部110は、「運用前の機器設定自動修正」処理を実行する(ステップS5)。なお、このとき制御部110はタイマ108をリセットし、新たに時間計測を開始する。
【0040】
「運用前の機器設定自動修正」処理の内容を図4に示すフローチャートで説明する。
【0041】
制御部110は、異常判定部106を起動する。異常判定部106は、ベースバンド処理部8に設定されている設定値を既設定値D’として既設定値取得部105を介して取得し、その異常判定を行う。異常判定は、次のようにして行う。異常判定部106は、格納用記憶部13から保存設定値Dを読み出し、既設定値D’を保存設定値Dと比較する(ステップS50)。具体的には、保存設定値Dの各設定値(D、i=1、2、3・・・imax)と、これに対応する既設定値D’の各設定値(D’、i=1、2、3・・・imax)との例えば差(ΔD=|D−D’|、i=1、2、3・・・imax)を求める。なお、保存設定値D、既設定値D’と表記する場合は、各設定値の値D、D’それぞれの集合体を指す。
【0042】
異常判定部106は、次に、比較結果から両設定値間で差異が有るかどうかを判定する(ステップS51)。具体的には、例えば対応する設定値間の差(ΔD、i=1、2、3・・・imax)が、あらかじめ定めた対応する設定値に対する閾値THD(THD、i=1、2、3・・・imax)以上であれば差異有、すなわち異常有りと判定し、閾値未満であれば差異なし、すなわち異常なしと判定する。閾値は格納用記憶部13にあらかじめ保存されており、異常判定部106は記録・読出部103を介してこれを読み出して使用する。この判定処理は、ベースバンド処理部8に設定された設定値がその後の処理の不具合等の異常により誤設定値に変更設定されていないかどうかを検出するという誤設定の検出を目的としている。
【0043】
なお、ΔDの代わりに、ΔDを、保存設定値Dで除して求めた規格化された差ΔDRを用いてもよい。このときは閾値THDも保存設定値Dで除した値THDRとする。THDRは、設定値D毎に異なる値でなく共通の閾値THとすることができるので、その分、処理の簡便化を図ることができる。
【0044】
両設定値間で差異がなければ、すなわち異常なしと判定されれば(ステップS51;NO)、異常判定部106は設定値の修正は不要と判断し、その旨を制御部110に送信する。制御部110はこれを受けて図3のステップS5の位置まで戻りステップS6の処理に進む。
【0045】
両設定値間で差異が有れば、すなわち異常有りと判定されれば(ステップS51;YES)、異常判定部106は、異常有りの信号を設定値修正部107に送信する。これを受信した設定値修正部107は、保存設定値Dを修正用の設定値として、設定値設定部102に送信する。設定値設定部102はこの修正用の設定値、すなわち保存設定値Dをベースバンド処理部8に再設定することにより設定値の修正を行い、設定完了信号を制御部110に送信する(ステップS52)。異常有りの判定以降、修正用の設定値の再設定までの処理が異常処理である。制御部110は、設定完了信号を受信して、記録・読出部103を介して、異常処理に関する情報(再設定日時、再設定項目、再設定前後の設定値など)をログとしてログ用記憶部12に保存し(ステップS53)、図3のステップS5から次のステップS6の処理に進む。
【0046】
すなわち、CPU10はREC3から通信設定メッセージがあるまで、ステップS3〜S6を繰り返し、その間、RE2は待機状態となる。CPU10は、この間、所定時間t毎に、ベースバンド処理部8に設定されている設定値のチェックを実行し、既設定値と保存設定値の差異の有無を検知する。差異が検知された場合は、ベースバンド処理部8には誤まった設定値が設定された異常状態であると判定され、CPU10は、ベースバンド処理部8に保存設定値Dを再設定することにより誤まった設定値を自動修正する。
【0047】
以上が「A−1:起動時設定と修正処理」の内容である。
【0048】
次に「A−2:通信設定メッセージによる設定と修正処理」(ステップS7〜S12)について説明する。
【0049】
制御部110は、REC3からの通信設定メッセージがあると判定した場合(ステップS3;YES)、RE2を運用状態と判断する。このとき、設定値取得部101は、制御部110の指示に従い、受信した通信設定メッセージから設定値E(E、j=1、2、3・・・jmax)を取得する。設定値設定部102は取得された設定値Eをベースバンド処理部8に設定し、設定完了信号を制御部110に送信する(ステップS7)。設定完了信号の受信後、制御部110は、記録・読出部103を介してベースバンド処理部8に設定した設定値Eを保存設定値Eとして格納用記憶部13に保存する(ステップS8)。なお、制御部110は、例えば記録・読出部103が設定値Eを格納用記憶部13保存した時にタイマ108をリセットし新たに時間計測を開始する。
【0050】
次に、制御部110は、新規通信設定メッセージの有無を判定し(ステップS9)、新規通信設定メッセージがない場合(ステップS9;NO)は、タイマ108により所定時間tが経過したかどうかを判定する(ステップS10)。
【0051】
所定時間tが経過していなければ(ステップS10;NO)、制御部110はRE2の停止信号の有無を判定する(ステップ12)。停止信号があれば(ステップS12;YES)、制御部110は「機器設定値の設定と自動修正処理A」を終了する。停止信号がなければ(ステップS12;NO)、制御部110は、ステップS9に戻り、再度、新規通信設定メッセージの有無を判定する。
【0052】
依然として新規通信設定メッセージがなければ(ステップS9;NO)、制御部110は、タイマ108により所定時間tが経過したかどうかを再度判定する(ステップS10)。制御部110は、この処理を所定時間tが経過するまで継続する。
【0053】
所定時間tが経過していれば(ステップS10;YES)、制御部110は、「運用後の機器設定自動修正(1)」の処理を実行する(ステップS11)。なお、このとき制御部110はタイマ108をリセットし、新たに時間計測を開始する。
【0054】
「運用後の機器設定自動修正(1)」処理の内容を図5に示すフローチャートで説明する。
【0055】
「運用後の機器設定自動修正(1)」処理では、制御部110は、まず異常判定部106を起動する。異常判定部106は、記録・読出部103を介して格納用記憶部13から保存設定値D及びEを読み出す。また、既設定値取得部105を介して、その時点でベースバンド処理部8に設定されている既設定値D’及びE’を取得し、保存設定値D及びEとそれぞれ比較する(ステップS110)。具体的には保存設定値Dの各設定値(D、i=1、2、3・・・imax)と、これに対応する既設定値D’の各設定値(D’、i=1、2、3・・・imax)との例えば差(ΔD=D−D’、i=1、2、3・・・imax)、及び保存設定値Eの各設定値(E、j=1、2、3・・・jmax)と、これに対応する既設定値E’の各設定値(E’、j=1、2、3・・・jmax)との例えば差(ΔE=E−E’、j=1、2、3・・・jmax)、を求める。
