説明

無線機

【課題】送話音声が頭切れになっていることを送話者が確認できる無線機を提供する。
【解決手段】無線機を送信状態にするPTTスイッチ101と、音声が入力されると音声信号を出力するマイク104と、前記マイク104から出力される音声信号の有無を検出する音声検出部110と、前記マイク104から出力される音声信号に基づき送信出力信号を生成する変調部106と、前記変調部106から出力される送信出力信号に基づき、当該無線機の送信状態の有無を検出する送信状態検出部108と、前記音声検出部110で音声信号有が検出され、かつ前記送信状態検出部108で送信状態無が検出された場合に、送話の頭切れが発生したと判定する制御部102と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声を無線送信する無線機に関し、例えばPTT(PUSH TO TALK)スイッチを押下すると送信状態になり、PTTスイッチ押下中にマイクから入力した音声を無線送信することのできる無線機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無線機送信部の構成例を説明する。図4は従来例を示す無線機送信部のブロック構成図である。
図4において、401は、無線機を送信状態にする機能を持つPTTスイッチである。404は、音声が入力されると音声信号を出力するマイクである。405は、マイク404からの音声信号S404を波形整形する信号処理部である。406は、信号処理部405で波形整形した信号を、搬送波と合成して送信出力信号を生成する変調部である。407は、変調部406からの送信出力信号を増幅するとともに不要な周波数成分を取り除く高周波部である。408は、送信出力の有無を検波して出力する機能を有する送信出力検波回路である。409は、高周波部からの送信出力信号を無線により放射するアンテナである。402は、信号処理部405や変調部406等の無線機の各構成部を制御する制御部である。
【0003】
従来の無線機送信部の動作を説明する。
無線機の使用者は、通話を行うとき、PTTスイッチ401を押下しながらマイク404から音声を入力する。PTTスイッチ401が押下されると制御部402は、PTTスイッチ401が押下状態にあることをPTT信号S401により検出し、上述の無線機送信部を送信状態にするよう制御する。
詳しくは、PTTスイッチ401が押下されると、待受け状態から送信状態への切替が開始され、後述する送信立上り時間T1(ms)後に無線機が送信状態になると、送信出力検波回路408から出力される送信出力検波信号S408が立上る。
【0004】
送信状態において、マイク404から入力された音声信号S404は信号処理部405で波形整形され、変調部406で搬送波と合成されて送信出力信号が生成される。生成された送信出力信号は、高周波部407で適切な送信電力へ増幅されるとともに不要な周波数成分が取り除かれ、アンテナ409から電波として放射される。
また、変調部406からの送信出力信号の一部は、高周波部407で分波されて送信出力検波回路408に入力される。送信出力検波回路408は、送信出力の検出結果(送信出力の有無)を示す送信出力検波信号S408を制御部402へ入力する。
【0005】
次に、従来の無線機において、送話時に頭切れが発生する場合、つまり送話時において送話内容の先頭部分が送信されない事象が発生する場合を説明する。図5は、PTTスイッチ401が押下される前にマイク404から音声信号が入力され、送話時に頭切れが発生する場合の各信号波形を示す。
【0006】
図5において、501は、PTT信号S401の立上り、つまりPTTスイッチ401が押下された時点を示す。502は、送信出力検波信号S408の立上り、つまり、無線機が送信状態になり、送信出力検波回路408からの検出結果が送信出力有となった時点を示す。503は、音声信号S404の立上り、つまりマイク404へ音声が入力開始された時点を示す。
PTTスイッチ401が押下されPTT信号S401の立上り501を検出すると、制御部402は、待受け状態から送信状態への切替を開始し、送信周波数への周波数の固定等の送信準備が完了するまでの送信立上り時間T1(ms)後に、無線機を送信状態にする。送信状態になると、送信出力検波信号S408が立上る。
【0007】
このとき、図5に示すとおり、PTTスイッチ401が押下される前に音声信号S404が出力されると、音声信号S404の立上り503からPTT信号S401の立上り501までの期間T2(ms)と、PTT信号S401の立上り501から送信出力検波信号S408の立上り502までの期間T1(ms)を合計したT3(ms)の期間の音声信号S404は送信されず頭切れとなり、受信側で音声を聞くことができない。
【0008】
