説明

無線測位システムおよび無線測位装置

【課題】照明設備に近接して設置された無線基地局と、移動端末との間で、一方向通信もしくは時分割で双方向通信を行うことによって、移動端末、RFIDタグ、もしくはこれらの両方の2次元もしくは3次元の位置を高精度で測位できる無線測位システムおよび無線測位装置を安価に実現する。
【解決手段】無線信号を用いて2次元もしくは3次元の位置を測位するために、無線基地局を照明設備の内部もしくは外部に近接して設置し、前記照明設備に電力を供給するための配電ケーブルをツイストペアとし、前記配電ケーブルを介して照明設備と無線基地局とに電力を給電するとともに、前記無線基地局にデジタル信号を伝送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線基地局と、移動端末、RFIDタグ、もしくはこれらの両方との間で、無線信号を用いて一方向通信あるいは時分割で双方向通信を行うことで、移動端末、RFIDタグ、もしくはこれらの両方の2次元もしくは3次元の位置を高精度で測位するための無線測位システムおよび無線測位装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、無線信号を用いて測位する無線測位システムが提案されている。(例えば、特許文献1〜3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−253494号
【特許文献2】特開2006−023261号
【特許文献3】特開2007−010639号
【0004】
特許文献1に記載されている「無線通信端末、無線測位システム、照明システム、空調システム、及び駐車場管理システム」では、マルチパスによる影響を低減し、測距精度を向上させることができる無線通信端末、無線測位システム、照明システム、空調システム、及び駐車場管理システムを得るために、無線信号を送受信する機能を有する複数の無線通信端末によって構成され、無線信号の送信から当該無線信号の応答を受信するまでの時間に基づいて、無線通信端末間の距離を求める無線測距システムにおける無線通信端末であって、所定方向に指向性を有し、無線信号を送受信するアンテナを備えたものである。
【0005】
前記無線通信端末が照明システムに適用された場合には、予め設定された複数の測距端末器具と照明器具との間の距離を算出し、算出した各距離データを位置計算端末に送信し、位置計算端末の位置算出手段は、前記距離データと、予め設定された複数の測距端末の位置とを元に、例えば三辺測量などの方法により、被測距端末の位置、及び照明器具の位置を算出する。
上記のように、従来の「無線通信端末、無線測位システム、照明システム、空調システム、及び駐車場管理システム」では、複数の測距端末と照明器具との間の距離を算出し、照明器具の位置を位置計算端末で測位するものであり、複数の測距端末を設置する必要があり、経済的な方法では無い問題点がある。
【0006】
一方、特許文献2に記載されている従来の「アクティブタグ装置」では、発信手段1の指向性アンテナの方向31に対向して受信手段2の指向性アンテナ21aと21bを向け、発信手段1が高周波信号を発信中に指向性アンテナ21aと21bを切替えた時に受信した高周波信号のタイミングあるいは振幅あるいは周波数あるいは位相あるいはこれらの組み合わせの変化をリアルタイムで検知し、当該発信手段1が位置する方向を検知し、当該発信手段1と受信手段2の距離を検知するとされているが、当該発信手段1と受信手段2の距離を検知する手段あるいは方法が明確にされておらず、また、照明装置との関連が訴求がなされていない問題点がある。
【0007】
また、特許文献3に記載されている従来の「アクティブタグ装置」では、固定される側の発信手段に複数のアンテナを接続し、当該アンテナから個別のシステム同期信号と同期しあるいは直交する複数の測定用信号を周期的に発信し、移動体が携帯する受信手段において当該システム同期信号を受信して相対距離と方向を検知し、相対距離が短いものの平均値から方向を検知することで高い精度で方向を検知するとされているが、相対距離と方向を高精度で検知するための当該システム同期信号あるいは個別の同期信号の役割が記述されたおらず、また、一方向通信によって距離を測定することによっては十分な測位精度が得られないこと、また、照明装置との関連が訴求されていないことなどの問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、照明設備の周辺あるいは内部に設置された無線基地局と、移動端末、RFIDタグ、もしくはこれらの両方との間で、無線信号を用いて、一方向通信あるいは時分割による双方向通信を行うことによって、移動端末、RFIDタグ、もしくはこれらの両方の2次元もしくは3次元の位置を高精度で、しかも短時間で検知するための無線測位システムおよび無線測位装置を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係わる無線測位システムおよび無線測位装置は、照明設備の周辺あるいは内部に設置され、無線信号を用いて2次元もしくは3次元の位置を高精度で測位するためのものであり、前記照明設備に電力を供給するための伝送ケーブルと、前記伝送ケーブルを介して電力の供給を受け、方向と距離とを測定して位置を測位するための無線基地局と、前記伝送ケーブルにデジタル信号を重畳しあるいはデジタル信号を分離するための分岐器と、移動端末、RFIDタグ、もしくはこれらの両方とから構成され、前記無線基地局を、照明設備の近くの天井などに、搭載する複数の指向性アンテナの指向性の方向を真下方向に向けて設置することで、マルチパスの影響を軽減し、高精度の測位を可能とする。
【0010】
ここで、前記伝送ケーブルが、少なくとも、前記伝送されるデジタル信号が電磁波信号として外部へ漏洩することを抑止するための漏洩抑止手段を有し、前記無線基地局が、少なくとも、前記無線信号を間欠発信しあるいは受信するための発受信手段と、前記発受信手段を制御するための制御手段と、前記無線信号の1波長以下の間隔で設置された複数の指向性アンテナと、前記複数の指向性アンテナを周期的に切替えるためのアンテナ切替手段とを有し、かつ前記移動端末、RFIDタグ、もしくはこれらの両方が、無線信号を間欠発信しあるいは受信するための発受信手段と、前記発信手段を制御するための制御手段と、前記無線基地局の指向性アンテナと対向する指向性の方向を有する任意の数の指向性アンテナとを有する。
また、複数の無線基地局を照明設備の内部または近辺に配置することで、設備費のみでなく工事費も削減できる。
【発明の効果】
【0011】
上記のように、本発明によれば、無線信号を用いて一方向通信あるいは時分割で双方向通信を行うことで、移動端末、RFIDタグ、もしくはこれらの両方の2次元もしくは3次元の位置を高精度でしかもリアルタイムで検知するための無線測位システムおよび無線測位装置を安価に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態による無線測位システムの構成図
【図2】本発明の第1の実施の形態による無線測位システムの他の構成図
【図3】本発明の第1の実施の形態による無線測位システムの他の構成図
【図4】本発明の伝送ケーブルの断面図
【図5】本発明の伝送ケーブルの他の断面図
【図6】本発明の照明手段の外観図
【図7】本発明のLEDおよび指向性アンテナ素子の組立図
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明に係わる無線測位システムおよび無線測位装置は、図1〜図4、および請求項1に本発明の実施の形態を示すように、照明設備に近接して設置され、無線信号を用いて2次元もしくは3次元の位置を測位するための無線測位システムにおいて、
前記無線測位システムが、前記照明設備に電力を供給するための伝送ケーブルと、前記伝送ケーブルを介して電力の供給を受ける無線基地局と、前記伝送ケーブルにデジタル信号を重畳しあるいはデジタル信号を分離するための分岐器と、方向と距離とを測定して位置を測位する対象となる、移動端末、RFIDタグ、もしくはこれらの両方とから構成される。
【0014】
また、前記伝送ケーブルが、少なくとも、前記伝送されるデジタル信号が電磁波信号として外部へ漏洩することを抑止するための漏洩抑止手段を有し、前記無線基地局が、少なくとも、前記無線信号を受信するための受信手段と、前記受信手段を制御するための制御手段と、前記無線信号の1波長以下の間隔で設置された複数の指向性アンテナと、前記複数の指向性アンテナを周期的に切替えるためのアンテナ切替手段とを有し、かつ前記移動端末、RFIDタグ、もしくはこれらの両方が、無線信号を間欠発信するための発信手段と、前記発信手段を制御するための制御手段と、任意の数の指向性アンテナとを有する。
