説明

無線機

【課題】煩雑なメンテナンスを行わなくても周波数精度を高く保つことができ、かつ変調信号による周波数偏移を大きくすることができる無線機を提供する。
【解決手段】基準信号を出力する電圧制御水晶発振器と、高周波信号を出力する電圧制御発振器と、基準信号と高周波信号とが入力され、高周波信号の位相が基準信号と同じになるように位相同期を行う位相同期回路と、参照信号を発生する参照信号発生部と、基準信号の周波数を補正する周波数補正信号を電圧制御水晶発振器に出力するとともに、基準信号と参照信号とに基づき、基準信号の周波数が参照信号の周波数に対して所定の範囲内となるように周波数補正信号の値を変更する制御部と、から無線機を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶発振器からの出力信号を搬送波の基準周波数として用いる無線機のうち、電圧制御水晶発振器(VCXO;Voltage Controlled Xtal Oscillator)の制御電圧を変調信号により変動させることで周波数変調をかける方式の無線機に関し、特に、周波数偏移を大きくしつつ周波数精度を高く保つことのできる無線機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術を図4を用いて説明する。図4は、背景技術における周波数変調方式無線機の変調部電気回路のブロック図である。
図4において、41は、電圧制御水晶発振器、42は位相同期回路、43は電圧制御発振器(VCO;Voltage Controlled Oscillator)、46は制御部である。
【0003】
電圧制御水晶発振器41は、無線機の搬送波の基準周波数(例えば400MHz)の元となる基準信号S41(例えば20MHz)を発生する。電圧制御発振器43は、その周波数制御端子に入力される制御電圧に従って出力である高周波信号S43の周波数を変移させる。位相同期回路42は、電圧制御発振器43の出力信号である高周波信号S43を例えば分周して、電圧制御水晶発振器41から出力される基準信号S41と位相比較するようフィードバック制御を行うことで、高周波信号S43の位相を基準信号S41の位相に同期させ、所望の周波数(基準信号S41の整数倍、例えば400MHz)の高周波信号S43を生成する。なお、位相同期回路42は、基準信号S41の分数倍の高周波信号S43を生成するよう構成することもできる。
【0004】
電圧制御水晶発振器41が出力する基準信号S41の周波数は、電圧制御水晶発振器41の部品バラツキにより、値がばらつく。基準信号S41の周波数を所定の値にするため、調整者による調整が行われ、電圧制御水晶発振器41の周波数制御端子に、調整者の指示に基づき制御部46から出力された周波数補正信号S46が、加算器45を介して印加される。電圧制御水晶発振器41の制御電圧として入力される周波数補正信号S46の値を適切に設定することで、電圧制御水晶発振器41から出力される基準信号S41の周波数を所定の範囲になるよう高精度に保つ。
【0005】
また、図4の変調回路においては、変調信号SH(例えば50〜3000Hz)を、加算器45を介して電圧制御水晶発振器41の周波数制御端子に印加し、かつ、電圧制御発振器43の周波数制御端子に印加することにより、電圧制御発振器43から出力される高周波信号S43に周波数変調をかける構成となっている。
これは、電圧制御発振器43における変調は、高周波信号S43が位相同期回路42及び不図示のローパスフィルタ(LPF:例えばカットオフ周波数が1kHz)等を経由してループするので、音声信号等の比較的高周波領域(例えば1〜3kHz)の変調には適しているが、比較的低周波領域(例えば1kHz以下)の変調には不適であるためである。そこで、比較的低周波領域の信号に対しては、電圧制御水晶発振器41で変調するようにしている。
【0006】
下記の特許文献1には、移動通信端末にクロック生成回路を有する長波標準電波時計を内蔵し、基地局からの電波を受信できないサービスエリア外となった場合に、該電波時計からの正確なクロックをマイコンに送り、マイコンで電圧制御水晶発振器からの発振周波数を分周した信号と比較し、差がなくなるように電圧制御水晶発振器の制御電圧を調整することにより、電圧制御水晶発振器が正確な発振周波数を維持することが開示されている。
また、下記の特許文献2には、基準発振器と、該基準発振器からの基準周波数信号を入力して送信中間周波信号を生成する送信中間周波PLL回路とを備え、基準発振器と送信中間周波PLL回路を構成するVCOとに対し、変調信号を入力して周波数変調を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−206276公報