また、送信側では、受信側で出力される音声を聞くことができないため、頭切れになっていることを送話者が確認する手段が無く、送話者が頭切れの発生に気がつかない間は、同じ要領で無線機を操作してしまい頭切れを繰り返すことになる。
送話時の頭切れを防ぐ手段としては、送信可能な状態であることを無線機に表示するようにし、該表示により、送話者がPTTスイッチを押下した後で送信可能な状態を確認してから、送話を開始する方法が考えられるが、送話までの動作が遅くなり、また煩わしいという欠点がある。
【0009】
下記の特許文献1には、受信機において、音声の復調系回路とは別に受信信号を検出するRSSI回路を設け、待ち受け時には、復調系回路の動作を停止して電力の消費を節減し、受信時には、RSSI回路によって受信信号を検出すると復調系回路を動作させて通話の頭切れをなくす技術が開示されているが、送信側において通話の頭切れをなくすことは開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−276114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、従来の無線機においては、送信側において送話音声が頭切れになっていることを送話者が確認する手段が無く、送信側で頭切れを繰り返す恐れがある。
本発明は、このような従来の課題を解決するために為されたもので、送話音声が頭切れになっていることを送話者が認識できる無線機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の無線機においては、音声信号の有無、送信状態の有無、PTTスイッチ押下の有無の状態遷移が、所定の状態遷移の条件と一致した場合に、送話時の頭切れと判定し、送話者に知らせるものである。あるいは、音声信号の有無、送信状態の有無、PTTスイッチ押下の有無の状態が、所定の状態の条件と一致した場合に、送話時の頭切れと判定し、送話者に知らせるものである。
上記課題を解決するための、本願発明の無線通信システムの代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
無線機を送信状態にする送信スイッチと、
音声が入力されると音声信号を出力するマイクと、
前記マイクから出力される音声信号の有無を検出する音声検出部と、
前記マイクから出力される音声信号に基づき送信出力信号を生成する変調部と、
前記変調部から出力される送信出力信号に基づき、当該無線機の送信状態の有無を検出する送信状態検出部と、
前記音声検出部で音声信号有が検出され、かつ前記送信状態検出部で送信状態無が検出された場合に、送話の頭切れが発生したと判定する制御部と、
を備えることを特徴とする無線機。
【発明の効果】
【0013】
送話音声が頭切れになっていることを送話者が確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る無線機送信部のブロック構成図である。
【図2】本発明の実施形態においてPTTスイッチが押下される前に音声が入力された場合の各信号波形を示す図である。
【図3】本発明の実施形態においてPTTスイッチが押下された後、送信出力が立上る前に音声が入力された場合の各信号波形を示す図である。
【図4】従来例に係る無線機送信部のブロック構成図である。
【図5】従来例においてPTTスイッチが押下される前に音声が入力された場合の各信号波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図1〜図3を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る無線機送信部のブロック構成図である。
図1において、101は、無線機を送信状態にする送信スイッチとしての機能を持つPTTスイッチである。104は、音声が入力されると音声信号S104を出力するマイクである。105は、マイク104からの音声信号S104を波形整形する信号処理部である。106は、信号処理部105で波形整形した信号を、搬送波と合成して送信出力信号を生成する変調部である。つまり、変調部106は、マイク104から出力される音声信号に基づき送信出力信号を生成する。107は、変調部106からの送信出力信号を増幅するとともに不要な周波数成分を取り除く高周波部である。108は、送信出力の有無を検波して送信出力検波信号S108を出力する機能を有する送信出力検波回路である。つまり、送信出力検波回路108は、変調部106から出力される送信出力信号に基づき、当該無線機の送信状態の有無を検出する送信状態検出部である。109は、高周波部107からの送信出力信号を無線により放射するアンテナである。
【0016】