【0015】
また、請求項2に示すように、前記無線基地局が、少なくとも、前記無線信号を間欠発信するための発信手段と、前記発信手段を制御するための制御手段と、前記無線信号の1波長以下の間隔で設置された複数の指向性アンテナと、前記複数の指向性アンテナを周期的に切替えるためのアンテナ切替手段とを有し、かつ前記移動端末、RFIDタグ、もしくはこれらの両方が、無線信号を受信するための受信手段と、前記受信手段を制御するための制御手段と、任意の数の指向性アンテナとを有する。
【0016】
また、請求項3に示すように、前記無線基地局が、少なくとも、前記無線信号を時分割で間欠発信しあるいは受信するための発受信手段と、前記発受信手段を制御するための制御手段と、前記無線信号の1波長以下の間隔で設置された複数の指向性アンテナと、前記複数の指向性アンテナを周期的に切替えあるいは時分割で切換えるためのアンテナ切替手段とを有し、かつ前記移動端末が、無線信号を時分割で受信しあるいは間欠発信するための発受信手段と、前記発受信手段を制御するための制御手段と、任意の数の指向性アンテナとを有する。
【0017】
また、請求項4に示すように、前記無線基地局が、天井下部、照明設備の内部、照明設備の周辺部、あるいはこれらの組合せの箇所に設置され、かつ前記無線基地局の指向性アンテナの指向性ビームを下方向に向けて設置するための設置手段を有する。
また、請求項5に示すように、前記無線基地局が、前記照明装置と一体構造であり、あるいは前記照明装置の照明手段と一体構造である。
また、請求項6に示すように、前記照明手段がLEDによる照明であり、ねじ式の口金により照明装置に取付ける構造であり、前記無線基地局が前記照明手段の内部に組込まれており、前記照明手段のLEDと前記無線基地局の指向性アンテナとが共通のプリント基板に組立てられており、あるいはこれらの組合せである。
【0018】
また、請求項7に示すように、前記照明手段の下方部分に光と無線信号の両方を通過させるレドーム手段を有し、前記照明手段の上方部分に少なくとも前記無線信号を遮蔽する遮蔽手段を有し、あるいはこれらの両方を有する。
また、請求項8に示すように、前記無線基地局が、前記移動端末、RFIDタグ、もしくはこれらの両方の位置を測位した場合に、前記測位の結果に応じて、前記照明装置を起動しあるいは停止するための制御手段を有する。
また、請求項9に示すように、前記無線基地局が複数であり、前記複数の無線基地局が前記伝送ケーブルを介して中央制御装置に接続され、前記中央制御装置が、少なくとも、インターネット回線に接続する機能と、前記複数の無線基地局を制御する機能と、前記移動端末、RFIDタグ、もしくはこれらの両方からの位置情報を受信し管理する機能とを有する。
【0019】
また、請求項10に示すように、前記中央制御装置もしくはサーバが、前記複数の無線基地局を介し前記移動端末から測位要求信号を受信したとき、前記複数の無線基地局の内から最適の無線基地局を選択し、前記選択した無線基地局に対し、前記移動端末から発信される測位要求信号に対応し、時分割のタイミングで測位信号を発信するよう命ずる機能を有する。
また、請求項11に示すように、前記無線測位システムがインターネット回線もしくは通信回線に接続され、前記無線測位システムに登録された識別信号を有する移動端末、RFIDタグ、もしくはこれらの両方に対し位置測位サービスを提供する。
また、請求項12に示すように、前記伝送ケーブルが、2組のツイストペアケーブルであり、あるいは2組の同軸ケーブルであり、前記2組が少なくともデジタル信号の上り方向と下り方向とに割当てられる。
【0020】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態による無線測位システムの構成図である。図1において、10a、10bは無線基地局、20はアクセスポイント、21は通信回線もしくはインターネット回線、30は移動端末もしくはRFIDタグ、100は無線測位システム、103は配電盤設備、104a、104bは照明設備、105a、105bは伝送ケーブル、501は天井、502は床面である。
【0021】