【0056】
異常判定部106は、次に、比較結果から保存設定値Dと既設定値D’との間及び保存設定値Eと既設定値E’との間で差異が有るかどうかを判定する(ステップS111)。具体的には、例えば両設定値の差(ΔD、ΔE)が、あらかじめ定めたそれぞれの閾値(THD、THE)以上であれば差異有、すなわち異常有りと判定し、閾値未満であれば差異なし、すなわち異常なしと判定する。閾値は格納用記憶部13にあらかじめ保存され、異常判定部106は、記録・読出部103を介してこれを読み出して使用する。この異常判定処理は、ベースバンド処理部8に設定された設定値がその後の処理の不具合等により誤った設定値に設定されていないかどうかを検出するという誤設定値の検出を目的としている。
【0057】
なお、ΔD、ΔEに代えて、保存設定値D、EでΔD、ΔEをそれぞれ除して求めた規格化された差ΔDR、ΔERを用いてもよい。このときは閾値THD、THEもそれぞれ、保存設定値D、Eで除した値THDR、THERとする。このときは、THDR、THERは、設定値D、E毎に異なる値でなく共通の閾値THとすることができるので、その分、処理の簡便化を図ることができる。
【0058】
両設定値間で差異がなければ(ステップS111;NO)、異常判定部106は、その旨を制御部110に送信し、制御部110は図3のステップS11から次のステップS12の処理に進む。
【0059】
両設定値間で差異が有る場合(ステップS111;YES)、異常判定部106は、異常有りの信号を設定値修正部107に送信する。この信号を受信した設定値修正部107は、異常と判定された既設定値に対応する保存設定値を修正用の設定値として設定値設定部102に送信する。設定値設定部102は、修正用の設定値、すなわち保存設定値D又は/及びEでベースバンド処理部8の再設定を行い、再設定完了信号を制御部110に送信する(ステップS112)。制御部110は、再設定完了信号を受け、記録・読出部103を介して異常処理に関する情報(再設定日時、再設定項目、再設定前後の設定値など)をログとしてログ用記憶部12に保存し(ステップS113)、「運用後の機器設定自動修正(1)」処理を終了し、図3のステップS11からステップS12の処理に移行する。
【0060】
その後、制御部110は、停止信号の有無を判定し(図3のステップS12)、停止信号があれば(ステップS12;YES)、「機器設定値の設定と自動修正処理A」を終了させる。停止信号がなければ(ステップS12;NO)、ステップS9の処理に戻る。
【0061】
REC3からの新規通信設定メッセージがあった場合、例えば運用キャリア追加設定や運用中キャリアの解放設定の指示があった場合(ステップS9;YES)は、制御部110は、ステップS7の処理に戻り、これまで説明した要領に従って、運用キャリア追加分に対する設定値Eの追加設定処理、又は運用中キャリアの解放分に対する設定値Eの再設定処理等を行い(ステップS7)、設定値Eを保存設定値として格納用記憶部13に保存する(ステップS8)。その後は、更に新規通信設定メッセージがあるまで、ステップS9〜S12の処理を繰り返す。
【0062】
すなわち、CPU10はREC3から通信設定メッセージを受けて設定値Eに基づく機器設定と設定値Eの保存を行った後、REC3から新規通信設定メッセージがあるまで、ステップS9〜S12を繰り返し、その間、所定時間t毎に異常の有無、すなわち誤設定の有無を検知すると共に、誤設定が検知されれば保存設定値D、Eに基づき誤設定を自動修正する。
【0063】
以上が「A−2:運用時設定と修正処理」の内容である。
【0064】
「A−1:運用前設定と修正処理」、及び「A−2:運用時設定と修正処理」により、ベースバンド処理部8への設定値の設定とその自動修正が可能となる。
【0065】
なお、設定値の設定とその自動修正を行う対象は、ベースバンド処理部8に限る必要はない。無線通信用の機器で設定値の設定を必要とし、何らかの異常により誤った設定値が設定される恐れのあるものであればよい。
【0066】
本実施形態1に係る無線基地局装置1は以上のように構成されるので、何らかの不具合、例えばタスクの競合回避処理の不具合等により運用途中で無線基地局装置1を構成する無線通信用の使用機器に誤った設定値が設定された場合でも、シーケンシャルな処理によらず、その誤った設定値を異常として自動検出して最初に設定した設定値に戻すことにより設定値の修正ができる。そのため、無線基地局装置1の運用を妨げることなく、誤った設定値による装置の不具合を自動で復旧することができる。
【0067】
また、設定値の異常検出とその修正がなされたとき異常処理に関する情報(異常検出日時、修正設定項目、誤設定値と修正値など)がログとして格納用記憶部13に保存される。そのためこの保存されたログを利用することにより、誤設定に関する検証が容易となる。
【0068】
また、ソフト処理を行う記憶部領域を処理用と保存用に分ける構成により、タスク競合の影響も排除することができる。
【0069】
(実施形態2)
本発明の実施形態2に係る無線基地局装置1の機器構成は実施形態1の場合と同じで、図1に示すとおりである。しかし、実施形態2では設定値は固定設定値D、Eとともに非固定設定値Fをも含むという点で実施形態1と異なる。
【0070】
例えば、RE2内の温度に応じてベースバンド処理部8の設定を変える場合、その設定値は非固定設定値である。
【0071】
実施形態2に係るCPU10の機能構成例を図6に示す。図6に示すCPU10の機能構成は、図2に示すCPU10の機能構成に対して、新たにタイマ109を備え、更に設定値取得部101は設定値が固定値であるか非固定値であるかを分類する機能を備え、異常判定部106は所定のタイミングで設定値設定部102を介してベースバンド処理部8に非固定設定値Fに関する設定を行う際に、非固定設定値Fの異常の有無を判定する機能をも備えるという点で異なっている。制御部110はこれらを含めてその動作を制御する。
【0072】
タイマ109は、タイマ108と同様、制御部110によりリセット、及び時間計測の開始を行う。タイマ108が全設定値を対象としてRE2運用前後の機器設定自動修正処理の開始タイミングである時間tを計測するのに対して、タイマ109は非固定設定値Fの再取得、再設定のタイミングである時間tを計測する。
【0073】
設定値取得部101は設定値の取得に加え、取得した設定値が固定値であるか、非固定値であるかを分類する機能を有する。設定値の種類毎に固定値であるか非固定値であるかがあらかじめ定められており、設定値取得部101はこの定められた基準に従って通信設定メッセージに基づき取得した設定値を分類する。分類された設定値は、固定設定値D、Eであれば、そのまま設定値設定部102に送られる。一方、非固定設定値Fであれば、それが通信設定メッセージにより取得された設定値Fであるときは、正しい値であるとしてそのまま設定値設定部102に送られ、タイマ109の計測時間が所定時間tを経過したときに取得された設定値Fであれば、異常値の恐れがあるとしてその判定のために異常判定部106に送られる。
