説明

無線機及び無線通信方法

【課題】通信相手の無線機のバッテリー状態に応じて、発信側無線機での無駄な電力消費及び電波の飛散を軽減させる
【解決手段】本発明の無線機によれば、バッテリー残量が低下した時、もしくは電源スイッチがオフにされた時に、通信相手の無線機に対して信号を送信する。この信号を受信した無線機は、当該無線機に対して無線通信を解除するよう制御を行う。バッテリーが回復した場合や、再度電源スイッチがオンにされた場合には、通信相手の無線機に対して信号を送信する。この信号を受信した無線機は、当該無線機に対して無線通信を接続するよう制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランシーバー等の無線機及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話やハンディターミナルのような携帯式の小型電気機器において、バッテリーの残量を機器本体の液晶画面等に表示させることによって、ユーザはバッテリーの残量を把握していた。
【0003】
しかし、近年の携帯式の小型電気機器の発達により、大容量データをダウンロードする時など比較的長時間を要する時は、ユーザはバッテリーの残量が減少したことに気づかないことも多い。その結果、ユーザの知らない間にバッテリー切れとなり、データ通信が中断する恐れもある。
【0004】
一方、無線機のような携帯式の小型電気機器の場合、危険を伴う作業をしながら通信を行うことが多い。このような場合、相手と通信が途絶えた場合、相手の無線機が電源をオフにしているのか、バッテリー切れを起こしたため作業を中断しなければならないのか判断がつかず、その後の作業に支障をきたすことも考えられる。
【0005】
現在では、携帯式の小型電気機器におけるバッテリーの残量を外部機器や他の通信機に送信し、表示させて確認することも行われている。携帯式の小型電気機器におけるバッテリーの残量を外部機器等で確認することによって、不測の電池切れを予防している。
【0006】
特許文献1には、外部機器や他の通信機にバッテリーの残量情報を送信し、表示させる技術が記載されている。
【特許文献1】特開2003−153453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の技術のように、外部機器や他の通信機にバッテリーの残量情報を送信することにより、相手がバッテリー切れの時は事前に知ることができるが、相手が電源を切った場合には対応できず、自分のバッテリー情報を送信してしまう。
【0008】
特に、無線機のような携帯式の小型電気機器では、先述のようにユーザが屋外等で危険を伴う作業をしながら無線通信をすることが多い。このような場合には、通信相手の無線機がバッテリー切れを起こした際、ユーザの無線機には通信相手がバッテリー切れである旨を表示するだけであり、作業中のユーザはこの表示に気づかないことが多い。
その結果、バッテリー切れの無線機に対して無駄な信号を送信することになり、自己の無線機のバッテリーの浪費や、無駄な電波の飛散を引き起こしている。
【0009】
本発明の課題は、通信相手の無線機のバッテリー状態に応じて、発信側無線機での無駄な電力消費及び電波の飛散を軽減させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、
バッテリーと、前記バッテリーからの電源電圧をオン/オフする電源スイッチを備えた無線機であって、
他の無線機と情報の送受信を行う通信手段と、
前記バッテリーの残量を検出するバッテリー残量検出手段と、
前記電源スイッチの動作を検出する電源スイッチ検出手段と、
前記バッテリー残量検出手段及び前記電源スイッチ検出手段によって検出された前記バッテリー及び電源スイッチに関する情報を示す電源情報信号を、前記通信手段を介して前記他の無線機に対して送信する電源情報送信手段と、
前記他の無線機から前記通信手段を介して受信した前記電源情報信号を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記電源情報信号をもとに、前記他の無線機に対して通信接続制御を行う通信接続制御手段と、