【特許文献2】特開2006−60730公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した背景技術の変調回路では、基準信号S41を発生する電圧制御水晶発振器41の経年変化に伴う周波数ずれにより、基準信号S41の周波数精度が悪化するため、定期的に電圧制御水晶発振器41の周波数調整を行う必要があり、メンテナンスが煩雑であるという課題がある。
また、電圧制御水晶発振器41として、温度制御型水晶発振器(OCXO;Oven Controlled Xtal Oscillator)等の高精度で高安定な部品を用いた場合、周波数可変幅が狭いため変調信号による周波数偏移が小さくなってしまい、所望の変調度が得られない場合がある。
前述の特許文献1や特許文献2には、これらの課題やその解決手段についての開示はない。
本発明は、上記背景技術に鑑みて為されたもので、電圧制御水晶発振器の制御電圧を変動させることで周波数変調をかける方式の変調回路において、煩雑なメンテナンスを行わなくても周波数精度を高く保つことができ、かつ変調信号による周波数偏移を大きくすることができる変調技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための、本発明に係る無線機の代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
第1の周波数制御端子を有し、該第1の周波数制御端子に入力される制御電圧に従って出力する基準信号の周波数を変化させる電圧制御水晶発振器と、
第2の周波数制御端子を有し、該第2の周波数制御端子に入力される制御電圧に従って出力する高周波信号の周波数を変化させる電圧制御発振器と、
前記電圧制御水晶発振器からの基準信号と前記電圧制御発振器からの高周波信号とが入力され、前記高周波信号の位相が前記基準信号の位相と同じになるように、前記第2の周波数制御端子に対する位相同期用信号を出力して位相同期を行う位相同期回路と、
参照信号を発生する参照信号発生部と、
前記基準信号の周波数を補正する周波数補正信号を、前記電圧制御水晶発振器の第1の周波数制御端子に対し出力するとともに、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数との差が所定の範囲内にあるか否か判定し、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数との差が所定の範囲内にある場合は、前記周波数補正信号の値を変更せず、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数との差が所定の範囲内にない場合は、前記基準信号の周波数が前記参照信号の周波数に対し前記所定の範囲内となるように、前記周波数補正信号の値を変更する制御部と、
を備えることを特徴とする無線機。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、煩雑なメンテナンスを行わなくても周波数精度を高く保つことができ、かつ変調信号による周波数偏移を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る無線機の構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る無線機の変調部の構成ブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る無線機の周波数補正制御シーケンスを示す図である。
【図4】背景技術における変調部の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図3を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る無線機の構成例を示す図である。
図1において、1は、基地局や他の無線機との間で無線信号を送受信するための空中線(アンテナ)、2は、送信時と受信時で空中線を切換え接続する空中線スイッチ、3は、受信した高周波受信信号を増幅する高周波増幅部、4は、高周波受信信号を後述のローカル信号と混合し、中間周波信号(IF)に周波数変換する受信ミキサ、5は、中間周波信号を復調する復調部、6は、復調された信号を音声信号等に信号処理し、あるいは音声増幅する受信信号処理部、7は、音声信号を音声として出力するスピーカ、8は、ローカル信号を生成し受信ミキサ4に出力する受信用周波数シンセサイザである。
【0013】