【0074】
異常判定部106は、所定時間t毎に、既設定値D’、E’、F’について異常の有無を判定する。また、異常判定部106は、所定時間t毎に設定値取得部101で再取得された設定値F(再取得設定値Fr)について、異常の有無と再取得設定値Frでの再設定可否とを判定する。
【0075】
所定時間t毎の既設定値D’、E’、F’についての異常判定は、既設定値D’、E’については実施形態1と同様である。既設定値F’についての異常判定は、保存設定値との差異があり、且つ既設定値F’が所定の許容範囲内にないとき異常と判定される。それ以外は異常なしとされる。既設定値D’、E’、F’のいずれについても異常なしの判定であれば、異常判定部106は制御部110にその旨送信する。いずれかに異常有りと判定されると、異常判定部106は設定値修正部107に異常判定結果を送信する。なお、異常有無の判定結果は制御部110に送信される。
【0076】
所定時間t毎の再取得設定値Frについての異常判定は、保存設定値Fとの差異があり、且つ再取得設定値Frが所定の許容範囲内にないときのみ異常有りと判定され、その旨設定値設定部107に送信される。異常なしの判定の場合、保存設定値Fとの差異があり、且つ再取得設定値Frが所定の許容範囲内にあるときは再取得設定値Frでの再設定可と判定され、その旨設定値設定部107に送信される。保存設定値Fとの差異がないときは再設定不要と判定される。異常有無の判定結果は制御部110に送信される。
【0077】
所定の許容範囲は、その上限値と下限値が格納用記憶部13に保存され、異常判定部106はこれを読み出して判定に使用する。
【0078】
設定値修正部107は、異常判定部106から異常有りの信号を受信すると保存設定値Fを修正用の設定値として設定値設定部102に送信し、異常判定部106から再設定可の信号を受信すると再取得設定値Frを修正用の設定値として設定値設定部102に送信する。設定値設定部102によるベースバンド処理部8への設定値の設定は実施形態1の場合と同じである。
【0079】
制御部110は、異常判定部106から異常有りの信号を受信した場合、設定値設定部102によるベースバンド処理部8への設定値の設定完了信号を受けると記録部・読出部103を介して異常処理に関する情報(再設定日時、再設定項目、再設定前後の設定値など)をログとして格納用記憶部13に保存する。
【0080】
実施形態2に係る無線基地局装置1の動作を、図7に示す「機器設定値の設定と自動修正処理B」のフローチャートに従って説明する。図7の処理内容も図3の場合と同様に、「B−1:運用前設定と修正処理」、及び「B−2:運用時設定と修正処理」、に大別される。
【0081】
「機器設定値の設定と自動修正処理B」は、実施形態1と同様にRE2の電源投入により起動する。図7のB−1を構成するステップS1〜S6は、図3のA−1を構成するステップS1〜S6の内容と同じなので、説明を省略する。以下ではREC3からの通信設定メッセージがあった場合(図7のステップS3;YES)のB−2について説明する。
【0082】
図7のB−2で、図3のA−2と同じ内容の処理は図2と同じ符号を付した。異なる点は次の通りである。図7では図3のステップS7、S8の後にステップS20、S21が追加され、ステップS11がステップS22に置き換えられ、ステップS22とステップS12との間にステップS23及びステップS24が挿入されている。
【0083】
図7において、REC3からの通信設定メッセージがあった場合(ステップS3;YES)、設定値取得部101は、実施形態1と同様に、通信設定メッセージに基づき固定設定値Eを取得し、設定値設定部102を介して取得した固定設定値Eをベースバンド処理部8に設定し、その旨を制御部110に送信する(ステップS7)。これを受信した制御部110は、設定した設定値Eを保存設定値Eとして格納用記憶部13に保存する(ステップS8)。設定値取得部101は、更に、通信設定メッセージに基づき非固定設定値Fを取得する。設定値取得部101は、取得した非固定設定値Fを設定値設定部102に送信する。非固定設定値Fの取得が通信設定メッセージによりなされたからである。非固定設定値Fを受信した設定値設定部102はこれをベースバンド処理部8に設定し、制御部110に設定完了信号を送信する(ステップS20)。設定完了信号を受信した制御部110は、設定された非固定設定値Fを保存設定値Fとして格納用記憶部13に保存する(ステップS21)。ステップS7、S8とS20、S21との処理の順序は前後してもよい。
【0084】
ベースバンド処理部8への固定設定値E、非固定設定値Fの設定が完了し、格納用記憶部13への固定設定値E、非固定設定値Fの保存が完了したとき(ステップS7〜S21の処理完了時)、制御部110はタイマ108及びタイマ109による時間計測を開始する。
【0085】
次に制御部110は、実施形態1での説明と同様に新規通信設定メッセージの有無を判定する(ステップS9)。新規通信メッセージがあれば(ステップS9;YES)、制御部110はステップS7に戻り、ステップS7〜S21を再度実行する。これにより、ベースバンド処理部8に設定される固定設定値E、非固定設定値F、及び格納用記憶部13の保存設定値E、保存設定値Fは更新される。
【0086】
新規通信設定メッセージがなければ(ステップS9;NO)、制御部110は、タイマ108により所定時間tが経過したかどうかを判定する(ステップS10)。
【0087】
所定時間tが経過していなければ(ステップS10;NO)、制御部110はタイマ109により所定時間tが経過したかどうかを判定する(ステップS23)。
【0088】
所定時間tが経過していれば(ステップS10;YES)、制御部110は「運用後の機器設定自動修正(2)」の処理を実行し(ステップS22)、その後、タイマ109により所定時間tが経過したかどうかを判定する(ステップS23)。制御部110はタイマ108をステップS22の実行時にリセットし、再度時間計測を開始する。
【0089】
ステップS22で実行する「運用後の機器設定自動修正(2)」の処理を図8に示すフローチャートを使って説明する。
【0090】
「運用後の機器設定自動修正(2)」の処理では、制御部110は、タイマ108の計測時間が所定時間tを経過する毎に異常判定部106を起動する。異常判定部106は、記録・読出部103を介して格納用記憶部13から保存設定値D、E及びFを読み出すとともに、その時点でベースバンド処理部8に設定されている既設定値D’、E’及びF’を取得し、対応する値のそれぞれを比較する(ステップS260)。具体的には図5のステップS110と同様に、保存設定値Dの各設定値と、これに対応する既設定値D’の各設定値値との例えば差ΔD(i=1、2、3・・・imax)、保存設定値Eの各設定値と、これに対応する既設定値E’の各設定値との例えば差ΔE(j=1、2、3・・・jmax)、及び同様に定義された、保存設定値Fの各設定値と、これに対応する既設定値F’の各設定値との例えば差ΔF(k=1、2、3・・・kmax)を求める。
【0091】
異常判定部106は、実施形態1と同様に、比較結果から保存設定値Dと既設定値D’との間、及び保存設定値Eと既設定値E’との間、で差異が有るかどうかを判定する(ステップS261)。
【0092】
両既設定値D’、E’のいずれかにおいて対応する保存設定値D、Eと差異がある場合(ステップS261;YES)に実行されるステップS262、S263の内容は図5のステップS112、S113の内容と同様であるので、説明を省略する。
【0093】
両既設定値D’、E’のいずれにおいても保存設定値D、Eと差異がなければ(ステップS261;NO)、異常判定部106は保存設定値Fとベースバンド処理部8に設定されている既設定値F’との間に差異があるかどうかを既設定値D’,E’の場合と同様にして判定する(ステップS264)。
【0094】
保存設定値Fと既設定値F’との間で差異がない、すなわち異常なし場合、(ステップS264;NO)、異常判定部106は、その旨を制御部に送信する。これを受信した制御部110は「運用後の機器設定自動修正(2)」の処理を終了し、図7のステップS23の時間判定処理に移る。
【0095】
保存設定値Fと既設定値F’との間で差異がある場合(ステップS264;YES)、異常判定部106は、既設定値F’が所定の許容範囲内であるかどうかを判定する(ステップS265)。
【0096】
既設定値F’が所定の許容範囲内にあると判定すれば(ステップS265;YES)、異常判定部106は、その旨を制御部に送信する。これを受信した制御部110は「運用後の機器設定自動修正(2)」の処理を終了し、図7のステップS23の時間判定処理に移る。
【0097】
既設定値F’が所定の許容範囲内にないと判定すれば(ステップS265;NO)、異常判定部106は、その旨を制御部110に送信すると共に、その判定内容を設定値修正部107に送信する。設定値修正部107は、これを受信して対応する保存設定値Fを修正用の設定値として設定値設定部102に送信し、設定値設定部102はこの修正用の設定値をベースバンド処理部8に再設定する(ステップS266)。再設定の際、設定値設定部102は再設定完了信号を制御部110に送信する。そして、制御部110は異常処理に関する情報のログを記録・読出部103を介してログ用記憶部12に保存し、「運用後の機器設定自動修正(2)」処理を終了し(ステップS267)、図7のステップS23の時間判定処理に移る。
【0098】
図7のステップS23の時間判定処理において、制御部110は、タイマ109による計測時間が所定時間tを経過していない場合は(ステップS23;NO)、停止信号があるかどうかを判定する(ステップS12)。
【0099】
制御部110は、タイマ109による計測時間が所定時間tを経過している場合は(ステップS23;YES)、「非固定設定値の再取得と設定(1)」の処理を実行し(ステップS24)、その後、停止信号があるかどうかを判定する(ステップS12)。なお、制御部110は、タイマ109を「非固定設定値の再取得と設定(1)」(ステップS24)の実行時にリセットし、再度時間計測を開始する。
【0100】
停止信号があれば(ステップS12;YES)、制御部110は、「機器設定値の自動修正処理A」を終了し、停止信号がなければ(ステップS12;NO)、ステップS9に戻り、再度、新規通信設定メッセージの有無を確認する。
【0101】
ステップS24で実行する「非固定設定値の再取得と設定(1)」の処理内容を、図9に示すフローチャートを使って説明する。
【0102】
「非固定設定値の再取得と設定(1)」の処理において、制御部110は設定値取得部101を介して設定値Fを再取得設定値Fr(Frk、k=1、2、3・・・kmax)として再取得し、異常判定部106に送信する(ステップS280)。
【0103】
次に、異常判定部106は、再取得設定値Frと、保存設定値Fとを比較して、差異があるかどうかを判定する(ステップS281)。具体的には、この判定内容は、例えば、実施形態1の図4のステップS50、S51の処理の説明において、保存設定値Dを保存設定値Fに、既設定値D’を再取得設定値Frに、閾値THDを設定値Fに関して設定された閾値THFに置き換えたものである。
【0104】
差異がないと判定すれば(ステップS281;NO)、異常判定部106はその旨を制御部110に送信し、制御部110は「非固定設定値の再取得と設定(1)」の処理を終了し、図7のステップS12の処理に移る。
【0105】
差異があると判定すれば(ステップS281;YES)、異常判定部106は、再取得された設定値Frが所定の許容範囲内にあるかどうかを判定する(ステップS282)。
【0106】
適正値判定部109が実施するこの判定の内容は、図8のステップS265の内容と同様で、ステップS265の説明において、既設定値F’を再取得設定値Frに置き換えればよい。
【0107】
所定の許容範囲内にあるという判定の場合(ステップS282;YES)、異常判定部106は再取得設定値Frでの再設定可の信号を設定値修正部107に送信する。これを受信した設定値修正部107は再取得設定値Frを修正用の設定値Fとして設定値設定部102に送信する。設定値設定部102はこの修正用の設定値でベースバンド処理部8の再設定を行い、再設定完了信号を制御部110に送信する(ステップS283)。これを受信した制御部110は「非固定設定値の再取得と設定(1)」の処理を終了し、図7のステップS12の処理に移行する。
【0108】
所定の許容範囲内にないという判定の場合(ステップS282;NO)、異常判定部106は、異常有りの信号を設定値修正部107に送信する。この信号を受信した設定値修正部107は、保存設定値Fを修正用の設定値として設定値設定部102に送信する。設定値設定部102はこの修正用の設定値でベースバンド処理部8の再設定を行い、再設定完了信号を制御部110に送信する(ステップS284)。この信号を受信した制御部110は、異常処理に関する情報のログをログ用記憶部12に保存する(ステップS285)。その後、制御部110は「非固定設定値の再取得と設定(1)」処理を終了し、図7のステップS12の処理に移る。
【0109】
このような、非固定設定値Fの例について説明する。RE2を屋外に設置した場合など、昼夜、または天候による気温の変動によりRE2内の温度も大きく変化する。このような環境下でRE2を使用し、ベースバンド処理部8に設定した設定値が温度に依存する量である場合に、これを非固定値として、例えば所定時間毎に設定値Fを再取得してベースバンド処理部8に再設定することは適正な設定値を設定するという観点から有効である。