を備えることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記無線機は更に、前記記憶手段に記憶された前記電源情報信号をもとに、前記他の無線機のバッテリー又は電源スイッチに関する情報を表示する電源状態表示手段を備えることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記記憶手段は、前記他の無線機をグループごとに記憶していることを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載の発明は、
他の無線機と情報の送受信を行う通信工程と、
バッテリーの残量を検出するバッテリー残量検出工程と、
電源スイッチの動作を検出する電源スイッチ検出工程と、
前記バッテリー残量検出工程及び前記電源スイッチ検出工程によって検出された前記バッテリー及び電源スイッチに関する情報を示す電源情報信号を、前記通信工程によって前記他の無線機に対して送信する電源情報送信工程と、
前記他の無線機から前記通信工程によって受信した前記電源情報信号を記憶する記憶工程と、
前記記憶工程に記憶された前記電源情報信号をもとに、前記他の無線機に対して通信接続制御を行う通信接続制御工程と、
を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
通信相手の無線機のバッテリー状態に応じて、発信側無線機での無駄な電力消費及び電波の飛散を軽減させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る無線機について最適な実施形態の構成及び動作について図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
まず、本実施の形態における構成について説明する。
図1に、本発明に係る無線通信システムNを示す。図1に示すように、本実施の形態では、複数の無線機100相互間において、それぞれ無線通信を行う例を示している。
【0017】
図2に無線機100の機能的構成を示す。無線機100はCPU1、記憶部2、バッテリー3、電源スイッチ4、電源スイッチ検出回路5、電圧検出回路6、増幅回路部7、通信部8、表示部9、RAM10、操作部11から構成され、各部はバス12を介して接続されている。
【0018】
CPU1は、制御部として機能し、記憶部2に記憶されている制御プログラムを読み出し、RAM10内に形成されたワークエリアに展開し、展開したプログラムに従って、無線機100の各部を集中制御する。また、CPU1は、記憶部2に記憶されている各種プログラムに従って、各種処理を実行する。
【0019】
記憶部2は、記憶手段として機能し、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体としての不揮発性の半導体メモリにより構成され、CPU1によって実行される各種制御プログラム、後述する電源情報送信処理や通信接続制御処理を始めとする各種処理プログラム及びこれらのプログラムの実行に必要なパラメータや、後述する通信相手電源情報信号テーブルT1等の各種データ等を記憶する。
なお、上記記憶部2以外のその他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを、搬送波(キャリアウェーブ)に重畳させて通信回線を介して提供することも可能である。
【0020】
バッテリー3は、マンガン乾電池等の一次電池あるいはニッケル・カドミウム充電池、リチウム充電池、鉛蓄電池等の二次電池により構成され、所定の電源電圧を無線機100内の各部に供給する。
また、バッテリー3は例えばサーミスタ等によって構成された温度検出回路を内蔵し、バッテリー3の温度情報をCPU1に対して出力する機能を備えた構成としてもよい。
【0021】
電源スイッチ4は、バッテリー3から無線機100内の各部に供給される電源電圧のオンとオフ(投入/遮断)の切り替えを行う。
【0022】
電源スイッチ検出回路5は、電源スイッチ検出手段として機能し、電源スイッチ4の動作を検出する。電源スイッチ4が電源電圧オンとオフの切り換えを行った際に、CPU1に対して信号を送信することによって電源スイッチ4の動作を伝達する。
【0023】
電圧検出回路6は、バッテリー3の端子電圧を検出し、その検出信号をCPU1に対して出力する。具体的には、例えば電圧検出回路6は、電圧検出回路6内の負荷抵抗を流れる電流を検出し、CPU1に対して出力する機能を備えた構成としてもよい。
【0024】
CPU1は、電圧検出回路6から入力されたバッテリー3の検出電圧をもとに、バッテリー3の電池残量を算出し、バッテリー残量検出手段として機能する。