110は、音声信号S104の有無を検出し、音声信号S104の有無に応じて音声検出信号S110を出力する機能を有する音声検出回路である。つまり、音声検出回路110は、マイク104から出力される音声信号の有無を検出する音声検出部である。111は、各種データ等を表示するためのLCD(Liquid Crystal Display)等から構成される表示部である。112は、音声信号等を音に変換して出力するスピーカである。103は、各種データ等を記憶する記憶部である。
102は、信号処理部105や変調部106等の無線機の各構成部を制御する制御部である。制御部102は、ハードウエア構成としては、CPU(Central Processing Unit)と制御部102の動作プログラム等を格納するメモリ(不図示)を備えており、CPUは、この動作プログラムに従って動作する。
【0017】
本実施形態の無線機送信部の動作を説明する。
無線機の使用者は通話を行うとき、従来例で説明したように、PTTスイッチ101を押下しながらマイク104から音声を入力する。PTTスイッチ101が押下されると、PTT信号S101が制御部102に入力される。制御部102は、PTT信号S101によりPTTスイッチ101が押下状態にあることを検出し、上述の無線機送信部を送信状態にするよう制御する。
詳しくは、PTTスイッチ101が押下されると、待受け状態から送信状態への切替が開始され、後述する送信立上り時間T1(ms)後に無線機が送信状態になると、送信出力検波回路108から出力される送信出力検波信号S108が立上る。
また、制御部102は、PTTスイッチ101が押下されたときの時刻情報に対応させて、PTTスイッチ101が押下された旨の情報(PTT信号S101有の情報)と、後述する送信出力検波信号S108有無の情報及び音声検出信号S110有無の情報とを記憶部103へ記録する。
【0018】
送信状態において、マイク104から出力された音声信号S104は信号処理部105で波形整形され、変調部106で搬送波と合成されて送信出力信号が生成される。生成された送信出力信号は、高周波部107で適切な送信電力へ増幅されるとともに不要な周波数成分が取り除かれ、アンテナ109から電波として放射される。
また、変調部106からの送信出力信号の一部は、高周波部107で分波されて送信出力検波回路108に入力される。送信出力検波回路108は、送信出力の検出結果(送信出力の有無)である送信出力検波信号S108を制御部102へ入力する。つまり、無線機の送信状態の有無を制御部102へ入力する。
制御部102は、送信出力が有(送信状態有)となったときの時刻情報に対応させて、送信出力が有となった旨の情報(送信出力検波信号S108有の情報)と、PTT信号S101有無の情報と、後述する音声検出信号S110有無の情報とを記憶部103へ記録する。
【0019】
一方、マイク104から出力された音声信号S104は、無線機の送信状態と関係なく、音声信号の有無を検出する音声検出回路110に入力される。音声検出回路110は、音声信号の有無を示す検出結果である音声検出信号S110を、制御部102へ入力する。
制御部102は、音声信号が有となったときの時刻情報に対応させて、音声信号が有となった旨の情報(音声検出信号S110有の情報)と、PTT信号S101有無の情報と、送信出力検波信号S108有無の情報とを記憶部103へ記録する。このようにして、音声信号が有となった旨の情報は、無線機の送信状態と関係なく、記憶部103へ記録される。
【0020】
このとき制御部102は、例えば、PTTスイッチ101が押下される時刻以前に音声検出信号S110有を検出した場合、又は、PTTスイッチ101が押下された後、送信準備が完了するまでの期間(送信出力検波信号S108が有となるまでの期間)に音声検出信号S110有を検出した場合等に、送話時の頭切れが発生したことを知らせる警告を、無線機の使用者へ報知する。すなわち、送信出力検波信号S108が有となる前に音声検出信号S110有を検出した場合等に、送話時の頭切れが発生したことを知らせる警告を、無線機の使用者へ報知する。どのような場合に送話時の頭切れが発生したと判定するかについては後述する。
警告の報知方法としては、頭切れが発生した旨を表示部111に表示させるか、又は、スピーカ112から警告音を鳴動させるか、あるいは、その両者を実施する。
【0021】
次に、PTTスイッチ101が押下される前に音声が入力された場合の、送話時の頭切れ判定方法について説明する。図2は、本実施形態においてPTTスイッチ101が押下される前に音声が入力された場合の各信号波形を示す図である。
図2において、201は、PTT信号S101の立上り、つまりPTTスイッチ101が押下された時点(時刻t2)を示す。202は、送信出力検波信号S108の立上り、つまり送信出力検波回路108からの検出結果が送信出力有となった時点(時刻t3)を示す。204は、音声検出信号S110の立上り、つまりマイク104から出力された音声信号S104が音声検出回路110で検出された時点(時刻t1)を示す。203は、音声信号S104の立上り、つまりマイク104に音声が入力開始された時点(時刻t1)を示す。