前記無線測位システム100において、前記アクセスポイント20が、配電盤設備103の内部もしくは周辺部に設置され、かつ通信回線もしくはインターネット回線21に接続され、無線基地局10a、10bが、天井501に設置された照明設備104a、104bの内部もしくは周辺部に設置され、前記移動端末もしくはRFIDタグ30が床面502に設置されあるいは床面502上を移動しているものとする。
前記移動端末もしくはRFIDタグ30は、少なくとも、システム同期信号と、識別信号と、測位信号とを含む無線信号を間欠発信しており、前記無線信号を受信した無線基地局10a、10bは、前記移動端末もしくはRFIDタグが位置する方向と距離とを測定して位置を測位するとともに、前記測位結果を前記識別信号とともに、前記通信回線21を介し、サーバもしくは中央制御装置(記載せず)に対して発信する。
【0022】
前記測位結果を受信した前記サーバもしくは中央制御装置は、前記識別信号が既に登録されたものか否かを判別し、複数の無線基地局から測位結果を受信した場合には、例えば、測位の際の受信信号強度が最も大きかった最適の無線基地局を選択し、当該選択した無線基地局に対して位置登録受付信号を発信する。位置登録受付信号を受信した無線基地局は、以後前記位置登録受付が取消されるまで、測位信号を折返して発信するよう要求する移動端末に対して測位信号を含む無線信号を時分割のタイミングで測位信号を折返して発信する。
なお、前記とは逆に、前記無線基地局10a、10bから、システム同期信号と、識別信号と、測位信号とを含む無線信号を間欠発信しており、これを受信した移動端末もしくはRFID側で、自局の位置を測位することも可能である。
また、前記無線測位システム100が識別信号の登録を受付けた移動端末もしくはRFIDタグに無線測位サービスを提供することによって、無線測位ビジネスを展開することができる。
【0023】
図2は本発明の第1の実施の形態による無線測位システムの他の構成図である。図2において、10は無線基地局、15a−1〜15a−4は複数の指向性アンテナ、30は移動端末、RFIDタグ、もしくはこれらの両方、201は前記無線基地局10と移動端末もしくはRFIDタグ30との間の距離、202は前記無線基地局30から見た前記移動端末もしくはRFIDタグ30が位置する方向である。
ここで、前記移動端末もしくはRFIDタグ30、無線基地局10、もしくはこれらの両方のアンテナが、90°以上の広い指向性ビーム幅を有する指向性アンテナであり、あるいは円偏波指向性アンテナであり、あるいは120°以上の広い指向性ビーム幅を有する渦巻きアンテナもしくは円すい渦巻きアンテナであり、前記移動端末と無線基地局との間で、指向性の方向が双方向通信の相手方に向けて、お互いに対向して設けられているものとする。
【0024】
前記移動端末もしくはRFIDタグ30からは、少なくとも、システム同期信号と、識別信号と、測位信号とを含む無線信号を、時間占有率20%以下のバースト信号として間欠発信し、前記無線信号を受信した無線基地局10が、前記複数の指向性アンテナ15a−1〜15a−4を周期的に切替えながら、前記測位信号を再生し、前記再生した測位信号の位相差を前記複数の指向性アンテナ15a−1〜15a−4に対応して測定し、前記移動端末もしくはRFIDタグ30が位置する方向を測定し、前記無線信号の受信信号強度(RSSI)を測定して前記無線基地局からの距離を測定し、前記方向と距離の測定結果から、前記移動端末もしくはRFIDタグ30の2次元もしくは3次元の位置を高精度でしかもリアルタイムで測位することができる。
【0025】
あるいは、前記基地局10からは、少なくとも、システム同期信号と、識別信号と、測位信号とを含む無線信号を、時間占有率20%以下のバースト信号として、前記複数の指向性アンテナ15a−1〜15a−4を周期的に切替えながら間欠発信し、前記移動端末もしくはRFIDタグ30が、前記無線信号を受信して、前記複数の指向性アンテナ15a−1〜15a−4に対応して測位信号の位相差を測定して前記移動端末が位置する方向を測定し、前記無線信号の受信電界強度もしくは受信信号強度(RSSI)を測定して前記基地巨億10からの距離を測定し、前記方向と距離の測定結果から、前記移動端末もしくはRFIDタグが、自局の2次元もしくは3次元の位置を高精度でしかもリアルタイムで測位することができる。
【0026】