例えば、電圧検出回路6によって検出されたバッテリー3の電圧、電圧検出回路6内の負荷抵抗を流れる電流、及びバッテリー3の電池温度の3値に対応したテーブルを記憶部2に記憶しておき、このテーブルを参照してバッテリー3の残量を算出する構成としてもよい。具体的には、記憶部2に記憶された対応テーブルを、電池温度及び負荷電流に対応させて補完することにより補完テーブルを作成する。そして、作成された補完テーブルにおいて、電圧検出回路6によって検出された電源電圧に対応するバッテリー3の残量を求める。
【0025】
増幅回路部7は、主にRF(Radio Frequency)回路やAF(Audio Frequency)回路から構成され、入力された信号を増幅して通信部8へ出力する。
【0026】
通信部8は、通信手段として機能し、CPU1から出力を指示された音声や無線機の識別情報やバッテリー状態等の各種情報を電磁波に変換し、他の無線機との間で無線通信を行う。
【0027】
表示部9は、液晶表示パネル等により構成され、CPU1から入力される各種情報を表示する。
【0028】
RAM10は、CPU1によって実行される各種プログラムやこれらプログラムによって処理されたデータ等を一時的に記憶するワークエリアとして機能する。
【0029】
操作部11は、カーソルボタンや数字ボタン、各種機能ボタンからなるボタンを備えて構成され、押下されたボタンに対応する操作信号をCPU1に出力する。具体的には、他の無線機100と無線通信を行うためのチャンネル入力や各種パラメータの入力を行うことができる。なお、必要に応じてタッチパネル等のポインティングデバイスを含むこととしても良い。
【0030】
図3に、記憶部2が記憶する通信相手電源情報信号テーブルT1の一例を示す。
通信相手電源情報信号テーブルT1は無線機100と無線通信をしている他の無線機100を識別する個別IDと電源情報信号を対応付けている。個別IDとは、通信中の他の無線機100に一意に割り当てられた識別情報である。電源情報信号とは、個別IDに対応する無線機100の電源状態を示す信号である。この電源情報信号は、通信可能信号、電源スイッチオフ信号、及びバッテリー切れ信号が設定される。
【0031】
通信可能信号は、個別IDに対応する無線機100のバッテリー3の残量が十分にあり、通信可能であることを示す。電源スイッチオフ信号は、個別IDに対応する無線機100の電源スイッチ4がオフにされたことを示す。バッテリー切れ信号は、個別IDに対応する無線機100のバッテリー3の残量が少なくなった状態を示す。
通信可能信号、電源スイッチオフ信号、及びバッテリー切れ信号は後述する電源情報送信処理によって送信される。
【0032】
例えば、図3の例では個別IDが「AAA」の無線機100はバッテリー3の残量が十分にあり通信可能である状態を示す。個別IDが「BBB」の無線機100は、電源スイッチ4がオフにされている状態を示し、個別IDが「CCC」の無線機100は、バッテリー3の残量が少なくなった状態を示している。
無線機100は後述する通信接続制御処理により、通信可能信号が対応付けられている無線機100とのみ通信を行う。図3の例では、無線機100は、個別ID「AAA」の無線機100とのみ無線通信を行い、個別ID「BBB」と「CCC」の無線機100とは無線通信を行わない。
【0033】
次に、本実施の形態の動作について説明する。
図4に無線機100が行う電源情報送信処理を示す。電源情報送信処理は、無線機100の電源スイッチ4がオンにされた際に、CPU1と記憶部2に記憶されたプログラムとの協働によるソフトウェア処理により実現される。
電源情報送信処理では、先述した電源情報信号を他の無線機100に送信する。
CPU1は、電源情報送信処理により、電源情報送信手段として機能する。
【0034】
まず、通信可能信号が通信部9を介して、通信相手電源情報信号テーブルT1に予め記憶された個別IDに対応する他の無線機100に送信される(ステップS401)。次に、電圧検出回路6が検出した電圧を基に、バッテリー3の残量が算出される(ステップS402)。
【0035】
そして、ステップS402で算出されたバッテリー3の残量が、記憶部2に予め定められた基準値と比較される(ステップS403)。この基準値は可変であり、操作部11によって入力が行われ、記憶部2に値が保持されている。
例えば、バッテリー3が消耗していることを早い段階で把握したい場合には、基準値を高く設定し、バッテリー3が切れる直前まで無線通信をしたい場合には、基準値を低く設定することができる。