【0110】
図10に具体例を示す。図10に示す表の左欄の数値範囲は複数に区分されたRE2内の温度範囲を示し、右欄の数値は区分された温度範囲に対応して算定された設定値Fの一例である。RE2内の温度は最低温度0℃、最高温度49℃とする。この例では、非固定設定値Fの下限値は「1」、上限値は「5」である。従って、非固定設定値Fの所定の許容範囲を「1〜5」とし、下限値を「1」、上限値を「5」に設定することができる。
【0111】
このとき、図7のB−2について、非固定設定値Fに限定して説明すると次のようになる。まず、REC3からの通信設定メッセージを受けた(ステップS3;YES)時点のRE2内の温度を25度とする。このとき、CPU10は図10に示すように非固定設定値Fとして「3」を取得したとする。CPU10は、固定設定値F「3」をベースバンド処理部8に設定し(ステップS20)、格納用記憶部13に保存する(ステップS21)。
【0112】
REC3から新規通信設定メッセージがない場合(ステップS9;NO)、CPU10は、時間t毎に(ステップS10;YES)「運用後の機器設定自動修正(2)」の処理を実行し(ステップS22)、ベースバンド処理部8の非固定設定値Fが誤設定値になっていないかどうかをチェックし、誤設定値を検知するとこれを修正する。
【0113】
次に、別途設定した所定時間t毎に、非固定設定値Fを再取得し(図9のステップS280)、再取得設定値Frとする。この再取得では、CPU10は例えばRE2内の温度情報のモニタ結果を取得し、この温度情報に基づき再取得設定値Frを算定し、取得する。
【0114】
CPU10は、再取得設定値Frと保存設定値Fとを比較し、両者の差異の有無を判定する(ステップS281)。
【0115】
ケース1)
再取得設定値Frが「3」であるとする。このときは再取得設定値Frは保存設定値Fと同じ値であるから(ステップS281;NO)、ベースバンド処理部8の設定はそのままとする。
【0116】
ケース2)
再取得時のRE2内の温度が30℃であったとし、再取得設定値Frが「4」であったとする。再取得設定値Frの「4」は保存設定値F「3」と差異があると判定される(ステップS281;YES)。次に、CPU10は、再取得設定値Fr「4」が、所定の許容範囲、すなわち1〜5の範囲内の数値であるかどうかを判定する(ステップS282)。この例では、再取得設定値Fr「4」は許容範囲1〜5に含まれるため(ステップS282;YES)、再取得設定値「4」でベースバンド処理部8の再設定がなされる(ステップS283)。
【0117】
ケース3)
再取得時のRE2内の温度が30℃であったとし、そのとき、CPU10は再取得設定値Frとして誤った設定値「10」を算出し再取得したものとする。再取得設定値Frは「10」であり、保存設定値F「3」と差異があると判定される(ステップS281;YES)。次に、CPU10は、再取得設定値Frが、所定の許容範囲、すなわち1〜5の範囲内の数値であるかどうかを判定する(ステップS282)。この例では、再取得設定値Frは「10」であり、許容範囲1〜5に含まれないため(ステップS282;NO)、保存設定値F「3」でベースバンド処理部8の再設定がなされる(ステップS284)。このときは再取得設定値Fr「10」は誤設定値と判断されるため、異常処理に関する情報をログ用記憶部12に保存する(ステップS285)。
【0118】
ケース1)〜3)のいずれの場合も、CPU10は、次に図7のステップS12で停止信号の有無を判定する。停止信号がなければ(ステップS12;NO)、REC3からの新規通信メッセージの有無を確認するステップS9に戻る。
【0119】
上記説明では、所定時間t毎に非固定設定値Fを再取得するとしたが、所定時間t毎ではなく、制御部110は所定の条件を満たしたかどうかを判定し、満たした場合に設定値取得部102を介して非固定設定値Fを再取得するとしてもよい。
【0120】
例えば、RE2内の温度をあらかじめ複数の温度範囲に区分し、制御部110はRE2内の温度をモニタして、RE2内の温度が他の温度範囲に変化したときに、非固定設定値Fを再取得する。
【0121】
設定値Fについての再取得条件をこのように設定することによりRE2内の温度変化によりよく追従してベースバンド処理部8に非固定設定値Fを設定することができる。
【0122】
本実施形態2に係る無線基地局装置1は、以上のように構成されているので、何らかの異常により、既設定値F’に誤差が生じても、既設定値F’は、保存設定値Fに修正されるか、又は所定の許容範囲内の値であることが担保される。そのため誤設定の影響を小さく抑えることができる。
【0123】
更に、本実施形態2に係る無線基地局装置1は、以上のように構成されているので、設定値の再取得時に何らかの異常により、再取得設定値Frに大きな誤差が生じたとしても、設定値を所定の許容範囲内の値にしてベースバンド処理部8の設定を行う。そのため誤設定の影響を小さく抑えることができる。
【0124】
このように、何らかの不具合、例えばタスクの競合回避処理の不具合等により運用途中で無線基地局装置1を構成する無線通信用の使用機器に誤った設定値が設定された場合で、その設定値に非固定設定値が含まれていても、シーケンシャルな処理によらず、その誤った設定値を異常として自動検出して最初に設定した設定値に戻すことにより設定値の修正ができる。そのため、無線基地局装置1の運用を妨げることなく、誤った設定値による装置の不具合を自動で復旧することができる。また、RE2の使用上ありえない設定値でのベースバンド処理部8の設定を自動で修正して運用を継続させることが可能となる。
【0125】
なお、設定の自動修正を行う対象は、ベースバンド処理部8に限る必要はない。ベースバンド処理部8は無線通信用の機器で設定値の設定を必要とし、何らかの異常により誤った設定値が設定される恐れのある使用機器8であればよい。
【0126】
本実施形態2に係る無線基地局装置1は上記効果と共に、固定設定値D、Eに関しては実施形態1で説明した効果をも有する。
【0127】
(実施形態3)
実施形態3では、実施形態2と同様に、設定値に非固定設定値Fが含まれる。本発明の実施形態3に係る無線基地局装置1の構成例を図11に示す。本発明の実施形態3に係る無線基地局装置1は、ベースバンド処理部8に設定できる非固定設定値Fを所定の範囲(設定可能範囲)に制限するハードウェア回路として設定値制限回路80を備える。その他の構成は実施形態1の図1に示す構成例と同じである。
【0128】
設定値制限回路80は、ハードウェア上でベースバンド処理部8に設定できる非固定設定値Fを所定の範囲(設定可能範囲)に制限する。図11では1台をベースバンド処理部8内に設置した例を示したが、ベースバンド処理部8外に設定してもよい。以下では、設定値制限回路80の設定可能範囲を、実施形態2で説明した非固定設定値Fについての所定の許容範囲とする。従って、非固定設定値Fが所定の許容範囲内にある場合は、CPU10は非固定設定値Fをベースバンド処理部8に設定できるが、所定の許容範囲内にない場合は、CPU10は非固定設定値Fをベースバンド処理部8に設定できない。