あるいは、前記無線基地局10と前記移動端末もしくはRFIDタグ3030との間で、時分割で双方向通信を行うことによって、前記無線基地局10が、前記移動端末もしくはRFIDタグ30の2次元もしくは3次元の位置を高精度でしかもリアルタイムで測位し、かつ、前記移動端末もしくはRFIDタグ30が、自局の2次元もしくは3次元の位置を高精度でしかもリアルタイムで測位することができる。
また、前記無線基地局10と、前記移動端末もしくはRFIDタグ30の指向性アンテナもしくは円偏波指向性アンテナの指向性ビームを相対させることによって、周辺からの反射波あるいはマルチパスの影響を抑えることができるメリットが得られる。
【0027】
なお、前記距離201(Dm)の測定は、前記無線基地局10のアンテナの指向性ビームと、前記移動端末もしくはRFIDタグ30のアンテナの指向性ビームとが相対している場合に、前記受信電界強度もしくは受信信号強度(RSSI)を測定し、下記に示す「比較的に近距離で相対するアンテナ間の結合損失の実験式」によって近似することによって行なうことができる。
結合損失(LdB)=22+20LOG(D/λ)≒移動端末からの実効放射電力値−無線基地局での受信した実効受信信号強度 (λ=無線信号の波長)
距離(Dm)≒λ*arkLOG{(L−22)/20}
ここで、前記実効放射電力値は、例えば、前記移動端末もしくはRFIDに接続された指向性アンテナの利得と送信出力の加算値であり、前記移動端末もしくはRFIDから発信される局情報の中に含むことで、前記無線基地局に伝えることができる。
【0028】
例えば、前記無線信号の周波数が2.4GHz帯の場合、前記アンテナ間の間隔が12mであり、前記受信信号強度の測定誤差が±3dBであるとすると、距離の測定誤差±δDmは、δD=12m×(3dB/62dB)≒58cmとして求められる。
あるいは、前記アンテナ間の間隔が6mとするとδD≒32cmとなり、前記アンテナ間の間隔が3mとするとδD≒18cmとなり、間隔が狭くなるほど測定誤差が改善されるとともに、周辺の障害物による反射あるいはマルチパスの影響を受けにくくなる効果が得られる。
【0029】
また、前記無線基地局が距離201(Dm)と方向202(α(X)、α(Y))を測定すると、前記距離と方向とから、次のようにして、前記移動端末もしくはRFIDの2次元もしくは3次元の位置を求めることができる。
無線基地局101の複数のアンテナ15a−1〜15a−4が真下方向を向いている場合
Xx=X0−D*Sin(α(X)) −−−−(1)
Yy=Y0−D*Sin(α(Y)) −−−−(2)
Zz=Z0−D*√(1−Sin^2(α(X))−Sin^2(α(Y)))−−−−(3)
【0030】
ここで、前記無線基地局10が常時受信待受け状態であり、前記移動端末もしくはRFIDが電池で駆動され、かつ常時は休止状態である場合には、前記移動端末もしくはRFIDが、前記無線基地局に対して、少なくとも測位信号を含む無線信号を、CR発振器などの自励発振器で生成される所定の周期で間欠発信することによって、前記移動端末もしくはRFIDの電池の消耗を軽減することができ、複数の移動端末が近接して存在する場合でも、間欠発信の衝突を回避することができる。
また、前記無線基地局もしくは移動端末に2基の指向性アンテナを設けて周期的に切替えることによって、2次元の位置を測位することも可能である。
【0031】
また、前記無線基地局10が擬似衛星局(スードライト)であり、前記擬似衛星局から発信される無線信号が、時間率20%以下の短いバースト信号である場合、既存のGPS衛星局との間で遠近問題が生じず、したがって、発信可能な電力を1mW程度まで高めることが可能である。
また、単一の擬似衛星局を利用して2次元もしくは3次元の位置の検知が可能なことから、従来の擬似衛星局4局を利用して双曲線航法により2次元もしくは3次元の位置の検知を行なう場合に比較して、マルチパスによる影響を飛躍的に軽減することができる。
【0032】
図3は本発明の第1の実施の形態による無線測位システムの他の構成図である。図3において、10aは無線基地局、20はアクセスポイント、21は通信回線もしくはインターネット回線、22はサーバもしくは中央制御装置、40aは照明手段、61はデジタル信号阻止用コンデンサ、62はデジタル信号阻止用トランス、63はデジタル信号結合用コンデンサ、64はデジタル信号結合用トランス、65aは電源入力端子、66aは電力給電出力端子、67aはデジタル信号接続端子、68aは電力給電入力端子、103は電源設備、104aは照明設備、105a、105bは伝送ケーブルである。