また、11は、音声が入力されるマイク、12は、マイク11から入力された音声信号を増幅する送信信号処理部、13は、送信信号処理部12からの信号に基づき変調信号を生成する変調信号生成部、14は、搬送波の生成および該生成した搬送波を変調信号生成部13からの変調信号により周波数変調する搬送波生成変調部、15は、高周波送信信号を電力増幅する送信電力増幅部である。搬送波生成変調部14の構成については後述する。
【0014】
16は、搬送波生成変調部14等を含む無線機の各構成部を制御する制御部、18は、制御部16により各種情報が記憶される記憶部である。
制御部16は、ハードウエア構成としては、CPU(Central Processing Unit)と制御部16の動作プログラム等を格納するメモリを備えており、CPUは、この動作プログラムに従って動作する。
【0015】
本実施形態の無線機の受信、送信動作について、図1を用いて説明する。
受信は、基地局や他の無線機からの無線信号が空中線1で受信され、空中線スイッチ2を介して受信部の高周波増幅部3で高周波増幅され、受信ミキサ4で中間周波信号に周波数変換される。中間周波信号は、復調部5に送られデータが復調される。受信信号処理部6で音声信号等に信号処理され、あるいは音声増幅処理され、スピーカ7に出力される。
【0016】
送信は、マイク11から入力された音声信号が、送信信号処理部12にて音声増幅処理され、変調信号生成部13で変調信号(例えば50〜3000Hz)が生成された後、搬送波生成変調部14で周波数変調され、送信電力増幅部15で電力増幅されたあと、空中線スイッチ2を介して空中線1から基地局や他の無線機に対し送信される。
また、通信チャネルの切換は、制御部16が受信用周波数シンセサイザ8や搬送波生成変調部14の送信用周波数シンセサイザを制御して、ローカル信号や電圧制御水晶発振器21からの出力信号の周波数を切換えることにより行う。なお、送信用周波数シンセサイザは、後述する電圧制御水晶発振器21、位相同期回路22、電圧制御発振器23で構成される。
【0017】
次に、図2を用いて、搬送波生成変調部14の構成を説明する。図2は、本発明の実施形態に係る無線機の搬送波生成変調部の構成ブロック図である。
図2において、21は、第1の周波数制御端子を有し、該第1の周波数制御端子に入力される制御電圧に従って、出力される基準信号S21の周波数を変化させる電圧制御水晶発振器である。電圧制御水晶発振器21は、水晶発振器を内蔵しており、水晶発振器により定まる所定の周波数(例えば20MHz)を中心にして、周波数を変化させる。
23は、第2の周波数制御端子を有し、該第2の周波数制御端子に入力される制御電圧に従って、出力される高周波信号の周波数(例えば400MHz)を変化させる電圧制御発振器である。この電圧制御発振器23は、水晶発振器を内蔵していないので、電圧制御水晶発振器21よりも広範囲に出力周波数を偏移させることができる。第2の周波数制御端子は、図2の例では2ヶ所(a,b)設けられており、周波数制御端子aと周波数制御端子bとから構成される。
【0018】
22は、電圧制御水晶発振器21からの基準信号S21(例えば20MHz)と電圧制御発振器23からの高周波信号S23(例えば400MHz)とが入力され、高周波信号S23の位相が基準信号S21の位相と同じになるように、電圧制御発振器23の第2の周波数制御端子に対し位相同期用信号S22を出力して位相同期を行う位相同期回路である。
位相同期回路22は、高周波信号S23と基準信号S21とを位相比較しフィードバック制御を行うことで、所望の周波数(例えば400MHz)の高周波信号S23を生成する。
位相同期回路22と電圧制御発振器23の間には、回路のマッチング上、不要波をカットするために必要な場合は、低周波信号(例えば1kHz以下)のみを通過させるLPF(不図示)を設けるように構成してもよい。
【0019】
制御部16は、電圧制御水晶発振器21から出力される基準信号S21の周波数(f1)を補正するための周波数補正信号S16を、加算器26を介して、電圧制御水晶発振器21の第1の周波数制御端子に対し出力する。
25は、周波数f2の参照信号S25を発生する参照信号発生部である。参照信号S25は、周波数の経時変化が少なくとも基準信号S21よりも小さいように設定される。参照信号S25は、例えば、温度制御型水晶発振器からの出力信号や、全地球測位システム(GPS)の時間情報の周波数(例えば1.57542GHz)や、又は、JJY(登録商標)無線局のキャリア周波数(例えば40kHz又は60kHz)等を用いることができる。参照信号発生部25は、例えば、温度制御型水晶発振器であり、あるいは、全地球測位システムやJJY(登録商標)無線局からの電波を受信して、該受信した電波から周波数情報を検出するアンテナ(不図示)や受信信号処理部(不図示)等で構成される。