【0022】
PTTスイッチ101が押下されPTT信号S101の立上り201を検出すると、制御部102は、待受け状態から送信状態への切替を開始し、送信周波数への周波数の固定等の送信準備が完了するまでの送信立上り時間T1(ms)後に、無線機を送信状態にする。送信状態になると、送信出力検波信号S108が立上る。
【0023】
このとき、図2に示すとおり、PTTスイッチ101が押下される前に音声信号S104が出力されると、音声信号S104の立上り203から送信出力検波信号S108の立上り202までのT3(ms)の期間において、音声信号S104は送信されず頭切れとなり、受信側で音声を聞くことができない。
【0024】
図2において、S20は、時刻t1より前の状態であり、PTT信号S101、送信出力検波信号S108、音声検出信号S110がいずれも無の待受け状態である。S21は、時刻t1からt2までの状態であり、PTT信号S101と送信出力検波信号S108が無、音声検出信号S110が有の状態である。S22は、時刻t2からt3までの状態であり、PTT信号S101が有、送信出力検波信号S108が無、音声検出信号S110が有の状態である。S23は、時刻t3以降の状態であり、PTT信号S101、送信出力検波信号S108、音声検出信号S110がいずれも有の状態である。
【0025】
待受け状態S20において、PTTスイッチ101押下前にマイク104から音声信号S104が出力されると、音声検出回路110が出力した音声検出信号S110の立上り204が制御部102へ入力され、PTT信号S101と送信出力検波信号S108が無、音声検出信号S110が有の状態S21へ遷移する。
このとき、制御部102は、音声信号S104が有(音声検出信号S110が有)となったときの時刻情報に対応させて、PTTスイッチ101が押下されてない旨の情報(PTT信号S101が無の情報)、送信出力が有でない旨の情報(送信出力検波信号S108が無の情報)、音声信号が有である旨の情報(音声検出信号S110が有の情報)を、記憶部103へ記録する。
【0026】
状態S21において、PTTスイッチ101が押下され、PTT信号S101の立上り201が制御部102へ入力されると、待受け状態から送信状態への切替が始まり、送信周波数への周波数の固定等の送信準備が開始される。また、PTTスイッチ101が押下されることにより、PTT信号S101が有、送信出力検波信号S108が無、音声検出信号S110が有の状態S22へ遷移する。
このとき、制御部102は、PTTスイッチ101が押下されたとき(PTT信号S101が有となったとき)の時刻情報に対応させて、PTTスイッチ101が押下されている旨の情報(PTT信号S101が有の情報)、送信出力が有でない旨の情報(送信出力検波信号S108が無の情報)、音声信号が有である旨の情報(音声検出信号S110が有の情報)を、記憶部103へ記録する。
【0027】
状態S22において、PTTスイッチ101が押下されてから送信周波数への周波数の固定等の送信準備が完了するまでの送信立上り時間T1(ms)が経過すると、送信出力検波信号S108の立上り202が制御部102へ入力され、PTT信号S101、送信出力検波信号S108、音声検出信号S110がいずれも有の状態S23へ遷移する。
このとき、制御部102は、送信出力が有となったとき(送信出力検波信号S108が有となったとき)の時刻情報に対応させて、PTTスイッチ101が押下されている旨の情報(PTT信号S101が有の情報)、送信出力が有である旨の情報(送信出力検波信号S108が有の情報)、音声信号が有である旨の情報(音声検出信号S110が有の情報)を、記憶部103へ記録する。
【0028】
このように制御部102は、PTT信号S101、送信出力検波信号S108、音声検出信号S110の状態に変化がある度に、それらの状態を、状態変化したときの時刻情報とともに記憶部103へ記録しておく。制御部102は、記憶部103へ記録した状態遷移を監視し、例えば、状態遷移が、PTT信号S101、送信出力検波信号S108、音声検出信号S110がいずれも無の待受け状態S20から、PTT信号S101と送信出力検波信号S108が無、音声検出信号S110が有の状態S21、PTT信号S101が有、送信出力検波信号S108が無、音声検出信号S110が有の状態S22、PTT信号S101、送信出力検波信号S108、音声検出信号S110がいずれも有の状態S23へ遷移した場合に、頭切れが発生していると判定して無線機の表示部111への頭切れ発生の警告表示、またはスピーカ112から頭切れ発生の警告音を鳴動させる。
【0029】
つまり、制御部102は、待受け状態S20から、状態S21、状態S22、状態S23への遷移を検出した場合に、頭切れが発生していると判定して警告を行う。