【0033】
前記電源設備103からは交流もしくは直流の電力が、電源入力端子65aを介して供給され、デジタル信号阻止用コンデンサ61a、デジタル信号阻止用トランス62aを経由して電力給電出力端子66aに接続され、更に、伝送ケーブル105aを経由して照明設備104aの電力給電入力端子68aに接続され、アクセスポイント20の電力給電出力端子66aへは、デジタル信号接続用トランス64aとデジタル信号接続用コンデンサ63aとを経由し、接続端子67aを介して通信回線21が接続されている。
【0034】
一方、照明設備104aに内蔵される照明手段40aと無線基地局10aとには、デジタル信号阻止用コンデンサ61bとデジタル信号阻止用トランス62bとを経由して電力が給電され、無線基地局10aにはデジタル信号接続用トランス64bとデジタル信号接続用コンデンサ63bとを経由しデジタル信号が接続されている。
なお、前記デジタル信号が、電磁波信号として外部へ漏洩することを抑止するための漏洩抑止手段として、前記伝送ケーブル105aにツイストペアケーブルを用いるとともに、デジタル信号阻止用トランス62a、62b、およびデジタル信号阻止用コンデンサ61a、61bを設けるものとする。
【0035】
図4は本発明の伝送ケーブルの断面図である。図4において、68a1、68a2はツイストペアケーブルの心線、105aはツイストペアケーブルである。
従来のデジタル信号伝送ケーブルは、電流容量が小さく、従来の照明装置に電力を供給するのには適さなかったが、発光素子にLEDを採用することによって必要な電流容量が減少するため、必要な電流容量のツイストペアケーブルを製品化するが可能となる。
また、照明装置に電力を供給するための屋内配線用ケーブルをツイストペアケーブルとすることで、デジタル信号を重畳した時の電磁波信号の漏洩を抑制することが可能となる。
【0036】
図5は本発明の伝送ケーブルの他の断面図である。図5において、68a1、68a2、68a3、68a4はツイストペアケーブルの心線、105aはツイストペアケーブルであり、2組のツイストペアケーブルを一体化することで、デジタル信号の伝送を、上り方向と下り方向で分離することが可能となる。
また、例えば、ツイストペアケーブルの心線68a1、68a2の間にはデジタル信号による電位差のみが生じることから、ツイストペアケーブル間の絶縁対策が容易となるメリットが得られる。
また、前記ツイストペアケーブルの代わりに2組の同軸ケーブルを用いても同様な効果が得られる。
【0037】
図6は本発明の照明手段の外観図である。図6において、41は照明用のLEDと、位置測位用の指向性アンテナとを組立るためのプリント基板、42は光および無線信号を通過させるレドーム、43は光、無線信号、もしくはこれらの両方を、通過させ、拡散させ、収束させ、散乱させ、あるいはこれらの組合せを行わせるためのレンズ、44は無線基地局および付属回路部、45は筐体、46は口金、47は接点である。
前記組立基板41の下面には、図7に示すように、複数のLED51a〜51nと指向性アンテナ51a〜51mとが所定の間隔をおいて組立てられており、前記組立基板41の上面には、無線基地局、分岐器、および制御回路部などが、直接あるいはユニット化されて組立てられている。
【0038】
レドーム42は、照明光および無線信号を下方向に向けて通過させるが、レンズ43の材質あるいは形状によって、前記照明光のみを拡散させ、収束させ、散乱させ、あるいはこれらの組合せを行わせる機能を付加することが可能であり、一方、筐体45は、機械的な強度を持たせるとともに、放熱効果、無線信号の漏えい抑止効果、口金の取付強度を持たせるなどの役割を果たす。
なお、内部に残留する気体の量は極力少なくして窒素ガスなどの不活性ガスを充填することで、密閉構造となるので長寿命化を実現できる。
また、前記指向性アンテナは、通常前記測位信号の4分の1波長〜半波長程度の間隔で4基を配置する必要があるので、極力小型化するために、前記測位信号の周波数は5.6GHz以上とすることが望ましい。
【0039】