【0020】
24は、電圧制御水晶発振器21からの基準信号S21と参照信号S25とが入力され、基準信号S21の周波数と参照信号S25の周波数との差を示す差分情報S24を、制御部16に対し出力する周波数比較回路である。
周波数比較回路24は、電圧制御水晶発振器21からの基準信号S21と参照信号S25の周波数を比較し、両者の周波数の差分情報S24を制御部16に伝達する。この差分情報S24を元に、制御部16は、基準信号S21の周波数が参照信号S25の周波数に対し所定の範囲内となるように、周波数補正信号S16の値を適切に制御する。この周波数の所定の範囲は、予め無線機の操作部(不図示)から操作者によって記憶部18に設定され記憶されており、制御部16は、記憶部18から該所定の範囲を読み出して制御する。このようにして、電圧制御水晶発振器21が出力する基準信号S21の周波数精度を所定の範囲内として高精度に保つことができる。
【0021】
以上の構成において、電圧制御発振器23の第2の周波数制御端子と、電圧制御水晶発振器21の第1の周波数制御端子に対し、変調信号SHを印加することにより、電圧制御発振器23から出力される高周波信号に周波数変調をかける構成となっている。図2の例では、変調信号SHは、加算器26を介して電圧制御水晶発振器21の第1の周波数制御端子に印加され、電圧制御発振器23の第2の周波数制御端子である周波数制御端子bに印加される。
なお、電圧制御発振器23の第2の周波数制御端子が1ヶ所だけの構成の場合は、第2の周波数制御端子に、位相同期回路22からの出力信号S22と変調信号SHとが加算されて印加されるように構成することができる。
【0022】
この変調回路において、変調信号SH(例えば50〜3000Hz)による出力周波数偏移の最大値は、電圧制御発振器23および電圧制御水晶発振器21の周波数可変幅によって決定され、電圧制御水晶発振器21の出力の周波数精度は、参照信号S25の周波数精度によって決定される。一般に電圧制御水晶発振器21は、出力周波数偏移を大きくすると周波数精度が悪くなるというトレードオフの部品特性を有する。しかしながら、本実施形態の変調回路では、電圧制御水晶発振器21の出力周波数偏移を大きくしつつも、参照信号S25として、温度制御型水晶発振器の出力信号や、全地球測位システムの時間情報、JJY(登録商標)無線局のキャリア周波数等の、電圧制御水晶発振器21よりも高精度で高安定な信号を用いることにより、周波数偏移を大きくしつつ周波数精度を高く保つことが可能となる。
【0023】
次に、本発明の実施形態に係る無線機の周波数補正制御の一例を、図3を用いて説明する。図3は、本発明の実施形態に係る無線機制御部の周波数補正制御シーケンスを示す図である。この周波数補正制御は、制御部16により、周期的に、例えば1日ごとに実施されるが、その周期はより短くてもよいし、あるいは長くてもよく、また、周期的でなく必要に応じ間欠的に実施するようにしてもよい。
【0024】
図3において制御開始後、制御部16は、無線機が送信状態か否かを確認し(図3のステップS1)、送信状態の場合は(ステップS1でYes)、周波数補正信号S16の値の調整を行わない(ステップS7)。これは、送信状態においては、電圧制御水晶発振器21の出力には変調信号SHによる周波数変調がかかっており、周波数補正信号S16の値の調整には適していないためである。
【0025】
無線機が送信中ではなかった場合は(ステップS1でNo)、周波数比較回路24において、電圧制御水晶発振器21からの基準信号S21の周波数(f1)と、参照信号S25の周波数(f2)とを比較し(ステップS2)、制御部16により周波数補正信号S16の値の変更要否を判定、すなわち、基準信号S21と参照信号S25との周波数差が、記憶部18に記憶した所定の周波数差の範囲内であるか否かを判定する。
【0026】
f1とf2が等しい場合やf1とf2の差が所定の範囲内にある場合は(ステップS2でf1=f2)、電圧制御水晶発振器21の周波数は所望の値に保たれていると判断し、周波数補正信号S16の値の変更は行わず(ステップS4)、本周波数補正制御処理を終了する。
【0027】
f1とf2の差が所定の範囲内になく、かつf1がf2よりも低い周波数であった場合は(ステップS2でf1<f2)、電圧制御水晶発振器21からの基準信号S21の周波数を所望の値に近付けるため、つまり所定の範囲内にするために、周波数補正信号S16の値を大きくする(ステップS3)。f1とf2の差が所定の範囲内になると、そのときの周波数補正信号S16の値を、そのときのf1とf2の値と対応させて、そのときの日時情報とともに記憶部18に記憶する。あるいは、f1とf2が等しくなったときの周波数補正信号S16の値を、記憶部18内の不揮発性メモリの記憶場所に上書きして記憶する(ステップS6)。