あるいは、制御部102は、待受け状態S20から、状態S21、状態S23への遷移を検出した場合に、頭切れが発生していると判定して警告を行うようにすることもできる。
あるいは、制御部102は、待受け状態S20から、状態S22、状態S23への遷移を検出した場合に、頭切れが発生していると判定して警告を行うようにすることもできる。
あるいは、制御部102は、状態S22から状態S23への遷移を検出した場合に、頭切れが発生していると判定して警告を行うようにすることもできる。
あるいは、制御部102は、状態S21から状態S23への遷移を検出した場合に、頭切れが発生していると判定して警告を行うようにすることもできる。
【0030】
あるいは、制御部102は、PTT信号S101と送信出力検波信号S108が無、音声検出信号S110が有の状態S21を検出した場合に、頭切れが発生していると判定して警告を行うようにすることもできる。
あるいは、制御部102は、PTT信号S101が有、送信出力検波信号S108が無、音声検出信号S110が有の状態S22を検出した場合に、頭切れが発生していると判定して警告を行うようにすることもできる。
あるいは、制御部102は、状態S21又は状態S22を検出した場合、つまり、PTT信号S101の有無状態に拘らず、送信出力検波信号S108が無で、音声検出信号S110が有の状態を検出した場合に、頭切れが発生していると判定して警告を行うようにすることもできる。
【0031】
次に、PTTスイッチ101が押下された後、送信出力が立上る前に音声が入力された場合の、送話時の頭切れ判定方法について説明する。図3は、本発明の実施形態においてPTTスイッチ101が押下された後、送信出力が立上る前に音声が入力された場合の各信号波形を示す図である。
図3において、301は、PTT信号S101の立上り、つまりPTTスイッチ101が押下された時点(時刻t1)を示す。302は、送信出力検波信号S108の立上り、つまり送信出力検波回路108からの検出結果が送信出力有となった時点(時刻t3)を示す。304は、音声検出信号S110の立上り、つまりマイク104から出力された音声信号S104が音声検出回路110で検出された時点(時刻t2)を示す。303は、音声信号S104の立上り、つまりマイク104に音声が入力開始された時点(時刻t2)を示す。
【0032】
PTTスイッチ101が押下されPTT信号S101の立上り301を検出すると、制御部102は、待受け状態から送信状態への切替を開始し、送信周波数への周波数の固定等の送信準備が完了するまでの送信立上り時間T1(ms)後に、無線機を送信状態にする。送信状態になると、送信出力検波信号S108が立上る。
【0033】
このとき、図3に示すとおり、PTTスイッチ101が押下された後、送信出力検波信号S108が立上る前に音声信号S104が出力されると、音声信号S104の立上り303から送信出力検波信号S108の立上り302までのT3(ms)の期間において、音声信号S104は送信されず頭切れとなり、受信側で音声を聞くことができない。
【0034】
図3において、S30は、時刻t1より前の状態であり、PTT信号S101、送信出力検波信号S108、音声検出信号S110がいずれも無の待受け状態である。S31は、時刻t1からt2までの状態であり、PTT信号S101が有、送信出力検波信号S108と音声検出信号S110が無の状態である。S32は、時刻t2からt3までの状態であり、PTT信号S101が有、送信出力検波信号S108が無、音声検出信号S110が有の状態である。S33は、時刻t3以降の状態であり、PTT信号S101、送信出力検波信号S108、音声検出信号S110がいずれも有の状態である。
【0035】
待受け状態S30において、PTTスイッチ101が押下されると、待受け状態から送信状態への切替が始まり、送信周波数への周波数の固定等の送信準備が開始される。また、PTT信号S101が有、送信出力検波信号S108と音声検出信号S110が無の状態S31へ遷移する。
このとき、制御部102は、PTTスイッチ101が押下されたとき(PTT信号S101が有となったとき)の時刻情報に対応させて、PTTスイッチ101が押下されている旨の情報(PTT信号S101が有の情報)、送信出力が有でない旨の情報(送信出力検波信号S108が無の情報)、音声信号が有でない旨の情報(音声検出信号S110が無の情報)を、記憶部103へ記録する。
【0036】
状態S31において、マイク104から音声信号S104が出力されると、音声検出信号S110の立上り304が制御部102へ入力され、PTT信号S101が有、送信出力検波信号S108が無、音声検出信号S110が有の状態S32へ遷移する。