【0129】
実施形態3に係るCPU10の機能構成例を図12に示す。図12に示すCPU10の機能構成では、設定値設定部102は固定設定値設定部111と非固定設定値設定部112とで構成されている。その他の構成は図6と同じである。各部の機能も下記の点を除き実施形態2の場合と同じである。
【0130】
実施形態3に係る設定値取得部101は、取得した設定値を、実施形態2の場合と同様に固定設定値D、Eと非固定設定値Fとに分類し、固定設定値D、Eは固定設定値設定部111に、非固定設定値Fは非固定設定値設定部112と異常判定部106とに送信する。
【0131】
固定設定値設定部111は、設定値取得部101又は設定値修正部107から送信されてくる固定設定値D、Eをベースバンド処理部8に設定する。
【0132】
非固定設定値設定部112は、設定値取得部101又は設定値修正部107から送信されてくる非固定設定値Fを、設定値制限回路80を介してベースバンド処理部8に設定する。このとき、非固定設定値Fが設定値制限回路80の設定可能範囲外の値である場合は、設定値制限回路80で設定を排除され、設定値制限回路80からその旨の信号が非固定設定値設定部112に送信される。そのとき、非固定設定値設定部112は許容範囲内の所定の値(所定値)を設定値制限回路80を介してベースバンド処理部8に設定する。この所定値は格納用記憶部13に保存されており、起動処理時に、例えば処理用記憶部11に読み出されて使用される。この所定値は、通信設定メッセージを受けて非固定設定値Fをベースバンド処理部8に設定する場合は実施形態2で説明した所定の許容範囲内の数値、例えばこの許容範囲の上限値、下限値、又は平均値などのいずれかの値とし、それ以外の再設定の場合は保存設定値Fとする。いずれであるかは制御部110の指示による。
【0133】
異常判定部106は、実施形態2と同様にベースバンド処理部8の既設定値についての異常判定とベースバンド処理部8への設定時又は再設定時の非固定設定値Fの異常判定を実行する。しかし、ベースバンド処理部8への設定時又は再設定時の非固定設定値Fの異常判定のときは、判定結果を制御部110に送信するだけで、設定修正部107へは送信しない。これは実施形態3における非固定設定値の設定、再設定はソフトウェアで実行する異常の判定結果によらずハードウェア上で設定可否を決めるためである。非固定設定値の設定、再設定に係る異常判定は、ログ記憶部12に保存する異常内容を取得するために実行される。
【0134】
設定値修正部107は、異常検出部106からベースバンド処理部8の既設定値について異常有りの信号を受信したときは、実施形態2と同様に保存設定値Fを修正用の設定値として非固定設定値設定部112に送信するが、それ以外についての処理は行わない点で実施形態2と異なる。
【0135】
実施形態3に係る無線基地局装置1の動作を、図13に示す「機器設定値の設定と自動修正処理C」のフローチャートに従って説明する。図13の処理内容も図3、図7の場合と同様、「C−1:運用前設定と修正処理」、及び「C−2:運用時設定と修正処理」、に大別される。
【0136】
「機器設定値の設定と自動修正処理C」は、実施形態1、2と同様にRE2の電源投入により起動する。図13のC−1を構成するステップS1〜S6は、図3のA−1を構成するステップS1〜S6の内容と同じなので、説明を省略する。以下ではREC3からの通信設定メッセージがあった場合(図13のステップS3;YES)のC−2について説明する。
【0137】
図13のC−2で、図7のB−2と同じ内容の処理は図7と同じ符号を付した。異なる点は次の通りである。図13では図7のステップS7、S8の後のステップS20、S21をステップS30に置き換え、ステップS24がステップS31に置き換えられている。以下では図7と異なる処理について説明する。
【0138】
図13において、REC3からの通信設定メッセージがあった場合(ステップS3;YES)、設定値取得部101は、実施形態2と同様に、通信設定メッセージに基づき固定設定値Eを取得し、取得した設定値Eを固定設定値設定部111に送信する。固定設定値設定部111は受信した設定値Eをベースバンド処理部8に設定し、設定完了信号を制御部110に送信する(ステップS7)。これを受信した制御部110は、設定した設定値Eを格納用記憶部13に保存する(ステップS8)。
【0139】
次に、制御部110は、「非固定設定値の取得と設定・保存」処理を実行する(ステップS30)。
【0140】
図14に「非固定設定値の取得と設定・保存」処理(ステップS30)の内容をフローチャートで示す。
【0141】
「非固定設定値の取得と設定・保存」処理では、設定値取得部110は、通信設定メッセージに基づき非固定設定値Fを取得し(ステップS300)、取得設定値Fを非固定設定値設定部112と異常判定部106とに送信する。非固定設定値設定部112は取得設定値Fのベースバンド処理部8への設定を設定値制限回路80を介して試行する(ステップS301)。設定値制限回路80は、設定試行の対象とする取得設定値Fが設定可能範囲内の値であれば(ステップS302;YES)ベースバンド処理部8への設定を可能とし、取得設定値Fがベースバンド処理部8に設定される(ステップS303)。設定可能範囲外の値であれば(ステップS302;NO)ベースバンド処理部8への設定がなされず、設定値制限回路80は、その旨を非固定設定部112に送信する。このとき非固定設定部112はあらかじめ定めた設定可能範囲内の所定値を設定値として設定値制限回路80を介してベースバンド処理部8に設定値を設定する(ステップS304)。ステップS302とS303はハードウェア上の処理でありソフトウェア上の判定処理を含まない。
【0142】
一方、異常判定部106は、取得設定値Fの妥当性を確認するために、取得設定値Fが所定の許容範囲内の値であるかどうかという異常判定を実行し、その結果を制御部110に送信する(ステップS305)。
【0143】
取得設定値Fが許容範囲内の値の場合(ステップS305;YES)、制御部110は取得設定値Fを保存設定値Fとして格納用記憶部13に保存し(ステップS308)、図13に戻り、新規通信設定メッセージがないかどうか判定する(図13のステップS9)。
【0144】
取得設定値Fが許容範囲外の値の場合(ステップS305;NO)、制御部110は判定時刻情報、取得設定値Fの値などの異常情報をログ記憶部12に保存する(ステップS306)。次に制御部110はステップS306でのログ保存の回数が所定の回数N以上であるかどうかを判定し(ステップS307)、N回未満であれば(ステップS307;NO)ステップS300に戻り再度同じ処理を売り返す。N回以上であれば(ステップS307;YES)、ステップS304で設定した所定値を保存設定値Fとして格納用記憶部13に保存し、(ステップS308)、図13に戻り新規通信設定メッセージがないかどうか判定する(図13のステップS9)。N=1として、ステップS300からステップS305までの繰り返しを省略してもよい。