【0028】
f1とf2の差が所定の範囲内になく、かつf1がf2よりも高い周波数であった場合は(ステップS2でf1>f2)、電圧制御水晶発振器21からの基準信号S21の周波数を所望の値に近付けるため、つまり所定の範囲内にするために、周波数補正信号S16の値を小さくする(ステップS5)。f1とf2の差が所定の範囲内になると、そのときの周波数補正信号S16の値を、そのときのf1とf2の値と対応させて、そのときの日時情報とともに記憶部18に記憶する。あるいは、f1とf2が等しくなったときの周波数補正信号S16の値を、記憶部18内の不揮発性メモリの記憶場所に上書きして記憶する(ステップS6)。
【0029】
前述のステップS3又はステップS5を行った場合、つまり、周波数補正信号S16の設定値を変更した場合は、前述したように、変更後の周波数補正信号S16の設定値を、そのときのf1とf2の値と対応させて、そのときの日時情報とともに時系列に、記憶部18内の不揮発性メモリに保存しておく。あるいは、f1とf2が等しくなったときの周波数補正信号S16の値を、記憶部18内の不揮発性メモリの記憶場所に上書きして記憶する。
【0030】
以後に実施する周波数補正制御動作において、例えば、全地球測位システムの時間情報やJJY(登録商標)無線局のキャリア周波数を受信できず、参照信号S25が周波数比較回路24に入力されないときは、制御部16は、周波数補正信号S16の設定値として、記憶部18に保存しておいた設定値を用いる。
このとき、f1とf2の値と日時情報とともに時系列に周波数補正信号S16を複数記憶していた場合は、直近の周波数補正信号S16の値を用いてもよいし、あるいは、複数のf1とf2の値のデータから補間法によりf1とf2が等しくなるような周波数補正信号S16の値を推定して用いてもよい。
【0031】
以上説明した周波数補正制御を適宜、例えば周期的に繰り返すことにより、電圧制御水晶発振器21からの基準信号S21の周波数を、参照信号S25の周波数と同等程度の所定の範囲内に保つことができる。
【0032】
以上説明した実施形態によれば、少なくとも次の(1)〜(8)の効果を得ることができる。
(1)搬送波の周波数の元となる基準信号を発生する電圧制御水晶発振器と、高周波信号を発生する電圧制御発振器と、高周波信号と基準信号の位相が同じになるように位相同期を行う位相同期回路とを備え、電圧制御水晶発振器と電圧制御発振器に変調信号を入力することにより周波数変調をかける変調回路において、基準信号を発生する電圧制御水晶発振器の周波数制御端子に、参照信号と基準信号との周波数差に基づく周波数補正信号を入力し、基準信号の周波数が参照信号の周波数に対し所定の範囲内となるよう周波数補正制御を行うようにしたので、基準信号の周波数精度を高く保つことができ、かつ変調信号による周波数偏移を大きくすることができる。
(2)前述の(1)における周波数補正制御を周期的に行うようにしたので、継続して持続的に、基準信号の周波数精度を高く保つことができ、かつ変調信号による周波数偏移を大きくすることができる。
(3)電圧制御水晶発振器が出力した基準信号の周波数が参照信号の周波数に対し所定の範囲内となるように、周波数補正信号を電圧制御水晶発振器の周波数制御端子に印加し、基準信号の周波数が参照信号の周波数に対し所定の範囲内である場合に、その周波数補正信号の値を記憶部に保存するようにしたので、参照信号がないときにおいても、保存しておいた周波数補正信号の値を電圧制御水晶発振器の周波数制御端子に印加することにより、基準信号の周波数精度を高く保つことができる。
(4)前述の(3)において、周波数補正信号の値を保存する記憶部を不揮発性メモリで構成したので、無線機の電源が切断された後、投入された場合においても、速やかに周波数精度の高い基準信号を出力することができる。
(5)前述の(3)において、基準信号の周波数が参照信号の周波数に一致する場合に、その周波数補正信号の値を記憶部に保存するようにしたので、より基準信号の周波数精度を高く保つことができる。あるいは、基準信号の周波数が参照信号の周波数に一致しないが所定の範囲内となる場合に、その周波数補正信号の値を記憶部に保存するようにしたので、周波数補正制御を簡易にし短時間で行うことができる。
(6)前述の(3)において、変更後の周波数補正信号S16の設定値を、そのときのf1とf2の値と対応させて、そのときの日時情報とともに時系列に、記憶部18内に保存し、複数のf1とf2の値のデータから補間法によりf1とf2が等しくなるような周波数補正信号S16を推定して用いるので、より基準信号の周波数精度を高く保つことができる。