以上の説明では無線信号として電波を用いる場合について述べたが、無線信号として超音波信号あるいは高周波信号あるいは光信号を含むことができる。なお、超音波信号あるいは光信号の場合には、アンテナの代わりに送受波器を用い、また、光信号の場合には所定の値よりも周波数が高い副搬送波信号あるいは高いチップレートの拡散符号を用いるものとする。
【0040】
また、前記無線基地局が擬似衛星局であり、擬似GPS信号を発信する場合、コスタスループなどによって無変調の搬送波信号を再生することによって、方向と距離を測定し、GPS移動端末の位置を検知することができる。
また、前記MACレイヤには、少なくとも前記発信手段の識別符号あるいは識別番号が含まれ、あるいは局情報が含まれ、あるいはテキスト情報が含まれ、あるいは時間率1%を越えない範囲で符号長を選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は上記のように構成されているため、複数の無線基地局を広いエリアに離散的に設置し、移動端末もしくはRFIDを移動体に設置しあるいは人が携帯することによって、移動側、固定側、もしくはこれらの両側で、測位誤差が±30cm程度と高精度な2次元あるいは3次元の無線測位システムおよび無線測位装置、およびこれらを利用した測位ビジネスを経済的な方法で実現できる。
また、前記無線基地局を擬似衛星局として屋内、屋外、あるいはこれらの両方に設置し、移動端末をGPS移動端末することで、屋外と屋内でGPSをシームレスにつなぐ、高精度な2次元あるいは3次元の無線測位システムを安価な方法で実現できる。
【0042】
また、本発明の無線測位システムおよび測位装置を物流管理に応用すると、倉庫内の物品管理がどの場所のどの棚の何段目に収納しているかが正確に記録できることになり、物流管理の効率化に役立だてることができる。
また、前記無線基地局が、屋外あるいは屋内を問わず離散的に配置され、前記移動端末が歩行者あるいはロボットなどによって携帯されると、歩行者の自律移動支援システム、あるいは歩行者ナビゲーションシステム、あるいは児童の見守りシステムなどに活用することができる他、ロボットの自律歩行にも応用できる。
また、本発明の高精度測位技術は基盤技術であり、他の多くの分野での活用が期待できる。
【符号の説明】
【0043】
10a、10b 無線基地局
20 通信回線
21 アクセスポイント
22 サーバ
30 移動端末もしくはRFIDタグ
103 配電設備
104a、104b 照明設備
105a、105b 伝送ケーブル
501 天井
502 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明設備に近接して設置され、無線信号を用いて2次元もしくは3次元の位置を測位するための無線測位システムにおいて、
前記無線測位システムが、前記照明設備に電力を供給するための伝送ケーブルと、前記伝送ケーブルを介して電力の供給を受ける無線基地局と、前記伝送ケーブルにデジタル信号を重畳しあるいはデジタル信号を分離するための分岐器と、方向と距離とを測定して位置を測位する対象となる、移動端末、RFIDタグ、もしくはこれらの両方とから構成され、
前記伝送ケーブルが、少なくとも、前記伝送されるデジタル信号が電磁波信号として外部へ漏洩することを抑止するための漏洩抑止手段を有し、前記無線基地局が、少なくとも、前記無線信号を受信するための受信手段と、前記受信手段を制御するための制御手段と、前記無線信号の1波長以下の間隔で設置された複数の指向性アンテナと、前記複数の指向性アンテナを周期的に切替えるためのアンテナ切替手段とを有し、かつ前記移動端末、RFIDタグ、もしくはこれらの両方が、無線信号を間欠発信するための発信手段と、前記発信手段を制御するための制御手段と、任意の数の指向性アンテナとを有することを特徴とする無線測位システムおよび無線測位装置。
【請求項2】
前記無線基地局が、少なくとも、前記無線信号を間欠発信するための発信手段と、前記発信手段を制御するための制御手段と、前記無線信号の1波長以下の間隔で設置された複数の指向性アンテナと、前記複数の指向性アンテナを周期的に切替えるためのアンテナ切替手段とを有し、かつ前記移動端末、RFIDタグ、もしくはこれらの両方が、無線信号を受信するための受信手段と、前記受信手段を制御するための制御手段と、任意の数の指向性アンテナとを有することを特徴とする請求項第1項に記載の無線測位システムおよび無線測位装置。
【請求項3】