【0036】
バッテリー残量が基準値以上である場合には(ステップS403;NO)、電源スイッチ4がオンになっているか確認される(ステップS404)。
電源スイッチ4がオンであれば(ステップS404;YES)、ステップS402に戻る。無線機100の電源がオフであれば(ステップS404;NO)、無線機100の電源がオフにされたことを示す電源スイッチオフ信号が通信部9を介して、通信相手電源情報信号テーブルT1に予め記憶された個別IDに対応する他の無線機100に送信され(ステップS405)、処理は終了する。
【0037】
無線機100のバッテリー3の残量が基準値未満となった場合(ステップS403;YES)、バッテリー切れ信号が通信部9を介して、通信相手電源情報信号テーブルT1に予め記憶された個別IDに対応する他の無線機100に送信される(ステップS406)。次に、バッテリー3の残量が算出され(ステップS407)、記憶部2に予め定められた基準値と比較される(ステップS408)。この基準値はステップS403で用いられる基準値と同じである。
【0038】
バッテリー3の残量が基準値未満である場合(ステップS408;YES)、電源スイッチ4がオンになっているか確認される(ステップS409)。電源スイッチ4がオフにされた場合(ステップS409;NO)、処理は終了する。
電源スイッチ4がオンの場合(ステップS409;YES)、再度ステップS407に戻る。
【0039】
バッテリー残量が基準値以上である場合(ステップS408;NO)、記憶部2に予め記憶された個別IDに対応する他の無線機100に対して、通信可能信号を送信するため、ステップS401に戻る。
【0040】
このように、バッテリー3の残量が基準値未満である場合、バッテリー切れ信号を送信することにより、バッテリー切れであることを他の無線機100に知らせている。他の無線機100に対してバッテリー切れ信号を送信した後、充電等がなされ、バッテリー3の残量がある程度回復し、無線通信しても差し支えないとステップS408によって判断された場合は、通信可能信号を通信相手の無線機100に知らせることができる。
【0041】
無線機100は、通信相手電源情報信号テーブルT1に予め記憶された個別IDに対応する他の無線機100から電源情報信号を受信した際、受信した電源情報信号をもとに通信相手電源情報信号テーブルT1を更新する。その結果、当該個別IDに対応する他の無線機100の、現在のバッテリー3の状況及び電源スイッチ4の情報をリアルタイムで保持することができる。
例えば、図3の例では、個別ID「BBB」に対応する無線機100から通信可能信号を受信した場合、この無線機100に対応する電源情報信号を電源スイッチオフ信号から通信可能信号に更新する。
【0042】
次に、無線機100が行う通信接続制御処理について説明する。
図5に無線機100が行う通信接続制御処理を示す。通信接続制御処理は、操作部11からの入力により無線機100のチャンネルを合わせた際に、CPU1と記憶部2に記憶されたプログラムとの協働によるソフトウェア処理により実現される。その後は、記憶部2に予め記憶された一定周期間隔で実行される。この一定周期間隔は可変であり、操作部11によって入力が行われ、記憶部2に値が保持されている。
通信接続制御処理では、通信相手電源情報信号テーブルT1の情報をもとに、個別IDに対応する無線機100との通信接続及び通信解除を行う。
CPU1は、通信接続制御処理により、通信接続制御手段として機能する。表示部9は、通信接続制御処理により、電源状態表示手段として機能する。
【0043】
まず、記憶部2に記憶された通信相手電源情報信号テーブルT1が参照される(ステップS501)。次に、通信相手電源情報信号テーブルT1に格納された個別IDに対応する無線機100の電源情報信号が、通信可能信号であるかチェックされる(ステップS502)。
【0044】
個別IDに対応する無線機100の電源情報信号が通信可能信号である場合(ステップS502;YES)、この無線機100に対して無線通信を可能にする制御を行い(ステップS503)、この無線機100に対して無線通信が可能である旨が表示部9に表示される(ステップS504)。
【0045】
ステップS504で行われる無線通信を可能にする制御はCPU1の判断によって行われる。通信可能信号が対応付けられた無線機100に対して、音声や電源情報信号等の各種情報を、通信部9を介して送信する制御を行う。
【0046】