このとき、制御部102は、音声検出信号S110が立上ったとき(音声検出信号S110が有となったとき)の時刻情報に対応させて、PTTスイッチ101が押下されている旨の情報(PTT信号S101が有の情報)、送信出力が有でない旨の情報(送信出力検波信号S108が無の情報)、音声信号が有である旨の情報(音声検出信号S110が有の情報)を、記憶部103へ記録する。
【0037】
状態S32において、PTTスイッチ101が押下されてから送信周波数への周波数の固定等の送信準備が完了するまでの送信立上り時間T1(ms)が経過すると、送信出力検波信号S108の立上り302が制御部102へ入力され、PTT信号S101、送信出力検波信号S108、音声検出信号S110がいずれも有の状態S33へ遷移する。
このとき、制御部102は、送信出力が有となったとき(送信出力検波信号S108が有となったとき)の時刻情報に対応させて、PTTスイッチ101が押下されている旨の情報(PTT信号S101が有の情報)、送信出力が有である旨の情報(送信出力検波信号S108が有の情報)、音声信号が有である旨の情報(音声検出信号S110が有の情報)を、記憶部103へ記録する。
【0038】
このように制御部102は、PTT信号S101、送信出力検波信号S108、音声検出信号S110の状態に変化がある度に、それらの状態を、状態変化したときの時刻情報とともに記憶部103へ記録しておく。制御部102は、記憶部103へ記録した状態遷移を監視し、例えば、状態遷移が、PTT信号S101、送信出力検波信号S108、音声検出信号S110がいずれも無の待受け状態S30から、PTT信号S101が有、送信出力検波信号S108と音声検出信号S110が無の状態S31、PTT信号S101が有、送信出力検波信号S108が無、音声検出信号S110が有の状態S32、PTT信号S101、送信出力検波信号S108、音声検出信号S110がいずれも有の状態S33へ遷移した場合に、頭切れが発生していると判定して無線機の表示部111への頭切れ発生の警告表示、またはスピーカ112から頭切れ発生の警告音を鳴動させる。
【0039】
つまり、制御部102は、待受け状態S30から、状態S31、状態S32、状態S33への遷移を検出した場合に、頭切れが発生していると判定して警告を行う。
あるいは、制御部102は、待受け状態S30から、状態S32、状態S33への遷移を検出した場合に、頭切れが発生していると判定して警告を行うようにすることもできる。
あるいは、制御部102は、状態S32から状態S33への遷移を検出した場合に、頭切れが発生していると判定して警告を行うようにすることもできる。
【0040】
あるいは、制御部102は、PTT信号S101が有、送信出力検波信号S108が無、音声検出信号S110が有の状態S32を検出した場合に、頭切れが発生していると判定して警告を行うようにすることもできる。
【0041】
本実施形態によれば、少なくとも次の(1)〜(4)の効果を得ることができる。
(1)送話時に頭切れになっていることを送話者に知らせることができるので、頭切れしていることを送話者が認識でき、送話者がPTTスイッチを押下するタイミングと音声入力を開始するタイミングについて自ら調整することが可能となり、送話時の頭切れを抑制することができる。
(2)頭切れが発生していることを、PTT信号S101が有、送信出力検波信号S108が無、音声検出信号S110が有の状態に基づき判断するよう構成した場合は、頭切れ発生を、簡易かつ確実に判断することができる。またこの場合、PTT信号S101が有、送信出力検波信号S108が無、音声検出信号S110が有の状態が揃った時点で判断するので、頭切れ発生を迅速に判断することができる。
(3)頭切れが発生していることを、PTT信号S101が有、送信出力検波信号S108が無、音声検出信号S110が有の状態から、PTT信号S101、送信出力検波信号S108、音声検出信号S110がいずれも有の状態へ遷移したことにより判断するよう構成した場合は、頭切れ発生を、前述の(2)よりも確実に判断することができる。例えば、PTTスイッチが押下されてから送信出力検波信号S108が有となるまでに時間を要するシステムにおいても確実に頭切れと判断することができる。
(4)頭切れが発生していることを、PTT信号S101、送信出力検波信号S108、音声検出信号S110がいずれも無の待受け状態から、PTT信号S101が有、送信出力検波信号S108が無、音声検出信号S110が有の状態を経て、PTT信号S101、送信出力検波信号S108、音声検出信号S110がいずれも有の状態へ遷移したことにより判断するよう構成した場合は、頭切れ発生を、前述の(3)よりも確実に判断することができる。
【0042】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
前記実施形態では、PTTスイッチが押下されなくてもマイクからの音声信号が処理されて送信されるように構成したが、PTTスイッチが押下されていない間は音声信号が送信されず、PTTスイッチが押下されている間のみ音声信号が送信されるよう構成することもできる。