(7)参照信号として、全地球測位システムの時間情報又はJJY(登録商標)無線局のキャリア信号等の無線機外部から受信する一定周波数の信号を用いる場合は、メンテナンスを不要にすることができ、基準信号の周波数精度を高く保つことができ、さらに無線機を安価に構成できる。
(8)参照信号として、温度制御型水晶発振器の出力信号を用いる場合は、メンテナンス間隔を長くすることができ、基準信号の周波数精度を高く保つことができる。
【0033】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
上述の実施形態では、電圧制御水晶発振器の出力である基準信号と参照信号との比較に周波数比較回路を使用したが、位相同期回路に具備された周波数比較機能等を用いることもできる。
また、上述の実施形態では、制御部と別に周波数比較回路を設けたが、制御部に周波数比較機能を持たせ、基準信号と参照信号を制御部に入力して、基準信号の周波数が参照信号の周波数に対して所定の範囲内にあるか否かを判定するように構成してもよい。
また、本発明は、本発明に係る処理を実行する装置としてだけでなく、方法やシステムとして、或いは、このような方法やシステムを実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして把握することができる。
【0034】
本明細書の記載事項には、少なくとも次の発明が含まれる。
第1の発明は、
第1の周波数制御端子を有し、該第1の周波数制御端子に入力される制御電圧に従って出力する基準信号の周波数を変化させる電圧制御水晶発振器と、
第2の周波数制御端子を有し、該第2の周波数制御端子に入力される制御電圧に従って出力する高周波信号の周波数を変化させる電圧制御発振器と、
前記電圧制御水晶発振器からの基準信号と前記電圧制御発振器からの高周波信号とが入力され、前記高周波信号の位相が前記基準信号の位相と同じになるように、前記第2の周波数制御端子に対する位相同期用信号を出力して位相同期を行う位相同期回路と、
参照信号を発生する参照信号発生部と、
前記基準信号の周波数を補正する周波数補正信号を、前記電圧制御水晶発振器の第1の周波数制御端子に対し出力するとともに、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数との差が所定の範囲内にあるか否か周期的に判定し、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数との差が所定の範囲内にある場合は、前記周波数補正信号の値を変更せず、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数との差が所定の範囲内にない場合は、前記基準信号の周波数が前記参照信号の周波数に対し前記所定の範囲内となるように、前記周波数補正信号の値を変更する制御部と、
を備えることを特徴とする無線機。
ここで、所定の範囲内とは、基準信号の周波数と参照信号の周波数とが同一である場合も含む。
【0035】
第2の発明は、
第1の周波数制御端子を有し、該第1の周波数制御端子に入力される制御電圧に従って出力する基準信号の周波数を変化させる電圧制御水晶発振器と、
第2の周波数制御端子を有し、該第2の周波数制御端子に入力される制御電圧に従って出力する高周波信号の周波数を変化させる電圧制御発振器と、
前記電圧制御水晶発振器からの基準信号と前記電圧制御発振器からの高周波信号とが入力され、前記高周波信号の位相が前記基準信号の位相と同じになるように、前記第2の周波数制御端子に対する位相同期用信号を出力して位相同期を行う位相同期回路と、
参照信号を発生する参照信号発生部と、
前記基準信号の周波数を補正する周波数補正信号を、前記電圧制御水晶発振器の第1の周波数制御端子に対し出力するとともに、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数との差が所定の範囲内にあるか否か判定し、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数との差が所定の範囲内にある場合は、前記周波数補正信号の値を変更せず、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数との差が所定の範囲内にない場合は、前記基準信号の周波数が前記参照信号の周波数に対し前記所定の範囲内となるように、前記周波数補正信号の値を変更する制御部と、
前記周波数補正信号の値を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、