個別IDに対応する無線機100の電源情報信号が通信可能信号でない場合(ステップS502;NO)、この電源情報信号が電源スイッチオフ信号であるかチェックされる(ステップS505)。
【0047】
個別IDに対応する無線機100の電源情報信号が、電源スイッチオフ信号である場合(ステップS505;YES)、この無線機100に対して無線通信を解除する制御が行われる(ステップS506)。そして、この無線機100の電源スイッチ4がオフにされている旨が表示部9に表示される(ステップS507)。
【0048】
ステップS506で行われる無線通信接続を解除する制御は、CPU1の判断によって行われる。電源スイッチオフ信号が対応付けられた無線機100に対して、音声や電源情報信号等の各種送信情報を、通信部9を介して送信しないよう制御を行う。
【0049】
個別IDに対応する無線機100の電源情報信号が、電源スイッチオフ信号でない場合(ステップS505;NO)、この無線機100に対して無線通信接続を解除する制御が行われる(ステップS508)。そして、この無線機100がバッテリー切れである旨が表示部9に表示される(ステップS509)。ステップS508で行われる処理はステップS506で行われる処理と同様である。
【0050】
次いで、通信相手電源情報信号テーブルT1に格納された個別IDが全て参照されたかどうかがチェックされる(ステップS510)。通信相手電源情報信号テーブルT1に格納された個別IDが全て参照されていない場合(ステップS507;NO)、ステップS502に戻る。通信相手電源情報信号テーブルT1に格納された個別IDが全て参照されている場合(ステップS507;YES)、処理は終了する。
【0051】
このように、通信接続制御処理によれば、通信可能信号を受信した他の無線機100に対してのみ無線通信が行われ、電源スイッチオフ信号又はバッテリー切れ信号を受信した他の無線機100に対して無線通信を解除する制御がなされる。その結果、この無線機100に対して無線通信が行われないので、無駄な電力消費や電波の飛散を軽減することができる。
【0052】
また、操作部11の操作によりチャンネルを合わせ、他の無線機100と通信を行っている間に定期的に通信接続制御処理を実行することにより、他の無線機100が電源スイッチ4をオフにした時や通信中にバッテリー切れを起こした際、この無線機100に対して無線送信を解除するかどうか定期的に判断することができる。
【0053】
バッテリー切れを起こした無線機100のユーザが充電や電池交換を行った結果、バッテリーが回復し、この無線機100から通信可能信号を受信した時は、通信相手電源情報信号テーブルT1に格納された電源情報信号が更新されているため、ステップS503により、当該無線機100と再度無線通信を行うことができる。
【0054】
次に本実施の形態における電源情報送信処理及び通信接続制御処理を、例を挙げて説明する。
図6に、本実施の形態における無線通信システムNの一例を示す。図5の例では、無線通信システムNは、無線機A、無線機B、及び無線機Cの3台の無線機100によって構成されている。
【0055】
以下、無線機Cの動作を例に挙げて説明する。
無線機Aと無線機Bのバッテリー3の残量が共に基準値以上であった場合、無線機Aと無線機Bの電源情報送信処理により、無線機Cは無線機Aと無線機Bから通信可能信号をそれぞれ受信する。そして、無線機Cの通信相手電源情報信号テーブルT1には無線機Aと無線機Bから通信可能信号を受信したことが記憶される。
【0056】
次に無線機Cの通信接続制御処理によって、通信相手電源情報信号テーブルT1がチェックされ、無線機Aと無線機Bに対して無線通信を可能とする制御が行われる。
【0057】
図7(a)に、無線機Aと無線機Bの個別IDに対応する電源情報信号が通信可能信号である場合の、無線機Cの表示部9の表示を示す。図7(a)に示すように、無線機Cの表示部9には無線機Aと無線機Bが通信可能である旨が表示される。
この状態では、無線機Cは無線機Aと無線機Bの両機と無線通信を行っている。
【0058】
まず、無線機Aの電源スイッチ4がオフにされた場合を説明する。
無線機Aの電源スイッチ4がオフにされると、無線機Cは無線機Aから電源スイッチオフ信号を受信する。そして、通信相手電源情報信号テーブルT1に格納されている無線機Aの個別IDに対応する電源情報信号が更新される。
無線機Cの通信接続制御処理が実行されると、ステップS506によって、無線機Aに対する無線通信が解除される。