【0145】
なお、ステップS7及びステップS8をステップS30の後に処理してもよい。また、ステップS300をステップS7の固定設定値取得と併せて実行してもよい。
【0146】
図13のステップS9、S10、S22、S23は実施形態2の図7のステップS9、S10、S22、S23と同じ内容なので、説明を省略する。
【0147】
ステップS23においてタイマ109の計測時間がtを経過したとき(ステップS23;YES)、制御部110は「非固定設定値の再取得と設定(2)」の処理を実行し、(ステップS31)その後ステップS12の処理を実行する。ステップS23においてタイマ109の計測時間がtを経過していないとき(ステップS23;NO)、制御部110は停止信号の有無を判定し(ステップS12)、停止信号が有れば(ステップS12;YES)「機器設定値の設定と自動修正処理C」を終了し、停止信号がなければ(ステップS12;NO)ステップS9に戻る。
【0148】
「非固定設定値の再取得と設定(2)」の処理内容を図15に示すフローチャートに従って説明する。図15のステップS310〜S313の各処理は、図14のステップS300で「取得」、「設定」を「再取得」、「再設定」と読み替えれば、ステップS300〜S303の各処理の内容と同じなので説明を省略する。なお、図14の場合と同様にステップS312とS313はハードウェア上の処理である。
【0149】
取得した非固定設定値Fをベースバンド処理部8に設定できないとき(ステップS312;NO)は、非固定設定値設定部112は格納用記憶部13から読み出された保存設定値Fをベースバンド処理部8に再設定し、その旨を制御部110に送信する(ステップS314)。
【0150】
ステップS315、S316の各処理は、それぞれ図14のステップS305、S306の各処理の内容と同じなので説明を省略する。ステップS315、S316の処理後は制御部110は、図13に戻りステップS12の処理を図7の場合と同様に実行する。
【0151】
実施形態3では、取得された非固定設定値Fが所定の許容範囲内の値であるかどうか、すなわち正しい値かどうかのソフトウェア上の判定を行う前にベースバンド処理部8に非固定設定値Fが設定される。このような処理により誤設定値が非固定設定値Fとして設定されることを避けるために、設定値制限回路80を備え、ハードウェア上で設定値制限回路80に設定された設定可能範囲内の値のみベースバンド処理部8に設定されるようにした。取得された非固定設定値Fがベースバンド処理部8に設定できない場合は、設定可能範囲内の値として定めた所定値がベースバンド処理部8に設定される。これにより非固定設定値Fをベースバンド処理部8に設定できるかどうかソフトウェア上で判断することにより生じる設定の遅延がなくなる。そのため、実施形態3に係る無線基地局装置1は、実施形態2の無線基地局装置1と比較して、ベースバンド処理部8に対して早期に非固定設定値Fの再設定が可能となる。再設定により非固定設定値Fが異なる値になる場合、再設定されるまでは、誤設定状態となるが、このような誤設定状態での無線基地局装置1の運用時間を低減することができる。
【0152】
一方、何らかの異常により所定の許容範囲を超える誤設定値がベースバンド処理部8に設定される場合、この設定はハードウェア上阻止され、速やかに許容範囲内の所定値で置き換えられて設定される。この場合も所定値による置き換え時間は実施形態2におけるソフトウェア処理に比べて短縮される。
【0153】
実施形態3に係る無線基地局装置1は、実施形態1及び2に記載された効果も有することは言うまでもない。
【0154】
実施形態1の図3〜5、実施形態2の図7〜9、実施形態3の図8、及び図13〜15はそれぞれの実施形態における無線基地局装置1の動作を説明すると共に、無線基地局装置1の機器設定修正方法、及び機器設定修正プログラムの内容を説明するフローチャートでもある。
【0155】
従って、無線基地局装置1の機器設定修正方法、及び機器設定修正プログラムも実施形態1から3で説明した効果を奏することができる。
【0156】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0157】
(付記1)
無線基地局装置の無線通信用の使用機器に対して、該使用機器の動作に必要な設定値を設定する設定値設定部と、
所定の条件で取得され前記使用機器に設定された設定値を保存設定値として記憶する格納用記憶部と、
前記使用機器に設定された既設定値に対して異常の有無を判定する異常判定部と、
前記異常判定部が異常有りと判定したときに、異常有りと判定された前記既設定値に対応する前記保存設定値を修正用の設定値として前記設定値設定部に送信する設定値修正部と、
を備えることを特徴とする無線基地局装置。
【0158】
(付記2)
前記異常判定部は、前記既設定値が、対応する前記保存設定値に対して所定値以上の差異があるとき異常有りと判定する、
ことを特徴とする付記1に記載の無線基地局装置。
【0159】
(付記3)
前記異常判定部は、前記既設定値が、対応する前記保存設定値に対して所定値以上の差異があり、且つ所定の範囲内に含まれていないとき異常有りと判定する、
ことを特徴とする付記2に記載の無線基地局装置。
【0160】
(付記4)
前記所定の条件を満たすタイミングで所定の設定値を非固定設定値として取得する設定値取得部を備え、
前記異常判定部は、取得された前記非固定設定値に対して異常の有無を判定し、
前記設定値修正部は、前記異常判定部が異常有りと判定したときに、異常有りと判定された前記非固定設定値に対応する前記保存設定値を前記非固定設定値に対する修正用の設定値として前記設定値設定部に送信する、
ことを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の無線基地局装置。
【0161】
(付記5)
前記所定の条件を満たすタイミングで所定の設定値を非固定設定値として取得する設定値取得部を備え、
前記使用機器に設定される前記非固定設定値に対して、設定可能範囲を規定するハードウェア回路である設定値制限回路を備える、
ことを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の無線基地局装置。
【0162】
(付記6)
前記設定値設定部は、前記非固定設定値が前記設定値制限回路の前記設定可能範囲を超えることにより前記使用機器に対して設定値の設定ができなかったとき、前記設定可能範囲に含まれる所定値を前記非固定設定値として前記使用機器に対して設定する、
ことを特徴とする付記5に記載の無線基地局装置。
【0163】
(付記7)
前記異常判定部は、取得された前記非固定設定値に対して異常の有無を判定する、