前記基準信号の周波数が前記参照信号の周波数に対し所定の範囲内である場合に、前記周波数補正信号の値を前記記憶部に記憶し、前記参照信号がないときにおいて、前記記憶した周波数補正信号の値を読み出して、前記電圧制御水晶発振器に出力することを特徴とする無線機。
【0036】
第3の発明は、
第1の発明又は第2の発明における無線機であって、
前記参照信号は、当該無線機の外部から受信した周波数信号であることを特徴とする無線機。
ここで、当該無線機の外部から受信した周波数信号とは、全地球測位システムの時間情報、又はJJY(登録商標)無線局のキャリア信号等である。
【0037】
第4の発明は、
第1の発明又は第2の発明における無線機であって、
さらに温度制御型水晶発振器を備え、
前記参照信号は、前記温度制御型水晶発振器から出力されることを特徴とする無線機。
【0038】
第5の発明は、
第1の発明ないし第4の発明における無線機であって、
前記制御部は、
前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数とが一致する場合は、前記周波数補正信号の値を変更せず、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数とが一致しない場合は、前記基準信号の周波数が前記参照信号の周波数に一致するように、前記周波数補正信号の値を変更することを特徴とする無線機。
【0039】
第6の発明は、
第1の周波数制御端子を有し、該第1の周波数制御端子に入力される制御電圧に従って出力する基準信号の周波数を変化させる電圧制御水晶発振器と、
第2の周波数制御端子を有し、該第2の周波数制御端子に入力される制御電圧に従って出力する高周波信号の周波数を変化させる電圧制御発振器と、
前記電圧制御水晶発振器からの基準信号と前記電圧制御発振器からの高周波信号とが入力され、前記高周波信号の位相が前記基準信号の位相と同じになるように、前記第2の周波数制御端子に対する位相同期用信号を出力して位相同期を行う位相同期回路と、
参照信号を発生する参照信号発生部と、
前記基準信号の周波数を補正する周波数補正信号を、前記電圧制御水晶発振器の第1の周波数制御端子に対し出力するとともに、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数との差が所定の範囲内にあるか否か判定し、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数との差が所定の範囲内にある場合は、前記周波数補正信号の値を変更せず、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数との差が所定の範囲内にない場合は、前記基準信号の周波数が前記参照信号の周波数に対し前記所定の範囲内となるように、前記周波数補正信号の値を変更する制御部と、
を備えることを特徴とする無線機。
ここで、所定の範囲内とは、基準信号の周波数と参照信号の周波数とが同一である場合も含む。
【符号の説明】
【0040】
1:空中線、2:空中線スイッチ、3:高周波増幅部、4:受信ミキサ、5:復調部、6:受信信号処理部、7:スピーカ、8:受信用周波数シンセサイザ、11:マイク、12:送信信号処理部、13:変調信号生成部、14:搬送波生成変調部、15:送信電力増幅部、16:制御部、18:記憶部、21:電圧制御水晶発振器(VCXO)、22:位相同期回路、23:電圧制御発振器(VCO)、24:周波数比較回路、25:参照信号発生部、26:加算器、41:電圧制御水晶発振器(VCXO)、42:位相同期回路、43:電圧制御発振器(VCO)、46:制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数制御端子を有し、該第1の周波数制御端子に入力される制御電圧に従って出力する基準信号の周波数を変化させる電圧制御水晶発振器と、
第2の周波数制御端子を有し、該第2の周波数制御端子に入力される制御電圧に従って出力する高周波信号の周波数を変化させる電圧制御発振器と、
前記電圧制御水晶発振器からの基準信号と前記電圧制御発振器からの高周波信号とが入力され、前記高周波信号の位相が前記基準信号の位相と同じになるように、前記第2の周波数制御端子に対する位相同期用信号を出力して位相同期を行う位相同期回路と、
参照信号を発生する参照信号発生部と、