【0059】
図7(b)に、無線機Aの個別IDに対応する電源情報信号が電源スイッチオフ信号であり、無線機Bの個別IDに対応する電源情報信号が通信可能信号である場合の、無線機Cの表示部9の表示を示す。
図7(b)に示すように、無線機Cの表示部9には無線機Aの電源スイッチ4がオフにされた旨が表示される。図7(b)に示す状態では、無線機Cは無線機Aと通信を行わず、無線機Bとのみ通信を行う。
【0060】
無線機Aの電源スイッチ4がオンにされると、無線機Cは無線機Aから通信可能信号を受信する。そして、通信相手電源情報信号テーブルT1に格納されている無線機Aの個別IDに対応する電源情報信号が更新される。無線機Cの通信接続制御処理が実行されると、ステップS503によって、無線機Aに対する通信が接続され、図7(a)に示すように無線機Aとの通信が可能である旨が無線機Cの表示部9に表示され、無線機Aと無線通信が再度可能となる。
【0061】
次に、無線機Bのバッテリーが基準値以下となった場合を説明する。
無線機Bのバッテリー3の残量が基準値未満になった場合、無線機Cは無線機Bからバッテリー切れ信号を受信する。そして、通信相手電源情報信号テーブルT1に格納されている無線機Bの個別IDに対応する電源情報信号が更新される。無線機Cの通信接続制御処理が実行されると、ステップS508によって、無線機Bに対する通信が解除される。
【0062】
図7(c)に、無線機Aの個別IDに対応する電源情報信号が通信可能信号であり、無線機Bの個別IDに対応する電源情報信号がバッテリー切れ信号である場合の、無線機Cの表示部9の表示を示す。
図7(c)に示すように、無線機Cの表示部9には、無線機Bがバッテリー切れを起こした旨が表示部9に表示される。図7(c)に示す状態では、無線機Cは無線機Bと通信を行わず、無線機Aとのみ通信を行う。
【0063】
無線機Bのバッテリー3が充電等され、無線機Bの電源情報送信処理によりバッテリー残量が基準値以上に回復したと判断されると、無線機Cは通信可能信号を無線機Bより受信する。そして、通信相手電源情報信号テーブルT1に格納されている無線機Bの個別IDに対応する電源情報信号が更新される。無線機Cの通信接続制御処理が実行されると、図7(a)に示すように、無線機Bとの通信が可能である旨が無線機Cの表示部9に表示され、無線機Bと無線通信が再度可能となる。
【0064】
図7(d)に、無線機Aの個別IDに対応する電源情報信号がスイッチオフ信号であり、無線機Bの個別IDに対応する電源情報信号がバッテリー切れ信号である場合の、無線機Cの表示部9の表示を示す。図7(d)に示す状態では、無線機Cは無線機A及び無線機Bと無線通信をしていない。
【0065】
このように本実施の形態では、無線機100のバッテリー3のバッテリー切れが近い場合や電源スイッチ4がオフにされた際、通信相手にその旨を通知することによって、この無線機100への通信を解除させることができる。その結果、バッテリー切れやスイッチがオフにされた無線機100に対して無線送信をなくすことができ、無駄な電力の消費や電波の飛散が軽減される。
【0066】
また、相手がバッテリー切れなのか自分で電源を切っているのか表示部9に表示されるので、無線機100を使用して作業を行っている時でも、作業を中断すべきかその後の対応を判断することができる。
【0067】
また、上記の例では、一つの通信相手電源情報信号テーブルT1に記憶された個別IDに対応する無線機100に対して電源情報信号を送信するとして説明したが、無線機100をグループ分けし、グループごとに通信相手電源情報信号テーブルT1を使い分けても良い。
【0068】
図8に、グループ内の無線機100に自己の電源情報信号を送信する場合の例を示す。図8に示すように、無線機Aはグループごとに通信相手電源情報信号テーブルT2及びT3を記憶部2に保持している。図8の例の場合、無線機Aの記憶部2の通信相手電源情報信号テーブルT2に登録されている無線機B、無線機C、及び無線機D、もしくは通信相手電源情報信号テーブルT3に登録されている無線機E、無線機F、及び無線機Gに対して電源情報信号を送信することができる。
【0069】
グループの切り換えは、無線機Aの操作部11からの操作によって行うことができる。例えば、無線機B、無線機C、及び無線機Dに対して電源情報信号を送信したい場合は、通信相手電源情報信号テーブルT2を設定する。同様に、無線機E、無線機F、及び無線機Gに対して電源情報信号を送信したい場合は、通信相手電源情報信号テーブルT3を設定する。