ことを特徴とする付記5又は6に記載の無線基地局装置。
【0164】
(付記8)
前記異常判定部は、前記非固定設定値が所定の許容範囲に含まれる値であるかどうかにより異常の有無を判定する、
ことを特徴とする付記4又は7に記載の無線基地局装置。
【0165】
(付記9)
前記異常判定部により異常有りと判定されたときの異常判定の時刻及び内容を含む異常情報を記憶するログ用記憶部を備える、
ことを特徴とする付記1乃至8のいずれか1項に記載の無線基地局装置。
【0166】
(付記10)
無線基地局装置の無線通信用の使用機器に対して、該使用機器の動作に必要な設定値を設定する設定値設定ステップと、
所定の条件で取得され前記使用機器に設定された設定値を保存設定値として格納用記憶部に記憶する記憶ステップと、
前記使用機器に設定された既設定値に対して異常の有無を判定する異常判定ステップと、
該異常判定ステップで異常有りと判定されたときに、異常有りと判定された前記既設定値に対応する前記保存設定値を修正用の設定値として前記設定値設定ステップに送信する設定値修正ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする無線基地局装置の機器設定修正プログラム。
【0167】
(付記11)
無線基地局装置の無線通信用の使用機器に対して、該使用機器の動作に必要な設定値を設定する設定値設定ステップと、
所定の条件で取得され前記使用機器に設定された設定値を保存設定値として格納用記憶部に記憶する記憶ステップと、
前記使用機器に設定された既設定値に対して異常の有無を判定する異常判定ステップと、
該異常判定ステップで異常有りと判定されたときに、異常有りと判定された前記既設定値に対応する前記保存設定値を修正用の設定値として前記設定値設定ステップに送信する設定値修正ステップと、
を備えることを特徴とする無線基地局装置の機器設定修正方法。
【符号の説明】
【0168】
1 無線基地局装置
2 無線装置(RE)
3 無線装置制御部(REC)
4 送信用アンテナ
5 受信用アンテナ
6 送信部
7 受信部
8 ベースバンド処理部(無線通信用の使用機器)
9 I/F部
10 中央演算処理装置(CPU)
11 処理用記憶部
12 ログ用記憶部
13 格納用記憶部
80 設定値制限回路
100 起動処理部
101 設定値取得部
102 設定値設定部
103 記録・読出部
104 通信設定メッセージ受信部
105 既設定値取得部
106 異常判定部
107 設定値修正部
108 タイマ
109 タイマ
110 制御部
111 固定設定値設定部
112 非固定設定値設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線基地局装置の無線通信用の使用機器に対して、該使用機器の動作に必要な設定値を設定する設定値設定部と、
所定の条件で取得され前記使用機器に設定された設定値を保存設定値として記憶する格納用記憶部と、
前記使用機器に設定された既設定値に対して異常の有無を判定する異常判定部と、
前記異常判定部が異常有りと判定したときに、異常有りと判定された前記既設定値に対応する前記保存設定値を修正用の設定値として前記設定値設定部に送信する設定値修正部と、
を備えることを特徴とする無線基地局装置。
【請求項2】
前記異常判定部は、前記既設定値が、対応する前記保存設定値に対して所定値以上の差異があるとき異常有りと判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線基地局装置。
【請求項3】
前記異常判定部は、前記既設定値が、対応する前記保存設定値に対して所定値以上の差異があり、且つ所定の範囲内に含まれていないとき異常有りと判定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の無線基地局装置。
【請求項4】
前記所定の条件を満たすタイミングで所定の設定値を非固定設定値として取得する設定値取得部を備え、
前記異常判定部は、取得された前記非固定設定値に対して異常の有無を判定し、
前記設定値修正部は、前記異常判定部が異常有りと判定したときに、異常有りと判定された前記非固定設定値に対応する前記保存設定値を前記非固定設定値に対する修正用の設定値として前記設定値設定部に送信する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線基地局装置。
【請求項5】
前記所定の条件を満たすタイミングで所定の設定値を非固定設定値として取得する設定値取得部を備え、
前記使用機器に設定される前記非固定設定値に対して、設定可能範囲を規定するハードウェア回路である設定値制限回路を備えた、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線基地局装置。
【請求項6】
前記設定値設定部は、前記非固定設定値が前記設定値制限回路の前記設定可能範囲を超えることにより前記使用機器に対して設定値の設定ができなかったとき、前記設定可能範囲に含まれる所定値を前記非固定設定値として前記使用機器に対して設定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の無線基地局装置。
【請求項7】
前記異常判定部は、取得された前記非固定設定値に対して異常の有無を判定する、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の無線基地局装置。
【請求項8】
前記異常判定部は、前記非固定設定値が所定の許容範囲に含まれる値であるかどうかにより異常の有無を判定する、
ことを特徴とする請求項4又は7に記載の無線基地局装置。
【請求項9】
前記異常判定部により異常有りと判定されたときの異常判定の時刻及び内容を含む異常情報を記憶するログ用記憶部を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の無線基地局装置。
【請求項10】
無線基地局装置の無線通信用の使用機器に対して、該使用機器の動作に必要な設定値を設定する設定値設定ステップと、
所定の条件で取得され前記使用機器に設定された設定値を保存設定値として格納用記憶部に記憶する記憶ステップと、
前記使用機器に設定された既設定値に対して異常の有無を判定する異常判定ステップと、
該異常判定ステップで異常有りと判定されたときに、異常有りと判定された前記既設定値に対応する前記保存設定値を修正用の設定値として前記設定値設定ステップに送信する設定値修正ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする無線基地局装置の機器設定修正プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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