前記無線基地局が、少なくとも、前記無線信号を時分割で間欠発信しあるいは受信するための発受信手段と、前記発受信手段を制御するための制御手段と、前記無線信号の1波長以下の間隔で設置された複数の指向性アンテナと、前記複数の指向性アンテナを周期的に切替えあるいは時分割で切換えるためのアンテナ切替手段とを有し、かつ前記移動端末が、無線信号を時分割で受信しあるいは間欠発信するための発受信手段と、前記発受信手段を制御するための制御手段と、任意の数の指向性アンテナとを有することを特徴とする請求項第1項に記載の無線測位システムおよび無線測位装置。
【請求項4】
前記無線基地局が、天井下部、照明設備の内部、照明設備の周辺部、あるいはこれらの組合せの箇所に設置され、かつ前記無線基地局の指向性アンテナの指向性ビームを下方向に向けて設置するための設置手段を有することを特徴とする請求項第1項から第3項までの何れかに該当する無線測位システムおよび無線測位装置。
【請求項5】
前記無線基地局が、前記照明装置と一体構造であり、あるいは前記照明装置の照明手段と一体構造であることを特徴とする請求項第1項から第3項までの何れかに該当する無線測位システムおよび無線測位装置。
【請求項6】
前記照明手段がLEDによる照明であり、ねじ式の口金により照明装置に取付ける構造であり、前記無線基地局が前記照明手段の内部に組込まれており、前記照明手段のLEDと前記無線基地局の指向性アンテナとが共通のプリント基板に組立てられており、あるいはこれらの組合せであることを特徴とする請求項第5項に記載の無線測位システムおよび無線測位装置。
【請求項7】
前記照明手段の下方部分に光と無線信号の両方を通過させるレドーム手段を有し、前記照明手段の上方部分に少なくとも前記無線信号を遮蔽する遮蔽手段を有し、あるいはこれらの両方を有することを特徴とする請求項第5項あるいは第6項に記載の無線測位システムおよび無線測位装置。
【請求項8】
前記無線基地局が、前記移動端末、RFIDタグ、もしくはこれらの両方の位置を測位した場合に、前記測位の結果に応じて、前記照明装置を起動しあるいは停止するための制御手段を有することを特徴とする請求項第1項から第3項までの何れかに該当する無線測位システムおよび無線測位装置。
【請求項9】
前記無線基地局が複数であり、前記複数の無線基地局が前記伝送ケーブルを介して中央制御装置に接続され、前記中央制御装置が、少なくとも、インターネット回線に接続する機能と、前記複数の無線基地局を制御する機能と、前記移動端末、RFIDタグ、もしくはこれらの両方からの位置情報を受信し管理する機能とを有することを特徴とする請求項第1項から第3項までの何れかに該当する無線測位システムおよび無線測位装置。
【請求項10】
前記中央制御装置もしくはサーバが、前記複数の無線基地局を介し前記移動端末から測位要求信号を受信したとき、前記複数の無線基地局の内から最適の無線基地局を選択し、前記選択した無線基地局に対し、前記移動端末から発信される測位要求信号に対応し、時分割のタイミングで測位信号を発信するよう命ずる機能を有することを特徴とする請求項第1項から第3項までの何れかに該当する無線測位システムおよび無線測位装置。
【請求項11】
前記無線測位システムがインターネット回線もしくは通信回線に接続され、前記無線測位システムに登録された識別信号を有する移動端末、RFIDタグ、もしくはこれらの両方に対し位置測位サービスを提供することを特徴とする請求項第1項から第7項までの何れかに該当する無線測位システムおよび無線測位装置。
【請求項12】
前記伝送ケーブルが、2組のツイストペアケーブルであり、あるいは2組の同軸ケーブルであり、前記2組が少なくともデジタル信号の上り方向と下り方向とに割当てられることを特徴とする請求項第1項から第7項までの何れかに該当する無線測位システムおよび無線測位装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−251959(P2012−251959A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126803(P2011−126803)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(395007299)有限会社アール・シー・エス (51)
【Fターム(参考)】