【0070】
このように、無線機100のユーザは、電源情報送信処理及び通信接続制御処理で使用する通信相手電源情報信号テーブルを切り替える操作を行うことにより、自己の電源情報信号を送信したい無線機100を容易に管理することもできる。
【0071】
その他、本実施の形態における無線機の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態における無線通信システムの全体構成を示す概要図である。
【図2】本発明の実施の形態における無線機の機能ブロック図である。
【図3】通信相手の電源情報を記憶するためのテーブルの一例を示す図である。
【図4】図1の無線機によって実行される、バッテリー情報を送信する電源情報送信処理を行うためのフローチャートである。
【図5】図1の無線機によって実行される、通信相手の電源情報に応じて通信制御をする通信接続制御処理を行うためのフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態における無線通信システムの全体構成を示す概要図である。
【図7】図5で示す通信接続制御処理が行われた無線機の表示画面の一例を示し、(a)は通常の通信状態の例を示し、(b)は無線機Aから電源スイッチオフ信号を受信した場合の例を示し、(c)は無線機Bからバッテリー切れ信号を受信した場合を示し、(d)は無線機Aから電源スイッチオフ信号を受信し、無線機Bからバッテリー切れ信号を受信した場合を示す模式図である。
【図8】通信相手をグループによって分けて無線通信を行う無線通信システムの全体構成を示す概要図である。
【符号の説明】
【0073】
100 無線機
1 CPU
2 記憶部
3 バッテリー
4 電源スイッチ
5 電源スイッチ検出回路
6 電圧検出回路
7 増幅回路部
8 通信部
9 表示部
10 RAM
11 操作部
12 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーと、前記バッテリーからの電源電圧をオン/オフする電源スイッチを備えた無線機であって、
他の無線機と情報の送受信を行う通信手段と、
前記バッテリーの残量を検出するバッテリー残量検出手段と、
前記電源スイッチの動作を検出する電源スイッチ検出手段と、
前記バッテリー残量検出手段及び前記電源スイッチ検出手段によって検出された前記バッテリー及び電源スイッチに関する情報を示す電源情報信号を、前記通信手段を介して前記他の無線機に対して送信する電源情報送信手段と、
前記他の無線機から前記通信手段を介して受信した前記電源情報信号を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記電源情報信号をもとに、前記他の無線機に対して通信接続制御を行う通信接続制御手段と、
を備えることを特徴とする無線機。
【請求項2】
前記無線機は更に、前記記憶手段に記憶された前記電源情報信号をもとに、前記他の無線機のバッテリー又は電源スイッチに関する情報を表示する電源状態表示手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の無線機。
【請求項3】
前記記憶手段は、前記他の無線機をグループごとに記憶していることを特徴とする請求項1又は2に記載の無線機。
【請求項4】
他の無線機と情報の送受信を行う通信工程と、
バッテリーの残量を検出するバッテリー残量検出工程と、
電源スイッチの動作を検出する電源スイッチ検出工程と、
前記バッテリー残量検出工程及び前記電源スイッチ検出工程によって検出された前記バッテリー及び電源スイッチに関する情報を示す電源情報信号を、前記通信工程によって前記他の無線機に対して送信する電源情報送信工程と、
前記他の無線機から前記通信工程によって受信した前記電源情報信号を記憶する記憶工程と、
前記記憶工程に記憶された前記電源情報信号をもとに、前記他の無線機に対して通信接続制御を行う通信接続制御工程と、
を含むことを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−152872(P2009−152872A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328957(P2007−328957)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】