前記基準信号の周波数を補正する周波数補正信号を、前記電圧制御水晶発振器の第1の周波数制御端子に対し出力するとともに、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数との差が所定の範囲内にあるか否か周期的に判定し、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数との差が所定の範囲内にある場合は、前記周波数補正信号の値を変更せず、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数との差が所定の範囲内にない場合は、前記基準信号の周波数が前記参照信号の周波数に対し前記所定の範囲内となるように、前記周波数補正信号の値を変更する制御部と、
を備えることを特徴とする無線機。
【請求項2】
第1の周波数制御端子を有し、該第1の周波数制御端子に入力される制御電圧に従って出力する基準信号の周波数を変化させる電圧制御水晶発振器と、
第2の周波数制御端子を有し、該第2の周波数制御端子に入力される制御電圧に従って出力する高周波信号の周波数を変化させる電圧制御発振器と、
前記電圧制御水晶発振器からの基準信号と前記電圧制御発振器からの高周波信号とが入力され、前記高周波信号の位相が前記基準信号の位相と同じになるように、前記第2の周波数制御端子に対する位相同期用信号を出力して位相同期を行う位相同期回路と、
参照信号を発生する参照信号発生部と、
前記基準信号の周波数を補正する周波数補正信号を、前記電圧制御水晶発振器の第1の周波数制御端子に対し出力するとともに、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数との差が所定の範囲内にあるか否か判定し、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数との差が所定の範囲内にある場合は、前記周波数補正信号の値を変更せず、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数との差が所定の範囲内にない場合は、前記基準信号の周波数が前記参照信号の周波数に対し前記所定の範囲内となるように、前記周波数補正信号の値を変更する制御部と、
前記周波数補正信号の値を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、
前記基準信号の周波数が前記参照信号の周波数に対し所定の範囲内である場合に、前記周波数補正信号の値を前記記憶部に記憶し、前記参照信号がないときにおいて、前記記憶した周波数補正信号の値を読み出して、前記電圧制御水晶発振器に出力することを特徴とする無線機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された無線機であって、
前記参照信号は、当該無線機の外部から受信した周波数信号、又は当該無線機が備える温度制御型水晶発振器から出力される周波数信号であることを特徴とする無線機。
【請求項4】
第1の周波数制御端子を有し、該第1の周波数制御端子に入力される制御電圧に従って出力する基準信号の周波数を変化させる電圧制御水晶発振器と、
第2の周波数制御端子を有し、該第2の周波数制御端子に入力される制御電圧に従って出力する高周波信号の周波数を変化させる電圧制御発振器と、
前記電圧制御水晶発振器からの基準信号と前記電圧制御発振器からの高周波信号とが入力され、前記高周波信号の位相が前記基準信号の位相と同じになるように、前記第2の周波数制御端子に対する位相同期用信号を出力して位相同期を行う位相同期回路と、
参照信号を発生する参照信号発生部と、
前記基準信号の周波数を補正する周波数補正信号を、前記電圧制御水晶発振器の第1の周波数制御端子に対し出力するとともに、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数との差が所定の範囲内にあるか否か判定し、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数との差が所定の範囲内にある場合は、前記周波数補正信号の値を変更せず、前記基準信号の周波数と前記参照信号の周波数との差が所定の範囲内にない場合は、前記基準信号の周波数が前記参照信号の周波数に対し前記所定の範囲内となるように、前記周波数補正信号の値を変更する制御部と、
を備えることを特徴とする無線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−70126(P2013−70126A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205508(P2011−205508)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】