また、本発明は、本発明に係る処理を実行する装置としてだけでなく、方法として、或いは、このような方法を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして把握することができる。
【0043】
本明細書には、少なくとも次の発明が含まれる。
第1の発明は、
無線機を送信状態にする送信スイッチ(PTTスイッチ)と、
音声が入力されると音声信号を出力するマイクと、
前記マイクから出力される音声信号の有無を検出する音声検出部と、
前記マイクから出力される音声信号に基づき送信出力信号を生成する変調部と、
前記変調部から出力される送信出力信号に基づき、当該無線機の送信状態の有無を検出する送信状態検出部と、
前記音声検出部で音声信号有が検出され、かつ前記送信状態検出部で送信状態無が検出された場合に、送話の頭切れが発生したと判定する制御部と、
を備えることを特徴とする無線機。
【0044】
第2の発明は、
前記第1の発明における無線機であって、
前記制御部は、前記送信スイッチが押下状態において、前記音声検出部で音声信号有が検出され、かつ前記送信状態検出部で送信状態無が検出された場合に、送話の頭切れが発生したと判定することを特徴とする無線機。
【0045】
第3の発明は、
前記第1の発明又は前記第2の発明における無線機であって、
表示部又はスピーカを備え、
前記制御部は、送話の頭切れが発生したと判定した場合に、送話の頭切れが発生したことを前記表示部に表示、又は、送話の頭切れが発生したことを報知する警告音を前記スピーカから鳴動させることを特徴とする無線機。
【0046】
第4の発明は、
無線機を送信状態にする送信スイッチ(PTTスイッチ)と、
音声が入力されると音声信号を出力するマイクと、
前記マイクから出力される音声信号の有無を検出する音声検出部と、
前記マイクから出力される音声信号に基づき送信出力信号を生成する変調部と、
前記変調部から出力される送信出力信号に基づき、当該無線機の送信状態の有無を検出する送信状態検出部と、
送話の頭切れ発生を判定する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記送信スイッチが押下され、かつ前記音声検出部で音声信号有が検出され、かつ前記送信状態検出部で送信状態無が検出された状態から、前記送信スイッチが押下され、かつ前記音声検出部で音声信号有が検出され、かつ前記送信状態検出部で送信状態有が検出された状態へ遷移したことにより、送話の頭切れが発生したと判定することを特徴とする無線機。
【0047】
第5の発明は、
前記第4の発明における無線機であって、
前記制御部は、
前記送信スイッチが押下されてなく、かつ前記音声検出部で音声信号無が検出され、かつ前記送信状態検出部で送信状態無が検出された状態から、前記送信スイッチが押下され、かつ前記音声検出部で音声信号有が検出され、かつ前記送信状態検出部で送信状態無が検出された状態を経て、前記送信スイッチが押下され、かつ前記音声検出部で音声信号有が検出され、かつ前記送信状態検出部で送信状態有が検出された状態へ遷移したことにより、送話の頭切れが発生したと判定することを特徴とする無線機。
【符号の説明】
【0048】
101:PTTスイッチ(送信スイッチ)、102:制御部、103:記憶部、104:マイク、105:信号処理部、106:変調部、107:高周波部、108:送信出力検波回路(送信状態検出部)、109:アンテナ、110:音声検出回路(音声検出部)、111:表示部、112:スピーカ、401:PTTスイッチ、402:制御部、404:マイク、405:信号処理部、406:変調部、407:高周波部、408:送信出力検波回路、409:アンテナ、S101:PTT信号、S104:音声信号、S108:送信出力検波信号、S110:音声検出信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線機を送信状態にする送信スイッチと、
音声が入力されると音声信号を出力するマイクと、
前記マイクから出力される音声信号の有無を検出する音声検出部と、
前記マイクから出力される音声信号に基づき送信出力信号を生成する変調部と、
前記変調部から出力される送信出力信号に基づき、当該無線機の送信状態の有無を検出する送信状態検出部と、
前記音声検出部で音声信号有が検出され、かつ前記送信状態検出部で送信状態無が検出された場合に、送話の頭切れが発生したと判定する制御部と、
を備えることを特徴とする無線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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